(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】再循環を用いたプシコースの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07H 3/02 20060101AFI20220928BHJP
C13B 30/12 20110101ALI20220928BHJP
C12P 19/24 20060101ALN20220928BHJP
C12N 9/90 20060101ALN20220928BHJP
【FI】
C07H3/02
C13B30/12
C12P19/24
C12N9/90
(21)【出願番号】P 2021025295
(22)【出願日】2021-02-19
(62)【分割の表示】P 2019550529の分割
【原出願日】2017-11-22
【審査請求日】2021-03-08
(31)【優先権主張番号】10-2016-0167050
(32)【優先日】2016-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500578515
【氏名又は名称】サムヤン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジウォン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソンウォン
(72)【発明者】
【氏名】パク,チョンジン
【審査官】小路 杏
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-354690(JP,A)
【文献】特開2011-206054(JP,A)
【文献】特表2016-523526(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0062349(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 3/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プシコース結晶の製造工程で得られるプシコース結晶化母液を、プシコース分離工程に投入してプシコースを得るプシコースの製造方法であって、
前記プシコース分離工程は、プシコース転換反応物の活性炭処理、イオン精製、および擬似移動層(simulated moving bed、SMB)クロマトグラフィー分離工程よりなる群から選択された1種以上の工程を含み、
前記プシコース結晶化母液は、イオン精製工程に投入された後、順次、イオン精製およびSMBクロマトグラフィー分離工程で処理されるか、または、活性炭処理工程に投入された後、順次、活性炭処理、イオン精製、およびSMBクロマトグラフィー分離工程で処理され、
前記プシコース結晶化母液は、プシコース分離工程処理前のプシコース含量が、固形分総含量100重量%を基準にして15重量%~50重量%になるようにプシコース分離工程に投入される製造方法。
【請求項2】
前記プシコース結晶化母液は、前記擬似移動層(simulated moving bed、SMB)クロマトグラフィー分離工程でプシコース分画を得て、得られたプシコース分画をイオン精製および濃縮してプシコース濃縮物を得て、得られた濃縮物からプシコース結晶を製造して得られる母液である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記プシコース結晶化母液は、プシコース転換反応物の活性炭処理、イオン精製、およびSMBクロマトグラフィー分離工程よりなる群から選択された1種以上の工程に投入して処理される請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記プシコース結晶化母液がイオン精製工程に投入される場合、前記イオン精製工程の前に、活性炭処理工程を行う請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記プシコース結晶化母液は、固形分総含量100重量%を基準にして、プシコース含量を80重量%以上含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記SMBクロマトグラフィー工程は、カルシウム活性基が付着された陽イオン交換樹脂充填カラムクロマトグラフで行われる請求項2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記プシコース分画内のプシコースの含量は、固形分総含量100重量%を基準にして85重量%以上である請求項2に記載の製造方法。
【請求項8】
前記プシコース結晶化母液は、
果糖含有原料をプシコースに転換するプシコース転換反応物を得て、
得られたプシコース転換反応物を、イオン精製および前記擬似移動層(simulated moving bed、SMB)クロマトグラフィー工程で処理してプシコース分画を得て、得られたプシコース分画をイオン精製および濃縮してプシコース濃縮物を得て、
得られた濃縮物からプシコース結晶を製造
して得られた母液である請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記プシコース結晶化母液は、
生物学的触媒を用いて果糖含有原料をプシコースに転換するプシコース転換反応物を得
て、
得られたプシコース転換反応物を活性炭処理、イオン精製およびSMBクロマトグラフィー分離工程で処理してプシコース分画を得て、
得られたプシコース分画をイオン精製および濃縮してプシコース濃縮物を得て、
得られた濃縮物からプシコース結晶を製造
して得られた母液である請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記果糖含有原料の果糖含量は、果糖含有原料の固形分総含量100重量%を基準にして85重量%以上である請求項8に記載の製造方法。
【請求項11】
前記プシコース転換反応のプシコース転換率が15%~70%である生物学的触媒を使用する請求項8に記載の製造方法。
【請求項12】
