(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】シリコーンゴム成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 7/00 20060101AFI20220929BHJP
C08J 7/02 20060101ALI20220929BHJP
B24B 21/00 20060101ALI20220929BHJP
B25J 15/00 20060101ALI20220929BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C08J7/00 A CFH
C08J7/02 A
B24B21/00
B25J15/00
H05K5/02 C
H05K5/02 J
(21)【出願番号】P 2018119422
(22)【出願日】2018-06-25
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
(73)【特許権者】
【識別番号】597065282
【氏名又は名称】三菱マテリアル電子化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 裕明
(72)【発明者】
【氏名】浜村 武広
(72)【発明者】
【氏名】米沢 晋
(72)【発明者】
【氏名】金 在虎
(72)【発明者】
【氏名】西村 文宏
(72)【発明者】
【氏名】車屋 光夫
(72)【発明者】
【氏名】神谷 武志
(72)【発明者】
【氏名】本田 常俊
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-079314(JP,A)
【文献】特開2005-325176(JP,A)
【文献】特開2006-036848(JP,A)
【文献】特開2014-192969(JP,A)
【文献】特開2016-126923(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104356418(CN,A)
【文献】特開昭64-066245(JP,A)
【文献】特開2005-199380(JP,A)
【文献】特開2013-239937(JP,A)
【文献】特開平02-064109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/00- 7/02、 7/12- 7/18
B29C 71/04
B24B 21/00
B25J 15/00
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品との接触表面を有するシリコーンゴム成形体であって、
前記物品との接触表面は、フッ素化処理されることにより、転がり抵抗係数が0.020以下とされているとともに、静止摩擦係数が1.25以上とされており、
前記シリコーンゴム成形体が化学機械研磨装置のウエハ保持用の弾性膜であるシリコーンゴム成形体。
【請求項2】
物品との接触表面を有するシリコーンゴム成形体であって、
前記物品との接触表面は、フッ素化処理されることにより、転がり抵抗係数が0.020以下とされているとともに、静止摩擦係数が1.25以上とされており、
前記シリコーンゴム成形体がロボットアームの物品把持部のパッドであるシリコーンゴム成形体。
【請求項3】
物品との接触表面を有するシリコーンゴム成形体であって、
前記物品との接触表面は、フッ素化処理されることにより、転がり抵抗係数が0.020以下とされているとともに、静止摩擦係数が1.25以上とされており、
前記シリコーンゴム成形体が携帯電子機器のケースであるシリコーンゴム成形体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載されたシリコーンゴム成形体において、
前記物品との接触表面の転がり抵抗係数の低下率が20%以上であるシリコーンゴム成形体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載されたシリコーンゴム成形体において、
前記物品との接触表面の静止摩擦係数の上昇率が150%以上であるシリコーンゴム成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンゴム成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、シリコーンゴムは、表面に粘着性がある。例えば、化学機械研磨装置(chemical mechanical polishing装置(以下「CMP装置」という。))では、弾性膜によってウエハを吸着保持し、それを研磨パッドに押接させて研磨を行うが、この弾性膜をシリコーンゴム成形体で構成した場合、シリコーンゴムの粘着性のため、ウエハが弾性膜に密着して離れず、それを強制的に剥離しようとすると、ウエハが破損する虞があるという問題がある。また、ロボットアームの物品把持部のパッドをシリコーンゴム成形体で構成した場合、把持した物品を所望の場所に置こうとするとき、シリコーンゴムの粘着性のため、物品がパッドに密着して離れず、それによって物品を所望の場所に置き損ねる虞があるという問題がある。さらに、携帯電子機器のケースをシリコーンゴム成形体で構成した場合、シリコーンゴムの粘着性のため、掴んだときの不快な手触りを伴うという問題がある。
