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特許7148650化合物、組成物及びその薬物製造における用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】化合物、組成物及びその薬物製造における用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 233/86 20060101AFI20220928BHJP
   C07D 401/04 20060101ALI20220928BHJP
   C07D 235/02 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20220928BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20220928BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
C07D233/86 CSP
C07D401/04
C07D235/02 E
A61K31/4166
A61K31/4184
A61K31/4439
A61P35/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020573431
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 CN2019082441
(87)【国際公開番号】W WO2020042622
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2020-12-28
(31)【優先権主張番号】201810982835.X
(32)【優先日】2018-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520510357
【氏名又は名称】長沙澤達医薬科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】陳永恒
(72)【発明者】
【氏名】徐广宇
(72)【発明者】
【氏名】周文強
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-540523(JP,A)
【文献】国際公開第2006/028226(WO,A1)
【文献】特表2009-531439(JP,A)
【文献】Science, 2009年,Vol.324,p.787-790
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 233/86
C07D 401/04
C07D 235/02
A61K 31/4166
A61K 31/4184
A61K 31/4439
A61P 35/00
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の
からなる群から選択される化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
治療有効量の請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、及び薬学的に許容可能な担体を含む、前立腺癌を治療するための医薬組成物。
【請求項3】
治療有効量の請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、及び薬学的に許容可能な希釈剤を含む、前立腺癌を治療するための医薬組成物。
【請求項4】
治療有効量の請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、及び薬学的に許容可能な補助剤を含む、前立腺癌を治療するための医薬組成物。
【請求項5】
前記前立腺癌は、ホルモン感受性前立腺癌又はホルモン抵抗性前立腺癌である、請求項2~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
静脈内注射、組織内注射、腹腔内注射、経口又は経鼻により投与される、請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩の、前立腺癌を治療するための医薬組成物の製造における使用
【請求項8】
前記前立腺癌は、ホルモン感受性前立腺癌又はホルモン抵抗性前立腺癌である、請求項に記載の使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンドロゲン受容体の新しい拮抗薬化合物、アンドロゲン受容体に関連する疾患、例えば前立腺癌を治療するときにこのような化合物を使用する方法、及びこれらの化合物を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アンドロゲン受容体(androgen receptor、AR)は、リガンド依存性の転写調節タンパク質であり、核内受容体スーパーファミリーのメンバーである。アンドロゲン受容体は、アンドロゲン、例えばテストステロン又はより有効なジヒドロテストステロン(DTH)と結合して、立体構造の変化をもたらし、アンドロゲン受容体の活性化を引き起こす。活性化したアンドロゲン受容体は、二量体として標的細胞核中の特定のDNA配列-アンドロゲン応答エレメント(ARE)と結合して、標的遺伝子の発現を調節し、細胞の増殖、生存及び分化には対応する生物学的効果を生じる。アンドロゲン受容体は、多くの男性ホルモンに関連する疾患、例えば前立腺癌などで重要な役割を果たす。前立腺癌はアンドロゲンに対して高い感受性を示し、前立腺癌細胞はアンドロゲン受容体の高発現によって特徴付けられる。
【0003】
前立腺癌は、男性の生殖システムの最も一般的な悪性腫瘍であり、多くの高齢男性は、最終的に軽微な症状を伴う前立腺癌を発症する。他の悪性腫瘍と比べて、前立腺癌の成長はかなりゆっくりであり、90%の前立腺癌患者は、前立腺癌が数十年に潜伏状態を維持し、明らかな臨床症状がない。多くの他の癌と同様に、初期段階で治療を行わないで進行していくと、最終的に血液又はリンパ液を介して他の組織に運ばれる。
【0004】
現在、アンドロゲン受容体拮抗薬(AR Antagonist)は、前立腺癌を治療する主な化学的薬物であり、臨床的使用が承認されているアンドロゲン受容体拮抗薬(AR Antagonist、例えばビカルタミド、エンザルタミド、アパルタミド)は、臨床的治療応用において前立腺癌の進行を遅らせることができ、テストステロン又はジヒドロテストステロン(DHT)とアンドロゲン受容体との結合を直接阻止してアンドロゲンを阻害する生理作用である。しかし、上記いくつかの薬物は、前立腺癌細胞を直接死滅させる能力が高くなく、細胞生物学的実験では、そのIC50が10uM以上である。
【0005】
したがって、本分野では、ホルモン抵抗性前立腺癌を治療し、ホルモン感受性前立腺癌の進行を予防又は遅延するために、アンドロゲン受容体を高発現可能な前立腺癌細胞に対して選択的死滅能力を有する化合物を探し続ける必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、核ホルモン受容体、特にアンドロゲン受容体の機能を調節する化合物を提供する。これらの化合物は、前立腺癌細胞及び腫瘍を消失させることができる。
【0007】
本発明に係る化合物は、式Iの構造を有する。
[式I]