前記SMBクロマトグラフィー分離工程で果糖ラフィネートを得て、得られた果糖ラフィネートを、冷却、pH調節、イオン精製、および濃縮工程よりなる群から選択された1種以上の工程で処理して、プシコース転換反応の原料として再循環される工程をさらに含む請求項8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プシコース結晶化工程で得られるプシコース結晶化母液を再循環させてプシコースを製造する方法に関する。具体的には、プシコース製造工程のうち、プシコース結晶化工程で得られるプシコース結晶化母液をプシコース転換反応物の分離工程に投入して利用するプシコース製造方法、およびこれに使用するプシコースの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プシコース(Pscicose)は果糖(D-fructose)のエピマーであって希少糖として知られた機能性糖類の一種であり、砂糖の約60~70%の高い甘味度を示しながら熱量は殆どゼロカロリーに近くて、糖尿病の予防および改善に効能があることが知られている。また、プシコースは溶解性にも優れていることが知られており、食品への利用が注目されている素材の一つである。
【0003】
プシコースを製造する方法には化学的方法と生物学的方法がある。最近の生物学的方法でプシコースを製造する方法では、果糖含有基質溶液とプシコースエピマー化酵素または前記酵素を生産する菌体と接触してプシコース転換反応を行う。しかし、D-プシコースを含む反応液は低純度製品であるため、高純度にプシコースを分離することが要求される。
【0004】
実際、産業的に生産される素材を高純度に分離するために様々な方法が適用されており、糖の場合、主にクロマトグラフィーを使用して高純度液を得た後、結晶化して製品を生産している。
【0005】
前記プシコース転換反応液から高純度プシコース製品を得るためには高純度分離工程を行い、またプシコース結晶を得るためには高純度プシコースシロップを用いてプシコース結晶化工程を行うことができる。
【0006】
果糖から生産されるプシコースの酵素反応転換率は20~30%(w/w)であるため、プシコースの生産物量に比べて発生する母液量が多いという工程の流れを示す。その結果、多量の母液の発生は、プシコース生産量の低下をもたらし、製造原価が上昇して産業的生産に非経済的な問題を招く。
【0007】
このようにプシコース結晶化工程で得られるプシコース結晶化母液には高濃度のプシコースを含むので、プシコース結晶化母液を再利用してプシコースの生産収率を向上させる方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一実施形態は、プシコース製造工程で得られるプシコース結晶化母液を利用して目的産物であるプシコースの収率を向上させ原料の利用率を高めるために、プシコース製造工程で得られるプシコース結晶化母液をプシコース分離工程に再循環させてプシコースを製造する方法、およびこれに用いる装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、プシコース結晶の製造工程で得られるプシコース結晶化母液をプシコース分離工程に再循環させてプシコースを製造する方法、およびこれに使用する装置に関する。
【0010】
プシコースの結晶化工程で得られるプシコース結晶化母液にはプシコースが高濃度で含まれているので、前記プシコース結晶化母液を再利用すれば、プシコースの純度および収率が向上して原料の利用率が高められる。
【0011】
本発明の一実施形態は、プシコース結晶の製造工程で得られるプシコース結晶化母液を、プシコース分離工程に投入してプシコースの製造に使用する、プシコースの製造方法に関する。
【0012】
前記プシコース結晶化母液は、前記SMBクロマトグラフィー分離工程によりプシコース分画を得て、得られたプシコース分画をイオン精製および濃縮してプシコース濃縮物を得て、得られた濃縮物からプシコース結晶を製造してもよい。
【0013】
前記プシコース分離工程は、プシコース転換反応物の活性炭処理、イオン精製、および擬似移動層(simulated moving bed、SMB)クロマトグラフィー分離工程よりなる群から選択される1種以上の工程を含み、プシコース結晶化母液を前記分離工程に投入して再循環させることができる。
【0014】
本発明によるプシコース結晶化母液はプシコース転換反応物に比べてプシコース含量が高いので、これを分離工程に投入した擬似移動層クロマトグラフィー分離工程では分離収率が増加して、高純度プシコースの生産量が増加するという長所があり、プシコース結晶化母液を再利用して原料の利用率を高めることができる。
【0015】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0016】
本発明の一実施形態は、プシコース結晶の製造工程で得られるプシコース結晶化母液を、プシコース分離工程に投入してプシコースの製造に使用するプシコースの製造方法に関する。
【0017】
前記プシコース結晶化母液とは、プシコース溶液を用いてプシコース結晶を製造して残った溶液を意味し、前記プシコース結晶を洗浄して得られる洗浄水をさらに含んでもよい。例えば、プシコース溶液を結晶化してプシコース結晶を製造し、遠心分離などの固液分離方法で結晶を除去した後、残りの溶液から製造することができる。具体的な一例において、前記プシコース結晶化母液は、プシコースの製造方法において擬似移動層(SMB)クロマトグラフィー分離工程でプシコース分画を得て、得られたプシコース分画をイオン精製および濃縮してプシコース濃縮物を得て、得られた濃縮物からプシコース結晶を製造してもよい。
【0018】
前記プシコース結晶製造の一実施形態では、第1次イオン精製、高純度クロマトグラフィー分離、第2次イオン精製、濃縮、および結晶化の各工程を含むことができ、選択的に、プシコース転換反応物を活性炭処理工程、イオン精製工程、または活性炭処理工程とイオン精製工程を全て行うことができる。
【0019】
プシコースの製造方法においてプシコース転換反応液から高純度プシコース製品を得るために高純度分離工程を行い、またプシコース結晶を得るために高純度のプシコースシロップを用いてプシコース結晶化工程を行うことができる。果糖から生産されるプシコースの酵素反応転換率は15~30%(w/w)であるため、プシコースの生産物量に比べて生成する母液量が多いという工程の流れを示す。したがって、プシコース結晶化工程において多量に得られるプシコース結晶化母液は高濃度のプシコースを含むので、再循環させてプシコースの生産収率を向上させることができる。
【0020】
前記プシコース結晶化母液は、固形分総含量100重量%を基準にして80重量%以上のプシコースを含むことができ、例えば80~99重量%、好ましくは85~96重量%プシコースを含むことができる。
