(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】換気用貫板、およびこれを用いた換気屋根
(51)【国際特許分類】
E04D 13/16 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
E04D13/16 E
E04D13/16 S
(21)【出願番号】P 2018079483
(22)【出願日】2018-04-17
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】518135283
【氏名又は名称】株式会社芝田板金
(74)【代理人】
【識別番号】100129159
【氏名又は名称】黒沼 吉行
(72)【発明者】
【氏名】芝田 光明
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-170615(JP,U)
【文献】特開2008-088757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根構造に使用される貫板であって、
当該貫板の長さ方向
に交差する向きの換気溝を、当該貫板の長さ方向に所定の間隔で形成してな
り、
前記長さ方向に沿う長尺面に設けられた換気溝は、少なくとも何れかの長尺面に設けられた換気溝が、貫板の底面に向かって深くなるように傾斜していることを特徴とする換気用貫板。
【請求項2】
前記換気溝は、その上面と、長さ方向に沿う長尺面に設けられており、何れかの長尺面から他の長尺面に至るまで連通状に形成されている請求項1に記載の換気用貫板。
【請求項3】
前記換気溝の溝幅は、当該換気溝の形成間隔と異なっている、請求項1
又は2に記載の換気用貫板。
【請求項4】
請求項1~
3の何れか一項に記載の換気用貫板を、屋根を構成する野地板又は野縁に設置すると共に、当該貫板を棟包で包囲し、
当該換気用貫板に形成された換気溝を介して屋根裏の空気を外に排出することを特徴とする換気屋根。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物の屋根部における換気を実現するために好適に使用できる換気用貫板、およびこれを用いた換気屋根に関する。特に、施工時における煩雑さを無くして、施工も容易でありながらも、屋根部における換気を実現可能とした換気用貫板、およびこれを用いた換気屋根に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住居などの建築物においては、屋根裏に溜まる湿気や熱気を屋外に排出する目的で、該屋根部乃至は屋根裏空間に換気構造を設けることが行われている。
【0003】
そして従前において、建築物の屋根面の棟部に設置し、屋根裏内の換気を行うために用いられる棟カバー材として、特許文献1(特開平2-272153号公報)に係る棟カバー材が提案されている。この棟カバー材は、棟方向に延びた二枚の板状の棟換気部材からなりその断面形状が略逆V字形を呈する如く構成され、各棟換気部材は上面から下面に向って先細に形成されるとともに、各棟換気部材には一側面から他側面まで多数の連通した通気孔が設けられている。かかる棟カバー材を屋根の棟部に上方よりかぶせて取り付けることにより、壁を通して浸透してくる湿った空気は外壁と内壁間の通気層および軒下有孔板、さらに屋根裏を通って棟部に設置した棟カバー材に到達した後、棟カバー材に設けられた通気孔内を通って室外に排出され、一方で雨を伴った強風時において、棟カバー材の通気孔を介して室外から雨が侵入し、屋根裏に水滴となって落下することがないものとして提案されている。
【0004】
また、特許文献2(特開平8-128148号公報)では、屋根における棟木に関し、棟木に換気のための手段を直接に施すことにより、屋根裏の換気に簡易に対応することができる棟木を提案している。この棟木は、垂木が位置される間に屋根裏から屋根の下地部材が張着される上面に抜ける通気用の換気通路をその長さ方向に所定の間隔で複数個形成したものとして提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平2-272153号公報
