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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】移動装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 23/24 20060101AFI20220929BHJP
   F16C 29/04 20060101ALI20220929BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20220929BHJP
【FI】
G02B23/24 A
F16C29/04
G03B15/00 L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018163070
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020034846
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-04-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年12月20日、第18回公益社団法人計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会予稿集において公開。
(73)【特許権者】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】503132280
【氏名又は名称】特定非営利活動法人 国際レスキューシステム研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】平田 康夫
(72)【発明者】
【氏名】坂本 哲幸
(72)【発明者】
【氏名】小林 英一
(72)【発明者】
【氏名】田所 諭
(72)【発明者】
【氏名】山本 知生
(72)【発明者】
【氏名】昆陽 雅司
(72)【発明者】
【氏名】多田隈 建二郎
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/136511(WO,A1)
【文献】特開平03-231623(JP,A)
【文献】特開平01-280716(JP,A)
【文献】米国特許第05090259(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 23/24 - 23/26
A61B 1/00 - 1/32
F16C 29/00 - 31/06
G03B 15/00 - 15/035
G03B 15/06 - 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の内部に挿入され、流体によって付与される内部圧力に応じて断面形状が弾性変形可能な弾性チューブと、
前記弾性チューブの断面形状の変化に応じて当該弾性チューブの長手方向に進退移動可能なスライダユニットと、
前記スライダユニットが前記弾性チューブ上を進退移動する際に前記スライダユニットが前記被検体から受ける外力であって、前記スライダユニットの進退移動を阻害する外力を検出する外力検出部と、を備え
前記被検体と摺動可能な摺動面が形成された先導部材を前記スライダユニットの端部に備え、
前記外力検出部は、前記被検体から前記先導部材が受ける圧力を検出する圧力センサであって、
前記圧力センサは、前記先導部材の前記摺動面に設けられていることを特徴とする移動装置。
【請求項2】
被検体の内部に挿入され、流体によって付与される内部圧力に応じて断面形状が弾性変形可能な弾性チューブと、
前記弾性チューブの断面形状の変化に応じて当該弾性チューブの長手方向に進退移動可能なスライダユニットと、
前記スライダユニットが前記弾性チューブ上を進退移動する際に前記スライダユニットが前記被検体から受ける外力であって、前記スライダユニットの進退移動を阻害する外力を検出する外力検出部と、を備え、
前記被検体と摺動可能な摺動面が形成された先導部材を前記スライダユニットの端部に備え、
前記外力検出部は、前記被検体から前記先導部材が受ける圧力を検出する圧力センサであって、
前記スライダユニットと前記先導部材とを弾性的に接続する接続部材を備え、
前記圧力センサは前記接続部材に設けられていることを特徴とする移動装置。
【請求項3】
被検体の内部に挿入され、流体によって付与される内部圧力に応じて断面形状が弾性変形可能な弾性チューブと、
前記弾性チューブの断面形状の変化に応じて当該弾性チューブの長手方向に進退移動可能なスライダユニットと、
前記スライダユニットが前記弾性チューブ上を進退移動する際に前記スライダユニットが前記被検体から受ける外力であって、前記スライダユニットの進退移動を阻害する外力を検出する外力検出部と、を備え、
前記スライダユニットは、当該スライダユニットが両端から押圧された際に拡径方向に変位する拡径部を中央部に有し、
前記拡径部は、前記スライダユニットの中央部に前後対をなして拡径方向に揺動可能に支持された揺動体と、前記対をなす揺動体を連結する弾性部材と、を有し、
前記外力検出部は、前記弾性部材に設けられた歪みゲージであることを特徴とする移動装置。
【請求項4】
被検体の内部に挿入され、流体によって付与される内部圧力に応じて断面形状が弾性変形可能な弾性チューブと、
前記弾性チューブの断面形状の変化に応じて当該弾性チューブの長手方向に進退移動可能なスライダユニットと、
前記スライダユニットが前記弾性チューブ上を進退移動する際に前記スライダユニットが前記被検体から受ける外力であって、前記スライダユニットの進退移動を阻害する外力を検出する外力検出部と、を備え、
前記外力検出部は、前記弾性チューブ上における前記スライダユニットの位置を検出する位置検出部であることを特徴とする移動装置。
【請求項5】
前記位置検出部は、前記弾性チューブに供給される前記流体の圧力の変動に基づいて前記スライダユニットの位置を検出することを特徴とする請求項に記載の移動装置。
【請求項6】
前記位置検出部は、前記弾性チューブの外周に対をなして配索された導体を有し、前記スライダユニットが前記対をなす導体を短絡する位置に応じて変化する電流値に基づき、前記スライダユニットの位置を検出することを特徴とする請求項に記載の移動装置。
【請求項7】
前記位置検出部は、前記弾性チューブに供給される前記流体の圧力及び流量の変動に基づいて前記スライダユニットの位置を検出することを特徴とする請求項に記載の移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種配管の内部、H形鋼のフランジ間、I形鋼や溝形鋼のリップ間、或いは、瓦礫の内部等のような、間隔の狭い壁部によって形成された挟空間内を移動する移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種建物や機械の内部の検査やメンテナンス、或いは、災害時における捜索等を行うことを目的として、挟空間内を移動するための各種移動装置が提案され、実用化されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、先端側及び基端側から個別に供給される流体の圧力によって断面形状が弾性変形可能な弾性チューブと、弾性チューブの断面形状の変化に応じて当該弾性チューブの長手方向に進退移動可能なスライダユニットと、スライダユニットに設けられ弾性チューブの径方向に変形して対象物に摺接可能なブレーキと、をそれぞれ備えた第1,第2の駆動ユニットを、ガイドチューブの先端側において前後に並べて配設した移動装置が開示されている。
【0004】
このような移動装置において、第1の駆動ユニットでは、弾性チューブの先端側及び基端側に供給される流体の制御を通じて、スライダユニットの弾性チューブに対する移動、及び、弾性チューブの径方向に対するブレーキの変形を実現することが可能となっている。同様に、第2の駆動ユニットでは、弾性チューブの先端側及び基端側に供給される流体の制御を通じて、スライダユニットの弾性チューブに対する移動、及び、弾性チューブの径方向に対するブレーキの変形を実現することが可能となっている。そして、これらの各動作を適宜組み合わせることにより、ガイドチューブ等を配管内等において自走により進退移動させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2016/136511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された技術において、ガイドチューブの外周に設けられたスライダユニットは、構造上、硬質であり、しかも、ガイドチューブよりも太径である。従って、例えば、L字状に屈曲する屈曲管路部(所謂エルボ)に対し、スライダユニットを的確に通過させることが困難な場合がある。特に、屈曲管路部に段差が存在する場合には、スライダユニットの端部が屈曲管路内に存在する段差に突き当たる等して当該屈曲管路部を速やかに通過させることがより困難となる。
【0007】
ところで、この種の移動装置では、一般に、ガイドチューブの先端に設けた撮像ユニットやガイドチューブに挿通した内視鏡の撮像ユニット等によって、ガイドチューブの進行方向前方の状況を把握することが可能である。その一方で、この種の移動装置では、ガイドチューブの中途を移動するスライダユニットの状況を把握することは困難である。従って、スライダユニットが屈曲管路等において移動困難な状況となっても、このような状況を使用者等が把握することができず、移動装置を的確に移動させることが困難となる虞がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、被検体内におけるスライダユニットの状況を的確に把握することができる移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による移動装置は、被検体の内部に挿入され、流体によって付与される内部圧力に応じて断面形状が弾性変形可能な弾性チューブと、前記弾性チューブの断面形状の変化に応じて当該弾性チューブの長手方向に進退移動可能なスライダユニットと、前記スライダユニットが前記弾性チューブ上を進退移動する際に前記スライダユニットが前記被検体から受ける外力であって、前記スライダユニットの進退移動を阻害する外力を検出する外力検出部と、を備え、前記被検体と摺動可能な摺動面が形成された先導部材を前記スライダユニットの端部に備え、前記外力検出部は、前記被検体から前記先導部材が受ける圧力を検出する圧力センサであって、前記圧力センサは、前記先導部材の前記摺動面に設けられている
