(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】医療用酸素供給装置
(51)【国際特許分類】
A61M 16/00 20060101AFI20220929BHJP
F16K 31/60 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A61M16/00 380
F16K31/60 B
(21)【出願番号】P 2019018516
(22)【出願日】2019-02-05
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】595099960
【氏名又は名称】株式会社群馬コイケ
(73)【特許権者】
【識別番号】591027008
【氏名又は名称】株式会社小池メディカル
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】特許業務法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩井 晃二
(72)【発明者】
【氏名】高野 英一
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-105384(JP,A)
【文献】米国特許第4119295(US,A)
【文献】米国特許第3947942(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0021393(US,A1)
【文献】特開2015-222114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
F16K 31/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用酸素を流通させる開口部を有する医療用酸素ボンベの口金に取り付けられて患者に医療用酸素を供給する医療用酸素供給装置であって、
医療用酸素ボンベの口金を挿通する穴を有する取付部材と、
前記取付部材に配置され、該取付部材の穴に挿通した医療用酸素ボンベの口金を一方向に押圧する押圧部材と、
前記取付部材に、該取付部材に配置された押圧部材と対向して配置され、医療用酸素の圧力を調整する圧力調整機構を収容した本体と、
前記本体に配置され、医療用酸素ボンベの口金に設けた開口部に嵌合して医療用酸素が供給されるノズルと、
医療用酸素ボンベの口金に設けた開口部と前記ノズルとの間に配置されたリング状のパッキンと、を有し、
前記押圧部材は、医療用酸素ボンベの口金に当接して押圧する押圧体と、該押圧体の一方の端部に配置された操作ハンドルを有しており、該操作ハンドルは天板部と、該天板部の中央に形成され押圧体が配置された押圧体取付部と、該天板部の周縁から押圧体側に垂下した垂下部と、該垂下片部と前記押圧体取付部との間に形成され前記パッキンを保持するパッキン保持部と、を有して構成されていることを特徴とする医療用酸素供給装置。
【請求項2】
前記押圧部材に形成されたパッキン保持部は、前記リング状のパッキンに形成された穴と嵌合する嵌合突起片と、前記嵌合突起に形成され該嵌合突起に嵌合したリング状のパッキンの一方の面と当接して係止する係止爪と、前記リング状のパッキンの一方の面が当接され該リング状のパッキンの外周部位に対応する位置に切欠部が形成された当接片と、を有して構成されていることを特徴とする請求項1に記載した医療用酸素供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用酸素ボンベの口金に取り付けて患者に医療用酸素を供給する医療用酸素供給装置に関し、特に、操作ハンドルに予備のパッキンを保持し得るようにした医療用酸素供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
病室で医療用酸素ボンベを起立させて、或いはカートに搭載して移動しつつ、患者に医療用酸素を供給することが行われる。医療用酸素ボンベに充填された医療用酸素は、医療用酸素供給装置によって所定の圧力に減圧され、該医療用酸素供給装置に取り付けたカニューラを経由して患者に供給される。
【0003】
