(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】バウムクーヘンおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A21D 13/10 20170101AFI20220929BHJP
A21C 15/04 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
A21D13/10
A21C15/04 A
(21)【出願番号】P 2019031612
(22)【出願日】2019-02-25
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】514307947
【氏名又は名称】株式会社香月堂
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 光政
【審査官】吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-001588(JP,A)
【文献】米国特許第05446965(US,A)
【文献】特開2018-033355(JP,A)
【文献】実開昭59-011685(JP,U)
【文献】特開2012-166307(JP,A)
【文献】特開2017-100265(JP,A)
【文献】特注バームクーヘンカッター,平野製作所 ヒラノブログ[online],2013年03月27日,[検索日:2022.06.21], インターネット<URL: https://blog.hiranojp.com/division/239/>
【文献】一日100個限定!手のひらサイズのかわいい東京土産「まめやのパンダバウム」,haconiwa[online],2018年10月17日,[検索日:2022.06.21], インターネット<URL: https://www.haconiwa-mag.com/life/2018/10/pandabaum/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
A23G
A21C 15/04
B26B
B26D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割器を用いたバウムクーヘンの製造方法であって、
前記分割器は、円筒状の軸部と、円環状の枠部と、該軸部のうちホールのバウムクーヘンに対向する一端部から前記枠部に向かって放射状に延びて該一端部と該枠部とをつなぐ複数枚の薄板とを備え、
前記複数枚の薄板は、前記軸部の先端および前記枠部の下端に到達する縦に長い刃と、前記軸部の先端および前記枠部の下端に到達せず前記長い刃よりも縦に短い刃とを有し、
前記分割器を用いた押し切りによって、焼成後のバウムクーヘンに対して、該バウムクーヘンを分割してピースにするためのカット
を前記長い刃によって施すと同時に、前記ピースを手で分割するための未分割の切れ込み
を前記短い刃によって施すことを特徴とするバウムクーヘンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バウムクーヘンおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種ケーキは、ナイフでカットしたり手で千切るなどして、小分けにすることができる。しかしケーキを小分けにする際、ナイフを用いず手で千切ってきれいに割ることは難しい。仮にケーキを手できれいに割ることができると、小分けにして少しずつ食べることができ、特に女性や子供にとっては食べ易くなる。
【0003】
特許文献1には、手で千切って容易に食べられるようにしたワッフルが記載されている。このワッフルは、ジャム、フラワーペーストがサンドイッチされたものであり、以下の工程により製造される。
【0004】
まず、ワッフルの生地を作り、この生地を板状に延ばす。つぎに、板状に延ばしたものにジャム、フラワーペーストをサンドイッチする。そして得られた1枚の板状生地を適度な大きさにカットし、これを雌雄の型の間に入れて型を閉じて焼成することで、ワッフルが製造される。ここで焼成前のカットされた生地には、閉じられた雌雄の型によって、V字型切れ込みにより形成された薄肉厚部と、薄肉厚部を介して相互に連結される凹凸を有する複数部分とが成型される。
【0005】
このようにして製造されたワッフルは、薄肉厚部を介して複数部分が連結しているため、この薄肉厚部を手で千切ることで各部分を食べることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のワッフルは、焼成前の生地を型によって成型することで製造されている。これに対してバウムクーヘンは、その製造方法から、型を用いることができない。バウムクーヘンは、芯になる棒の表面に生地を少量かけてバーナーで焼くことで、表面が焦げた薄い層を形成し、この薄い層の上にさらに生地をかけながら焼き、これを繰り返して薄い層を複数層形成し、その上で、焼成後に芯を抜いて輪切りにすることにより製造される。