本発明の他態様による移動装置は、被検体の内部に挿入され、流体によって付与される内部圧力に応じて断面形状が弾性変形可能な弾性チューブと、前記弾性チューブの断面形状の変化に応じて当該弾性チューブの長手方向に進退移動可能なスライダユニットと、前記スライダユニットが前記弾性チューブ上を進退移動する際に前記スライダユニットが前記被検体から受ける外力であって、前記スライダユニットの進退移動を阻害する外力を検出する外力検出部と、を備え、前記被検体と摺動可能な摺動面が形成された先導部材を前記スライダユニットの端部に備え、前記外力検出部は、前記被検体から前記先導部材が受ける圧力を検出する圧力センサであって、前記スライダユニットと前記先導部材とを弾性的に接続する接続部材を備え、前記圧力センサは前記接続部材に設けられている
本発明の他態様による移動装置は、被検体の内部に挿入され、流体によって付与される内部圧力に応じて断面形状が弾性変形可能な弾性チューブと、前記弾性チューブの断面形状の変化に応じて当該弾性チューブの長手方向に進退移動可能なスライダユニットと、前記スライダユニットが前記弾性チューブ上を進退移動する際に前記スライダユニットが前記被検体から受ける外力であって、前記スライダユニットの進退移動を阻害する外力を検出する外力検出部と、を備え、前記スライダユニットは、当該スライダユニットが両端から押圧された際に拡径方向に変位する拡径部を中央部に有し、前記拡径部は、前記スライダユニットの中央部に前後対をなして拡径方向に揺動可能に支持された揺動体と、前記対をなす揺動体を連結する弾性部材と、を有し、前記外力検出部は、前記弾性部材に設けられた歪みゲージである
本発明の他態様による移動装置は、被検体の内部に挿入され、流体によって付与される内部圧力に応じて断面形状が弾性変形可能な弾性チューブと、前記弾性チューブの断面形状の変化に応じて当該弾性チューブの長手方向に進退移動可能なスライダユニットと、前記スライダユニットが前記弾性チューブ上を進退移動する際に前記スライダユニットが前記被検体から受ける外力であって、前記スライダユニットの進退移動を阻害する外力を検出する外力検出部と、を備え、前記外力検出部は、前記弾性チューブ上における前記スライダユニットの位置を検出する位置検出部である
【発明の効果】
【0010】
本発明の移動装置によれば、被検体内におけるスライダユニットの状況を的確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態に係り、移動装置の概略構成図
図2】同上、移動装置の要部を示す斜視図
図3】同上、第1の駆動ユニットの斜視図
図4】同上、第1の駆動ユニットの分解斜視図
図5】同上、図4のV-V線に沿う断面図
図6】同上、ローラーの斜視図
図7】同上、第1のブレーキが作動状態になるときの第1の駆動ユニットの斜視図
図8】同上、ブレーキ部材の要部を示す分解斜視図
図9】同上、配管内において第1のブレーキが非作動状態になるときの第1の駆動ユニットを模式的に示す要部断面図
図10】同上、配管内において第1のブレーキが作動状態になるときの第1の駆動ユニットを模式的に示す要部断面図
図11】同上、先導部材の要部を示す分解斜視図
図12】同上、先導部材の要部断面図
図13】同上、終端部材の要部を示す分解斜視図
図14】同上、配管内における移動装置の状態を模式的に示す説明図
図15】同上、配管内における移動装置の状態を模式的に示す説明図
図16】同上、移動装置の移動手順を示すフローチャート
図17】第1の変形例に係り、第1の駆動ユニットを模式的に示す要部断面図
図18】同上、先導部材の端面図
図19】同上、配管内における移動装置の状態を模式的に示す説明図
図20】同上、各センサの出力とスライダユニットに予想される状態との対応関係を示すマップ
図21】第2の変形例に係り、第1の駆動ユニットの斜視図
図22】第3の変形例に係り、第1の駆動ユニットの要部を示す分解斜視図
図23】第4の変形例に係り、第1の駆動ユニットの要部を示す分解斜視図
図24】第5の変形例に係り、第1の駆動ユニットの要部を示す分解斜視図
図25】第6の変形例に係り、第1の駆動ユニットを模式的に示す要部断面図
図26】第7の変形例に係り、移動装置の要部を示す斜視図
図27】本発明の第2の実施形態に係り、第1の駆動ユニットの斜視図
図27A】同上、導体が編み込まれたメッシュチューブを拡大して示す説明図
図27B】同上、導体とローラーとの関係を示す平面図
図27C】同上、導体とローラーとの関係を示す説明図
図27D】同上、導体をテープによって貼り付けた場合のメッシュチューブを模式的に示す説明図
図27E】同上、リードスイッチのユニットを示す平面図
図27F】同上、リードスイッチの模式図
図27G】同上、第1の駆動ユニットの斜視図
図27H】同上、第1の駆動ユニットの斜視図
図28】第1の変形例に係り、移動装置の要部を模式的に示す説明図
図29】同上、圧力室に供給されるエアの圧力推移を示す説明図
図30】第2の変形例に係り、移動装置の要部を模式的に示す説明図
図30A】同上、流体調整部におけるスライダユニット位置の解析系を示すブロック図
図30B】同上、配管ホールド時における各圧力室への流体の流量及び圧力の変化例を示す説明図
図30C】同上、スライダのスライド時における各圧力室への流体の流量及び圧力の変化例を示す説明図
図30D】同上、チューブの押し出し時における各圧力室への流体の流量及び圧力の変化例を示す説明図
図30E】同上、スライダがエルボで引っ掛かっている時における各圧力室への流体の流量及び圧力の変化例を示す説明図
図30F】同上、スライダがエルボを通過している時における各圧力室への流体の流量及び圧力の変化例を示す説明図
図30G】同上、スライダの移動に伴うチューブの変形状態を例示する説明図
図31】開示例に係り、配管内に挿入された移動装置を模式的に示す説明図
図32】同上、配管内に挿入された移動装置を模式的に示す説明図
図33】同上、配管内に挿入された移動装置を模式的に示す説明図
図34】同上、配管内に挿入された移動装置を模式的に示す説明図
図35】同上、直線状の管路内における内視鏡画像を模式的に示す説明図
図36】同上、エルボの手前の管路における内視鏡画像を模式的に示す説明図
図37】同上、移動装置の移動手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図1乃至図15は本発明の第1の実施形態に係り、図1は移動装置の概略構成図、図2は移動装置の要部を示す斜視図、図3は第1の駆動ユニットの斜視図、図4は第1の駆動ユニットの分解斜視図、図5図4のV-V線に沿う断面図、図6はローラーの斜視図、図7は第1のブレーキが作動状態になるときの第1の駆動ユニットの斜視図、図8はブレーキ部材の要部を示す分解斜視図、図9は配管内において第1のブレーキが非作動状態になるときの第1の駆動ユニットを模式的に示す要部断面図、図10は配管内において第1のブレーキが作動状態になるときの第1の駆動ユニットを模式的に示す要部断面図、図11は先導部材の要部を示す分解斜視図、図12は先導部材の要部断面図、図13は終端部材の要部を示す分解斜視図、図14,15は配管内における移動装置の状態を模式的に示す説明図、図16は移動装置の移動手順を示すフローチャートである。
【0013】
図1に示す移動装置1は、例えば、建物等に設けられた被検体としての配管100(図14,15参照)内に内視鏡7(図2,3参照)をガイドするためのガイドチューブ5に適用されている。この移動装置1は、第1の駆動ユニット2Aと、第1の駆動ユニット2Aよりも基端側に連設された第2の駆動ユニット2Bと、をガイドチューブ5に有して構成されている。さらに、移動装置1は、これら第1,第2の駆動ユニット2A,2Bに流体としてのエアを供給或いは排出することが可能な流体調整部4を有する。
【0014】
ここで、ガイドチューブ5は、例えば、ポリウレタン等によって構成された可撓性を有する長尺なチューブを主体として構成され、その内部が、内視鏡7等を挿通可能なチャンネル5aとして設定されている。
【0015】
図1図4図9,10に示すように、第1の駆動ユニット2Aは、流体調整部4から供給される流体によって付与される内部圧力に応じて断面形状が弾性変形(膨張収縮)可能な第1のチューブ体としての第1の弾性チューブ10Aと、この第1の弾性チューブ10Aの断面形状の変化に応じて当該第1の弾性チューブ10A上を長手方向に進退移動可能な第1のスライダユニット20Aと、第1のスライダユニット20Aに設けられた第1のブレーキ30Aと、を有して構成されている。
【0016】
第1の弾性チューブ10Aは、ゴムチューブ等の弾性部材によって構成されている。この第1の弾性チューブ10Aには、第1のチューブ体として、内面側に第1の可撓チューブ11Aが挿通されているとともに、外面側に第1のメッシュチューブ12Aが被覆されている。
【0017】
第1の可撓チューブ11Aは、例えば、第1の弾性チューブ10Aの内部圧力に対して変形不能な剛性を有するポリウレタン等からなるチューブによって構成されている。この第1の可撓チューブ11Aの外径は、第1の弾性チューブ10Aの内径と同等、或いは、第1の弾性チューブ10Aの内径よりも若干大径に形成されている。これにより、第1の可撓チューブ11Aの外周面には自然状態にあるときの第1の弾性チューブ10Aの内周面が面接触され、第1の可撓チューブ11Aは、所定の可撓性を有して第1の弾性チューブ10Aを支持することが可能となっている。また、第1の可撓チューブ11Aの内径は、ガイドチューブ5の内径と同等に形成され、これにより、第1の可撓チューブ11Aの内部は、ガイドチューブ5のチャンネル5aと一連のチャンネル11aとして設定されている。
【0018】
第1のメッシュチューブ12Aは、例えば伸縮不能なPET(ポリエチレンテレフタラート)繊維、ステンレス線等を網目状に織り込んだチューブによって構成されている。この第1のメッシュチューブ12Aは、網目の変形可能な範囲を限度として外径方向に変形することが可能となっている。これにより、第1のメッシュチューブ12Aは、第1の弾性チューブ10Aが局所的に膨張することを防止しつつ、第1の弾性チューブ10Aが長手方向に略均一な所定の外径にて膨張することを許容する。
【0019】
これら第1の弾性チューブ10A、第1の可撓チューブ11A、及び、第1のメッシュチューブ12Aの先端側には、リング状をなす先端側終端部材13が設けられている。この先端側終端部材13には、内周側に第1の可撓チューブ11Aの基端側が接着固定されるとともに、外周側に第1の弾性チューブ10A及び第1のメッシュチューブ12Aの基端側が接着固定されている。そして、この先端側終端部材13との接着により、第1の弾性チューブ10Aの先端側は、第1の可撓チューブ11Aの先端側と気密な状態にて連結されている。
【0020】
また、先端側終端部材13には、流体としてのエアを流通可能な第1の前側流体供給管15Aの先端側が保持され、この第1の前側流体供給管15Aの先端開口部が、第1の弾性チューブ10Aの先端側の内部(より具体的には、第1の弾性チューブ10Aの内周面と第1の可撓チューブ11Aの外周面との間)に連通されている。