式中、Rは、水素、フッ素、塩素から選択され、R及びRは、独立して水素、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基若しくは置換アルケニル基、アルキニル基若しくは置換アルキニル基、アリール基から選択され、或いは、R及びRは連結して環を形成し、前記環は、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、芳香族複素環又は非芳香族複素環であり、Rは、水素、シアノ基、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基若しくは置換アルケニル基、アルキニル基若しくは置換アルキニル基、アリール基から選択され、Rは、水素、ハロゲン、ハロアルキル基から選択される。
【0008】
1つの具体的な実施形態において、Rは水素又はフッ素である。
【0009】
1つの具体的な実施形態において、R及びRは、独立してC-Cアルキル基であるか又は連結してC-Cシクロアルキル基を形成する。
【0010】
1つの具体的な実施形態において、Rはシアノ基である。
【0011】
1つの具体的な実施形態において、Rはトリハロメタン基であり、好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0012】
本発明の合成実施例において、下記化合物を合成した:
4-(3-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソイミダゾリジン-1-イル)-2-フルオロ-N-ヒドロキシベンズアミド
4-(3-(6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソイミダゾリジン-1-イル)-2-フルオロ-N-ヒドロキシベンズアミド
4-(3-(3-クロロ-4-シアノフェニル)-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソイミダゾリジン-1-イル)-2-フルオロ-N-ヒドロキシベンズアミド
4-(7-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-8-オキソ-6-チオ-5,7-ジアザスピロ[3.4]オクタン-5-イル)-2-フルオロ-N-ヒドロキシベンズアミド
4-(7-(6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-8-オキソ-6-チオ-5,7-ジアザスピロ[3.4]オクタン-5-イル)-2-フルオロ-N-ヒドロキシベンズアミド
【0013】
実施形態において、医薬組成物は、治療有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は補助剤とを含む。
【0014】
医薬組成物は、ジメチルスルホキシド、カルボキシメチルセルロース、ポリソルベート及び水の溶液を含んでよい。医薬組成物は、ジメチルスルホキシド、カルボキシメチルセルロース、ポリソルベート及び水を含んでよい。
【0015】
方法の実施形態は、過剰増殖性障害、例えばホルモン感受性前立腺癌又はホルモン抵抗性前立腺癌を予防又は治療する方法を含み、該方法は、それを必要とする患者に式Iの化合物又はその薬学的に許容可能な塩を投与することにより、過剰増殖性障害を予防又は治療することを含んでよい。化合物は、静脈内注射、組織内注射、腹腔内注射、経口により投与することができる。
【0016】
実施形態において、式Iの化合物は、アンドロゲン受容体(androgen receptor、AR)に対して高い親和性を有し、AR経路の下流タンパク質の発現を阻害することができる。式Iの化合物は、顕著なヒストンデアセチラーゼ阻害活性を有する。アンドロゲン受容体を高発現可能な腫瘍細胞の増殖に対して顕著な阻害作用を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】薬物とAR-LBDが結合したIC50の結果を示す図である。
図2】薬物のルシフェラーゼレポーター遺伝子の実験結果のグラフである。
図3】薬物による、VCaP細胞におけるAR活性化下流タンパク質の発現結果である。
図4】薬物によるtubulinタンパク質のアセチル化の影響である。
図5】薬物によるヒストンH3のアセチル化の影響である。
図6】薬物によるVCaP細胞増殖阻害作用である。
図7】4日間処理後のZeta 55による3種類の細胞の増殖阻害の選択性である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る化合物は、式Iの構造を有する。
[式I]
式中、Rは、水素、フッ素、塩素から選択され、R及びRは、独立して水素、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基若しくは置換アルケニル基、アルキニル基若しくは置換アルキニル基、アリール基から選択され、或いは、R及びRは連結して環を形成し、前記環は、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、芳香族複素環又は非芳香族複素環であり、Rは、水素、シアノ基、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基若しくは置換アルケニル基、アルキニル基若しくは置換アルキニル基、アリール基から選択され、Rは、水素、ハロゲン、ハロアルキル基から選択される。
【0019】
本明細書で使用される用語「アルキル基」とは、分岐状又は直鎖状の炭化水素鎖、好ましくは、約1~5個の炭素を有するもの、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、2-メチルペンチル基、ペンチル基などを意味する。「置換アルキル基」とは、1つ以上の基、例えばヒドロキシ基、臭素、フッ素、塩素、ヨウ素、メルカプト基又はチオ、シアノ基、アルキルチオ、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(carbalkoyl)、アルキル基、アルケニル基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基、アシルアミノ基などで任意に置換されて、トリフルオロメチル基、3-ヒドロキシヘキシル基、2-カルボキシプロピル基、2-フルオロエチル基、カルボキシメチル基、シアノブチル基などを形成するアルキル基を意味する。
【0020】
特に断りのない限り、本明細書で単独で又は別の基の一部分として使用される用語「シクロアルキル基」は、1~2個の環を含む飽和又は部分不飽和(1つ以上の二重結合を含む)の環式炭化水素基を含み、好ましくは、3~10個の炭素を有するもの、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基などを含む。「置換シクロアルキル基」は、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、シクロアルキル基、アルキルアシルアミノ基、アルカノイルアミノ基、オキソ、アシル基、アリールカルボニルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、チオール及び/又はアルキルチオなどの1つ以上の置換基、及び/又は「置換アルキル基」の定義に含まれる任意の置換基で任意に置換されたシクロアルキル基を含む。
【0021】
特に断りのない限り、本明細書で単独で又は別の基の一部分として使用される用語「アルケニル基」とは、主鎖(normal chain)に2~10個の炭素、好ましくは2~8個の炭素、より好ましくは2~5個の炭素を有し、かつ主鎖に1つ以上の二重結合を有する直鎖状又は分岐状の基、例えばビニル基、2-プロペニル基、3-ブテニル基、2-ブテニル基、4-ペンテニル基、3-ペンテニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、2-ヘプテニル基、3-ヘプテニル基、4-ヘプテニル基、3-オクテニル基、3-ノネニル基、4-デセニル基を意味する。「置換アルケニル基」は、1つ以上の置換基、例えば以上の「置換アルキル基」及び「置換シクロアルキル基」の定義に含まれる置換基で任意に置換されたアルケニル基を含む。