医療用酸素ボンベの口金に装着される一般的な医療用酸素供給装置は、医療用酸素ボンベの口金に装着するための取付部材と、医療用酸素ボンベに充填された高圧の医療用酸素を減圧する減圧機構及び流量を調整する調節機構を内臓したケーシングと、を有して構成されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された酸素供給装置は、患者の吸気に同調させて医療用酸素を供給するものである。この酸素供給装置は、ケーシングの端部に一体的に設けられた略ロ字状の取付部材を介してボンベの口金に装着され、止めねじによって固定し得るように構成されている。ケーシングに於けるボンベの口金に形成された開口部と対向する位置には、該開口部に嵌合して該ボンベに充填された高圧の医療用酸素の供給を受けるノズルが構成されている。ノズルにはパッキンが配置されており、該ノズルを口金に形成された開口部に嵌合して医療用酸素を供給する際に生じる虞のある医療用酸素の漏洩を防いでいる。
【0005】
そして、ケーシングの内部には、高圧の医療用酸素を減圧する減圧部、減圧された医療用酸素を患者に供給又は停止する開閉部、患者の吸気に応じて開閉部を開閉する制御部、が配置されている。そして、減圧部と開閉部との間に配置されたオリフィスプレートを操作することで、医療用酸素の流量を設定し得るように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された酸素供給装置に代表される一般的な医療用酸素供給装置は、頻繁に医療用酸素ボンベに着脱されるため、パッキンには加力、脱力が繰り返して作用することとなり消耗し易い。このため、常に予備のパッキンを備えておくことが必要となる。
【0008】
予備のパッキンは、医療用酸素供給装置の近くに備えられていることが好ましい。このため、パッキンに形成された穴にチェン或いは紐を挿通し、このチェン或いは紐を介してケーシングに取り付けた圧力計などに結び付けておくことで、予備のパッキンとしているのが一般的である。
【0009】
上記の如くして予備のパッキンを備えた医療用酸素供給装置では、予備のパッキンがぶら下がるようになり、患者に酸素を供給する際に行う操作がし難くなるという問題や、チェン或いは紐の破断による予備のパッキンの紛失などの問題が生じる虞がある。
【0010】
本発明の目的は、予備のパッキンを確実に保持し得るようにした医療用酸素供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明に係る代表的な医療用酸素供給装置は、医療用酸素を流通させる開口部を有する医療用酸素ボンベの口金に取り付けられて患者に医療用酸素を供給する医療用酸素供給装置であって、医療用酸素ボンベの口金を挿通する穴を有する取付部材と、前記取付部材に配置され、該取付部材の穴に挿通した医療用酸素ボンベの口金を一方向に押圧する押圧部材と、前記取付部材に、該取付部材に配置された押圧部材と対向して配置され、医療用酸素の圧力を調整する圧力調整機構を収容した本体と、前記本体に配置され、医療用酸素ボンベの口金に設けた開口部に嵌合して医療用酸素が供給されるノズルと、医療用酸素ボンベの口金に設けた開口部と前記ノズルとの間に配置されたリング状のパッキンと、を有し、前記押圧部材は、医療用酸素ボンベの口金に当接して押圧する押圧体と、該押圧体の一方の端部に配置された操作ハンドルを有しており、該操作ハンドルは天板部と、該天板部の中央に形成され押圧体が配置された押圧体取付部と、該天板部の周縁から押圧体側に垂下した垂下部と、該垂下片部と前記押圧体取付部との間に形成され前記パッキンを保持するパッキン保持部と、を有して構成されているものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る医療用酸素供給装置(以下「酸素供給装置」という)では、操作ハンドルの垂下部と押圧体取付部との間にパッキン保持部を設けたので、このパッキン保持部に予備のパッキンを保持させることができる。このため、予備のパッキンが酸素供給装置の外部にぶら下がることがなく、操作性を阻害したり、予備のパッキンを紛失するようなことがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施例に係る酸素供給装置の構成を説明する外観図である。
【
図2】本実施例に係る酸素供給装置の構成を説明する断面図である。
【
