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特許7148744折り畳み可能かつ拡張可能なインプラントを装てんし、経中隔にて送入し、位置を決めて展開し、位置を変更して展開するための装置、システム、および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】折り畳み可能かつ拡張可能なインプラントを装てんし、経中隔にて送入し、位置を決めて展開し、位置を変更して展開するための装置、システム、および方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20220928BHJP
   A61F 2/95 20130101ALI20220928BHJP
【FI】
A61F2/24
A61F2/95
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021571313
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 US2020033902
(87)【国際公開番号】W WO2020242866
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-01-28
(31)【優先権主張番号】62/854,584
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/877,887
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517290947
【氏名又は名称】4シー メディカル テクノロジーズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディダリング,ジェイソン エス.
(72)【発明者】
【氏名】クエーンボラ,サウンサラ
(72)【発明者】
【氏名】クマール,サラヴァナ ビー.
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-509806(JP,A)
【文献】特表2016-518948(JP,A)
【文献】特表2018-508290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
A61F 2/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部および底部を有するステント外側フレームを備える拡張可能かつ折り畳み可能な人工心臓弁装置のための装てん、送入、展開、および配置システムであって、
前記底部は、流出領域を定めており、
前記人工心臓弁装置は、拡張するように付勢され、かつ送入カテーテルの管腔内へと折り畳まれるように構成されており、
前記システムは、
前記送入カテーテルの長さよりも長い長さを有し、遠位端が作業者によって操作されたときに前記送入カテーテルの管腔内で平行移動および/または回転するように構成され、遠位端にねじ山領域を備えている、トルクワイヤと、
前記ステント外側フレームの前記頂部または前記頂部の付近に回転することがないように取り付けられ、チャネルと、1対の横ロック溝とを定めており、前記チャネルは、前記横ロック溝と連続的に定められている、ステントキャップと、
雄型係合部材と
を備えており、
前記雄型係合部材は、
近位端に位置し、前記トルクワイヤの前記ねじ山領域に螺合するように構成されたねじ山領域と、
前記ねじ山領域から遠位方向に延びるステム領域と、
前記ステム領域の遠位端から横方向に延びる左側および右側係合ハンドルと
を備え、
前記左側および右側係合ハンドルは、前記ステントキャップに取り外し可能に係合するように構成されている、システム。
【請求項2】
前記雄型係合部材の前記ステム領域は、真っ直ぐである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記雄型係合部材の前記ステム領域は、曲線状である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記雄型係合部材の前記曲線状のステム領域は、ただ1つの湾曲領域を備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記雄型係合部材の前記曲線状のステム領域は、2つ以上の湾曲領域を備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記雄型係合部材の前記ステム領域の各湾曲領域は、実質的に同様の曲率を備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記雄型係合部材の前記ステム領域の各湾曲領域は、少なくとも1つの他の湾曲領域の曲率とは異なる曲率を備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記左側および右側係合ハンドルは、前記左側および右側係合ハンドルが前記横ロック溝の下方かつ前記ステントフレームの内側に位置するように前記雄型係合部材の前記ステム領域が前記チャネル内に受け入れられたときに、前記ステントキャップに取り外し可能に係合するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記人工心臓弁装置は、人工僧帽弁、人工三尖弁、および大動脈弁で構成される群のうちの1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記送入カテーテルのアクセス経路は、経心尖、経大腿動脈、経心房、および経中隔で構成される群のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者
