(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】安定したアザシチジン含有医薬組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/706 20060101AFI20220928BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20220928BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220928BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220928BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
A61K31/706
A61K9/19
A61K47/26
A61P35/00
A61P35/02
(21)【出願番号】P 2020566917
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(86)【国際出願番号】 KR2019006415
(87)【国際公開番号】W WO2019231225
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-01-08
(31)【優先権主張番号】10-2018-0061784
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521274533
【氏名又は名称】サムヤン ホールディングス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】SAMYANG HOLDINGS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】31,Jong-ro 33-gil,Jongno-gu,Seoul,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ジュンウン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ギョンヒェ
(72)【発明者】
【氏名】イ,イルウン
【審査官】篭島 福太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/117969(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0042247(US,A1)
【文献】国際公開第2014/076616(WO,A1)
【文献】特表2014-510755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/706
A61K 9/19
A61K 47/26
A61P 35/00
A61P 35/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)-
7℃~-
3℃の温度に維持されるアセトニトリル
、水
および凍結乾燥補助剤の混合溶媒に、アザシチジンを
450~550rpmで60~80分以内に溶解させる工程
;
2)工程1)の溶液を外気温度が
10℃以下に維持される条件下で、
2時間以内に容器に充填する工程;
及び
3)工程2の充填物を凍結乾燥する工程;
を含む
、3,000mL以上のアザシチジン溶液の産業的規模でアザシチジン含有医薬組成物
を製造
する方法
であって、
前記工程1)において、アセトニトリルと水との体積比(アセトニトリル:水)が、10:90~25:75であり、
前記アザシチジン含有医薬組成物のアザシチジン濃度が3~5mg/mLであり、
前記凍結乾燥補助剤がマンニトールであり、前記混合溶媒内の前記マンニトールの濃度が2~8mg/mLであり、
前記アザシチジン含有医薬組成物が、外気温度が10℃以下に維持された後、凍結乾燥された条件下で少なくとも3時間、類縁物質を0.8%未満で含む方法。
【請求項2】
工程1)の溶液を滅菌ろ過する工程をさらに含む請求項1に記載のアザシチジン含有医薬組成物の製造方法。
【請求項3】
工程1)が、
1-a)凍結乾燥補助剤を水に溶解させて溶液を得る工程;
1-b)前記溶液に、アセトニトリルを加えて、混合溶媒を得る工程;
1-c)前記混合溶媒の温度を-
7℃~-
3℃に下げる工程;及び
1-d)前記温度の混合溶媒に、アザシチジンを
450~550rpmで60~80分以内に溶解させる工程;
を含む請求項1に記載のアザシチジン含有医薬組成物の製造方法。
【請求項4】
アザシチジン含有医薬組成物が、注射用製剤である請求項1に記載のアザシチジン含有医薬組成物の製造方法。
【請求項5】
