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特許7148774掘削感付与装置、ジョイント構造物、掘削感付与方法、及び掘削感付与プログラム、並びに技能評価装置、技能評価方法、及び技能評価プログラム
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  • 特許-掘削感付与装置、ジョイント構造物、掘削感付与方法、及び掘削感付与プログラム、並びに技能評価装置、技能評価方法、及び技能評価プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】掘削感付与装置、ジョイント構造物、掘削感付与方法、及び掘削感付与プログラム、並びに技能評価装置、技能評価方法、及び技能評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/10 20160101AFI20220929BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A61B34/10
G09B9/00 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018024902
(22)【出願日】2018-02-15
(65)【公開番号】P2019136437
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-10-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第60回自動制御連合講演会、SuI1-4、公益社団法人計測自動制御学会、平成29年11月12日 http://www.sice.or.jp/rengo60/
(73)【特許権者】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】野田 善之
(72)【発明者】
【氏名】益山 健太郎
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-030053(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0311028(US,A1)
【文献】特表2003-532144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/10
G09B 9/00
G09B 23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
想定された掘削対象に対する模擬の掘削操作が操作者により行われる被掘削操作部を有する掘削操作手段と、
前記被掘削操作部に印加された掘削力に応じて、前記掘削操作手段を介して前記掘削対象の材質を掘削する動作に近い力覚を提示することにより前記操作者に対して人工的な掘削感を付与する掘削感付与手段と、
を有し、
前記被掘削操作部が、打撃手段により打撃されることにより、前記掘削力が印加される被打撃部である;又は押圧されながら回動乃至回転されることにより、押圧力、及び回動力乃至回転力が前記掘削力として印加される被回動乃至回転部であることを特徴とする掘削感付与装置。
【請求項2】
前記掘削感付与手段が、
前記被掘削操作部と接続されたボールリテーナと、
前記ボールリテーナを押圧しつつ前記ボールリテーナの回動を案内する回動案内部材と、
棒状部材であって、前記ボールリテーナに接続される接続部と、前記回動案内部材により案内された前記ボールリテーナの回動方向と直交する方向に前記棒状部材を回動可能に軸支する軸支部とを有する棒状部材と、
を有する請求項1に記載の掘削感付与装置。
【請求項3】
前記回動案内部材が、
前記ボールリテーナを押圧する面を有する一対の部材と、
前記一対の部材が前記ボールリテーナを押圧するように前記一対の部材を付勢する付勢部材と、
を有する請求項2に記載の掘削感付与装置。
【請求項4】
前記掘削感付与手段が、前記被掘削操作部に印加された掘削力の大きさと印加方向とを検出する検出部を有する請求項1から3のいずれかに記載の掘削感付与装置。
【請求項5】
前記検出部が、6軸力覚センサである請求項4に記載の掘削感付与装置。
【請求項6】
前記検出部が検出した掘削力の大きさと印加方向とに応じて、
前記掘削力が印加される前の前記被掘削操作部の位置から、
前記掘削力が印加されたときに所定位置に所定速度で前記被掘削操作部が移動するように制御する制御部を有する請求項4から5のいずれかに記載の掘削感付与装置。
【請求項7】
前記制御部による制御が、フィードバック制御とフィードフォワード制御との組合せにより行われる請求項6に記載の掘削感付与装置。
【請求項8】
前記制御部が、
前記被掘削操作部に単回乃至複数回印加された前記掘削力の大きさの累積が設定値を超えると、
前記設定値を超えるまでの間における前記被掘削操作部を移動させる所定速度よりも速い速度で前記被掘削操作部を移動させる、請求項6から7のいずれかに記載の掘削感付与装置。
【請求項9】
仮想空間表示手段を更に有し、
前記仮想空間表示手段が、少なくとも前記想定された掘削対象を仮想空間上に表示する請求項1から8のいずれかに記載の掘削感付与装置。
【請求項10】
前記掘削感付与装置の設置面内における、X方向、及び前記X方向と直交するY方向、並びに、前記設置面と直交するZ方向の各方向に前記掘削操作手段を移動可能に支持する支持手段を更に有する請求項1から9のいずれかに記載の掘削感付与装置。
【請求項11】
前記支持手段が、リニアガイドである請求項10に記載の掘削感付与装置。
【請求項12】
想定された掘削対象に対する模擬の掘削操作が被掘削操作部に対して行われる掘削操作工程と、
前記掘削操作工程で前記被掘削操作部に印加された掘削力に応じて、前記被掘削操作部を有する掘削操作手段を介して前記掘削対象の材質を掘削する動作に近い力覚を提示することにより人工的な掘削感が付与される掘削感付与工程と、
を含み、
前記被掘削操作部が、打撃手段により打撃されることにより、前記掘削力が印加される被打撃部である;又は押圧されながら回動乃至回転されることにより、押圧力、及び回動力乃至回転力が前記掘削力として印加される被回動乃至回転部であることを特徴とする掘削感付与方法。
【請求項13】
操作者により行われる想定された掘削対象に対する模擬の掘削操作を、被掘削操作部を有する掘削操作手段を介して受け付け、
前記被掘削操作部に印加された掘削力に応じて、前記掘削操作手段を介して前記掘削対象の材質を掘削する動作に近い力覚を提示することにより前記操作者に対して人工的な掘削感を付与する、
処理をコンピュータに実行させ
前記被掘削操作部が、打撃手段により打撃されることにより、前記掘削力が印加される被打撃部である;又は押圧されながら回動乃至回転されることにより、押圧力、及び回動力乃至回転力が前記掘削力として印加される被回動乃至回転部である ことを特徴とする掘削感付与プログラム。
【請求項14】
操作者により行われる想定された掘削対象に対する模擬の掘削操作を、被掘削操作部を有する掘削操作手段を介して受け付け、
前記被掘削操作部に印加された掘削力に応じて、前記掘削操作手段を介して前記掘削対象の材質を掘削する動作に近い力覚を提示することにより前記操作者に対して人工的な掘削感を付与し、
想定操作者における掘削力の大きさ及び印加方向の少なくともいずれかを予め記憶している基準データと比較して前記操作者の技能を評価する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする技能評価プログラム。
【請求項15】
前記被掘削操作部が、打撃手段により打撃されることにより、前記掘削力が印加される被打撃部である;又は押圧されながら回動乃至回転されることにより、押圧力、及び回動力乃至回転力が前記掘削力として印加される被回動乃至回転部である請求項14に記載の技能評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削感付与装置、ジョイント構造物、掘削感付与方法、及び掘削感付与プログラム、並びに技能評価装置、技能評価方法、及び技能評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療技術の向上や医療機器の発展に伴い、手術者等の技能向上や特殊技能の獲得を目的として、力覚提示装置等を用いたトレーニングシミュレータの開発が進められている。
【0003】
このような力覚提示装置としては、例えば、皮膚や臓器等の軟性物体への繊細な接触動作に対して臨場感のある人工現実感を実現するものが提案されており、操作者へ力覚を提示する操作端や該操作端に運動を伝える駆動機構を軽量化することにより応答性の向上を図っている。しかし、操作端や駆動機構を軽量化して応答性を高めると、力覚提示装置の剛性が低下するおそれがあるが、皮膚や臓器等の軟性物体への繊細な接触動作では、操作力が小さいため、力覚提示装置の剛性低下の影響は少ないと考えられる。
【0004】
