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特許7148988編地、その編地で編成された繊維製品、およびレッグウエア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】編地、その編地で編成された繊維製品、およびレッグウエア
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/16 20060101AFI20220929BHJP
   A41B 11/00 20060101ALI20220929BHJP
   A61F 13/08 20060101ALI20220929BHJP
   D04B 1/26 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
D04B1/16
A41B11/00 Z
A61F13/08
D04B1/26
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019525719
(86)(22)【出願日】2018-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2018023973
(87)【国際公開番号】W WO2018235965
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2017123209
(32)【優先日】2017-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592154411
【氏名又は名称】岡本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】安藤 嘉奈子
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 由衣
(72)【発明者】
【氏名】大西 修
(72)【発明者】
【氏名】木原 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】荒木 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】大沼 信秋
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-033914(JP,U)
【文献】特開2003-336106(JP,A)
【文献】特開2013-167038(JP,A)
【文献】特開昭59-043155(JP,A)
【文献】特開2016-209149(JP,A)
【文献】特表2011-510700(JP,A)
【文献】特開2017-183433(JP,A)
【文献】国際公開第2018/117004(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 11/00 - 11/14
A61F 13/08
D04B 1/00 - 1/28
D04B 21/00 - 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷発生糸を伸張させるまたは前記電荷発生糸の形状を変化させる応力によって電荷を発生する前記電荷発生糸により編成された電荷発生領域を有し、
前記電荷発生領域は、第1伸縮性を有する第1領域と、前記第1伸縮性よりも低い第2伸縮性を有する第2領域とを含むことを特徴とする編地。
【請求項2】
前記第2領域には、前記電荷発生糸が互いに接着している接着部が複数設けられており、
前記接着部のコース方向に沿った幅は、前記接着部のウェール方向に沿った幅よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の編地。
【請求項3】
足の指の爪先の裏面に対応する箇所に、前記第2領域が島状に複数配置されていることを特徴とする請求項1に記載の編地。
【請求項4】
前記第2領域は、前記電荷発生領域の一部が溶融されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の編地。
【請求項5】
前記第1領域と前記第2領域とは、編目構造が互いに異なっていることを特徴とする請求項1に記載の編地。
【請求項6】
前記第2領域は、前記電荷発生領域に増し糸されて編成されていることを特徴とする請求項1に記載の編地。
【請求項7】
電荷発生糸を伸張させるまたは前記電荷発生糸の形状を変化させる応力によって電荷を発生する前記電荷発生糸により編成された電荷発生領域を有し、
前記電荷発生領域は、ウェール方向の編目一つの長さが第1寸法である第1編目と、前記ウェール方向の編目一つの長さが前記第1寸法とは異なる第2寸法である第2編目とを同コース上に含むことを特徴とする編地。
【請求項8】
前記電荷発生領域のうち前記第2編目の部分には、前記電荷発生糸が互いに接着している接着部が複数設けられており、
前記接着部のコース方向に沿った幅は、前記接着部のウェール方向に沿った幅よりも大きいことを特徴とする請求項7に記載の編地。
【請求項9】
前記電荷発生領域は、圧電フィルムが芯糸に対して左旋回して撚られることで形成される前記電荷発生糸と、前記圧電フィルムが前記芯糸に対して右旋回して撚られることで形成される前記電荷発生糸と、が撚り合わされて編成されていることを特徴とする請求項1または7に記載の編地。
【請求項10】
足の指の爪先の裏面に対応する箇所に、前記電荷発生領域のうち前記第2編目の部分が島状に複数配置されていることを特徴とする請求項7に記載の編地。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の編地で編成されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項12】
前記繊維製品はレッグウエアであって、