【0022】
特に断りのない限り、本明細書で単独で又は別の基の一部分として使用される用語「アルキニル基」とは、主鎖に2~8個の炭素を有し、かつ主鎖に1つ以上の三重結合を有する直鎖状又は分岐状の基、例えば2-プロピニル基、3-ブチニル基、2-ブチニル基、4-ペンチニル基、3-ペンチニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、2-ヘプチニル基、3-ヘプチニル基、4-ヘプチニル基、3-オクチニル基を意味する。「置換アルキニル基」は、1つ以上の置換基、例えば以上の「置換アルキル基」及び「置換シクロアルキル基」の定義に含まれる置換基で任意に置換されたアルキニル基を含む。
【0023】
特に断りのない限り、本明細書で単独で又は別の基の一部分として使用される用語「アリール基」又は「Ar」とは、環部分に6~10個の炭素を含む単環又は多環芳香族基(例えばフェニル基、又は1-ナフチル基及び2-ナフチル基を含むナフチル基)であり、炭素環又は複素環(例えばアリール基、シクロアルキル基、ヘテロアリール基又はシクロヘテロアルキル環)に縮合した1~3個の追加の環を任意に含む。
【0024】
「置換アリール基」は、1つ以上の官能基、例えばハロゲノ、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アルケニル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基(アミノ基は1つ又は2つのアルキル置換アミノ基を含む)で任意に置換された上記アリール基を含む。
【0025】
特に断りのない限り、本明細書で使用される用語「複素環式」又は「複素環」とは、飽和でも不飽和でもよく、炭素原子及びN、O又はSから選択される1~4個のヘテロ原子からなり、窒素及び硫黄へテロ原子が任意に酸化されてもよく、窒素ヘテロ原子が任意に四級化されてもよい非置換又は置換の安定な5~10員の単環式環系を意味する。このような複素環基の例としては、ピペリジニル基、ピペラジニル基、オキソピペラジニル基、ピロリル基、ピロリジニル基、フリル基、チエニル基、ピラゾリル基、ピラゾリジニル基、イミダゾリル基などを含む。
【0026】
式Iの化合物は、薬学的に許容可能な塩として存在することができ、これも本発明の範囲内である。式Iの化合物は、例えば、少なくとも1つの塩基性中心を有する場合、酸付加塩を形成することができる。これらは、例えば、無機強酸、有機強カルボン酸又は有機スルホン酸で形成され、該無機強酸は、例えば、鉱酸(例えば、硫酸、リン酸又はハロゲン化水素酸)であり、該有機強カルボン酸は、例えば、1~4個の炭素原子を有する非置換又は置換の(例えば、ハロゲンにより置換された)アルカンカルボン酸(例えば、酢酸)、飽和又は不飽和のジカルボン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸又はテレフタル酸)、ヒドロキシカルボン酸(例えば、アスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸又はクエン酸)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン又はアルギニン)、又は安息香酸であり、該有機スルホン酸は、例えば、非置換又は置換の(例えば、ハロゲンにより置換された)(C-C)アルキル基又はアリールスルホン酸(例えば、メチル基又はp-トルエン-スルホン酸)である。所望ならば、対応する酸付加塩を形成するために、さらに1つの塩基性中心を生成することもできる。
【0027】
本発明に係る化合物は、医薬組成物として使用することができ、治療有効量の本明細書で定義される本発明に係る化合物、及び薬学的に許容可能な担体又は希釈剤を含む。
【0028】
本発明に係る医薬組成物の形態は、様々な投与経路、例えば、経口投与、鼻内投与、腹腔内投与、又は静脈内、筋肉内、局所若しくは皮下経路、又は組織内への注射による非経口投与で治療を必要とする患者、例えば人などの哺乳動物に投与するのに適するように調節することができる。このような組成物及び製剤は、少なくとも0.01%の1種以上の本発明に係る化合物を含有する必要がある。組成物及び製剤の百分率は、当然のことながら変化してもよく、例えば所定の単位剤形の重量の約0.05%~約2%であってもよい。このような治療に有用な組成物における化合物の量は、有効な用量レベルが得られるようなものとする。
【0029】
本発明に係る化合物は、例えば、不活性希釈剤又は同化できる食用担体などの薬学的に許容可能な担体と組み合わせて経口的に、又は吸入若しくはガス注入により全身に投与することができる。それらは、ハード又はソフトシェルゼラチンカプセルに封入されてもよく、錠剤に圧縮されてもよく、患者の食事の食物に直接混入されてもよい。経口治療投与に関して、本発明に係る化合物は、1種以上の賦形剤と組み合わせて、摂取可能な錠剤、バッカル錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハー(wafer)などの形態で使用することができる。該化合物は、不活性微粉末担体と組み合わせて、患者により吸入されてもよく、ガス注入されてもよい。このような組成物及び製剤は、少なくとも0.1%の1種以上の本発明に係る化合物を含有する必要がある。
【0030】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などには、トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチ又はゼラチンなどの結合剤、リン酸二カルシウムなどの賦形剤、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ショ糖、フルクトース、乳糖又はアスパルテームなどの甘味剤が含有されてもよく、ペパーミント、冬緑油、チェリー調味料などの芳香剤を添加してもよい。単位剤形がカプセル剤である場合、以上のタイプの材料に加えて、液体担体、例えば植物油又はポリエチレングリコールが含有されてもよい。様々な他の材料は、コーティング剤として存在してもよく、他の方法で固形単位剤形の物理的形態(physical form)を改変してもよい。例えば、錠剤、丸剤、又はカプセル剤は、ゼラチン、ワックス、セラック、糖などでコーティングすることができる。シロップ剤又はエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤としてのショ糖又はフルクトース、防腐剤としてのパラオキシ安息香酸メチル及びパラオキシ安息香酸プロピル、染料、及びサクラ又はオレンジなどの調味料を含有することができる。もちろん、任意の単位剤形を調製するためのいずれの材料は、薬学的に許容可能であり、使用される量で実質的に非毒性である必要がある。また、本発明に係る化合物は、徐放性製剤及びデバイスに組み込むことができる。例えば、化合物は、限時放出(time release)カプセル剤、限時放出錠剤及び限時放出丸剤に組み込むことができる。
【0031】
本発明に係る化合物は、注入又は注射により静脈内又は腹膜内に投与することもできる。化合物の溶液は、水中で調製することができ、非毒性界面活性剤と任意に混合することができる。注射又は注入に適する薬物剤形は、無菌の水溶液若しくは分散液、又は無菌粉末を含んでよい。液体担体は、例えば、水、エタノール、多価アルコール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリルエステル、及びこれらの適切な混合物を含む溶媒又は液体媒体であってよい。