Jason S.Diedering、ミネソタ州ミネアポリス在住、米国市民。
Sounthara Khouengboua、ミネソタ州チャスカ在住、米国市民。
Saravana B.Kumar、ミネソタ州ミネトンカ在住、米国市民。
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月19日に出願された「DEVICES,SYSTEMS AND METHODS FOR COLLAPSIBLE AND EXPANDABLE IMPLANT LOADING,TRANSSEPTAL DELIVERY,POSITIONING DEPLOYMENT AND REPOSITIONING DEPLOYMENT」という名称の米国特許出願第16/877,887号の優先権を主張し、さらに、2019年5月30日に出願された「DEVICES,SYSTEMS AND METHODS FOR COLLAPSIBLE AND EXPANDABLE IMPLANT LOADING,TRANSSEPTAL DELIVERY,POSITIONING DEPLOYMENT AND REPOSITIONING DEPLOYMENT」という名称の米国仮特許出願第62/854,584号の利益を主張し、これらの出願の全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
連邦政府の支援による研究または開発に関する言明
該当せず
【0002】
本発明は、体内にステントを装てんし、送入し、配置し、再配置するための装置、システム、および特徴に関する。より具体的には、拡張可能かつ折り畳み可能な人工心臓弁装置が、心腔内、好ましくは左心房へと経中隔にて送入され、配置される。
【背景技術】
【0003】
ヒトの心臓は、心臓を通る血液の順方向(順行性)の流れを補助する4つの心腔および4つの心臓弁を備える。心腔は、左心房、左心室、右心房、および右心室を含む。4つの心臓弁は、僧帽弁、三尖弁、大動脈弁、および肺動脈弁を含む。図1を全体的に参照されたい。
【0004】
僧帽弁は、左心房と左心室との間に位置し、左心房への逆流を防ぐための一方向弁として作用することによって、左心房から左心室への血液の流れを制御する役に立つ。同様に、三尖弁が、右心房と右心室との間に位置する一方で、大動脈弁および肺動脈弁は、心臓から血液を流出させる動脈に位置する半月弁である。弁はすべて一方向弁であり、順方向(順行性)の血流を可能にするために開く弁尖を有する。正常に機能している弁尖は、逆方向の血液が作用させる圧力のもとで閉じ、流出したばかりの心腔への血液の逆流(逆行)を防止する。例えば、僧帽弁は、適切に作動しているとき、左心房と左心室との間に一方向の弁作用を提供し、左心房から左心室への順行性の流れを可能にするために開き、左心室から左心房への逆行性の流れを防止するために閉じる。この逆行性の流れは、存在する場合、僧帽弁閉鎖不全症または僧帽弁逆流として知られている。
【0005】
図2が、僧帽弁尖に対する左心房、弁輪、腱索、および左心室の関係を示している。図示のように、弁輪の上面は、左心房腔の床または下面の少なくとも一部分を形成し、したがって本明細書における説明の目的において、弁輪の上面は、左心房腔の下部境界を表すものと定義される。
【0006】
生来の心臓弁は、これらに限られるわけではないが疾患、外傷、先天性奇形、および老化を含むさまざまな理由および/または状態のために、機能不全であり、あるいは機能不全になる可能性がある。これらの種類の状態ゆえに、弁構造が適切に閉じることができず、僧帽弁の不全の場合には、左心室から左心房への血液の逆流につながる可能性がある。図3が、例示的な機能不全の僧帽弁における逆流性の血流を示している。
【0007】
僧帽弁逆流は、少なくとも或る程度の逆行性の血流が右心房から左心房へと戻ることを可能にする機能不全の僧帽弁に起因する特定の問題である。いくつかの場合、機能不全は、僧帽弁尖が、逆行性の流れを遮断するように接続または接合する代わりに、左心房腔へと上方に、すなわち弁輪の上面よりも上方に逸脱することに起因する。この血液の逆流は、容量負荷によって左心室に負担をかけ、心室腔のサイズおよび形状の変化などの左心室の一連の代償的な調整または調節をもたらし、心室腔のサイズおよび形状が、僧帽弁逆流の長期にわたる臨床経過において著しく変化する可能性がある。
【0008】
逆流は、三尖弁、大動脈弁および肺動脈弁、ならびに僧帽弁を含む生来の心臓弁全般における問題であり得る。
【0009】
したがって、例えば僧帽弁など、生来の心臓弁全般は、部分的または完全な置換を含む機能的修復および/または補助を必要とする可能性がある。そのような介入は、心臓切開手術および置換心臓弁の心臓切開による埋め込みを含むいくつかの形態をとることができる。例えば、きわめて侵襲的であり、患者のリスクを伴い、長期の入院だけでなく、きわめて苦痛な回復期間も必要とする処置に関して、米国特許第4,106,129号明細書(Carpentier)を参照されたい。
【0010】
機能不全の心臓弁を置換するためのより低侵襲な方法および装置も知られており、経皮的アクセスおよびカテーテルによって容易にされた置換弁の送入を含む。これらの解決策のほとんどは、当技術分野において一般的に知られているステント、または送入カテーテルからの解放時に拡張するように設計された他の形態のワイヤネットワークなどの構造支持体に取り付けられた置換心臓弁を含む。例えば、米国特許第3,657,744号明細書(Ersek)および米国特許第5,411,552号明細書(Andersen)を参照されたい。このような自己拡張型の支持ステントは、対象の心腔または血管において、弁の配置および拡張後の装置の所定の位置への保持を助ける。さらに、この自動拡張形式は、よくあることであるが、装置が最初の配置の試みにおいて適切に配置されず、したがって再捕捉および位置調整を行わなければならない場合に、問題を呈する。完全に拡張した装置の場合や、あるいは途中まで拡張した装置の場合であっても、この再捕捉のプロセスは、作業者が折り畳まれた装置を再び送入シースまたはカテーテル内に引き戻し、内部における装置の位置を調整し、次いで位置調整された装置を送入シースまたはカテーテルから遠位側へと再び展開することによって適切な位置へと再び拡張させることができる段階まで、装置を再び折り畳むことを必要とする。すでに拡張した装置の折り畳みは、拡張後のステントまたはワイヤネットワークが、一般に、収縮力または折り畳み力にも抵抗する拡張状態を達成するように設計されているため、困難である。
