(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】被取付体取付構造及び被取付体取付方法
(51)【国際特許分類】
B08B 1/00 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
B08B1/00
(21)【出願番号】P 2022528811
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2021020551
(87)【国際公開番号】W WO2021246344
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2020095732
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川製紙所
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】後藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正義
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/024985(WO,A1)
【文献】特開2011-16080(JP,A)
【文献】特開平11-115385(JP,A)
【文献】実公昭54-10868(JP,Y2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0103317(US,A1)
【文献】特開2014-35489(JP,A)
【文献】特許第5955453(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/00-17/06
G02B 6/36
B65H75/00-75/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着層を有する第1面と、前記第1面と反対側の面でかつ粘着層を有しない第2面と、を有する被取付体と、
前記被取付体の前記第2面と向かい合って前記被取付体が取り付けられる取付部であって、前記被取付体が取り付けられた状態で前記被取付体の少なくとも一部が変形可能である、取付部と、を備える被取付体取付構造。
【請求項2】
前記被取付体の少なくとも一部は、前記取付部に対して離れる方向又は近づく方向に変形可能である請求項1に記載の被取付体取付構造。
【請求項3】
前記被取付体の前記第2面と向かい合って前記被取付体が取り付けられた後に、前記被取付体の前記第1面が前記取付部に向かって前記被取付体が取り付けられる請求項2に記載の被取付体取付構造。
【請求項4】
前記被取付体の前記第2面と向かい合って前記被取付体が第1の巻回方向に巻回された後に、前記被取付体の前記第1面が前記取付部に向かって前記被取付体が前記第1の巻回方向とは異なる第2の巻回方向に巻回される請求項3に記載の被取付体取付構造。
【請求項5】
前記取付部は、前記被取付体と係合可能であり、前記被取付体の巻回の方向を係合により前記第1の巻回方向から前記第2の巻回方向に変更する係合部を有する請求項4に記載の被取付体取付構造。
【請求項6】
粘着層を有する第1面と、前記第1面と反対側の面でかつ粘着層を有しない第2面と、を有する被取付体の前記第2面を向かい合わせて取付部に取り付け、前記被取付体を取り付けた状態で前記被取付体の少なくとも一部を変形可能にする被取付体取付方法。
【請求項7】
前記被取付体の前記第2面を向かい合わせて前記取付部に取り付けた後に、前記被取付体の前記第1面を向かい合わせて前記取付部に取り付ける請求項6に記載の被取付体取付方法。
【請求項8】
前記被取付体の前記第2面を向かい合わせて前記被取付体を第1の巻回方向に巻回させた後に、前記第1の巻回方向とは異なる第2の巻回方向に前記被取付体を案内し、前記被取付体の前記第1面を前記取付部に向かい合わせて巻回させる請求項7に記載の被取付体取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
被取付体を取付体に取り付けるための被取付体取付構造、及び、被取付体を取付体に取り付けるための被取付体取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺な形状のテープなどの可撓性を有する媒体を巻回するリールやボビンを備えるものとして光コネクタを清掃するための光コネクタ用清掃具などがある。光コネクタ用清掃具は、テープ状の不織布をリールに事前に巻回させておき、光コネクタのフェルールの端面に当接させて清掃した後、巻き取る構成を有する(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-35489号公報
【文献】特許第5955453号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したように、長尺な形状の可撓性を有する媒体を用いる器具や機器では、事前にリールやボビンなどに媒体を巻回する必要がある。具体的には、リールやボビンの軸芯に媒体を連結しておき、リールやボビンを回転させて、媒体を軸芯に巻きつけていく処理が必要となる。媒体は可撓性を有するため、リールやボビンの回転によって媒体に応力が加えられて歪みが生ずる。例えば、応力によって剪断歪みなどが媒体に生ずる。媒体を巻きつける過程で、歪みが十分に解放されるよりも以前に媒体が巻回されて、歪みを有する状態で次々と媒体が重畳されてしまう場合がある。このため、互いに重畳された媒体には至るところで歪みが蓄積されていく。
【0005】
巻きつけ処理が完了した時点で適切に媒体が巻回されているように見える場合であっても、巻回されている媒体に歪みが蓄積されているため、その後、経時的に歪みが解放されていく。この歪みの解放に伴って、媒体に横ズレ(媒体の幅方向への変位)が起こり、巻回された媒体の全体の形状が螺旋状に変位する現象が生ずる。言い換えれば、時間と共に、巻回された媒体の全体の形状が、いわゆるタケノコ状に変形する。例えば、温度が高い環境で巻回された媒体を保管すると螺旋状に変位しやすい。
【0006】
このため、巻回された媒体を器具や機器などに収納した後に、巻回された媒体の全体の形状が螺旋状に変位した場合には、器具や機器などから媒体を引き出すことが困難になったり媒体が損傷したりする場合もある。
【0007】
螺旋状(たけのこ状)の形成は、巻き締まりによって生ずると解されている。巻き締まりとは、部分的に緩く巻回された部分を有して、媒体が巻回される現象をいう。蓄積された歪みが解放されると、緩く巻回された部分で横ズレが起こり、螺旋状(たけのこ状)が形成されやすくなる。
【0008】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、媒体などの被取付体を歪みが蓄積されにくくして取り付け、被取付体の適切な取付状態を維持できる被取付体取付構造及び被取付体取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による被取付体取付構造の特徴は、
粘着層を有する第1面と、前記第1面と反対側の面でかつ粘着層を有しない第2面と、を有する被取付体と、
前記被取付体の前記第2面と向かい合って前記被取付体が取り付けられる取付部であって、前記被取付体が取り付けられた状態で前記被取付体の少なくとも一部が変形可能である、取付部と、を備えることである。
【0010】
本発明による被取付体取付方法の特徴は、
粘着層を有する第1面と、前記第1面と反対側の面でかつ粘着層を有しない第2面と、を有する被取付体の前記第2面を向かい合わせて取付部に取り付け、前記被取付体を取り付けた状態で前記被取付体の少なくとも一部を変形可能にすることである。
【発明の効果】
【0011】
被取付体を歪みが蓄積されにくくして取付部に取り付け、被取付体の適切な取付状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施の形態による清掃具10の全体の概略と光コネクタOCとを示す斜視図である。
【
図2】本実施の形態による清掃具10の左ハウジング110Lを外した状態を示す斜視図である。
【
図3】本実施の形態による清掃具10の巻取リール300を外した状態を示す斜視図である。
【
図4】本実施の形態による清掃具10のヘッド部400における清掃体CTの経路を示す斜視図である。
【
図5】巻取リール300の構造を示す斜視図である。
【
図6】巻取リール300の構造を示す正面図である。
【
図7】巻取リール300に清掃体CTを取り付ける過程を示す概略図である。
【
図8】巻取リール300に清掃体CTを取り付けた状態を示す正面図である。
【
図9】巻取リール300に清掃体CTを取り付ける過程を示す概略図である。
【
図10】巻取リール300に清掃体CTを取り付けた状態を示す正面図である。
【
図11】巻取リール300に清掃体CTを取り付けた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<<<<本実施の形態の概要>>>>
<<第1の実施の態様>>
第1の実施の態様によれば、
粘着層を有する第1面(例えば、後述する第1面RSなど)と、前記第1面と反対側の面でかつ粘着層を有しない第2面(例えば、後述する第2面NSなど)と、を有する被取付体(例えば、後述する清掃体CTなど)と、
前記被取付体の前記第2面と向かい合って前記被取付体が取り付けられる取付部であって、前記被取付体が取り付けられた状態で前記被取付体の少なくとも一部(例えば、後述する環状部LPなど)が変形可能である、取付部(例えば、後述する供給リール200の取付部224など)と、を備える被取付体取付構造が提供される。
【0014】
被取付体取付構造は、被取付体と取付部とを備える。
【0015】
被取付体は、第1面と第2面とを有する。第1面は粘着層を有する。第2面は第1面と反対側の面である。第2面は粘着層を有しない。
【0016】
取付部には、まず、被取付体の第2面と向かい合って被取付体が取り付けられる。すなわち、取付部と直接に接触するのは、被取付体の第2面であり、被取付体の第1面ではない。第2面は、粘着層を有しないので、被取付体が取付部と粘着したり接着したりすることはない。被取付体の少なくとも一部は、取付部と粘着したり接着したりすることはないので、取付体に取り付けられた状態で変形することができる。
【0017】
被取付体の少なくとも一部は、取付体に取り付けられた状態で変形できるので、被取付体を取付体に取り付ける際に、被取付体に加えられる応力を分散させることができる。すなわち、取り付け過程において、被取付体の特定の位置に応力が集中的に加えられる場合であっても、被取付体の少なくとも一部の変形によって被取付体の少なくとも一部の姿勢や位置を微調整できる。姿勢や位置の微調整によって、被取付体に加わる応力を分散させて、応力により生じた歪みを解放してから被取付体を取付体に取り付けることができる。歪みが蓄積されないように被取付体を取り付けることで、取り付け後の経時的な媒体の変位を防止して、被取付体を取付体に取り付けた状態を維持することができる。
【0018】
なお、被取付体の少なくとも一部は変形でき、取付部に対して、摺動、移動、変位することもできる。
【0019】
<<第2の実施の態様>>
第2の実施の態様は、第1の実施の態様において、
前記被取付体の少なくとも一部は、前記取付部に対して離れる方向又は近づく方向(例えば、後述する取付部224の半径方向や周方向など)に変形可能である。