【0032】
局所投与に関して、本発明に係る化合物は、純粋形態で使用することができる。しかし、一般的には、これらを、組成物又は製剤として、固体であっても液体であってもよい皮膚薬として許容可能な担体と組み合わせて皮膚に投与することが望ましい。
【0033】
有用な固体担体は、微粉化した固体、例えばタルク、粘土、微結晶セルロース、シリカ、アルミナなどを含む。他の固体担体は、非毒性ポリマーナノ粒子又は微粒子を含む。有用な液体担体は、水、アルコール、グリコール、又は水/アルコール/グリコールの混合物を含み、本発明に係る化合物は、非毒性界面活性剤を任意に用いて有効なレベルで溶解又は分散することができる。補助剤、例えば香料及び他の抗微生物剤を添加して所定の用途に応じて性能を最適化することができる。得られた液体組成物を、吸収性パッドにより適用するか、絆創膏及び他の包帯を含浸させるために使用するか、又はポンプタイプ若しくはエアゾール噴霧器を用いて患部にスプレーすることができる。
【0034】
増粘剤、例えば合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩及びエステル、脂肪アルコール、変性セルロース、又は変性鉱物材料も液体担体と共に用いて、使用者の皮膚に直接適用するための塗布可能なペースト、ゲル、軟膏、石鹸などを形成することができる。
【0035】
液体組成物、例えばローション中の化合物濃度は、約0.1~約25重量%であってもよく、約0.5~10重量%であってもよい。半固体又は固体組成物、例えばゲル又は粉末中の濃度は、約0.1~約5重量%であってもよく、約0.5~約2.5重量%であってもよい。
【0036】
治療使用に必要な本発明に係る化合物の量は、選択された個々の塩によってのみならず、投与経路、治療中の病態の性質、並びに患者の年齢及び病態によって異なり、最終的に担当医又は臨床医の判断により決定される。
【0037】
本発明に係る試薬の有効投与量及び投与経路は標準的である。試薬の正確な量(有効量)は、患者によって異なり、例えば、患者の種類、年齢、体重、一般的又は臨床状態、治療中のいずれの病態の重篤性又はメカニズム、使用される特定の試薬又は担体、投与方法及び進捗などに依存する。治療有効量は、当業者に知られている従来法によって経験的に決定することができる。
【0038】
一般的には、適切な用量は、受容者の体重に対して、1日あたり約0.01~約500mg/kg、例えば約0.1~約500mg/kg、例えば約0.1~約100mg/kgであってよい。例えば、適切な用量は、1日あたり約1mg/kg、10mg/kg又は50mg/kg体重であってよい。
【0039】
本発明に係る化合物は、好適には単位剤形で投与することができ、例えば、単位剤形あたり、約0.0005~約500mg、約0.01~約50mg、約0.05~約10mg、又は約5mgの活性成分を含む。
【0040】
本発明に係る化合物を投与することにより、例えば、約0.5~約75μM、約1~50μM、約2~約30μM、又は約5~約25μMの血漿濃度ピークを実現することができる。例示的な望ましい血漿濃度は、少なくとも0.25、0.5、1、5、10、25、50、75、100又は200μM、又はそれ以下を含む。これは、例えば、本発明に係る化合物の0.05~5%溶液を(任意に塩水中に)静脈注射するか、又は約1~1000mgの該化合物を含有する丸薬として経口投与することにより実現することができる。望ましい血液レベルは、連続的注入により約0.0005~約25mg/kg体重/hで提供することができ、例えば、少なくとも0.0005、0.005、0.05、0.5、5又は25mg/kg/h、又はそれ以下で保持することができる。或いは、このようなレベルは、約0.002~約100mg/kg体重、例えば、少なくとも0.002、0.02、0.2、2、20、50又は100mgの化合物/kg体重、又はそれ以下で断続的注入により得られる。
【0041】
本発明に係る化合物は、好適には単一用量で供給するか、又は適切な間隔、例えば1日あたり2回、3回、4回又はそれ以上の副用量(sub-dose)として供給することができる。副用量自体を、例えば、注入器からの複数回吸入などの、多くの離散的で大雑把な間隔での投与にさらに分けることができる。
【0042】
(合成実施例1)
4-(3-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソイミダゾリジン-1-イル)-2-フルオロ-N-ヒドロキシベンズアミド(化合物Zeta 32)の合成
【0043】
(1)4-(2-カルボキシプロピル-2-イル)アミノ)-2-フルオロ安息香酸15の合成
150mLの二口フラスコに化合物2-フルオロ-4-ブロモ安息香酸(4.00g、18mmol)、2-メチル-2-アミノプロピオン酸(2.78g、27mmol)、炭酸カリウム(6.67g、48mmol)、CuI(0.45g、2.4mmol)、アセチルアセトン(1.44g、14.4mmol)、30mLのDMF、2mLの水及び3滴のトリエチルアミンを順に添加し、窒素保護装置で、140℃で24h反応させ、TLCで反応(酢酸エチル:石油エーテル=1:1)を監視し、反応終了後、20mLの水を添加し、濃塩酸を添加してPhを4に調節し、酢酸エチル(30×3mL)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧して溶媒を取り除き、残渣に20mLのイソプロパノールを添加して加熱溶解し、冷却しながら結晶化し、ろ過して化合物15(3.47g、褐色固体、収率80.1%)を得た。
【0044】
(2)2-フルオロ-4-((1-メトキシ-2-メチル-1-オキソプロピル-2-イル)アミノ)安息香酸メチルエステル16の合成
150mLの二口フラスコに化合物15(5.00g、20.7mmol)及び40mLのメタノールを添加し、氷浴下で4.2mLの塩化チオニル(58mmol)を滴下した後、80℃まで昇温させて還流下で撹拌し、2時間反応させ、反応液を室温まで冷却し、20%炭酸ナトリウム溶液を添加して溶液のpHを8に調節し、酢酸エチル(30×3mL)で抽出し、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧して溶媒を取り除いて、化合物16(4.97g、褐色固体、収率95.6%)を得た。
【0045】
(3)4-(3-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソイミダゾリジン-1-イル)-2-フルオロ安息香酸メチルエステル17の合成
50mLの二口フラスコに化合物16(1.00g、4.0mmol)、4-イソチオシアナト-2-トリフルオロメチルベンゾニトリル(1g、57.6mmol)、1mLのDMSO及び10mLの酢酸エチルを順に添加し、85℃で18h反応させ、TLCで反応(石油エーテル:酢酸エチル=3:1)を監視し、反応終了後、10mLの水を添加し、酢酸エチル(20×3mL)で抽出し、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧して溶媒を取り除き、残渣に10mLのイソプロパノールを添加して加熱溶解し、冷却しながら結晶化し、ろ過して化合物17(1.1g、淡黄色固体、収率60.1%)を得た。
【0046】
(4)4-(3-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソイミダゾリジン-1-イル)-2-フルオロ安息香酸19の合成