【0008】
つまり、型を用いることなく製造されるバウムクーヘンに対して、特許文献1に記載の技術を適用することはできない。このため、バウムクーヘンに手で千切り易くするための工夫を施すという着想そのものが容易に想到し得ない。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、手できれいに割って小分けにできるバウムクーヘンおよびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、型を用いることなく製造されるバウムクーヘンに対して、手できれいに割って小分けにできる構成について鋭意検討したところ、焼成後のバウムクーヘンに対して、未分割の切れ込みを施すことに想到した。
【0011】
すなわち上記課題を解決するために、本発明にかかるバウムクーヘンの代表的な構成は、手で分割するための切れ込みを施されていることを特徴とする。
【0012】
上記構成では、バウムクーヘンに切れ込みを施しているため、手できれいに割って小分けにして少しずつ食べることができ、特に女性や子供にとっては食べ易くなる。一方、男性や口が大きい人は、バウムクーヘンを割らずに食べることによって、頬張る楽しみも得ることができる。これにより食べ方の自由度を増すことができる。なおバウムクーヘンは、ホールすなわち焼成後に芯を抜いて輪切りにした状態でも、ホールをさらにカットしたピースであってもよい。
【0013】
上記の切れ込みは、薄板の刃によって施された線状の切れ込みであるとよい。このように、バウムクーヘンを手で分割するための切れ込みが、線状の切れ込みであるので、溝が細くなり、見た目が悪くならず商品価値を損なわない。なおバウムクーヘンは型を用いず製造されるため、この溝は、型を転写した溝ではなく、焼成後の加工として薄板の刃によって施されたものである。
【0014】
上記の切れ込みは、バウムクーヘンの層に対して直交する方向に施されているとよい。これにより、バウムクーヘンの切れ込みは、穴に対して同心円状に複数形成された層に対して直交する方向、すなわち外周から穴に向かって最短距離をとる方向(半径方向)に沿って施されている。このような切れ込みを施すことにより、バウムクーヘンを手できれいに確実に割ることができる。
【0015】
上記の切れ込みの深さは、当バウムクーヘン全体の厚みの10%~80%であるとよい。ここで切れ込みの深さを、バウムクーヘン全体の厚みの10%以上にしたところ、手できれいに割ることができた。なお10%未満の場合には、バウムクーヘンを手できれいに割ることはできなかった。また切れ込みの深さを、バウムクーヘン全体の厚みの80%以下にしたところ、輸送時に崩れることがなかった。なお80%を超えると、バウムクーヘンは輸送テスト時に崩れてしまった。すなわち上記構成のように、切れ込みの深さを、バウムクーヘン全体の厚みの10%~80%に設定することで、バウムクーヘンを手できれいに割ることができ、さらに輸送時に崩れないようにできる。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明にかかるバウムクーヘンの製造方法の代表的な構成は、上述したバウムクーヘンの製造方法であって、焼成後のバウムクーヘンに対して、バウムクーヘンを分割してピースにするためのカットと、ピースを手で分割するための未分割の切れ込みとを押し切りによって同時に行うことを特徴とする。
【0017】
上述したバウムクーヘンにおける技術的思想に対応する構成要素やその説明は、当該バウムクーヘンの製造方法にも適用可能である。ここで焼成後のバウムクーヘンは芯を抜いて輪切りにした状態であり、いわゆるホールである。つまり上記構成によれば、焼成後のバウムクーヘンのホールを分割してピースを製造しつつ、同時にピースに手で分割するための切れ込みを施すことができる。したがって、バウムクーヘンのホールから、手できれいに割って小分けにできるピースを効率的に製造できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、手できれいに割って小分けにできるバウムクーヘンおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態におけるバウムクーヘンを説明する図である。
【
図2】本発明の実施形態におけるバウムクーヘンの製造方法を説明する図である。
【
図3】
図1(a)のバウムクーヘンが個包装された状態を示す図である。
【
図4】
図1(a)のバウムクーヘンを手できれいに割るための切れ込みの深さについて検討した結果を示す図である。