【0021】
なお、配管100等に対する挿入性を向上するため、先端側終端部材13の外周面には、先細り形状をなすテーパ面13aが形成されている。
【0022】
同様に、第1の弾性チューブ10A、第1の可撓チューブ11A、及び、第1のメッシュチューブ12Aの基端側には、リング状をなす終端部材14が設けられている。ここで、本実施形態の終端部材14は、第1の駆動ユニット2Aの基端側終端部材としての機能を有するとともに、後述する第2の駆動ユニット2Bの先端側終端部材としての機能を有する。
【0023】
この終端部材14には、内周側に第1の可撓チューブ11Aの基端側が接着固定されるとともに、外周側に第1の弾性チューブ10A及び第1のメッシュチューブ12Aの基端側が接着固定されている。そして、この終端部材14との接着により、第1の弾性チューブ10Aの基端側は、第1の可撓チューブ11Aの基端側と気密な状態にて連結されている。
【0024】
また、終端部材14には、流体としてのエアを供給可能な第1の後側流体供給管16Aの先端側が保持され、この第1の後側流体供給管16Aの先端開口部が、第1の弾性チューブ10Aの基端側の内部(より具体的には、第1の弾性チューブ10Aの内周面と第1の可撓チューブ11Aの外周面との間)に連通されている。
【0025】
第1のスライダユニット20Aは、第1のメッシュチューブ12Aを介して第1の弾性チューブ10Aの外周側に装着されたスライダとしての第1の前側スライダ21Aと、この第1の前側スライダ21Aよりも基端側において、第1のメッシュチューブ12Aを介して第1の弾性チューブ10Aの外周側に装着されたスライダとしての第1の後側スライダ22Aと、これら第1の前側スライダ21Aと第1の後側スライダ22Aを離間方向に付勢する付勢部材としての第1のコイルスプリング23Aと、を有して構成されている。
【0026】
図1図4に示すように、第1の前側スライダ21A及び第1の後側スライダ22Aは、リング状をなすスライダ本体25と、このスライダ本体25に軸支された複数のローラー26と、を有して構成されている。
【0027】
図5,6に示すように、各ローラー26は、断面形状が部分円弧状をなす転動面26aを有して構成されている。各ローラー26は、スライダ本体25の内周面に環状に配列された状態にて軸支され、これら各ローラー26の転動面26aにより、第1の前側スライダ21A及び第1の後側スライダ22Aの内周には環状をなす一連の押圧面が形成されている。
【0028】
そして、このように形成された押圧面により、第1の前側スライダ21Aは、第1のメッシュチューブ12Aを介して、第1の弾性チューブ10Aの内周面を第1の可撓チューブ11Aの外周面に押し当てながら移動することが可能となっている。これにより、第1の弾性チューブ10Aの断面形状の変形が第1の前側スライダ21Aの移動状態に応じた任意の位置において一部規制され、第1の前側スライダ21Aよりも先端側には、第1の前側流体供給管15Aに連通する第1の前側圧力室17Aが形成されている。
【0029】
同様に、第1の後側スライダ22Aは、第1のメッシュチューブ12Aを介して、第1の弾性チューブ10Aの内周面を第1の可撓チューブ11Aの外周面に押し当てながら移動することが可能となっている。これにより、第1の弾性チューブ10Aの断面形状の変形が第1の後側スライダ22Aの移動状態に応じた任意の位置において一部規制され、第1の後側スライダ22Aよりも基端側には、第1の後側流体供給管16Aに連通する第1の後側圧力室18Aが形成されている。
【0030】
第1のコイルスプリング23Aは、第1の前側スライダ21Aと第1の後側スライダ22Aとの間において、第1のメッシュチューブ12Aの外周側(すなわち、第1の弾性チューブ10Aの外周側)に介装されている。
【0031】
図1図4図7図10に示すように、このような第1のスライダユニット20Aの第1の前側スライダ21Aと第1の後側スライダ22Aとの間には、拡径部としての第1のブレーキ30Aを構成する複数のブレーキ部材31が架設されている。
【0032】
各ブレーキ部材31は、例えば、第1の前側スライダ21Aに支持された複数の前側揺動体32と、第1の後側スライダ22Aに支持された複数の後側揺動体33と、を有して構成されている。
【0033】
具体的に説明すると、第1の前側スライダ21Aには、当該第1の前側スライダ21Aの軸心方向に沿って基端側(第1の後側スライダ22A側)に延在する複数のガイド用突起21aが設けられている。これらのガイド用突起21aは、第1のコイルスプリング23Aの外周側において、所定間隔毎隔てて環状に配列されている。また、各ガイド用突起21aの両側部には、第1の前側スライダ21Aの軸心方向に沿って延在するガイド溝21bがそれぞれ設けられている。
【0034】
また、第1の後側スライダ22Aには、当該第1の後側スライダ22Aの軸心方向に沿って先端側(第1の前側スライダ21A側)に延在する複数のガイド用突起22aが設けられている。これらのガイド用突起22aは、第1のコイルスプリング23Aの外周側において、第1の前側スライダ21Aのガイド用突起21aとそれぞれ対向するよう、所定間隔毎隔てて環状に配列されている。また、各ガイド用突起22aの両側部には、第1の後側スライダ22Aの軸心方向に沿って延在するガイド溝22bがそれぞれ設けられている。
【0035】
前側揺動体32は、第1の前側スライダ21Aにおいて隣接するガイド用突起21a,21aの間に配設されている(図3,4,7参照)。前側揺動体32の先端側(固定端側)には軸部34が設けられ(図8参照)、この軸部34の両端がガイド用突起21a,21aに設けられたガイド溝21b,21bにそれぞれ係入されている。これにより、前側揺動体32は、ガイド溝21b,21bに沿って第1の前側スライダ21Aの軸心方向に進退移動可能、且つ、第1の前側スライダ21Aの拡径方向に揺動可能となるよう、ガイド用突起21a,21a間に支持されている。
【0036】
また、前側揺動体32の基端側(自由端側)には、接触部材としての係止爪部36が設けられている。この係止爪部36は、前側揺動体32と一体的に揺動することが可能となっており、前側揺動体32が揺動によって拡径方向に変位されたとき、配管等の内周面に摺接することが可能となっている。なお、前側揺動体32には、係止爪部36の一部を覆うための爪カバー32aが一体形成されている。
【0037】
後側揺動体33は、第1の後側スライダ22Aにおいて隣接するガイド用突起22a,22aの間に配設されている(図3,4,7参照)。後側揺動体33の基端側(固定端側)には軸部35が設けられ(図8参照)、この軸部35の両端が、ガイド用突起22a,22aに設けられた各ガイド溝22b,22bにそれぞれ係入されている。これにより、後側揺動体33は、前側揺動体32に対向する位置で、ガイド溝22b,22bに沿って第1の後側スライダ22Aの軸心方向に進退移動可能、且つ、第1の後側スライダ22Aの拡径方向に揺動可能となるよう、ガイド用突起22a,22a間に支持されている。
【0038】
また、後側揺動体33の先端側(自由端側)には、接触部材としての係止爪部37が設けられている。この係止爪部37は、後側揺動体33と一体的に揺動することが可能となっており、後側揺動体33が揺動によって拡径方向に変位されたとき、配管等の内周面に摺接することが可能となっている。なお、後側揺動体33には、係止爪部37の一部を覆うための爪カバー33aが一体形成されている。
【0039】
更に、前側揺動体32及び後側揺動体33の間には、これらの自由端側(すなわち、前側揺動体32の基端側と、後側揺動体33の先端側)を連結するための連結部材38が設けられている。本実施形態において、連結部材38は、所定の弾性を有する帯状のゴムプレートによって構成されている。なお、連結部材38は、金属部材によって構成されていてもよい。
【0040】
ここで、図1~4,9,10に示すように、第1のスライダユニット20Aの前後の端部には、当該第1のスライダユニット20Aの姿勢を配管等の壁面に対して適切な方向に適宜先導するための、第1の前側先導機構71A及び第1の後側先導機構72Aが設けられている。
【0041】
第1の前側先導機構71Aは、第1のスライダユニット20Aよりも短尺な筒状をなす先導部材73と、第1のスライダユニット20Aの先端側の端部に対して先導部材73を変位可能に接続する弾性部材からなる接続部材74と、を有して構成されている。
【0042】
先導部材73は、第1の弾性チューブ10Aが自然状態にあるときの第1のメッシュチューブ12Aの外径よりも内周面がやや大径な筒状部材によって構成されている。これにより、先導部材73は、第1の前側スライダ21Aと一体的に第1のメッシュチューブ12A(すなわち、第1の弾性チューブ10A)上を移動可能となっている。
【0043】
また、先導部材73の外周面には、例えば、第1のスライダユニット20A側に当該第1のスライダユニット20Aの端部(すなわち、第1の前側スライダ21A)と略同径の最大径を有し、且つ、第1のスライダユニット20Aから離間するほど縮径する、先細りのテーパ面からなる摺動面73aが形成されている。
【0044】
接続部材74は、例えば、コイルスプリングによって構成されている。これにより、先導部材73は、第1の前側スライダ21Aの長手軸に対して弾性的に傾動可能、且つ、第1の前側スライダ21Aの長手軸の偏心方向(軸直角方向)に弾性的に移動可能となっている。
【0045】
このように、本実施形態の先導部材73は、コイルスプリングからなる接続部材74を介して接続されることにより、第1の前側スライダ21Aの長手軸周り、長手軸の傾動方向、及び、長手軸の偏心方向に対して変位可能となっている。
【0046】
同様に、第1の後側先導機構72Aは、第1のスライダユニット20Aよりも短尺な筒状をなす先導部材73と、第1のスライダユニット20Aの基端側の端部に対して先導部材73を変位可能に接続する接続部材74と、を有して構成されている。
【0047】
さらに、第1の前側先導機構71A及び第1の後側先導機構72Aの各先導部材73には、第1のスライダユニット20Aが第1の弾性チューブ10A上を進退移動する際に、当該第1のスライダユニット20Aが配管100から受ける外力を検出するための外力検出部としての圧力センサ75が設けられている。
【0048】
具体的に説明すると、圧力センサ75は、例えば、歪ゲージ、或いは、圧覚センサによって構成されている。この圧力センサ75は先導部材73上に複数配置されるものであり、本実施形態においては、例えば、図2~4,7,11に示すように、8個の圧力センサ75が、先導部材73の摺動面73aを形成するテーパ面上に、等間隔毎に環状に配列されている。
【0049】