褥瘡が発生する可能性がある足の部位に対応する箇所である褥瘡対応箇所に前記電荷発生領域が配置されており、
前記褥瘡対応箇所は、前記レッグウエアに形成された開口部の近傍、踝に対応する箇所、足関節部の甲側に対応する箇所、踵に対応する箇所、及び、足趾関節部に対応する箇所であることを特徴とする請求項11に記載の繊維製品。
【請求項13】
請求項1からのいずれか1項に記載の編地で編成されているレッグウエアであって、褥瘡が発生する可能性がある足の部位に対応する箇所である褥瘡対応箇所に前記第2領域が配置されており、
前記褥瘡対応箇所は、前記レッグウエアに形成された開口部の近傍、踝に対応する箇所、足関節部の甲側に対応する箇所、踵に対応する箇所、及び、足趾関節部に対応する箇所であることを特徴とするレッグウエア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編地、およびその編地により編成される繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣料用繊維製品等の繊維製品に対する抗菌・抗かび処理の様々な技術が知られている。例えば、特許文献1には、ポリエステル繊維の鎖状高分子の集合体の間隙に殺菌剤を侵入させて固定化する加工法が記載されている。上記加工法は、ポリエステル繊維製品と殺菌剤を含む水性液とを接触させて110~230℃に加熱することにより、ポリエステル繊維に抗菌・抗かび作用を持たせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国公開特許公報「特開昭60-151386号公報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術で加工された繊維は、長時間使用するとポリエステル繊維に付着させた殺菌剤が減少し、効果も減少するという問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、上記課題に鑑みなされたものであり、抗菌・抗かびの効果が長く持続する編地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る編地は、外部からのエネルギーによって電荷を発生する電荷発生糸により編成された電荷発生領域を有し、前記電荷発生領域は、第1伸縮性を有する第1領域と、前記第1伸縮性よりも低い第2伸縮性を有する第2領域とを含むことを特徴とする。
【0007】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る編地は、外部からのエネルギーによって電荷を発生する電荷発生糸により編成された電荷発生領域を有し、前記電荷発生領域は、ウェール方向の編目一つの長さが第1寸法である第1編目と、前記ウェール方向の編目一つの長さが前記第1寸法とは異なる第2寸法である第2編目とを同コース上に含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、抗菌・抗かびの効果を長く持続できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)は本発明の実施形態1に係るレッグウエアを足の甲側から見た斜視図であり、(b)は(a)を足裏側からみた斜視図である。
図2】(a)は上記レッグウエアの電荷発生糸(S糸と称する)の構成の一例を示す図であり、(b)は圧電フィルムの平面図であり、(c)は外力が加わった時の上記電荷発生糸を示す図であり、(d)は上記電荷発生糸の構成の他の例を示す図であり、(e)は上記レッグウエアの電荷発生糸(Z糸と称する)の構成の一例を示す図である。
図3】(a)~(f)は応力集中のしくみを説明する図である。
図4】(a)および(b)は伸縮領域および低伸縮領域において応力が集中する箇所を説明する写真である。
図5】(a)は上記レッグウエアの一部を拡大して、上記レッグウエアの静置状態を示す写真であり、(b)は上記レッグウエアの引張状態を示す写真であり、(c)は(b)を拡大した写真である。
図6】(a)~(d)は上記レッグウエアの変形例を説明する図である。
図7】(a)は本発明の実施形態2に係るレッグウエアを甲側から見た斜視図であり、(b)は(a)を足裏側からみた斜視図である。
図8】(a)~(f)は上記レッグウエアの変形例を示す図である。
図9】(a)~(e)は上記レッグウエアの他の変形例を示す図である。
図10】本発明の実施形態3に係るレッグウエアの左側面図である。
図11】上記レッグウエアの低伸縮領域の拡大図である。
図12】編地を伸張させることにより編地に歪みが生じた場合の応力の大きさを示す図である。
図13】(a)は、上記レッグウエアの一部である試料において、水滴が接着部に接触している様子を示す模式図であり、(b)は、上記レッグウエアとは異なるレッグウエアの一部である試料において、水滴が接着部に接触している様子を示す模式図である。
図14】接着部付近の電荷発生糸に加わる応力の大きさを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1について、図1図5に基づいて以下に説明する。なお、本実施形態では、レッグウエアを例に挙げて説明するが、本発明はレッグウエアに限らず、電荷発生糸で編成される編地、上記編地による繊維製品に適用できる。
【0011】
レッグウエア50は、外部からのエネルギーによって電荷を発生する電荷発生糸により編地が編成されている。そのため、抗菌・抗かびの効果が長く持続する。また、レッグウエア50は、電荷発生糸を用いて通常の編み方で編成されたレッグウエアと比較して、応力集中箇所をより多く設けているので、より多くの電荷を発生することができる。これにより、より強力な抗菌・抗かびの効果を得ることができる。以下にレッグウエア50について詳しく説明する。なお、本発明の一態様における「抗菌」とは、菌が弱体化する効果、及び菌を死滅する効果の両方を含む概念である。本発明の一態様における「抗かび」も当該概念と同様である。