一方、骨や歯等の硬性物体に対するトレーニングシミュレータとしての力覚提示装置も提案されている。例えば、操作者が握って動かすことができるメスやドリル等の模擬手術道具を備え、複数のモダリティの画像から手術対象部分の各組織を含む画像を合成する画像合成手段と、合成した画像を3次元表示する3次元画像表示手段と、模擬手術道具をその動きを含めて画像に重畳表示する重畳表示手段と、重畳表示手段において模擬手術道具が組織に接したとき、両者の硬度に対応する音を発生し、模擬手術道具に反発力を与える人工現実感創出手段を有する手術シミュレーションシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、手術を実施する際に外科医を支援するための外科用ナビゲーションシステムに関し、骨の切除シミュレーションについて記載されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-123327号公報
【文献】特表2004-530485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した先行技術文献には、骨や歯等の硬性物体に対する臨場感のある人工現実感を与える力覚提示技術については開示されていない。また、骨や歯等の硬性物体への骨切削術及び骨切除術は、強い衝撃力を与える操作であり、その操作に対して臨場感のある人工現実感を与える力覚提示装置には、高い剛性と共に、操作端の運動の高い応答性も求められるが、高い剛性と高い応答性とを兼ね備えた、硬性物体に対する臨場感のある人工現実感を与える力覚提示装置は未だ提供されていない。
更に、骨や歯等の硬性物体に対する骨切削術及び骨切除術を行う操作者は、骨や歯への過剰な負荷により骨や歯の亀裂や骨折、穿孔を生じさせない適切な掘削力と、神経や血管、臓器が近くに存在することが多いため、これらを傷付けることなく安全に手術を行うことができる高度な熟練技能の習得が求められている。
【0007】
本発明は、従来における前述の諸問題のうち少なくともいずれかを解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、高い剛性及び高い応答性能を兼ね備えた、硬性物体に対する臨場感のある人工現実感を与える掘削感付与装置、ジョイント構造物、掘削感付与方法、及び掘削感付与プログラムを提供することを目的とする。
また、本発明は、操作者の技能を適正に評価でき、安全かつ確実に熟練技能を習得することができる技能評価装置、技能評価方法、及び技能評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の掘削感付与装置は、想定された掘削対象に対する模擬の掘削操作が操作者により行われる被掘削操作部を有する掘削操作手段と、前記被掘削操作部に印加された掘削力に応じて、前記掘削操作手段を介して前記操作者に対して人工的な掘削感を付与する掘削感付与手段と、を有する。
本発明の掘削感付与装置によると、掘削操作手段と掘削感付与手段を有することにより、硬性物体に対する臨場感のある人工現実感を与えることができ、口腔外科手術や整形外科手術などにおける骨や歯等の硬性物体の切削や切除のトレーニングシミュレータとして好適である。
【0009】
本発明の掘削感付与方法は、想定された掘削対象に対する模擬の掘削操作が被掘削操作部に対して操作者により行われる掘削操作工程と、前記掘削操作工程で前記被掘削操作部に印加された掘削力に応じて、前記掘削操作工程を介して前記操作者に対して人工的な掘削感を付与する掘削感付与工程と、を含む。
本発明の掘削感付与方法によると、掘削操作工程と掘削感付与工程を含むことにより、硬性物体に対する臨場感のある人工現実感を与えることができ、口腔外科手術や整形外科手術などにおける骨や歯等の硬性物体の切削や切除のトレーニングを好適に行うことができる。
【0010】
本発明の掘削感付与プログラムは、操作者により行われる想定された掘削対象に対する模擬の掘削操作を、被掘削操作部を有する掘削操作手段を介して受け付け、前記被掘削操作部に印加された掘削力に応じて、前記掘削操作手段を介して前記操作者に対して人工的な掘削感を付与する、処理をコンピュータに実行させる。
本発明の掘削感付与プログラムによると、硬性物体に対する臨場感のある人工現実感を与えることができ、口腔外科手術や整形外科手術などにおける骨や歯等の硬性物体の切削や切除のトレーニングを好適に行うことができる。
【0011】
本発明のジョイント構造物は、ボールリテーナと、前記ボールリテーナを押圧しつつ前記ボールリテーナの回動を案内する回動案内部材と、前記ボールリテーナに接続される接続部と、前記回動案内部材により案内された前記ボールリテーナの回動方向と直交する方向に前記ボールリテーナを回動可能にするようにして軸支された軸支部とを有する棒状部材と、を有する。
本発明のジョイント構造物は、ボールリテーナと、回動案内部材と、棒状部材とを有する。ボールリテーナは、回動可能な複数のボールを表面に配置した構造を有しており、ボールリテーナはその表面の複数のボールと回動案内部材との点接触によって支持されている。これにより、ボールリテーナと回動案内部材とが密着し、バックラッシを低減させることによって、滑らかな3軸の回転操作を行うことができ、ガタツキを確実に防止できる。
【0012】
本発明の技能評価装置は、想定された掘削対象に対する模擬の掘削操作が操作者により行われる被掘削操作部を有する掘削操作手段と、前記被掘削操作部に印加された掘削力に応じて、前記掘削操作手段を介して前記操作者に対して人工的な掘削感を付与する掘削感付与手段と、想定操作者における掘削力の大きさ及び印加方向の少なくともいずれかを予め記憶している基準データと比較して前記操作者の技能を評価する評価部と、を有する。
本発明の技能評価装置によると、掘削操作手段と掘削感付与手段と評価手段とを有することにより、操作者の技能を適正に評価でき、安全かつ確実に技能を習得することができるので、高度な熟練技能を伝承することができる。
【0013】
本発明の技能評価方法は、想定された掘削対象に対する模擬の掘削操作が被掘削操作部に対して操作者により行われる掘削操作工程と、前記被掘削操作部に印加された掘削力に応じて、前記掘削操作手段を介して前記操作者に対して人工的な掘削感を付与する掘削感付与工程と、想定操作者における掘削力の大きさ及び印加方向の少なくともいずれかを予め記憶している基準データと比較して前記操作者の技能を評価する評価工程と、を含む。
本発明の技能評価方法によると、掘削操作工程と掘削感付与工程と評価工程とを含むことにより、操作者の技能を適正に評価でき、安全かつ確実に技能を習得することができるので、高度な熟練技能を伝承することができる。
【0014】
本発明の技能評価プログラムは、操作者により行われる想定された掘削対象に対する模擬の掘削操作を、被掘削操作部を有する掘削操作手段を介して受け付け、前記掘削操作手段により前記被掘削操作部に印加された掘削力に応じて、前記掘削操作手段を介して前記操作者に対して人工的な掘削感を付与し、想定操作者における掘削力の大きさ及び印加方向の少なくともいずれかを予め記憶している基準データと比較して前記操作者の技能を評価する処理をコンピュータに実行させる。
本発明の技能評価プログラムによると、操作者の技能を適正に評価でき、安全かつ確実に技能を習得することができるので、高度な熟練技能を伝承することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、硬性物体に対する臨場感のある人工現実感を与えることができる掘削感付与装置、ジョイント構造物、掘削感付与方法、及び掘削感付与プログラムを提供することができる。
また、本発明によると、操作者の技能を適正に評価でき、安全かつ確実に技能を習得することができる技能評価装置、技能評価方法、及び技能評価プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の掘削感付与装置の一例を示す概略斜視図である。
図2図2は、本発明の掘削感付与装置のジョイント構造部の一例を示す部分拡大斜視図である。
図3図3は、本発明の掘削感付与装置のジョイント構造部の一例を示す部分拡大分解斜視図である。
図4図4は、本発明の掘削感付与装置のジョイント構造部に用いるボールリテーナの一例を示す概略図である。
図5図5は、掘削感付与装置におけるコンピュータのハードウェア構成の一例を含むブロック図である。
図6図6は、掘削感付与装置におけるコンピュータの機能構成の一例を示すブロック図である。
図7図7は、アドミタンス制御の一例を示すブロック線図である。
図8図8は、掘削感付与装置における制御部が行うアドミタンス制御の詳細な一例を示すブロック線図である。
図9図9は、金槌で被掘削操作部に掘削力を加えたときの実験結果を示すグラフである。
図10図10は、フィードバック(FB)制御のみで金槌で被掘削操作部に掘削力を加えたときの実験結果を示すグラフである。
図11図11は、本発明の技能評価装置の一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(掘削感付与装置、掘削感付与方法、及び掘削感付与プログラム)
本発明の掘削感付与装置は、掘削操作手段と、掘削感付与手段とを有し、仮想空間表示手段及び支持手段を有することが好ましく、更に必要に応じてその他の手段を有する。
本発明の掘削感付与方法は、掘削操作工程と、掘削感付与工程とを含み、仮想空間表示工程及び支持工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の掘削感付与プログラムは、操作者により行われる想定された掘削対象に対する模擬の掘削操作を、被掘削操作部を有する掘削操作手段を介して受け付け、前記被掘削操作部に印加された掘削力に応じて、掘削操作手段を介して操作者に対して人工的な掘削感を付与する、処理をコンピュータに実行させる。