【0003】
そこで、これらの問題の対策として、シリコーンゴム成形体の物品との接触表面にコーティングを施して粘着性を低減することが提案されている(例えば、特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許公開公報2005/0221734号
【文献】特許第4086722号公報
【文献】特許第3791060号公報
【文献】特開平2-64109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、コーティングの場合、コーティング層が剥離して異物を発生するという問題がある。
【0006】
本発明の課題は、物品の密着が抑制されるとともに、異物が発生しないシリコーンゴム成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、物品との接触表面を有するシリコーンゴム成形体であって、前記物品との接触表面が、フッ素化処理されることにより、転がり抵抗係数が下げられている。
【0008】
本発明は、本発明のシリコーンゴム成形体の製造方法であって、シリコーンゴム製の表面未処理成形体の物品との接触表面に、分圧が3.00kPa以上のフッ素ガスを含む表面処理ガスを接触させてフッ素化処理する工程を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、物品との接触表面が、フッ素化処理されて転がり抵抗係数が下げられていることにより、物品の密着を抑制することができ、また、フッ素化処理では、コーティング処理の場合のようにコーティング層の剥離に起因する異物が発生することもない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るCMP装置のウエハ保持用の弾性膜の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は、実施形態に係るCMP装置Aのウエハ保持用の弾性膜10(シリコーンゴム成形体)を示す。この実施形態に係る弾性膜10は、ウエハ保持側の表面11(物品との接触表面)が外部に露出するようにCMP装置Aに装着され、そのウエハ保持側の表面11にウエハS(物品)を吸着保持し、それを研磨パッドPに均一な圧力で当接させて研磨するように構成されている。
【0013】
実施形態に係る弾性膜10は、架橋したシリコーンゴムで形成されたシリコーンゴム製の成形体である。シリコーンゴムとしては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基含有ポリシロキサン、ビニルポリシロキサン、メルカプトアルキル基含有ポリシロキサン等が挙げられる。シリコーンゴムは、これらのうちの1種又は2種以上が用いられていることが好ましい。シリコーンゴムの架橋は、有機過酸化物が用いられて行われていても、縮合重合によって行われていても、白金触媒が用いられて行われていても、いずれでもよい。
【0014】
実施形態に係る弾性膜10は、ウエハ保持側の表面11がフッ素化処理されている。つまり、ウエハ保持側の表面11にSi-F結合が導入されている。
【0015】
ウエハ保持側の表面11は、フッ素化処理されていることにより、転がり抵抗係数が下げられている。つまり、フッ素化処理後のウエハ保持側の表面11におけるSi-F結合が導入されたシリコーンゴムの転がり抵抗係数が、フッ素化処理前のウエハ保持側の表面11におけるシリコーンゴムの転がり抵抗係数よりも低い。
【0016】
本発明者らは、シリコーンゴムの表面に、フッ素化処理を施すことにより、転がり抵抗係数が下げられ、それにより物品の密着を抑制することができることを見出した。そして、この知見に基づく実施形態に係る弾性膜10によれば、ウエハ保持側の表面11が、フッ素化処理されて転がり抵抗係数が下げられていることにより、ウエハSの密着を抑制することができ、また、コーティング処理の場合のようにコーティング層の剥離に起因する異物が発生することもない。
【0017】
フッ素化処理後のウエハ保持側の表面11の転がり抵抗係数は、好ましくは0.040以下、より好ましくは0.030以下、更に好ましくは0.020以下である。フッ素化処理前後の転がり抵抗係数の差のフッ素化処理前の転がり抵抗係数に対する百分率で表される転がり抵抗係数の低下率は、好ましくは20%以上、より好ましくは40%以上、更に好ましくは60%以上である。ここで、本出願における転がり抵抗係数は、測定面をメタノールで洗浄し、温度20℃及び湿度40%の雰囲気下で24時間以上保持した後、同雰囲気下において、測定面に、SUS304製の直径30mmの外周面が平滑なロール状の測定子を、1000gの荷重が負荷されるように押接させるとともに、移動速度2000mm/分で転動させたとき、定常時の転がり抵抗値を荷重で除した値として求められるものである。
【0018】
また、ウエハ保持側の表面11は、フッ素化処理されていることにより、静止摩擦係数が高められていることが好ましい。つまり、フッ素化処理後のウエハ保持側の表面11におけるSi-F結合が導入されたシリコーンゴムの静止摩擦係数が、フッ素化処理前のウエハ保持側の表面11におけるシリコーンゴムの静止摩擦係数よりも高い。このようにウエハ保持側の表面11の静止摩擦係数がフッ素化処理により高められていることにより、ウエハSに対する高いグリップ性能が得られ、研磨時のウエハSの空回りを抑制することができる。