【0021】
本発明によるプシコースの製造方法は、プシコース結晶化工程で得られたプシコース結晶化母液を、前記転換反応物を第1次イオン精製および擬似移動層(simulated
moving bed、SMB)クロマトグラフィーを用いて分離してプシコース分画と果糖ラフィネートを得るプシコース分離工程に投入する工程を含む。前記プシコース分離工程は、別途、単独工程として構成してもよいし、プシコース製造工程を構成する一つの工程として含まれてもよい。
【0022】
例えば、プシコース結晶化母液を投入するプシコース分離工程がプシコース製造工程に含まれている場合、本発明のプシコース製造方法は、(1)プシコース転換反応物を製造するプシコース転換工程;(2)前記転換反応物を、第1次イオン精製および擬似移動層(simulated moving bed、SMB)クロマトグラフィーによる分離を行ってプシコース分画と果糖ラフィネートを得るプシコース分離工程;(3)前記プシコース分画をイオン精製および濃縮して濃縮物を得る工程;(4)前記プシコース濃縮水を用いてプシコース結晶とプシコース結晶化母液を得る工程;および(5)前記プシコース結晶化母液を前記工程(2)のプシコース分離工程に投入して再循環させる工程を含んでもよい。
【0023】
本発明のプシコース製造工程は,連続式および配置式の両方を使用可能であり、好ましくは連続式工程である。
【0024】
前記SMBクロマトグラフィー分離工程で果糖ラフィネートを得て、前記果糖ラフィネートを冷却、pH調節、イオン精製、および濃縮の各工程よりなる群から選択された1種以上の工程で処理して、プシコース転換反応の原料として再循環させる工程をさらに含んでもよい。
【0025】
本発明の一実施形態において、本発明によるプシコースの製造方法は、プシコース結晶化工程で得られたプシコース結晶化母液を、前記転換反応物を第1次イオン精製および擬似移動層(simulated moving bed、SMB)クロマトグラフィーによる分離を行ってプシコース分画と果糖ラフィネートを得るプシコース分離工程に投入する工程を含む。前記プシコース分離工程は、別途、単独工程として構成してもよいし、プシコース製造工程を構成する一つの工程に含まれてもよい。
【0026】
前記プシコース分離工程が別の単独工程として構成されている場合には、下記(2)プシコース転換反応物の分離工程のみを含んでもよく、それ以降、(3)プシコースイオン精製および濃縮工程をさらに含んでプシコースを製造することができる。または、プシコース分離工程は下記(2)および(3)工程を全て含んでもよく、これによりプシコース結晶を製造することもできる。
【0027】
前記プシコース分離工程がプシコースの製造工程を構成する一つの工程として含まれている場合、下記(1)~(3)の工程を経てプシコースを製造することができる。または、(1)~(4)の工程を経てプシコース結晶を製造することもできる。
【0028】
以下、本発明によってプシコース結晶製造で得られる高濃度のプシコースを含有するプシコース結晶化母液をプシコース分離工程に再循環させるプシコース製造工程を、各工程別に詳しく説明する。
【0029】
(1)プシコース転換工程
プシコース転換工程は、プシコース転換反応を行って果糖含有原料からプシコースを転換する工程であって、工程の生産物として果糖から転換されたプシコースを含有する反応液を得る。
【0030】
本発明の一具体例において、生物学的方法によってプシコースを製造する方法としては、プシコースエピマー化酵素を生産する菌株、またはプシコースエピマー化酵素を暗号化する遺伝子が導入された組換え菌株を培養し、これから得られたプシコースエピマー化酵素を果糖含有原料と反応させて生産することができる。前記プシコースエピマー化酵素は、液相反応または固定化酵素を用いた固相反応で生産することができる。
【0031】
或は、プシコースエピマー化酵素を生産する菌株またはプシコースエピマー化酵素を暗号化する遺伝子が導入された組換え菌株を得て、菌株の菌体、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、および前記破砕物または培養物の抽出物よりなる群から選択された1種以上を含むプシコース生産用組成物を果糖含有原料と反応させて製造することができる。プシコースエピマー化酵素を生産する菌株の菌体を用いてプシコースを製造する場合、液相反応または固定化菌体を用いた固相反応により製造することができる。
【0032】
本発明の一具体例において、プシコースエピマー化酵素を生産する菌株は、高い安定性を有しながらも高収率で果糖からプシコースを転換することができるか、プシコースエピマー化酵素を生産することができる菌株であってもよく、前記菌株は自然から分離した菌株またはその突然変異菌株であるnon-GMO菌株、またはプシコースエピマー化酵素を暗号化する遺伝子を宿主細胞に導入した組換え菌株であってもよい。本発明の一実施形態では、前記non-GMO菌株として知られている様々な菌株を使用することができる。前記組換え菌株は様々な宿主細胞、例えば大腸菌、バシラス属菌株、サルモネラ属菌株、およびコリネバクテリウム属菌株などを使用することができるが、好ましくはGRAS菌株であるコリネバクテリウム属菌株であってもよく、コリネバクテリウムグルタミクムであってもよい。
【0033】
本発明の一実施形態によるプシコース転換工程は生物学的方法で行い、例えば固相反応の場合、前記プシコースエピマー化酵素または菌体を担体に固定化させる工程は、固定化された酵素をカラムに充填させる工程、および前記充填されたカラムに果糖溶液を供給する工程をさらに含んでもよい。酵素や菌体が固定化された担体を充填させるカラムおよび前記カラムに充填させる方法は、本発明に属する技術分野の当業者が使用可能な酵素や菌体、または固定化担体に適するものを容易に選択して行うことができる。本発明の一具体例において、前記固定化された酵素または菌体をカラムに充填させて充填床カラム(packed-bed column)を製造することができる。充填床カラムに基質である果糖溶液を供給することによって酵素反応、即ち、果糖のプシコースへの転換が行われ得る。
【0034】