【
図5】
図3の個包装されたバウムクーヘンが輸送時に崩れないための切れ込みの深さについて検討した結果を示す図である。
【
図6】本発明の他の実施形態におけるバウムクーヘンおよびその製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態におけるバウムクーヘン100を説明する図である。
図2は、本発明の実施形態におけるバウムクーヘン100の製造方法を説明する図である。
【0022】
図1(a)に示すバウムクーヘン100は、いわゆるホールをさらにカットしたピースである。
図2(a)に示すバウムクーヘン102は、ホールであって、以下の工程により製造される。まず、芯になる棒の表面に生地を少量かけてバーナーで焼くことで、表面が焦げた薄い層を形成し、この薄い層の上にさらに生地をかけながら焼く。つぎに、これを繰り返して薄い層を複数層形成し、その上で、焼成後に芯を抜いて輪切りにする。このようにして、ホールのバウムクーヘン102が製造される。
【0023】
バウムクーヘン102は、焼成後に芯を抜いて輪切りにした状態であるため、穴104と、穴104に対して同心円状に複数形成された層106とを有する。このバウムクーヘン102は、
図2(b)に示すように分割器108によって押し切られて、ピースのバウムクーヘン100(
図1(a)参照)が製造される。
【0024】
分割器108は、
図2(a)に示すように、円筒状の軸部110と、円環状の枠部112と、それぞれ複数枚の薄板114、116とを備える。薄板114と薄板116は交互に配列されている。複数の薄板114、116は、軸部110のうちホールのバウムクーヘン102に対向する一端部118から枠部112に向かって放射状に延びる刃であり、一端部118と枠部112とをつないでいる。
【0025】
薄板114は、
図2(a)に示すように軸部110の先端120および枠部112の下端122に到達する縦に長い刃である。一方、薄板116は、軸部110の先端120および枠部112の下端122に到達せず、薄板114よりも縦に短い刃である。
【0026】
また軸部110の他端部124は、不図示のアームに接続されている。分割器108は、アームの動きに伴ってホールのバウムクーヘン102に向かって接近し、
図2(b)に示すようにバウムクーヘン102を押し切る。
【0027】
図2(b)に示すように、分割器108は、バウムクーヘン102を押し切る際、軸部110の一端部118をバウムクーヘン102の穴104に挿入するように位置合わせされ、さらに薄板114、116をバウムクーヘン102に押し付ける。
【0028】
このような分割器108の押し切りにより、バウムクーヘン102は、長い刃である薄板114によって分割され6つのピースであるバウムクーヘン100となる。なお図中では、1つのピースにのみ代表的に符号を付している。ここで、ピースのバウムクーヘン100は、2枚の薄板114によってカットされることで形成された両端126、128を有する。
【0029】
さらに分割器108は、押し切りの際、バウムクーヘン102を分割してピースにするためのカットと同時に、短い刃である薄板116によってピースのバウムクーヘン100に未分割の切れ込み130を施す。この切れ込み130は、
図2(b)に代表的に示すように薄板116の短い刃によって施された線状の切れ込みである。
【0030】
バウムクーヘン100は、
図1(a)に示すように両端126、128を有するピースであって、さらに切れ込み130が線状であるため、溝が細くなる。このため、バウムクーヘン100は、見た目が悪くならず商品価値が損なわれない。なおバウムクーヘン100、102は型を用いず製造されるため、この溝は、型を転写した溝ではなく、焼成後の加工として短い刃である薄板116によって施されたものである。
【0031】
またバウムクーヘン100の切れ込み130は、穴104に対して同心円状に複数形成された層106に対して直交する方向、すなわち外周132から穴104に向かって最短距離をとる方向(半径方向)に沿って施されている。
【0032】
このような切れ込み130を施すことにより、バウムクーヘン100は、
図1(b)に示すように手134、136できれいに確実に割ることができる。すなわちバウムクーヘン100は、切れ込み130に沿って2つの小ピース138、140に小分けされ、さらに小ピース138、140の割り口142、144が平坦になっている。
【0033】
したがってバウムクーヘン100は、切れ込み130が施されているため、手134、136できれいに割って小分けにして少しずつ食べることができ、特に女性や子供にとっては食べ易くなる。一方、男性や口が大きい人は、バウムクーヘン100を割らずに食べることによって、頬張る楽しみも得ることができる。これにより食べ方の自由度を増すことができる。
【0034】