工程2)の容器は、ガラスバイアルである請求項1に記載のアザシチジン含有医薬組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセトニトリルを含む溶媒及び低温工程を使用して、安定したアザシチジン含有医薬組成物を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記化学構造を有するアザシチジン(AZA)は、4-アミノ-1-(3,4-ジヒドロキシ-5-ヒドロキシメチル-テトラヒドロフラン-2-イル)-1H-[1,3,5]トリアジン-2-オン又は5-アザシチジンなどとしても公知であり、現在、医薬品VIDAZA(登録商標)として市販されている。
【0003】
【0004】
アザシチジンは、DNA及びRNAに存在するヌクレオシドであるシチジンの化学的類似体である。アザシチジンとこのジオキシ誘導体である5-アザ-2’デオキシシチジンは、DNAメチル化を低減させるためにデザインされたヌクレオシドアナログであり、急性骨髄性白血病などを治療するために、臨床的に利用されてきた(非特許文献1)。アザシチジンは、複製DNA内に混入された後、DNAメチルトランスフェフーゼとの共有結合複合体を形成し、その活性を抑制し、DNAヒポメチル化を誘導することによって、正常な細胞周期の調節、分化及び死滅に関与する遺伝子の再-発現により、細胞が正常機能を回復するようにする。また、アザシチジンの細胞毒性効果は、正常細胞成長の制御メカニズムに対してそれ以上反応しない、癌細胞をはじめとする急速に分割する細胞の死滅を来すことがある。したがって、アザシチジンは、臨床試験でテストされてきており、特に骨髄異形成症候群(MDS)の治療などで相当な抗腫瘍活性を示したことがある。
【0005】
しかし、アザシチジンは、加水分解されやすい特性のため、商業的目的の大規模な合成、処理及び保管が困難であるという問題があった。アザシチジンのs-トリアジン環は、水で分解される傾向にあるが、中性pHの水溶液中でアザシチジンの5,6-イミンの二重結合の水和が急速に起こった後、結合が開裂し、ホルミル誘導体であるN-(ホルミルアミジノ)-N’-β-D-リボフラノシルウレア(RGU-CHO)が得られ、これは、次に、脱ホルミル化されることによって、1-β-D-リボフラノシル-3-グアニルウレア(RGU)を非可逆的に生成する。このような水溶液中のアザシチジンの不安定性により、水を含有する溶媒内でのアザシチジンの処理及び保管が容易ではなかった。
【0006】
したがって、安定的、且つ簡単であり、産業的規模で実行可能なアザシチジンの処理及び保管方法に対する必要性が存在した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Molecules,v.19,no.3,pp.3149-3159,2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
アザシチジンのような化合物の凍結乾燥製剤を製造するためには、溶液状態の化合物を調製し、これを滅菌した後、凍結乾燥して、溶媒を除去する工程を経ることになる。このような過程で、アザシチジンが水溶液に数時間暴露されると、加水分解により類縁物質(不純物,impurities)が生成される問題があった。
そこで、本発明の目的は、アザシチジンの加水分解を抑制することができる温度及び溶媒条件を見出すことによって、類縁物質形成を最小化して、アザシチジン含有医薬組成物を製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
明示的な他の記載がない限り、本明細書の全体で使用されるいくつかの用語は、以下の通りに定義することができる。
【0010】
本明細書の全体において、特別な言及がない限り、「含むこと」又は「含有すること」は、どの構成要素(又は構成成分)を特別な制限なく含むことを意味し、他の構成要素(又は構成成分)の付加を排除するものとして解釈されない。
【0011】
また、「アザシチジン」は、アザシチジン遊離塩基だけでなく、アザシチジンの塩、多形体、異性体(isomer)、エナンチオマー、無水物、半水和物、溶媒和物、プロドラッグ又はこれらの任意の混合物であってもよい。ここで、アザシチジンの「塩」は、無機酸及び/又は有機酸から由来したアザシチジンの酸付加塩を意味し、塩酸、臭素化水素酸、ホウ酸、リン酸、又は硫酸から形成されてもよい。又は、塩は、酢酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、又はトリフルオロ酢酸から形成されてもよい。ここで、アザシチジンの「多形体」は、アザシチジンの固体結晶質形態又はその塩又は複合体を意味する。また、アザシチジンの「溶媒和物」は、非共有性分子間力により結合された化学量論的又は非-化学量論的量の溶媒をさらに含む、アザシチジン又はその塩を意味する。溶媒が水のとき、溶媒和物は、水和物、例えば、一水和物、二水和物、三水和物又は四水和物であってもよい。また、アザシチジンの「プロドラッグ」は、アザシチジンの機能性誘導体であり、生体内でアザシチジンに容易に転換可能な化合物を意味する。
