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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】噴射ノズル装置
(51)【国際特許分類】
   B24C 5/04 20060101AFI20220929BHJP
   B24C 5/02 20060101ALI20220929BHJP
   B24C 7/00 20060101ALI20220929BHJP
   B05B 1/34 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B24C5/04 A
B24C5/02 B
B24C5/04 C
B24C7/00 D
B05B1/34 101
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018143918
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020019089
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】518272599
【氏名又は名称】一般社団法人大東亜財形
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】足立 隆之
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-209767(JP,A)
【文献】実開昭62-151961(JP,U)
【文献】特開2016-107456(JP,A)
【文献】特開2006-247619(JP,A)
【文献】特開2010-046770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 5/02-5/04
B24C 7/00
B05B 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に円錐台形状の旋回流を形成するための円錐台形状の複合旋回流形成空間を備えた本体と、
この本体の内壁に沿って螺旋状に圧力気体を案内するための圧力気体案内部材と、
前記圧力気体を前記空間に案内部材に沿って送るための圧力気体供給管と、
前記圧力気体に前記本体内で研削材を混合するように供給する研削材供給管と、
前記本体上に取付けられ前記空間の軸心上に高圧液体の噴射ジェットを供給するための液体圧送ノズルとを備え、
前記圧力気体案内部材は、本体内壁に形成された螺旋状の溝、板状のフィン又は突起であり、前記本体の上部における前記螺旋のピッチと前記本体の下部における螺旋のピッチの比は、2対1であり、
前記空間の大径端の直径と、複合噴流の噴射口をなす先端小径端の直径と空間の軸心に沿う長さの比は、2対1対3をなし、
前記高圧液体の細径噴流の周りを、研削材を含んだ圧力気体の旋回流で取り囲んだ複合噴流を本体の先端ノズルから研削対象物に衝突させる噴射ノズル装置。
【請求項2】
前記複合噴流は、細径の高圧液体のジェット噴流と、その半径方向外側に位置してその周りを旋回する、研削材を含んだ圧力気体混合旋回噴流からなる請求項1記載の噴射ノズル装置。
【請求項3】
前記本体は、樹脂により形成された請求項1の噴射ノズル装置。
【請求項4】
前記圧力気体供給管の先端は圧力気体案内部材の配置方向に開口し、
前記研削材供給管の先端は圧力気体の旋回流の流れ方向に開口している請求項1記載の噴射ノズル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート等の研削対象物に対して高圧液体と粉体状の研削材とからなる複合噴流を噴射して対象物を研削するための複合噴流式の噴射ノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に高速道路の拡幅、耐震補強、あるいは建築物の壁面補強等の工事においては、鉄筋を損傷することなく、コンクリートのハツリを行うために超高圧ノズルから噴出する超高圧水流を利用したウォータージェット工法が使用される。このウォータージェット工法は、超高圧ノズルから細く絞られた超高圧水を対象物に噴射するものであり(特許文献1)、この噴流に砥粒を混入させて研削効率を上昇せしめることも行われている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-178953号公報
【文献】特開平5-345277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1の超高圧ノズルによるウォータージェット工法によるコンクリート等のハツリや剥離作業は、水のみのウォータージェットで、しかもノズル径が約1mm程度のものであるので研削面積が小さく、作業能率が低く水圧を上昇させても研削効率の向上に限界がある。