【0018】
本発明の「掘削感付与装置」における掘削操作手段や掘削感付与手段等が行う制御は、本発明の「掘削感付与方法」を実施することと同義であるので、本発明の「掘削感付与装置」の説明を通じて本発明の「掘削感付与方法」の詳細についても明らかにする。また、本発明の「掘削感付与プログラム」は、ハードウェア資源としてのコンピュータ等を用いることにより、本発明の「掘削感付与装置」として実現させることから、本発明の「掘削感付与装置」の説明を通じて本発明の「掘削感付与プログラム」の詳細についても明らかにする。
本発明の掘削感付与方法は、本発明の掘削感付与装置により好適に実施することができ、掘削操作工程は掘削操作手段により行うことができ、掘削感付与工程は掘削感付与手段により行うことができ、仮想空間表示工程は仮想空間表示手段により行うことができ、支持工程は支持手段により行うことができ、その他の工程はその他の手段により行うことができる。
【0019】
<掘削操作工程及び掘削操作手段>
掘削操作工程は、想定された掘削対象に対する模擬の掘削操作が被掘削操作部に対して操作者により行われる工程であり、掘削操作手段により行われる。
【0020】
<<掘削対象>>
以下、本発明における模擬の掘削操作の対象物として想定される対象物のことを「掘削対象」と称する。すなわち、以下の記載において「掘削対象に対し掘削力を印加する」ということは、想定された掘削対象に対し模擬の掘削力を印加する操作を意味する。
掘削対象としては、掘削可能な対象物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
掘削とは、掘削対象に対して強い力を与えて掘削対象を掘ったり、削ったりすることを意味し、打撃や回転体の押し込みなどにより掘削対象を所望の形状に調整することも含む。
掘削対象としては、例えば、骨、歯、石、金属、木材、プラスチック、セラミックス、宝石などが挙げられる。
骨としては、例えば、頭蓋骨、顔面骨、脊椎骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、鎖骨、上腕骨、前腕骨、手根骨、中手骨、指骨、骨盤、大腿骨、膝蓋骨、下腿骨、足根骨、中足骨、趾骨などが挙げられる。
歯としては、例えば、乳歯(乳中切歯、乳側切歯、乳犬歯、第一乳臼歯、第二乳臼歯)、永久歯(切歯、犬歯、小臼歯、大臼歯)などが挙げられる。
石としては、例えば、大理石、御影石、花崗岩、砂岩、石灰岩、安山岩、凝灰岩、粘板岩などが挙げられる。
金属としては、例えば、鉄、アルミニウム、銅、金、銀、マグネシウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、亜鉛などが挙げられる。
木材としては、例えば、ヒノキ、ベイヒ、ヒバ、ベイヒバ、スギ、ベイスギ、カラマツ、アカマツ、エゾマツ、クリ、ケヤキ、サワラ、マキ、カシ、サクラ、モミ、ツガ、ベイツガなどが挙げられる。
プラスチックとしては、例えば、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリアセタール、アクリル、ポリメチルメタクリレート、変性アクリル、ポリカーボネートポリアミド、ポリウレタン、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミドなどが挙げられる。
セラミックスとしては、例えば、アルミナ、ジルコニア、窒化珪素、窒化アルミ、炭化珪素、チタン酸バリウム、ハイドロキシアパタイト、フェライト、酸化アルミニウム、酸化亜鉛などが挙げられる。
宝石としては、例えば、エメラルド、オパール、水晶、ダイヤモンド、トルコ石、真珠などが挙げられる。
【0021】
<<操作者>>
操作者は、掘削対象に対する模擬の掘削操作を被掘削操作部に対して行う者であり、例えば、医学部や歯学部の学生、医者、歯医者、歯科技工士、大工、木材加工職人、石工、彫刻家、金属加工職人、旋盤工、金型職人、宝石加工職人などが挙げられる。
【0022】
<<被掘削操作部>>
被掘削操作部は、掘削対象に対する模擬の掘削操作が操作者により行われる箇所であり、例えば、被打撃部や被回動乃至回転部などである。また、掘削対象に応じて大きさ、形状、構造などを適宜選択・交換することができる。
【0023】
-被打撃部-
被打撃部は、打撃手段により打撃されることにより、掘削力が印加される部分であり、打撃面などが該当する。
打撃とは、掘削対象を強く打つこと、即ち、掘削対象の打撃される面と打撃手段とが強く当たることを意味し、人が実行する場合にかぎられず、機械やロボットが実行する場合も含まれる。
打撃力とは、掘削対象を打撃する力を意味する。
【0024】
被打撃部の大きさ、形状、及び構造としては、特に制限はなく、掘削対象の大きさ、形状、及び構造に応じて適宜選択することができる。
被打撃部の材質としては、掘削対象を掘削することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、樹脂などが挙げられる。
金属としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、ステンレススチール、クロム-ニッケル合金、チタン合金、などが挙げられる。
樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)共重合体、繊維強化プラスチック(FRP)、テフロン(登録商標)などが挙げられる。
【0025】
被打撃部としては、具体的には、ノミ、骨ノミ、メス、カッター、釘、針等の打撃面が挙げられる。
打撃手段としては、例えば、金槌、骨マレット、ハンマー、斧、人の拳などが挙げられる。
【0026】
-被回動乃至回転部-
被回動乃至回転部は、押圧されながら回動乃至回転されることにより、押圧力、及び回動力乃至回転力が掘削力として印加される部分である。
押圧されながら回動乃至回転するとは、掘削対象に対して回転体を回動乃至回転しながら押し込むことを意味する。
【0027】
被回動乃至回転部の大きさ、形状、構造、及び材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
被回動乃至回転部の大きさ、形状、及び構造としては、特に制限はなく、掘削対象の大きさ、形状、及び構造に応じて適宜選択することができる。
被回動乃至回転部の材質としては、掘削対象を掘削することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、樹脂などが挙げられる。
金属としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、ステンレススチール、クロム-ニッケル合金、チタン合金、などが挙げられる。
樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)共重合体、繊維強化プラスチック(FRP)、テフロン(登録商標)などが挙げられる。
【0028】
被回動乃至回転部としては、具体的には、手動又は電動によるドリル、キリ、ネジ、ボルト、フライス、バイト、ヤスリなどが挙げられる。
【0029】
<掘削感付与工程及び掘削感付与手段>
掘削感付与工程は、掘削操作工程により被掘削操作部に印加された掘削力に応じて、掘削操作工程を介して操作者に対して人工的な掘削感を付与する工程であり、掘削感付与手段により実施される。
「人工的な掘削感」とは、力学的なバーチャルリアリティ(VR)を意味し、実際に掘削対象を掘削するのではないが、掘削する動作に近い臨場感を与えることを意味する。
【0030】
掘削感付与手段は、ボールリテーナと、回動案内部材と、棒状部材とを有し、検出部及び制御部を有することが好ましく、更に必要に応じてその他の部材を有する。
以下、ボールリテーナと、回動案内部材と、棒状部材と、その他の部材とを合わせてジョイント構造部という。
掘削感付与手段は、ジョイント構造部を有することにより、バックラッシを低減させることができ、滑らかな3軸の回転操作を可能とすると共に、衝撃力に耐えうる高い剛性を備えることができる。ガタツキがないので、硬性物体に対する臨場感のある人工現実感を与えることができる。
【0031】
-ボールリテーナ-
ボールリテーナは、掘削操作手段における被掘削操作部と接続される。
ボールリテーナと被掘削操作部との接続方法としては、特に制限はなく、被掘削操作部に応じて適宜選択することができる。
ボールリテーナは、回動可能な複数のボールを表面に配置した構造を有しており、ボールリテーナはその表面の複数のボールと回動案内部材との点接触によって支持されている。これにより、ボールリテーナと回動案内部材とが密着し、バックラッシを低減させることによって、ガタツキのない滑らかな3軸の回転操作を可能とすると共に、衝撃力に耐えうる高い剛性を有している。
また、ボールリテーナを採用したことにより、例えば、ボールリテーナを一対の半円形支持板で挟んでいるにもかかわらず、Z軸回転方向の回転抵抗を小さくすることができる。
ボールリテーナとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、株式会社ミスミ製のボールリテーナ(型番:EMBS8-25)などが挙げられる。
【0032】
-回動案内部材-