【0012】
(レッグウエアの構成)
図1の(a)は本発明の実施形態1に係るレッグウエア50を足の甲側から見た斜視図であり、図1の(b)は図1の(a)を足裏側からみた斜視図である。レッグウエア50(編地)は、電荷発生糸10で編成されている電荷発生領域を有する。本実施形態では、レッグウエア50全体が電荷発生糸10で編成されているため、電荷発生領域はレッグウエア50全体となる。電荷発生領域は、図1の(a)および図1の(b)に示すように、伸縮領域1(第1領域)および低伸縮領域2(第2領域)を含む。
【0013】
(電荷発生糸)
図2の(a)はレッグウエア50の電荷発生糸10(S糸と称する)の構成の一例を示す図であり、図2の(b)は圧電フィルム12の平面図であり、図2の(c)は外力が加わった時の電荷発生糸10を示す図である。図2の(d)は電荷発生糸10の構成の他の例である電荷発生糸13を示す図であり、図2の(e)はレッグウエア50の電荷発生糸10(Z糸と称する)の構成の一例を示す図である。電荷発生糸10は、外部からのエネルギーによって電荷を発生する。ここで、外部からのエネルギーとは電荷発生糸の伸張や形状等を変化させる種々のエネルギーのことであり、例えば、電荷発生糸10を引っ張る力である。電荷発生糸10は、変形や重なりが伴うように編まれた状態で引っ張る力が加えられることにより局所的な応力が発生し、さらに電荷を発生しやすくなる。
【0014】
また、図2の(a)に示すように、圧電フィルム12が芯糸11に対して左旋回して撚られることで形成される糸はS糸と呼ばれ、図2の(e)に示すように、圧電フィルム12が芯糸11に対して右旋回して撚られることで形成される糸はZ糸と呼ばれる。PLLA(Poly L-LActide、ポリL-乳酸)フィラメントを束ねた撚糸はマルチフィラメント撚糸と呼ばれ、当該撚糸に張力が加えられると各フィラメント単位においてせん断方向の成分を持つようになり、各フィラメントは圧電効果による電圧を生じる。
【0015】
なお、S糸及びZ糸は、さらに撚り合わせた撚糸として使用されることも可能である。例えば、さらに撚り合わせた撚糸としては、S糸とZ糸とを撚り合わせたもの、ならびにS糸及びZ糸のいずれか一方のみを複数撚り合わせたものが挙げられる。なお、当該撚糸は、S糸またはZ糸に加えて天然繊維または化学繊維から適宜選択されたものを撚り合わせたものであってもよい。それらが撚り合わされてS糸及び/またはZ糸として編地を編成する。
【0016】
圧電フィルム12は、圧電体の一例である。圧電フィルム12は、例えば、圧電性ポリマーからなる。圧電フィルム12は、例えば、一軸延伸されたポリ乳酸のシートを、幅0.5~2.0mm程度に切り取られることにより生成される。ポリ乳酸のようなキラル高分子は、主鎖が螺旋構造を有する。キラル高分子は、一軸延伸されて分子が配向すると、圧電性を発現する。一軸延伸されたポリ乳酸からなる圧電フィルム12は、厚み方向を第1軸、延伸方向900を第3軸、第1軸および第3軸の両方に直交する方向を第2軸と定義したとき、圧電歪み定数として2つのテンソル成分を有する。したがって、ポリ乳酸は、例えば、一軸延伸された方向に対して45度の方向に歪みが生じた場合に、電荷を発生する。
【0017】
圧電フィルム12は、図2の(b)に示すように、長軸方向と延伸方向900とが一致している。圧電フィルム12は、例えば、図2の(a)に示すように、芯糸11に対して左旋回して撚られ、左旋回糸の電荷発生糸10となる。その場合、延伸方向900は、電荷発生糸10の軸方向に対して、左45度に傾いた状態となる。これにより、図2の(c)に示すように、電荷発生糸10に黒矢印の方向に外力が加わると、圧電フィルム12は、表面に電荷を生じる。左旋回糸と右旋回糸とでは、外力が加わるとそれぞれ異なる電荷、負電荷または正電荷、が発生する。つまり、左旋回糸では負電荷が発生し、右旋回糸では正電荷が発生する。そのため、左旋回糸と右旋回糸とで編地を編成すると左旋回糸と右旋回糸との間で電界が発生し、抗菌・抗かび性を発現する。
【0018】
また、図2の(d)に示す電荷発生糸10Aおよび電荷発生糸10Bは、圧電性ポリマーからなり、例えば紡糸したポリ乳酸の長繊維を互いに撚り合わせてなる。電荷発生糸13は、表面に負の電荷を生じる電荷発生糸10Aと、表面に正の電荷を生じる電荷発生糸10Bとを、図2の(d)に示すように撚り合せて構成される。これにより、電荷発生糸13によって電荷発生糸13単体で電場が生じる。
【0019】
従来から、電場により菌の増殖を抑制することができる旨が知られている。また、この電場を生じさせている電位により、汗、水分、または湿気等で形成された電流経路や、局部的なミクロな放電現象等で形成された回路を電流が流れることがある。この電流により菌の細胞膜が部分的に破壊されて菌の増殖を抑制する。
【0020】
電荷発生糸10を用いてレッグウエア50を編成した場合、着用時にウォーキング等でレッグウエア50が伸縮すると、電荷発生糸10に外力が加わり電荷発生糸10に電場が生じる。そのため、レッグウエア50は着用するだけで抗菌・抗かびの効果を発揮する。なお、本実施形態において菌とは、細菌、真菌、またはダニやノミ等の微生物を含む。
【0021】
(応力集中のしくみ)
編地に外力が加わった場合、どのように応力が集中するかを図3の(a)~(f)に基づき説明する。図3の(a)~(f)は編地を伸張させた場合の応力集中のしくみを説明する図である。より詳しくは、図3の(a)および(b)は編地に外力が加わっていない状態、図3の(c)および(d)は編地に外力が加わり始める状態、図3の(e)および(f)は編地に外力が加わっている状態を示す。図3の(a)、(c)、および(e)はそれぞれの状態の編地の一部を拡大した写真である。図3の(b)、(d)、および(f)は、それぞれの状態の電荷発生糸10を拡大して応力の集中箇所を示す図であり、応力集中箇所をハッチングで示している。
【0022】
