(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】排気ガス浄化システムおよび排気ガスを浄化するための方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/92 20060101AFI20220928BHJP
B01D 53/50 20060101ALI20220928BHJP
B01D 53/56 20060101ALI20220928BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20220928BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20220928BHJP
B63H 21/32 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
B01D53/92 215
B01D53/50 230
B01D53/56 200
B01D53/78 ZAB
B01D53/92 224
B01D53/92 331
C02F1/44 A
C02F1/44 D
C02F1/44 K
B63H21/32 Z
(21)【出願番号】P 2021533416
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(86)【国際出願番号】 EP2019076505
(87)【国際公開番号】W WO2020078708
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-06-11
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509005513
【氏名又は名称】アルファ-ラヴァル・コーポレート・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ソレン・モルゴー
(72)【発明者】
【氏名】カスペル・レームライゼ
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-081933(JP,A)
【文献】特表2014-511451(JP,A)
【文献】特表2013-527788(JP,A)
【文献】国際公開第2017/043722(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14-53/18、
53/34-53/85、
53/92、53/96、
47/00-47/18
F01N 3/00、 3/02、
3/04- 3/38、
9/00-11/00
C02F 1/44
B63H 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船上において排気ガス(EG)を浄化するための排気ガス浄化システム(1)であって、前記排気ガス浄化システム(1)は、第1のサブシステム(3)を備え、前記第1のサブシステム(3)は、
スクラバ流体で前記排気ガス(EG)を洗浄するように構成されたスクラバ(17)を備えるスクラバユニット(15)と、
洗浄後に前記スクラバ流体を受領し第1の部分および第2の部分へと分離するための、前記スクラバユニット(15)と連通状態に構成された遠心分離機(9)であって、前記第2の部分は前記第1の部分よりも汚染度が高い、遠心分離機(9)と、
を備え、
前記スクラバ(17)は、前記排気ガス(EG)を受領するための排気ガス入口(29)および洗浄済み排気ガス(EGW)を出力するための排気ガス出口(31)を備え、
前記排気ガス浄化システム(1)は、
前記遠心分離機(9)から出力された前記第1の部分を受領し第3の部分および第4の部分へと分離するための、前記遠心分離機(9)と連通状態に構成されたメンブランフィルタ(21)を備える第2のサブシステム(5)であって、前記第4の部分は前記第3の部分よりも汚染度が
高い、第2のサブシステム(5)をさらに備え
、