回動案内部材は、ボールリテーナを押圧しつつボールリテーナに点乃至線接触しかつボールリテーナの回動を案内する。
回動案内部材は、ボールリテーナを押圧する面を有する一対の部材と、一対の部材がボールリテーナを押圧するように一対の部材を付勢する付勢部材と、を有し、例えば、一対の半円形支持板などが挙げられる。
回動案内部材の大きさ、形状、構造、材質としては、掘削対象の大きさ、形状、及び構造に応じて適宜選択することができる。
回動案内部材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、樹脂などが挙げられる。
金属としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、ステンレススチール、クロム-ニッケル合金、チタン合金、などが挙げられる。
樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)共重合体、繊維強化プラスチック(FRP)、テフロン(登録商標)などが挙げられる。
【0033】
-付勢部材-
付勢部材としては、例えば、バネ、ゴム、エラストマー等の弾性体などが挙げられる。
付勢部材としては、具体的には、ボルトと平ワッシャとバネとの組み合わせなどが挙げられる。なお、回動案内部材が弾性材料の場合、回動案内部材が撓むことにより付勢部材を兼ねることもできる。
【0034】
-棒状部材-
棒状部材は、一端がボールリテーナに接続される接続部であり、他端が、回動案内部材により案内されたボールリテーナの回動方向と直交する方向に棒状部材を回動可能に軸支する軸支部を有する。軸支部としては、例えば、Z方向支持軸などが挙げられる。また、接続部と軸支部は棒状部材の端でなくてもよく、中間部分に存在していてもかまわない。
棒状部材の大きさ、構造、及び材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
棒状部材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、樹脂などが挙げられる。
金属としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、ステンレススチール、クロム-ニッケル合金、チタン合金、などが挙げられる。
樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)共重合体、繊維強化プラスチック(FRP)、テフロン(登録商標)などが挙げられる。
【0035】
ジョイント構造部は駆動機構を備えており、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の3回転方向への回動乃至回転が可能である。
X方向支持軸は、連結されている駆動機構の作動によりジョイント構造部のX軸方向への回動乃至回転移動を行う。
Y方向支持軸は、連結されている駆動機構の作動によりジョイント構造部のY軸方向への回動乃至回転移動を行う。
Z方向支持軸は、連結されている駆動機構の作動によりジョイント構造部のZ軸方向への回動乃至回転移動を行う。
駆動機構としては、例えば、サーボモータ、ステッピングモータなどが挙げられる。また、駆動機構と減速器やブレーキを組み合わせて回動乃至回転移動を調整することができる。
ジョイント構造部における各サーボモータ内にはロータリーエンコーダが設けられており、ロータリーエンコーダによりジョイント構造部の回転角度、角速度を計測することができる。
計測されたジョイント構造部の回転角度、角速度は、制御部へ送信される。
【0036】
<<支持手段>>
前述したジョイント構造部により、掘削操作手段を、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の3回転方向への回動乃至回転可能とした。それに加え、支持手段は、掘削感付与装置の設置面内における、X方向、及びX方向と直交するY方向、並びに、設置面と直交するZ方向の各方向に掘削操作手段を移動可能に支持する。
支持手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、掘削操作手段の直線運動をガイドし、互いに交差するX軸、Y軸、及びZ軸の3軸に沿って配置される、X軸リニアガイド、Y軸リニアガイド、Z軸リニアガイドが好適である。
X軸リニアガイドは、端部に設けられた駆動機構の作動により掘削操作手段におけるジョイント構造部の左右移動を行う。
Y軸リニアガイドは、端部に設けられた駆動機構の作動により掘削操作手段におけるジョイント構造部の前後移動を行う。
Z軸リニアガイドは、端部に設けられた駆動機構の作動により掘削操作手段におけるジョイント構造部の上下移動を行う。
リニアガイドの大きさ、形状、構造、材質などについては、硬性物体に対する臨場感のある人工現実感を与えるのに必要な高い剛性を備えておれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
X軸、Y軸、及びZ軸のリニアガイドとしては、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、LMガイドアクチュエータ(THK株式会社製、型番:SKR46)などが挙げられる。
駆動機構としては、例えば、サーボモータ、ステッピングモータなどが挙げられる。また、駆動機構と減速器やブレーキを組み合わせて回動乃至回転移動を調整することができる。
支持手段における各サーボモータ内にはロータリーエンコーダが設けられており、ロータリーエンコーダによりリニアガイドの各軸の移動位置、移動距離を計測することができる。
計測されたリニアガイドの各軸の移動位置や移動距離は、制御部へ送信される。
【0037】
-検出部-
検出部は、被掘削操作部に印加された掘削力の大きさと印加方向とを検出する。
被掘削操作部に印加された掘削力の大きさの検出には、6軸力覚センサを用いることが好ましい。
6軸力覚センサは、例えば、Z軸リニアガイドに支持アームを介して上下移動可能に搭載されているジョイント構造部の土台と支持アームとの間に設けられており、被掘削操作部に印加された掘削力の大きさを検出する。
6軸力覚センサは、力とトルク(モーメント)の大きさと方向を3次元空間ベクトルで示すセンサである。各軸方向の力成分をFx、Fy、Fzで示し、各軸回りに作用するトルク成分をTx、Ty、Tzで示すセンサである。
6軸力覚センサとしては、市販品を用いることができ、例えば、株式会社レプトリノ製の6軸力覚センサ(型番:080YA501)などが挙げられる。
【0038】
なお、検出部において、被掘削操作部に印加された掘削力の印加方向は、ジョイント構造部のX方向、Y方向、及びZ方向支持軸に連結されているサーボモータ内のロータリーエンコーダで計測した回転角度や角速度と、支持手段であるX軸、Y軸、及びZ軸リニアガイドに設けられているサーボモータ内のロータリーエンコーダで計測したリニアガイドの各軸の移動位置と、から求めてもかまわない。
【0039】
-制御部-
制御部は、検出部が検出した掘削力の大きさと印加方向とに応じて、掘削力が印加される前の被掘削操作部の位置から、掘削力が印加されたときに所定位置に所定速度で被掘削操作部が移動、回動及び回転の少なくともいずれかをするように制御する。
ここで、所定位置とは、印加された掘削力に応じた被掘削操作部の位置を意味する。所定位置としては、例えば、仮想モデルにおいて、掘削力に応じて算出される仮想状態における位置が好ましい。
仮想モデルとは、例えば、質量、バネ定数、粘性係数、あるいは固有角振動数などの機械的性質を示すパラメータにより掘削対象を表す数理モデルである。機械的性質を示すパラメータの設定により、掘削対象として、例えば、金属、木材、骨、歯、石、プラスチック、セラミックスなどを想定することが可能となる。仮想モデルとしてあらかじめ設定した機械的性質を示すパラメータ、並びに、検出した掘削力の大きさ及び印加方向から、掘削力を印加された後の仮想モデルにおける位置、速度、角度、角速度などの仮想状態を算出することができる。
所定速度とは、印加された掘削力に応じた被掘削操作部の移動速度、回動速度及び回転速度の少なくともいずれかの速度を意味する。所定速度としては、例えば、仮想モデルにおいて、検出した掘削力の大きさ及び印加方向に応じて算出される仮想状態における速度が好ましい。
【0040】
制御部による制御は、フィードバック制御とフィードフォワード制御との組合せにより行われることが好ましい。これにより、制御部は、フィードフォワード制御により、掘削力に応じた掘削感を素早く被掘削操作部に付与するように駆動させ、高い応答性を実現できるとともに、フィードバック制御により、掘削力に応じた掘削感を正確に被掘削操作部に付与するように駆動できる。
【0041】