【0005】
また、特許文献2のスラリーノズルは、ノズル内部にウォータージェットと砥粒を混合する混合室を設け、ここで混合されたスラリーを混合室に接続された細径の一定長のノズル部材に供給するもので、ノズル部材は細径であり砥粒による目詰りが生じ易い。
【0006】
かかる点に鑑み、本発明は線状の高圧液体の周囲を研削材を含む圧力気体の旋回流で囲んだ複合噴流を対象物に噴出することにより研削効率の向上を図るとともにノズルの粉末砥粒による目詰りが生じない噴射ノズル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の噴射ノズル装置は、内部に円錐台形状の複合旋回流を形成するための円錐台形状の複合旋回流形成空間を備えた本体と、この本体の内壁に沿って螺旋状に圧力気体を案内するための圧力気体案内部材と、前記圧力気体を前記空間に案内部材に沿って送るための圧力気体供給管と、前記圧力気体に研削材を前記本体内で混合するように供給する研削材供給管と、前記本体上に取付けられ前記空間の軸心上に高圧液体の噴射ジェットを供給するための液体圧送ノズルとを備え、前記高圧液体の細径噴流の周りを、研削材を含んだ圧力気体の旋回流で取り囲んだ複合噴流を本体の先端ノズルから研削対象物に衝突させるようにした。
【0008】
なお、前記複合噴流は、細径の高圧液体のジェット噴流とその半径方向外側に位置してその周りを旋回する、研削材を含んだ圧力気体混合旋回噴流からなる。
【0009】
なお、前記本体は、樹脂により形成させることもできる。
【0010】
なお、圧力気体案内部材は、本体内壁に形成された螺旋状の溝、板状のフィン又は突起であり、その螺旋は本体の先端方向にピッチが次第に小さくなるように形成されていることが好ましい。
【0011】
なお、前記圧力気体供給管の先端は圧力気体案内部材の配置方向に開口し、前記研削部材供給管の先端は圧力気体の旋回流の流れ方向に開口していることが好ましい。
【0012】
なお、前記空間の大径端の直径と、複合噴流の噴射口をなす先端小径端の直径と空間の軸心に沿う長さの比は2対1対3をなすことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、圧力気体としての圧力空気をノズル装置本体内で旋回流とし、これに研削材を混合し、この混合旋回流で軸心に位置する圧力液体としての水の細径噴流を被い囲むようにして本体先端の先端ノズルから対象物に複合噴流を噴射するようにしたので、前記先端ノズルから噴射される複合噴流は従来のものに比較して大径となり、これにより研削面積が著しく大きくなり、研削効率が増大する。また、水の細径噴流に研削材を混入することなく(スラリーは作らない)、その周囲の空気の旋回流に混入せしめ、これにより前記先端ノズルの径も大きく設定でき、先端ノズルの目詰りも生じない。
【0014】
また圧力気体をガイドするための螺旋状の案内部材の本体軸方向におけるピッチを噴射ノズル本体の先端に近づくにつれ次第に小さくなるように形成すれば、混合旋回流の速度が次第に速くなり、その旋回の中心に水の細径噴流を保持するとともに砥粒を含んだ旋回流の研削効果が増大する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の噴射ノズル装置を道路の研削作業に適用した道路ハツリ装置の構成図である。
図2】本発明の噴射ノズル装置を建築物の研削作業に適用したガン式の壁面研削装置の構成図である。
図3】本発明の噴射ノズル装置の斜視図である。
図4】本発明の噴射ノズル装置の縦断面図である。
図5】本発明の噴射ノズル装置の上面から見た噴流状態を示す説明図である。
図6】本発明の噴射ノズル装置の本体先端部分の複合噴流状態を示す説明図である。
図7】本発明の噴射ノズル装置の内壁に形成される圧力気体案内部材の他の実施例を示す部分斜視図である。
図8】本発明の噴射ノズル装置の内壁に形成される圧力気体案内部材の更に他の実施例を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
【実施例
【0017】
第1図、第2図において、本発明の噴射ノズル装置1を備えたコンクリート表面2のハツリ作業又は剥離作業を行うための道路ハツリ装置Mは、移動自在の架台3を備え、この架台3は車輪4,4によって支持され、前記噴射ノズル装置1は、架台3の支持枠5に沿って水平に前後左右に移動して高圧液体である線状のウォータージェットの周囲を研削材で包み込んだ断面円形の複合噴流によりコンクリート表面の研削作業を行う。
【0018】