前記第1のサブシステム(3)は、前記遠心分離機(9)から出力された少なくともいくらかの前記第1の部分を受領するように配置された切替えモジュール(13)をさらに備え、該切替えモジュール(13)は異なった時間において、i)前記切替えモジュール(13)により受領された前記第1の部分の100%が、前記スクラバユニット(15)内に戻される第1のモード、およびii)前記切替えモジュール(13)により受領された前記第1の部分のx%が、前記スクラバユニット(15)内に戻され、且つ前記切替えモジュール(13)により受領された前記第1の部分の(100-x)%が、メンブランフィルタ(21)へと送られる第2のモード、の両方において動作可能であり、ここで前記xは、0≦x<100であることを特徴とする、排気ガス浄化システム(1)。
【請求項2】
前記スクラバ(17)のスクラバ流体入口(33)が、前記スクラバ(17)のスクラバ流体出口(35)と連通状態に構成される、請求項1に記載の排気ガス浄化システム(1)。
【請求項3】
前記スクラバユニット(15)は、循環タンク(19)をさらに備え、前記循環タンク(19)は、洗浄後に前記スクラバ(17)から前記スクラバ流体を受領するために前記スクラバ(17)と連通状態にあり、前記循環タンク(19)は、前記スクラバ(17)へ前記スクラバ流体を送るために前記スクラバ(17)と連通状態にあり、前記循環タンク(19)は、前記遠心分離機(9)へ前記スクラバ流体を送るために前記遠心分離機(9)と連通状態にある、請求項2に記載の排気ガス浄化システム(1)。
【請求項4】
前記メンブランフィルタ(21)は、前記スクラバユニット(15)へ前記スクラバ流体の前記第4の部分を送るために前記スクラバユニット(15)と連通状態にある、請求項1から3のいずれか一項に記載の排気ガス浄化システム(1)。
【請求項5】
前記第2のサブシステム(5)は、前記スクラバ流体の前記第3の部分の濁度値、pH値、およびPAH値の少なくとも1つが、それぞれの限度値以上であるかどうかを決定するように構成された水質分析ユニット(23)をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の排気ガス浄化システム(1)。
【請求項6】
前記メンブランフィルタ(21)は、パラメータ値の中の少なくとも1つがそれぞれの限度値以上である場合に、前記スクラバユニット(15)へ前記スクラバ流体の前記第3の部分を送るために前記スクラバユニット(15)と連通状態にある、請求項5に記載の排気ガス浄化システム(1)。
【請求項7】
前記パラメータ値のそれぞれが、それぞれの限度値未満である場合に、前記排気ガス浄化システム(1)から前記スクラバ流体の前記第3の部分を排出するように構成された、請求項6に記載の排気ガス浄化システム(1)。
【請求項8】
排気ガス浄化システムを用いて船上において排気ガスを浄化するための方法であって、
スクラバユニット内に備えられたスクラバ内においてスクラバ流体で前記排気ガスを洗浄するステップ(ステップA)と、
洗浄後に遠心分離機内で前記スクラバ流体を第1の部分および第2の部分へと分離するステップ(ステップE)であって、前記第2の部分は前記第1の部分よりも汚染度が高い、ステップと、
を含み、
前記スクラバユニットおよび前記遠心分離機は、前記排気ガス浄化システムの第1のサブシステム内に備えられ、
前記方法は、
前記スクラバ流体の前記第1の部分をメンブランフィルタに通し、第3の部分および第4の部分へと分離するステップ(ステップH)であって、前記第4の部分は前記第3の部分よりも汚染度が高く、前記メンブランフィルタは、前記排気ガス浄化システムの第2のサブシステム内に備えられる、ステップと、
前記遠心分離機から
出力された少なくともいくらかの前記第1の部分を
切替えモジュール(13)へと搬送するステッ
プと、
前記排気ガス浄化システムが第1のモードにある場合、前記切替えモジュール(13)へと搬送された前記第1の部分の100%を前記スクラバユニット(15)内に戻すステップと、
前記排気ガス浄化システムが第2のモードにある場合、前記切替えモジュール(13)へと搬送された前記第1の部分のx%を前記スクラバユニット(15)内に戻し、且つ前記切替えモジュール(13)へと搬送された前記第1の部分の(100-x)%を前記メンブランフィルタに送るステップであって、前記xは0≦x<100である、ステップと、
をさらに含むことを特徴とする、方法。
【請求項9】