前記プシコースの転換反応において、前記反応はpH4.5~7.5、例えば、pH4.7~7.0、またはpH5.0~6.0、またはpH5.0~5.5の条件下で行ってもよい。また、前記反応は30℃以上、例えば40℃以上の温度条件下で行ってもよい。前記果糖をプシコースに転換させる酵素(例えば、プシコースエピマー化酵素)は金属イオンによって活性化を調節できるので、前記プシコースの生産において、金属イオンを添加すると果糖からプシコースへの転換効率、即ち、プシコース生産率が向上する。したがって、前記プシコース生産用組成物は、銅イオン、マンガンイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、鉄イオン、アルミニウムイオンなどよりなる群から選択された1種以上の金属イオンをさらに含むものであってもよい。
【0035】
プシコースおよびその製造方法に関する詳しい技術内容は、韓国公開特許第2014-0021974号、韓国公開特許第2014-0054997号、韓国公開特許第2014-0080282号、または韓国登録特許第10-1318422号に記載されている。
【0036】
本発明によるプシコース転換工程に投入される果糖原料は生物学的方法または化学的方法により製造することができ、好ましくは生物学的方法である。前記果糖原料は果糖シロップのような液状原料、または果糖粉末のような粉末原料として提供してもよく、前記果糖シロップの場合、生物学的方法または化学的製造工程で得られた生産物であるか、果糖粉末を水のような溶媒に溶解して製造されたものであってもよい。
【0037】
前記果糖原料を生物学的方法で製造するための一実施形態によれば、ブドウ糖含有原料を果糖異性化酵素または前記酵素を生産する菌体を用いて異性化する果糖異性化工程を行い、前記果糖異性化工程の反応物を第1次イオン精製、高純度クロマトグラフィー分離工程、第2次イオン精製、および濃縮する工程を通じて分離して得ることができる。
【0038】
前記プシコースの生産方法において、効率的なプシコース生産のために、基質として使用される果糖の濃度は、全反応物を基準にして、85w/v%以上、90w/v%以上、または95w/v%以上であってもよく、例えば85~99w/v%、88~99w/v%、88~99w/v%、85~87%(w/v)、88~90%(w/v)、91~93%(w/v)、94~99%(w/v)または97~99%(w/v)であってもよい。果糖の濃度は工程の経済性および果糖の溶解性を考慮して決定することができ、前記果糖は緩衝溶液または水(例えば、蒸留水)に溶解した溶液状態で使用してもよい。
【0039】
本発明の一実施形態による果糖製造工程を具体的に説明すると、果糖は砂糖またはブドウ糖から得ることができる。これによって、ブドウ糖、果糖、砂糖のように普遍化された低廉な原料を使用して高収率のプシコースを製造する方法を提供できるため、プシコースの大量生産が可能になる。
【0040】
本発明の果糖製造工程の一実施形態を説明すると、とうもろこしデンプンを30~35重量%になるように水と混合した後、酵素加水分解を行ってブドウ糖含量88重量%以上の糖化液を得る。その後、前記糖化液の不純物を除去する工程と果糖異性化工程を経て、果糖含量40~44重量%の果糖シロップを得る。その後、擬似移動層吸着分離方法(simulated moving bed、SMB)を用いてブドウ糖ラフィネートと果糖分画を得て、前記果糖分画に第2次イオン精製工程および濃縮工程を行って、果糖含量が85重量%以上、例えば85~99重量%の果糖含有溶液を得る。擬似移動層吸着分離方法は、下記(2)の項目で詳述したとおりである。前記不純物を除去する工程は、ろ過による不溶性物質の除去工程、および活性炭処理工程、有色成分とイオン成分などの不純物を除去するためにイオン交換樹脂が充填されたカラムに通液させて行うことができる。前記活性炭処理工程は、活性炭が充填されたカラムに流すか、活性炭を反応槽に入れて反応させて行うことができる。
【0041】
果糖分離工程の具体的な例は、第1次イオン精製工程、高純度クロマトグラフィー分離工程、第2次イオン精製工程、濃縮工程、および結晶化工程を含んでもよく、選択的に行なわれる果糖異性化反応物の不純物を除去する工程では、脱塩工程、脱色工程、または脱色工程と脱塩工程を行ってもよい。
【0042】
本発明の果糖製造工程に含まれる濃縮工程は、様々な方法で濃縮して果糖含量を85重量%以上で含むようにする。例えば、擬似移動層吸着分離方法で得られた果糖分画(例え
ば、固形分濃度20~30%)は、濃縮工程を通じて固形分濃度45~55%に濃縮することができる。
【0043】
(2)プシコース転換反応物の分離工程
本発明によるプシコースの製造工程は、前記プシコース転換反応物をイオン精製および擬似移動層(SMB)クロマトグラフィー分離工程に付すプシコース転換反応物の分離工程を行うことができる。具体的な一例では、前記プシコース転換反応物にイオン精製およびSMBクロマトグラフィー分離工程を行って、転換反応物よりプシコース含量の高いプシコース分画と果糖ラフィネートに分離し、前記プシコース分画をプシコース濃縮工程または結晶化工程に投入する。
【0044】
前記プシコース分画内のプシコースの含量は、85重量%以上、90重量%以上、91重量%以上、92重量%以上、93重量%以上、94重量%以上、または95重量%以上、例えば90~99重量%、95~98重量%、または95重量%~99.9%(w/w)になるように分離/精製することを含むことができる。前記高純度分離工程で得られる果糖ラフィネート内の果糖含量は、85重量%以上、例えば85重量%~98重量%であってもよく、プシコース含量は2重量%以下であることが好ましい。果糖ラフィネート中、果糖とブドウ糖を除いた他の二糖類以上の糖類の含量は、全糖類の総固形分含量を基準にして10重量%未満が好ましい。前記不純物中の二糖類以上の糖類は、マルトース、イソマルトースなどを含み、マルトースまたはイソマルトース関連オリゴサッカリドを含むことができる。
【0045】
前記プシコース製造工程において、イオン精製工程は反応物内に含まれているイオンを除去する工程であって、SMBクロマトグラフィー分離工程の前および/またはその後に行うことができる。前記SMBクロマトグラフィー分離を行う前にイオン精製工程を行う第1次イオン精製は、下記プシコース分画の第2次イオン精製と同一または異なる方法で行うことができ、例えば同一種類または異なる種類のイオン交換樹脂を充填した分離塔を1つまたは2以上使用して行うことができる。前記イオン精製工程は、イオン精製に使用する樹脂の物性およびイオン精製効率を考慮して、35~50℃の温度、例えば38~58℃で行うことができる。
【0046】
前記SMBクロマトグラフィー分離工程は、45~70℃の温度、例えば50~65℃で行うことができる。