【文献】特開平8-128148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の通り従前においても屋根裏(小屋裏)の換気を行う為の棟カバー材や棟木は提案されている。しかしながら、前記特許文献1で提案されている棟カバー材は、野地板の上に被せた上で、更に棟板(貫板)を上から釘打し固定する必要があった。この為、屋根の棟部分には、棟カバー材と棟板(貫板)とが積層した分の高さの出っ張りが生じてしまい、これを覆う為の棟板金を必要とするものとなっていた。
【0007】
また前記特許文献2の技術は、垂木が位置される間に屋根裏から屋根の下地部材が張着される上面に抜ける通気用の換気通路をその長さ方向に所定の間隔で複数個形成しており、これにより屋根裏から屋根の下地部材の外側への通気路を確保している。しかしながら、この技術では屋根の下地部材の外側からの排出方法は提案されていないことから、実質的に屋根裏の湿気や熱気を屋外に排出するのは困難であると考えられる。
【0008】
そこで本発明は、施工が容易であり、且つ設置部分(棟部分など)の出っ張りを少なくした換気用貫板を提供すると共に、これを用いた換気屋根を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明では建築物における屋根部の構造材である貫板に、屋根裏から屋外に通じる通気用の溝(換気溝)を形成し、当該換気溝によって屋根裏に溜まった空気を換気することにより、屋根裏に溜まる湿気や熱気を排出できるようにした換気用貫板、およびこれを用いた換気屋根を提供するものである。
【0010】
即ち本発明では、前記課題を解決するべく、屋根構造に使用される貫板であって、当該貫板の長さ方向に交差する向きの換気溝を、当該貫板の長さ方向に所定の間隔で形成した換気用貫板を提供する。
【0011】
特に前記換気溝は、前記換気用貫板の上面と、長さ方向に沿う長尺面に設けることが望ましく、当該換気溝は、何れかの長尺面から上面を通って他の長尺面に至るまで連通状に形成されていることが望ましい。かかる換気溝は、少なくとも空気の移動を可能にする大きさであれば良く、その深さや広さは通気性を確保できる限りにおいて任意に設定することができる。
【0012】
また前記長さ方向に沿う長尺面に設けられた換気溝は、少なくとも何れかの長尺面に設けられた換気溝が、貫板の底面に向かって深くなるように傾斜状に形成するのが望ましい。
【0013】
また前記換気溝の溝幅は、当該換気溝の形成間隔と異なるように形成するのが望ましい。即ち換気溝の溝幅を、当該換気溝の形成間隔よりも広く又は狭く形成するのが望ましく、特に換気溝の溝幅を当該換気溝の形成間隔よりも狭く形成するのが望ましい。
【0014】
上記本発明に係る換気用貫板は特に建築物の屋根部材として使用することが望ましいが、その他にも建築物における壁面を構成する部材として使用することもでき、更に通気乃至は換気を必要とする様々な部位に使用することができる。
【0015】
また本発明では、前記課題を解決するために、上記本発明に係る換気用貫板を用いて形成した換気屋根を提供する。即ち、前記換気用貫板を、屋根を構成する野地板又は野縁に設置すると共に、当該貫板を棟包で包囲し、当該換気用貫板に形成された換気溝を介して屋根裏の空気を外に排出するように構成した換気屋根である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る換気用貫板は、従前における屋根の施工時に使用する貫板と同じように設置することができる為、施工が容易であるにも関わらず、換気を実現することのできるものとして提供することができる。
【0017】
更に、本発明に係る換気用貫板は、従前における貫板に代えて使用すれば良いことから、屋根部分に設置した際にも、その設置部位(棟部分など)が必要以上に嵩張ることが無くなり、出っ張りを少なくした換気用貫板、及びこれを用いた換気屋根を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施の形態に係る換気用貫板を示す(A)正面図、(B)平面図、(C)底面図、(D)左側面図、(E)E-E縦断面図、(F)F-F横断面図
【
図2】第2の実施の形態に係る換気用貫板を示す(A)正面図、(B)平面図、(C)底面図、(D)左側面図、(E)E-E縦断面図、(F)F-F横断面図