前記スクラバに通して前記スクラバ流体を再循環させるステップ(ステップB)をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記スクラバユニットへ前記スクラバ流体の前記第4の部分を送るステップ(ステップI)をさらに含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記スクラバ流体の前記第3の部分の濁度値、pH値、およびPAH値の少なくとも1つが、それぞれの限度値以上であるかどうかを決定するステップ(ステップJ)をさらに含む、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
パラメータ値の中の少なくとも1つがそれぞれの限度値以上である場合に、前記スクラバユニットに前記スクラバ流体の前記第3の部分を送るステップ(ステップK)をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記パラメータ値のそれぞれが、それぞれの限度値未満である場合に、前記排気ガス浄化システムから前記スクラバ流体の前記第3の部分を排出するステップ(ステップL)をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船上において例えば船舶用機関、燃焼装置、またはボイラなどからの排気ガスを浄化するための排気ガス浄化システムに関する。さらに、本発明は、かかる排気ガス浄化システムを用いて、船上において例えば船舶用機関、燃焼装置、またはボイラなどからの排気ガスを浄化するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大型船舶は、典型的には硫黄含有燃料で動作する機関により駆動される。かかる燃料の燃焼において、硫黄酸化物(SOX)を含有する排気ガスが形成される。さらにこの排気ガスは、煤煙、油、および重金属などの微粒子状物質と窒素酸化物(NOX)とを典型的に含有する。排気ガスによる環境への影響を低下させるために、大気中への放出前に排気ガスを浄化しなければならない。例えば、排気ガスは、排気ガス中の汚染物質がスクラバ流体中に捕獲されるように、スクラバに通されてスクラバ流体で洗浄することが可能である。
【0003】
スクラバは、いわゆる開ループスクラバであることが可能であり、この開ループスクラバは、排気ガスから硫黄酸化物を除去するために天然海水のアルカリ性を利用する。この場合に、海水は、海から送られスクラバに通されて排気ガスからSOXおよび微粒子状物質を吸収し、その後海へと直接排出されて戻される。
【0004】
代替的には、スクラバは、いわゆる閉ループスクラバであることが可能であり、この閉ループスクラバは、水酸化ナトリウム(NaOH)または炭酸ナトリウム(Na2CO3)などのアルカリ化剤と組み合わせて循環淡水または循環海水を利用して、排気ガスから硫黄酸化物および微粒子状物質を除去する。かかるスクラバでは、循環淡水または循環海水の中の水溶硫黄、硫酸塩、および微粒子状物質の量は徐々に増加する。したがって、循環淡水または循環海水の品質を管理するために、これらの淡水または海水の少量が、清浄な淡水または海水で時折または継続的に置換され、船上に保管されるかまたは微粒子状物質の除去後に船外に排出されるかのいずれかとなり得る。
【0005】
特許文献1は、閉ループスクラバと、大半の微粒子状物質を含む汚染物質相と浄化済みスクラバ流体とに汚染されたスクラバ流体を分離するための遠心分離機とを備える排気ガス浄化装置について記載している。この排気ガス浄化装置は、良好に機能するものの、浄化済みスクラバ流体を船外へと排出するのに十分な微粒子状物質非含有状態にすることができない場合があり、特にスクラバ流体流量が高い場合にはそうなり得る。浄化済みスクラバ流体を船外に排出することができない場合には、この流体は後に排出するために船上に保管しなければならない。
特許文献2は、燃焼排気ガスを洗浄するガス洗浄スクラバからの排水を処理するための排水処理装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2011/104302号