そして分割器108を用いることで、ホールのバウムクーヘン102を分割してピースのバウムクーヘン100を製造しつつ、同時にピースのバウムクーヘン100に手134、136で分割するための切れ込み130を施すことができる。したがって、ホールのバウムクーヘン102から、手134、136できれいに割って小分けにできるピースのバウムクーヘン100を効率的に製造できる。
【0035】
図3は、
図1(a)のバウムクーヘン100が個包装された状態を示す図である。バウムクーヘン100は、手134、136で分割するための切れ込み130が施され、さらに個包装袋146に入れられて個包装され、商品となる。そして個包装されたピースのバウムクーヘン100は、ダンボールに入れられた状態で輸送される場合がある。このような輸送時にバウムクーヘン100が崩れると商品価値を損なってしまう。
【0036】
そこで本発明者らは、バウムクーヘン100の切れ込み130について、手134、136できれいに割って小分けにできるだけでなく、輸送時に崩れない必要があることにも着目した。そして
図1(a)および
図3に示すようにバウムクーヘン100の厚みLに対する切れ込み130の深さLaについて検討した。なお
図3に示すLbは、切れ込み130で残した深さ、すなわちバウムクーヘン100のうち切れ込み130が到達していない部位の厚みである。
【0037】
図4は、
図1(a)のバウムクーヘン100を手134、136できれいに割るための切れ込み130の深さLaについて検討した結果を示す図である。
図4(a)では、厚みLが20mm、50mmのバウムクーヘン100に対して、「切れ込み130の深さLa」を1mm、2mm、3mm、4mm、5mmとした場合について、それぞれの結果と、厚みLに対する深さLaの割合とを示している。なお結果は、手134、136できれいに割れた場合に「〇」、きれいに割れたり割れなかったりした場合に「△」、きれいに割れなかった場合に「×」とした。
【0038】
図4(b)は、厚みLが20mmのバウムクーヘン100に対する、切れ込み130の深さLa毎の結果を示す写真である。
図4(b)に示すように、切れ込み130が0mmすなわち切れ込み130が施されていない場合、きれいに割れなかった。また切れ込み130が1mmの場合では、バウムクーヘン100は、きれいに割れず、
図4(a)に示すように結果は「×」となった。一方、切れ込み130が2mm、3mmの場合、バウムクーヘン100は、きれいに割れて、結果は「〇」となった。
【0039】
つまり、厚みLが20mmのバウムクーヘン100では、切れ込み130の深さLaが2mm以上、すなわち割合が「10.0%」以上であれば、手134、136できれいに割れることが明らかとなった。
【0040】
図4(c)は、厚みLが50mmのバウムクーヘン100に対する、切れ込み130の深さLa毎の結果を示す写真である。
図4(c)に示すように、切れ込み130が0mmの場合、きれいに割れなかった。なお
図4(c)には示していないが、切れ込み130が1mm、2mmの場合も、バウムクーヘン100は、きれいに割れず、
図4(a)に示すように結果は「×」となった。
【0041】
また
図4(c)に示すように、切れ込み130が3mmの場合、きれいに割れたり割れなかったりしたので、結果は「△」となった。一方、切れ込み130が4mm、5mmの場合、バウムクーヘン100は、きれいに割れて、結果は「〇」となった。
【0042】
つまり、厚みLが50mmのバウムクーヘン100では、切れ込み130の深さLaが4mm以上、すなわち割合が「8.0%」以上であれば、手134、136できれいに割れることが明らかとなった。
【0043】
このように
図4(a)の結果から、バウムクーヘン100が手134、136できれいに割れるための、切れ込み130の深さLaは、バウムクーヘン100の厚みLの「10.0%」以上であることが理解される。
【0044】
図5は、
図3の個包装されたバウムクーヘン100が輸送時に崩れないための切れ込みの深さLaについて検討した結果を示す図である。ここでは、輸送テストとして、個包装されたバウムクーヘン100をダンボールに入れ、このダンボールを人の腰の高さを想定した高さ(110cm)から3回落下させた。
【0045】
図5(a)では、厚みLが20mm、50mmのバウムクーヘン100に対して、「切れ込み130で残した深さLb」を2mm、3mm、4mm、5mmとした場合について、それぞれの結果と、厚みLに対する深さLbの割合とを示している。なお結果は、輸送テストで崩れなかった場合に「〇」、崩れたり崩れなかったりした場合に「△」、崩れた場合に「×」とした。
【0046】
図5(b)は、厚みLが20mmのバウムクーヘン100に対する、切れ込み130で残した深さLb毎の結果を示す写真である。