【0012】
前記課題を解決するために、本発明は、1)温度が-8℃~-1℃に維持されるアセトニトリルと水との混合溶媒に、アザシチジンを溶解させる工程;及び2)工程1)の溶液を外気温度が15℃以下に維持される条件下で、容器に充填する工程;を含むアザシチジン含有医薬組成物の製造方法を提供する。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
一実施形態において、前記工程2)において、外気温度が10℃以下に維持されるものであってもよいが、これに限定されない。外気温度が前記温度以下に維持される場合、容器充填工程中のアザシチジンの加水分解を抑制することができる。前記工程1)におけるアザシチジン溶解が低温で行われたとしても、容器充填工程で外気温度が15℃超、例えば、室温のとき、アザシチジンが急速に加水分解され、類縁物質生成が増加されるので、工程2)における外気温度を一定温度以下に維持することが重要である。前記外気温度は、15℃以下又は10℃以下であってもよく、また、一実施形態において、前記外気温度は、0℃以上、3℃以上、又は5℃以上であってもよい。
【0014】
一実施形態において、前記工程2)において、溶液を3時間以内、好ましくは2時間以内に充填してもよいが、これに限定されない。
【0015】
アザシチジン含有医薬組成物の産業的製造時、充填作業にある程度の時間が必要とされており、このとき、充填作業の温度と所要時間に応じてアザシチジンが加水分解され、所望しない類縁物質が生成されるが、本発明の一実施形態により、工程2)を行う際に、15℃又は10℃以下の外気温度で3時間又は2時間以内に充填作業を完了し、凍結乾燥を開始する場合、類縁物質の生成を最小化することができる。
【0016】
一実施形態において、前記工程1)において、混合溶媒の温度が-8℃~-1℃、好ましくは-7℃~-1℃、より好ましくは-5℃~-1℃に維持されるものであってもよいが、これに限定されない。混合溶媒の温度が前記範囲以内のとき、アザシチジン溶解工程中の加水分解をより抑制することができる。
【0017】
一実施形態において、前記工程1)において、アセトニトリルと水の体積比(アセトニトリル:水)が5:95~30:70であってもよいが、これに限定されない。水に対するアセトニトリルの体積比が、前記範囲を超えると、アザシチジンの安定性が低減されるだけでなく、その後の残留溶媒の除去問題が発生する可能性がある。水に対するアセトニトリルの体積比が、前記範囲未満のとき、アザシチジンの安定性が十分に確保できない可能性もある。アセトニトリルと水の体積比は、好ましくは10:90~25:75、より好ましくは15:85~25:75、さらに好ましくは20:80であってもよいが、これに限定されない。
【0018】
一実施形態において、前記医薬組成物内のアザシチジン濃度は、約0.001~50mg/mLであることができ、好ましくは約0.1~10mg/mL、より好ましくは約1~10mg/mL、約2~7mg/mL、又は約3~5mg/mLであってもよいが、これに限定されなく、投与対象及び目的などに応じて適宜調節することができる。
【0019】
一実施形態において、本発明の方法は、前記工程1)の溶液を滅菌ろ過する工程をさらに含むが、これに限定されない。前記滅菌ろ過する工程は、単純フィルタリング(filtering)により行われてもよいが、これに限定されなく、所望の滅菌の程度に応じてフィルターの気孔サイズを選択することができ、その他にも、本発明の属する分野で通常的に行われる滅菌ろ過方法により、特に制限なく行うことができる。
【0020】
一実施形態において、本発明の方法は、前記工程2)の充填物を凍結乾燥する工程をさらに含んでもよいが、これに限定されない。前記凍結乾燥する工程は、本発明の属する分野で通常的に行われる凍結乾燥方法により、特に制限なく行うことができる。
【0021】
一実施形態において、前記工程1)において、混合溶媒が凍結乾燥補助剤をさらに含むが、これに限定されない。
【0022】
一実施形態において、前記凍結乾燥補助剤は、マンニトール、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、酒石酸、ゼラチン、グリセリン、デキストロース、デキストラン、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸リン酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、及びこれらの混合物よりなる群から選ばれるが、これらに限定されなく、通常的に使用される凍結乾燥補助剤から通常の技術者が適宜選択して使用することができる。