【文献】特開2004-081933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述の問題を少なくとも一部解消する、船上において排気ガスを浄化するための排気ガス浄化システムと、かかるシステムを用いて排気ガスを浄化するための方法とを提供することである。本発明の基本コンセプトは、スクラバ流体から本明細書においてはPMとも呼ばれる微粒子状物質の大半を除去するための遠心分離機と、次いでスクラバ流体から微粒子状物質の残りを除去してこのスクラバ流体を船外に排出するのに十分な清浄度にするためのメンブランフィルタとを使用するものである。本発明による排気ガスシステムおよび方法は、添付の特許請求の範囲において定義され、以下で論じられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による排気ガス浄化システムが、船上において排気ガスを浄化するように構成される。この排気ガス浄化システムは、スクラバユニットおよび遠心分離機を備える第1のサブシステムを備える。スクラバユニットは、スクラバ流体で排気ガスを洗浄するように構成されたスクラバを備える。遠心分離機は、洗浄後にスクラバ流体を受領し第1の部分および第2の部分へと分離するためにスクラバユニットと連通状態に構成され、第2の部分は第1の部分よりも汚染度が高い、すなわちより汚染されている。スクラバは、排気ガスを受領するための排気ガス入口と洗浄済み排気ガスを出力するための排気ガス出口とを備える。排気ガス浄化システムは、メンブランフィルタを備える第2のサブシステムをさらに備えることを特徴とする。メンブランフィルタは、遠心分離機から出力された第1の部分を受領し第3の部分および第4の部分へと分離するために遠心分離機と連通状態に構成され、第4の部分は第3の部分よりも汚染度が高い、すなわちより汚染されている。
【0009】
排気ガス浄化システムは、船上において船舶用機関からの、船上において船舶用燃焼装置からの、または船上において船舶用ボイラからの排気ガスを浄化するように構成され得る。
【0010】
本文献の全体にわたり、「連通する」および「連通」は、「直接的にまたは間接的に連通している」および「直接連通または間接連通」をそれぞれ意味する点を強調しておく。同様に、本文献の全体にわたり、「受領する」、「送る」等は、「直接的にまたは間接的に受領する」および「直接的にまたは間接的に送る」をそれぞれ意味する。
【0011】
遠心分離機は、スクラバからのスクラバ流体のすべてを受領する、一切を受領しない、または一部を受領することができる。これは、経時的に変化し得る。
【0012】
メンブランフィルタは、遠心分離機からのスクラバ流体の第1の部分のすべてを受領する、一切を受領しない、または一部を受領することができる。これは、経時的に変化し得る。
【0013】
遠心分離機は、例えば高速分離機、デカンタ、またはそれらの組合せであってもよい。
【0014】
メンブランフィルタは、例えばポリマーもしくはセラミック、またはそれらの組合せであってもよい。さらに、メンブランフィルタは、直交流型であってもよい。
【0015】
遠心分離機がスクラバユニットからスクラバ流体を受領し得ることにより、排気ガスから吸収された微粒子状物質をスクラバ流体から除去することが可能となり得る。さらに、メンブランフィルタが遠心分離機からスクラバ流体の第1の部分、すなわち浄化済みスクラバ流体を受領し得ることにより、排気ガスから吸収された微粒子状物質をスクラバ流体からさらに除去することが可能となり得る。
【0016】
スクラバのスクラバ流体入口が、スクラバのスクラバ流体出口と連通状態に構成され得る。これにより、スクラバ流体の再循環、すなわち閉ループスクラバが可能となり得る。
【0017】
スクラバユニットは、循環タンクをさらに備えてもよく、循環タンクは、洗浄後にスクラバからスクラバ流体を受領するためにスクラバと、例えばスクラバのスクラバ流体出口と連通状態にあり、循環タンクは、スクラバへスクラバ流体を送るためにスクラバと、例えばスクラバのスクラバ流体入口と連通状態にあり、循環タンクは、遠心分離機へスクラバ流体を送るために遠心分離機と連通状態にある。
【0018】
遠心分離機は、スクラバユニットへ、例えばスクラバおよび/または存在する場合にはスクラバの循環タンクへスクラバ流体の第1の部分を送るためにスクラバユニットと連通状態にある。これにより、スクラバユニットへより清浄なスクラバ流体を還流することが可能となり、これにより、スクラバユニットにおけるスクラバ流体の微粒子状物質レベルが十分な低さに維持されることが可能となり得る。
