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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】立体地図
(51)【国際特許分類】
   G09B 25/06 20060101AFI20220929BHJP
   G09B 29/12 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G09B25/06
G09B29/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018080046
(22)【出願日】2018-04-18
(65)【公開番号】P2019191218
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】593029466
【氏名又は名称】株式会社トラストシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】三田 幸雄
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-085010(JP,A)
【文献】登録実用新案第3181300(JP,U)
【文献】実開昭50-095043(JP,U)
【文献】独国実用新案第202013000720(DE,U1)
【文献】米国特許第5676550(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 25/00-29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体的に地形が形成された地形部分と、当該地形部分の表面に表示された地図とを有する立体地図において、
上記地形部分を所定の厚さからなる樹脂層によって形成するとともに、当該樹脂層の表面に上記地図を表示し、
上記樹脂層の裏面に磁性体を有した磁性体層を形成して、上記地図に磁石を磁着可能とするとともに、上記地形を構成する傾斜部分の磁性体層の厚さを、平坦部分の磁性体層の厚さよりも厚くしたことを特徴とする立体地図。
【請求項2】
立体的に地形が形成された地形部分と、当該地形部分の表面に表示された地図とを有する立体地図において、
上記地形部分と上記地図との間に 磁性体を有した磁性体層を設けて、上記地図に磁石を磁着可能とするとともに、上記地形を構成する傾斜部分の磁性体層の厚さを、平坦部分の磁性体層の厚さよりも厚くしたことを特徴とする立体地図。
【請求項3】
立体的に地形が形成された地形部分と、当該地形部分の表面に表示された地図とを有する立体地図において、
上記地形部分と上記地図との間に 磁性体を有した磁性体層を設けて、上記地図に磁石を磁着可能とするとともに、
上記地形部分の表面に凹凸形状を形成し、上記磁性体層は上記凹凸形状の内部に充填されており、
上記地形部分を構成する傾斜部分の凹凸形状を、平坦部分の凹凸形状よりも大きくしたことを特徴とする立体地図。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は立体地図に関し、詳しくは立体的に地形が形成された地形部分と、当該地形部分の表面に表示された地図とを有する立体地図に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体的に地形が形成された地形部分の表面に、等高線や道路等の地図が表示された立体地図が知られている(特許文献1、2)。
このような上記立体地図は地形による高低差を認識しながら地図を理解するのに好適となっており、教育現場や災害発生時において広く用いられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-297804号公報
【文献】特開平7-239653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、例えば上記立体地図を災害発生時に用いる場合、災害発生位置に何らかのマーカーを設置することが考えられるが、当該マーカーが単なる物体では山の斜面等に該当する傾斜部分から脱落してしまい、またマーカーに画びょうなどのピンを用いた場合、立体地図に刺し跡が残るという問題があった。
このような問題に鑑み、本発明はマーカーを傾斜部分にも設置可能でかつ設置跡が残らないようにした立体地図を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1の発明にかかる立体地図は、立体的に地形が形成された地形部分と、当該地形部分の表面に表示された地図とを有する立体地図において、
上記地形部分を所定の厚さからなる樹脂層によって形成するとともに、当該樹脂層の表面に上記地図を表示し、
上記樹脂層の裏面に磁性体を有した磁性体層を形成して、上記地図に磁石を磁着可能とするとともに、上記地形を構成する傾斜部分の磁性体層の厚さを、平坦部分の磁性体層の厚さよりも厚くしたことを特徴としている。
また請求項2の発明にかかる立体地図は、立体的に地形が形成された地形部分と、当該地形部分の表面に表示された地図とを有する立体地図において、
上記地形部分と上記地図との間に磁性体を有した磁性体層を設けて、上記地図に磁石を磁着可能とするとともに、上記地形を構成する傾斜部分の磁性体層の厚さを、平坦部分の磁性体層の厚さよりも厚くしたことを特徴としている。