【0011】
上述の心臓切開手術による手法に加えて、目的の弁へのアクセスを、少なくとも以下の既知のアクセス経路、すなわち経心尖、経大腿動脈、経心房、および経中隔の送入技術のうちの1つによって経皮的に得ることもできる。
【0012】
一般に、当技術分野は、上述の既知のアクセス経路のうちの1つを使用して、折り畳まれた弁装置を途中まで送入することができ、装置の一端が送入シースまたはカテーテルから解放されて、初期の配置のために拡張され、次いで適切な配置が達成されたときに完全に解放および拡張されるシステムおよび方法に焦点を当てている。例えば、米国特許第8,852,271号明細書(Murray,III)、第8,747,459号明細書(Nguyen)、第8,814,931号明細書(Wang)、第9,402,720号明細書(Richter)、第8,986,372号明細書(Murray,III)、および第9,277,991号明細書(Salahieh)、ならびに米国特許出願公開第2015/0272731号明細書(Racchini)、および第2016/0235531号明細書(Ciobanu)を参照されたい。
【0013】
さらに、すべての既知の人工心臓弁は、生来の心臓弁の完全な置換を意図している。したがって、これらの置換心臓弁、ならびに/あるいは固定または索構造は、僧帽弁の場合、左心房腔から物理的に延出し、内弁輪および/または弁尖と係合し、多くの場合、生来の弁尖を内弁輪の壁に固定することによって生来の弁の残存するすべての機能を恒久的に排除し、患者は置換弁に完全に依存することになる。他の場合には、固定構造を左心室へと延ばし、左心室壁組織および/または左心室の上部の副環状面に固定することができる。他には、肺動脈に存在させることができ、あるいは肺動脈に係合させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許第4,106,129号明細書
【文献】米国特許第3,657,744号明細書
【文献】米国特許第5,411,552号明細書
【文献】米国特許第8,852,271号明細書
【文献】米国特許第8,747,459号明細書
【文献】米国特許第8,814,931号明細書
【文献】米国特許第9,402,720号明細書
【文献】米国特許第8,986,372号明細書
【文献】米国特許第9,277,991号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0272731号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0235531号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
当然ながら、介入による埋め込み処置の前に、生来の弁が実質的に完全な機能性を失っている場合がある。この場合、好ましい解決策は、例えば左心房の外側に広がることがなく、生来の弁機能を完全に置換するように機能するインプラントを含む。しかしながら、他の多くの場合、生来の弁は或る程度の機能を依然として果たしており、埋め込み処置後に機能を失い続ける可能性も、そうでない可能性もある。この場合の好ましい解決策は、生来の弁尖の機能を存在する限りにおいて保ち続けるように、生来の弁尖を傷めることなく補助弁または増強弁として機能すると同時に、人工弁の埋め込み後に徐々にその機能の大部分またはすべてを失う弁の生来の機能を完全に置き換えることもできる弁装置の送入および埋め込みを含む。
【0016】
人工心臓弁装置のための送入システム、装置、および方法が知られているが、改善が必要である。とくには、既知の経中隔の送入システム、装置、および方法を、これらに限られるわけではないが、送入カテーテルの管腔への人工心臓弁装置の折り畳み/装てん、送入カテーテルの管腔の遠位端から心腔内への拡張する人工心臓弁装置の解放および配向、ならびに心腔における配向された配置について改善することができる。さらに、既知の送入システム、装置、および方法は、とりわけ、最適な位置決めおよび封止を達成するために必要に応じて再配置を可能にするための再捕捉の能力および効率など、送入方法における重大な欠点を依然として抱えている。
【0017】
本明細書に開示されるいくつかの発明のさまざまな実施形態は、とりわけ、これらの問題に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、人工心臓弁装置の送入カテーテルの管腔内への改善された折り畳み/装てん、送入カテーテルの管腔の遠位端から心腔内への拡張する人工心臓弁装置の改善された放出および方向付け、ならびに心腔内での装置の方向付けられた配置の改善のための方法、装置、およびシステムを提供する。さらに、本開示の方法、装置、およびシステムは、所望の治療部位における装置の最適な位置決めおよび封止を達成すべく必要に応じて再配置を行うことができるように送入後の人工心臓弁装置を再捕捉する能力および効率の改善をもたらす。これらの改善は、少なくとも部分的には、ステントキャップが、人工弁装置のステントの頂部に取り付けられ、雄型係合部材との係合および雄型係合部材からの切り離しが可能であるように構成され、雄型係合部材は、雄型係合部材およびステントキャップを介した人工弁装置の配置、解放、再捕捉、および再配置を可能にする操作可能なトルクワイヤとの係合およびトルクワイヤからの切り離しが可能であるように構成されることで、達成される。