【0047】
本発明の一実施形態において、前記プシコース転換反応物の第1次イオン精製工程を行う前に、選択的に、プシコース転換反応物を活性炭で処理する工程をさらに行うこともできる。また、選択的に、第1次イオン精製工程を行った後でSMBクロマトグラフィー分離工程を行う前に、濃縮工程を行って固形分含量45~55%に濃縮する工程をさらに行うことができる。したがって、本発明によるプシコース転換反応物の分離工程は、プシコース転換反応物を1次イオン精製工程およびSMBクロマトグラフィー分離工程、またはプシコース転換反応物を活性炭処理、1次イオン精製工程およびSMBクロマトグラフィー分離工程を含むことができ、前記1次イオン精製工程の後、SMBクロマトグラフィー分離工程を行う前に、選択的に、濃縮工程をさらに行うことができる。
【0048】
前記SMBクロマトグラフィー分離工程は、分離過程で相変化がないため、物質の安定性確保に容易な分離方法である。このような吸着分離方法のうち液状吸着分離方法としては、クロマトグラフィー分離方法が多く使用されている。このうち、擬似移動層吸着分離方法(simulated moving bed、SMB)は、1961年米国特許第2,985,589号で提案された分離技術であって、多数のカラムを用いて連続的に分離することによって既存の回分式クロマトグラフィーに比べて純度および生産性に優れ、
溶媒の使用を少なくできるという長所を有する。前記擬似移動層(SMB)吸着分離工程は、分離対象混合物の注入とラフィネートおよび抽出物の生産を連続的に行う工程である。
【0049】
SMBの基本原理は、カラムの間の位置を一定時間の間隔で動かすことによって固定床と移動床の向流の流れを模写して連続的な分離を可能にすることである。吸着剤との親和力が弱くて速く動く物質は、液状の流れ方向に動いて抽出物(extract)に集まり、吸着剤との親和力が強くて遅く動く物質は固定床の流れ方向に動いてラフィネート(raffinate)に集まる。カラムは連続的に連結されており、入口は混合物と移動床、出口は目的抽出物(extract)とラフィネートから構成される。
【0050】
本明細書で、用語「ラフィネート(raffinate)」とは抽残液とも呼ばれ、分離工程に投入した原料が分離工程を通過して得られる生産物には分離工程で含量を高めようとする目的物質を含む目的分画と、分離工程で除去または含量を減少しようとする物質などを含む残留液を含み、前記残留液をラフィネートという。本発明の一実施形態において、プシコース転換工程で得られる生産物は原料基質である果糖と生産物であるプシコースを含む混合物であり、高純度分離工程を経るにつれて目的物質であるプシコースの含量が増加したプシコース分画と残留液を得て、残留液にはプシコース転換反応の基質である果糖が多量に含まれるので過剰の果糖ラフィネートを意味することができる。
【0051】
前記SMBでは、分離樹脂として単糖分離工程にも広く使用されている塩を添加した強酸の陽イオン交換樹脂を使用するので、分離工程を行った後に得られる生産物には金属イオンが含まれる。前記強酸の陽イオン交換樹脂は、例えばカルシウム活性基が付着された陽イオン交換樹脂であってもよい。
【0052】
図1に、一般的な擬似移動層(SMB)吸着分離装置の工程図を示す。一般的な擬似移動層(SMB)吸着分離装置は、一つまたはそれ以上のカラムから構成された4個の区間と各区間の間に位置した脱着剤(desorbent)流入ポート、強吸着質である抽出物(extract)排出ポート、分離対象混合物(feed)流入ポート、および弱吸着質であるラフィネート(raffinate)排出ポートから構成される。擬似移動層(SMB)吸着分離装置を使用した混合物の分離方法は、芳香族炭化水素の混合物の分離工程、エチルベンゼンの分離工程、キラル化合物の分離工程などに適用でき、医薬品製造過程の中の最終産物、或いは中間物質であるラセミ混合医薬品の分離工程などに適用できる。
【0053】
(3)プシコースイオンの精製および濃縮工程
本発明のプシコース製造工程において、SMBクロマトグラフィーを用いた高純度分離工程で得られたプシコース分画は、プシコース濃縮工程を経て液状シロップとして製品化するか、プシコース結晶化工程を経てプシコース結晶として製品化することができる。前記工程(2)のSMBクロマトグラフィー分離工程で得られたプシコース分画をイオン精製し、濃縮して得られた濃縮物を製造する工程である。前記濃縮物は、プシコースシロップ製品として使用するか、結晶化工程に投入してプシコース結晶として製造することができる。
【0054】
本発明の一実施形態では、前記SMBクロマトグラフィーを用いた高純度分離工程で得られたプシコース分画を、第2次イオン精製工程に付すことができ、前記分離工程で行った第1次イオン精製と同一または異なる方法で行うことができる。
【0055】
プシコース結晶を得るためのプシコース溶液中のプシコースの含量は、過飽和状態で高い濃度で含まれなければならないが、プシコース転換反応物のプシコースの含量は低いた
め、直接結晶化を行うことができず、結晶化工程の前にプシコースを含量を増加させるために精製し、所望の水準まで濃縮する工程を行わなければならない。
【0056】
本発明の一具体例において、前記精製したプシコース溶液を濃縮させる工程は55~75℃で行ってもよい。濃縮液の温度が75℃より高くなるとD-プシコースの熱変性が生じる場合があり、55℃より低くなると所望の水準の濃縮を達成し難い。濃縮が進むにつれて、蒸発熱によって反応物の温度が急激に高くなるため、濃縮液の温度を75以下に維持しながら、速かに濃縮しなければならない。
【0057】
本発明の一具体例において、プシコースの熱変性および所望の水準の濃縮を達成するために、55~75℃の温度、好ましくは60~70℃の範囲で濃縮することができる。前記濃縮工程は、所望の濃縮水準を達成するまで、1回または2回以上繰り返して行ってもよい。
【0058】
具体的には、前記SMBクロマトグラフィー分離工程で得られたプシコース分画の濃縮工程は様々な方法で行うことができ、濃縮物の固形分含量が70ブリックス以上になるように濃縮することができる。例えば、擬似移動層吸着分離方法で得られたプシコース分画(例えば、固形分含量20~30重量%)は、濃縮工程を通じて固形分含量70ブリックス以上に濃縮することができる。前記プシコース濃縮物の固形分含量は70ブリックス以上、例えば70ブリックス~85ブリックスであってもよい。
【0059】