図3の(a)~(d)に示すように、編地に外力が加わっても、しばらくは電荷発生糸10で編成される編目が変形し、編目が変形している最中は電荷発生糸10に強い応力が加わらない。編目が変形し終わると、図3の(e)および(f)に示すように、電荷発生糸10のカーブ部分に応力が集中する。このように、編地は織地などと比べて構造変形する割合(編目が変形する程度の大きさ)が大きいため、通常の編み方、例えば平編みで編成された編地に外力が加わっても、電荷発生糸10には大きな応力が加わり難い。その結果、電荷発生糸10から多くの電荷を発生せず、電荷発生糸10が持つ性能を最大限に引き出せているとはいえない。
【0023】
本実施形態は、電荷発生糸10が持つ性能を最大限に引き出すためのものであり、レッグウエア50は、電荷発生糸10がより多くの電荷を発生するように、伸縮領域1および低伸縮領域2を含む。これにより、レッグウエア50は、より多くの箇所で応力を集中させることができる。
【0024】
(伸縮領域、低伸縮領域)
伸縮領域1は、所定の伸縮性である第1伸縮性を発現する。伸縮領域1は、レッグウエア50のうち、低伸縮領域2以外の領域である。伸縮領域1は、例えば、平編みで伸縮可能に編成されている。伸縮領域1の一端は、挿入される足の爪先に対応する箇所であり、足の各指に対応して5つに分かれて袋状に編成されている。伸縮領域1の他端は、開口部3が編成されている。レッグウエア50は、例えば、長さが膝下まであるハイソックスでもあってよいし、ローソックスであってもよい。
【0025】
低伸縮領域2は、第1伸縮性よりも低い第2伸縮性を有する。低伸縮領域2は、図1の(b)に示すように、足の裏において、足の指の付け根に対応する箇所に点在して設けられている。伸縮領域1と低伸縮領域2とは伸縮性に差があるが、低伸縮領域2において溶融して固まった箇所は伸縮しないため、伸縮性(伸縮率)は0となる。
【0026】
本実施形態では、レッグウエア50に外力が加わった場合、伸縮領域1は伸縮するが、低伸縮領域2は伸縮しない非伸縮領域となっている。伸縮領域1および低伸縮領域2を含む編地に外力が加わった場合、どのように応力が集中するかを図4の(a)、図4の(b)、および図5の(a)~(c)に基づき説明する。図4の(a)および(b)は伸縮領域1および低伸縮領域2において応力が集中する箇所を説明する写真である。図5の(a)はレッグウエア50の一部を拡大して、レッグウエア50の静置状態を示す写真であり、図5の(b)はレッグウエア50をx方向およびy方向へ引っ張った場合の引張状態を示す写真であり、図5の(c)は図5の(b)の一部を拡大した写真である。
【0027】
伸縮領域1および低伸縮領域2を含む編地60をx方向に引っ張ると、図4の(a)に示すように、編目が細かくなる領域E1と編目が粗くなる領域E2が生じ、この編目が細かくなる領域E1に応力が集中する。また、図4の(b)に示すように、編目が細かい領域E1においては、伸縮領域1と低伸縮領域2との境目の応力集中部40に特に応力が集中する。
【0028】
レッグウエア50においても、伸縮領域1および低伸縮領域2が含まれる。そのため、図5の(a)~(c)に示すように、レッグウエア50が引張状態となると、モアレ現象により、低伸縮領域2は変形しないが、伸縮領域1の編目が変形し、編目が細かい領域が生じる。そのため、編目が細かい領域においては応力が集中するので電荷を多く発生する。また、伸縮領域1と低伸縮領域2の境界には特に応力が集中するので、当該境界には、さらに多くの電荷を発生する。
【0029】
低伸縮領域2は、例えば、伸縮領域1の一部を接着させることにより形成することができる。上記接着は、例えば、伸縮領域1の一部を溶融することにより可能となる。具体的には、電荷発生領域を編成する際、低伸縮領域2としたい箇所に熱可塑性繊維を含むように編成し、その熱可塑性繊維を熱で溶融することにより低伸縮領域2を形成することができる。接着する望ましい範囲は、同コースに隣接する2目以上の編目である。元となる伸縮領域1の編目は細かい方が望ましい。また、所望の箇所にシリコン樹脂などの別部材を重ねて固めることで、低伸縮領域2を形成することもできる。
【0030】
レッグウエア50に低伸縮領域2を設けて編地の伸縮を制限することで、部分的に応力集中が起こる。これにより、電荷を多く発生させることができるため、電界強度を高め、抗菌・抗かびの効果を増強させることができる。また、抗菌・抗かびの効果を高めたい箇所に選択的に応力集中させることが可能となる。
【0031】
〔変形例〕
本発明の実施形態1の変形例であるレッグウエア51・52・53について、図6の(a)~(d)に基づいて以下に説明する。当該変形例はレッグウエア50と比較し、電荷発生糸10に応力を集中させる方法が異なり、その他の構成は同様である。図6の(a)~(d)はレッグウエア50の変形例を説明する図である。詳しくは、図6の(a)は通常の編目(平編み)を拡大して示した図である。図6の(b)は実施形態1の変形例であるレッグウエア51の編目を拡大して示した図である。図6の(c)は実施形態1の他の変形例であるレッグウエア52の編目を拡大して示した図である。図6の(d)は実施形態1のさらに他の変形例であるレッグウエア53の編目を拡大して示した図である。
【0032】
レッグウエア51・52・53の編地の編目は、それぞれ、同コース上にウェール方向の編目一つの長さが第1寸法である第1編目31と、ウェール方向の編目一つの長さが第1寸法と異なる第2寸法である第2編目321・322・323とを含む。
【0033】
同コース上に含まれる編目を構成する電荷発生糸10の長さが異なる第1編目31、および第2編目321・322・323により、各編目の伸縮性が異なる。ここで、コースおよびウェールについて説明する。コースとはレッグウエア50の周方向に連続する編目の行であり、ウェールとはレッグウエア50の長さ方向に連続する編目の列である。コース方向はレッグウエア50の周方向を示し、ウェール方向は、レッグウエア50の長さ方向を示す。同コース上とは、レッグウエア50の周囲方向の同じ行上であることを示し、同ウェール上とは、レッグウエア50の長さ方向の同じ列上であることを示す。