さらに請求項3の発明にかかる立体地図は、立体的に地形が形成された地形部分と、当該地形部分の表面に表示された地図とを有する立体地図において、
上記地形部分と上記地図との間に磁性体を有した磁性体層を設けて、上記地図に磁石を磁着可能とするとともに、
上記地形部分の表面に凹凸形状を形成し、上記磁性体層は上記凹凸形状の内部に充填されており、
上記地形部分を構成する傾斜部分の凹凸形状を、平坦部分の凹凸形状よりも大きくしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記発明によれば、上記磁性体層を設けることにより、上記地図の表面に磁石を備えたマーカーを設置することが可能となる。このため、傾斜部分であってもマーカーを設置することができ、また刺し跡が残らず、同じ場所にマーカーを繰り返し設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施例にかかる立体地図の斜視図
図2】第1実施例にかかる立体地図の断面図
図3】第2実施例にかかる立体地図の断面図
図4】第3実施例にかかる立体地図の断面図
図5】第3実施例にかかる立体地図の拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について説明すると、図1は第1実施例にかかる立体地図1の斜視図を示し、所要の縮尺で実際の地形に倣って形成された立体的な山2aや谷2bなどの地形が形成された地形部分としての樹脂層2と、当該樹脂層2の表面に等高線や道路を表示する地図3とを有している。
上記立体地図1を例えば災害発生時に使用する場合、災害が発生した位置や救助隊の位置等にマーカー4を設置することで、立体地図1を用いた災害の状況の認識を容易に行うことが可能となっている。
そして本実施例の立体地図1は、図2に示すように上記樹脂層2の裏面に磁性体を有する磁性体層5を設けることで、当該磁性体層5によって立体地図1に磁石4aを備えたマーカー4を磁着させることが可能となっており、上記山2aの斜面にもマーカー4を設置することが可能となっている。また本実施例の立体地図は垂直な壁に設置しても、上記マーカー4を保持することが可能となっている。
上記磁石4aを備えたマーカー4には市販品を用いることが可能であるが、山2aや谷2bといった凹凸のある地形に設置することから、接地面積の小さいものを用いることが望ましく、そのため上記磁石4aとしてはネオジム磁石などの磁力の高い磁石を用いることが望ましい。
【0009】
上記樹脂層2としては、例えば厚さ0.3~0.5mm程度の塩化ビニルやポリスチレン、PTE等の熱可塑性樹脂を用いることができ、平坦な樹脂板を型に投入して加熱変形させることで上記地形を成形するようになっている。
上記樹脂層の表面に形成される地図3は、一枚のフィルムに上記山2aの名称や等高線、その他河川や道路といった地形情報が予め印刷されたものを使用することができ、上記フィルムを上記樹脂層2の表面に張り付けることにより、上記地図3が樹脂層2の表面に表示されるようになっている。
このような樹脂層2の表面に上記地図3を形成する方法としては、樹脂板を加熱成形して上記地形を有する樹脂層2を成形し、その後当該樹脂層2の表面に上記地図3の印刷されたフィルムを張り付ける方法や、加熱成形前の樹脂板に予め地図3の印刷されたフィルムを張り付け、その後地図3ごと樹脂板を加熱成形して上記樹脂層2を成形する方法が考えられる。
そのほかにも、加熱成形された樹脂層2に直接地図3を印刷する方法や、樹脂板に地図3を直接印刷し、その後樹脂層2を加熱成形する方法も考えられる。
【0010】
ここで上記地形のうち、山2aと山2aとの間に挟まれた谷2bのような凹部形状については、実際の地形に忠実に谷2bを成形すると、上記マーカー4を磁着させるのに十分な接地面積が確保できない場合がある。
このため、上記谷2bについては、上記マーカー4を設置できる程度の平坦部が確保されるよう、実際の地形(図示破線部分)に対して樹脂層2の形状を修正したものとなっている。
一方、山2aの山頂部分のような凸部形状についても、実際の山の山頂が鋭い場合には、上記マーカー4の接地面積が確保できない場合がある。
この場合、山頂部分を平坦にして設置面積を確保することも可能であるが、谷2bのような凹部形状に比べて、山2aのような凸部形状の差異は見る者に生じさせる違和感が大きいため、これらの凸部形状についてはなるべく縮尺に従って成形することが望ましい。
【0011】
上記磁性体層5は、鉄粉などの磁性体を樹脂製のバインダーに混練したペースト状のものを、上記地形が形成された樹脂層2の裏面側に塗布することで形成するようになっている。
また本実施例では、地形に応じて磁性体層5の厚さを異ならせ、上記山2aの斜面等を示す傾斜部分の磁性体層5の厚さを、平地を示す平坦部分の磁性体層5の厚さよりも厚くしている。これにより、上記傾斜部分でのマーカー4の設置を確実なものとすることができる。
上記磁性体層5としては、上記鉄粉に代えて直径0.3~0.5mm程度の鉄球を用い、当該鉄球を密着させた状態で整列させ、これを樹脂層2の裏面に接着剤によって接着するようにしてもよく、また磁性体層を構成する磁性体として、鉄の他ニッケルなどの磁性体を用いることも可能である。
【0012】