【0020】
取付部に対して離れる方向又は近づく方向に変形できるので、被取付体の少なくとも一部は、取付部に対して、摺動、移動、変位することができる。このようにして、被取付体に加わる応力を分散させて、歪みが蓄積されないように被取付体を取り付け、被取付体を取り付けた状態を維持することができる。
【0021】
<<第3の実施の態様>>
第3の実施の態様は、第2の実施の態様において、
前記被取付体の前記第2面と向かい合って前記被取付体が取り付けられた後に、前記被取付体の前記第1面が前記取付部に向かって前記被取付体が取り付けられる。
【0022】
第3の実施の態様は、より詳細には、
前記被取付体の前記第2面と向かい合って前記被取付体が取り付けられた後に、前記被取付体の前記第1面が、前記取付部に既に取り付けられている被取付体に取り付けられる。
【0023】
第3の実施の態様は、さらに、より詳細には、
前記被取付体の前記第2面と向かい合って前記被取付体が取り付けられた後に、前記被取付体の前記第1面が、前記取付部に既に取り付けられている被取付体の前記第1面と向かい合って取り付けられる。
【0024】
被取付体の少なくとも一部は、取付部と粘着したり接着したりすることはなく取付体に取り付けられる。被取付体の少なくとも一部は、取付部にクリアランスを有して取付体に取り付けられ、取付部に対して、摺動、移動、変位することができる。さらに、前記取付部に既に取り付けられている被取付体の第1面に、被取付体の第1面が新たに取り付けられる。したがって、既に取り付けられている第1面と、新たに取り付けられる第1面とを向かい合わせることによって、粘着層を積層し、粘着層を実質的に厚くすることができる。粘着層を厚くすることで、復元力(付勢力)を高め、被取付体に加えられた応力を迅速に緩和して、歪みを十分に解消した後に被取付体を取り付けることができる。このように、被取付体の少なくとも一部の取付部に対する摺動、移動、変位と、応力の迅速な緩和とにより、歪みが蓄積されないように被取付体を取り付けることができ、被取付体を取付体に取り付けた状態を維持することができる。
【0025】
<<第4の実施の態様>>
第4の実施の態様は、第3の実施の態様において、
前記被取付体の前記第2面と向かい合って前記被取付体が第1の巻回方向(例えば、後述する
図7~
図11の時計回りなど)に巻回された後に、前記被取付体の前記第1面が前記取付部に向かって前記被取付体が前記第1の巻回方向とは異なる第2の巻回方向(例えば、後述する
図7~
図11の反時計回りなど)に巻回される。
【0026】
第4の実施の態様は、より詳細には、
前記被取付体の前記第2面と向かい合って、前記被取付体が第1の巻回方向(例えば、後述する
図7~
図11の時計回りなど)に巻回された後に、前記被取付体が前記第1の巻回方向とは異なる第2の巻回方向(例えば、後述する
図7~
図11の反時計回りなど)に、前記被取付体の前記第1面が、前記取付部に既に巻回されている被取付体に巻回される。
【0027】
取付部と直接に接する部分のクリアランスを確保して、取付部に対して、摺動、移動、変位することができる。さらに、既に取り付けられている第1面と、新たに取り付けられる第1面とによって粘着層を積層し、粘着層を実質的に厚くする。粘着層を厚くすることで、被取付体に加えられた応力を迅速に緩和でき、歪みを確実に解消した後に被取付体を取り付けることができる。被取付体の少なくとも一部の取付部に対する摺動、移動、変位と、応力の迅速な緩和とにより、歪みが蓄積されないように被取付体を取り付けることができ、被取付体を取り付けた状態を維持することができる。
【0028】
<<第5の実施の態様>>
第5の実施の態様は、第4の実施の態様において、
前記取付部は、前記被取付体と係合可能であり、前記被取付体の巻回の方向を係合により前記第1の巻回方向から前記第2の巻回方向に変更する係合部(例えば、後述する第2取付部224bなど)を有する。
【0029】
取付部は係合部を有する。取付部は、被取付体と係合することができる。取付部は、被取付体と係合することで、被取付体の巻回の方向を第1の巻回方向から第2の巻回方向に変更する。
【0030】
被取付体の巻回方向を的確に変更することができ、取付部と直接に接する部分のクリアランスを確保して、取付部に対して、摺動、移動、変位することができる。既に取り付けられている第1面と、新たに取り付けられる第1面とを向かい合わせることで、粘着層を積層し、粘着層を厚くする。粘着層を厚くすることで、被取付体に加えられた応力を迅速に緩和し、歪みを確実に解消した後に被取付体を取り付けることができる。被取付体の少なくとも一部の取付部に対する摺動、移動、変位と、応力の迅速な緩和とにより、歪みが蓄積されないように被取付体を取り付けて、被取付体を取り付けた状態を維持することができる。
【0031】
<<第6の実施の態様>>
第6の実施の態様によれば、
粘着層を有する第1面(例えば、後述する第1面RSなど)と、前記第1面と反対側の面でかつ粘着層を有しない第2面(例えば、後述する第2面NSなど)と、を有する被取付体(例えば、後述する清掃体CTなど)の前記第2面を向かい合わせて取付部(例えば、後述する供給リール200の取付部224など)に取り付け、前記被取付体を取り付けた状態で前記被取付体の少なくとも一部(例えば、後述する環状部LPなど)を変形可能にする被取付体取付方法が提供される。
【0032】
被取付体は、第1面と第2面とを有する。第1面は、粘着層を有する。第2面は、第1面と反対側の面である。第2面は、粘着層を有しない。
【0033】
取付部には、まず、被取付体の第2面と向かい合って被取付体が取り付けられる。すなわち、取付部と直接に接触するのは、被取付体の第2面であり、被取付体の第1面ではない。第2面は、粘着層を有しないので、被取付体が取付部と粘着したり接着したりすることはない。被取付体の少なくとも一部は、取付部と粘着したり接着したりすることはないので、取付体に取り付けられた状態で変形することができる。
【0034】
被取付体の少なくとも一部は、取付体に取り付けられた状態で変形できるので、被取付体を取付体に取り付ける際に、被取付体に加えられる応力を分散させることができる。すなわち、取り付け過程において、被取付体の特定の位置に応力が集中的に加えられる場合であっても、被取付体の少なくとも一部の変形によって被取付体の少なくとも一部の姿勢や位置を微調整できる。姿勢や位置の微調整によって、被取付体に加わる応力を分散させて、応力により生じた歪みを解放してから被取付体を取付体に取り付けることができる。歪みが蓄積されないように被取付体を取り付けることで、取り付け後の経時的な媒体の変位を防止して、被取付体を取付体に取り付けた状態を維持することができる。
【0035】
なお、被取付体の少なくとも一部は、変形でき、取付部に対して、摺動、移動、変位することもできる。
【0036】
<<第7の実施の態様>>
第7の実施の態様は、第6の実施の態様において、
前記被取付体の前記第2面を向かい合わせて前記取付部に取り付けた後に、前記被取付体の前記第1面を向かい合わせて前記取付部に取り付ける。
【0037】
第7の実施の態様は、より詳細には、
前記被取付体の前記第2面と向かい合って前記被取付体を取り付けた後に、前記被取付体の前記第1面を、前記取付部に既に取り付けられている被取付体に取り付ける。
【0038】
第7の実施の態様は、さらに、より詳細には、
前記被取付体の前記第2面と向かい合って前記被取付体が取り付けられた後に、前記被取付体の前記第1面が、前記取付部に既に取り付けられている被取付体の前記第1面と向かい合って取り付けられる。
【0039】
被取付体の少なくとも一部は、取付部と粘着したり接着したりすることはなく取付体に取り付けられる。被取付体の少なくとも一部は、取付部にクリアランスを有して取付体に取り付けられ、取付部に対して、摺動、移動、変位することができる。さらに、前記取付部に既に取り付けられている被取付体の第1面に、被取付体の第1面が新たに取り付けられる。したがって、既に取り付けられている第1面と、新たに取り付けられる第1面とを向かい合わせることによって、粘着層を積層し、粘着層を実質的に厚くすることができる。粘着層を厚くすることで、復元力(付勢力)を高め、被取付体に加えられた応力を迅速に緩和して、歪みを確実に解消した後に被取付体を取り付けることができる。このように、被取付体の少なくとも一部の取付部に対する摺動、移動、変位と、応力の迅速な緩和とにより、歪みが蓄積されないように被取付体を取り付けることができ、被取付体を取り付けた状態を維持することができる。
【0040】
<<第8の実施の態様>>
第8の実施の態様は、第7の実施の態様において、
前記被取付体の前記第2面を向かい合わせて前記被取付体を第1の巻回方向に巻回させた後に、前記第1の巻回方向とは異なる第2の巻回方向に前記被取付体を案内し、前記被取付体の前記第1面を前記取付部に向かい合わせて巻回させる。
【0041】
第8の実施の態様は、より詳細には、
前記被取付体の前記第2面と向かい合って前記被取付体が第1の巻回方向(例えば、後述する
図7~
図11の時計回りなど)に巻回された後に、前記被取付体が前記第1の巻回方向とは異なる第2の巻回方向(例えば、後述する
図7~
図11の反時計回りなど)に、前記被取付体の前記第1面を、前記取付部に既に巻回されている被取付体に巻回する。
【0042】
取付部と直接に接する部分のクリアランスを確保して、取付部に対して、摺動、移動、変位することができる。さらに、既に取り付けられている第1面と、新たに取り付けられる第1面とによって粘着層を積層し、粘着層を実質的に厚くする。粘着層を厚くすることで、被取付体に加えられた応力を迅速に緩和でき、歪みを十分に解消した後に被取付体を取り付けることができる。被取付体の少なくとも一部の取付部に対する摺動、移動、変位と、応力の迅速な緩和とにより、歪みが蓄積されないように被取付体を取り付けることができ、被取付体を取り付けた状態を維持することができる。
【0043】
<<第9の実施の態様>>
前記被取付体は、長尺な形状を有するものが好ましい。
【0044】
<<第10の実施の態様>>
前記被取付体は、可撓性を有するものが好ましい。
【0045】
<<第11の実施の態様>>
前記被取付体は、前記第1の巻回方向に巻回された後、反転して前記第2の巻回方向に巻回されるものが好ましい。
【0046】
<<第12の実施の態様>>
前記取付体は、第1の取付部と、前記第1の取付部から間隙を有して離隔した第2の取付部と、を有し、
前記第1の取付部に前記被取付体の前記第2面と向かい合わせて前記第1の取付部に前記被取付体を巻回させ、
前記被取付体を前記間隙に案内し、
前記第2の取付部に前記被取付体の前記第1面と向かい合わせて前記第2の取付部に前記被取付体を巻回させ、
前記被取付体を前記第1の取付部及び前記第2の取付部に周回させるものが好ましい。
【0047】
<<第13の実施の態様>>
前記第1の取付部は、前記第2の取付部よりも大きいものが好ましい。
【0048】
<<第14の実施の態様>>
前記第1の取付部及び前記第2の取付部を有する前記取付体は、円筒状又は円柱状の形状を有するものが好ましい。
【0049】
<<<<本実施の形態の詳細>>>>
以下に、本実施の形態について図面に基づいて説明する。本実施の形態では、被取付体取付構造又は被取付体取付方法の被取付体の一例として、光コネクタOCのフェルール端面OEを清掃するための清掃体CTを用いて説明する。なお、清掃体CTに限定されることはなく、例えば、ICタグラベル、回路接続用テープ等、粘着層を有する被取付体を取り付けるための被取付体取付構造や被取付体取付方法に用いることができるものであればよい。