【0019】
一実施形態においては、拡張するように付勢され、かつ送入カテーテルの管腔内へと折り畳まれるように構成されており、頂部および底部を有するステント外側フレームを有していて、底部は、流出領域を定めている拡張可能かつ折り畳み可能な人工心臓弁装置のための装てん、送入、展開、および配置システムが、送入カテーテルの長さよりも長い長さを有し、遠位端が作業者によって操作されたときに送入カテーテルの管腔内で平行移動および/または回転するように構成され、遠位端にねじ山領域を備えているトルクワイヤと、ステント外側フレームの頂部または頂部付近に回転することがないように取り付けられ、チャネルと、1対の横ロック溝とを定めており、チャネルは、横ロック溝と連続的に定められているステントキャップと、雄型係合部材とを備え、雄型係合部材は、近位端に位置し、トルクワイヤのねじ山領域に螺合するように構成されたねじ山領域と、ねじ山領域から遠位方向に延びるステム領域と、ステム領域の遠位端から横方向に延びる左側および右側係合ハンドルとを備え、左側および右側係合ハンドルは、ステントキャップに取り外し可能に係合するように構成される。
【0020】
別の実施形態においては、拡張可能かつ折り畳み可能な人工心臓弁装置のためのシステムを装てん、送入、展開、および配置するための方法が、上述の一実施形態のシステムを用意するステップと、雄型係合部材をトルクワイヤに螺合によって取り付けるステップと、雄型係合部材をステントキャップに取り外し可能に取り付けるステップと、トルクワイヤを送入カテーテルの管腔を通って近位方向に引っ張るステップと、拡張状態の人工心臓弁装置を送入カテーテルの管腔の遠位端に引き込むことにより、人工心臓弁装置を折り畳むステップと、折り畳まれた人工心臓弁装置を送入カテーテルの管腔内に位置決めおよび装てんするステップと、送入カテーテルの遠位端で患者の心腔にアクセスするステップと、トルクワイヤで折り畳まれた人工心臓弁装置を送入カテーテルの遠位端から押し出すことにより、人工心臓弁装置を付勢によって拡張するステップと、トルクワイヤを回転させ、さらには/あるいは他のやり方で旋回させて、拡張する人工心臓弁装置を心腔内に案内および配置するステップと、雄型係合部材をステントキャップから切り離すステップと、トルクワイヤおよび取り付けられた雄型係合部材を、送入カテーテルの管腔内に引き戻すステップと、送入カテーテルを患者の体から引き出すステップとを含む。
【0021】
本明細書に記載の特定の本発明の実施形態は、とくに明記されない限り、単一心腔または2心腔の解決策に容易に適用可能である。さらに、本明細書で論じられる特定の実施形態は、一般に、生来の弁機能全般の保存および/または置換に適用可能であり、したがって人工僧帽弁装置に限定されず、人工三尖弁装置、人工大動脈装置、人工肺動脈弁、ならびに任意のそのような弁の装てん、送入、展開、および配置のための方法を含むように拡張可能である。
【0022】
本明細書において述べられる本発明およびその用途の説明は、例示的なものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。さまざまな実施形態の特徴を、本発明の企図内で他の実施形態と組み合わせることが可能である。本明細書に開示される実施形態について、変形および修正が可能であり、当業者であれば、本特許文書を検討することで、実施形態のさまざまな要素の実際的な代替物および等価物を理解できるであろう。本明細書に開示される実施形態のこれらの変形および修正ならびに他の変形および修正を、本発明の範囲および精神から逸脱することなく行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】心臓の特定の特徴を断面にて示している。
図2】心臓の左側の断面斜視図を示している。
図3】僧帽弁逆流から生じる逆行性の血流を正常な血流と比較して示す心臓の断面図を示している。
図4】本発明の一実施形態の人工心臓弁装置の部分切断側面図を示している。
図5】本発明の一実施形態のステントキャップの斜視図を示している。
図6】本発明の実施形態の雄型係合部材の斜視図を示している。
図7】本発明の一実施形態における例示的な人工心臓弁装置のステントに取り付けられたステントキャップの斜視図を示している。
図8A】本発明の一実施形態におけるステントキャップおよびトルクワイヤに接続された雄型係合部材の斜視図を示している。
図8B】トルクワイヤに接続され、送入カテーテル内に部分的に受け入れられた本発明の一実施形態における雄型係合部材の側面部分切断図を示している。
図9A】本発明の一実施形態を使用した人工心臓弁装置の例示的な経中隔での送入および配置のための例示的な方法の各ステップを示している。
図9B】本発明の一実施形態を使用した人工心臓弁装置の例示的な経中隔での送入および配置のための例示的な方法の各ステップを示している。
図9C】本発明の一実施形態を使用した人工心臓弁装置の例示的な経中隔での送入および配置のための例示的な方法の各ステップを示している。
図9D】本発明の一実施形態を使用した人工心臓弁装置の例示的な経中隔での送入および配置のための例示的な方法の各ステップを示している。
図9E】本発明の一実施形態を使用した人工心臓弁装置の例示的な経中隔での送入および配置のための例示的な方法の各ステップを示している。
図9F】本発明の一実施形態を使用した人工心臓弁装置の例示的な経中隔での送入および配置のための例示的な方法の各ステップを示している。