上記構成を有する立体地図1は学校教育や災害発生時に使用することに好適であり、立体的に形成された山2aや谷2bなどの地形を容易に認識できることから、より正確な地図3の把握を助けるものとなっている。
例えば災害の発生した位置に上記マーカー4を設置する場合、本実施例の立体地図1であれば上記マーカー4に設けられた磁石4aによって当該マーカー4を地図3の所要の位置に磁着させることが可能であり、山2aの斜面であってもマーカー4を設置することが可能となっている。
さらに本実施例の場合、マーカー4を立体地図1に磁着させるため、当該マーカー4を除去してもその痕跡が残らず、同じ場所に対してマーカー4を繰り返し設置することが可能となっている。
これに対し、マーカー4として画びょう等のピンを立体地図1に設置すると刺し跡が残ってしまうため、同じ場所に繰り返しピンを設置すると刺し跡によって地図3の判別が困難になるという問題があった。
また本実施例では、上記磁性体層5の厚さを、山2aの斜面などの傾斜部分は厚く設定しているため、上記マーカー4を上記傾斜部分に設置しても脱落しないように保持することが可能となっている。
【0013】
図3は第2実施例にかかる立体地図1の断面図を示しており、本実施例の立体地図1は地形部分としての樹脂層2と地図3との間に上記磁性体層5を設けた構成となっている。
この構成の場合、予め地形を有する上記樹脂層2を成形した後、当該樹脂層2の表面に上記磁性体層5を形成し、当該磁性体層5の表面を滑らかにしてから、当該磁性体層5の表面に地図3を表示させるものとなっている。
上記地図3を表示させる方法としては、上記磁性体層5の表面に地形情報が印刷されたフィルムを張り付ける方法や、上記磁性体層5の表面に地形情報を直接印刷する方法が考えられる。
このような構成とすることで、上記マーカー4の磁石4aと磁性体層5との間には上記地図3のみが位置することとなるため、上記第1実施例に比べてマーカー4の磁力が弱くてもマーカー4を磁着させることが可能となる。
このため、上記マーカー4に使用する磁石4aの接地面積を小さくすることができ、または磁性体層5の厚さを第1実施例の磁性体層5よりも薄くすることが可能となる。
これに対し、第1実施例の立体地図1の場合、地形の形成された樹脂層2が表面側に位置することから、縮尺通りの地形を表現しやすく、より精細な立体地図1を提供できるという利点がある。
【0014】
また本実施例の立体地図1においても、上記地形における山2aの斜面等を示す傾斜部分の磁性体層5の厚さを、平坦部分の磁性体層5の厚さよりも厚く設定しており、これにより上記傾斜部分に確実にマーカー4を磁着させることができる。
本実施例の場合、磁性体層5が樹脂層2の表面側に形成されることから、形成する磁性体層5の厚さに応じて、上記樹脂層2を成形する際の地形の形状を修正しておくことが望ましい。
さらに上記谷2bなどの凹部形状についても、上記マーカー4が設置可能な程度の平坦部を形成するようになっている。この場合、樹脂層2については実際の縮尺に応じて谷2bを成形し、その後上記磁性体層5を形成する際に、当該谷2bにおける磁性体層5を厚めに形成して上記平坦部を形成するようにしてもよい。また第1実施例と同様、樹脂層4を成形する際に上記谷2bの形状を平坦に成形してもよい。
【0015】
図4は第3実施例にかかる立体地図1の断面図を示しており、本実施例の地形部分102は木材や樹脂製のブロックを切削することにより、上記山102aや谷102bといった地形を成形したものとなっている。
そのうえで、上記地形部分102の表面に上記磁性体層5を設けるとともに、当該磁性体層5の表面に上記地図3を表示させることで、磁性体層5を地形部分102と地図3との間に形成したものとなっている。
本実施例も上記第2実施例と同様、上記マーカー4の磁石4aと磁性体層5との間には上記地図3のみが位置することとなるため、磁石4aの磁力が弱くてもマーカー4を保持することが可能となっている。
【0016】
図5に示すように、上記地形部分102を切削して上記地形を形成する際、先端が半球状に形成されたエンドミル106を用い、当該エンドミル106を垂直方向に建てた状態で水平方向に一方向に移動させながら、地形に沿ってエンドミル106を昇降させ、その後エンドミル106が立体地図1の端部に達したら、エンドミル106を半ピッチ程度ずらして反対方向に往復動させる作業を繰り返して加工を行う。
その結果、地形部分102の表面にはエンドミル106の移動軌跡に沿って加工残りからなる凸状の条痕102cからなる凹凸形状が形成され、当該条痕102cと条痕102cとの間に、磁性体を含んだペースト状のものを充填することで、地形部分102の表面に磁性体層5を形成することが可能となっている。
この時、図5(a)に示す山102a等の傾斜部分に形成される条痕102cは、図5(b)に示す平坦部分に形成した条痕102cよりも高くなるため、条痕102cと条痕102cとの間に溜まるペースト状の磁性体の量を、上記傾斜部分に多くすることができる。
その結果、上記山102a等の傾斜部分における磁性体層5を、平坦部分における磁性体層5よりも厚くすることができ、上記第1、第2実施例と同様、傾斜部分にマーカー4を確実に設置することが可能となる。
【符号の説明】
【0017】
1 立体地図 2 樹脂層(地形部分)
2a 山 2b 谷
3 地図 4 マーカー
4a 磁石 5 磁性体層
102 地形部分 102c 条痕(凹凸形状)
図1
図2
図3
図4
図5