前記架台3には、前記噴射ノズル装置1に高圧水を供給するための給水タンク6と、この給水タンク6からの水を高圧にして噴射ノズル装置1に圧送するための超高圧ポンプ7と、圧送気体の空気を貯留するための空気タンク8と、この空気を流量調整弁9を介して前記噴射ノズル装置1に圧送するためのコンプレッサ10と、サンドペーパー等に用いられているガーネット又は硅砂等の粉末の研削材を貯留しておくための研削材タンク11と、この研削材の所定量を噴射ノズル装置1に供給するためのコンプレッサ12とが設けられるとともに、これら各機械要素を電気的にコントロールするためのコントローラCが設けられている。
【0019】
図2は、建築物の壁面20を研削するための研削装置Mを示し、前記噴研削装置Mとしてノズルガンの形式が採用され、ノズルガン21の先端に本発明の噴射ノズル装置1が支持され、この噴射ノズル装置1には、道路ハツリ装置Mにおける各機械要素がそれぞれ接続されている。
【0020】
以下、本発明の噴射ノズル装置1の構造について説明する。
【0021】
図3図4において、本発明のノズル装置1は、逆円錐台状のケーシング本体30を備え、このケーシング本体30はその上面が円形の閉塞板31によって閉塞され、その下面には複合噴流を噴射するための先端ノズル32が接続されている。前記閉塞板31の中央には、高圧液体としての水を線状に噴射するための液体圧送ノズル33が接続されている。前記ケーシング本体30および閉塞板31はアクリル等の成形容易な樹脂で形成されるのが好ましいが金属製のものであってもよい。また、圧力液体としては金属表面の洗浄作業の場合にはアルコール等が使用され得る。
【0022】
前記液体圧送ノズル33のノズル径は1mm前後であり、これにより約直径1mmの水ジェット34が噴射ノズル装置1の軸心位置を下降して複合噴流となり、先端ノズル33を経て対象物に衝突する。前記液体圧送ノズル33には、前記給水タンク6からの水が超高圧ポンプ7により1800~2500kg/cm程度の圧力に加圧されて供給される。この高圧の水ジェット34により噴射ノズル装置1の本体30内の逆円錐台形状の複合旋回流形成室35内には、そのエジェクタ効果により負圧が発生し、これにより下流側に向けた強い吸引力が発生し、その負圧は本体30に取付けられた負圧調整弁36により調整される。なお、前記本体30の上面の直径Dは約30mmであり、下面の直径Dは約15mmでその軸心方向長さLは約90mmとするのが好ましい。すなわち、D:D:L=2:1:3とするのが好ましい。
【0023】
前記閉塞板31には、空気タンク8からの空気を流量調整弁9を介して圧送(7kg/
cm)するための圧力気体としての空気(窒素等の他の気体でもよい)が供給される空気供給管37(先端開口37a)および前記粉末の研削材を供給するための研削材供給管38(先端開口38a)が取付けられている。前記本体30の内壁には、図4に示すように、螺旋状の案内溝39が形成され、そのピッチは下降するにつれて狭くなっており(本体上部のピッチ:本体下部のピッチ=2:1)、この案内溝39に沿って圧力空気が螺旋状に下降して高速回転旋回流を生ぜしめ、この高速回転気流内に前記研削材供給管38から研削材が吸入混合される。前記空気供給管37の先端部分は案内溝39に沿う空気流が生じるように案内溝39に沿うように開口しており、前記研削材供給管38の先端部も旋回空気流に沿って研削材が流出するように開口している。
【0024】
なお研削材は、毎分3kg程度供給され、図5、6に示すように本体内壁に沿う空気旋回流40の内側に研削材が供給されて混合旋回流41を生じ、この混合旋回流41が軸心位置に噴射される水ジェット34の周りを覆って水ジェットを中心とする複合噴流42を生ぜせしめ、この複合噴流の中心の水ジェット34の周りを次第に速度が増した複合旋回流41で被って水ジェットを中心位置に保持する。この複合噴流42の直径を先端ノズル32の直径を約15mmと設定することにより、それと同径に形成でき従来のウォータージェットの径が約1mmであるのに対し、研削面積が15×15=225倍になり、これによりハツリの作業効率が約3倍となることが確認されている。
【0025】
本体下面の先端ノズル32の直径が15mm程度と大きいので、砥粒を含んだ混合旋回流の目詰りも生じない。
【0026】
なお、本体30の内壁には高速旋回流41を生ぜしめるための螺旋案内溝39が形成されているが、この代わりに図7に示すように板状の螺旋フィン50を内壁に植設してもよく、また図8に示すように、内壁に螺旋突起51を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の噴射ノズル装置は、道路の修理、建築物の壁面の修理あるいは金属表面の洗浄作業に使用され得る。
【符号の説明】
【0028】
1…噴射ノズル装置
3…架台
20…壁面
21…ノズルガン
30…ケーシング本体
32…先端ノズル
33…液体圧送ノズル
34…水ジェット
35…複合旋回流形成室
37…空気供給管
38…研削材供給管
39…案内溝
40…空気旋回流
41…混合旋回流
42…複合噴流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8