前記プシコース製造工程で濃縮する工程は、55~75℃の温度で10~15分間濃縮することを含むことができる。前記濃縮は、連続真空濃縮装置(Falling Film Evaporator)または薄膜真空濃縮器(Thin Film Evaporator)を用いて減圧または真空条件下で濃縮することができる。
【0060】
前記プシコース濃縮物に含まれているプシコース含量は、前記SMBクロマトグラフィー分離工程で得られたプシコース分画のプシコース含量と殆ど変わらず、固形分含量が増加した後、結晶化工程を行うことができる。前記プシコース濃縮物に含まれているプシコース含量は、固形分総含量100重量%を基準にして、94重量%以上、95重量%以上、96重量%以上、97重量%以上、98重量%以上、または99重量%以上であってもよい。
【0061】
(4)プシコース濃縮物の結晶化
本発明の一具体例において、プシコース結晶を製造する方法は、SMBクロマトグラフィー分離工程で得られたプシコース分画を第2次イオン精製する工程、前記イオン精製されたプシコース分画を濃縮する工程、前記濃縮物からプシコースを結晶化してプシコース結晶とプシコース結晶化母液を得る工程を含み、選択的に、プシコース結晶の回収工程、洗浄工程、および乾燥工程をさらに含むことができる。
【0062】
前記プシコース結晶製造の具体的な例は、第1次イオン精製、SMBクロマトグラフィー分離、第2次イオン精製、濃縮、および結晶化の各工程を含むことができ、選択的に、プシコース転換反応物を活性炭処理工程、イオン精製工程、または活性炭処理工程とイオン精製工程を全て行うことができる。
【0063】
本発明によるプシコース結晶を製造する方法はプシコース濃縮物溶液の温度および濃度を調節して結晶化することができ、具体的に結晶化のために要求される過飽和状態は、プシコース溶液の温度を低くするか、またはD-プシコース溶液中のD-プシコースの濃度を変化させることによって維持できる。本発明の一具体例において、前記結晶化工程で一定の間隔で試料を採取して肉眼や顕微鏡で観察するか、または試料を遠心分離して得られ
た上澄液中の糖濃度を分析することによって結晶化経過をモニタリングし、その結果に応じて温度またはD-プシコースの濃度を調節することができる。プシコース結晶を製造するために、プシコース濃縮溶液を冷却して結晶化する場合、熱交換器を通じて10~25℃温度範囲まで急速に冷却した後、昇温と冷却を繰り返し行って結晶の成長を誘導することができる。
【0064】
本発明によるプシコース結晶を製造する方法は、前記結晶化工程で得られたプシコース結晶を様々な固液分離方法、例えば遠心分離で回収する工程、脱イオン水で洗浄する工程、および乾燥する工程をさらに含むことができる。前記乾燥工程は流動層乾燥器または真空乾燥器で行うことができるが、これに制限されない。前記プシコース結晶に含まれているプシコースは、固形分総含量100重量%を基準にして、94重量%以上、95重量%以上、96重量%以上、97重量%以上、98重量%以上、または99重量%以上であってもよい。
【0065】
本発明によるプシコース結晶化母液は結晶化工程でプシコース結晶を除去した後に得られる濾液であってもよく、また結晶洗浄工程で得られる洗浄水をさらに含んでもよい。前記プシコース結晶化母液は、固形分総含量100重量%を基準にしてプシコース含量が80重量%以上、例えば80重量%~99重量%、または85重量%~96重量%であってもよく、固形分含量は70ブリックス未満、例えば60ブリックス以上~70ブリックス未満であってもよい。
【0066】
(5)プシコース結晶化母液の再循環工程
前記結晶化工程で得られたプシコース結晶化母液は、プシコース転換反応物の分離工程に投入されて再利用できる。具体的には、プシコース結晶化母液は、プシコース転換反応物の活性炭処理、イオン精製、および擬似移動層(simulated moving bed、SMB)クロマトグラフィー分離の各工程よりなる群から選択された1種以上の分離工程に投入されてプシコース製造に再循環され得る。前記分離工程の具体例として、プシコース転換反応物に1次イオン精製工程およびSMBクロマトグラフィー分離工程を行うか、またはプシコース転換反応物に活性炭処理、1次イオン精製工程、およびSMBクロマトグラフィー分離工程を行うことができ、前記分離工程でSMBクロマトグラフィー分離工程を行う前に、選択的に、濃縮工程をさらに行うことができる。前記分離工程は、(2)プシコース転換反応物の分離工程の項目で詳述したとおりである。
【0067】
一実施形態において、プシコース結晶化母液を前記1次イオン精製工程に投入してプシコース転換反応物と共にイオン精製工程を行う場合、順次、イオン精製およびSMBクロマトグラフィー分離工程で処理するか、または順次、活性炭処理工程、イオン精製工程、およびSMBクロマトグラフィー分離工程で処理してもよい。また選択的に、SMBクロマトグラフィー分離工程の前に濃縮固定をさらに行うことができる。
【0068】
前記プシコース結晶化母液を1次イオン精製工程または活性炭処理工程に投入する場合、プシコース転換反応物または活性炭処理工程を行った生産物と混合するプシコース結晶化母液は、該当分離工程の処理前投入液の固形分総含量100重量%を基準にして、プシコース含量が15重量%~50重量%、好ましくは20~45重量%になるようにプシコース分離工程に投入してもよい。
【0069】
前記プシコース結晶化母液は、プシコース製造工程への再循環のために、選択的に精製工程を行うことが好ましいが、母液自体にはプシコースが高純度で含まれており、精製工程によって含量が減少する恐れがあるため、別途の精製工程を行なうことなくプシコース製造工程に投入することができる。したがって工程上の安定性を確保するためには、プシコース転換反応物は比較的プシコース含量が低いため、プシコース結晶化母液と混合して
精製工程を行うことが好ましい。したがって、前記プシコース結晶化母液は、1次イオン精製工程処理の前に投入することが好ましい。
【発明の効果】
【0070】
本発明によれば、プシコース製造の分離工程で得られるプシコース結晶化母液をプシコース分離工程に再循環させてプシコースを製造する方法およびこれに使用する装置は、プシコースの結晶化工程で得られるプシコース結晶化母液にプシコースが高濃度で含まれているので、前記プシコース結晶化母液を再利用してプシコース純度および収率を向上させて、原料の利用率を高める方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】