【0034】
第1編目31は伸縮領域1に対応し、第2編目321・322・323は低伸縮領域2に対応する。言い換えると、伸縮領域1と低伸縮領域2とは、互いに異なる編目構造とすることによっても編成することができる。
【0035】
本変形例のように、編成方法を変えることで低伸縮領域2を編成することにより、接着の工程を減らすことができる。なお、実施形態1では、低伸縮領域2は非伸縮領域であったが、本変形例では低伸縮領域2は伸縮可能であり、第1伸縮性よりも低い第2伸縮性で伸縮する。以下に詳しく説明する。
【0036】
レッグウエア51の第2編目321はタック編みで編成される。第2編目321は、図6の(b)に示すように、例えば、あるコースで編目のループを次のコースのさらにその次のコースの糸とともに合わせることで編成する。そのため、1つの第2編目321は、同ウェール上に並ぶ3つの第1編目31に対応して隣接する。1つの第2編目321を構成する糸の長さは、同ウェール上に並ぶ3つの第1編目31を構成する糸の長さの合計よりも短くなる。第2編目321のウェール方向の伸縮幅(伸縮性)は上記3つ分の第1編目31の伸縮幅と比較して小さくなるので、当該箇所の動きが制限され、第2編目321のカーブ部分の応力集中部41に応力が集中する。
【0037】
レッグウエア52の第2編目322はフロート編みで編成される。第2編目322は、図6の(c)に示すように、例えば、あるコースで次のコースに糸をかけずに、糸を編地の裏に浮かせることで編成する。そのため、1つの第2編目322は、同ウェール上に並ぶ2つの第1編目31に対応して隣接する。1つの第2編目322を構成する糸の長さは、同ウェール上に並ぶ2つの第1編目31を構成する糸の長さの合計よりも短くなる。第2編目322のウェール方向の伸縮幅(伸縮性)は上記2つ分の第1編目31の伸縮幅と比較して小さくなるので、当該箇所の動きが制限され、第2編目322のカーブ部分の応力集中部42に応力が集中する。
【0038】
また、レッグウエア53のように、一目単位で編目の大きさ(度目)を変更することで伸縮性が異なる第1編目31、および第2編目323を編成し、編地の動きが制限される編地を編成することもできる。この場合、例えば、図6の(d)に示すように、1つの第2編目323を、同コース上で隣接する第1編目31よりも小さく編成する。1つの第2編目323を構成する糸の長さは、同コース上で隣接する第1編目31を構成する糸の長さよりも短くなる。そのため、第2編目323のウェール方向の伸縮幅(伸縮性)は隣接する第1編目31の伸縮幅と比較して小さくなるので、当該箇所編地の動きが制限され、第2編目323のカーブ部分の応力集中部43に応力が集中する。
【0039】
言い換えると、同コース上に存在する、第1編目31を構成する電荷発生糸10の長さと、第2編目321・322・323を構成する電荷発生糸10の長さが異なる編地に対して、例えば、引っ張る力が働いた場合、電荷発生糸10が短い編目(第2編目321・322・323)のカーブ部分を構成する箇所に応力が集中する。
【0040】
その他、目移し編み、パイル編み、または添え糸編みを用いても伸縮性が異なる編目を編成することができる。また、所望の箇所に別の糸を追加して編成する(増し糸する)ことで、伸縮性が異なる編目を編成することもできる。さらに、伸縮性を有する糸を同時に編み込むことにより、伸縮時の応力を補助することができる。
【0041】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係るレッグウエア50Aについて、図7の(a)および図7の(b)に基づいて以下に説明する。レッグウエア50Aは、レッグウエア50と比較し、低伸縮領域2に代えて、低伸縮領域2aを有する点が異なり、その他の構成は同様である。
【0042】
図7の(b)に示すように、足の裏において、足の指の付け根に対応する箇所だけでなく、足の指の股に対応する箇所も含めた爪先の裏面に対応する箇所に面形状を有する所望の大きさの低伸縮領域2aを島状に複数配置している。このような配置にすることにより編地に必要な伸縮性を保つことができる。なお、足の指は、菌・かびが繁殖し易い。そこで、足の指に対応する箇所に低伸縮領域2aを多く設けることで当該箇所により多くの電荷を発生させることができるので、抗菌・抗かびの効果を得ることができる。また、乾燥を避けるという観点からは、低伸縮領域2aの踵への設置は避けることが望ましい。
【0043】
靴下にかかわらず、抗菌・抗かびが必要な個所に面形状を有する所望の大きさの低伸縮領域を島状に複数配置することにより、編地に必要な伸縮性を保ちつつ抗菌・抗かびの効果を得ることができる。
【0044】
なお、実施形態2および後述する実施形態2の変形例における低伸縮領域は、接着により形成するのみでなく、実施形態1の変形例で説明した方法で編成されるものであってもよい。
【0045】
(変形例)
本発明の実施形態2の変形例であるレッグウエア50B~50Lについて、図8の(a)~(f)、および図9の(a)~(e)に基づいて以下に説明する。当該変形例であるレッグウエア50B・50C・50D・50E・50F・50G・50H・50I・50J・50K・50Lはレッグウエア50Aと比較し、低伸縮領域2aに代えて、低伸縮領域2b・2c・2d・2e・2f・2g・2h・2i・2j・2k・2lを含む点が異なり、その他の構成は同様である。
【0046】
レッグウエア50Bでは、図8の(a)に示すように、足底に対応する部分全面に低伸縮領域2bが設けられ、足の甲に相当する部分全面に伸縮領域1が設けられている。これにより、レッグウエア50Bは足底の伸びを抑えて足の甲の部分だけに伸縮性を与えることができ、足の甲側と裏側の境界に電荷を多く発生させることができる。
【0047】