【0050】
<<<<<清掃具10>>>>
清掃具10は、清掃体CTを用いて、光コネクタOCのフェルール端面OEを清掃するための光コネクタ用の清掃具(清掃工具)である。
【0051】
<<<方向>>>
本明細書で用いる方向について、説明する(
図1及び
図2参照)。
【0052】
<前・後・長手>
清掃具10の清掃ヘッド410が位置する側や方向を前側や前方向とし、ハウジング100が位置する側や方向を後側や後方向とする。なお、前後方向は、ヘッド部400の長手方向と称する場合もある。
【0053】
<右・左>
後側から前側に向かって右の側や方向を右側や右方向と称し、後側から前側に向かって左の側や方向を左側と称する。
【0054】
<下・上>
コイルバネ140が位置する側や方向を下側や下方向や下部と称し、供給リール200や巻取リール300が位置する側や方向を上側や上方向や上部と称する。
【0055】
<上流・下流>
清掃体CTを送り出して供給する側を上流と称し、清掃体CTが巻き取られる側が下流と称する。後述する供給リール200が上流となり、巻取リール300が下流となる。
【0056】
<幅方向>
清掃体CTの幅に沿った方向を幅方向と称する。後述するように、清掃体CTは、長尺な形状を有し、清掃体CTは、長手方向と短手方向とを有する。清掃体CTの長手方向は、清掃体CTの長尺の方向である。清掃体CTの短手方向は、清掃体CTの幅方向と同じである。
【0057】
また、後述する供給リール200の幅方向や巻取リール300の幅方向は、清掃体CTが巻回された状態での清掃体CTの幅方向と同じである。
【0058】
<清掃体CT>
清掃体CTは、長尺で可撓性を有し、少なくとも一部に粘着層(樹脂層)を有しており、粘着層が、光コネクタOCのフェルール端面OE及びガイドピンGP(図示せず)に接触することで塵埃などの汚れを除去することができる。清掃体CTは、例えば、テープ状の形状や糸状などの一体で連続した形状を有する。
【0059】
清掃体CTの幅は、特に限定されない。清掃体CTの幅は、光コネクタOCのフェルール端面OEの幅以上にすることができる。さらに、清掃体CTの幅は、ガイドピンGP(図示せず)を含んだ幅以上にすることもできる。
【0060】
清掃体CTの厚みは、特に限定されないが、例えば、0.05mm~2mmとすることができる。
【0061】
清掃体CTは、粘着層単独であってもよく、基材上に積層されていてもよい。また、剥離フィルムが積層されていてもよい。基材は、粘着層だけで清掃体CTとして支持ができない場合に、支持材として用いることができる。剥離フィルムは、本発明の清掃具10を使用していない期間に、清掃体CTの清掃面を汚れや破損から保護するために用いることができる。
【0062】
清掃体CTは、清掃体ヘッドに送られ、清掃体ヘッド上で光コネクタOCのフェルール端面OE及びガイドピンGP(図示せず)に接触させられる。基材は、粘着層の清掃体ヘッドに接する表面に積層される。剥離フィルムは、粘着層の基材とは反対側の表面に積層される。剥離フィルムは、清掃体CTが清掃体ヘッドに到達する前に、剥離され、清掃体CTから除外される。
【0063】
粘着層は、光コネクタOCのフェルール端面OE及びガイドピンGP(図示せず)との接触により、汚れが除去できる限りにおいて、特に限定されず、例えば、粘着剤、樹脂フォーム(発泡体)、ガイドピンGP(図示せず)が埋設、刺突又は貫通できる柔軟性を有する樹脂、不織布、織布等を挙げることができる。
【0064】
粘着剤の材質としては、公知のものを用いることができ、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等が挙げられる。これら粘着剤には、粘着付与剤、充填剤等の添加剤が配合されていてもよい。公知の粘着剤は、容易に入手が可能であり、粘着力や糊残り防止効果を容易に改変することができるという利点を有する。
【0065】
粘着剤は、接触により汚れを清掃体CTに付着させる機能があれば接着剤でもよく、例えば、弱い粘着性を有するオレフィン系接着剤等を用いることが可能である。接着剤は、光コネクタOCのフェルール端面OE及びガイドピンGP(図示せず)に接触したときに、糊残り等の光コネクタOCのフェルール端面OEへの汚染を抑制又は防止対策を施したものが好ましい。
【0066】
前記樹脂フォーム(発泡体)は、公知のものを使用することができる。樹脂フォーム(発泡体)が形成する清掃面に汚れを捕捉できるメカニズムは解明のための検証が必要ではあるが、例えば、柔軟な清掃面に押し付けられた汚れが樹脂フォーム(発泡体)に埋没(あるいは半埋没)して清掃面から離脱しにくくなり、樹脂フォーム(発泡体)に捕捉されることが、一例として考えられる。
【0067】
別の考察例としては、光コネクタOCのフェルール端面OEやガイドピンGPを樹脂フォーム(発泡体)に押し付けた際、樹脂フォーム(発泡体)中の気泡が圧し潰されて、内部の大気が外部に押し出される。さらに、連続気泡の一部が圧し潰されて、遮断される。この際、樹脂フォーム(発泡体)表面と、光コネクタOCのフェルール端面OEやガイドピンGPの表面は、減圧されて吸着される。さらに、小さなゴミは気泡内に吸い込まれ、気泡よりも大きなゴミは、気泡内が減圧することにより吸着されることも一例として考えられる。
【0068】
また、種々検証の結果、樹脂フォーム(発泡体)はガイドピンGPを貫通させてもガイドピンGPへの異物の付着が生じないことを把握した。これは、樹脂フォーム(発泡体)は、気泡を有するため、非常に柔軟な材質であるとともに、ガイドピンGPが刺突、貫通し易い。従って、ガイドピンGPが、樹脂フォーム(発泡体)に刺突、貫通した際、樹脂フォーム(発泡体)が、ガイドピンGPの側面部に絡みつき、ガイドピンGPの側面部のゴミを効率よく除去できると考えられる。樹脂フォーム以外であっても貫通によりガイドピンGPへの異物の付着が生じないものであれば好適に用いることができる。
【0069】
樹脂フォーム(発泡体)の材質は、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹、エポキシ系樹脂、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂フェノール樹脂、シリコーン樹脂等を含む樹脂フォーム(発泡体)を挙げることができる。これらの材質は、少なくとも1つ又は複数組み合わせて用いることができる。これらのうち、柔軟性が優れ、圧縮残留歪みが低くなることからウレタンフォームが好適である。また、強度に優れるとともに軽量性、断熱性に優れていることから、(メタ)アクリルフォームを用いることも好適である。また樹脂フォーム(発泡体)は、ウレタンフォームと、(メタ)アクリルフォームとを混合して用いる場合には、その混合比により、ウレタンフォームの特性と、アクリルフォームの特性を、用途などに合わせて調整することが可能であることから好適である。
【0070】
樹脂フォーム(発泡体)に含まれる気泡の構造は、特に限定されず、公知のものを用いることができる。気泡の構造としては、各気泡が樹脂フォーム(発泡体)中で、独立して存在する独立気泡構造、又は、各気泡が樹脂フォーム(発泡体)中で連続的に繋がっている連続気泡構造を有することができる。連続気泡構造は、各気泡が、連通貫通孔によって接続されている場合や、独立気泡の壁部を破壊して接続されている場合を含む。前述したようにガイドピンGPが樹脂フォーム(発泡体)を刺突又は貫通し易くなり、効率よくゴミを除去することができるため連続気泡構造を有する樹脂フォーム(発泡体)が好ましい。
【0071】
前記樹脂フォーム(発泡体)の製造方法は特に限定されず、公知の方法により、発泡体を製造することができる。例えば、樹脂フォーム(発泡体)は、化学発泡、物理発泡のいずれの製法のものでもよく、独立気泡を形成後、物理的に気泡を粉砕して連通した連続気泡発泡体でもよい。例えば、特開2012-56985号公報に開示されている発泡体の製造方法などが好適である。
【0072】
前記柔軟性を有する樹脂としては、公知のものを用いることができ、例えば、ポリウレタン樹脂やポリアクリル樹脂を挙げることができる。またそれらをゲル化したゲル材を含むことができる。ゲル材としては、一般にポリウレタンゲルと呼ばれる、軟質ポリウレタン樹脂などを用いることができる。ゲル材は、変形しやすいと同時に、ガイドピンGPが、容易に、埋設、刺突又は貫通することができる。この場合にゲル材の粘着力が弱い場合でも、軟質ポリウレタンのもつ柔らかさによる埋設効果や、刺突や貫通することで、光コネクタOCのフェルール端面OEやガイドピンGPから、汚れを除去することができる。
【0073】
また、ゲル材は微粘着であるため、光コネクタOCの脱着が容易であり、糊残り等を生じず、さらに汚れが付着した軟質ポリウレタンの表面を水で濡らした無塵布で清掃することで、再利用が可能である。前記軟質ポリウレタンとしては、例えば、特開2001-316448号公報に開示されている軟質組成物などを好適に用いることができる。
【0074】
<<汚染物質捕集体(以下、粘着層ともいう。)>>
粘着層は、その組成は限定されないが、ポリウレタン樹脂を含み、アスカーC硬度が45~90であり、引張強度が2.0MPa以上30MPa以下である。
【0075】
粘着層が前記特性を有すると、粘着層は、清掃対象表面の形状を追従することができ、特にガイドピンが突設された光ファイバ用の光コネクタの接続端面に用いた場合には、ガイドピンの形状を追従することが可能となり、ガイドピン及び光コネクタ接続端面への清掃効果が著しく高い。また、一度粘着層に捕集された汚染体が、再度清掃対象表面に付着する再付着も起こらないため、極めて清掃効果の高いクリーナとして用いることができる。
【0076】
粘着層の形状は、特に限定されず、例えば、帯状又はシート状のフィルム、棒状、柱状、錘状、錘台状及びブロック状の多角形体又は円形体、楕円形体、球状、楕円球状としてもよい。
【0077】
粘着層は、基材、支持体、粘着層保持体に、直接又は他の層を介して積層されてもよいし、一部が露出した状態で収容体等に収容されていてもよい。
【0078】
基材は、基材の前記捕集体を積層する表面と対向する表面に離型層を含んでもよい。
【0079】
粘着層は、渦巻き状に巻回されてもよい。
【0080】
<<ポリウレタン樹脂>>
粘着層は、ポリウレタン樹脂を含む。ポリウレタン樹脂は、前記粘着層の力学特性を有する限りにおいて、その組成は限定されない。
【0081】
ポリウレタン樹脂は、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とを有し、その組成中に、その他の成分を含んでいてもよい。
【0082】
<ポリオール成分>
ポリウレタン樹脂は、ポリオール成分を含む。ポリオール成分は、複数種類のポリオールを含むことができる。
【0083】
ポリオール成分の、その1分子の構造内に含まれる水酸基数(以降、官能基数とする場合がある)は、2~5であり、2~3が好ましい。ポリオールの水酸基数が、かかる範囲にある場合には、伸びが良く、破断し難い、形状追従性の高いポリウレタン樹脂物とすることができる。ポリオール成分として、複数種類のポリオールを含む場合は、各ポリオールの配合量の割合と、各ポリオールの水酸基数とを乗じたものを加算することで、ポリオール成分の水酸基数とすることができる。
【0084】