制御部は、掘削操作手段により掘削対象に単回乃至複数回印加された掘削力の大きさの累積が設定値を超えると、超えるまでの所定速度よりも大きな速度で被掘削操作部を移動、回動、回転させることが好ましい。なお、掘削力の大きさとは、検出した掘削力の力積を意味する。制御部は、掘削力の大きさの累積が設定値を超えるまでは掘削力を印加した直後の掘削対象の所定速度を低くする(所定速度ゼロも含む)ことにより、掘削対象が硬いという感覚を操作者に得させることができる。また、制御部は、掘削力の大きさの累積が設定値を超えた場合には、所定速度よりも大きな速度で被掘削操作部を移動させることにより、掘削対象が削れたり貫通したりしてノミ等が抜けるという感覚を操作者に得させることができる。所定速度よりも大きな速度で被掘削操作部を移動させるために、制御部は、仮想モデルに設定する機械的性質を示すパラメータを切り替えることが好ましい。制御部は、掘削力の大きさの累積が設定値を超えていないと判定した場合には、機械的性質を示すパラメータをあらかじめ設定されたままにしておく。そして、掘削力の大きさの累積が設定値を超えたと判定した場合には、制御部は、機械的性質を示すパラメータのうち、質量及び固有角振動数がほぼ0であるパラメータに切り替えることにより、操作者が被掘削操作部をほぼ自在に動かせることができるため、掘削対象が削れたり貫通したりしてノミ等が抜けるという感覚を操作者に得させることができる。
【0042】
制御部が行う各種処理は、制御部を有するコンピュータにより実行される。
コンピュータとしては、記憶、演算、制御などの装置を備えた機器であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パーソナルコンピュータなどが挙げられる。
【0043】
<<仮想空間表示手段>>
仮想空間表示手段は、少なくとも掘削対象を仮想空間上に表示する。また、仮想空間表示手段は、掘削対象の手前に被掘削操作部を表示するようにしてもよい。仮想空間表示手段を備えることにより、視覚的なバーチャルリアリティ(VR)を実現でき、掘削感付与装置により付与される掘削感の臨場感を更に高めることができる。
仮想空間表示手段としては、例えば、モニター、プロジェクター、VRゴーグル、ヘッドマウントディスプレイなどが挙げられる。
【0044】
<その他の工程及びその他の手段>
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、記録工程、表示工程などが挙げられる。
その他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、記録手段、表示手段などが挙げられる。
【0045】
(ジョイント構造物)
本発明のジョイント構造物は、ボールリテーナと、回動案内部材と、棒状部材と、を有し、更に必要に応じてその他の部材を有する。
回動案内部材は、ボールリテーナを押圧する面を有する一対の部材と、一対の部材が前記ボールリテーナを押圧するように一対の部材を付勢する付勢部材と、を有する。
ジョイント構造物におけるボールリテーナ、回動案内部材、棒状部材、及び付勢部材は、いずれも、本発明の掘削感付与装置のジョイント構造部と同様である。
【0046】
本発明のジョイント構造物は、通常、スライドレール等の軸の摺動などに用いられるボールリテーナを回動乃至回転動作に用いている。
ジョイント構造物においてボールリテーナは、このボールリテーナの表面の複数のボールと回動案内部材としての一対の半円形支持板との点接触によって支持されている。
一対の半円形支持板の間に配置する凸型部材の突出幅はボールリテーナの外径よりも小さく構成されている。一対の半円形支持板の外側から付勢部材によりボールリテーナを挟んだ状態で固定する。付勢部材の押圧力により一対の半円形支持板でボールリテーナを外側から押さえ付けても、一対の半円形支持板の間に配置した凸型部材によりボールリテーナが摺動する隙間は確保できる。そして、ボールリテーナはその表面の複数のボールにより半円形支持板と点接触しているので、ボールリテーナに接続している操作端を滑らかに動かすことができ、ガタツキを確実に防止できる。
【0047】
ジョイント構造物は、上記特徴を備えており、本発明の掘削感付与装置のジョイント構造部として好適に用いられが、これ以外にも円滑な回動乃至回転動作が必要な各種装置に幅広く用いることができ、例えば、操縦杆、各種操作レバー、コンピュータの入力装置、ゲームのコントローラとしてのジョイスティックなどが挙げられる。
【0048】
(技能評価装置、技能評価方法、及び技能評価プログラム)
本発明の技能評価装置は、掘削操作手段と、掘削感付与手段と、評価手段とを有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
本発明の掘削感付与方法は、掘削操作工程と、掘削感付与工程と、評価工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の技能評価プログラムは、操作者により行われる想定された掘削対象に対する模擬の掘削操作を、被掘削操作部を有する掘削操作手段を介して受け付け、被掘削操作部に印加された掘削力に応じて、掘削操作手段を介して操作者に対して人工的な掘削感を付与し、
想定操作者における掘削力の大きさ及び印加方向の少なくともいずれかを予め記憶している基準データと比較して操作者の技能を評価する、処理をコンピュータに実行させる。
【0049】
本発明の「技能評価装置」における掘削操作手段、掘削感付与手段や評価手段等が行う制御は、本発明の「技能評価方法」を実施することと同義であるので、本発明の「技能評価装置」の説明を通じて本発明の「技能評価方法」の詳細についても明らかにする。また、本発明の「技能評価プログラム」は、ハードウェア資源としてのコンピュータ等を用いることにより、本発明の「技能評価装置」として実現させることから、本発明の「技能評価装置」の説明を通じて本発明の「技能評価プログラム」の詳細についても明らかにする。
本発明の技能評価方法は、本発明の技能評価装置により好適に実施することができ、掘削操作工程は掘削操作手段により行うことができ、掘削感付与工程は掘削感付与手段により行うことができ、評価工程は評価手段により行うことができ、その他の工程はその他の手段により行うことができる。
【0050】
ところで、熟練技能とは、「繰り返しの訓練を通して体で覚える」とか、「先人のやり方を見て覚える」とか、「失敗の繰り返しの中から微妙な感覚を体得する」とかいう中で伝承されてきたものであり、いわゆる「解説しにくい勘所」、「変化に適切に対応する技量」というような、熟練技能者自身でも教示すべき内容を正確に把握しきれていない難しい微妙な項目である場合が多い。
また、「達人」や「職人」などと称される熟練技能者の価値は、予め決められている定型作業においてではなく、新しい事態、あるいは予期せぬ事態への対応において真価が発揮されるものであり、予め決められている定型作業に対しての動作パターンを単に作業仕様に関連付けて抽出するだけでは本当の意味での熟練技能の所在を評価することはできない。
そこで、本発明の技能評価装置及び技能評価方法は、掘削操作手段と掘削感付与手段と評価手段とを有することにより、いわゆる熟練技能といわれる高度かつ微妙な技能の勘所の習得を図るために、操作者の技能を的確に評価することができる。
【0051】
本発明の「技能評価装置」は、評価手段を有する以外は、本発明の「掘削感付与装置」と同様の手段を有している。本発明の「技能評価方法」は、評価工程を含む以外は、本発明の「掘削感付与方法」と同様の工程を含んでいる。
【0052】
<評価工程及び評価手段>
評価工程は、想定操作者における掘削力の大きさ及び印加方向の少なくともいずれかを予め記憶している基準データと比較して操作者の技能を評価する工程であり、評価手段により実施される。
【0053】
-想定操作者-
想定操作者とは、技能の評価を行う際の基準となる技術分野における熟練者を意味し、分野に応じて適宜選定することができる。
熟練者としては、例えば、高度な熟練技能を有する整形外科医者、高度な熟練技能を有する口腔外科医者、高度な熟練技能を有する職人などが挙げられる。
【0054】
-基準データ-
基準データは、技能の評価を行う際の基準となるデータである。基準データとしては、例えば、熟練者の掘削動作における掘削力の大きさ及び印加方向の時系列データなどが挙げられる。
なお、熟練技能者から得られた基準データからデータベースを構築し、このデータベースのデータを作業仕様に合わせてロボットに教示することもできる。
【0055】
-評価方法-
評価方法としては、例えば、基準データと操作者の掘削力の大きさ及び印加方向のデータとの差の平均値、標準偏差を求める方法、時系列の基準データと操作者の掘削力の大きさ及び印加方向のデータとの相関を求める方法、時系列の基準データから外れた操作者のエラーの数の累積値を求める方法、などが挙げられる。
【0056】
<第1の実施形態>
ここで、本発明の掘削感付与装置の第1の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の第1の実施形態の掘削感付与装置は、ジョイント構造物として本発明のジョイント構造物を用いており、本発明のジョイント構造物は本発明の掘削感付与装置に含まれるため、以下の本発明の掘削感付与装置の実施形態の説明を通じて、本発明のジョイント構造物の実施形態についても説明する。
なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。また、下記構成部材の数、位置、形状等は本実施形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数、位置、形状等にすることができる。
【0057】