また、デザインを考慮しつつ低伸縮領域を設けることも可能である。例えば、レッグウエア50Cでは、図8の(b)に示すように、足の裏側の爪先に対応する部分、および踵に対応する部分に円形の低伸縮領域2cが設けられ、さらに足の甲に対応する部分に円形の低伸縮領域2cが設けられている。
【0048】
また、レッグウエア全体に電荷を発生させたい場合は、図8の(c)~(f)に示す、レッグウエア50D・50E・50F・50Gの低伸縮領域2d・2e・2f・2gのように、レッグウエア全体に低伸縮領域を設けることが望ましい。例えば、レッグウエア50Dでは、レッグウエア50D全体に低伸縮領域2dがジグザグに連続して編成されたパターンが設けられている。レッグウエアの全体に低伸縮領域を設ける場合、低伸縮領域を設ける間隔を調整することで、発生する電荷量、およびレッグウエアの伸縮性を調整することができる。また、レッグウエア50Dは、特にレッグウエア50Dの伸縮性を抑えたいときに有効である。
【0049】
さらに、部分的に電荷を発生させたい場合は、図9の(a)~(e)に示す、レッグウエア50H・50I・50J・50K・50Lのように、低伸縮領域2h・2i・2j・2k・2lを部分的に点在させるように設けることが望ましい。例えば、レッグウエア50Hでは、レッグウエア50Hのアキレス腱に対応する部分に低伸縮領域2hが設けられている。低伸縮領域を所望の箇所に設けることで、抗菌・抗かびの効果を得たいとこにピンポイントで電荷を多く発生させることができる。レッグウエアにおいて低伸縮領域を設けるとレッグウエアが伸縮しにくくなるが、低伸縮領域を連続して設けないことにより、一定の伸縮性を保つことができる。
【0050】
また、図9の(a)に示す低伸縮領域2hは、図9の(a)においてレッグウエア50Hの裏側にもレッグウエア50Hの表側と同様に設けられている。すなわち、低伸縮領域2hは、レッグウエア50Hにおいて左右対称に設けられている。図9の(b)に示す低伸縮領域2iは、図9の(b)においてレッグウエア50Iの裏側にもレッグウエア50Iの表側と同様に設けられている。すなわち、低伸縮領域2iは、レッグウエア50Iにおいて左右対称に設けられている。
【0051】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3に係るレッグウエア50Mについて、図10に基づいて以下に説明する。図10は本発明の実施形態3に係るレッグウエア50Mの左側面図である。レッグウエア50Mは、レッグウエア50と比較し、伸縮領域1、および低伸縮領域2に代えて、伸縮領域1m、低伸縮領域21m~25m、および開口部70を有する点が異なり、その他の構成は同様である。
【0052】
レッグウエア50Mは、医療機関において深部静脈血栓症の予防のために患者に着用させる弾性ストッキングである。医療の現場では弾性ストッキングの着用により褥瘡が発生することが問題となっている。弾性ストッキングの着用により褥瘡が発生する可能性がある足の部位(褥瘡発生部位)は特定されている。当該皮膚が弾性ストッキングと擦れることによって創傷が発生し、上記創傷が細菌感染することで褥瘡が発生する。本実施形態は、レッグウエア50Mにおいて褥瘡発生部位に対応する箇所である褥瘡対応箇所に低伸縮領域を設ける。これにより、褥瘡対応箇所における電荷発生糸10の圧電効果を高めることで当該箇所の抗菌・抗かびの効果を高め、擦れにより皮膚の創傷が起きた場合であっても細菌の感染を防ぐ。
【0053】
伸縮領域1mは、弾性ストッキングとしての所定の伸縮性である第3伸縮性を有する。伸縮領域1mは、レッグウエア50のうち、低伸縮領域21m~25m以外の領域である。伸縮領域1mの一端は、挿入される足の爪先に対応する箇所であり、爪先に対応する箇所の甲側には開口部70が設けられている。開口部70により、レッグウエア50Mを脱がなくても足の血流の様子を外部から観察することができる。
【0054】
低伸縮領域21m~25mは、非伸縮領域である。言い換えると、低伸縮領域21m~25mは、第3伸縮性よりも低い第4伸縮性を有する。
【0055】
図10に示すように、開口部3(口ゴム部)においてレッグウエア50Mの周方向に沿って環状かつ帯状に、面形状を有する所望の大きさの低伸縮領域21mを島状に複数配置している。低伸縮領域22mは、踝に対応する箇所においてレッグウエア50Mの周方向に沿って環状かつ帯状に点在して設けられている。低伸縮領域23mは、足関節部の甲側に対応する箇所、具体的には脛骨と距骨の間に対応する箇所、において帯状に点在して設けられている。低伸縮領域24mは、踵に対応する箇所において点在して設けられている。低伸縮領域25mは、足趾関節部に対応する箇所においてレッグウエア50Mの周方向に沿って環状かつ帯状に点在して設けられている。
【0056】
伸縮領域1m、および低伸縮領域21m~25mが設けられている箇所はそれぞれ褥瘡対応箇所である。言い換えると、褥瘡対応箇所には電荷発生領域が配置されている。低伸縮領域21m~25mは接着により形成されているが、上記に限らず実施形態1の変形例で説明した方法で編成されるものであってもよい。
【0057】
また、レッグウエア50Mは、低伸縮領域21m~25mが点在している領域において全体が接着されている構成であってもよい。その場合、例えば、開口部3付近においてはレッグウエア50Mの周方向に沿って帯状の低伸縮領域21mが開口部3の褥瘡対応箇所に配置され、帯状の低伸縮領域21mと伸縮領域1mとの境界において応力が集中し、当該境界で抗菌・抗かび作用が増加する。当該境界には、例えば、図14に示す接着部22bと電荷発生糸10との間の境界付近が含まれる。
【0058】
図11は、レッグウエア50Mの低伸縮領域21mの拡大図である。図11に示すように、低伸縮領域21mには、接着部21bが複数設けられている。接着部21bは、低伸縮領域21mのうち、電荷発生糸10が互いに接着している部分である。接着部21bのコース方向に沿った幅は、接着部21bのウェール方向に沿った幅よりも大きい。レッグウエア50Mを引っ張る力が働いた場合、接着部21bに応力が集中する。
【0059】