【0019】
遠心分離機は、スクラバユニットへスクラバ流体の第1の部分のすべてを送る、一切を送らない、または一部を送ることができる。これは、経時的に変化し得る。
【0020】
第1のサブシステムは、遠心分離機、スクラバユニット、およびメンブランフィルタと連通状態にある切替えモジュールをさらに備え得る。切替えモジュールは、遠心分離機から出力されたスクラバ流体の第1の部分を受領しメンブランフィルタおよび/またはスクラバユニットへスクラバ流体の第1の部分を送るように構成され得る。
【0021】
切替えモジュールは、遠心分離機からスクラバ流体の第1の部分のすべてを受領する、一切を受領しない、または一部を受領することができる。これは、経時的に変化し得る。さらに、切替えモジュールは、メンブランフィルタおよび/またはスクラバユニットへスクラバ流体の第1の部分のすべてを送る、一切を送らない、または一部を送ることができる。これは、経時的に変化し得る。
【0022】
メンブランフィルタは、スクラバユニットへ、例えばスクラバおよび/または存在する場合にはスクラバの循環タンクへスクラバ流体の第4の部分を送るためにスクラバユニットと連通状態にあってもよい。
【0023】
メンブランフィルタは、スクラバユニットへスクラバ流体の第4の部分のすべてを送る、一切を送らない、または一部を送ることができる。これは、経時的に変化し得る。
【0024】
第2のサブシステムは、スクラバ流体の第3の部分のパラメータ値の数字が1以上であると決定するように構成された水質分析ユニットをさらに備え得る。パラメータ値は、スクラバ流体の第3の部分のさらなる処理を決定するために使用され得る。
【0025】
メンブランフィルタは、前記パラメータ値の中の少なくとも1つがそれぞれの限度値以上である場合に、スクラバユニットへ、すなわちスクラバまたは存在する場合にはスクラバの循環タンクへスクラバ流体の第3の部分を送るためにスクラバユニットと連通状態にあってもよい。この場合に、スクラバ流体の第3の部分は、排気ガスシステムから排出できないほど汚染度が過度に高いものとなり得る。
【0026】
排気ガス浄化システムは、前記パラメータ値のそれぞれが前記それぞれの限度値未満である場合に、排気ガス浄化システムからスクラバ流体の第3の部分を排出するように構成されてもよい。例えば、スクラバ流体の第3の部分は、船外へ、または後の船外排出のために一時保管タンクへ排出され得る。
【0027】
第1のサブシステムは、スクラバ流体へ化学物質を供給するように構成された薬品注入ユニットをさらに備え得る。これにより、排気ガス浄化システムの効率が最適化され得る。例えば、薬品注入ユニットは、スクラバユニットの下流および遠心分離機の上流すなわちスクラバ流体が遠心分離機に受領される前に、スクラバ流体に化学物質を供給するように構成され得る。さらに、化学物質は、凝集剤および/または凝固剤を含有し得る。これにより、遠心分離機の効率が最適化され得る。また、化学物質は、スクラバ流体のpHを調節するためのアルカリ化剤を含有してもよい。
【0028】
さらに、第1のサブシステムは、薬品注入ユニットの下流および遠心分離機の上流に、スクラバ流体が遠心分離機に受領される前にスクラバ流体を保持することによりフロキュレーションのために十分な時間を与えるように構成されたフロキュレーションユニットをさらに備えてもよい。これにより、遠心分離機の効率がさらに最適化され得る。
【0029】
本発明による方法が、排気ガス浄化システムを用いて船上において排気ガスを浄化するように設定される。この方法は、スクラバユニット内に備えられたスクラバ内においてスクラバ流体で排気ガスを洗浄するステップと、洗浄後に遠心分離機内でスクラバ流体を第1の部分および第2の部分へと分離するステップであって、第2の部分が第1の部分よりも汚染度が高い、ステップとを含む。スクラバユニットおよび遠心分離機は、排気ガス浄化システムの第1のサブシステム内に備えられる。この方法は、スクラバ流体の第1の部分をメンブランフィルタに通し、第3の部分および第4の部分へと分離するステップであって、第4の部分が第3の部分よりも汚染度が高い、ステップをさらに含むことを特徴とする。メンブランフィルタは、排気ガス浄化システムの第2のサブシステム内に備えられる。