図1は、本発明の掘削感付与装置の一例を示す概略斜視図である。図2は、掘削感付与装置のジョイント構造部の部分拡大斜視図である。この図1の掘削感付与装置100は、被掘削操作部としての骨ノミに見立てた操作端1と、支持手段としてのX軸リニアガイド2、Y軸リニアガイド3、Z軸リニアガイド4と、検出部としての6軸力覚センサ6と、X軸、Y軸、及びZ軸リニアガイドの駆動機構としてのX軸サーボモータ7、Y軸サーボモータ8、Z軸サーボモータ9と、ジョイント構造部50の駆動機構としてのX軸回転方向サーボモータ15、Y軸回転方向サーボモータ16、及びZ軸回転方向サーボモータ17と、制御部11とを有する。なお、図1中10はX軸補助ガイド、12は基台である。
【0058】
操作端1には、操作者の打撃による打撃力が与えられる。1aは被打撃部としての打撃面である。打撃は金槌を用いて行われる。
操作端1へ操作者の金槌による打撃操作により大きな衝撃力が加わることを考慮して、掘削感付与装置100は、高い剛性及び強度を有する構造を備えている。また、操作端1を自在に操作できるように前後方向、上下方向、及び左右方向への移動を可能とすることが求められる。そこで、掘削感付与装置100は、図1に示すように、支持手段としてX軸方向の直線移動をガイドするX軸リニアガイド2と、Y軸方向の直線移動をガイドするY軸リニアガイド3と、Z軸方向の直線移動をガイドするZ軸リニアガイド4とを有することにより、X軸、Y軸、及びZ軸の3方向への並進移動が可能となる。このようなリニアガイドを用いた構造は高い強度、剛性を有しているため、並進移動に対する大きな荷重負荷や衝撃に十分に耐えることができる。したがって、掘削感付与装置100は、硬性物体に対する臨場感のある人工現実感を与えることができる。
【0059】
支持手段としてのX軸、Y軸、及びZ軸リニアガイド2、3、4は、駆動機構としてのX軸サーボモータ7、Y軸サーボモータ8、及びZ軸サーボモータ9の作動により所望の方向に移動可能である。本実施形態では、X軸、Y軸、及びZ軸リニアガイドとして、LMガイドアクチュエータ(THK株式会社製、型番:SKR46)を用いている。
X軸、Y軸、及びZ軸のサーボモータ7、8、9にはロータリーエンコーダが設けられており、ロータリーエンコーダにより各リニアガイドの各軸の移動位置や移動距離を計測する。
計測されたリニアガイドの各軸の移動位置や移動距離は、制御部11へ送信される。
【0060】
ジョイント構造部10は、ボールリテーナ14と、回動案内部材としての一対の半円形支持板13、13と、棒状部材としてのZ方向支持軸20とを有する。
ジョイント構造部50は、Z軸リニアガイド4に支持アーム33を介して上下移動可能に搭載されており、ジョイント構造部50の基盤22と支持アーム33との間に6軸力覚センサ6が設置されている。本実施形態では、6軸力覚センサ6として、株式会社レプトリノ製の6軸力覚センサ(型番:080YA501)を用いている。
6軸力覚センサ6により掘削力や掘削力の印加方向を検出することができ、定格荷重500(N)、定格モーメント20(Nm)までの計測が可能である。
【0061】
図2に示すように、X方向支持軸18は、一対の半円形支持板13、13と、棒状部材としてのZ方向支持軸20を介して連結されているサーボモータ15の作動によりジョイント構造部50のX軸方向への回動乃至回転移動を行う。なお、図2中31はモータカバー、32はベアリングホルダーである。
Y方向支持軸19は、連結されているサーボモータ16の作動によりジョイント構造部50のY軸方向への回動乃至回転移動を行う。
Z方向支持軸20は、連結されているサーボモータ17の作動によりジョイント構造部50のZ軸方向への回動乃至回転移動を行う。
各サーボモータ15、16、17内にはロータリーエンコーダが設けられており、ロータリーエンコーダによりジョイント構造部50の回転角度や角速度を計測することができる。
計測されたジョイント構造部50の回転角度や角速度は、制御部11へ送信され、検出部における被掘削操作部に印加された掘削力の回転方向及び回動方向の角度や角速度を検出するのに用いられる。
【0062】
ジョイント構造部50は、図3に示すように、ボールリテーナ14を一対の半円形支持板13、13の間で支持する構造を備えている。
ボールリテーナ14は、図4に示すような、回動可能な複数のボール34を表面に配置した構造を有している。本実施形態では、株式会社ミスミ製のボールリテーナ(型番:EMBS8-25)を用いている。
ボールリテーナ14は、ボールリテーナの表面の複数のボール34と一対の半円形支持板13、13との点接触によって支持されている。
一対の半円形支持板13、13の間に配置する凸型部材24、24の突出幅はボールリテーナ14の外径よりも小さく構成されている。一対の半円形支持板13、13の外側からバネ25を介してボルト26でボールリテーナ14を挟んだ状態で固定する。バネ25の押圧力により一対の半円形支持板13、13でボールリテーナ14を外側から押さえ付けても、一対の半円形支持板13、13の間に配置した凸型部材24によりボールリテーナ14が摺動する隙間は確保できる。そして、ボールリテーナ14はその表面の複数のボール34により半円形支持板13、13と点接触しているので、ボールリテーナ14に接続している操作端1を滑らかに動かすことができ、ガタツキを確実に防止できる。
【0063】
支持手段としてのX軸リニアガイド2、Y軸リニアガイド3、及びZ軸リニアガイド4の各リニアガイドに設けられているサーボモータ内のロータリーエンコーダ、ジョイント構造部50のX方向支持軸19、Y方向支持軸20、及びZ方向支持軸21に連結されているサーボモータ内のロータリーエンコーダ、並びに6軸力覚センサ6により得られた各種信号は、制御部11により処理される。
以下では、本実施形態で用いるコンピュータについて説明する。
【0064】
図5は、掘削感付与装置におけるコンピュータのハードウェア構成を含むブロック図である。図5に示すように、コンピュータ70は、駆動機構60と、ヘッドマウントディスプレイ90とに通信可能に接続されている。また、コンピュータ70は以下の各部を有する。各部は、バス77を介してそれぞれ接続されている。
【0065】
CPU(Central Processing Unit)71は、プロセッサの一種であり、種々の制御や演算を行う処理装置である。
CPU71は、補助記憶装置73などが記憶するOS(Operating System)やプログラムを実行することにより、種々の機能を実現する。すなわち、CPU71は、本実施態様では、掘削感付与プログラムを実行することにより、後述する制御部82として機能する。
【0066】
掘削感付与プログラムは、必ずしも最初から補助記憶装置73などに記憶されていなくともよい。掘削感付与プログラムは、例えば、インターネットなどを介して掘削感付与装置100に通信可能に接続されている他の情報処理装置などに掘削感付与プログラムを格納させ、掘削感付与装置100がこれらから掘削感付与プログラムを取得して実行してもよい。また、掘削感付与プログラムは、例えば、コンピュータ読取り可能な記録媒体に格納され、掘削感付与装置100がこの記録媒体から掘削感付与プログラムを取得して実行してもよい。記録媒体としては、例えば、可搬型記録媒体、半導体メモリ、ハードディスクなどが挙げられる。可搬型記録媒体としては、例えば、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、USB(Universal Serial Bus)メモリなどが挙げられる。半導体メモリとしては、例えば、フラッシュメモリなどが挙げられる。
【0067】
また、CPU71は、掘削感付与装置100全体の動作を制御するために用いられる。なお、本実施態様では、掘削感付与装置100全体の動作を制御する装置をCPU71としたが、これに限ることなく、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)などとしてもよい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
主記憶装置72は、各種プログラムを記憶し、また各種プログラムを実行するために必要なデータなどを記憶する。
主記憶装置72は、図示しない、ROMと、RAM(Random Access Memory)と、を有する。
ROMは、BIOS(Basic Input/Output System)等の各種プログラムなどを記憶している。
RAMは、各種プログラムがCPU71により実行される際に展開される作業範囲などとして機能する。RAMとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。RAMとしては、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)などが挙げられる。
【0069】
補助記憶装置73は、本実施態様では、ハードディスクドライブ(「HDD」と称することもある)である。
なお、補助記憶装置73としては、各種情報を記憶できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ソリッドステートドライブ、磁気テープなどが挙げられる。また、他の補助記憶装置73としては、例えば、CDドライブ、DVD(Digital Versatile Disc)ドライブなどの可搬記憶装置などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
通信インターフェイス74は、本実施態様では、CAN(Controller Area Network)ボードである。