【
図3】第3の実施の形態に係る換気用貫板を示す(A)正面図、(B)平面図、(C)底面図、(D)左側面図、(E)E-E縦断面図、(F)F-F横断面図
【
図4】換気用貫板を屋根の棟部に設置した状態を示す(A)分解図、(B)縦断面図
【
図5】換気用貫板を他の実施の形態に係る屋根の棟部に設置した状態を示す(A)分解図、(B)縦断面図
【
図6】換気用貫板を差し掛け屋根に設置した状態を示す縦断面図
【
図7】換気用貫板を他の実施の形態に係る差し掛け屋根に設置した状態を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本実施の形態にかかる換気用貫板10、およびこれを用いた換気屋根を具体的に説明する。特に本実施の形態は建築物における屋根に設置した換気用貫板10の実施形態を示しているが、当該換気用貫板10は、その他にも換気が必要な任意の場所に設置することができる。
【0020】
図1は第1の実施の形態に係る換気用貫板10を示す(A)正面図、(B)平面図、(C)底面図、(D)左側面図、(E)E-E縦断面図、(F)F-F横断面図である。特に背面図は平面図と対象であり、右側面図は左側面図と対象である。
【0021】
この実施の形態に係る換気用貫板10は、長さ方向に沿う長尺面である正面と背面及び両者間に存在する上面(平面)に跨った換気溝11が形成されている。そして屋根の野地板22に対向する底面には、当該換気溝11は形成されておらず、当該底面は平坦な面として形成されている。ただしこの底面は雨水の侵入を阻止するための構成を設けることができ、例えば貫板の長さ方向に延伸する溝部を形成することもできる。
【0022】
かかる換気用貫板10は任意の大きさに形成することができる。例えば、長さ3,000mm、厚さ30mm、幅100mmに形成することができ、その他にもこれに限定されることなく任意の大きさに形成することができる。ただし当該換気用貫板10の厚さは雨水の侵入を防ぐために10mm以上であることが望ましい。当該換気用貫板10の大きさは任意であって良いが、長さを3mとした場合において、図面中の省略部分は願書添付図面上1.49mとなる。
【0023】
上記本実施の形態に係る換気用貫板10において、換気溝11は正面-平面-背面に跨って形成されている所、当該換気溝11は必ずしも直線状である必要はなく、湾曲又は曲折させて形成しても良く、更には当該換気用貫板10を斜め方向に延伸するように形成しても良い。また当該換気溝11は当該換気用貫板10の正面の底部側から背面の底部側に連通していれば良いことから、途中で分岐するように形成しても良い。例えば正面側を1本の溝とし、上面を2本に分岐させて背面側で1本に収束させるなどの構造であっても良い。更に各換気溝11はそれぞれが独立した1本の溝として形成する必要はなく、相互に交差させて形成する事もできる。その結果、当該換気溝11は網目状に交差するように形成することもできる。かかる換気溝11は、通気を実現できる大きさであれば任意の深さD及び広さに形成することができる。
【0024】
本実施の形態において、当該換気用貫板10は、換気溝11を正面-平面-背面に跨るような直線状に形成しており、その溝幅Wや深さDは任意であって良い。例えば当該換気溝11は、5~20mm程度の溝幅Wで、5~15mm程度の深さDの溝として形成することができる。かかる換気溝11の深さDは、溝11の底部に雨水が侵入することのない程度の高さ(換気用貫板10の高さ)を確保できる程度であれば良い。
【0025】
また本実施の形態に係る換気用貫板10では、換気溝11の溝幅Wとその形成間隔Pを同じにしているが、両者を異ならせることもできる。換気溝11の溝幅Wとその形成間隔Pを異ならせることにより、2つの換気用貫板10を対向状に配置した場合であっても、一方の換気溝11内に、他方の換気用貫板10の換気溝11間の凸部が入り込んで、当該換気溝11を塞いでしまう事態を回避することができる。特に換気溝11の溝幅Wをその形成間隔Pよりも小さくした場合には、一方の換気溝11内に、他方の換気用貫板10の換気溝11間の凸部が入り込むことが無くなり、当該換気溝11を確実に確保することができる。よって、換気溝11の溝幅Wとその形成間隔Pを異ならせた換気用貫板10は、その設置作業を容易に行うことができる。