ポリオール成分の数平均分子量は、100~6000とすることができる。ポリオール成分の数平均分子量がかかる範囲にある場合には、伸びが良く、破断し難い、形状追従性の高いポリウレタン樹脂物とすることができる。
【0085】
ポリオールとしては、上述の特徴を満たす限りにおいて特に限定されない。ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリジエン系ポリオール、水添ポリジエンポリオール、及び、これらのポリマーポリオール等が挙げられる。前記ポリオールは、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0086】
ポリエステルポリオールとしては、ポリオールとポリカルボン酸を脱水縮合反応して得られるポリエステルポリオールや、ε-カプロラクトン、メチルバレロラクトン等のラクトンモノマーの開環重合で得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0087】
前記ポリエステルポリオールを形成するポリオールは、効果を阻害しない限りにおいて、特に限定されない。前記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,4-テトラコサンジオール、1,6-テトラコサンジオール、1,4-ヘキサコサンジオール、1,6-オクタコサンジオールグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール;1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール,トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、2,5-ノルボルナンジオール、1,3-アダマンタンジオール、ダイマージオール等の脂環族ポリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の芳香族ポリオール;を挙げることができる。これらは1つ又は複数を組み合せて用いることができる。
【0088】
前記ポリカルボン酸は、その分子構造中にカルボキシル基を複数有する物であり、効果を阻害しない限りにおいて、特に限定されない。ポリカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等の脂肪族ポリカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びナフタレンジカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸及びヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環族ポリカルボン酸;又はこれらの酸エステル;を挙げることができる。これらは、1つ又は複数を組み合せて用いることができる。
【0089】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール等の多価アルコールの少なくとも1種と、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等とを反応させて得られるものが挙げられる。
【0090】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルをそれぞれ重合させて得られるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等、及び、これらのコポリエーテルが挙げられる。また、グリセリンやトリメチロールエタン等の多価アルコールを用い、上記の環状エーテルを重合させて得ることもできる。
【0091】
ポリエステルエーテルポリオールとしては、ポリカルボン酸と、ジエチレングリコール、もしくはプロピレンオキシド付加物等のグリコール等とを脱水縮合反応で得られるものが挙げられる。
【0092】
前記ポリカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等の脂肪族ポリカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びナフタレンジカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸及びヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環族ポリカルボン酸;又はこれらの酸エステル;を挙げることができる。これらは、1つ又は複数を組み合せて用いることができる。
【0093】
ポリマーポリオールは、ポリオール中でエチレン性不飽和モノマーをその場で重合させることにより得られる。エチレン性不飽和モノマーとしては、アクリル系モノマー、例えば(メタ)アクリロニトリル、アルキル(C1~20又はそれ以上)(メタ)アクリレート(メチルメタクリレート等);炭化水素系モノマー、例えば芳香族不飽和炭化水素(スチレン等)、脂肪族不飽和炭化水素(C2~20又はそれ以上のアルケン、アルカジエン等、例えばα-オレフィン、ブタジエン等);並びにこれらの2種以上の併用[例えばアクリロニトリル/スチレンの併用(重量比100/0~80/20)]が挙げられる。
【0094】
これらポリオールのうち、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオールを含む場合が好ましく、少なくともこれらのうち二つ以上を混合して用いる場合がより好ましい。これらのポリオールを用いた場合には、伸びが良く、破断し難い、形状追従性の高いポリウレタン樹脂物を得ることができる。
【0095】
<ポリイソシアネート成分>
ポリイソシアネートは、効果が阻害されない限りにおいて、特に限定されない。例えば、2官能のポリイソシアネートとしては、2,4-トルエンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トルエンジイソシアネート(2,6-TDI)、m-フェニレンジイソシネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジアネート(2,4’-MDI)、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’-MDI)、水素添加MDI、モノメリックジフェニルメタンジイソシアネート(モノメリックMDI)、キシリレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水素添加XDI、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、等の芳香族系のもの;シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族のもの;ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等のアルキレン系のもの;3官能以上のポリイソシアネートとしては、1-メチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、1,3,5-トリメチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、ビフェニル-2,4,4’-トリイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4,4’-トリイソシアネート、メチルジフェニルメタン-4,6,4’-トリイソシアネート、4,4’-ジメチルジフェニルメタン-2,2’,5,5’テトライソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4”-トリイソシアネート、ポリメリックMDI、リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、1,8-ジイソシアナトメチルオクタン等;及びこれら変性体;誘導体等;が挙げられる。また、これらのイソシアネートは、1つ又は複数を組み合せて用いることができる。
【0096】
これらイソシアネートのうち、芳香族系及び脂肪族のものを含む場合が好ましく、芳香族系のものを含む場合がより好ましく、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジアネート(2,4’-MDI)、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’-MDI)、水素添加MDI、モノメリックジフェニルメタンジイソシアネート(モノメリックMDI)、ヘキサメチレンジイソシアネートを含む場合がより好ましい。
【0097】
ポリイソシアネートのNCO%は、10~70であり、20~60が好ましく、30~55がより好ましい。ポリイソシアネートのNCO%が、かかる範囲にある場合には、伸びが良く、破断し難い、形状追従性の高いポリウレタン樹脂物を得ることができる。
【0098】
ここで、NCO%の定義は、JIS K1603-1「プラスチック-ポリウレタン原料芳香族イソシアネート試験方法-第1部:イソシアネート基含有率の求め方」、3.定義、3.3イソシアネート基含有率、「試料中に存在する特定イソシアネート量を質量分率で表したもの」である。また、NCO%の測定方法は、JIS K1603-1、B法による。B法は、TDI、MDI及びポリメチレンポリフェニルイソシアネートの精製又は粗製イソシアネート及びこれから誘導される変性イソシアネートに適用できる。粘度は、JISK7301「熱硬化性ウレタンエラストマー用トリレンジイソシアネート型プレポリマー試験方法、6.一般性状試験方法、6.2粘度」に準拠する。
【0099】
<その他添加剤>
ポリウレタン樹脂は、上述した各成分以外に、必要に応じて、各種の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、界面活性剤、充填剤、可塑剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、抗菌剤、光安定剤、安定剤、分散剤、触媒、架橋剤、溶剤等が挙げられる。
【0100】
<<粘着層の製造方法>>
粘着層の製造方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、下記にポリウレタン樹脂を用いた製造例を示す。
【0101】
ポリウレタン樹脂物の製造方法としては、例えば、所定量のポリイソシアネート成分の入った反応容器に、理論量より少ないポリオール成分を滴下した後に加熱し、ポリイソシアネート成分の有するイソシアネート基と、前記ポリオールの有する水酸基とを反応させ、末端に活性イソシアネートを有するポリウレタンプレポリマーを調製し、ポリウレタン樹脂組成物を製造する方法が挙げられる。前記反応は通常50~120℃、好ましくは60~100℃の温度で行われる。反応時間は通常1~15時間である。
【0102】
前記ポリウレタンプレポリマーを製造する際に使用するポリオールとポリイソシアネートとの配合は、前記ポリイソシアネートが有するイソシアネート基と前記ポリオールが有する水酸基との当量比(以下、[イソシアネート基/水酸基]の当量比という)が、0.7~1.5.の範囲内であることが好ましく、0.8~1.2の範囲内であることがより好ましい。前記当量比が、かかる範囲にある限り、伸びが良く、破断し難い、形状追従性の高いポリウレタン樹脂物を得ることができる。
【0103】