150mLの二口フラスコに化合物17(3g、6.45mmol)、25mLのメタノール及び25mLの1mol/L水酸化ナトリウム溶液を添加し、20℃で4h撹拌し、反応終了後、2mol/L希塩酸を添加してpHを4に調節し、酢酸エチル(50×3mL)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧して溶媒を取り除いて、化合物11(淡黄色固体、2.86g、収率98.2%)を得た。
【0047】
(5)4-(3-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソイミダゾリジン-1-イル)-2-フルオロ-N-ヒドロキシベンズアミド20の合成
25mLの二口フラスコに化合物19(0.5g、1.1mmol)、8mLのTHF及びCDI(0.357g、2.2mmol)を添加し、30℃で10h撹拌した後、塩酸ヒドロキシルアミン(0.230g、3.3mmol)を添加し、室温で10h反応させ、TLCで反応(酢酸エチル:石油エーテル:メタノール=20:5:2)を監視し、反応終了後、8mLの水を添加し、酢酸エチル(10×3mL)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧して溶媒を取り除き、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物Zeta 32(0.144g、淡黄色固体、収率28.1%)を得た。
M.W.: 466.41; H NMR (500 MHz, DMSO-d): δ 11.16 (s, 1H), 9.34 (s, 1H), 8.41 (d, J=10.0Hz, 1H), 8.30 (s, 1H), 8.09 (d, J=5.0Hz, 1H), 7.75 (t, J=5.0Hz, 1H), 7.43 (d, J=5.0Hz, 1H), 7.35 (s, 1H), 2.51 (s, 6H); 13C NMR (125 MHz, DMSO-d): δ 180.55, 175.18, 160.98, 160.40, 158.41, 138.94, 138.40, 136.74, 134.42, 131.31, 128.48, 126.67, 123.96, 118.61, 118.42, 115.47, 109.21, 67.08, 23.42。
【0048】
(合成実施例2)
4-(3-(6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソイミダゾリジン-1-イル)-2-フルオロ-N-ヒドロキシベンズアミド(化合物Zeta 33)の合成
【0049】
(1)4-(3-(6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソイミダゾリジン-1-イル)-2-フルオロ安息香酸メチルエステル25の合成
25mLの二口フラスコに化合物21(0.60g、2.5mmol)、3-クロロ-4-シアノアニリン(0.561g、3mmol)、8mLのN,N-ジメチルアセトアミド及びチオホスゲン(0.35ml、3.8mmol)を添加し、70℃まで昇温させて24h反応させ、室温まで冷却した後、4mLのメタノール、1mLの濃塩酸及び2mLの水を添加し、2h還流下で撹拌し、室温まで冷却した後、酢酸エチル(20×3mL)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧して溶媒を取り除き、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物25(0.355g、黄色固体、収率30.5%)を得た。
【0050】
(2)4-(3-(6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソイミダゾリジン-1-イル)-2-フルオロ安息香酸26の合成
25mLの二口フラスコに化合物25(0.230g、0.5mmol)を2mLのメタノールに溶解し、この混合物に2mLの1mol/L水酸化ナトリウムを添加し、20℃で4h撹拌し、反応終了後、2mol/L希塩酸を添加してpHを4に調節し、酢酸エチル(20mL×3mL)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧して溶媒を取り除いて、化合物26(0.220g、淡黄色固体、収率98.1%)を得た。
【0051】
(3)4-(3-(6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソイミダゾリジン-1-イル)-2-フルオロ-N-ヒドロキシベンズアミド27の合成
25mLの二口フラスコに化合物26(0.200g、0.44mmol)、4mLのTHF及びCDI(0.143g、0.88mmol)を順に添加し、30℃で10h撹拌した後、塩酸ヒドロキシルアミン(0.092g、1.32mmol)を添加し、室温で10h反応させ、TLCで反応(酢酸エチル:石油エーテル:メタノール=20:5:2)を監視し、反応終了後、4mLの水を添加し、酢酸エチル(10×3mL)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧して溶媒を取り除き、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物A8(0.064g、淡黄色固体、収率31.6%)を得た。
M.W.: 467.40; H NMR (500 MHz, CDCl): δ 8.95 (d, J = 1.0 Hz, 1H), 8.46 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.85 (t, J = 9.0 Hz, 1H), 7.38 (t, J = 9.5 Hz 2H), 1.61 (s, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDOD): δ 180.63, 175.26, 162.16, 158.77, 151.31, 139.59, 135.87, 130.85, 126.25, 123.76, 112.21, 122.09, 118.34, 118.15, 66.78, 22.34。
【0052】
(合成実施例3)
4-(3-(3-クロロ-4-シアノフェニル)-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソイミダゾリジン-1-イル)-2-フルオロ-N-ヒドロキシベンズアミド(Zeta 34)の合成
【0053】
(1)4-((2-シアノプロピル-2-イル)アミノ)-2-フルオロ安息香酸メチルエステル21の合成
150mLの二口フラスコに室温で2-フルオロ-4-アミノ安息香酸エステル2(4.5g、26.6mmol)、アセトン(2.99g、42.7mmol)、シアン化カリウム(2.6g、40mmol)及び46mLの酢酸を順に添加し、この混合液を75℃で昇温させて24h反応させ、TLCで反応(石油エーテル:酢酸エチル=20:3)を監視し、反応終了後、反応液に20mLの水を添加し、酢酸エチル(40×3mL)で抽出し、減圧して溶媒を取り除き、残渣に6mLのエタノールと5mLの水との混合溶媒を添加して加熱溶解し、冷却し結晶化し、ろ過して化合物21(3.13g、黄色固体、収率50.2%)を得た。
【0054】
(2)4-(3-(3-クロロ-4-シアノフェニル)-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソイミダゾリジン-1-イル)-2-フルオロ安息香酸メチルエステル22の合成