また、例えば、図11,12に示すように、先導部材73の内部には、各圧力センサ75において検出した信号を無線送信するための送信基板76と、送信基板76に電源を供給するためのバッテリ77と、が設けられている。なお、図11,12中において、符号73bは蓋体であり、蓋体73bは、送信基板76及びバッテリ77を収容した後の先導部材73の内部空間を閉塞する。
【0050】
さらに、例えば、図9,10,13に示すように、終端部材14の内部には、送信基板76から送信された無線信号を受信するための受信基板78と、受信基板78に電源を供給するためのバッテリ79と、が設けられている。そして、受信基板78は、送信基板76を通じて受信した各圧力センサ75からの検出信号を、図示しない信号線を介して、或いは、さらなる無線通信を介して、流体調整部4の制御用計算機68(後述する)に伝送することが可能となっている。なお、図13中において、符号14aは蓋体であり、蓋体14aは、受信基板78及びバッテリ79を収容した後の終端部材14の内部空間を閉塞する。
【0051】
ここで、エアの供給及び排出によって第1の前側圧力室17Aと後側圧力室18Aが膨張及び収縮を繰り返す際に、第1の弾性チューブ10Aと第1の可撓チューブ11Aとの相対位置にズレが発生する等して、第1の弾性チューブ10Aの一部が重なった状態で第1の可撓チューブ11A上に支持される等の現象を防止するため、第1の可撓チューブ11Aと第1の弾性チューブ10Aとの間にズレ防止用のストッパリング40を介装することが望ましい。この場合、ストッパリング40は、第1の弾性チューブ10Aの長手方向に対する第1のスライダユニット20Aの移動範囲を規定するためのストッパとしての機能を兼用させることが望ましい。
【0052】
また、例えば、第1の前側流体供給管15A及び第1の後側流体供給管16Aを大気開放した際の第1の前側圧力室17A及び第1の後側圧力室18A内へのエアの残留を防止するため、或いは、第1の前側圧力室17A及び第1の後側圧力室18Aから第1の前側スライダ21Aと第1の後側スライダ22A間に漏れ入ったエアを第1の弾性チューブ10Aの外部に排出するため、第1の可撓チューブ11Aにリーク孔41を設けることが望ましい。この場合、リーク孔41は、第1の前側流体供給管15A及び第1の後側流体供給管16Aが流通するエアの流量よりも十分小さいリーク量にてエアをリークさせることが可能な孔径に設定されていることが望ましい。また、リーク孔41は、第1の可撓チューブ11Aの長手方向に沿って所定間隔毎に設けられていることが望ましく、リーク孔41が設けられる間隔は、例えば、第1の前側スライダ21Aと第1の後側スライダ22Aが最接近しているときの間隔よりも短く設定されていることが望ましい。このように設定することで、第1の前側スライダ21Aと第1の後側スライダ22Aの間隔に関わらず、第1の前側圧力室17Aと第1の後側圧力室18Aとの間に漏れ入ったエアを第1の弾性チューブ10Aの外部に排出することができる。
【0053】
このように構成された第1の駆動ユニット2Aにおいて、第1の前側圧力室17Aと第1の後側圧力室18Aが大気開放されている場合には、第1のコイルスプリング23Aの付勢力により、第1の前側スライダ21Aと第1の後側スライダ22Aは、互いに離間する方向に付勢されている。そして、この付勢力により、例えば、図1図3図9に示すように、前側揺動体32と後側揺動体33は第1の前側スライダ21Aと第1の後側スライダ22Aの軸心方向に沿って倒伏されている。
【0054】
すなわち、第1前側スライダ21Aと第1の後側スライダ22Aとが互いに離間する方向に付勢された場合には、前側揺動体32の固定端側(軸部34)はガイド溝21bの基端側まで相対移動され、後側揺動体33の固定端側(軸部35)はガイド溝22bの先端側まで相対移動される。さらに、前側揺動体32及び後側揺動体33の固定端側に第1の前側スライダ21A及び第1の後側スライダ22Aからの牽引力が伝達されることにより、前側揺動体32及び後側揺動体33の自由端側は、連結部材38を介して互いに牽引される。これにより、前側揺動体32と後側揺動体33は、第1の前側スライダ21A及び第1の後側スライダ22Aの軸心方向に沿って倒伏される。
【0055】
そして、このように第1の前側揺動体32と第1の後側揺動体33が倒伏されることにより、各係止爪部36,37は、第1の前側スライダ21Aと第1の後側スライダ22Aの間に収納される。
【0056】
一方、例えば、第1の前側圧力室17Aと第1の後側圧力室18A内にエアが供給され、第1のコイルスプリング23Aの付勢力に抗して第1の前側スライダ21Aと第1の後側スライダ22Aとが互いに接近する方向に移動されると、図7図10に示すように、前側揺動体32と後側揺動体33は、拡径方向に起立される。
【0057】
すなわち、第1の前側スライダ21Aと第1の後側スライダ22Aが互いに接近する方向に付勢されると、前側揺動体32の固定端側(軸部34)はガイド溝21bの先端側まで移動され、後側揺動体33の固定端側(軸部35)はガイド溝22bの基端側まで移動される。そして、第1の前側スライダ21Aと第1の後側スライダ22Aがさらに接近すると、前側揺動体32と後側揺動体33の固定端側に、第1の前側スライダ21Aと第1の後側スライダ22Aからの押圧力が伝達される。これにより、連結部材38が弓なりに弾性変形され、この連結部材38の弾性変形による斥力により、前側揺動体32と後側揺動体33は、拡径方向に起立される。これら第1の前側スライダ21Aと第1の後側スライダ22Aとは、互いに対向するガイド用突起21a、22aの端部が当接する位置まで接近させることが可能であり、このように第1の前側スライダ21Aと第1の後側スライダ22Aとが最接近したとき、前側揺動体32と後側揺動体33は最も拡径された状態にて起立される。
【0058】
このような前側揺動体32と後側揺動体33の拡径方向の変位に伴い、係止爪部36,37は拡径方向に変位し、配管100の内壁等の対象物に摺接される。そして、これらの係止爪部36,37の摺接により、第1のスライダユニット20Aは、配管100内等における移動が制限される。
【0059】
より具体的には、第1のスライダユニット20Aの基端側に向けて所定の仰角を有して傾斜する第1のブレーキ30Aの係止爪部36が配管100の内壁等に摺接されることにより、第1のスライダユニット20Aは、基端側(退避側)への移動が制限される。一方、第1のスライダユニット20Aの先端側に向けて所定の仰角を有して傾斜する係止爪部36が配管100の内壁等に摺接されることにより、第1のスライダユニット20Aは、先端側(進出側)への移動が制限される。
【0060】
なお、前側揺動体32及び後側揺動体33の固定端側(各軸部34,35)はガイド溝21b,22bを介して第1のスライダユニット20Aに支持されているため、第1の前側スライダ21Aと第1の後側スライダ22Aが互いに接近する方向に移動を開始した場合にも、これら第1の前側スライダ21A及び第1の後側スライダ22Aからの押圧力が前側揺動体32及び後側揺動体33に対して直ちに伝達されることはない。換言すれば、第1の前側スライダ21A及び第1の後側スライダ22Aと、前側揺動体32及び後側揺動体33との間には、各ガイド溝21b、22bによって遊びが設けられている。従って、本実施形態の駆動ユニット2Aは、屈曲された配管100内を進退移動する際にも、各ガイド溝21b,22bが各軸部34,35の移動を許容する範囲内において、前側揺動体32及び後側揺動体33を拡径動作させることなく、第1の前側スライダ21Aと第1の後側スライダ22Aを相対的に変位させることが可能である。
【0061】
第2の駆動ユニット2Bは、上述の第1の駆動ユニット2Aと略同様の構成となっている。このため、第1の駆動ユニット2Aに対応する第2の駆動ユニット2Bの各構成部材等については、図中において、同符号を付して、或いは、末尾を「A」から「B」に置き換えた符号を適宜付して、詳細な説明を省略する。
【0062】
なお、第2の駆動ユニット2Bにおいて、第2のチューブ体としての、第2の弾性チューブ10B、第2の可撓チューブ11B、及び、第2のメッシュチューブ12Bの先端側は終端部材14に接着固定されている。
【0063】
また、第2の弾性チューブ10B、第2の可撓チューブ11B、及び、第2のメッシュチューブ12Bの基端側には、リング状をなす基端側終端部材19が接着固定されている。
【0064】
さらに、基端側終端部材19の内周側には、ガイドチューブ5の先端側が接着固定されている。なお、本実施形態においては、終端部材14及び基端側終端部材19を介して、第1,第2の可撓チューブ11A,11Bをガイドチューブ5の先端側に連結した構成について例示しているが、これらを一体のチューブによって構成することも可能である。
【0065】
図1に示すように、流体調整部4は、作動流体であるエアを圧縮するためのコンプレッサ65と、コンプレッサ65によって圧縮されたエアの空気圧を予め設定された基準圧に調整するためのレギュレータ66と、レギュレータ66で基準圧に調圧されたエアの空気圧を任意の制御圧Pに調圧するための電空比例弁67と、電空比例弁67を駆動制御するための制御用計算機68と、を有して構成されている。
【0066】
本実施形態において、電空比例弁67には、第1の前側流体供給管15A、第1の後側流体供給管16A、第2の前側流体供給管15B、及び、第2の後側流体供給管16Bが接続されている。
【0067】
電空比例弁67は、第1の前側流体供給管15A及び第1の後側流体供給管16Aを介して、第1の前側圧力室17A及び第1の後側圧力室18Aに対し、それぞれ個別の制御圧Pに調圧されたエアを供給することが可能となっている。
【0068】
また、電空比例弁67は、第2の前側流体供給管15B及び第2の後側流体供給管16Bを介して、第2の前側圧力室17B及び第2の後側圧力室18Bに対し、それぞれ個別の制御圧Pに調圧されたエアを供給することが可能となっている。
【0069】
この場合において、電空比例弁67は、例えば、エアの制御圧Pとして、第1の制御圧P1と、この第1の制御圧P1よりも所定圧高い第2の制御圧P2を調圧することが可能となっている。
【0070】
一方、電空比例弁67は、第1の前側流体供給管15A及び第1の後側流体供給管16Aを個別に大気開放することにより、第1の前側圧力室17A及び第1の後側圧力室18Aに供給されたエアを排出することが可能となっている。
【0071】
また、電空比例弁67は、第2前側流体供給管15B及び第2の後側流体供給管16Bを個別に大気開放することにより、第2の前側圧力室17B及び第2の後側圧力室18Bに供給されたエアを排出することが可能となっている。
【0072】
次に、このように構成された移動装置1の通常時における移動手順の一例について、図16のフローチャートを参照して説明する。なお、以下の説明においては、移動装置1による配管100内の進出移動を、制御用計算機68に予め設定したプログラム等に従って自動で行う一例について説明するが、使用者等が操作入力を行うことにより配管100内を進出移動させることも可能である。なお、以下の説明において、説明を簡略化するため、第1,第2の駆動ユニット2A,2Bを構成する第1,第2の弾性チューブ10A,10B、第1,第2の可撓チューブ11A,11B、及び、第1,第2のメッシュチューブ12A,12Bを、適宜、「ガイドチューブユニット5A」と総称する。