前記ポリウレタンプレポリマーは、通常、無溶剤下で製造することができるが、ポリオールとポリイソシアネートとを有機溶剤中で反応させることによって製造してもよい。有機溶剤中で反応させる場合には、反応を阻害しない酢酸エチル、酢酸n-ブチル、メチルエチルケトン、トルエン等の有機溶剤を使用することができるが、反応の途中又は反応終了後に減圧加熱等の方法により有機溶剤を除去することが必要である。
【0104】
前記イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを製造する際には、必要に応じてウレタン化触媒を使用することができる。ウレタン化触媒は、前記反応の任意の段階で、適宜加えることができる。前記ウレタン化触媒としては、例えば、3級アミン、金属化合物等が挙げられる。
【0105】
3級アミンとしては、例えば、例えばTEDA(トリエチレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ-[2.2.2]オクタン)、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N’,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ビス(ジメチルアミノアルキル)ピペラジン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルベンジルアミン、ビス(N,N-ジエチルアミノエチル)アジペート、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ブタンジアミン、N,N-ジメチル-β-フェニルエチルアミン、1,2-ジメチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0106】
金属化合物としては、ジメチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ等のスズのカルボン酸塩類;テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等の有機アルミニウム化合物類;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート等のキレート化合物類;オクタン酸鉛、オクタン酸ビスマス等のオクタン酸金属塩;等が挙げられる。
【0107】
以上の方法によって得られたイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーの数平均分子量としては、100~10,000の範囲であることが好ましく、200~6,000の範囲であることがより好ましい。なお前記数平均分子量は、ゲルパーエミッションクロマトグラフィー法により測定し、標準試料であるポリスチレンの分子量として換算した数値とすることができる。
【0108】
得られたポリウレタン樹脂組成物の25℃での粘度は、50000mPa・s以下であることが好ましく、30000mPa・s以下であることがより好ましく、15000mPa・s以下であることがさらに好ましい。また、下限値は、特に限定されないが、例えば10mPa・sである。50000mPa・s超の場合にはウレタン樹脂物成形時に薄膜化が困難になる。ここで、当該粘度はJIS K 7117-1に準じて測定することができる。
【0109】
なお、得られたポリウレタン樹脂組成物は、シート状等に成形したのち、光や熱などにより硬化させて粘着層として用いることができる。
【0110】
ポリウレタン樹脂組成物の成形方法としては、得られたポリウレタン樹脂組成物を真空下で脱泡した後に、離型処理を施した型あるいはフィルム上等に流し、フィルムアプリケーター等を用いて所定の膜厚となるように広げる。その後、常温~150℃で約40分~2日間、静置あるいはオーブン内で加熱してウレタン化反応を起こさせる。しかる後に型あるいはフィルムから取り外すことによって成形された粘着層を得ることができる。
【0111】
<<粘着層の物性>>
<アスカーC硬度>
粘着層のアスカーC硬度は、45~90であり、好適には60~85である。粘着層のアスカーC硬度が、かかる範囲にあることで清掃対象表面の形状を追従することができ、汚染物質の捕集性能が高くなる。特にガイドピンが突設された光ファイバ用の光コネクタの接続端面に用いた場合には、ガイドピンの形状を追従することが可能となり、ガイドピン及び光コネクタ接続端面の清掃効果が著しくできる。
【0112】
粘着層のアスカーC硬度は、JIS K7312:1996「熱硬化性ポリウレタンエラストマー成形物の物理試験方法」に記載の方法で測定される。測定は、アスカーゴム硬度計C型を用いて行われる。なお、測定に用いる粘着層は、ポリウレタン樹脂の硬化完了後、25℃、50%RHの環境下で24時間保存したものを用いる。
【0113】
<引張強度等の引張特性>
粘着層の引張強度は、2.0MPa以上30MPa以下であり、4.0MPa以上22MPa以下が好ましい。粘着層の引張強度が、かかる範囲にあることで清掃対象表面の形状を追従することができ、汚染物質の捕集性能が高くなる。特にガイドピンが突設された光ファイバ用の光コネクタの接続端面に用いた場合には、ガイドピンの形状を追従することが可能となり、ガイドピン及び光コネクタ接続端面の清掃効果が著しくできる。
【0114】
また、粘着層の破断伸びは、100mm~150mmとすることができ、105mm~140mmが好ましい。粘着層の破断伸びが、かかる範囲にあることで清掃対象表面の形状を追従することができ、汚染物質の捕集性能が高くなる。特にガイドピンが突設された光ファイバ用の光コネクタの接続端面に用いた場合には、ガイドピンの形状を追従することが可能となり、ガイドピン及び光コネクタ接続端面の清掃効果が著しくできる。
【0115】
さらに、粘着層の破断伸び率は、200%~700%とすることができ、400%~650%が好ましい。粘着層の破断伸び率が、かかる範囲にあることで清掃対象表面の形状を追従することができ、汚染物質の捕集性能が高くなる。特にガイドピンが突設された光ファイバ用の光コネクタの接続端面に用いた場合には、ガイドピンの形状を追従することが可能となり、ガイドピン及び光コネクタ接続端面の清掃効果が著しくできる。
【0116】
粘着層の引張強度は、JIS K7312:1996「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に記載の、ダンベル試験片を用いた測定方法で測定される。ダンベル試験片形状は、ダンベル状3号形試験片とし、材料試験機を用いて測定する。材料試験機のクロスヘッド速度は、100mm/minとして測定を行う。同時に破断伸び及び破断伸び率を測定ことができる。
【0117】
粘着層の引裂強度は、3N~30Nとすることができ、5N~16Nが好ましい。粘着層の引裂強度が、かかる範囲にあることで清掃対象表面の形状を追従することができ、汚染物質の捕集性能が高くなる。特にガイドピンが突設された光ファイバ用の光コネクタの接続端面に用いた場合には、ガイドピンの形状を追従することが可能となり、ガイドピン及び光コネクタ接続端面の清掃効果が著しくできる。
【0118】
粘着層の引裂強度は、JIS K7312:1996「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引裂強さの求め方」に記載の、アングル形試験片を用いた測定方法で測定される。測定は材料試験機を用いて測定される。材料試験機のクロスヘッド速度は、100mm/minとして測定を行う。
【0119】
<ヒステリシスロス>
粘着層のヒステリシスロスは、3%以上60%以下であり、5~50%が好ましい。粘着層のヒステリシスロスが、かかる範囲にあることで清掃対象表面の形状を追従することができ、汚染物質の捕集性能が高くなる。特にガイドピンが突設された光ファイバ用の光コネクタの接続端面に用いた場合には、ガイドピンの形状を追従することが可能となり、ガイドピン及び光コネクタ接続端面の清掃効果が著しくできる。
【0120】
粘着層のヒステリシスロスは、JIS K7312:1996「熱硬化性ポリウレタンエラストマー成形物の物理試験方法」に記載の方法で測定される。測定は、材料試験機を用いて、引張ヒステリシス試験を行われる。この際、試験片形状をダンベル状3号形試験片とし、材料試験機のクロスヘッド速度を1000mm/minとして、引張・圧縮を30サイクル繰り返した後のヒステリシスロスを測定する。
【0121】
基材の材質は、特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、合成樹脂、天然樹脂等の樹脂類、天然のゴム類や合成ゴム等のゴム類、天然繊維や合成繊維、繊維、紙、をシート状に形成したものを用いることができる。これらの材質は、阻害しない限りにおいて、いずれのものも使用可能である。例えば、樹脂の押出成形シート、樹脂シートの細幅切断加工、繊維の撚合せ、繊維の編込み(メッシュ材や織布など)、積層布,不織布、紙等を用いることができる。
【0122】
繊維の編込みとしては、例えば、目開き0.5~2.0mm程度の網目構造のメッシュ材を用いることができる。
【0123】
清掃体CTと、光コネクタOCとが、接触する際、清掃体CTがガイドピンGP及び穴の形状を追従するように変形する場合には、清掃体CTは、柔軟性を有する必要があるため、基材はオレフィン系やポリ塩化ビニル系の合成樹脂が好適である。
【0124】
一方、清掃体CTと、光コネクタOCとが、接触する際、ガイドピンGPが清掃体CTを貫通する場合には、貫通が容易な構造や貫通が容易な材質の基材を用いることが好適であり、例えば、網状に構成された繊維の編込み、積層布、不織布等を好適に用いることができる。
【0125】
基材として、繊維の編込みや、積層布、不織布等の空隙を含む材質を用いる場合には、粘着層の一部を、基材の空隙内に侵入(含浸)した状態とすることができる。このような状態とすることで、基材と粘着層の密着が強固なものとなる。従って、光コネクタOCのフェルール端面OEやガイドピンGPを清掃体CTから取り外す際に、粘着層が基材から脱離して、光コネクタOCのフェルール端面OEやガイドピンGPに付着するという、糊残りが生じにくくなるという利点もある。
【0126】
貫通が容易な材質の基材としては、紙、不織布、織布や樹脂のフィルムを好適に用いることができる。貫通が容易な樹脂としては、特に限定されないが、ポリエチレン樹脂などのポリオレフィン樹脂などのように一定の伸びを示した後に容易に破断する樹脂や、一軸延伸又は二軸延伸されたポリプロピレン樹脂(PP)やポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)などの様に易切断性加工を施した樹脂などを好適に用いることができる。
【0127】
剥離フィルムの材質は、公知のものを用いることができ、特に限定されない。樹脂フィルムや紙などのシート状の材質の粘着層側の面に剥離加工が施されていればよい。剥離加工は、特に限定されないが、例えば、ジメチルシロキサンなどの剥離剤を塗布するなどの方法を挙げることができる。
【0128】
<<<<清掃具10の構成>>>
図1は、本実施の形態による清掃具10の全体の概略と光コネクタOCとを示す斜視図である。
図2は、本実施の形態による清掃具10の左ハウジング110Lを外した状態を示す斜視図である。
図3は、本実施の形態による清掃具10の巻取リール300を外した状態を示す斜視図である。