25mLの二口フラスコに化合物21(0.500g、2.1mmol)、3-クロロ-4-シアノアニリン(0.38g、2.5mmol)及び8mLのN,N-ジメチルアセトアミドを添加し、この混合液にチオホスゲン(0.25ml、3.89mmol)を滴下し、95℃まで昇温させて24h反応させ、室温まで冷却した後、2mLのメタノール、0.5mLの濃塩酸及び2mLの水を添加し、2h還流下で撹拌し、室温まで冷却した後、酢酸エチル(10×3mL)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧して溶媒を取り除き、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物22(0.257g、黄色固体、収率28.8%)を得た。
【0055】
(3)4-(3-(3-クロロ-4-シアノフェニル)-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソイミダゾリジン-1-イル)-2-フルオロ安息香酸23の合成
25mLの二口フラスコに化合物22(0.120g、0.28mmol)、1mLのメタノール及び1mLの1mol/L水酸化ナトリウム溶液を添加し、20℃で4h撹拌し、反応終了後、2mol/L希塩酸を添加してpHを4に調節し、酢酸エチル(10×3mL)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧して溶媒を取り除いて、化合物23(0.140g、淡黄色固体、収率98.2%)を得た。
【0056】
(4)4-(3-(3-クロロ-4-シアノフェニル)-5,5-ジメチル-4-オキソ-2-チオキソイミダゾリジン-1-イル)-2-フルオロ-N-ヒドロキシベンズアミド24の合成
25mLの二口フラスコに化合物23(0.120g、0.29mmol)、4mLのTHF及びCDI(0.093g、0.58mmol)を添加し、30℃で10h撹拌した後、塩酸ヒドロキシルアミン(0.060g、0.87mmol)を添加し、室温で10h反応させ、TLCで反応(酢酸エチル:石油エーテル:メタノール=20:5:2)を監視し、反応終了後、4mLの水を添加し、酢酸エチル(10×3mL)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧して溶媒を取り除き、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物A7(0.038g、淡黄色固体、収率30.5%)を得た。
M.W., 432.85; H NMR (500 MHz, CDOD): δ 7.97 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 7.82 (d, J=9.0 Hz 1H), 7.67 (s, 1H), 7.65 (dd, J = 1.5Hz, 1H), 7.37 (t, J=10.0Hz, 2H), 1.60 (s, 6H) ; 13C NMR (125 MHz, CDOD): δ 180.46, 175.10, 162.24, 160.76, 138.53, 136.14, 134.12, 130.77, 130.39, 128.13, 126.16, 122.47, 119.94, 118.30, 114.87, 113.02, 66.57, 22.32。
【0057】
(合成実施例4)
4-(7-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-8-オキソ-6-チオ-5,7-ジアザスピロ[3.4]オクタン-5-イル)-2-フルオロ-N-ヒドロキシベンズアミド(化合物Zeta 55)の合成
【0058】
(1)2-フルオロ-4-アミノ安息香酸メチルエステル2の合成
100mLの二口フラスコに2-フルオロ-4-アミノ安息香酸1(10.00g、64.5mmol)及び30mLのメタノールを添加し、氷浴下でこの溶液に6.7mLの塩化チオニル(92.0mmol)を滴下した後、還流まで昇温させ、3時間反応させ、反応液を室温まで冷却した後、20%炭酸ナトリウム溶液を添加して溶液のpHを8に調節し、酢酸エチル(30×3mL)で抽出し、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧して溶媒を取り除いて、化合物2(10.36g、褐色固体、収率95.5%)を得た。
【0059】
(2)4-((1-シアノシクロブチル)アミノ)-2-フルオロ安息香酸メチルエステル3の合成
250mLの二口フラスコに2-フルオロ-4-アミノ安息香酸メチルエステル2(3.70g、21.8mmol)、シクロブタノン(2.44g、34.8mmol)、シアン化カリウム(2.12g、32.6mmol)及び37mLの酢酸を添加し、80℃まで昇温させて12h反応させ、TLCで反応(石油エーテル:酢酸エチル=20:3)を監視し、反応終了後、反応液に20mLの水を添加し、酢酸エチル(30×3mL)で抽出し、減圧して溶媒を取り除いて、化合物3(5.01g、赤褐色固体、収率92.5%)を得た。
【0060】
(3)(7-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-8-オキソ-6-チオ-5,7-ジアザスピロ[3.4]オクタン-5-イル)-2-フルオロ安息香酸メチルエステル4の合成
25mLの二口フラスコに化合物3(0.485g、1.95mmol)、3-トリフルオロメチル-4-シアノアニリン(0.435g、2.34mmol)及び6mLのN,N-ジメチルアセトアミドを添加し、撹拌溶解後、チオホスゲン(0.25ml、2.96mmol)を滴下し、70℃まで昇温させて24h反応させ、室温まで冷却した後、2mLのメタノール、0.5mLの濃塩酸及び2mLの水を添加し、2h還流下で撹拌し、室温まで冷却した後、酢酸エチル(10×3mL)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧して溶媒を取り除き、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物5(0.281g、黄色固体、収率30.2%)を得た。
【0061】
(4)(7-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-8-オキソ-6-チオ-5,7-ジアザスピロ[3.4]オクタン-5-イル)-2-フルオロ安息香酸5の合成
25mLの二口フラスコに化合物4(0.30g、0.62mmol)及び2.5mLのメタノールを添加し、この混合物に2.5mLの1mol/L水酸化ナトリウム溶液を添加し、20℃で4h撹拌し、反応終了後、2mol/L希塩酸を添加してpHを4に調節し、酢酸エチル(20×3mL)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧して溶媒を取り除いて、化合物5(0.281g、淡黄色固体、収率98.2%)を得た。
【0062】
(5)4-(7-(4-シアノ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-8-オキソ-6-チオ-5,7-ジアザスピロ[3.4]オクタン-5-イル)-2-フルオロ-N-ヒドロキシベンズアミド6の合成
25mLの二口フラスコに化合物5(0.181g、0.4mmol)、CDI(0.130g、0.8mmol)及び10mLのTHFを順に添加し、30℃で10h撹拌した後、塩酸ヒドロキシルアミン(0.083g、1.2mmol)を添加して25℃で10h反応させ、TLCで反応(酢酸エチル:石油エーテル:メタノール=20:5:2)を監視し、反応終了後、5mLの水を添加し、酢酸エチル(10×3mL)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧して溶媒を取り除き、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物A5(0.579g、淡黄色固体、収率30.3%)を得た。