【0073】
移動装置1は、配管100内で第1、第2の駆動ユニット2A,2Bの第1ブレーキ30A、第2のブレーキ30Bの移動と保持、解除を行うことで、前進または後進させる。
【0074】
この移動手順では、先ず、配管100内に移動装置1の第1,第2の駆動ユニット2A,2Bが挿入された状態において、制御用計算機68は、第1のブレーキ30Aを作動させた後、第2のブレーキ30Bが作動させる(ステップS101)。
【0075】
すなわち、流体調整部4は、制御用計算機68の電空比例弁67に対する制御により、第1の制御圧P1に調圧されたエアを、第2の前側流体供給管15Bを通じて第2の前側圧力室17Bに供給する。これにより、第2のスライダユニット20Bは、第2の弾性チューブ10B上を先端側から基端側へと移動する。そして、基端側に位置するストッパリング40に到達する前に第1の制御圧P1に調圧されたエアを第2の後側流体供給管16Bを通じて第2の後側圧力室18Bに供給する。この場合、第2の前側圧力室17B,第2の後側圧力室18Bに供給された制御圧は共にP1であるため、第2の前側スライダ21Bが第2のコイルスプリング23Bの付勢力に抗して第2の後側スライダ22Bに接近する。これにより、第2のスライダユニット20Bに設けられた第2のブレーキ30Bの前側揺動体32と後側揺動体33は第2の弾性チューブ10Bの拡径方向に変位して係止爪部37が配管100の内周面に摺接される。
【0076】
その後、制御用計算機68は、第1のブレーキ30Aの作動解除を行う(ステップS102)。
【0077】
すなわち、流体調整部4は、制御用計算機68の電空比例弁67に対する制御により、第1の前側圧力室17A及び第1の後側圧力室18Aを大気開放する。これにより、第1の前側スライダ21Aと第1の後側スライダ22Aは、第1のコイルスプリング23Aの付勢力によって互いに離間する方向に相対移動される。そして、この相対移動によって前側揺動体32と後側揺動体33が倒伏されることにより、第1のブレーキ30Aの作動が解除される。
【0078】
次に、制御用計算機68は、第1のスライダユニット20Aを第1の弾性チューブ10Aの先端側へと移動させ(ステップS103)、さらに、第1の弾性チューブ10Aの先端側において、第1のブレーキ30Aを作動させる(ステップS104)。
【0079】
すなわち、流体調整部4は、制御用計算機68の電空比例弁67に対する制御により、第1の制御圧P1に調圧されたエアを、第1の後側流体供給管16Aを通じて第1の後側圧力室18Aに供給する。これにより、第1のスライダユニット20Aは、第1の弾性チューブ10A上を基端側から先端側へと移動する。
【0080】
この場合において、配管100内における第2のブレーキ30Bの摺接によってガイドチューブユニット5Aの長手方向への移動が制限されているため、第1のスライダユニット20Aは、配管100内を基端側から先端側へと移動する。
【0081】
そして、先端側に位置するストッパリング40に到達する前に第1の制御圧P1に調圧されたエアを第1の前側流体供給管15Aを通じて第1の前側圧力室17Aに供給する。この場合、第1の前側圧力室17A,第1の後側圧力室18Bに供給された制御圧はともにP1であるため、第1の後側スライダ22Aが第1のコイルスプリング23Aの付勢力に抗して第1の前側スライダ21Aに接近する。これにより、第1のスライダユニット20Aに設けられた第1のブレーキ30Aの前側揺動体32と後側揺動体33は第1の弾性チューブ10Aの拡径方向に変位して係止爪部37が配管100の内周面に摺接される。
【0082】
その後、制御用計算機68は、第2のブレーキ30Bの作動解除を行う(ステップS105)。
【0083】
すなわち、流体調整部4は、制御用計算機68の電空比例弁67に対する制御により、第2の前側圧力室17B及び第2の後側圧力室18Bを大気開放する。これにより、第2の前側スライダ21Bと第2の後側スライダ22Bは、第2のコイルスプリング23Bの付勢力によって互いに離間する方向に相対移動される。そして、この相対移動によって前側揺動体32と後側揺動体33が倒伏されることにより、第2のブレーキ30Bの作動が解除される。
【0084】
次に、制御用計算機68は、第2のスライダユニット20Bを第2の弾性チューブ10Bの先端側へと移動させ(ステップS106)、さらに、第2の弾性チューブ10Bの先端側において、第2のブレーキ30Bを作動させる(ステップS107)。
【0085】
すなわち、流体調整部4は、制御用計算機68の電空比例弁67に対する制御により、第1の制御圧P1に調圧されたエアを、第2の後側流体供給管16Bを通じて第2の後側圧力室18Bに供給する。これにより、第2のスライダユニット20Bは、第2の弾性チューブ10B上を基端側から先端側へと移動する。
【0086】
この場合において、配管100内における第1のブレーキ30Aの摺接によってガイドチューブユニット5Aの長手方向への移動が制限されているため、第2のスライダユニット20Bは、配管100内を基端側から先端側へと移動する。
【0087】
そして、先端側に位置するストッパリング40に到達する前に第1の制御圧P1に調圧されたエアを第2の前側流体供給管15Bを通じて第2の前側圧力室17Bに供給する。この場合、第2の前側圧力室17B,第2の後側圧力室18Bに供給された制御圧はともにP1であるため、第2の後側スライダ22Bが第2のコイルスプリング23Bの付勢力に抗して第2の前側スライダ21Bに接近する。これにより、第2のスライダユニット20Bに設けられた第2のブレーキ30Bの前側揺動体32と後側揺動体33は第1の弾性チューブ10Aの拡径方向に変位して係止爪部37が配管100の内周面に摺接される。
【0088】
その後、制御用計算機68は、ガイドチューブユニット5Aを先端側に移動させる(ステップS108)。
【0089】
すなわち、流体調整部4は、制御用計算機68の電空比例弁67に対する制御により、第2の制御圧P2に調圧されたエアを、第1の前側流体供給管15A及び第2の前側流体供給管15Bを通じて第1の前側圧力室17A及び第2の前側圧力室17Bにそれぞれ供給する。これにより、第1の前側圧力室17A及び第2の前側圧力室17Bは膨張を開始し、この膨張による圧力を第1の前側スライダ21A及び第2の前側スライダ21Bが受けることにより、第1,第2のスライダユニット20A,20Bには、第1の前側スライダ21Aと第1の後側スライダ22Aとの接近状態及び第2の前側スライダ21Bと第2の後側スライダ22Bとの接近状態を維持したまま、第1,第2の弾性チューブ10A,10B上を先端側から基端側へと移動する方向の力が働く。すなわち、第1の前側圧力室17A及び第2の前側圧力室17Bに供給された第2の制御圧P2は、第1の後側圧力室18A及び第2の後側圧力室18Bに供給されている第1の制御圧P1よりも高圧であるため、第1,第2のスライダユニット20A,20Bには、第1の後側圧力室18A及び2の後側圧力室18Bを基端側へと押し戻す方向の力が作用する。この場合において、第1,第2のスライダユニット20A,20Bに設けられた第1,第2のブレーキ30A,30Bは配管100の内壁に摺接されているため、配管100内における第1,第2のスライダユニット20A,20Bの位置は不変のまま、ガイドチューブユニット5A(すなわち、第1,第2の弾性チューブ10A,10B、第1,第2の可撓チューブ11A,11B、及び、第1,第2のメッシュチューブ12A,12B)が一体的に配管100内を前進する。そして、これら移動に牽引されて、ガイドチューブ5は、配管100内を前進する。
【0090】
これらステップS101~ステップS108の手順を繰り返すことにより移動装置1は、ガイドチューブ5を前進させることが可能である。つまり、スライダユニット20Bの第2のブレーキ30Bで配管を保持した上で、第1のスライダユニット20Aを先端側に移動させ、配管を保持、その後、第2のスライダユニット20Bを先端側に移動の上配管保持、さらに第1、第2のスライダユニット20A、20Bとの相対移動によってガイドチューブユニット5Aを先端側に移動させることで移動装置1が前方に送られる。また、上述と逆の手順を行うことにより、移動装置1は、前進時と同様のパフォーマンスにてガイドチューブ5を後退させることも可能である。
【0091】
ここで、ステップS105における第1のスライダユニット20Aの移動時、及び、ステップS108における第2のスライダユニット20Bの移動時において、第1,第2のスライダユニット20A,20Bは、端部に第1,第2の前側先導機構71A,71B(及び、第1,第2の後側先導機構72A,72B)を有することにより、段差等の障害物を有する狭い屈曲管路部(エルボ101)等を通過する際にも、基本的には、段差等によって進行を阻害されることなく通過することが可能となる。
【0092】
その一方で、例えば、エルボ101等に対してガイドチューブ5Aが挿通される角度等によっては、第1の前側先導機構71A自体の移動がエルボ101の内周側の段差102等によって阻害される場合(例えば、図14参照)や、エルボ101の外周側の段差102に突き当たり、乗り越えられない場合がある。また、第1の前側先導機構71Aが進行方向のエルボの段差102や配管の外周面に押し当てられるとともにエルボ101の内周側の段差102にスライダユニット20Aの側面があたり、さらにガイドチューブ5の手元側が配管100の外周面に押し当てられることでエルボを通過しにくくなる。つまりエルボ101を通過するときに先頭側が配管100の外側に、スライダユニット20Aの中間部分が配管の内側に、そして、ガイドチューブの手元側が外側に強く押し付けられることでスライダユニット20Aの移動が制限される場合(例えば、図15参照)等がある。なお、同様の現象は、第2のスライダユニット20Bにおいても起こり得るものであり、第1,第2のスライダユニット20A,20Bの後退時においても起こり得る。
【0093】
これらの場合、第1の前側先導機構71A或いは第1の後側先導機構72A(または、第2の前側先導機構71B或いは第2の後側先導機構72B)を構成する先導部材73の摺動面73aの少なくとも何れかが配管100の壁面等に押し当てられていることが多く(例えば、図14,15参照)、摺動面73aに配置された何れかの圧力センサ75により、第1のスライダユニット20A(または、第2のスライダユニット20B)が進行を阻害する外力を配管100から受けていることが検出される。
【0094】