【0019】
フッ素化処理後のウエハ保持側の表面11の静止摩擦係数は、好ましくは0.75以上、より好ましくは1.00以上、更に好ましくは1.25以上であり、また、好ましくは2.00以下である。フッ素化処理前後の静止摩擦係数の差のフッ素化処理前の静止摩擦係数に対する百分率で表される静止摩擦係数の上昇率は、好ましくは60%以上、より好ましくは100%以上、更に好ましくは150%以上である。ここで、本出願における静止摩擦係数は、測定面をメタノールで洗浄し、温度20℃及び湿度40%の雰囲気下で24時間以上保持した後、同雰囲気下において、測定面に、SUS304製の測定子における直径10mmの半球状先端を、100gの荷重が負荷されるように押接させるとともに、移動速度75mm/分で摺動させたとき、その移動開始直後の摩擦抵抗ピーク値を荷重で除した値として求められるものである。
【0020】
ウエハ保持側の表面11の接触角(濡れ性)は、研磨時に使用するスラリーの付着を抑制する観点から、100°以上であることが好ましい。この接触角(濡れ性)は、θ/2法に基づき、測定面をメタノールで洗浄し、温度20℃及び湿度40%の雰囲気下で24時間以上保持した後、同雰囲気下において、測定面に蒸留水の液滴を滴下して測定される。
【0021】
フッ素化処理前後におけるウエハ保持側の表面11のタイプAデュロメータで測定される硬さの上昇は、圧力分散性の低下を抑制する観点から、A10以下であることが好ましい。この硬さは、JISK6253-3:2012に基づいて測定される。
【0022】
次に、実施形態に係る弾性膜10の製造方法について説明する。
【0023】
実施形態に係る弾性膜10の製造方法では、まず、シリコーンゴム製の表面未処理弾性膜(表面未処理成形体)を作製した後、そのウエハ保持側の表面に、分圧が3.00kPa以上のフッ素ガスを含む表面処理ガスを接触させてフッ素化処理する。
【0024】
未架橋のシリコーンゴム材料から表面未処理弾性膜を作製方法としては、例えば、プレス成形や射出成形等が挙げられる。表面未処理弾性膜のフッ素化処理方法としては、典型的には、チャンバー内に表面未処理弾性膜を配置して密閉した後、そのチャンバー内に表面処理ガスを封入し、表面未処理弾性膜を表面処理ガスに暴露する方法が挙げられる。
【0025】
このとき、フッ素化処理の処理温度は、ウエハ保持側の表面11の転がり抵抗係数を下げ、しかも処理時間を短くして生産性を高める観点から、好ましくは0℃以上100℃以下、より好ましくは10℃以上50℃以下である。処理圧力(全圧)は、同様の観点から、好ましくは3kPa以上200kPa以下、より好ましくは3kPa以上110kPa以下である。フッ素ガスの分圧は、3.00kPa以上であるが、同様の観点から、好ましくは3.00kPa以上20.0kPa以下、より好ましくは3.00kPa以上10.0kPa以下である。処理時間は、処理時間を短くして生産性を高める観点から、好ましくは1分以上60分以下、より好ましくは1分以上10分以下である。
【0026】
表面処理ガスは、フッ素ガスの含有量が100体積%、すなわち、フッ素ガスのみで構成されていてもよい。また、表面処理ガスは、1種又は2種以上のフッ素ガス以外のガスを含んでいてもよい。かかるフッ素ガス以外のガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンなどの不活性ガス等が挙げられる。この場合、表面処理ガスは、汎用性の観点から、窒素ガスを含んでいることが好ましい。また、表面処理ガスは、ウエハ保持側の表面11の静止摩擦係数を高めるとともに、転がり抵抗係数を下げる観点から、酸素ガスを含んでいないことが好ましい。表面処理ガスにおけるフッ素ガスの含有量は、ウエハ保持側の表面11の静止摩擦係数を高めるとともに、転がり抵抗係数を下げる観点から、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、更に好ましくは30体積%以上である。
【0027】
上記実施形態では、シリコーンゴム成形体として、CMP装置Aのウエハ保持用の弾性膜10を示したが、特にこれに限定されるものではなく、その他のものであってもよい。例えば、上記実施形態で用いたシリコーンゴム成形体でロボットアームの物品把持部のパッドを構成した場合、異物を発生させることなく、物品の密着を抑制することができ、そのため、把持した物品を所望の場所で離して置くことができる。加えて、フッ素化処理により静止摩擦係数が高められていれば、物品に対する高いグリップ性能を得ることができる。また、上記実施形態で用いたシリコーンゴム成形体で、携帯電話やタブレット端末等の携帯電子機器のケース(筐体や保護ケース)を構成した場合、異物を発生させることなく、物品の密着を抑制することができ、そのため、掴んだときの不快な手触りを少なくすることができる。加えて、フッ素化処理により静止摩擦係数が高められていれば、しっかりと掴むことができ、滑って落とすことを少なくすることができる。
【実施例】
【0028】
(ゴムシート)
実施例1~2及び比較例1~4のゴムシートを作製した。
【0029】
<実施例1>