図1は、一般的なSMB工程の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下、本発明を下記の実施例によってさらに詳しく説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲はこれら実施例によって限定されない。
【実施例】
【0073】
製造例1:プシコースシロップの製造
韓国公開特許第2014-0054997号に記載の製造方法と実質的に同一の生物学的方法により、果糖基質からプシコースシロップを製造した。
【0074】
具体的には、クロストリジウムシンデンス(Clostridiuim scindens ATCC 35704)由来のプシコースエピマー化酵素の暗号化遺伝子(DPE
gene;Gene bank:EDS06411.1)を組換えベクター(pCES_sodCDPE)に導入して、製造した組換えベクター(pCES_sodCDPE)プラスミドを、電気穿孔法(electroporation)を使用してコリネバクテリウムグルタミクムに形質転換させた。形質転換したコリネバクテリウムグルタミクム細胞を含むビードを製造して、固定化反応カラムに充填し、40ブリックスの88重量%果糖または95重量%果糖からプシコースシロップを製造した。即ち、88重量%果糖含有基質からブドウ糖:果糖:プシコース:オリゴ糖=41:39:15:5の21~23(w/w)%プシコースシロップを得て(プシコースシロップA)、果糖含量95重量%を含む原料からブドウ糖:果糖:プシコース:オリゴ糖=6:67:25:2の24~26(w/w)%プシコースシロップを得た(プシコースシロップB)。
【0075】
製造例2:プシコース結晶化母液の製造
上記製造例1で得られた2種類のプシコースシロップについて、有色およびイオン成分などの不純物を除去するために、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、および陽イオンと陰イオン交換樹脂が混合された樹脂で充填した常温のカラムに、1時間当りイオン交換樹脂2倍(1~2倍)体積の速度で通液させて脱塩させた後、カルシウム(Ca2+)型イオン交換樹脂で充填したクロマトグラフィーを用いて高純度のプシコース溶液として分離収得した。88重量%果糖含量の原料を用いて得られたプシコースシロップ(プシコースシロップA)から得られたプシコース分画は、プシコース含量95~98重量%と、果糖ラフィネートは果糖85~95重量%、ブドウ糖1~10重量%および還元糖1~5重量%を含んでいた。95重量%果糖含量の原料を用いて得られたプシコースシロップ(プシコースシロップB)から得られたプシコース分画は95~98重量%であり、果糖ラフィネートは果糖88~97重量%、ブドウ糖1~8重量%および還元糖1~4重量%を含ん
でいた。
【0076】
前記プシコース分画を82Bx(%、w/w)(80-83Bx)濃度に濃縮させ、過飽和状態になる温度35℃(35-40℃)で徐々に温度10℃(10-15℃)まで冷却させて結晶を生成させた。この時、プシコース種晶(SEED)を添加せず、前記結晶化工程で得られたプシコース結晶は、遠心脱水によってプシコース結晶化母液と結晶を得た。前記プシコース結晶を冷却水で洗浄した後、乾燥して回収した。前記プシコース結晶化母液はプシコース含量88~92重量%を含んでいた。このようにして得られたプシコース結晶粉末の平均粒度は237μmであり、粒径範囲は74~428μmに分布しており、結晶構造斜方晶系で長い直六面体形状を有していた。
【0077】
実施例1:プシコース結晶化母液の再循環を用いたプシコースの生産
上記製造例1で得られた果糖含量88重量%の果糖含有原料溶液を用いてプシコース含量95重量%の固形分10トンを生産するために、流量3.8m3/hrでプシコース転
換工程と分離工程を行った。プシコース転換工程を経て得られた反応物のプシコース含量は20~24重量%であり、イオン精製の後、45~50重量%の濃度で分離工程を通過させた。Ca類型分離樹脂を用いて分離して得られたプシコース分画のプシコース含量は95~98重量%であり、全体固形分は5~9重量%であった。前記プシコース分画は、イオン精製および濃縮を経て結晶化工程に使用した。結晶化工程に投入されるプシコース溶液はプシコース含量が80~82重量%であり、結晶化工程で一般に使用される冷却結晶によって結晶化させた。結晶化反応の後、脱水機を通じて結晶と結晶にならなかった母液とを分離した。この時、結晶化収率は45~60%であった。前記プシコース転換反応および結晶化方法は、上記製造例1および2と実質的に同じ方法で行った。
【0078】
このようにして生成したプシコース結晶化母液を全液回収して、プシコース転換工程を通過したプシコース含量20~24重量%プシコース転換反応物シロップと混合して、混合物のプシコース含量が30重量%で混合されるように維持した。プシコース含量が30重量%となるように混合したプシコース混合物は、イオン精製を経てSMBクロマトグラフィー分離工程を通過させた。各工程別の混合物および果糖ラフィネートの糖類組成を分析して、下記表1に示した。
【0079】
下記表1に示す収率は、該当工程に提供された投入物の固形分含量100重量%を基準にして、該当工程の処理後に得られた結果物に含まれている固形分含量を重量%で表わしたものである。下記表1の各工程別の処理前原料と処理後結果物の含量は、該当工程の投入物または結果物に含まれている総固形分含量100重量%を基準にして、それぞれの構成成分の含量を重量%で表わしたものである。
【0080】
【0081】
上記表1に示すように、果糖原料の果糖含量は、固形分総含量100重量%を基準にして88重量%でプシコースの製造工程を実施する場合、プシコース転換率は約23%を示し、結晶化母液を混合してプシコース30重量%となるように混合してSMB高純度分離を行った後に得られるプシコース分画ではプシコース含量は95重量%以上であった。プシコース結晶化母液を再循環させることによって、SMB高純度工程に投入される処理前原料物質のプシコース含量が高くなり、分離収率が増加して高純度プシコースの生産量が増加することを確認した。
【0082】
実施例2:プシコース結晶化母液の再循環を用いたプシコースの生産
【0083】
上記製造例1で得られた果糖含量88重量%の果糖含有原料溶液を用いてプシコース含量95重量%の固形分10トンを生産するために、流量3.8m3/hrでプシコース転