M.W., 478.42;H NMR (500 MHz, CDOD): δ 8.15 (d, J = 5.0 Hz, 2H), 7.98-7.96 (m, 1H), 7.88 (t, J = 5.0 Hz, 1H), 7.39 (t, J=5.0Hz, 2H), 2.71-2.66 (m, 2H), 2.59-2.53 (m, 2H), 2.15-2.09 (m, 1H),1.66-1.60 (m, 1H) 13C NMR (125 MHz, CDOD): δ 180.48, 175.00, 162.17, 158.90, 139.70, 137.98, 135.39, 133.42, 132.98, 131.01, 127.34, 126.70, 118.74, 118.54, 114.59, 109.28, 108.91, 67.74, 31.19。
【0063】
(合成実施例5)
4-(7-(6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-8-オキソ-6-チオ-5,7-ジアザスピロ[3.4]オクタン-5-イル)-2-フルオロ-N-ヒドロキシベンズアミド(Zeta 57)
【0064】
(1)4-(7-(6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-8-オキソ-6-チオ-5,7-ジアザスピロ[3.4]オクタン-5-イル)-2-フルオロ安息香酸メチルエステル10の合成
25mLの二口フラスコに化合物3(0.50g、2.0mmol)、3-トリフルオロメチル-4-シアノアニリン(0.448g、2.40mmol)及び6.5mLのN,N-ジメチルアセトアミドを添加し、この溶液にチオホスゲン(0.28ml、3.20mmol)を滴下し、70℃まで昇温させて24h反応させ、室温まで冷却した後、2mLのメタノール、0.5mLの濃塩酸及び2mLの水を添加し、2h還流下で撹拌し、室温まで冷却した後、酢酸エチル(10×3mL)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧して溶媒を取り除き、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物5(0.286g、淡黄色固体、収率29.9%)を得た。
【0065】
(2)4-(7-(6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-8-オキソ-6-チオ-5,7-ジアザスピロ[3.4]オクタン-5-イル)-2-フルオロ安息香酸11の合成
25mLの二口フラスコに化合物10(0.12g、0.25mmol)及び1mLのメタノールを添加し、この混合物に1mLのL1mol/L水酸化ナトリウムを添加し、20℃で一晩撹拌し、2mol/L希塩酸を添加してpHを4に調節し、酢酸エチル(10×3mL)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧して溶媒を取り除いて、化合物11(0.113g、淡黄色固体、収率97.1%)を得た。
【0066】
(3)4-(7-(6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)-8-オキソ-6-チオ-5,7-ジアザスピロ[3.4]オクタン-5-イル)-2-フルオロ-N-ヒドロキシベンズアミド12の合成
25mLの二口フラスコに化合物12(0.097g、0.21mmol)、2mLのTHF及びCDI(0.068g、0.42mmol)を添加し、30℃で10h撹拌した後、塩酸ヒドロキシルアミン(0.044g、0.62mmol)を添加し、25℃で10h反応させ、TLCで反応(酢酸エチル:石油エーテル:メタノール=20:5:2)を監視し、反応終了後、2mLの水を添加し、酢酸エチル(5×3mL)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧して溶媒を取り除き、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物A6(0.031g、淡黄色固体、収率31.2%)を得た。
M.W., 479,41;H NMR (500 MHz, CDOD): δ 8.93 (s, 1H), 8.42 (s, 1H), 7.88 (t, J = 7.0 Hz, 1H), 7.40(t, J = 10.5 Hz,2H), 2.69 (s, 2H), 2.56 (d, J = 10.0 Hz, 2H), 2.15-2.10 (d, 1H),1.63 (d, J = 9.5 Hz 1H); 13C NMR (125 MHz, CDOD): δ 180.74, 175.18, 162.16, 158.91, 151.26, 150.86, 149.36, 139.70, 135.74, 131.03, 126.67, 125.74, 122.37, 122.24, 118.70, 118.51, 67.86, 31.19, 13.14。
【0067】
以下、本発明に係る一部分の化合物の生体活性試験結果について説明する。
【0068】
使用試薬:
DHT(ジヒドロテストステロン)、米国Sigma社により提供され、
ARN509、発明者により合成され、
MDV3100、発明者により合成される。
【0069】
1、AR拮抗活性の検出
1.1 拮抗薬とARの結合実験
PolarScreenTM Androgen Receptor (AR) Competitor Assay、 Greenキット(米国life technologies社)を用いて、拮抗薬とAR-LBD(GST)との親和性を検出した。実験原理は、AR-LBDと小分子蛍光ケトントレーサー(Fluormone Tracer)が結合し、拮抗薬が添加された後にAR-LBDとの結合を蛍光ケトントレーサーと競合して、蛍光ケトントレーサーを置き換え、置き換えられた蛍光ケトントレーサーが蛍光偏光を発生し、蛍光偏光値が置き換えられたトレーサーの数に反比例する。
【0070】
具体的な過程は、以下のとおりである。薬物をDMSOで500μMに溶解した後、96ウェルプレートで2倍希釈濃度勾配で244nMに希釈し、384ウェルプレートで10μLの反応系AR-LBD+Tracerを調製して10μLの薬物を添加し、陽性対照として10μLのAR-LBD+Tracerに10μLのDHTを添加し、スズ箔紙で384ウェルプレートを包んで6時間暗所でインキュベートした後、多機能マイクロプレートリーダーから蛍光偏光値を読み取り、Graphpad Prismソフトウェアを用いて薬物濃度を横座標とし、蛍光偏光値を縦座標としてプロットした。図1は、薬物とAR-LBDが結合したIC50の結果を示す図である。DHT、MDV3100、ARN509は陽性対照である。
【0071】
図1から分かるように、合成された薬物は、いずれもARと異なる程度で結合することができ、Zeta 32、Zeta 33、Zeta 55の結合力が最も高く、それらのIC50はそれぞれ25.05、27.54、29.80μMである。
【0072】
1.2 ルシフェラーゼレポーター遺伝子の実験
96ウェルプレートで293T細胞を培養し、293T細胞中でARプラスミドとAR標的プロモーター付きルシフェラーゼ遺伝子をコトランスフェクトし、AR標的プロモーターを活性化することによりルシフェラーゼを発現し、ルシフェラーゼの発現量がAR活性に比例する。細胞中にDHTを添加すると、ARを活性化し、ルシフェラーゼを発現することができ、検出可能な蛍光シグナルが増強する。添加された薬物について、蛍光シグナルを検出することによりそれがAR拮抗薬活性を有するか否かを測定することができる。
【0073】