【0026】
そして本実施の形態に係る換気用貫板10に形成している換気溝11は、底面が平坦な凹字状の溝として形成しているが、当然にその他の形状であっても良い。例えば当該換気溝11をV字溝、U字溝などの各種溝形状に形成することができる。
【0027】
そして当該換気用貫板10に形成される換気溝11は、正面側に形成される溝、即ち屋根に設置した際において、少なくとも軒先側に存在する長尺面(
図1における正面又は背面)に形成される溝11は、換気用貫板10の底面側に深くなるように形成するのが望ましい。このように形成することにより、当該溝の底面と設置した屋根面との内角を鋭角にすることができ、これにより雨水が当該通気口を昇って屋根内に侵入するという事態を確実に回避することができる。特に
図2に示す第2の実施形態にかかる換気用貫板10では、双方の長尺面側に形成される溝11を換気用貫板10の底面側に深くなるように形成している。この傾斜角は任意であって良いが、屋根面の傾斜角度を考慮した上で適宜設定することができる。
【0028】
以上説明した換気用貫板10は、木材を用いて形成する他、樹脂、セラミック又は金属などで形成することもできる。特に軽量化を望む場合や、樹脂成型で形成する場合、或いは金属プレスで形成する場合には、
図3の第3の実施の形態係る換気用貫板10に示す様に、前記底面側が凹んだ中空状に形成して中空状の換気用貫板10とすることもできる。即ち、凸部と凹部が板材の長さ方向に交互に存在する様に成形した板乃至は波板として形成することもできる。特に
図3に示す実施形態では換気溝11の幅と、換気溝11の形成間隔Pを異ならせた実施形態を示しており、換気溝11の幅は当該換気溝11同士の間隔よりも狭く形成している。
【0029】
図4は上記した換気用貫板10を屋根の棟部に設置した状態を示す(A)分解図、(B)縦断面図である。この実施形態に示す換気用貫板10は、棟木20に固定された垂木21上に設けられている野地板22に対して釘やビスなどの固定具28によって固定することができる。本実施の形態では、図面に向かって左右に傾斜状に存在する野地板22は棟部において開口しており、この開口部25に合わせて換気用貫板10を固定している。これにより当該換気用貫板10同士は棟部分において離間して配置されている。このように換気用貫板同士を離間して配置する場合には、換気用貫板10において棟部側の長尺面(背面)には、必ずしも通気路を形成する必要はなくなり、軒先側の長尺面(正面)及び上面にのみ通気路を形成した換気用貫板10とすることもできる。本実施の形態にかかる換気用貫板10では、当該換気用貫板10を突き合わせ状に配置した場合でも棟部から外気への通気口を確保するために、換気溝11を正面-平面-背面に跨って形成している。
【0030】
なお前記本実施の形態では、前記野地板22の上にコロニアル屋根材23などの各種屋根材23を設けており、その上に前記換気用貫板10を固定している。そして当該換気用貫板10の固定に際しては、屋根材23と換気用貫板10との間にコーキング材や防水テープなどの防水材24を設けて、両者間における雨水の侵入を阻止するように構成するのが望ましい。
【0031】
そして以上のように野地板22(詳細には屋根材23上)に固定した換気用貫板10には、これを覆うようにして棟板金30を設ける。この棟板金30は向かい合って配置されている換気用貫板10を覆うとともに、軒先側においては屋根材23との間に間隙Sを形成するようにフランジ状に折り曲げたフランジ部31を形成している。棟板金30の軒先側にフランジ部31を形成して屋根材23との間に間隙Sを形成することにより、前記換気用貫板10の換気溝11を通ってきた屋根裏の空気を屋外に円滑に排出することができる。また当該間隙Sを形成する際に屋根板金の軒先側にフランジ部31を形成することにより、雨水が換気用貫板10側に入り込むことが無くなり、防水対策も完備した換気棟構造が実現する。なお、当該屋根板金の軒先側に形成されるフランジ部31は、屋根材23との間に5mm以上、望ましくは10mm以上の高さの間隙Sを形成することが望ましく、また当該フランジ部31の出幅(軒先に向かう出幅)は10mm以上、特に30mm以上であることが望ましい。また当該フランジ部31には所定の間隔で柱40部を設けることも望ましい。当該柱40部は屋根材23とフランジ部31の間に設けられて、当該フランジ部31の変形を阻止するために機能させることができる。降雪地帯などにおいて積雪による当該フランジ部31の変形を阻止する為である。かかる柱40部は当該フランジ部31の変形を阻止すれば良いことから、当該フランジ部31の先端側を波板状に形成して前記柱40部に代得ることもできる。