【0030】
この方法は、船上において船舶用機関からの、船上において船舶用燃焼装置からの、または船上において船舶用ボイラからの排気ガスを浄化するように設定され得る。
【0031】
この方法は、スクラバに通してスクラバ流体を再循環させるステップをさらに含み得る。
【0032】
この方法は、遠心分離機からスクラバユニットへスクラバ流体の第1の部分を送るステップをさらに含む。
【0033】
この方法は、スクラバユニットへスクラバ流体の第4の部分を送るステップをさらに含み得る。
【0034】
この方法は、スクラバ流体の第3の部分のパラメータ値の数字が1以上であると決定するステップをさらに含み得る。
【0035】
この方法は、前記パラメータ値の中の少なくとも1つがそれぞれの限度値以上である場合に、スクラバユニットにスクラバ流体の第3の部分を送るステップをさらに含み得る。
【0036】
この方法は、前記パラメータ値のそれぞれが前記それぞれの限度値未満である場合に、排気ガス浄化システムからスクラバ流体の第3の部分を排出するステップをさらに含み得る。
【0037】
この方法は、例えば凝集剤および/または凝固剤および/またはpH調節アルカリ化剤などを含有する化学物質を、例えばスクラバユニットの下流および遠心分離機の上流などにおいて第1のサブシステム内のスクラバ流体へ供給するステップをさらに含み得る。さらに、この方法は、スクラバ流体への化学物質の供給後におよびスクラバ流体が遠心分離機へ送られる前に、フロキュレーションに十分な時間を与えるためにフロキュレーションユニット内にスクラバ流体を保持するステップをさらに含み得る。
【0038】
また、本発明による排気ガス浄化システムの種々の実施形態の上記で論じた利点は、本発明による排気ガスを浄化するための方法の対応する種々の実施形態についても存在する。
【0039】
本発明のさらに他の目的、特徴、態様、および利点が、以下の詳細な説明および図面から明らかになろう。
【0040】
以下、添付の概略図を参照として本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明による排気ガス浄化システムを概略的に示すブロック図である。
【
図2】本発明による排気ガスを浄化するための方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、第1のサブシステム3および第2のサブシステム5を備える排気ガス浄化システム1を示す。さらに、この第1のサブシステム3は、フロキュレーションユニット7、高速分離機の形態の遠心分離機9、スラッジタンク10、薬品注入ユニット11、切替えモジュール13、およびスクラバユニット15を備え、スクラバユニット15は、スクラバ17および循環タンク19を備える。第2のサブシステム5は、0.15マイクロメートルの孔径を有する直交流型のメンブランフィルタ(membrane filter)21と、水質分析ユニット23と、切替えモジュール25とを備える。排気ガス浄化システムは、船(図示せず)の上で船舶用ディーゼル機関27からの排気ガスEGを浄化するように構成される。したがって、スクラバ17は、機関27から排気ガスEGを受領するための排気ガス入口29と、洗浄済み排気ガスEGWを放出するための排気ガス出口31とを備える。
【0043】
図2は、機関27からの排気ガスEGを浄化するための方法を示す。スクラバ17の内部において、排気ガスは、水酸化ナトリウム(NaOH)などのアルカリ化剤を含有する淡水の形態のスクラバ流体SFで洗浄される(ステップA)。スクラバは、本明細書においてはあらためて説明しない従来の方法で機能する。スクラバ流体SFは、循環タンク19からスクラバ17のスクラバ流体入口33を通りスクラバ17へ送られる。スクラバ17の内部において、スクラバ流体SFは、排気ガスEGから汚染物質を吸収して排気ガスEGを浄化し、スクラバ流体出口35を通り循環タンク19へと送られて戻る。したがって、スクラバ流体入口33は、スクラバ流体出口35と間接的に、すなわち循環タンク19を介して連通し、それによりスクラバ流体SFは、スクラバ17を通り再循環される(ステップB)。
【0044】