図5(b)に示すように、切れ込み130で残した深さが2mmの場合では、バウムクーヘン100は、崩れてしまい、
図5(a)に示すように結果は「×」となった。
【0047】
また、切れ込み130で残した深さが3mmの場合、崩れたり崩れなかったりしたので、結果は「△」となった。一方、切れ込み130で残した深さが4mmの場合、バウムクーヘン100は、崩れなかったため、結果は「〇」となった。
【0048】
つまり、厚みLが20mmのバウムクーヘン100では、切れ込み130で残した深さLbが4mm以上、すなわち割合が「20.0%」以上であれば、輸送時に崩れないことが明らかとなった。ここで切れ込み130で残した深さLbの割合が「20.0%」以上とは、切れ込み130の深さLaの割合が「80%」以下であることを意味する。
【0049】
図5(c)は、厚みLが50mmのバウムクーヘン100に対する、切れ込み130で残した深さLb毎の結果を示す写真である。
図5(c)に示すように、切れ込み130で残した深さが3mmの場合では、バウムクーヘン100は、崩れてしまい、
図5(a)に示すように結果は「×」となった。なお
図5(c)には示していないが、切れ込み130で残した深さが2mmの場合も、バウムクーヘン100は、崩れてしまい、
図5(a)に示すように結果は「×」となった。
【0050】
また、切れ込み130で残した深さが4mmの場合、崩れたり崩れなかったりしたので、結果は「△」となった。一方、切れ込み130で残した深さが5mmの場合、バウムクーヘン100は、崩れなかったため、結果は「〇」となった。
【0051】
つまり、厚みLが50mmのバウムクーヘン100では、切れ込み130で残した深さLbが5mm以上、すなわち割合が「10.0%」以上であれば、輸送時に崩れないことが明らかとなった。ここで切れ込み130で残した深さLbの割合が「10.0%」以上とは、切れ込み130の深さLaの割合が「90%」以下であることを意味する。
【0052】
このように
図5(a)の結果から、バウムクーヘン100が輸送時に崩れないための、切れ込み130の深さLaは、バウムクーヘン100の厚みLの「80.0%」以下であることが理解される。
【0053】
したがってバウムクーヘン100では、切れ込み130の深さLaを、バウムクーヘン100の厚みLに対して「10%~80%」の割合に設定することで、バウムクーヘン100を手134、136できれいに割ることができ、さらに輸送時に崩れないようにすることもできる。
【0054】
図6は、本発明の他の実施形態におけるバウムクーヘン102Aおよびその製造方法を説明する図である。ここでは、
図6(a)に示す分割器108Aの押し切りによって、ホールのバウムクーヘン102から、ホールのバウムクーヘン102Aを製造する。
【0055】
分割器108Aは、軸部110の一端部118と枠部112とをつなぐ全ての刃が薄板116である点で、上記の分割器108と異なる。
図6(a)では、薄板116に代表的に1つだけ符号を付している。上記したように、薄板116は、軸部110の先端120および枠部112の下端122に到達せず、薄板114よりも縦に短い刃である。
【0056】
このような分割器108Aの押し切りにより、バウムクーヘン102には、短い刃である薄板116によって上記した未分割の切れ込み130が施される。このようにして、ホールのバウムクーヘン102から、複数(ここでは12)の切れ込み130が施されたホールのバウムクーヘン102Aを製造できる。
【0057】
またバウムクーヘン102Aの切れ込み130は、
図6(b)に代表的に1つだけ符号を付すが、薄板116の短い刃によって施された線状の切れ込みである。このように、切れ込み130が線状であるため、溝が細くなり、見た目が悪くならず商品価値が損なわれることもない。
【0058】
さらに切れ込み130は、複数の層106に対して直交する方向、すなわち外周132から穴104に向かう半径方向に沿って施されている。このような切れ込み130を施すことにより、バウムクーヘン102Aは、手134、136できれいに確実に割ることができる。
【0059】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、バウムクーヘンおよびその製造方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
100、102、102A…バウムクーヘン、104…穴、106…層、108、108A…分割器、110…軸部、112…枠部、114、116…薄板、118…軸部の一端部、120…軸部の先端、122…枠部の下端、124…軸部の他端部、126、128…バウムクーヘンの両端、130…切れ込み、132…バウムクーヘンの外周、134、136…手、138、140…バウムクーヘンの小ピース、142、144…小ピースの割り口、146…個包装袋