【0032】
以上のように構成した棟構造においては、図面に向かって左右に存在する野地板22は棟部において開口しており、この開口部25から野地板22の下面空間(即ち屋根裏空間)内の空気は、棟部分に到達することができる。そして当該軒部分には、前記換気用貫板10が、その長尺面(背面)同士を所定の間隔をおいて突き合わせ状に配置されていることから、当該棟部分に到達した空気は、両換気用貫板10同士間に存在する空間の他、各換気用貫板10に形成された換気溝11を通って換気用貫板10の上面の換気溝11を通り、正面側の換気溝11に回り込んで、前記棟板金30の軒先側のフランジ部31と屋根材23との間の間隙Sを通って外に排出される。なお、屋根裏よりも屋外の気圧が高い場合や、風が強い場合などは、この逆の経路を通って屋外の空気を屋根裏に導入することができる。その結果、当該換気棟構造によって効率的な換気を実現することができ、屋根裏における熱気や湿気の排出や、外気の導入を円滑に行うことができる。そして強風を伴った雨などは、前記間隙Sから侵入したとしても、当該換気用貫板の厚さ分の高さを昇ることはない為、小屋裏への雨水の侵入を阻止することができる。
【0033】
図5は上記
図4に示した実施の形態の棟構造に関連する他の実施の形態を示す(A)分解図、(B)縦断面図である。この実施の形態に係る棟構造は、特に屋根構造が折板葺き屋根、瓦棒葺き屋根、立はぜ葺き屋根等のように凹凸がある場合に好適に実施することができる。即ちこの実施の形態に係る換気用貫板10は、前記凹凸のある屋根材23に対応するために、野地板22の上に野縁26を設け、この野縁26に対して換気用貫板10を固定している。野縁26によって前記換気用貫板10を屋根材23の上の高さまで持ち上げた実施形態を示している。
【0034】
そして図面に向かって左右それぞれの野縁26の上に固定した換気用貫板10は、前記
図4に示した棟構造と同じように棟板金30で包囲している。これにより換気用貫板10は棟板金30によって包囲されることになるが、当該換気用貫板10には換気溝11を形成していることから、当該換気溝11を通して屋根裏の空間内の空気を換気することができる。また当該換気用貫板の厚さによって雨水の侵入を阻止することができる。
【0035】
特に本実施の形態では、前記屋根材23は凹凸を有する構造であることから、棟板金30の軒先側は屋根材23の凸部に接するように形成している。このように棟板金30の先端側に存在するフランジ部31を屋根材23の凸部に接するように設けたとしても、換気溝11を通る空気は、当該屋根材23の凸部同士間に存在する凹部を通って建物(特に屋根部)の内外に移動することができる為、十分な屋根裏換気を実現することができる。
【0036】
この実施の形態に係る棟構造であっても、屋根材23よりも上方に突出するのは、前記換気用貫板10の厚さ分で済むことから、棟部の嵩高を低く抑えながらも十分な屋根裏換気を実現でき、更に雨水の侵入を阻止可能な棟構造とすることができる。
【0037】
そして
図6は差し掛け屋根に適用した状態を示す縦断面図である。この図に示す様に本実施の形態に係る屋根構造は、柱40などに連結される垂木21の上に野地板22を設け。この野地板22の上に屋根材23を設けている。そして柱40などに設けられている屋根の基端側には、野地板22上又は屋根材23上に、本実施の形態に係る換気用貫板10を固定している。かかる換気用貫板10の固定は釘やビスなどを用いて行う他、接着剤や防水用のテープなどを用いて行うことができる。そしてこの換気用貫板10の上には、外壁41の内側から延出している雨押え板金32を被せ、その先端側(軒先側)を、前記
図4に示した棟板金30と同様にフランジ状に折り曲げて、フランジ部31を形成している。このフランジ部31は前記屋根材23との間に一定の間隙Sを形成しており、これにより屋根裏(小屋裏)の換気を実現している。特に本実施の形態に係る雨押え板金32は、外壁41の内側に設けられた胴縁42の内側(胴縁42と柱40の間)から延出するように形成しているが、外壁41と胴縁42の間から延出するようにしても良い。