換工程と分離工程を行った。プシコース転換工程を経て得られた反応物のプシコース含量は20~24重量%であり、イオン精製の後、45~50重量%の濃度で分離工程を通過させた。Ca+類型分離樹脂を用いて分離して得られたプシコース分画のプシコース含量
は95~98重量%であり、全体固形分は5~9重量%であった。前記プシコース分画は、イオン精製および濃縮を経て結晶化工程に使用した。結晶化工程に投入されるプシコース溶液はプシコース含量が80~82重量%であり、結晶化工程で一般に使用される冷却結晶を通じて結晶化させた。結晶化反応の後、脱水機を通じて結晶と結晶にならなかった母液とを分離した。この時、結晶化収率は45~60%であった。前記プシコース転換反応および結晶化方法は、上記製造例1および2と実質的に同じ方法で行った。
【0084】
このようにして生成したプシコース結晶化母液を全液回収して、プシコース転換工程を通過したプシコース含量20~24重量%のプシコース転換反応物シロップと混合して、混合物のプシコース含量が40重量%で混合されるように維持した。プシコース含量が40重量%となるように混合したプシコース混合物は、イオン精製を経てSMBクロマトグラフィー分離工程を通過させた。各工程別の混合物および果糖ラフィネートの糖類組成を分析して、下記表2に示した。下記表2の収率および含量表示基準は、前記表1で定義したものと同一である。
【0085】
【表2】
上記表2に示すように、果糖原料の果糖含量は、固形分総含量100重量%を基準にして88重量%を用いてプシコースの製造工程を実施する場合、プシコース転換率は約23%を示し、結晶化母液を混合してプシコース40重量%となるように混合してSMB高純度分離を行った後に得られるプシコース分画ではプシコース含量は95重量%以上であった。プシコース結晶化母液を再循環させることによって、SMB高純度工程に投入される処理前原料物質のプシコース含量が高くなり、分離収率が増加して高純度プシコースの生産量が増加することを確認した。
【0086】
実施例3:プシコース結晶化母液の再循環を用いたプシコースの生産
上記製造例1で得られた果糖含量95重量%の果糖含有原料溶液を用いてプシコース含量95重量%の固形分10トンを生産するために、流量3.8m3/hrでプシコース転
換工程と分離工程を行った。プシコース転換工程を経て得られた反応物のプシコース含量は24~27重量%であり、イオン精製の後、45~50重量%の濃度で分離工程を通過させた。Ca類型分離樹脂を用いて分離して得られたプシコース分画のプシコース含量は95~98重量%であり、全体固形分は5~9重量%であった。前記プシコース分画は、イオン精製および濃縮を経て結晶化工程に使用した。結晶化工程に投入されるプシコース溶液はプシコース含量が80~82重量%であり、結晶化工程で一般に使用される冷却結晶を通じて結晶化させた。結晶化反応の後、脱水機を通じて結晶と結晶にならなかった母液とを分離した。この時、結晶化収率は45~60%であった。前記プシコース転換反応および結晶化方法は、上記製造例1および2と実質的に同じ方法で行った。
【0087】
このようにして生成したプシコース結晶化母液は全液回収して、プシコース転換工程を通過したプシコース含量24~27重量%のプシコース転換反応物シロップと混合して、混合物のプシコース含量が30重量%で混合されるように維持した。プシコース含量が30重量%で混合したプシコース混合物は、イオン精製を経てSMBクロマトグラフィー分離工程を通過させた。各工程別の混合物および果糖ラフィネートの糖類組成を分析して、下記表3に示した。下記表3の収率および含量表示基準は、前記表1で定義したものと同一である。
【0088】
【0089】
上記表3に示すように、果糖原料の果糖含量は、固形分総含量100重量%を基準にして95.2重量%を用いてプシコース製造工程を実施する場合、プシコース転換率約26.4%を示し、結晶化母液を混合してプシコース30重量%となるように混合してSMB高純度分離を行った後に得られるプシコース分画ではプシコース含量は95重量%以上であった。プシコース結晶化母液を再循環させることによって、SMB高純度工程に投入される処理前原料物質のプシコース含量が高くなり、分離収率が増加して高純度プシコースの生産量が増加することを確認した。
【0090】
実施例4:プシコース結晶化母液の再循環を用いたプシコースの生産
上記製造例1で得られた果糖含量95重量%の果糖含有原料溶液を用いてプシコース含量95重量%の固形分10トンを生産するために、流量3.8m3/hrでプシコース転
換工程と分離工程を行った。プシコース転換工程を経て得られた反応物のプシコース含量は24~27重量%であり、イオン精製の後、45~50重量%の濃度で分離工程を通過した。Ca+類型分離樹脂を用いて分離して得られたプシコース分画のプシコース含量は
95~98重量%であり、全体固形分は5~9重量%であった。前記プシコース分画は、イオン精製および濃縮を経て結晶化工程に使用した。結晶化工程に投入されるプシコース溶液はプシコース含量が80~82重量%であり、結晶化工程で一般に使用される冷却結晶を通じて結晶化させた。結晶化反応の後、脱水機を通じて結晶と結晶にならなかった母液とを分離した。この時、結晶化収率は45~60%であった。前記プシコース転換反応および結晶化方法は、上記製造例1および2と実質的に同じ方法で行った。
【0091】
このようにして生成したプシコース結晶化母液は全液回収して、プシコース転換工程を通過したプシコース含量24~27重量%のプシコース転換反応物シロップと混合して、混合物のプシコース含量が40重量%で混合されるように維持した。プシコース含量が40重量%で混合したプシコース混合物は、イオン精製を経てSMBクロマトグラフィー分離工程を通過させた。各工程別の混合物および果糖ラフィネートの糖類組成を分析して、下記表4に示した。下記表4の収率および含量表示基準は、前記表1で定義したものと同一である。
【0092】
【0093】
上記表4に示すように、果糖原料の果糖含量は、固形分総含量100重量%を基準にして95.2重量%を用いてプシコース製造工程を実施する場合、プシコース転換率約26.4%を示し、結晶化母液を混合してプシコース40重量%となるように混合してSMB高純度分離を行った後に得られるプシコース分画ではプシコース含量は95重量%以上であった。プシコース結晶化母液を再循環させることによって、SMB高純度工程に投入される処理前原料物質のプシコース含量が高くなり、分離収率が増加して高純度プシコースの生産量が増加することを確認した。