なお、通信インターフェイス74としては、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、LAN(Local Area Network)ポート等の有線を用いた通信デバイス、無線を用いた通信デバイスなどが挙げられる。また、通信インターフェイス74は、インターネットなどに接続されていてもよい。
【0071】
入力装置75は、本実施態様では、キーボード及びマウスである。
なお、入力装置75としては、掘削感付与装置100に対する各種要求を受け付けることができれば特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、タッチパネルなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
出力装置76は、本実施態様では、液晶ディスプレイである。
なお、出力装置76としては、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、他のディスプレイ、スピーカーなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
仮想空間表示装置としてのヘッドマウントディスプレイ90は、操作端1と掘削対象としての骨を仮想空間上に表示する。
【0074】
図6は、掘削感付与装置におけるコンピュータ70の機能構成を示すブロック図である。図6に示すように、掘削感付与装置100は、通信部81と、制御部82と、記憶部83と、入力部84と、出力部85と、を有する。
【0075】
通信部81には、通信インターフェイス74により、6軸力覚センサ6からセンサ出力信号が入力されるとともに、各ロータリーエンコーダから検出信号が入力される。通信部81は、センサ出力信号及び検出信号に基づいた指令信号としての電流指令値を各サーボモータにそれぞれ出力する。
【0076】
制御部82は、センサ出力信号及び検出信号により算出した掘削力を入力とし、図7に示すアドミタンス制御のブロック線図のように、フィードフォワード制御及びフィードバック制御により得た電流指令Iを駆動機構60に出力する。これにより、制御部82は、電流指令Iに基づいて各サーボモータを駆動させて力覚としての駆動力を操作端1に伝達できるため、掘削力に応じた力覚を操作者に提示することができる。
【0077】
図7は、制御部82が行うアドミタンス制御のブロック線図を示す。図7に示すように、制御部82は、フィードバック制御器と、フィードフォワード制御器と、仮想モデルと、駆動機構60と、を備える。
制御部82は、掘削力が印加された後の仮想モデルの位置と当該掘削力が印加される前の駆動機構60の位置との差分をフィードバック制御器に入力する。これにより、掘削対象を駆動させる駆動機構60は、掘削力が印加された後の仮想モデルの位置に応じて精度よく制御することができる。
さらに、制御部82は、フィードフォワード制御器とフィードバック制御器との組合せとすることにより、フィードバック制御器のみを備えている場合よりも駆動機構60の初期の駆動速度を速くすることができる。このため、掘削感付与装置100は、印加された掘削力に対し高い応答性を得ることができる。
なお、本実施形態では掘削対象を骨と想定し、仮想モデルの質量、粘性抵抗、及びバネ定数のパラメータを比較的大きく設定すると、制御部82は、操作端1に大きな掘削力を与えても仮想モデルの質量が大きい設定であるため仮想モデルの移動が微小となり、仮想モデルの仮想状態に応じて制御される操作端1の移動も微小となる。なお、例えば、掘削対象を臓器などと想定し、仮想モデルの質量、粘性抵抗、及びバネ定数のパラメータを比較的小さく設定すると、制御部82は、操作端1に僅かな掘削力を印加されても仮想モデルが移動し、操作端1も移動する。このように、掘削感付与装置は、仮想モデルのパラメータの設定により、掘削対象が所望の材質に近いような力覚を操作者に提示することができる。
【0078】
図8は、制御部82が行うアドミタンス制御の詳細なブロック線図を示す。なお、本実施形態では、駆動機構60の各サーボモータは電流制御系である。このときの駆動機構60の運動は、次式のように表現される。
【0079】
【数1】
ここで、mは駆動機構60の質量(kg)、cは等価粘性係数(Ns/m)、Kは電流・力変換係数(N/A)、xは駆動機構60の搬送距離(m)、Iは電流指令値(A)を示す。
また、式(1)を標準化すると次式となる。
【0080】
【数2】
ここで、ωは折点角周波数(rad/s)、Kはゲイン定数(m/s/A)を示す。ωとKは同定実験により得られ、ω=10rad/s、K=0.05m/s/Aが得られた。
そして、仮想モデルでは、6軸力覚センサ6により計測される掘削トルクT(Nm)から、回転機構のハンドル長さL(m)を除することで掘削力F(N)が算出される。掘削力F(N)から操作端の仮想位置x(m)の関係を次式に示す。
【0081】
【数3】
ここで、仮想的な質量をm(kg)、粘性係数をc(Ns/m)、バネ定数をk(N/m)とする。
【0082】
また、式(3)を標準化すると式(4)となる。
【数4】
【0083】
ここで、固有角振動数をω(rad/s)、減衰比をζとする。式(4)におけるパラメータm、ω、ζを設定することにより、掘削対象の様々な感覚の創出を可能とする。本実施形態では、振動させず高い応答性を得る目的でζ=1とする。掘削力を印加したときに硬いと感じる感覚の創出では、パラメータのm、ωを大きく与え、抵抗の大きい弾性体を作り出すことで、掘削力F(N)が入力された際に、変位を生じさせず硬いと感じさせることができる。その値は、表1上段に示すとおりであり、パラメータを徐々に増加させていき、十分硬いと感じ、それ以上大きくしても変化が見込まれないと判断した値である。
制御部82は、掘削対象が削れた際にノミが抜ける様な感覚を創出するために、以下のように制御する。まず、制御部82は、掘削力F(N)を蓄積し、式(5)のように、掘削対象の現在の状態r(k)を一つ前の状態r(k-1)と力積を加算していく。次に、加算した力積の値が設定値を超えた際に、表1上段に示したパラメータから、表1下段に示すような、人間が手を自然に動かした状態に近いと感じたときの各パラメータに瞬間的に切り替えるようにする。これにより、掘削感付与装置100は、掘削対象が削れた際にノミが抜ける様な感覚を創出することができる。なお、表1下段に示したパラメータは、切り替えた後に台車に過剰な挙動がないよう、バネ定数kは0としていない。
【0084】
【数5】
【0085】
【表1】
【0086】
ここで、離散時間をk、サンプリング時間をΔt、参照係数をαとする。r(k)に所定の設定値を設け、設定値を超えた際にパラメータが切り替わる。
フィードフォワード制御器では、駆動機構60を仮想モデルの仮想状態に応じて制御するように、次式のようにする。
【0087】
【数6】
ここで、P -1は式(2)に示す駆動機構60の逆モデルを示し、Pは式(4)に示す仮想モデルであり、Lはローパスフィルタを表す。ローパスフィルタは高周波帯域でのノイズを増幅させないように設置されるもので、次式が得られる。
【0088】
【数7】
ここで、ω(rad/s)はローパスフィルタの折点角周波数である。本実施形態ではω=60rad/sであった。
そして、フィードバック制御器は、駆動機構60からの出力と仮想モデルからの出力の偏差を補償するために設置される。本実施形態ではフィードバック制御器をPD制御とする。PD制御器を次式に示す。
【0089】
【数8】
ここで、Kは比例ゲインであり、Kは微分ゲインを示す。本発明では、K及びKの決定は、仮想モデルからの出力xから駆動機構60からの出力xまでの伝達特性を基づいて、極配置法により求める。本実施形態ではK=800、K=60が求められた。
【0090】
図9は、金槌で操作端1に掘削力を加えたときの実験結果を示す。掘削力Fを断続的に印加すると、パラメータ変化前では変位は非常に小さく、硬い感覚を創出していることが確認される。r(k)の値は徐々に増加し、設定値を超えた際に台車が瞬間的に移動することで、物体が削れた際のノミが抜けるような感覚が創出される。このパラメータ変化は、r(k)の設定値に依存しているため、この設定値を操作しパラメータ変化時期を調節することで、切削材料の板厚の想定も可能とする。また、ノミの抜ける際に発生する加速度は4.55m/sと、操作者に違和感を与えない高い加速度が生成されていることが確認される。即ち、これにより、掘削感付与装置は、掘削対象の質量が大きい場合にも、高い応答性を発揮できることが確認される。
【0091】
図10は、図9においてフィードフォワード制御を行わず、フィードバック制御だけにより金槌で操作端1に掘削力を加えたときの実験結果を示す。その結果、ノミの抜ける際に発生する加速度は1.5m/sであり、図9の加速度4.55m/sに比べて小さい加速度となった。この結果から、掘削感付与装置100がフィードフォワード制御器を備えていないと、備えている場合と比べて駆動機構60の初期の駆動速度が遅くなるため、印加された掘削力に対し高い応答性が得えられないことが確認された。換言すると、掘削感付与装置100ではフィードフォワード制御を行わないと、臨場感のあるノミが抜けるような感覚を操作者が十分に得られないことが確認された。
【0092】
<第2の実施形態>
ここで、第2の実施形態の技能評価装置について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の第2の実施形態の技能評価装置は、ジョイント構造物として本発明のジョイント構造物を用いており、本発明のジョイント構造物は本発明の技能評価装置に含まれる。