図4は、本実施の形態による清掃具10のヘッド部400における清掃体CTの経路を示す斜視図である。
【0129】
清掃具10は、主に、ハウジング100と供給リール200と巻取リール300とヘッド部400と巻取制御体500とを備える。これらのハウジング100、供給リール200、巻取リール300、ヘッド部400、巻取制御体500は、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)やPOM(ポリアセタール)樹脂などによって形成される。ハウジング100、供給リール200、巻取リール300、ヘッド部400、巻取制御体500の材料は、これらに限られず、一定の形状を有し、耐久性を有するものであればよい。
【0130】
<<<ハウジング100>>>
ハウジング100は、供給リール200と巻取リール300とを回転可能に保持する。ハウジング100は、前後方向に長尺な形状を有する。ハウジング100は、供給リール200と巻取リール300とを前後方向に並べて収納する。巻取リール300が前側に位置し、供給リール200が後側に位置する。
【0131】
ハウジング100は、供給リール200と巻取リール300との間の領域に凹部150を有する。操作者の指を凹部150に係合させ易くして、操作を容易かつ的確にできる。
【0132】
ハウジング100は、右ハウジング110Rと左ハウジング110Lとを有する。ハウジング100の右側の部分を構成するハウジングが右ハウジングである。ハウジング100の左側の部分を構成するハウジングが左ハウジングである。右ハウジング110Rは、係止爪154を有し、左ハウジング110Lは、係止孔(図示せず)を有する。右ハウジング110Rの外形と、左ハウジング110Lの外形とは、おおよそ線対称に形成されている。右ハウジング110Rと左ハウジング110Lとを向かい合わせ、右ハウジング110Rの係止爪を左ハウジング110Lの係止孔に係止させることで、ハウジング100を一体に形成できる。
【0133】
<<右ハウジング110R>>
右ハウジング110Rは、ハウジング100の右側の部分を構成するハウジングである。
【0134】
<<清掃体ガイドローラ130F>>
巻取リール300とハウジング100との間には、清掃体ガイドローラ130Fが回転可能に設けられている。清掃体ガイドローラ130Fは、略円筒状の形状を有する。清掃体ガイドローラ130Fは、清掃体CTと当接して清掃体CTを湾曲させて、清掃体CTの移動方向を変更する。具体的には、清掃ヘッド410から戻ってきた清掃体CTの方向に変更して、巻取リール300に向かって案内することができる。清掃体CTを巻取リール300に向かうように調整することで、清掃体CTを巻取リール300に安定して巻き取ることができる。
【0135】
<<清掃体ガイドローラ130R>>
供給リール200と巻取リール300との間には、清掃体ガイドローラ130Rが回転可能に設けられている。清掃体ガイドローラ130Rは、略円筒状の形状を有する。清掃体ガイドローラ130Rは、清掃体CTと当接して清掃体CTを湾曲させて、清掃体CTの移動方向を変更する。具体的には、供給リール200から送り出された清掃体CTを一定の方向に変更して、清掃ヘッド410に向かって案内することができる。清掃体CTを一定の方向に向かうように調整することで、供給リール200に巻回されている清掃体CTの残量に依存することなく、安定して清掃ヘッド410に向かって送り出すことができる。
【0136】
<<コイルバネ140>>
コイルバネ140は、コイル状に形成されたバネであり、伸縮可能に形成されている。各図では、簡便のため、コイルバネ140を円柱状の形状で示した。コイルバネ140は、伸縮の状態に応じて付勢力を生じさせる。巻取制御体500が後側に移動したときには、コイルバネ140は縮み、巻取制御体500が前側に移動したときには、コイルバネ140は伸びる。コイルバネ140は、巻取制御体500に付勢力を印加する。
【0137】
<<供給リール用歯止め180>>
供給リール用歯止め180は、板バネ構造を有し、固定端部182と板バネ部184とを有する。固定端部182は、左ハウジング110Lに固定される。板バネ部184は、長尺な形状を有し、長手方向に対して垂直な方向に撓んで弾性変形することができる。
【0138】
板バネ部184の先端には、係合端186を有する。係合端186は、屈曲した形状を有する。係合端186は、供給リール200のピニオン体220のラチェット歯車222と係合する。板バネ部184は、ラチェット爪として機能する。板バネ部184によるラチェット機構については後述する。
【0139】
<<<供給リール200及び巻取リール300>>>
供給リール200には、清浄な未使用の清掃体CTが引き出し可能に予め巻回される。巻取リール300には、光コネクタOCのフェルール端面OEを清掃した後の使用済みの清掃体CTが巻回される。本実施の形態の供給リール200及び巻取リール300は、同様の構造を有する。
【0140】
<<供給リール200>
供給リール200は、主に、左供給リール枠210L及び右供給リール枠210R(
図5~
図11参照)を有する。左供給リール枠210Lと右供給リール枠210Rとの間に、未使用の清掃体CTが送り出し可能(供給可能)に巻回される。供給リール200に清掃体CTを送り出し可能(供給可能)に巻回できればよく、左供給リール枠210L又は右供給リール枠210Rのいずれか一方のみを有する構成でもよい。
【0141】
<<左供給リール枠210L>>
左供給リール枠210Lは、略円盤状の形状を有する。左供給リール枠210Lは、主に、ピニオン体220と、取付部224と、貫通孔230とを有する。
【0142】
<ピニオン体220>
左供給リール枠210Lは、ピニオン体220を有する。ピニオン体220は、左供給リール枠210Lの外側(左ハウジング110Lと面する側)に形成されている。ピニオン体220は、高さの低い略円筒状の形状を有する。ピニオン体220は、左供給リール枠210Lと一体に同軸に形成されている。ピニオン体220の外周面に沿ってラチェット歯車(ラチェットギヤ)222が形成されている。
【0143】
ラチェット歯車222と、前述した供給リール用歯止め180の係合端186とによって、ラチェット機構(戻り防止機構)を構成する。ラチェット機構によって、供給リール200は、第1の回転方向(例えば、時計回り)の回転を許可する(回転許可方向)一方、第1の回転方向とは逆方向の第2の回転方向(例えば、反時計回り)の回転を禁止する(回転禁止方向)ことができる。
【0144】
巻取リール300の動作伝達ラチェット機構(図示せず)によって、制御本体510から巻取リール300への動作伝達可能状態と動作伝達困難状態とを規定することができる。巻取リール300の回転方向規定ラチェット機構(図示せず)によって、巻取リール300の回転許可状態と回転禁止状態とを規定することができる。
【0145】
供給リール200のさらなる詳細の構造については、後で説明する。
【0146】
<供給リール200の機能>
左供給リール枠210Lと右供給リール枠210Rとの間の間隙に未使用の清掃体CTが巻回される。供給リール200が回転することで、供給リール200に巻回されている未使用の清浄な清掃体CTを徐々に送り出して清掃ヘッド410に向かって送り出すことができる。清掃体が供給リール200に巻回されて保持されているときには、粘着性の樹脂層(粘着層)は、隣接して重なっている清掃体CTによって覆われている。巻回が解かれることで、隣接して重なっていた清掃体CTが離隔して粘着性の樹脂層(粘着層)が露出する。
【0147】
<<巻取リール300>>
巻取リール300は、右巻取リール枠310Rを有する。巻取リール300には、光コネクタOCのフェルール端面OEを清掃した後の使用済みの清掃体CTが巻回される。
【0148】
なお、本実施の形態では、左巻取リール枠は存在しないが、左巻取リール枠を設けてもよい。左巻取リール枠を設けることで、巻き取った後の清掃体CTを的確に保持することができる。
【0149】
<<<ヘッド部400>>>
図3に示すように、ヘッド部400は、ハウジング100から前方向に向かって突出して配置される。ヘッド部400は、清掃ヘッド410とヘッド保持体420とを有する。
【0150】
<<清掃ヘッド410>>
清掃ヘッド410は、清掃体CTを光コネクタOCのフェルール端面OEに当接させるための当接部412を有する。当接部412は、光コネクタOCのフェルール端面OEに応じた大きさ及び形状を有する。
【0151】
図4に示すように、供給リールから送り出された清掃体CTは、当接部412に案内されて当接部412に位置づけられる。清掃ヘッド410は、ヘッド保持体420に着脱可能に設けることができる。光コネクタOCのフェルール端面OEに応じて、対応する清掃ヘッド410に適宜に交換することができる。
【0152】
当接部412に位置づけられた清掃体CTの粘着層RLは、光コネクタOCのフェルール端面OEと向かい合わせにされて、粘着層RLが光コネクタOCのフェルール端面OEに当接されることで、光コネクタOCのフェルール端面OEに存在する塵埃が粘着層RLに転着される。この転着によって、光コネクタOCのフェルール端面OEの塵埃を除去することができる。その後、清掃体CTは、当接部412から巻取リール300に向かって巻き取られる。
【0153】
<<ヘッド保持体420>>
ヘッド保持体420は、長尺な一定の形状を有する。具体的には、ヘッド保持体420は、長尺な角筒状の形状を有し、中空の構造を有する。ヘッド保持体420は、供給リール200から巻取リール300に至るまでの清掃体CTを移動可能に収容する。具体的には、ヘッド保持体420は、供給リール200から送り出され、前述した清掃ヘッド410の当接部412を経由して、巻取リール300に巻き取られるまでの清掃体CTを移動可能に収容する。
【0154】
<<清掃ヘッド410の位置>>
清掃ヘッド410は、一定の形状を有しかつハウジング100に対して一定の位置に係止されているヘッド保持体420の一定の位置に保持されている。したがって、清掃ヘッド410は、ハウジング100に対して常に一定の位置に位置する。すなわち、清掃ヘッド410は、清掃作業の作業前、作業中、作業後の全てに亘って、ハウジング100に対して移動することはなく、ハウジング100やヘッド保持体420に対して常に一定の位置に保持される。清掃ヘッド410をハウジング100やヘッド保持体420に対して一定の位置に保持されるようにしたことで、清掃ヘッド410の当接部412に供給されている清掃体CTを光コネクタOCのフェルール端面OEに一定の力で押圧することができ、操作者の技量によることなくフェルール端面OEの塵埃を安定して除去することができる。
【0155】
清掃ヘッド410の前端は、ヘッド保持体420から突出し、清掃ヘッド410の当接部412は、ヘッド保持体420から突出した位置に配置される。このようにすることで、清掃体CTを外部に向かわせ、光コネクタOCのフェルール端面OEに、当接部412に供給されている清掃体CTを的確に当接することができる。
【0156】
<<<巻取制御体500>>>
巻取制御体500は、制御本体510を有する。
【0157】
<<制御本体510>>
制御本体510は、長尺な略角筒状の形状を有し、長手方向に貫通している。すなわち、制御本体510は、中空の構造を有し、制御本体510の内側には、前述したヘッド部400(ヘッド保持体420及び清掃ヘッド410)が収容される。制御本体510は、内側に収容したヘッド部400に対して、ヘッド部400の長手方向に沿って移動することができる。制御本体510は、ヘッド部400の長手方向に沿ってヘッド部400の外側を移動することができ、制御本体510の移動によって、巻取制御体500の全体も、ヘッド部400及びハウジング100に対してヘッド部400の長手方向に沿って移動することができる。