【0023】
例えば、前記凍結乾燥補助剤は、工程1)の混合溶媒内に1~10mg/mL、好ましくは2~8mg/mL、より好ましくは5mg/mLで含まれてもよいが、これに限定されず、有効成分の濃度及び凍結乾燥補助剤の種類などを考慮して通常の技術者がその量を適宜調節して使用することができる。
【0024】
一実施形態において、前記工程1)が、1-a)凍結乾燥補助剤を水に溶解させて溶液を得る工程;1-b)前記溶液に、アセトニトリルを加えて、混合溶媒を得る工程;1-c)前記混合溶媒の温度を-8℃~-1℃に下げる工程;及び1-d)前記温度の混合溶媒に、アザシチジンを溶解させる工程;を含むが、これに限定されない。
【0025】
本発明による医薬組成物は、骨髄異形成症候群及び急性骨髄性白血病(AML)を含む様々な癌及び腫瘍関連疾患の治療又は改善のために用いることができる。より具体的に、前記医薬組成物は、非正常的細胞増殖に関連する障害及び血液障害のような疾患を治療又は改善のために用いることができる。
【0026】
一実施形態において、前記医薬組成物に含まれたアザシチジン-由来類縁物質の含量が、2.5%未満、2%未満、1.5%未満、1.2%未満、1%未満、0.8%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満又は0.1%未満であってもよい。このような類縁物質の含量は、類縁物質の判断基準、工程に必要とされた時間、工程温度及びアセトニトリルの濃度のような条件に応じて変わる。
【0027】
前記医薬組成物の投与経路は、特に限定されず、経口又は非経口投与であってもよい。非経口的投与経路には、注射投与、例えば、経皮、鼻腔、腹腔、筋肉、皮下、経静脈注射などの様々な経路が含まれるが、これに限定されない。
【0028】
したがって、本発明による医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体を含んでもよく、その他にも緩衝剤、等張化剤及び/又は抗菌剤をさらに含んでもよい。
【0029】
一実施形態において、前記アザシチジン含有医薬組成物が、注射用製剤であってもよいが、これに限定されない。
【0030】
例えば、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容可能な非経口用の担体とともに、当業界に公知された方法により、注射用製剤の形態に製剤化することができる。この場合、注射用製剤は、必ず滅菌しなければならず、バクテリア及び真菌のような微生物の汚染から保護しなければならない。適した非経口用の担体の例は、特に限定されず、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)、これらの混合物及び/又は植物油を含む溶媒又は分散媒質であってもよい。好ましくは、適した担体には、ハンクス液、点滴溶液、トリエタノールアミンが含まれたPBS又は注射用滅菌水、10%エタノール、40%プロピレングリコール及び5%デキストロースのような等張溶液などを使用することができる。また、前記注射用製剤を微生物汚染から保護するために、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどのような様々な抗菌剤及び抗真菌剤をさらに含むことができる。又は、前記注射用製剤は、マンニトール、ラクトース、デキストロース及びトレハロースからなる群から選ばれた糖又は塩化ナトリウムのような等張化剤をさらに含む。その他の薬学的に許容される担体などとしては、以下の文献に記載されたものを参考にすることができる(Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th Edition,1995,Mack Publishing Company,Easton,PA)。また、前記前記注射用製剤は、薬学的に適した容器内に充填することができる。
【0031】
一実施形態において、前記工程2)の容器は、ガラスバイアルであってもよいが、これに限定されない。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一実施形態によれば、アザシチジンの加水分解による類縁物質の発生を最小化し、最も厳格な条件(USP monograph)の類縁物質基準に適合するアザシチジン含有医薬組成物を製造することができ、複雑であるか、追加の工程を求めないことから、産業的規模で実行可能なアザシチジンの処理及び保管が可能になる。
また、前記のような安定したアザシチジン含有医薬組成物は、哺乳類において様々な種類の癌及び腫瘍関連疾患の治療に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0033】
製造例1~4: 溶媒による低温調製液の製造
(1)注射用水を用いた低温調製液の製造