そこで、制御用計算機68は、第1のスライダユニット20Aの移動時、或いは、第2のスライダユニット20Bの移動時において、何れかの圧力センサ75によって所定の信号が検出された場合には、スライドユニット20Aが直管部分からエルボ101等のどの位置にいるのかを判断することが可能となる。そして、位置を知ることで次に行う動作に注意を払うことができるので、エルボ101等でのスムーズな移動をさせることが可能となる。また、ディスプレイ69aやスピーカ69b等の報知部を通じて、第1のスライダユニット20A或いは第2のスライダユニット20Bがエルボ101等において移動不能となっている可能性が高い旨を使用者等に報知する。このような実施形態によれば、配管100の内部に挿入され、流体によって付与される内部圧力に応じて断面形状が弾性変形可能な第1,第2の弾性チューブ10A,10Bと、第1,第2の弾性チューブ10A,10Bの断面形状の変化に応じて第1,第2の弾性チューブ10A,10Bの長手方向に進退移動可能な第1,第2のスライダユニット20A,20Bと、を備えた移動装置1において、第1,第2のスライダユニット20A,20Bが第1,第2の弾性チューブ10A,10B上を進退移動する際に第1,第2のスライダユニット20A,20Bが配管100から受ける外力であって、第1,第2のスライダユニット20A,20Bの進退移動を阻害する外力を検出する圧力センサ75を設けたことにより、配管100内における第1,第2のスライダユニット20A,20Bの状況を的確に把握することができる。
【0095】
この場合において、第1,第2のスライダユニット20A,20Bの各端部に、移動時の第1,第2のスライダユニット20A,20Bを配管100等に対して適正な姿勢となるように誘導(先導)する先導機構(第1の前側先導機構71A、第1の後側先導機構72A、第2の前側先導機構71B、及び、第2の後側先導機構72B)を設け、これら先導機構を構成する先導部材73の摺動面73aに圧力センサ75を設けることにより、第1,第2のスライダユニット20A,20Bの進退移動を阻害する外力を的確に検出することができる。
【0096】
ここで、上述の実施形態においては、先導部材73の摺動面73aにのみ圧力センサ75を設けた構成の一例について説明したが、例えば、図17,18に示すように、圧力センサ75に加え、先導部材73の内周面にも、外力検出部としての圧力センサ80を設けることも可能である。この場合、圧力センサ80は、圧力センサ75よりも端部寄り(すなわち、第1,第2のスライダユニット20A,20Bから離間する側)に設けられていることが望ましい。
【0097】
このように構成すれば、第1,第2のスライダユニット20A,20Bの移動を阻害する配管100からの外力を、より詳細に取得することができる。
【0098】
すなわち、エルボ101等において第1,第2のスライダユニット20A,20Bの移動が阻害されている多くの場合、ガイドチューブユニット5Aが配管100(エルボ101等)の外力を受けて大きく屈曲されている。そして、このガイドチューブユニット5Aの屈曲も第1,第2のスライダユニット20A,20Bの移動を阻害する要因となることが想定される。このような場合、配管100からの外力によって屈曲されたガイドチューブユニット5Aは先導部材73の内周面に強く押し付けられるが、このような押圧力を圧力センサ80によって検出することにより、より詳細に、第1,第2のスライダユニット20A,20Bの移動を阻害する外力を検出することができる。
【0099】
特に、例えば、図19に示すように、配管100のエルボ101等において、ガイドチューブユニット5Aが大きく屈曲されたことのみに起因して、第1のスライダユニット20A(或いは、第2のスライダユニット20B)の移動が阻害されている場合等において、先導部材73の摺動面73aに設けられた圧力センサ75によって圧力が検出されない場合にも、先導部材73の内周面に設けられた圧力センサ80からの信号に基づき、第1のスライダユニット20A(或いは、第2のスライダユニット20B)の移動が阻害されている可能性を使用者等に示唆することができる。
【0100】
さらに、例えば、図20に示すように、各先導部材73における各圧力センサ75,80からの出力と、第1,第2のスライダユニット20A,20Bに予想され得る状態と、を予め実験やシミュレーション等に基づいてマップ化しておけば、第1,第2のスライダユニット20A,20Bがどのような状態で移動不能となっているか等を、使用者等に示唆することができる。
【0101】
なお、図20中における「U(上)」、「L(左)」、「D(下)」、「R(右)」は、例えば、図18に示すように、先導部材73のある方向を基準として各圧力センサ75,80が配置される方向を便宜的に特定するための上下左右方向であり、実際の上下左右方向とは必ずしも一致しない。
【0102】
また、上述の実施形態においては、圧力センサ75の検出信号を、無線通信によって伝送する構成の一例について説明したが、例えば、図21に示すように、信号線81によって伝送する構成を採用することも可能である。
【0103】
この場合、第1のスライダユニット20A(及び、第2のスライダユニット20B)の進退移動を許容するとともに、第1の弾性チューブ10A(及び、第2の弾性チューブ10B)等の弾性変形を許容するため、信号線81は、所定のゆとりを持たせて第1のメッシュチューブ12A(及び、第2のメッシュチューブ12B)の外周に巻き付けられていることが望ましい。
【0104】
また、上述の実施形態においては、先導部材73に作用する圧力を、第1のスライダユニット20A(及び、第2のスライダユニット20B)の進退移動を阻害する外力として検出する構成について説明したが、先導部材73を第1のスライダユニット20A(及び、第2のスライダユニット20B)に弾性的に接続する接続部材74に作用する力を、第1のスライダユニット20A(及び、第2のスライダユニット20B)の進退移動を阻害する外力として検出することも可能である。
【0105】
すなわち、例えば、図22に示すように、コイルスプリングによって構成した接続部材74の外周に外力検出部としての複数の導電ゴム82を配置し、導電ゴム82が伸縮によって変化する抵抗値を計測することにより、第1のスライダユニット20A(及び、第2のスライダユニット20B)に作用する外力を検出することも可能である。
【0106】
また、例えば、図23に示すように、接続部材74を、一対のリング部材83の間に外力検出部としての複数の歪みゲージ84を架設して構成することも可能である。
【0107】
また、例えば、図24に示すように、円筒状をなす異方性導電ゴムによって接続部材74を構成し、異方性導電ゴムの変形量に応じた導通状態を検出することにより、接続部材74自体を外力検出部として作用させることも可能である。
【0108】
また、上述の実施形態においては、先導部材73に作用する圧力を、第1のスライダユニット20A(及び、第2のスライダユニット20B)の進退移動を阻害する外力として検出する構成について説明したが、例えば、図25に示すように、第1のブレーキ30A(及び、第2のブレーキ30B)の前側揺動体32と後側揺動体33とを連結する連結部材38に、外力検出部としての歪センサ85を設けることも可能である。
【0109】
また、上述の実施形態においては、第1の駆動ユニット2Aと第2の駆動ユニット2Bとを備えた移動装置1の構成について説明したが、駆動ユニットの数は2つに限定されるものではなく、3以上の駆動ユニットによって移動装置1を構成することも可能である。例えば、図26に示すように、移動装置1は、第1の駆動ユニット2Aと、第2の駆動ユニット2Bと、第3の駆動ユニット2Cと、を備えて構成することが可能である。なお、第1の駆動ユニット2Aに対応する第3の駆動ユニット2Cの各構成部材等については、図中において、同符号を付して、或いは、末尾を「A」から「C」に置き換えた符号を適宜付して、詳細な説明を省略する。
【0110】
駆動ユニットを3つ以上にするときの動作に関して説明する。エルボを通過する際の個別の駆動ユニットの動作は上述した動作と同じ動作である。それに加えて、駆動ユニットを3つ以上にする場合には、例えば各駆動ユニットがエルボ通過する際にスライダユニットの位置の弾性チューブに対する加圧量を調整する(エルボを通過しようとしている駆動ユニットには加圧せず、空気を入れない)という動作を行う。
つまり、第1の駆動ユニット2Aがエルボを通過するときには、その後方の第2の駆動ユニット2B、第3の駆動ユニット2Cを動作させて、ガイドチューブを前進させる。この時の第1の駆動ユニット2Aに位置する第1の弾性チューブ10Aには空気を入れずに駆動ユニット2Aを柔軟な状態とする。エルボ通過時に駆動ユニットが柔軟な状態であるためにスライダユニットが前後に移動してしまうことを考えるとスライダユニット20Aが前後に動作しない程度に第1の前側圧力室17Aと第2の前側圧力室17Bに空気を入れておく方が良い。若干空気を入れることで駆動ユニットが前後へ移動することを制限する。または、移動方向よりも手元側の圧力室に空気をいれる。例えば、ガイドチューブ5が前進をしているときには、手元側の第2の前側圧力室17Bにスライダユニット20Aが動作せず、しかもエルボの抵抗に対してその位置が変わらない程度に若干空気を入れておく。こうすることで、エルボ通過時の第1の駆動ユニット2Aを柔軟にしてエルボを通過しやすくする。
【0111】
そして、第1の駆動ユニット2Aがエルボを通過したら、次に第2の駆動ユニット2Bの位置の第2の弾性チューブ10Bには空気の加圧を通常よりも少なく調整して、柔軟な状態で第1の駆動ユニット2Aと第3の駆動ユニット2Cを動作させて、ガイドチューブ5を進める。さらに、第2の駆動ユニット2Bがエルボ通過したら、第3の駆動ユニット2Cの位置の第3の弾性チューブ10Cには空気の加圧量を通常よりも少なく調整して、柔軟な状態で第1の駆動ユニット2Aと第2の駆動ユニット2Bを動作させて、残っている第3の駆動ユニット2Cを引っ張ってエルボを通過させる。
【0112】
このように駆動ユニットを3つ以上とすることで、エルボ通過する箇所の駆動ユニットの弾性チューブへの加圧量を通常よりも少なくしても残りの駆動ユニットによってガイドチューブを進行させることができるため、エルボ通過の抵抗が少なくなり、エルボ通過性を向上させることが可能となる。
【0113】
次に、図27は本発明の第2の実施形態に係り、図27は第1の駆動ユニットの斜視図である。ここで、本実施形態は第1のスライダユニット20A(及び、第2のスライダユニット20B)に作用する外力を、ガイドチューブユニット5A上における第1のスライダユニット20Aの位置に基づいて間接的に検出する点が上述の第1の実施形態に対して主として異なる。その他、上述の第1の実施形態と同様の構成については、適宜、同符号を付して説明を省略する。
【0114】
図27に示すように、第1の駆動ユニット2Aにおいて、第1のメッシュチューブ12Aは、主として、絶縁性を有するPET繊維等を網目状に織り込んで構成されている。