スクラバ流体SFは、スクラバ17を通り再循環される場合に、徐々に汚染される。スクラバ17の効率的な動作を確保するためには、スクラバ流体は過度に汚染されてはならない。したがって、スクラバ流体SFの一部が、浄化のために循環タンク19から継続的にポンプ排出される。循環タンク19内に十分な量のスクラバ流体を確保するために、循環タンク19は、ポンプ排出されたスクラバ流体の埋め合わせをするためにスクラバ流体を補充される。この補充は、排気ガス浄化システム1の外部から清浄な淡水およびアルカリ化剤を追加することを伴い得る。さらに、以下でさらに説明されるように、浄化後にスクラバ流体を循環タンク19へ戻すことによるスクラバ流体の「内部」補充が行われてもよい。
【0045】
ポリ塩化アルミニウムの形態の凝固剤とスクラバ流体のpHを6.5へと調節するためのアルカリ化剤とを含有する化学物質が、薬品注入ユニット11により、循環タンク19からポンプ排出されたスクラバ流体SFに供給され(ステップC)、その後このスクラバ流体SFは、循環タンク19と連通するフロキュレーションユニット7内に受領される。フロキュレーションユニット7の内部において、この凝固剤を含有するスクラバ流体SFは、適切なフロキュレーションが可能になるように保持および混合され(ステップD)、その後にフロキュレーションユニット7およびしたがって(間接的に)循環タンク19と連通する遠心分離機9により受領される。遠心分離機9は、フロックを含有したスクラバ流体SFを第1の部分および第2の部分へと分離する(ステップE)。第1の部分よりも汚染された第2の部分は、スラッジタンク10へ排出される(ステップF)。より清浄な第1の部分に対して何がなされるかは、排気ガス浄化システム1のモードにより左右される。
【0046】
第1のモードでは、切替えモジュール13は、第1の部分の100%がスクラバユニット15へ、より具体的にはその循環タンク19へ送られて戻るように設定される(ステップG)。循環タンク19は、遠心分離機9と連通状態にあるため、浄化済みスクラバ流体を補充される。第2のモードでは、切替えモジュール13は、第1の部分のx%(ここで0≦x≦100である)が循環タンク19を補充するために循環タンク19へ送られて戻り(xの数値により決定される)(ステップG)、一方で第1の部分の(100-x)%がメンブランフィルタ21へ送られるように設定される。メンブランフィルタ21は、遠心分離機9と連通状態にある。xは、調節可能であり、排気ガス浄化システム1の動作中に一定に維持されてもまたは変更されてもよい。排気ガス浄化システム1が第1のモードまたは第2のモードのいずれにあるかは、とりわけスクラバ流体中の水溶の硫黄および硫黄塩の量と、第1のサブシステム3内のスクラバ流体の量とによって左右される。
【0047】
メンブランフィルタ21は、第1の部分を第3の部分および第4の部分へと分離する(ステップH)。第3の部分よりも汚染された第4の部分は、スクラバユニット15へ、より具体的にはその循環タンク19へ送られて戻る(ステップI)。循環タンク19は、メンブランフィルタ21と連通状態にあり、それによりスクラバ流体を補充される。より清浄な第3の部分に対して何がなされるかは、その汚染度により左右される。
【0048】
第3の部分の濁度値、pH値、およびPAH(多環芳香族炭化水素)値が、水質分析ユニット23により決定され(ステップJ)、切替えモジュール25へ通信される。切替えモジュール25は、濁度値、pH値、およびPAH値の中の1つまたは複数がそれぞれの限度値を、この場合にはそれぞれ25NTU、6.5、および2250ppb以上である場合に、第3の部分がスクラバユニット15へ、より具体的にはその循環タンク19へ送られて戻る(ステップK)ように設定される。循環タンク19は、メンブランフィルタ21と連通状態にあり、それにより浄化済みスクラバ流体を補充される。さらに、濁度値、pH値、およびPAH値のすべてがそれぞれの限度値未満である場合には、第3の部分は、排気ガス浄化システム1から船外へ、または例えば船舶が船外排出を禁じられた領域内に位置する場合などには後の排出のために一時保持タンク(図示せず)へ排出される(ステップL)。
【0049】