図9G】本発明の一実施形態を使用した人工心臓弁装置の例示的な経中隔での送入および配置のための例示的な方法の各ステップを示している。
図9H】本発明の一実施形態を使用した人工心臓弁装置の例示的な経中隔での送入および配置のための例示的な方法の各ステップを示している。
図9I】本発明の一実施形態を使用した人工心臓弁装置の例示的な経中隔での送入および配置のための例示的な方法の各ステップを示している。
図9J】本発明の一実施形態を使用した人工心臓弁装置の例示的な経中隔での送入および配置のための例示的な方法の各ステップを示している。
図9K】本発明の一実施形態を使用した人工心臓弁装置の例示的な経中隔での送入および配置のための例示的な方法の各ステップを示している。
図9L】本発明の一実施形態を使用した人工心臓弁装置の例示的な経中隔での送入および配置のための例示的な方法の各ステップを示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、さまざまな修正および代替形態を受け入れることができるが、その詳細が図面に例として示され、本明細書で詳細に説明される。しかしながら、その意図が、本発明を説明される特定の実施形態に限定するものではないことを、理解すべきである。むしろ、その意図は、本発明の精神および範囲に包含されるすべての修正、等価物、および代替物を網羅することにある。
【0025】
図4図9Lが、本発明の装置のさまざまな実施形態およびそれらの使用方法を示している。これらの実施形態は、別々に図示および説明されているが、当業者であれば、これらの実施形態のうちの1つ以上の実施形態の態様を組み合わせることができることを、理解できるであろう。
【0026】
一般に、本発明のさまざまな実施形態は、例えばステントまたは他の折り畳み可能かつ拡張可能な装置などの折り畳み可能かつ拡張可能なフレームを備える人工心臓弁装置の送入を最適化するための装置および方法に関する。本明細書に記載の実施形態は、(1)折り畳んで送入カテーテルの管腔を通って移動させる際の装てん力を低減すること、ならびに/あるいは(2)人工心臓弁装置を備えるシステムおよび/または送入カテーテルの管腔への空気の導入を低減、最小化、または排除することによって、人工心臓弁装置の送入を最適化する。さらに、本明細書に記載の実施形態は、所望の治療部位における装置の最適な位置決めおよび封止を達成すべく必要に応じて再配置を行うことができるように送入後の人工心臓弁装置を再捕捉する能力および効率の改善をもたらす。
【0027】
図4が、本発明の一実施形態の人工心臓弁装置10の側面図を示している。人工心臓弁装置10は、流出領域16を有する底部14を定めているステント外側フレーム12を含む。ステント12は、頂部18と、ステント12の頂部外側端において頂部18に取り付けられた雌型ステントキャップ20とをさらに含む。図4の実施形態において、例示的なステント12は、ボール状の形状を備えているが、他の形状も本発明の範囲内であり、流出領域および雌型ステントキャップ(例えば、ステントキャップ20)を取り付けることができる頂部などの同様の特徴を含むことができる。
【0028】
装置10は、人工弁尖(図示せず)を含み、流出領域16へとステント12を通過する血流のための流路を提供する弁支持体24をさらに含む。埋め込まれたときに、弁支持体24は、弁輪に実質的に整列し、内部に支持された人工弁尖の結果として、逆行性の血流を防止しつつ、一方向の順行性の血流を可能にするように構成される。
【0029】
弁支持体24は、ステント12の内部に完全に収容されてよく、あるいは少なくとも一部分が下流(流出)方向にステント12から延出してもよい。さらに代替的には、弁支持体24は、ステント12から完全に外側に延びてもよく、ステント12の内部に半径方向に延びていなくてもよい。図4に示されるように、ステント12の底部14は、ステント12のフレームの底部14の一部分の外側を取り囲み、あるいは覆って図示されているスカート22によって、少なくとも部分的に覆われてもよい。スカート22を、心房壁および/または上部環状面の一部分に従って封止をもたらす材料で形成することができる。埋め込まれたときに弁支持体24がステント12から外側へと環状面よりも下方まで延びる実施形態において、弁支持体24の少なくとも一部分は、スカート22の材料で覆われてよい。これに加え、あるいはこれに代えて、そのような材料で形成されるスカートは、ステント12のフレームの一部分の内部を覆ってもよい。
【0030】
ステントキャップ20を、好ましくは、人工心臓弁装置10の正中線または長手軸においてステント12に取り付けることができるが、ステント12のフレームの頂部18に近接する他の位置も可能であり、本開示の発明の範囲内である。
【0031】
図5が、例えば図4に示した人工心臓弁装置10のステントキャップ20などの本発明の一実施形態のステントキャップの斜視図を示している。図5の実施形態において、ステントキャップ20は、その上面においておおむね平坦であるが、ステントキャップの他の形状および表面形状が提供されてもよい。人工心臓弁装置10が拡張され配置されると、ステントキャップ20の上面は、例えば左心房などの対象の心腔の上面または天井に押し付けられる。ステントキャップ20は、ステントキャップ20を雄型係合部材(図6および図8Aに関して後述される)に取り外し可能に係合させることを可能にする雌型構成を有し、雄型係合部材は、人工心臓弁装置10の装てん、経中隔での展開、再捕捉、および再配置を可能にするために、トルクワイヤと係合するように構成される。
【0032】
図5に示されるように、ステント12は、複数の支柱30を備える。ステントキャップ20は、ステント12の2つ以上の支柱30への固定された非回転の接続を含む。ステント12の支柱30へのステントキャップ20の固定された非回転の接続を、これらに限られるわけではないが溶接、はんだ付け、支柱30とステントキャップ20の底側に形成された対応する複数の溝との間の締まり嵌め、または任意の他の適切なやり方によって、達成することができる。いくつかの実施形態において、ステントキャップ20は、チタン、チタン合金、または他の適切な材料から形成されてよい。