【0115】
また、第1のメッシュチューブ12Aの一部には、位置検出部(外力検出部)として、一対の導体87が螺旋状に織り込まれている。これら一対の導体87は所定の電気抵抗率を有しており、これら一対の導体87の中途は、例えば、第1のスライダユニット20Aのローラー26が圧接することによって電気的に短絡することが可能となっている。第1のメッシュチューブに織り込むと、PET繊維と一緒に編み込んだ形状となり、例えば図27Aのように表面に2本平行なところが外側に出た状態となる。この時導体87全体が外部に露出するのではなく、部分的に有る間隔で外に出ることになる。その外に出ている導体87にローラー26が圧接すると、導体87の間で電気的に接続されて、全体の長さの一部に接続が出来ることで抵抗が変化して、位置がスライダの位置の判別が可能になる。導体87がすべて露出していなくても一定間隔で露出させていることでスライダの位置の判別は可能になる(図27B,27C参照)。また、図27Dで示すように、粘着性のテープ87aの上に構成される導体87をメッシュチューブ12の上から貼り付けたものでも良い。また、導体87は2本で一組であり、その間隔はローラー87の幅よりも若干狭く設定されており、1個のローラーで2本の導体を接続可能な構造である。なお、2本の導体の幅を複数のローラーによって接続可能な幅に設定することも可能であり、その場合はローラーの全体を導電体とするとともに、ローラーの回転軸を共通にするなどしてローラーとローラーの間の電気的な接続をする構造としても良い。
【0116】
また、例えば、一対の導体87の基端は、終端部材14に内蔵されたスライダ位置検出用の回路基板88に電気的に接続されている。そして、回路基板88は、ローラー26によって中途が短絡された一対の導体87に対して通電を行い、ローラー26の短絡位置に応じて変化する電流値を計測することにより、第1のスライダユニット20Aの位置を検出する。
【0117】
そして、例えば、制御用計算機68は、回路基板88において検出された第1のスライダユニット20Aの位置と、第1の前側圧力室17A及び第1の後側圧力室18Aに対するエア供給制御を通じた移動制御によって第1のスライダユニット20Aの到達すべき位置(目標位置)との差に基づいて、第1のスライダユニット20Aが進退移動を阻害する外力を配管100から受けていることを間接的に検出することが可能となっている。
【0118】
なお、詳細な説明は省略するが、第2の駆動ユニット2Bについても同様に構成されている。
【0119】
このような実施形態によれば、第1,第2のスライダユニット20A,20Bが配管100等から受ける外力を間接的に検出することにより、上述の第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0120】
さらに、図27E~27Hのように磁石とリードスイッチによるスライダの位置の検出方法も考えられる。
【0121】
図27Fのようにリードスイッチ92は磁石を近づけると封止されている電極が磁化されて接点が接触することで導通されるものである。例えば、フラットケーブル、シート状のフレキの表面に一定間隔でリードスイッチ92を設けて、図示しない手元側の検出器でそれぞれのリードスイッチの接続の有無を判別する構造になっている。そのリードスイッチ92のユニット93(図27E参照)をガイドチューブの可撓チューブ11aの外周面側に設ける(図27G参照)。また、スライダにはスライダの前後の内面側にそれぞれ複数個の永久磁石を設ける。複数個設けることと、前後に設けることでリードスイッチが中心から偏芯している可撓チューブ11aの表面にあっても確実に検出可能な構造となる。また、上記のリードスイッチのユニットを内視鏡挿入部の外側に巻き付けて、ガイドチューブの可撓チューブ11aのチャンネル11Aに挿通して使用しても良い。
【0122】
さらに、永久磁石をスライダのボディの内側に設ける以外に、ローラーを磁石とすることでも良い。ローラーはガイドチューブに接触した状態になっており、よりガイドチューブに近い位置で設けることが出来ることで、検出精度を向上させることができる。
【0123】
或いは、チャンネル5aに挿通される内視鏡7の挿入部の外周面側にリードスイッチ92のユニット93を設けることも可能である。
【0124】
さらに、図27Hのように可撓チューブ11Aを複数のチャンネル(ここでは2つ)を有するマルチルーメンチューブとして、1つを内視鏡挿入孔用として、もう1つもリードスイッチ92用としても良い。この場合、チャンネルを3つ、4つとしても良い。例えば、1つを内視鏡用、もう1つをリードスイッチ92用、さらに処置を行う処置用等を設けても良い。さらに、処置用の処置具で異物回収を行う場合には、処置具の表面に永久磁石を設けることでガイドチューブ内の処置具の位置の検出が出来、ガイドチューブからどのくらいの長さが出ているかを判別可能になり、作業性が向上する。
【0125】
ここで、例えば、図28に示すように、第1,第2の前側流体供給管15A,15B、及び、第1,第2の後側流体供給管16A,16Bに、位置検出部(外力検出部)として、エアの圧力を検出するための圧力センサ89A,89B,90A,90Bを設け、第1のスライダユニット20A、及び、第2のスライダユニット20Bの位置を、移動制御時の圧力変化に基づいて検出することも可能である。
【0126】
すなわち、例えば、第1のスライダユニット20Aを基端側から先端側へと移動させる際には、第1の後側圧力室18Aに対してエアが供給されるが、このとき圧力センサ90Aによって検出されるエアの圧力は、第1のスライダユニット20Aが移動している間(すなわち、第1の後側圧力室18Aの容積が拡張している間)、レギュレータ66による制御圧P(例えば、P1)以下で推移する。
【0127】
そして、第1のスライダユニット20Aの移動が停止し、第1の後側圧力室18Aの容積の拡張が終了すると、圧力センサ90Aによって検出されるエアの圧力は、一時的に上昇した後、制御圧Pに収束する。
【0128】
この場合において、例えば、図29に示すように、第1のスライダユニット20Aの移動が外力等によって中途で阻害されると、通常の時間よりも速く圧力のピークを迎え、且つ、その際の容積も小さいため通常時のピークよりも大きくなる。
【0129】
従って、このような圧力推移を制御用計算機68等において監視することにより、第1のスライダユニット20Aに作用する外力を間接的に検出することが可能となる。
【0130】
また、例えば、図30に示すように、第1の可撓チューブ11A(及び、第2の可撓チューブ11B)上に、位置検出部(外力検出部)として、複数の圧力センサ91を所定間隔毎に配置し、各圧力センサ91で検出した圧力に基づいて第1のスライダユニット20Aの位置を検出することも可能である。
【0131】
すなわち、例えば、図30に示すように、第1のスライダユニット20Aを基端側から先端側へと移動させる際には、第1の後側圧力室18Aに対してエアが供給され、このエアによって第1の後側圧力室18Aの容積が拡張し、拡張した第1の後側圧力室18A内に露呈された圧力センサ91の圧力が制御圧Pまで上昇する。従って、どの位置に配置された圧力センサ91の圧力が上昇したかを制御用計算機68等において監視することにより、第1のスライダユニット20Aの位置を検出することができ、当該第1のスライダユニット20Aの目標位置と実際の位置との比較により、第1のスライダユニット20Aに作用する外力を間接的に検出することができる。
【0132】
また、圧力センサの代わりに歪ゲージを配置しても良い。前側圧力室17A、後側圧力室18Aに空気が入ると可撓チューブ11Aと弾性チューブ10Aとが離れるのでセンサ出力の変化がある。さらに、スライダユニットのローラが移動した時の接触状態を検出することでも判断できる。この2つの状態を複合的に検知すればより正確に位置がわかる。
【0133】
さらに、図30Aのように供給する空気を電空レギュレータで圧力制御を行い、供給した流体の流量と圧力を検出して、解析を行うことでスライダユニットの配管内での動きをモニタリングすることも可能である。例えば図30Bのように配管内でスライダの前後に加圧し、スライダユニットのブレーキ部30Aを作動させて、配管を把持する場合、図中のスライダで左右の第1の前側圧力室17A、第1の後側圧力室18Aに加圧を行うと、はじめに急激に設定の圧力まで流量は増加を行うが、その後流量は減少して、流量はゼロ付近まで減少する。このとき流量はゼロ付近まで減少するが、配管をホールドできた状態を保っている。入力部で配管のサイズ、配管の向き(水平、上昇、下降等)等を考慮して圧力を設定し、入力情報に応じた流量を制御することで確実に配管をホールド可能になる。
【0134】
図30Cは配管内でスライドユニットを動作させる場合である。この場合、第1の後側圧力室18Aを加圧すると図30Bと同じように急激に圧力が上昇するのは同じである。しかし、スライダがガイドチューブの表面を移動するため流量を少しずつ加えているため、流量の落ち方が緩やかである。このときの圧力に応じた流量の変化を確認することでスライダが安定して移動しているのか、それとも何かで当たって動きが止まっている、もしくは動きにくくなっていることが分かる。つまり、スライダが止まっているときには図30Bのように流量が急激に上昇したのちゼロ付近まで減少するが、スライダが動いている場合は流量がゼロ付近までは落ちずに若干流量がある。この違いでスライダの動きを判断可能であり、止まっているのか動いているのかが分かる。
【0135】
さらに、図30Dは配管内でガイドチューブを押し出していく動作である。まず配管をホールドする動作は図30Bと同じような動作になり、その後、第1の前側圧力室17A、第1の後側圧力室18Aの流量を調整して、第1の前側圧力室17Aの流量を若干多くすることでガイドチューブを進めることができる。
【0136】
さらに、図30E図30Fでは流量を確認することでエルボ通過時の状況の判断ができる。エルボに引っ掛かるときには、スライダユニットの移動が規制されることになるので、前述した図30Bのように配管内をホールドしたような流量の動きになる。図30Fのように急激に流量の上昇後、ゼロに近い流量になる。内視鏡画像で先端がエルボを通過後、スライダがどのようになっているのかを判断できる。また流量がゼロにならずに有る程度増減を繰り返した状態になればエルボを通過していることがわかる。
以上のように流量が増加して圧力を設定圧力まで上昇した後の流量の増減の状態を把握することで配管内のどの状態にスライダがあるのかの判断が可能となる。
【0137】