したがって、循環タンク19からポンプ排出されたスクラバ流体は、最初に遠心分離機9により浄化される。遠心分離機9は、微粒子状物質の大半を効率的に除去し、詰まらせることなく非常に高レベルのPMを処理することが可能である。したがって、遠心分離機9は、排気ガス浄化システム1の第1のサブシステム3内を循環するスクラバ流体を十分なPM非含有状態に維持することが可能でありそれに適する。しかし、第1のサブシステム3内におけるスクラバ流体流量が高い場合には、遠心分離機9は、スクラバ流体を船外排出するのに十分な清浄状態にするのに十分なだけの微粒子状物質の除去が可能ではない場合がある。この場合には、スクラバ流体の浄化済みの、ここでは第1の部分は、メンブランフィルタ21によりさらに浄化される。メンブランフィルタ21は、残留微粒子状物質のほぼすべてを効率的に除去する。メンブランフィルタ21を通り送られたスクラバ流体は、遠心分離機9により事前浄化されているため、このスクラバ流体中のPMレベルは、メンブランフィルタ21を詰まらせないだけの十分な低さである。したがって、通常よりも大幅に高い流量がメンブランフィルタを通過することが可能となる。
【0050】
上述の排気ガス浄化システムの構成要素は、上記に明示した様式での連通を可能にするために適した配管により連結される。さらに、上述の排気ガスシステムは、適切に機能するためにポンプ、弁、センサ、他の水質分析ユニット、制御ユニット等の追加の構成要素を備えてもよい。一例として、排気ガスシステムは、スクラバ流体のpHを測定するためにスクラバと循環タンクとの間にpHメータまたはpHセンサを備え得る。このpHメータは、薬品注入ユニット11と通信し得る。
【0051】
本発明による方法のステップは、単なる識別を目的としてステップA、ステップB等と呼ばれている点を強調しておく。したがって、これらのステップは、ステップA、ステップB等の特定の順序で実施される必要はない。さらに、1つまたは複数のステップが、代替的な実施形態においては省かれてもよい。
【0052】
本発明の上述の実施形態は、単なる一例として理解されるべきである。論じた実施形態は、本発明のコンセプトから逸脱することなく多数の様式で変更され得る点が当業者には理解される。
【0053】
一例として、排気ガス浄化システムは、上記に明示したものとは異なる凝固剤で、凝固剤の代わりに例えばポリマーなどの凝集剤で、または凝固剤および凝集剤の混合物で機能することが可能である。
【0054】
メンブランフィルタは、上記に示したものとは異なる、より大きいおよびより小さい孔径を有してもよい。
【0055】
上述の実施形態では、水質分析ユニット23は、スクラバ流体の第3の部分の濁度値、pH値、およびPAH値を決定するように構成され、第3の部分の処理は、これらの数値により左右される。代替的な実施形態では、水質分析ユニットは、これらのパラメータの中の1つまたは2つのみ、追加のパラメータ、および/または他のパラメータを決定するように構成され得る。
【0056】
排気ガス浄化システムは、循環タンクを備える必要はない。したがって、代替的な一実施形態では、遠心分離機9は、循環タンクではなくスクラバ17へ第1の部分を送るように構成され得る。別の代替的な実施形態では、排気ガス浄化システムは、スクラバ流体の再循環または還流を含まないような開ループタイプのものであることが可能である。
【0057】
スクラバ流体は、淡水およびアルカリ化剤を含む必要はなく、代わりに海水およびアルカリ化剤またはその組合せを含むことが可能である。
【0058】
第1の、第2の、第3の等の限定詞は、本明細書においては単に識別を目的として使用され、いかなる種類の具体的順序を表すものでもない点を強調しておく。
【0059】
本発明とは無関係である詳細説明は省略されており、図面は単なる概略的なものであり縮尺通りではない点を強調しておく。
【符号の説明】
【0060】
1 排気ガス浄化システム
3 第1のサブシステム
5 第2のサブシステム
7 フロキュレーションユニット
9 遠心分離機
10 スラッジタンク
11 薬品注入ユニット
13 切替えモジュール
15 スクラバユニット
17 スクラバ
19 循環タンク
21 メンブランフィルタ
23 水質分析ユニット
25 切替えモジュール
27 船舶用ディーゼル機関
29 排気ガス入口
31 排気ガス出口
33 スクラバ流体入口
35 スクラバ流体出口