【0033】
ステントキャップ20は、キャップ本体36を備え、キャップ本体36は、キャップ本体36を貫くアクセスチャネル32を定めている。ステントキャップ20がステント12に取り付けられると、アクセスチャネル32は、ステント12の支柱30から離間しており、雄型係合部材のチャネル32への妨げのないアクセスを可能にする。アクセスチャネル32は、やはりキャップ本体36によって定められる横ロック溝34Aおよび34Bに融合する。横ロック溝34Aおよび34Bは、アクセスチャネル32の半径方向直径よりも大きい半径方向(最大)直径を備える。別の実施形態において、ステントキャップ20の中心は、雄型係合部材の雄ねじを有する構成要素を係合させることができる雌ねじを有するアタッチメントを含むことができる。他の実施形態と同様に、ステントキャップ20の中心が雌ねじを有するアタッチメントを含んでいる実施形態は、人工心臓弁装置(例えば、装置10)の送入カテーテルへの装てん、人工心臓弁装置の経中隔での展開、および必要に応じた人工心臓弁装置の再配置を好都合に可能にすることができる。
【0034】
図6が、ステントキャップ20に取り外し可能に係合するように設計された雄型係合部材40の一実施形態の斜視図を示している。雄型係合部材40は、近位端に位置するねじ山領域42と、遠位端に位置するハンドル領域44と、ねじ山領域42とハンドル領域44との間を延びるステム領域46とを定める。ハンドル領域44は、左側係合ハンドル44Aおよび右側係合ハンドル44Bを定め、これらの各々は、ステム領域46から遠ざかるように横方向に或る距離だけ延びている。ステム領域46は、左側および右側係合ハンドルから遠ざかるように近位方向に延び、近位端において一連のねじ山で終わる。右側および左側係合ハンドル44A、44Bは、係合ハンドル44A、44Bの合計の長さがステントキャップ20の横ロック溝34A、34Bの合計の長さよりも長くなるような寸法であってよい。このようにして、ステム領域46がステントキャップ20のチャネル32内に導入され、雄型係合部材40が係合ハンドル44A、44Bを横ロック溝34A、34Bに向かって進めるように操作されると、係合ハンドル44A、44Bは、雄型係合部材40がステントキャップ20に解放可能に係合するように、横ロック溝34A、34Bの下方のステント12内に保持される。図8Aに関連してさらに後述されるように、ステントキャップ20を雄型係合部材40から解放するために、雄型係合部材40のステム領域46を、チャネル32を通ってステント12の外へと引き出すことができる。
【0035】
ステントキャップ20の中心が雌ねじを有するアタッチメントを含む実施形態において、雄型係合部材40は、雄型係合部材40の遠位端に第2の雄ねじ領域を含んでもよい。いくつかのそのような実施形態において、雄型係合部材40の近位端のねじ山領域42および雄型係合部材40の遠位端の第2の雄ねじ領域は、反対向きのねじ山を有する(すなわち、一方が右ねじのねじ山を有し、他方が左ねじのねじ山を有する)ことができる。このようにして、雄型係合部材40を、(図8Aおよび図8Bに関して説明される)トルクワイヤからねじ山領域42を外すことなく、ステントキャップ20を雄型係合部材40から解放するために、ステントキャップ20の雌ねじを有するアタッチメントから外すことができる。
【0036】
図6の実施形態にさらに示されるように、雄型係合部材40のステム領域46は曲線状の形状を備えるが、他の実施形態において、ステム領域46は真っ直ぐな形状または直線状の形状を備えてもよい。ステム領域46が曲線状である実施形態において、ステムは単一の曲線または半径を含むことができる。curvatureあるいは、図示のように、ステム領域46は、例えば半径または曲率度αを含む遠位側の曲線ならびに半径または曲率度βのより近位側の曲線など、複数の曲線を含んでもよい。曲率度αは、図6に示されるように、左側および右側係合ハンドル44A、44Bの中心から左側および右側係合ハンドル44A、44Bに対して垂直に引かれる線に対して、ステム領域46がハンドル領域44に出会う場所で測定することができる。曲率度βは、図6にさらに示されるように、この線に対して、ステム領域46がねじ山領域42と出会う場所で測定することができる。遠位側および近位側のそれぞれの曲線の曲率αおよびβは、実質的に等しい曲率を含んでも、あるいは互いに異なっていてもよい。
【0037】
さらに、図示のように、左側および右側係合ハンドル44A、44Bの中心から左側および右側係合ハンドル44A、44Bに対して垂直に引かれる線は、ねじ山領域42の中心軸を通って延びる線に対して非平行であって、μとして表される所定のオフセット角で交差してもよい。あるいは、左側および右側係合ハンドル44A,44Bに対する垂線と、ねじ山領域42の中心軸を通る線とが、互いに平行であってもよい。さらに代替的には、左側および右側係合ハンドル44A、44Bの間のハンドル領域44の中心に引かれる垂線は、ねじ山領域42の中心軸を通る線と同一直線上にあってもよい。任意のそのような実施形態において、雄型係合部材40のステム領域46のさまざまな湾曲は、人工心臓弁装置10の送入時に装置10の下方への回転および/または他の方向の操作を好都合に補助または可能にすることができる。
【0038】