長さ100mm、幅50mm、及び厚さ2mmのシリコーンゴムシートをプレス成形で作製し、その表面をフッ素化処理したゴムシートを実施例1とした。フッ素化処理は、処理温度を25℃、処理圧力(全圧)を22.0kPa、及び処理時間を10分とした。表面処理ガスには、フッ素ガス30体積%及び窒素ガス70体積%の混合ガスを用いた。したがって、フッ素ガスの分圧は6.60kPaである。
【0030】
<実施例2>
表面処理ガスにフッ素ガス100体積%の単独ガスを用い、処理圧力(全圧)、したがって、フッ素ガスの分圧を6.67kPaとしたことを除いて実施例1と同様に作製したゴムシートを実施例2とした。
【0031】
<比較例1>
フッ素化処理を行わなかったことを除いて実施例1と同様のゴムシートを比較例1とした。
【0032】
<比較例2>
フッ素化処理に代えて表面にパリレンコート層を設けたことを除いて実施例1と同様のゴムシートを比較例2とした。
【0033】
<比較例3>
フッ素化処理に代えて表面にDLCコート層を設けたことを除いて実施例1と同様のゴムシートを比較例3とした。
【0034】
<比較例4>
フッ素化処理に代えて表面にフッ素樹脂コート層を設けたことを除いて実施例1と同様のゴムシートを比較例4とした。
【0035】
(試験方法)
<転がり抵抗係数>
実施例1~2及び比較例1~4のそれぞれのゴムシートについて、表面をメタノールで洗浄し、温度20℃及び湿度40%の雰囲気下で24時間保持した後、同雰囲気下において、その洗浄した表面に、SUS304製の直径30mmの外周面が平滑なロール状の測定子を、1000gの荷重が負荷されるように押接させるとともに、移動速度2000mm/分で転動させた。そして、そのときの定常時の転がり抵抗値を荷重で除して転がり抵抗係数を求めた。なお、転がり抵抗の測定には、新東科学社製の表面性測定機 Heidon Type14を用いた。
【0036】
<静止摩擦係数>
実施例1~2及び比較例1~4のそれぞれのゴムシートについて、表面をメタノールで洗浄し、温度20℃及び湿度40%の雰囲気下で24時間保持した後、同雰囲気下において、その洗浄した表面に、SUS304製の測定子における直径10mmの半球状先端を、100gの荷重が負荷されるように押接させるとともに、移動速度75mm/分で摺動させた。そして、そのときの移動開始直後の摩擦抵抗ピーク値を荷重で除して静止摩擦係数を求めた。なお、摩擦抵抗の測定には、新東科学社製の表面性測定機 Heidon Type14を用いた。
【0037】
<接触角(濡れ性)>
実施例1~2及び比較例1~4のそれぞれのゴムシートについて、θ/2法に基づき、表面をメタノールで洗浄し、温度20℃及び湿度40%の雰囲気下で24時間保持した後、同雰囲気下において、その洗浄した表面に蒸留水の液滴を滴下して接触角を測定した。
【0038】
<硬さ上昇>
実施例1~2のそれぞれのフッ素化処理前後のゴムシートについて、JIS K6253-3:2012に基づき、タイプAデュロメータで硬さを測定し、その差、つまり、硬さ上昇を算出した。
【0039】
<50%伸張試験>
実施例1~2及び比較例1~4のそれぞれのゴムシートについて、50%伸張して元に戻した後、表面をSEMで観察してクラックの有無を確認した。そして、クラックの認められないものをA及び認められるものをBと評価した。
【0040】
<クロスカット試験>
実施例1~2及び比較例1~4のそれぞれのゴムシートについて、JIS K5600-5-6:1999に基づくクロスカット試験を行い、表面を目視して剥離の有無を確認した。そして、剥離の認められないものをA及び認められるものをBと評価した。
【0041】
(試験結果)
試験結果を表1に示す。
【0042】
【0043】
表1によれば、表面に厳しい条件のフッ素化処理を施した実施例1及び2と、フッ素化処理を施していない比較例1とを比較すると、実施例1及び2では、転がり抵抗係数が下げられていることが分かる。これにより、物品の密着を抑制することが期待される。また、実施例1及び2では、静止摩擦係数が高められていることが分かる。これにより、物品に対する高いグリップ性能を得ることが期待される。さらに、実施例1及び2では、撥水性も付与されることが分かる。このことから、これをCMP装置のウエハ保持用の弾性膜に適用した場合には、研磨時に使用するスラリーの付着抑制を期待することができる。また、実施例1及び2では、フッ素化処理による表面改質によって、50%伸張試験での表面へのクラックの発生やクロスカット試験での表層の剥離による異物の発生が認められないことも分かる。
【0044】
表面にコーティング層を設けた比較例2~4では、転がり抵抗係数が低減されていることが分かる。しかしながら、比較例2~4では、50%伸張試験での表面のコーティング層へのクラックの発生やクロスカット試験での表面のコーティング層の剥離による異物の発生が認められることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、シリコーンゴム成形体の技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0046】
A CMP装置
P 研磨パッド
S ウエハ(物品)
10 弾性膜(シリコーンゴム成形体)
11 ウエハ保持側の表面(物品との接触表面)