調製タンク内の注射用水3000mLに、マンニトール15gを加え、完全に溶解させた。この調製タンクを5±3℃に維持されるように、十分に温度を低くした。調製液の温度が冷蔵温度(5±3℃)に下がったことを確認した後、アザシチジン15gを加え、500±50rpmで20±10分間撹拌した。完全に溶解したことを確認し、この調製液を滅菌フィルタリングした。
【0034】
(2)有機溶媒を用いた低温調製液の製造
調製タンク内の注射用水2400mLに、マンニトール15gを加え、完全に溶解させた。この調製タンクを-3±2℃に維持されるように、十分に温度を低くした。マンニトールが完全に溶解すれば、下記表1のような種類の有機溶媒(アセトニトリル、エタノール又は第三級ブタノール)600mLをそれぞれ加え、十分に混合した。調製液の温度が-3±2℃に下がったことを確認した後、アザシチジン15gを加え、500±50rpmで70±10分間撹拌した。完全に溶解したことを確認し、この調製液を滅菌フィルタリングした。
前記調製液を30mLずつバイアルに入れた後、5℃、15℃又は25℃のチャンバーに保管し、1時間間隔でサンプリングして、4時間まで類縁物質を測定した。
【0035】
【0036】
実験例1: 溶媒の種類による保管温度別の類縁物質の評価
以下の方法で製造例1~4の調製液内類縁物質を分析した。分析時標準液及び検液は、2~8℃に保管した。
【0037】
1)希釈液の調製
精製水を用いて亜硫酸水素ナトリウムの濃度を10.0g/Lにし、希釈された硫酸を用いてpH2.5に調整した。
【0038】
2)標準液の調製
50mLメスフラスコに、精密に定量したアザシチジン5.0mgを入れ、20%アセトニトリルで標線を合わせ、この溶液1mLを10mLメスフラスコに入れ、そこに20%アセトニトリル3mLを加えた後、希釈液で標線を合わせた(濃度0.01mg/mL)。
【0039】
3)システム適合性溶液の調製
精密に定量したアザシチジン標準品25mgを5mLメスフラスコに入れ、20%アセトニトリルを加えて溶解し、標線を合わせた。この溶液を2mL取り、希釈液が3mL入っているバイアルに入れ、よく混合した(濃度2mg/mL)。
【0040】
4)検液の調製
よく溶解された前記溶液(5mg/mL)を2mL取り、希釈液が3mL入っているバイアルに入れ、よく混合して検液とした(濃度2mg/mL)。
【0041】
5)液体クロマトグラフィー条件
a.カラム: Orosil C18,4.6mm×25cm,3μm,又はこれと類似なカラム
b.検出器: 紫外部吸光光度計(測定波長:210nm)
c.注入量: 5μL
d.流速: 0.8mL/分
e.自動試料注入器の温度: 5℃
g.移動相: 勾配溶出
実行条件は下記表2に示した。
【0042】
【0043】
移動相A: 1.54g/L酢酸アンモニウム水溶液
移動相B: アセトニトリル:メタノール:移動相A=20:30:50
【0044】
6)システム適合性及び操作法
システム適合性の溶液を注入し、アザシチジンピークのテーリングが2.0以下、標準液を6回以上注入して、ピーク面積の相手標準偏差が10.0%以下のとき、システムが適合したと判断し、標準液、検液の順で注入して、ピーク面積を求めた。
【0045】
7)計算
下記計算式を使用して各類縁物質の濃度を計算した。
各類縁物質(%)=(検液中の各類縁物質の面性/アザシチジン標準液のピーク面積)×(アザシチジン標準液の濃度(mg/mL)/検液の理論濃度(mg/mL))×標準品の純度(%)
【0046】
アザシチジン類縁物質の判定基準は、下記表3に示した(ただし、0.04%以下のピークは報告していない)。また、用いられたアザシチジン溶媒別及び温度別の類縁物質分析結果を表4~表7に示した。表4は注射用水(製造例1)、表5はアセトニトリル(製造例2)、表6はエタノール(製造例3)、及び表7は第三級ブタノール(製造例4)を溶媒として用いて、調製液製造後、類縁物質分析結果を示したものである。
【0047】
【0048】
a.1-β-D-リボフラノシル-3-グアニルウレア
b.N-(ジアミノエチレン)N’-(β-D-リボフラノシル)カルバムイミド酸
c.1-β-D-リボフラノシル-3-アミノカルボニルグアニジン
d.1-β-D-リボフラノシル-3-イミノヒドロキシルメチルグアニジン
e.N-(ホルミルアミジノ)-N’-β-D-リボフラノシルウレア(RGU-CHO)
f.総類縁物質からN-(ホルミルアミジノ)-N’-β-D-リボフラノシルウレアを除外
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