図12は、編地を伸張させることにより編地に歪みd1が生じた場合の応力p1の大きさを示す図である。図12において、横軸は歪みd1(%)の割合であり、縦軸は応力p1(Mpa)の大きさを示している。図12では、レッグウエア50Mの一部を試料としたときの試料に加わる応力の大きさを測定している。
【0060】
応力の大きさを測定するときの条件は、その試料を3つ折りにして、3つ折りにされた試料の全長が100mmであり、引張速度が100mm/minであり、3つ折りにされた試料の断面積が5.333×10-6である。また、試料には50Nの力が加えられている。
【0061】
また、図12において、線L1は試料の伸縮領域に加わる応力p1の大きさを示しており、線L2は試料の低伸縮領域21mに設けられた接着部21bに加わる応力p1の大きさを示している。図12において、歪みd1=15%であるとき、試料の伸縮領域1mに加わる応力p1の大きさは0.41MPaであり、試料の低伸縮領域21mに設けられた接着部21bに加わる応力p1の大きさは0.78MPaであった。したがって、低伸縮領域21mに設けられた接着部21bに加わる応力p1の大きさは、伸縮領域1mに加わる応力p1の大きさよりも大きい。レッグウエア50Mにおいて、接着部21bに応力を強く生じさせることができる。
【0062】
図13の(a)は、レッグウエア50Mの一部である試料において、水滴80が接着部21bに接触している様子を示す模式図である。図13の(b)は、レッグウエア50Mとは異なるレッグウエアの一部である試料において、水滴80が接着部22bに接触している様子を示す模式図である。水滴80は菌を含む水滴である。
【0063】
図13の(b)に示す場合と同様に、レッグウエア50Mの低伸縮領域21mには、接着部21bの代わりに接着部22bが複数設けられていてもよい。このとき、接着部22bは、低伸縮領域21mのうち、電荷発生糸10が互いに接着している部分である。接着部22bのコース方向に沿った幅は、接着部22bのウェール方向に沿った幅よりも小さい。つまり、接着部21bはコース方向に長く、接着部22bはウェール方向に長い。
【0064】
レッグウエアが使用されるとき、レッグウエアはウェール方向に引っ張られる場合が多い。図13の(a)及び(b)に示すように、ウェール方向と垂直な方向であるコース方向に沿って接着部21bが延伸する部分と水滴80とが接触する面積は、当該方向に沿って接着部22bが延伸する部分と水滴80とが接触する面積より大きい。これにより、レッグウエアがウェール方向に引っ張られた場合、接着部21bに応力が生じる部分の面積は、接着部22bに応力が生じる部分の面積より大きくなる。よって、接着部21bによる抗菌・抗かびの効果は、接着部22bによる抗菌・抗かびの効果より高くなる。
【0065】
また、抗菌・抗かびの効果を調べるために、以下の引張試験及び静置試験(対照試験)を行った。引張試験とは、菌・かびが含まれる水に試料を浸し、試料を引っ張ることにより抗菌・抗かびの効果(抗菌・抗かび活性値)を調べる試験である。静置試験とは、菌・かびが含まれる水に試料を浸すことにより抗菌・抗かびの効果(抗菌・抗かび活性値)を調べる試験である。静置試験では試料は引っ張らない。
【0066】
抗菌活性値を調べる試験では、試料0.2gをバイエル瓶に入れ、接種菌液量0.1mlを試料に接種し、37±2℃で18±1時間培養を行う。非イオン界面活性剤0.05%を含む生理食塩水20mlを試料に加えて、試料から菌を洗い出す。菌の洗い出しの動作中において、菌液の中の菌を混釈平板培養法(コロニー法)または発光測定法(ATP法)により測定することにより、抗菌・抗かび活性値を算出する。一般的には、抗菌活性値は、2.0~2.2以上である必要がある。菌としては、黄色ブドウ球菌を用いることが多い。
【0067】
また、引張試験を様々な条件で行った結果を以下の表1及び表2に示す。表1は、接着部が設けられていない試料を用いて引張試験及び静置試験を行った結果を示す。表2は、接着部21bが設けられた試料を用いて引張試験及び静置試験を行った結果を示す。また、表1及び表2は、図12において、歪みd1=15%であるときの結果を示す。
【表1】
【0068】
【表2】
抗菌活性値の算出方法については、菌液吸収法(JIS L1902)に従って以下の式(1)を用いる。抗菌活性値をAとすると、抗菌活性値Aは、以下の式(1)によって求められる。なお、発光測定法の場合は、ATP(アデノシン三リン酸)の量から算出する。
【0069】
A=(logCt-logC0)-(logTt-logT0)=F-G・・・(1)
logC0は接種直後の対照試料の生菌数であり、logCtは18~24時間培養後の対照試料の生菌数であり、logT0は接種直後の試験試料の生菌数であり、logTtは18~24時間培養後の試験試料の生菌数である。また、Fは対照試料の菌の増殖値であり、Gは試験試料の菌の増殖値である。ここで、対照試料は、加工されていない標準布の試料であり、試験試料は、加工されている試料である。表1及び表2では、前記の式(1)を用いて抗菌活性値を算出している。なお、抗かび試験も同様に行われる。
【0070】
表1及び表2における抗かび試験において、「接種直後」の列には、試料がかびに接触した直後のかびの増殖値が示されており、「42時間培養後」の列には、試料がかびに接触してから42時間後のかびの増殖値が示されている。この42時間の間には、引張試験または静置試験が行われる。「引張試験後または静置試験後のかびの増殖値」の列には、引張試験後または静置試験後のかびの増殖値が示されている。
【0071】
引張試験後または静置試験後の増殖値は、試料がかびに接触してから42時間後のかびの増殖値から、試料がかびに接触した直後のかびの増殖値を差し引いた値である。抗かび活性値は、静置試験後のかびの増殖値から引張試験後のかびの増殖値を差し引いた値である。また、表1及び表2において、「引張試験」の行には、引張試験を行ったときの結果が示されており、「静置試験」の行には、静置試験を行ったときの結果が示されている。