図7が、雄型係合部材が取り付けられていない状態のステント12の頂部18に取り付けられたステントキャップ20の斜視図を示している。チャネル32および横ロック溝34A、34Bを、図7に見て取ることができ、ステントキャップ20が、チャネル32が頂部18における2つの支柱30の間の空間に整列するように、ステント12に取り付けられている。ステントキャップ20をステント12に対してこのように配置することにより、チャネル32へのアクセスが支柱30によって妨げられることがない。
【0039】
図8Aおよび図8Bが、本発明の一実施形態において、送入カテーテルの管腔に回転可能かつ平行移動可能に係合させることができるトルクワイヤへの雄型係合部材の接続を示している。図8Aは、ステントキャップ20およびトルクワイヤ50に接続された雄型係合部材40の斜視図を示しており、トルクワイヤ50は送入カテーテル52の管腔内に係合している。上述したように、雄型係合部材40のステム領域46をステントキャップ20のチャネル32へと導入し、係合ハンドル44A、44Bが横ロック溝34A、34Bによって保持されるように雄型係合部材40を前進させることによって、雄型係合部材40をステントキャップ20に接続することができる。これを、人工心臓弁装置10を治療部位への送入のための送入カテーテル52へと装てんする前に行うことができる。
【0040】
図8Aに示されるように、雄型係合部材40のステム領域46が、ステントキャップ20のアクセスチャネル32を通って平行移動させられており、左側および右側係合ハンドル44A、44Bが、ステントキャップ20の下方、すなわちステント12の本体またはフレームの内側に配置されている。左側および右側係合ハンドル44A、44Bは、ステントキャップ20の横ロック溝34A、34Bよりも長い長さを備え、したがって雄型係合部材40がそこに配置されると、雄型係合部材40およびステントキャップ20、したがってステント12の本体および人工心臓弁装置10の全体が、一緒に回転する。雄型係合部材40を、とりわけ、取り付けられたトルクワイヤ50の回転に応答して、ステントキャップ20のアクセスチャネル32内で回転または枢動するように構成することができる。さらに、雄型係合部材40は、ステントキャップ20に対する雄型係合部材40の関係および/または位置および/または向きを変化させることができるように、ステントキャップ20のアクセスチャネル32を通って平行移動可能であってよい。作業者がステントキャップ20からの雄型係合部材40の解放を望む場合、これを、左側および右側係合ハンドル44A、44Bがチャネル32への入口をかわすまで、アクセスチャネル32を通って雄型係合部材40のステム領域46を引き戻し、次いで雄型係合部材40をステント12の内部から外へと引き出すように、トルクワイヤ50を操作することによって達成することができる。
【0041】
図8Bが、トルクワイヤ50に接続され、送入カテーテル52によって定められた管腔内に部分的に受け入れられた雄型係合部材の側面部分切断図を示している。トルクワイヤ50は、雄型係合部材40のねじ山領域42に螺合するように構成された相補的なねじ山構造54を備える。トルクワイヤ50の回転により、雄型係合部材40がトルクワイヤの相補的なねじ山構造54に螺合し、あるいはトルクワイヤの相補的なねじ山構造54から外れる。トルクワイヤ50に螺合したとき、雄型係合部材40を、送入カテーテル52およびトルクワイヤ50の近位端において作業者が平行移動および回転させることができる。図8Bに示されるように、トルクワイヤ50の相補的なねじ山構造54を、トルクワイヤ50の近位部分が送入カテーテル52の管腔内に配置されたときに、雄型係合部材40のねじ山領域42に螺合させることができる。
【0042】
本出願の出願人は、トルクワイヤ50が、人工心臓弁装置10の押し引きだけでなく、心腔における人工心臓弁装置10の配置を最適化するためにトルクワイヤ50の近位ハンドル端から開始される人工心臓弁装置10の平行移動可能な回転に関しても、必要な引張強度を提供することを見出した。ひとたび人工心臓弁装置10がこのようにトルクワイヤ50に接続されると、拡張状態のステント12を、トルクワイヤ50を遠位側へと後退させ、あるいは引っ張ることによって、送入カテーテル52の管腔内へと折り畳んで装てんすることができる。同様に、人工心臓弁装置10を心腔内へと拡張させて送入した後に、人工心臓弁装置10を、トルクワイヤ50を遠位側へと引っ張ることによって送入カテーテル52の管腔に再び収めることができる。ステントキャップ20を、ステント12の本体の底部14、すなわち弁支持体24を備える部分が、治療部位において患者の生体構造と係合するときに、平行移動させることができる。
【0043】
図9A図9Lが、本発明の一実施形態を使用した人工心臓弁装置10などの人工心臓弁装置の例示的な経中隔での送入および配置のための例示的な方法の各ステップを示している。最初に、トルクワイヤ50が、図8Aおよび図8Bに関して上述したように、雄型係合部材40に接続される。次いで、雄型係合部材40は、やはり上述したように、人工心臓弁装置10のステントキャップ20に接続される。次に、人工心臓弁装置10のステント12の付勢的に拡張したフレームが、トルクワイヤ50を近位方向に引っ張ることによって、ステント12のフレームを送入カテーテル52の管腔内へと折り畳むことで、送入カテーテル52の管腔内に装てんされる。このようなやり方で人工心臓弁装置10が送入カテーテル52の管腔内に適切に配置されると、人工心臓弁装置10は、折り畳まれた状態で送入カテーテル52内に「装てん」されたと見なされる。
【0044】
図9Aおよび図9Bは、大腿部アクセスを使用して患者の右心房と左心房との間の中隔を通って進められたガイドワイヤ60を示している。いくつかの実施形態において、ガイドワイヤ60は、ガイドワイヤ60上に配置された拡張可能部材、例えばバルーン62を含むことができ、当技術分野でよく知られているように、バルーン62内の1つ以上の開口部を定める膨張管腔を定めることができる。バルーン62を図9Cに示されるように配置した状態で、流体をガイドワイヤ60の膨張管腔を介してバルーン62へと届けることで、バルーン62を膨張させ、ガイドワイヤ60によって生成された中隔アクセス開口部をさらに開くことができる。別の実施形態においては、バルーン62を、例えば送入カテーテル52などのカテーテルまたはシースに接続し、当技術分野で周知のように外部の流体リザーバに連通させることができる。