有機溶媒を用いず、水のみで製造した組成の場合、0℃以下で製造すると、調製液の凍結が生じたので、冷蔵温度以下で製造するのに問題があった。したがって、注射用水で製造した組成物の場合、5℃保管を除いたすべての温度で1時間も類縁物質基準以下を維持することができなかった。反面、有機溶媒を用いて製造した調製液の場合、約-3℃の低温で製造が可能であった。アセトニトリル、エタノール及び第三級ブタノールの3つの溶媒を用いて製造した調製液でアセトニトリルが最も優れた安定性を示した。次に、エタノール、第三級ブタノールの順に優れた安定性を示した。特に、アセトニトリルの場合、水と温度に敏感な名RGU-CHを調節するのに非常に効果的であった。
【0054】
製造例5~7: アセトニトリル濃度別調製液製造
調製タンク内の注射用水2100mLに、マンニトール15gを加え、完全に溶解させた。この調製タンクを-3±2℃に維持されるように、十分に温度を低くした。マンニトールが完全に溶解すれば、下記表8のように注射用水及び/又はアセトニトリルを加え、十分に混合した。調製液の温度が-3±2℃に下がったことを確認し、アザシチジン15gを加えた後、500±50rpmで70±10分間撹拌した。完全に溶解したことを確認し、この調製液を滅菌フィルタリングした。
この調製液を30mLずつバイアルに入れた後、5℃、10℃又は15℃チャンバーに保管し、1時間間隔でサンプリングし、3時間まで類縁物質を測定した。
【0055】
【0056】
実験例2: アセトニトリル濃度にともなう保管温度格別類縁物質評価
前記実験例1と同様の方法で製造例5~7による調製液内の類縁物質を分析した。下記表9~表11に、それぞれ10%、20%及び30%アセトニトリル(ACN)を用いた調製液製造後、類縁物質分析結果を示した。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
10%アセトニトリルを用いて調製した調製液(製造例5)の場合、10℃で2時間、15℃では1時間後に類縁物質基準を超えた。30%アセトニトリル溶液で製造した調製液(製造例7)の場合、10℃で3時間後に類縁物質が基準を超えたが、20%アセトニトリル溶液で調製した調製液(製造例6)の場合、10℃では3時間、15℃では2時間の安定性を示し、アセトニトリルの割合20%で最も優れた安定性を示していることを確認することができた。
【0061】
実施例1: 20%アセトニトリルを用いた低温工程でのサンプル製造
調製タンク内の注射用水2400mLに、マンニトール15gを加え、完全に溶解させた。この調製タンクを-3±2℃に維持されるように、十分に温度を低くした。マンニトールが完全に溶解すれば、600mLアセトニトリルを加え、十分に混合した。調製液の温度が-3±2℃に下がったことを確認した後、アザシチジン15gを加え、500±50rpmで70±10分間撹拌した。完全に溶解したことを確認し、この調製液を滅菌フィルタリングした。前記調製液を10℃以下の条件でバイアルに充填した後、実際の工場で充填にかかる時間を考慮して、10℃チャンバーに2時間さらに保管し、凍結乾燥器に入れ、凍結乾燥した後、サンプルを取って分析した。
【0062】
比較例1: 20%アセトニトリルを用いた室温工程でのサンプル製造
実施例1と同様に調製液を製造した後、滅菌フィルタリングした。前記調製液を室温でバイアルに充填した後、実際の工場で充填にかかる時間を考慮して、室温で2時間さらに保管し、凍結乾燥器に入れ、凍結乾燥した後、サンプルを取って分析した。
【0063】
比較例2: 精製水を用いた低温工程でのサンプル製造
精製水を用い、調製温度を5±3℃に維持したことを除いては、実施例1と同様に調製液を製造した後、滅菌フィルタリングした。前記調製液を10℃以下の条件でバイアルに充填した後、実際の工場で充填にかかる時間を考慮して、10℃チャンバーに2時間さらに保管し、凍結乾燥器に入れ、凍結乾燥した後、サンプルを取って分析した。
【0064】
比較例3: 精製水を用いた室温工程でのサンプル製造
精製水を用い、調製温度を5±3℃に維持したことを除いては、実施例1と同様に調製液を製造した後、滅菌フィルタリングした。前記調製液を室温条件でバイアルに充填した後、実際の工場で充填にかかる時間を考慮して、室温で2時間さらに保管し、凍結乾燥器に入れ、凍結乾燥した後、サンプルを取って分析した。
比較例1~3による調製条件が下記表12に比較されて示されている。
【0065】
【0066】
実験例3: 最適な温度及び保管条件のための類縁物質の評価
実験例1と同じ方法で実施例1及び比較例1~3による凍結乾燥サンプル内の類縁物質を分析した。このとき、凍結乾燥が終わった試料は、注射器を利用して20%アセトニトリルを10mL程度加え、よく振とうして溶解した後、20mLメスフラスコに移した。少量の20%アセトニトリルでバイアルを1~2回洗浄し、メスフラスコに入れ、20%アセトニトリルで標線を合わせた(濃度5mg/mL)。よく溶解したこの溶液を2mL取り、希釈液が3mL入っているバイアルに入れ、よく混合して検液とした(濃度2mg/mL)。凍結乾燥されたサンプルの類縁物質分析結果を下記表13に示した。
【0067】