【0038】
そして前記換気用貫板10は前記
図1~3に示したように、長尺な板状であって、その上面と長尺面(正面及び背面)には、正面-平面-背面を廻るようにして換気溝11を形成している。また前記野地板22は、前記柱40などの固定部材から10mm以上、望ましくは20mm以上離して取り付けており、柱40などの固定部材と野地板22との間には屋根裏と連通する開口が形成されている。これにより屋根裏の空気は当該固定部材と野地板22との間の空間を通って換気用貫板10に至り、当該換気用貫板10に設けられた換気溝11を通って、雨押え板金32の先端側のフランジ部31と屋根材23との間の間隙Sから排出することができる。一方で屋外の気圧が屋根裏よりも高い場合や、風が強い場合などは、この逆の経路を経由することにより、外気を屋根裏(小屋裏)に導入することができ、これにより換気を実現することができる。
【0039】
そして本実施の形態に係る屋根構造においても、前記雨押え板金32の先端側(軒先側)にはフランジ部31を形成しており、屋根材23は軒先側に向かって下がる傾斜面に形成されていることから、雨水などが当該フランジ部31と屋根材23との間を通って屋根裏(小屋裏)に入り込む可能性はなく、防水性も確保することができる。
【0040】
以上の構造に形成された屋根構造は、従前における施工において使用されている貫板に代えて、前記
図1~3に示した換気用貫板10を使用すれば良いことから、追加の作業を要することなく迅速に施工することができる。しかも前記
図1~3に示した換気用貫板10は、従前において使用されている貫板と同等の厚さに形成されていることから、当該屋根の付け根部分が嵩高になる事はなくなり、意匠性も向上させることができる。
【0041】
そして
図7は前記
図6に示した屋根構造に関連する他の実施の形態を示す縦断面図である。この実施の形態に係る棟構造は、特に屋根構造が折板葺き屋根、瓦棒葺き屋根、立はぜ葺き屋根等のように凹凸がある場合に好適に実施することができる。即ちこの実施の形態に係る換気用貫板10は、前記凹凸のある屋根材23に対応するために、野地板22の上に野縁26を設け、この野縁26に対して換気用貫板10を固定している。野縁26によって前記換気用貫板10を屋根材23の上の高さまで持ち上げた実施形態を示している。
【0042】
野縁26上に固定した換気用貫板10は、前記
図6に示した棟構造と同じように雨押え板金32で覆っている。これにより換気用貫板10は雨押え板金32にカバーされることになるが、当該換気用貫板10には換気溝11を形成していることから、当該換気溝11を通して屋根裏の空間内の空気を換気することができる。
【0043】
特に本実施の形態では、前記屋根材23は凹凸を有する構造であることから、雨押え板金32の軒先側は屋根材23の凸部に接するように形成している。このように雨押え板金32の先端側に存在するフランジ部31を屋根材23の凸部に接するように設けたとしても、換気溝11を通る空気は、当該屋根材23の凸部同士間に存在する凹部を通って建物(特に屋根部)の内外に移動することができる為、十分な屋根裏換気を実現することができる。
【0044】
そしてこの実施の形態に係る棟構造であっても、屋根材23よりも上方に突出するのは、前記換気用貫板10の厚さ分で済むことから、差し掛け屋根の基端側における嵩高を低く抑えながらも十分な屋根裏換気を実現できる棟構造とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の換気用貫板、およびこれを用いた換気屋根は、家屋などの建築物の他、各種建築物の屋根構造に利用することができる。更に屋根に限らず換気を要する構造部にも利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
10 換気用貫板
11 換気溝
20 棟木
21 垂木
22 野地板
23 屋根材
24 防水材
25 開口部
26 野縁
28 固定具
30 棟板金
31 フランジ部
32 雨押え板金
40 柱
41 外壁
42 胴縁
P 形成間隔
S 間隙
W 溝幅