図3】本実施例に係る操作ハンドルの構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る酸素供給装置は、医療用酸素ボンベ(以下「ボンベ」という)の口金に取り付けられ、該ボンベから供給された医療用酸素を所定の圧力に減圧させて患者に供給するものである。この酸素供給装置は、本体部に形成されたノズルをリング状のパッキンを介してボンベの口金に形成された開口部に嵌合させることで、酸素の漏洩を防ぐことが可能である。
【0015】
特に、操作ハンドルにパッキン保持部を設けたので、消耗品であるパッキンの予備品をパッキン保持部に保持しておくことで、予備のパッキンを外部に露出させることなく、確実に保持し得るように構成されている。このため、操作性を阻害することなく、患者に対する医療用酸素の供給を行うことが可能となる。
【0016】
本実施例に係る酸素供給装置Aの構成について説明するのに先立って。酸素供給装置Aに用いるパッキン1の構成について
図4により説明する。図に示すパッキン1は、後述する酸素供給装置Aの本体部15に形成されたノズル16の径や深さ、及びボンベ(図示せず)の口金2(
図1に二点鎖線で示す)に形成された図示しない開口部の径、などの条件に対応させて予め設定された寸法を有している。
【0017】
パッキン1は、弾性を有し且つ酸素による劣化が少ないゴムなどによって形成されている。パッキン1の中心にはノズル16が挿通される穴1aが形成されている。また、厚さ方向の両面にはリング状の突起1bが形成されており、外周部位にはメッキがほどこされている。
【0018】
上記パッキン1は穴1aを介して酸素供給装置Aのノズルに16装着され、ボンベの口金2に形成された開口部に取り付けられる際には、両面の突起1bがノズル側と開口部側の平面部分に夫々接触して押圧される。従って、ボンベに充填された医療用酸素を酸素供給装置に供給する際に、開口部とノズル16との接合部位から医療用酸素が漏洩することがない。
【0019】
次に、酸素供給装置Aの構成について
図1~
図3により簡単に説明する。酸素供給装置Aは、ボンベの口金2に取り付けられ、該口金2に形成された図示しない開口部を介してボンベに充填された医療用酸素が供給され、供給された医療用酸素を減圧して患者に供給し得るように構成されている。
【0020】
酸素供給装置Aは、ボンベの口金2に取り付けるための取付部材10と、取付部材10と一体的に構成された本体15とを有して構成されている。取付部材10は略ロ字状に形成されており、中央にボンベの口金2を挿通するための穴10aが形成されている。取付部材10の本体15と対向する位置には、ボンベの口金2に取り付けたとき、該口金2を一方向に押圧するための押圧体となるねじ11と操作ハンドル12とからなる押圧部材13が配置されている。
【0021】
従って、取付部材10の穴10aを介してボンベの口金2を挿通し、押圧部材13の操作ハンドル12を操作してねじ11によって口金2を押圧することで、酸素供給装置Aをボンベの口金2に取り付けることが可能である。また、操作ハンドル12を操作してねじ11による口金2の押圧を解除することで、酸素供給装置Aを口金2から取り外すことが可能である。
【0022】
本体15には、酸素供給装置Aを取付部材10を介してボンベの口金2に取り付けたとき、該口金2に形成された開口部に嵌合し、該口金2に形成されたバルブを開放したときに医療用酸素が供給されるノズル16が設けられている。このノズル16はボンベの口金2に形成された開口部に嵌合する突起部16aを有しており、該突起部16aにリング状のパッキン1が着脱可能に取り付けられている。
【0023】
本体15には、ボンベから供給された高圧の医療用酸素を患者に適用するための圧力まで減圧する減圧機構が収容されている。この減圧機構の構造を限定するものではなく、通常の酸素供給装置に利用されている減圧機構をそのまま用いることが可能である。また、本体15に減圧機構に加えて流量調整機構を収容しても良いことは当然である。
【0024】
本実施例では、減圧機構は医療用酸素が供給されるノズル16から患者に対して医療用酸素を供給するカニューラの接続口17に至る間に形成された通路18に配置されたダイヤフラム18a、ケレップ18bを有して構成されている。また、通路18には圧力計18cが配置されており、該圧力計18cによってボンベに充填された医療用酸素の圧力を確認し得るように構成されている。