アンドロゲン受容体(AR)標的プロモーターを含有するルシフェラーゼレポーター遺伝子プラスミドMMTV-LUCとアンドロゲン受容体(AR)を発現するプラスミドpSV-ARを構築した。96ウェルプレートで293T細胞を1ウェルあたり1×10個接種し、一晩インキュベートして細胞を付着させ、2日目にLipofectamine(登録商標)3000(米国life technologies社)を用いてプラスミドをトランスフェクトして細胞に入り、1ウェルあたり180ngのMMTV-LUCプラスミドと20ngのpSV-ARプラスミドを添加した。3日目に1ウェルあたりそれぞれ10nMのDHTと1nM、10nM、100nM、1μM、10μM、25μM、50μMの異なる濃度の薬物とを添加し、対照として10nMのDHTを採用し、5日目にルシフェラーゼレポーター遺伝子検出キット(中国、碧云天公司)を用いて細胞を処理し、100μLの細胞溶解液を96ウェルプレートに添加し、20min溶解した後、4℃で10000gで3min遠心し、50μLの上清に100μLのルシフェラーゼ検出試薬を添加し、均一に混合した直後に多機能マイクロプレートリーダーで化学発光を検出した。Graphpad Prismソフトウェアを用いて、薬物濃度を横座標とし、薬物蛍光値/陽性対照蛍光値を縦座標としてプロットした。MDV3100は陽性対照である。
【0074】
図2から分かるように、合成された薬物は、ARにいずれも拮抗薬の役割を果たし、その拮抗能力は、高い方から順に、Zeta 32>Zeta 55>Zeta 34>Zeta 57>Zeta 33である。
【0075】
1.3 Western BlotによるAR及びPSA発現の検出
VCaP細胞を6ウェルプレートに播種し、1ウェルあたり5×10個の細胞を接種し、一晩インキュベートして細胞を付着させ、2日目に10μMの薬物を添加し、24hインキュベートした後に細胞を収集し、細胞を溶解して総タンパク質を抽出し、Western Blot方法を採用して、異なる薬物を添加した細胞中のPSAの発現量を検出し、結果を図3に示す。
【0076】
図3から分かるように、合成された薬物は、いずれもAR経路の下流タンパク質(PSA)の発現を顕著に阻害することができ、合成された薬物がARを阻害できる機能が示唆されている。
【0077】
2、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の阻害活性
6ウェルプレートでVCaP細胞を培養し、VCaP細胞に24h薬物投与処理を行った後、western blotを用いて細胞質中のtubulinと細胞核中のH3タンパク質のアセチル化レベルを検出した。実験過程は以下のとおりである。
【0078】
VCaP細胞を6ウェルプレートに播種し、1ウェルあたり5×10個の細胞を接種し、一晩インキュベートして細胞を付着させ、2日目に10μMの薬物を添加し、24hインキュベートした後に細胞を収集し、細胞を溶解して細胞の総タンパク質を抽出し、Western Blot方法を採用して、異なる薬物を添加した細胞中のKac-tubilin(位置決め細胞質)の発現量を検出した。図4は実験結果を示し、図中のKacはリジンのアセチル化を表す。
【0079】
VCaP細胞を6ウェルプレートに播種し、1ウェルあたり5×10個の細胞を接種し、一晩インキュベートして細胞を付着させ、2日目に10μMの薬物を添加し、24hインキュベートした後に細胞を収集し、EpiQuik Total Histone Extractin kit(米国、Epigentek)を採用してヒストンを抽出し、Western Blot方法を採用して、異なる薬物を添加した細胞中のKac-H3(位置決め細胞核)の発現量を検出した。図5は実験結果を示す。
【0080】
図4図5から分かるように、合成された薬物は、いずれも一定のヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害活性を有し、tubulinタンパク質及びヒストンのアセチル化を向上させることができる。細胞質中のtubulinアセチル化に対して、Zeta 32、Zeta 55は活性が高く(図4)、細胞核中のH3アセチル化に対して、Zeta 32、Zeta 55、Zeta 57及びZeta 34は活性が高い(図5)。
【0081】
3、細胞増殖阻害活性の検出
3.1 薬物によるVCaP細胞増殖阻害作用
96ウェルプレートでアンドロゲン感受性前立腺癌細胞VCaP細胞を培養し、10nMのDHTを添加した培地でVCaP細胞が増殖し、薬物を添加して4日間処理することにより薬物による前立腺癌細胞増殖作用を検出した。
【0082】
5%CSSとフェノールレッドフリーの1640培地でVCaP細胞を培養し、96ウェルプレートに接種し、1ウェルあたりに1×10個の細胞を添加し、一晩インキュベートして細胞を付着させ、2日目に異なる濃度の薬物を添加し、4日間薬物処理した後にMTS試薬キット(米国、Promega)を用いて細胞の活性を検出し、1ウェルあたりに10%のMTS試薬を添加し、2時間インキュベートした後、多機能マイクロプレートリーダーで490nMの吸光度値を検出した。Graphpad Prismソフトウェアを用いて、薬物濃度を横座標とし、薬物処理後の吸光度値/ブランク処理後の細胞吸光度値を縦座標としてプロットした。
【0083】
図6から分かるように、合成された薬物は、VCap細胞にいずれも増殖阻害作用を有し、阻害作用は、高い方から順に、Zeta 55>Zeta 32>Zeta 33>Zeta 34>Zeta 57である。薬物Zeta 55、Zeta 32及びZeta 33の細胞増殖阻害作用は、陽性対照薬物MDV3100よりも高い。
【0084】
3.2 薬物の細胞への選択性
293T細胞は、AR陰性ヒト胚腎細胞であり、DU145は、AR陰性前立腺癌細胞であり、VCaPは、AR陽性前立腺癌細胞である。96ウェルプレートでこの3種類の細胞を培養し、それぞれ薬物を添加して(濃度勾配を設定する)4日間処理した後に、薬物による細胞増殖阻害作用をMTS検出した。具体的な過程は、以下のとおりである。
【0085】
5%CSSとロフェノールレッドの1640培地でVCaP細胞を培養し、96ウェルプレートに接種し、1ウェルあたり1×10個の細胞を添加した。10%FBSと1640培地で293T細胞及びDU145細胞を培養し、96ウェルプレートに接種し、1ウェルあたり2×10個の細胞を添加した。一晩インキュベートして細胞を付着させ、2日目に異なる濃度の薬物を添加し、4日間薬物処理した後にMTS試薬キット(米国、Promega)を用いて細胞の活性を検出し、1ウェルあたりに10%体積のMTS試薬を添加し、2時間インキュベートした後、多機能マイクロプレートリーダーで490nMの吸光度値を検出した。Graphpad Prismソフトウェアを用いて、薬物濃度を横座標とし、薬物処理後の吸光度値/ブランク処理後の細胞吸光度値を縦座標としてプロットした。
【0086】
図7から分かるように、Zeta 55は、AR陽性細胞VCaP細胞に選択的な増殖阻害作用を有し、Zeta 55によるAR陽性細胞VCaPの増殖阻害作用は、AR陰性細胞(293T及びDU145)の増殖阻害作用の20倍以上であり、Zeta 55は、AR陰性細胞への毒性が低いことが示唆されている。
【0087】
以上より、実験効果が最も優れている薬物はZeta 55であり、Zeta 32がそれに続く。Zeta 55による細胞増殖阻害作用は、既に市販されているMDV3100及びSAHAよりも良好であり、AR陽性細胞に対する作用は、AR陰性細胞に対する作用よりもはるかに高く、該薬物はより良好な治療効果及びより低い副作用を有する可能性があることが示唆されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7