次にスライダのガイドチューブのどの位置にあるのかを判別する方法として、流量と圧力から判断することも可能である。例えば、設定した圧力に応じた流量を供給することで弾性チューブの膨張量が推定でき、これから弾性チューブの膨張したときの外径が推定される。スライダは弾性チューブの膨張があるサイズになったときに移動することが可能であることから、流量と圧力から容積を計算することでスライダの移動先が計算できる。しかし、スライダはチューブを移動するときにその場所で抵抗が変化する。例えば、スライダが移動すると図30Gのように進行方向のメッシュが弛み等によって膨らみスライダの抵抗が変化する。チューブの中央部付近に比べて両サイドに行くほど抵抗が増える。この場所による抵抗を考慮して、加圧するときの流量の補正をすることでおおよその位置の推測が可能となる。チューブの中央部付近と両側の3等分を行い、中央部に比べて両側の流量の増加分の係数をかけることでおおよその位置推定を可能とする。連続的に非線形に係数を変化させたものとしても良い。
【0138】
さらに、別の方法で流量およびそのときの圧力を測定することでスライダユニット20Aの駆動ユニット2Aにおける位置を確認することが可能となる。つまり、スライダを移動させる場合の第1の前側圧力室17Aまたは第2の前側圧力室17Bの大きさはスライダユニットの位置によって変わる。例えば第2の前側圧力室17Bに対して空気を供給してスライダユニットを前方に進めるときに、スライダユニットが手元側にあるときには前側圧力室17Bの容積が少なくなり、供給する空気量に対する圧力の上昇スピードが速くなる。またスライダユニットが前側に位置するときに前側圧力室17Bに空気を供給してさらに前側に移動させようとするときには、供給する空気量に対する圧力上昇のスピードが遅くなる。この圧力センサと流量センサの出力を前後の圧力室のところで確認することでスライダユニットの位置を確認することができる。
以上のように構成することで、手元側でスライドユニットの状態を把握することができ、センサのための配線がなくなり、スライドユニットの構造をシンプルにすることができる。
【0139】
次に、図31乃至図37は開示例に係り、図31図34は配管内に挿入された移動装置を模式的に示す説明図、図35は直線状の管路内における内視鏡画像を模式的に示す説明図、図36はエルボの手前の管路における内視鏡画像を模式的に示す説明図、図37は移動装置の移動手順を示すフローチャートである。ここで、本開示例は、エルボ101の長さ等が既知である所定規格の配管100に対して移動装置1を用いる場合について開示するものである。なお、上述の第1の実施形態と同様の構成については、適宜、同符号を付して説明を省略する。
【0140】
図31に示すように、本開示例の移動装置1において、第1のスライダユニット20Aが移動可能な距離Sは、エルボ101の長さL1と、第1のスライダユニット20A(の長さをL2と、の和となるように設定されている。
【0141】
そして、このように長さが設定された移動装置1を用いて、例えば、図37に示す移動制御を行うことにより、第1のスライダユニット20Aは、一度の移動により、エルボ101を通過することが可能となっている。
【0142】
この移動制御は、例えば、制御用計算機68に予め設定したプログラム等に従って行われるものであるが、使用者等が操作入力を行うことにより実現することも可能である。
【0143】
この移動で順では、先ず、配管100内に移動装置1の第1,第2の駆動ユニット2A,2Bが挿入された状態において、現在、第1の駆動ユニット2Aがエルボ101に接近しているか否かが判定される(ステップS201)。
【0144】
すなわち、制御用計算機68は、内視鏡7(図2参照)により取得した画像を解析することにより、第1の駆動ユニット2Aがエルボ101に接近しているか否かを調べる。
【0145】
具体的には、第1の駆動ユニット2Aがエルボ101から所定以上遠方の直線状の配管100内にある場合、例えば、図35に示すように、内視鏡7により撮像された画像の略中央に暗部が検出される。一方、第1の駆動ユニット2Aがエルボ101の近傍にある場合、例えば、図36に示すように、内視鏡7により撮像された画像の中央から偏倚した位置に暗部が検出される。これらの特徴に基づき、制御用計算機68は、第1の駆動ユニット2Aがエルボ101に接近したか否かを判断する。
【0146】
そして、ステップS201において、制御用計算機68は、エルボ101への接近を検出した場合にはステップS202に進み、エルボ101への接近を検出していない場合にはステップS210に進む。
【0147】
ステップS201からステップS202に進むと、制御用計算機68は、移動装置1の制御モードを予め設定されたエルボ通過モードに切り換えた後、ステップS203に進む。
【0148】
そして、ステップS203において、制御用計算機68は、電空比例弁67への制御を通じて第2のスライダユニット20Bの第2のブレーキ30Bを作動させる。
【0149】
続くステップS204において、制御用計算機68は、第2のブレーキ30Bを作動させたままの状態で、電空比例弁67への制御を通じて第1のスライダユニット20Aをエルボ101の入口まで移動させる。
【0150】
続くステップS205において、制御用計算機68は、電空比例弁67への制御を通じて、第1のスライダユニット20Aの第1のブレーキ30Aを作動させた後、第2のブレーキ30Bを解除する(図32参照)。
【0151】
続くステップS206において、制御用計算機68は、第1のブレーキ30Aを作動させたまま、電空比例弁67への制御を通じて、第1のスライダユニット20Aに対してガイドチューブユニット5Aを先端側に移動させる(図33参照)。
【0152】
続くステップS207において、制御用計算機68は、電空比例弁67への制御を通じて、第2のブレーキ30Bを作動させる。
【0153】
続くステップS208において、制御用計算機68は、電空比例弁67への制御を通じて、第1のスライダユニット20Aをガイドチューブユニット5Aの先端側に移動させる。
【0154】
そして、制御用計算機68は、ステップS209において、第1のスライダユニット20Aがガイドチューブユニット5Aの先端側に到達したか否かを調べ、未だ到達していないと判断した場合には、ステップS208の制御を維持する。
【0155】
一方、ステップS209において、第1のスライダユニット20Aがガイドチューブユニット5Aの先端側に到達したと判断した場合(図34参照)、制御用計算機68は、ステップS210に進む。
【0156】
ステップS201、或いは、ステップS209からステップS210に進むと、制御用計算機68は、通常移動モーとによる制御を実行した後、ルーチンを抜ける。なお、この通常移動モードによる制御では、例えば、図16で示した制御が行われる。
【0157】
このような開示例によれば、ガイドチューブユニット5A上における第1のスライダユニット20Aが移動可能な距離Sを適正化することにより、一度の移動により、エルボ101に対する第1のスライダユニット20Aの通過を実現することができる。
【0158】
なお、本発明は、以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲内である。例えば、上述の各実施形態、及び、各変形例の構成を適宜組み合わせてもよいことは勿論である。
【0159】
ここで、制御用計算機68は、1個又は複数のプロセッサ、論理回路、メモリ、入出力インタフェース及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体などからなるコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、各構成要素もしくは本体部全体の機能を実現するためのプログラムを記録媒体に記録しておき、記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。例えば、 プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、およびGPU(Graphics Processing Unit)の少なくとも1つである。例えば、論理回路は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)およびFPGA(Field-Programmable Gate Array)の少なくとも1つである。
【符号の説明】
【0160】
1 … 移動装置
2A … 第1の駆動ユニット
2B … 第2の駆動ユニット
2C … 第3の駆動ユニット
4 … 流体調整部
5 … ガイドチューブ
5A … ガイドチューブユニット
5a … チャンネル
7 … 内視鏡
10A … 第1の弾性チューブ
10B … 第2の弾性チューブ
11A … 第1の可撓チューブ
11B … 第2の可撓チューブ
11a … チャンネル
12A … 第1のメッシュチューブ
12B … 第2のメッシュチューブ
13 … 先端側終端部材
13a … テーパ面
14 … 終端部材
14a … 蓋体
15A … 第1の前側流体供給管
15B … 第2の前側流体供給管
16A … 第1の後側流体供給管
16B … 第2の後側流体供給管
17A … 第1の前側圧力室
17B … 第2の前側圧力室
18A … 第1の後側圧力室
18B … 第2の後側圧力室
19 … 基端側終端部材
20A … 第1のスライダユニット
20B … 第2のスライダユニット
21A … 第1の前側スライダ
21B … 第2の前側スライダ
21a … ガイド用突起
21b … ガイド溝
22A … 第1の後側スライダ
22B … 第2の後側スライダ
22a … ガイド用突起
22b … ガイド溝
23A … 第1のコイルスプリング
23B … 第2のコイルスプリング
25 … スライダ本体
26 … ローラー
26a … 転動面
30A … 第1のブレーキ
30B … 第2のブレーキ
31 … ブレーキ部材
32 … 第1の前側揺動体
32a … 爪カバー
33 … 第1の後側揺動体
33a … 爪カバー
34 … 軸部
35 … 軸部
36 … 係止爪部
37 … 係止爪部
38 … 連結部材
40 … ストッパリング
41 … リーク孔
65 … コンプレッサ
66 … レギュレータ
67 … 電空比例弁
68 … 制御用計算機
69a … ディスプレイ
69b … スピーカ
71A … 第1の前側先導機構
71B … 第2の前側先導機構
72A … 第1の後側先導機構
72B … 第2の後側先導機構
73 … 先導部材
73a … 摺動面
73b … 蓋体
74 … 接続部材
75 … 圧力センサ
76 … 送信基板
77 … バッテリ
78 … 受信基板
79 … バッテリ
80 … 圧力センサ
81 … 信号線
82 … 導電ゴム
83 … リング部材
84 … 歪みゲージ
85 … 歪センサ
87 … 導体
88 … 回路基板
89A,89B,90A,90B … 圧力センサ
91 … 圧力センサ
100 … 配管
101 … エルボ
102 … 段差
図1
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