【0158】
操作者が、清掃具10に力を加えると、制御本体510は、ハウジング100の後方に相対的に移動する。制御本体510の移動により、清掃ヘッド410の当接部412は、光コネクタOCのフェルール端面OEに近づき、当接部412の清掃体CTがフェルール端面OEと当接する。これにより、清掃体CTの清浄な粘着層RLがフェルール端面OEと接触する。
【0159】
<<<供給リール200の構造>>>
図5は、供給リール200の構造を示す斜視図である。
図6は、供給リール200の構造を示す正面図である。
【0160】
図5及び
図6に示すように、供給リール200は、右供給リール枠210Rを有する。右供給リール枠210Rは、略円盤状の形状を有する。右供給リール枠210Rは、取付部224及び貫通孔230を有する。
【0161】
<<<取付部224の構造>>>
取付部224は、全体として略円柱状又は略円筒状の形状を有する。取付部224は、右供給リール枠210Rから突出する形状を有する。取付部224は、供給リール200の回転中心となる回転シャフトとして機能する。また、取付部224は、供給リール200が回転することにより清掃体CTを巻回する巻回シャフトとしても機能する。取付部224の外周側面(円筒状の側面)には、清掃体CTが巻回される。清掃体CTの巻回の態様については、後述する。
【0162】
取付部224は、第1取付部224aと第2取付部224bとを有する。第1取付部224aと第2取付部224bとは、互いに離隔して形成されている。第1取付部224a及び第2取付部224bは、略柱状又は略筒状の形状を有する。前述したように、取付部224は、全体として略円柱状又は略円筒状の形状を有する。第1取付部224a、第2取付部224b及び後述する間隙226の双方によって、全体として略円柱状又は略円筒状の形状を有する。
【0163】
第1取付部224aの高さは、清掃体CTの幅より若干大きい。第2取付部224bの高さは、第1取付部224aの高さよりも低い。なお、第1取付部224a及び第2取付部224bの高さは、同じでもよい。取付部224は、第1取付部224aと第2取付部224bとの間に間隙226を有する。間隙226の幅は、略一定であり、清掃体CTの厚さより大きい。後述するように、間隙226に清掃体CTを配置することができる。第2取付部224bの高さを第1取付部224aの高さよりも低くしたことで、清掃体CTを間隙226に配置する作業を容易にできる。
【0164】
間隙226は、第1取付部224aと第2取付部224bとが互いに向かい合うとともに、第1取付部224aと第2取付部224bとによって挟まれた領域である。間隙226は、略溝状の形状を有する。間隙226は、正面視で正面に向かう正面開口228を有する。正面開口228は、正面視で長尺な形状を有する。間隙226は、2つの第1の側面開口229a及び第2の側面開口229bとを有する。2つの第1の側面開口229a及び第2の側面開口229bとは、正面視で側面に向かう。
【0165】
第1取付部224aは、第2取付部224bよりも大きく形成されている。具体的には、第1取付部224aの外周側面は、第2取付部224bの外周側面よりも大きい。右供給リール枠210Rは、貫通孔230を有する。間隙226は、貫通孔230と干渉しない位置、具体的には、貫通孔230から離隔した位置に形成される。
【0166】
清掃体CTは、粘着層が設けられた第1面RSと、粘着層が設けられていない第2面NSとを有する。例えば、基材に粘着層を形成した構成の場合には、粘着層が第1面RSであり、基材が第2面NSである。清掃体CTは、長尺な形状を有し、第1面RSと第2面NSとは、互いに反対側に向かう。
【0167】
<<<清掃体CTの供給リール200(ボビン)への取り付け工程1>>>
図7(a)~
図7(f)を用いて、清掃体CTの供給リール200への取り付けを説明する。
図7(a)~
図7(f)では、清掃体CTの第1面RSを黒色の領域で示し、清掃体CTの第2面NSを白色の領域で示した。
【0168】
清掃体CTを供給リール200に取り付けて巻回する作業は、清掃具10とは別個に行われる。すなわち、ハウジング100に供給リール200が装着されていない状態で、供給リール200に清掃体CTを巻回する作業が行われる。例えば、供給リール200をワインディングマシン(ワインダー)(図示せず)に回転可能に装着して行われる。ワインディングマシンは、モータなどを有し、供給リール200を電動で回転させることができる。なお、ワインディングマシンなどを用いずに、手動で清掃体CTを供給リール200に巻回してもよい。また、モータではなく、手動のワインディングマシンを用いて清掃体CTを供給リール200に巻回してもよい。
【0169】
<<清掃体CTの第1取付部224aへの巻き始め>>
図7(a)に示すように、清掃体CTの第2面NSが、第1取付部224aの外周側面と向かい合う(面する)ように清掃体CTの第2面NSを配置する。清掃体CTの端部SEを、間隙226の第1の側面開口229aの近くの第1取付部224aに位置づける。
【0170】
<<清掃体CTの第1取付部224aの外周側面への巻回(1巻目)>>
次に、
図7(b)に示すように、第1取付部224aの外周側面に沿って清掃体CTを順次に案内して、間隙226の第2の側面開口229bまで巻回する。この例では、清掃体CTは、第1取付部224aの外周側面に沿って時計回りに配置される。
【0171】
<<清掃体CTを間隙226に配置>>
次に、
図7(c)に示すように、清掃体CTを第2の側面開口229bから第1の側面開口229aに向かって間隙226内に案内する。ここまで、清掃体CTの第2面NSが、第1取付部224aの外周側面と向かい合う(面する)ように、清掃体CTは配置される。清掃体CTの第2面NSには、粘着層が設けられておらず、清掃体CTが、第1取付部224aと粘着することはない。
【0172】
<<清掃体CTの第1取付部224aの外周側面への巻回(2巻目)>>
次に、
図7(d)に示すように、第1取付部224aの外周側面に沿って清掃体CTを順次に案内して、間隙226の第2の側面開口229bまで巻回する。すなわち、既に、第1取付部224aの外周側面に巻回されている清掃体CTの上に重ねて清掃体CTを巻回する。この処理でも、清掃体CTは、第1取付部224aの外周側面に沿って時計回りに配置される。
【0173】
<<清掃体CTの第2取付部224bへの巻回>>
次に、
図7(e)に示すように、第1の側面開口229aにおいて清掃体CTを反転させて、第2取付部224bの外周側面に向かうように配置する。具体的には、清掃体CTは、第1の側面開口229a側の第2取付部224bの端部で屈曲されて反転する。
【0174】
清掃体CTの反転により、清掃体CTの第1面RSが、第2取付部224bの外周側面と向かい合う(面する)ように、清掃体CTが案内される。清掃体CTの第1面RSは、粘着層が設けられており、清掃体CTは、第2取付部224bと粘着する。清掃体CTが反転されており、これ以降、清掃体CTは、反時計回りに配置される。
【0175】
<反転>
清掃体CTの反転とは、取付部224と向かい合う清掃体CTの面が、粘着層を有しない第2面NSから、粘着層を有する第1面RSに変更されることをいう。なお、第1面RSから第2面NSに変更される場合も清掃体CTの反転に含まれる。
【0176】
<反転の態様>
屈曲によって清掃体CTが反転する場合のみならず、湾曲によって清掃体CTを反転させてもよい。また、第2取付部224bの第1の側面開口229a側の端部などのように、局所的な一箇所で清掃体CTを屈曲させて反転させる場合だけでなく、所定の領域に亘って徐々に清掃体CTを反転させるようにしてもよい。例えば、清掃体CTを捻って長手方向に進むに従って徐々に反転(捻転)するようにしてもよい。
【0177】
また、反転に際して、清掃体CTが連続的に一体状態で反転させる場合を示したが、清掃体CTを一旦切断などして、不連続的に清掃体CTを反転させてもよい。
【0178】
<<清掃体CTの第1取付部224aへの巻回>>
次に、
図7(f)に示すように、清掃体CTは,第2の側面開口229bを経て、第1取付部224aに巻回される。上述したように、清掃体CTが反転されており、清掃体CTの第1面RSが、第1取付部224aに既に配置されている清掃体CTと粘着する。この後、清掃体CTは,第1取付部224aに順次に巻回される。このようにして、未使用の清掃体CTが供給リール200に取り付けられて、清掃具10を使用できる状態にできる。
【0179】
前述したように、供給リール200をワインディングマシンに装着することができる。
図7(a)~
図7(f)に示す作業を手動で行い、その後、ワインディングマシンのモータを駆動して供給リール200を回転させ、清掃体CTを供給リール200に巻回することができる。
【0180】
<<<清掃体CTが供給リール200に取り付けられた状態>>
前述した手順によって、清掃体CTを供給リール200に取り付けることができる。
図8は、清掃体CTが供給リール200に取り付けられた状態を示す概略図である。
【0181】
<クリアランス領域CR(間隙)>
このように、清掃体CTの第2面NSが、第1取付部224aの外周側面の全周と向かい合う(面する)。したがって、清掃体CTは、第1取付部224aと直接に接することがあっても、第1取付部224aと直接に接する部分が第1取付部224aと粘着(接着)して固定(固着)されることはない。このため、第1取付部224aと清掃体CTとの間にクリアランス領域CR(間隙)を積極的に形成することができる。
【0182】
<環状部LP>
図8に示すように、清掃体CTの第2面NSが第1取付部224aの外周側面と向かい合う(面する)部分によって、環状部LPを形成することができる。清掃体CTは、粘着層を有する第1面RSと、粘着層を有しない第2面NSとを有する。第1取付部224aの外周側面と向かい合う(面する)とは、第1取付部224aの外周側面に対して、より近くに位置することを意味する。すなわち、清掃体CTの第2面NSが第1取付部224aの外周側面と向かい合う(面する)とは、第1面RSと第2面NSとのうちの第2面NSが、第1取付部224aの外周側面に、第1面RSよりも近い側に位置することを意味する。
【0183】
環状部LPは、清掃体CTの第2面NSが第1取付部224aの外周側面と向かい合う最も内側で周回する部分(最内周部分)によって構成される。
図7及び
図8に示す例では、清掃体CTの第2面NSが第1取付部224aの外周側面と向かい合う部分は、第1取付部224aの外周側面を2周している。この清掃体CTの2周分によって環状部LPが構成される。取付部224に巻回される清掃体CTのうちの環状部LPのみが、第1取付部224aの外周側面と接することができる。環状部LPと第1取付部224aとの間に、クリアランス領域CRが形成される。言い換えれば、環状部LPは、第1取付部224aに対して若干遊びを持って取り付けられる(遊装される、遊嵌される、遊着される)。クリアランス領域CRの形成により、クリアランス領域CRの大きさに応じて、清掃体CTの環状部LPは、第1取付部224aに対して、取付部224の半径方向や周方向などに微動可能(摺動可能、移動可能、変位可能、変形可能)に接する。
【0184】