【0045】
ガイドワイヤ60上に配置されたバルーン62に加え、あるいは代えて、図9Dに示されるように、送入カテーテル52を使用し、当技術分野において周知のように対応するカテーテル66上に配置されてよいテーパ状の拡張部材64を、送入カテーテル52の管腔を通って送入することができる。そのような実施形態において、テーパ状の部材64は、ガイドワイヤ60によって生成された中隔アクセス開口部をさらに開くために使用され、その後に送入カテーテル52を通して引き出されてよい。次に、人工心臓弁装置10、雄型係合部材40、およびトルクワイヤ50の少なくとも遠位部分を受け入れた送入カテーテル52が、送入カテーテル52の遠位端およびその管腔が図9D図9Fのように左心房内に位置するまで、右心房を通り、中隔アクセス開口部を通って、血管系に導入される。
【0046】
次に、図9G図9Iに示されるように、トルクワイヤ50が作業者によって遠位方向に押されることにより、ステント12の折り畳まれたフレームが送入カテーテル52の管腔の遠位端から押し出されることで、ステント12の折り畳まれたフレームは、左心房の心腔内で付勢的に拡張する。次いで、トルクワイヤ50および/または送入カテーテル52は、送入カテーテル52、トルクワイヤ50、および/または拡張中の人工心臓弁装置10を位置決めおよび着座のために僧帽弁輪に向かって下方に回転させるように、作業者によって操作される。ここで、当業者であれば、雄型係合部材40のステム領域46のさまざまな実施形態のさまざまな曲率によって、人工心臓弁装置10の送入時の人工心臓弁装置10のそのような下方への回転および/または他の方向操作を補助または可能にできることを、理解できるであろう。
【0047】
人工心臓弁装置10が例示的な左心房内に適切に配置されると、トルクワイヤ50は、図8Aに関して説明したように、雄型係合部材40をステントキャップ20から切り離すように作業者によって操作される。次いで、トルクワイヤ50および雄型係合部材40は、送入カテーテル52の管腔へと近位方向に引き込まれる。その後に、送入カテーテル52は、図9J図9Lに示されるように、完全に拡張して配置された人工弁装置10を所定の場所に残して、中隔アクセス開口部を通って近位方向に患者の外へと引き出される。
【0048】
いくつかの場合、雄型係合部材40をステントキャップ20から切り離す前または切り離した後のいずれかに、送入カテーテル52の管腔から送出された後の人工弁装置10を再び捕捉することが望まれる場合がある。例えば、人工弁装置10を送出する作業者が、装置10が僧帽弁輪に所望の角度で接近していないと判断し、あるいは装置10が僧帽弁輪に適切に位置しておらず、もしくは適切に着座していないと判断する場合がある。この判断がなされたときに雄型係合部材40がステントキャップ20からまだ切り離されていない場合、送入カテーテル52の管腔へのトルクワイヤ50の遠位近引っ張りにより、拡張した装置10を遠位方向に引き戻すことによって、装置10を送入カテーテル52内に制御しながら折り畳むことで、拡張した装置10の再捕捉を達成することができる。あるいは、この判断がなされたときに雄型係合部材40がステントキャップ20から切り離されている場合、再捕捉のために、上述したように、ステントキャップ20を雄型係合部材40に再び係合させることができる。ステントキャップ20と雄型係合部材40との再係合は、例えば蛍光透視法などの既知の視覚化技術を使用して再捕捉を案内することによって達成することができる。したがって、いくつかの実施形態においては、雄型係合部材40および/またはステントキャップ20の1つ以上の部分が、放射線不透過性材料を含むことができる。
【0049】
すべての実施形態において、折り畳まれた人工心臓弁装置10が送入カテーテル52の管腔内に「装てん」されると、人工心臓弁装置10を、これらに限られるわけではないが経心尖、経大腿動脈、経心房、および経中隔の挿入技術など、任意の許容可能なアクセス経路および/または送入技術を使用し、上述の装置およびシステムならびに方法を使用して、送入カテーテル52によって患者の血管系を通って目的の心腔へと送入することができる。
【0050】
当業者であれば、上述の本発明の実施形態を使用して、人工心臓弁装置の送入カテーテル内へのインプラント装てん、送入カテーテルの管腔を通る装置の平行移動、送入カテーテルからの装置の制御された放出、対象の心腔内での拡張中/拡張後の装置の配置および位置決め、心腔内での装置の再配置および再位置決め、ならびに/あるいは心腔内のひとたび拡張した装置の再捕捉および再折り畳みを改善できることを、理解できるであろう。
【0051】
本明細書において述べられた本発明およびその用途の説明は、例示的なものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。さまざまな実施形態の特徴を、本発明の企図内で他の実施形態と組み合わせることが可能である。本明細書に開示された実施形態について、変形および修正が可能であり、当業者であれば、本特許文書を検討することで、実施形態のさまざまな要素の実際的な代替物および等価物を理解できるであろう。開示された実施形態のこれらの変形および修正ならびに他の変形および修正を、本発明の範囲および精神から逸脱することなく行うことが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図9H
図9I
図9J
図9K
図9L