【0025】
次に、パッキン1を保持するパッキン保持部14の構成について具体的に説明する。パッキン保持部14は押圧部材13を構成する操作ハンドル12に形成されている。この操作ハンドル12は厚みを有する円板状に形成されており、一方側の面の中心に押圧体となるねじ11が配置されている。
【0026】
操作ハンドル12は、天板部となる天板12aと、この天板12aの中央部分に形成されねじ11を取り付けるための押圧体取付部となるボス状の取付部12bと、天板12aの周縁からネジ11と同じ方向に垂下した垂下部となる垂下片12cと、取付部12bと垂下片12cの間に形成されたパッキン保持部14と、を有して構成されている。
【0027】
操作ハンドル12に形成された取付部12bの外周面と垂下片12cの内周面との間の寸法はパッキン1の外径よりも僅かに大きく形成されている。また、取付部12bと垂下片12cを接続して複数のリブ12dが放射状に形成されている。そして、前記リブ12dを利用してパッキン保持部14が形成されている。
【0028】
パッキン保持部14は、複数のリブ12dの中から選択された一本のリブ12d1と、選択されたリブ12d1に隣接する2本のリブ12d2を利用して構成されている。リブ12d1に於けるパッキン1の穴1aに対応する位置に、該穴1aに嵌合する嵌合突起14aが形成されている。また、2本のリブ12d2とリブ12d1を結んで円弧状に当接片14bが形成されている。
【0029】
リブ12d1の天板12aからの高さ、及び当接片14bの高さは、他のリブ12dよりもパッキン1の厚さ分よりも低く形成されている。更に、リブ12d1のパッキン1の外周部位に対応する位置には、指を差し込むことが可能なように切欠部14cが形成されている。
【0030】
パッキン保持部14を構成する嵌合突起14aの自由端側には、係止爪14dが形成されている。この係止爪14dは、パッキン1の穴1aを嵌合突起14aに挿通したとき、該パッキン1の一方側の面に当接して係止するものであり、リブ12d1、当接片14bの自由端との間にパッキン1の厚さよりも大きい寸法を有する位置に形成されている。また、係止爪14dの嵌合突起14aの外周面からの突出寸法は、該嵌合突起14aにパッキン1を嵌合したときに、該パッキン1の穴1aと当接し得る寸法を有している。
【0031】
上記の如く構成されたパッキン保持部14では、パッキン1の穴1aを嵌合突起14aに嵌合させて天板12a方向に押し込むことで、該パッキン1は係止爪14dを乗り越えてリング状の突起1bがリブ12d1、当接片14bに当接する。このため、パッキン1はリブ12d1、当接片14bと係止爪14dとの間に挟まれて保持され、パッキン保持部14から離脱することなく、操作ハンドル12の天板12a、垂下片12cの隠れることとなる。
【0032】
また、パッキン保持部14に保持したパッキン1を取り外す際にリブ12d1に指を差し込んだとき、この指先が切欠部14cに入り込むことで、天板12a側からパッキン1に力を加えて容易に取り外すことが可能である。
【0033】
本実施例では嵌合突起14aに形成した係止爪14dによってパッキン1をパッキン保持部14に保持し得るように構成したが、必ずしもこの構成に限定するものではなく、嵌合突起14aの外径をパッキン1の穴1aの径よりも僅かに大きくしても良い。この場合、パッキン1の穴1aの内周面と嵌合突起14aの外周面との接触摩擦によって、パッキン1を保持することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る酸素供給装置Aは、高圧酸素が充填されたボンベを酸素の供給源とし、該ボンベの口金に着脱し得るようにした医療用酸素供給装置に利用して有利である。
【符号の説明】
【0035】
A 酸素供給装置
1 パッキン
1a 穴
1b 突起
2 口金
10 取付部材
10a 穴
11 ねじ
12 操作ハンドル
12a 天板
12b 取付部
12c 垂下片
12d、12d1、12d2
リブ
13 押圧部材
14 パッキン保持部
14a 嵌合突起
14b 当接片
14c 切欠部
14d 係止爪
15 本体
16 ノズル
16a 突起部
17 接続口
18 通路
18a ダイヤフラム
18b ケレップ
18c 圧力計