光コネクタOCのフェルール端面OEを清掃するために清掃具10を使用するときには、供給リール200が回転しながら供給リール200から清掃体CTが引き出される。清掃のたびに供給リール200が回転して清掃体CTが供給リール200から引き出される。供給リール200から清掃体CTが全て引き出されたとき(使い切ったとき)には、環状部LPのみが供給リール200に残り、供給リール200は回転することができない状態となる。このように、供給リール200が回転できない状態にすることで、清掃体CTを全て使い切って終点に達したことを、使用者に明確に報知することができる。
【0185】
<環状部LPの態様>
清掃体CTの第2面NSを第1取付部224aの外周側面と向かい合わせて、清掃体CTを第1取付部224aの外周側面に周回させて環状部LPを形成する例を示したが、環状部LPは、これのみに限られない。例えば、第1取付部224aの外周側面の全周よりも短い領域(一周分よりも短い領域)のみで、清掃体CTの第2面NSと向かい合わせて環状部LPを形成してもよい。さらに、清掃体CTの第2面NSを第1取付部224aの外周側面と向かい合わせて、清掃体CTを第1取付部224aの外周側面に複数回周回させて環状部LPを形成してもよい。
【0186】
<<<供給リール200への取り付け(巻回)過程における清掃体CTの動作>>>
清掃具10をクリーナーとして機能させるためには、清掃体CTを供給リール200に事前に巻回した状態にする必要がある。このため、清掃体CTを供給リール200に巻回する工程を要する。清掃体CTの巻回工程は、供給リール200を回転させることによって、取付部224に清掃体CTを巻きつける工程である。前述したように、ワインディングマシンなどを用いて、清掃体CTを供給リール200に巻回することができる。
【0187】
取付部224に清掃体CTを巻きつける工程は、最内周部分に形成された環状部LP上に清掃体CTを徐々に巻きつけていく工程となる。環状部LPと第1取付部224aとの間に形成したクリアランス領域CRによって、清掃体CTを巻きつける過程において、供給リール200の回転に応じて、環状部LPは、第1取付部224aに対して摺動したり移動したり変位したり変形したりする。
【0188】
清掃体CTを巻きつける過程において、環状部LPの摺動、移動、変位、変形によって清掃体CTの姿勢や位置を微調整しながら巻きつけるので、清掃体CTに加えられる応力を分散させることができる。すなわち、巻きつけ過程において、清掃体CTの幅方向の特定の位置に応力が集中的に加えられる場合であっても、環状部LPの摺動、移動、変位、変形によって環状部LPの姿勢や位置を微調整する。環状部LPの微調整によって、清掃体CTの幅方向の全体に亘って均一な応力(均一に近い応力)を清掃体CTに加えるようにして、応力によって生ずる歪みを解放してから清掃体CTを巻回することができる。言い換えれば、巻きつけ時に清掃体CTに加わる応力を分散させて、清掃体CTに生じた剪断応力や剪断歪みなどの歪みを解放した後に清掃体CTを供給リール200に巻回することができる。すなわち、清掃体CTが供給リール200に巻回されるよりも以前に、清掃体CTに生じた歪みを解放することができる。このため、歪みが清掃体CTに蓄積されないようにして清掃体CTを供給リール200に巻回することができる。このようにすることで、清掃体CTの全てが供給リール200に巻回された後に、例えば、供給リール200を使用している最中などに、経時的に清掃体CTが供給リール200の幅方向に偏倚(横ズレ)して螺旋状(いわゆるたけのこ状)に変位していく現象を防止できる。
【0189】
<積層領域MR>
前述したように、清掃体CTは、第1の側面開口229a側の第2取付部224bの端部で屈曲されて反転され、既に第1取付部224aの外周側面に巻回されている清掃体CTの上に重ねられて巻回される。このため、
図8に示すように、粘着層を有する第1面RSが重なり合う積層領域MRが形成される。なお、
図8では、明確のため、2つの第1面RSを離隔して示した。積層領域MRは、粘着層の厚さが2倍に厚くなった粘着層として機能する。厚さが2倍に増えることで、積層領域MRによって生ずる復元力(付勢力)が高められ、積層領域MRに加えられた応力を迅速に緩和することができる。積層領域MRに生じた歪みを解消しやすくできる。
【0190】
清掃体CTを供給リール200の取付部224に次々に巻回されていく過程においても、清掃体CTに加えられた応力が積層領域MRに伝播すると、積層領域MRに歪みが生ずる。積層領域MRの粘着層の応力緩和によって、積層領域MRに生じた歪みは、迅速に解消される。この積層領域MRを形成したことにより、清掃体CTの全てが供給リール200に巻回された後に、例えば、供給リール200を使用している最中などに、経時的に清掃体CTが供給リール200の幅方向に偏倚(横ズレ)して螺旋状(いわゆるたけのこ状)に変位していく現象をより的確に防止できる。
【0191】
<<<清掃体CTの供給リール200(ボビン)への取り付け工程2>>>
図9(a)~
図9(e)を用いて、清掃体CTの供給リール200への取り付けを説明する。
図9(a)~
図9(e)でも、
図7と同様に、清掃体CTの第1面RSを黒色の領域で示し、清掃体CTの第2面NSを白色の領域で示した。
【0192】
図7(a)~
図7(f)では、最初に、清掃体CTの第2面NSが、第1取付部224aの外周側面と向かい合う(面する)ようにして、時計回りに、清掃体CTを第1取付部224aの外周側面に2周目まで巻回させた。この2周分の巻回部分が、環状部LPを構成する。
図9(a)~
図9(e)では、清掃体CTを第1取付部224aの外周側面に1周目まで巻回させる。この1周分の巻回部分が、環状部LPを構成する。
【0193】
図9(a)~
図9(c)までの過程は、
図7(a)~
図7(c)と同じである。その後、
図9(d)及び
図9(e)の過程は、
図7(e)及び
図7(f)と同じである。このようにして、清掃体CTを1周だけ巻回させる。
【0194】
なお、
図9及び
図10では、取り付け工程を明瞭にするため、清掃体CTの巻き始めの端部SEを、間隙226の第1の側面開口229aから離隔した位置に示した。好ましくは、
図11に示すように、重複領域SRを設けて清掃体CTを取り付ける。
図11は、重複領域SRを設けた点を除いて、
図10と同様である。
図11でも、清掃体CTの第1面RSを黒色の領域で示し、清掃体CTの第2面NSを白色の領域で示した。
【0195】
図10及び
図11に示すように、清掃体CTの第2面NSを、第1取付部224aの外周側面の一部のみ又は全てと向かい合わせることで、向かい合う部分で環状部LPを構成することができる。
【0196】
また、
図10及び
図11に示すように、粘着層RLが重なり合う積層領域MRが形成される。積層領域MRによって生ずる復元力(付勢力)が高められ、積層領域MRに加えられた応力を迅速に緩和して、積層領域MRに生じた歪みを解消することができる。
【0197】
<<<<変形例1>>>>
前述した例では、供給リール200で説明したが、巻取リール300でもよい。
図3に示すように、巻取リール300は、供給リール200と同様の構成を有する。巻取リール300は、供給リール200と同様に、取付部324を有する。取付部324は、第1取付部324a及び第2取付部324bを有する。第1取付部324a及び第2取付部324bの間に、間隙326を有する。
【0198】
巻取リール300に清掃後の清掃体CTを巻き取る際にも、清掃体CTに加えられる応力を分散させて、清掃体CTに生じた歪みを解放して、清掃体CTを巻取リール300に巻回することができる。経時的に、清掃体CTが、巻取リール300の幅方向に偏倚(横ズレ)して螺旋状(いわゆるたけのこ状)に変位していく現象を防止できる。
【0199】
<<<<変形例2>>>>
前述した清掃体CTの取付部224への巻回は、まず、清掃体CTの第2面NSが、第1取付部224aの外周側面と向かい合うようにして清掃体CTを巻回し、その後、清掃体CTを反転させて、第1面RSが第2取付部224b及び第1取付部224aに向かい合うようにして清掃体CTを巻回するものであった。これに限られず、第1面RSが第2取付部224b及び第1取付部224aに向かい合うようにして清掃体CTを巻回した後に、再び、清掃体CTを反転させて、清掃体CTの第2面NSが第2取付部224b及び第1取付部224aに向かい合うようにし、さらに、清掃体CTを反転させて、第1面RSが第2取付部224b及び第1取付部224aに向かい合うようにしてもよい。このようにすることで、クリアランス領域CRを複数個所に設けることができ、清掃体CTの姿勢や位置をより微調整させやすくして巻きつけるので、清掃体CTに生じた歪みを解放しやすくして、清掃体CTを供給リール200に巻回することができる。清掃体CTの全てが供給リール200に巻回された後に、例えば、供給リール200を使用している最中などに、経時的に清掃体CTが供給リール200の幅方向に偏倚(横ズレ)して螺旋状(いわゆるたけのこ状)に変位していく現象を防止できる。
【0200】
<<<<変形例3>>>>
前述した例では、取付部224を第1取付部224aと第2取付部224bとの2つの固定部を有する構成を示したが、3つ以上の固定部を有するようにしてもよい。環状部LPを形成するとともに、清掃体CTを反転させることができればよい。
【0201】
<<<<変形例4>>>>
粘着層は、粘着要素が低く、かつ、ゴム的要素が大きいものでもよい。このような性質を有する粘着層を用いた場合には、巻き締まりによって横ズレが発生しやすい。したがって、前述した取り付け方で清掃体CTを供給リール200に取り付けることに効果が大きい。
【0202】
<<<<変形例5>>>>
前述した例では、クリアランス領域CRを有するように環状部LPを形成する構成を示したが、クリアランス領域CRの代わりにクッション部材を配置して環状部LPを形成してもよい。クッション部材を存在させることで、確実に環状部LPが摺動、移動、変位、変形でき、環状部LPの姿勢や位置を微調整することで、清掃体CTに加わる応力を分散させることができる。クッション部材としては、C字型のバネ等、応力緩和性を有するものであればいずれのものも使用することができる。
【0203】
<<<<本実施の形態の範囲>>>>
上述したように、本発明を本実施の形態としても記載したが、この開示の一部をなす記載及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきでない。このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態等を含む。
【0204】
本実施の形態では、被取付体取付構造又は被取付体取付方法の被取付体の一例として、光コネクタOCのフェルール端面OEを清掃するための清掃体CTを用いて説明した。被取付体取付構造又は被取付体取付方法は、清掃体CTに限定されることはなく、粘着層を有する第1面と、第1面とは反対側の第2であって粘着層を有しない第2面(基材など)とを有する媒体であればよい。特に、可撓性を有する媒体に適用することができる。さらに、長尺な媒体に適用することができる。例えば、いわゆる粘着テープに適用することができる。基材は、紙、布、樹脂、金属箔などを有する媒体に適用することができる。
【0205】
10 清掃具
100 ハウジング
200 供給リール
224 取付部
224b 第2取付部(係合部)
300 巻取リール
CT 清掃体(被取付体)
RL 粘着層
RS 粘着層を有する面(第1面)
NS 粘着層を有しない面(第2面)