【0093】
図11は、本発明の第2の実施形態の技能評価装置300の一例を示す概略斜視図である。この図11の技能評価装置300は、評価手段310を有する以外は、図1の掘削感付与装置100と同じ構成を有するので、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。また、下記構成部材の数、位置、形状等は本実施形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数、位置、形状等にすることができる。
【0094】
評価手段310は、想定操作者における掘削力の大きさ及び印加方向の少なくともいずれかを予め記憶している基準データと比較して操作者の技能を評価する手段である。
本実施形態では、想定操作者として熟練者の掘削力の大きさ及び印加方向の少なくともいずれかを予め記憶しておき基準データとし、この基準データに基づき、操作者の技能を評価する。
評価方法としては、例えば、基準データの操作者のデータとの差の平均値、標準偏差を求める方法、時系列の基準データとの相関を求める方法、時系列の基準データから外れたエラーの数の累積値を求める方法、などが挙げられる。
【0095】
なお、本発明の第1の実施形態及び第2の実施形態では、操作者が被掘削操作部として操作端1に金槌で掘削力を加えたが、これに限ることなく、操作者が被掘削操作部としての被回動乃至回転部に回動乃至回転時における押圧力を印加することにより、操作者に対しドリルなどによる掘削操作の人工現実感を与えることも可能である。
【0096】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 想定された掘削対象に対する模擬の掘削操作が操作者により行われる被掘削操作部を有する掘削操作手段と、
前記被掘削操作部に印加された掘削力に応じて、前記掘削操作手段を介して前記操作者に対して人工的な掘削感を付与する掘削感付与手段と、
を有することを特徴とする掘削感付与装置である。
<2> 前記被掘削操作部が、打撃手段により打撃されることにより、前記掘削力が印加される被打撃部である前記<1>に記載の掘削感付与装置である。
<3> 前記被掘削操作部が、押圧されながら回動乃至回転されることにより、押圧力、及び回動力乃至回転力が前記掘削力として印加される被回動乃至回転部である前記<1>に記載の掘削感付与装置である。
<4> 前記掘削感付与手段が、
前記被掘削操作部と接続されたボールリテーナと、
前記ボールリテーナを押圧しつつ前記ボールリテーナの回動を案内する回動案内部材と、
棒状部材であって、前記ボールリテーナに接続される接続部と、前記回動案内部材により案内された前記ボールリテーナの回動方向と直交する方向に前記棒状部材を回動可能に軸支する軸支部とを有する棒状部材と、
を有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の掘削感付与装置である。
<5> 前記回動案内部材が、
前記ボールリテーナを押圧する面を有する一対の部材と、
前記一対の部材が前記ボールリテーナを押圧するように前記一対の部材を付勢する付勢部材と、
を有する前記<4>に記載の掘削感付与装置である。
<6> 前記掘削感付与手段が、前記被掘削操作部に印加された掘削力の大きさと印加方向とを検出する検出部を有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の掘削感付与装置である。
<7> 前記検出部が、6軸力覚センサである前記<6>に記載の掘削感付与装置である。
<8> 前記検出部が検出した掘削力の大きさと印加方向とに応じて、
前記掘削力が印加される前の前記被掘削操作部の位置から、
前記掘削力が印加されたときに所定位置に所定速度で前記被掘削操作部が移動するように制御する制御部を有する前記<6>から<7>のいずれかに記載の掘削感付与装置である。
<9> 前記制御部による制御が、フィードバック制御とフィードフォワード制御との組合せにより行われる前記<8>に記載の掘削感付与装置である。
<10> 前記制御部が、
前記被掘削操作部に単回乃至複数回印加された前記掘削力の大きさの累積が設定値を超えると、
前記設定値を超えるまでの間における前記被掘削操作部を移動させる所定速度よりも速い速度で前記被掘削操作部を移動させる、前記<8>から<9>のいずれかに記載の掘削感付与装置である。
<11> 仮想空間表示手段を更に有し、
前記仮想空間表示手段が、少なくとも前記想定された掘削対象を仮想空間上に表示する前記<1>から<10>のいずれかに記載の掘削感付与装置である。
<12> 前記掘削感付与装置の設置面内における、X方向、及び前記X方向と直交するY方向、並びに、前記設置面と直交するZ方向の各方向に前記掘削操作手段を移動可能に支持する支持手段を更に有する前記<1>から<11>のいずれかに記載の掘削感付与装置である。
<13> 前記支持手段が、リニアガイドである前記<12>に記載の掘削感付与装置である。
<14> ボールリテーナと、
前記ボールリテーナを押圧しつつ前記ボールリテーナの回動を案内する回動案内部材と、
棒状部材であって、前記ボールリテーナに接続される接続部と、前記回動案内部材により案内された前記ボールリテーナの回動方向と直交する方向に前記棒状部材を回動可能に軸支する軸支部とを有する棒状部材と、
を有することを特徴とするジョイント構造物である。
<15> 前記回動案内部材が、
前記ボールリテーナを押圧する面を有する一対の部材と、
前記一対の部材が前記ボールリテーナを押圧するように前記一対の部材を付勢する付勢部材と、
を有する前記<14>に記載のジョイント構造物である。
<16> 想定された掘削対象に対する模擬の掘削操作が被掘削操作部に対して操作者により行われる掘削操作工程と、
前記掘削操作工程で前記被掘削操作部に印加された掘削力に応じて、前記掘削操作工程を介して前記操作者に対して人工的な掘削感を付与する掘削感付与工程と、
を含むことを特徴とする掘削感付与方法である。
<17> 想定された掘削対象に対する模擬の掘削操作が操作者により行われる被掘削操作部を有する掘削操作手段と、
前記被掘削操作部に印加された掘削力に応じて、前記掘削操作手段を介して前記操作者に対して人工的な掘削感を付与する掘削感付与手段と、
想定操作者における掘削力の大きさ及び印加方向の少なくともいずれかを予め記憶している基準データと比較して前記操作者の技能を評価する評価手段と、
を有することを特徴とする技能評価装置である。
<18> 想定された掘削対象に対する模擬の掘削操作が被掘削操作部に対して操作者により行われる掘削操作工程と、
前記被掘削操作部に印加された掘削力に応じて、前記掘削操作手段を介して前記操作者に対して人工的な掘削感を付与する掘削感付与工程と、
想定操作者における掘削力の大きさ及び印加方向の少なくともいずれかを予め記憶している基準データと比較して前記操作者の技能を評価する評価工程と、
を含むことを特徴とする技能評価方法である。
<19> 操作者により行われる想定された掘削対象に対する模擬の掘削操作を、被掘削操作部を有する掘削操作手段を介して受け付け、
前記被掘削操作部に印加された掘削力に応じて、前記掘削操作手段を介して前記操作者に対して人工的な掘削感を付与する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする掘削感付与プログラムである。
<20> 操作者により行われる想定された掘削対象に対する模擬の掘削操作を、被掘削操作部を有する掘削操作手段を介して受け付け、
前記被掘削操作部に印加された掘削力に応じて、前記掘削操作手段を介して前記操作者に対して人工的な掘削感を付与し、
想定操作者における掘削力の大きさ及び印加方向の少なくともいずれかを予め記憶している基準データと比較して前記操作者の技能を評価する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする技能評価プログラムである。
【0097】
前述の<1>から<13>のいずれかに記載の掘削感付与装置、前述の<14>から<15>のいずれかに記載のジョイント構造物、前述の<16>に記載の掘削感付与方法、前述の<17>に記載の技能評価装置、前述の<18>に記載の技能評価方法、前述の<19>に記載の掘削感付与プログラム、及び前述の<20>に記載の技能評価プログラムによると、従来における前述の諸問題を解決し、前述の本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 操作端
1a 被打撃部(打撃面)
2 X軸リニアガイド
3 Y軸リニアガイド
4 Z軸リニアガイド
6 6軸力覚センサ
7 X軸サーボモータ
8 Y軸サーボモータ
9 Z軸サーボモータ
10 X軸補助ガイド
11 制御部
12 基台
14 ボールリテーナ
15 X軸回転方向サーボモータ
16 Y軸回転方向サーボモータ
17 Z軸回転方向サーボモータ
22 基盤
33 支持アーム
50 ジョイント構造部
60 駆動機構
70 コンピュータ
90 ヘッドマウントディスプレイ
100 掘削感付与装置
300 技能評価装置
310 評価手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11