【0072】
表1に示すように、接着部が設けられていない試料の場合、抗かび活性値は2.26となる。表2に示すように、接着部21bが設けられた試料の場合、抗かび活性値は3.94となる。よって、接着部21bが設けられた試料の抗かび活性値は、接着部が設けられていない試料の抗かび活性値よりも高い。つまり、接着部21bが設けられた試料の抗かびの効果は、接着部が設けられていない試料の抗かびの効果よりも高い。図12、表1、及び表2に示す結果より、応力が大きいほど、抗かびの効果も高くなる。
【0073】
図14は、接着部21b付近の電荷発生糸10に加わる応力の大きさを示す図である。図14に示すように、接着部21b付近では、電荷発生糸10のカーブ部分に応力が集中する。カーブ部分とは、図14に示すカーブ部分c1・c2である。カーブ部分c1・c2では、電荷発生糸10の他の部分と比べて、構造変形する割合が大きい。
【0074】
(付記事項)
以上の様な編地は、各種の衣料、医療部材等の製品に適用可能である。例えば、編地は、肌着(特にレッグウエア)、タオル、靴およびブーツ等の中敷き、スポーツウェア全般、帽子、寝具(布団、マットレス、シーツ、枕、枕カバー等を含む)、ペット関連商品(ペット用マット、ペット用服、ペット用服のインナー)、各種マット品(足、手、便座、またはバスマット等)、カーテン、シート(車、電車または飛行機等のシート)、ソファ、包帯、ガーゼ、マスク、医者および患者の服、サポーター、あるいは、スポーツ用品(ウェアおよびグローブのインナー、または武道で使用する籠手等)に適用することができる。
【0075】
〔まとめ〕
本発明の一態様に係る編地は、外部からのエネルギーによって電荷を発生する電荷発生糸により編成された電荷発生領域を有し、前記電荷発生領域は、第1伸縮性を有する第1領域と、前記第1伸縮性よりも低い第2伸縮性を有する第2領域とを含むことを特徴とする。
【0076】
上記構成によれば、編地には、外部からのエネルギーによって電荷を発生する電荷発生糸により電荷発生領域が編成されている。そのため、抗菌・抗かびの効果が長く持続する。
【0077】
また、電荷発生領域に含まれる第1領域と第2領域とは伸縮性に差があるため、例えば、編地を引っ張る力が働いた場合、第1領域と第2領域との境界に応力が集中する。そのため、例えば、第1領域のみの編地と比較して、応力が集中する部分を多く設けることができるため、電荷をより多く発生させることができる。その結果、電界強度を高め、抗菌・抗かびの効果を高めることができる。
【0078】
上記編地では、前記第2領域は、前記電荷発生領域の一部が溶融されて形成されていることが好ましい。
【0079】
上記構成によれば、第2領域は電荷発生領域の一部を溶融することにより形成されるため、第1領域は伸縮し、第2領域は伸縮しない。そのため、第1領域と第2領域との伸縮性の差が大きくなり、第1領域と第2領域との境界に応力が集中する。その結果、電荷をより多く発生させることができる。
【0080】
上記編地では、前記第1領域と前記第2領域とは、編目構造が互いに異なっていることが好ましい。
【0081】
上記構成によれば、第1領域と第2領域とを編み方を変えることで編成することができる。
【0082】
上記編地では、前記第2領域は、前記電荷発生領域に増し糸されて編成されていることが好ましい。
【0083】
上記構成によれば、電荷発生領域に増し糸することにより第2領域を編成することができる。
【0084】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る編地は、外部からのエネルギーによって電荷を発生する電荷発生糸により編成された電荷発生領域を有し、前記電荷発生領域は、ウェール方向の編目一つの長さが第1寸法である第1編目と、前記ウェール方向の編目一つの長さが前記第1寸法とは異なる第2寸法である第2編目とを同コース上に含むことを特徴とする。
【0085】
上記構成によれば、外部からのエネルギーによって電荷を発生する電荷発生糸により電荷発生領域が編成されている。そのため、抗菌・抗かびの効果が長く持続する。
【0086】
また、電荷発生領域は、同コース上に含まれているウェール方向の編目一つの長さが異なる第1編目および第2編目により、各編目の伸縮性が異なる。したがって、例えば、編地を引っ張る力が働いた場合、伸縮性が小さい編目のカーブ部分に応力が集中する。
【0087】
言い換えると、同コース上に存在する、第1編目を構成する電荷発生糸の長さと、第2編目を構成する電荷発生糸の長さが異なる編地に対して、引っ張る力が働いた場合、電荷発生糸が短い編目のカーブ部分を構成する箇所に応力が集中する。
【0088】
そのため、全てが第1編目で編成された編地と比較して、より応力が集中する部分ができるため、電荷をより多く発生させることができる。その結果、電界強度を高め、抗菌・抗かびの効果を高めることができる。
【0089】
上記繊維製品は上記編地で編成されていることが好ましい。上記構成によれば、編地の効果を有する繊維製品を編成することができる。
【0090】
上記繊維製品はレッグウエアであり、褥瘡が発生する可能性がある足の部位に対応する箇所である褥瘡対応箇所に前記電荷発生領域が配置されていることが好ましい。
【0091】
上記構成によれば、褥瘡対応箇所における細菌を抗菌することで細菌の感染を防ぐことができる。その結果、褥瘡の発生を防ぐことができる。
【0092】
上記編地で編成されているレッグウエアでは、褥瘡が発生する可能性がある足の部位に対応する箇所である褥瘡対応箇所に前記第2領域が配置されていることが好ましい。
【0093】
上記構成によれば、褥瘡対応箇所における細菌を抗菌することで細菌の感染を防ぐことができる。その結果、褥瘡の発生を防ぐことができる。
【0094】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0095】
1・1m 伸縮領域(第1領域)
2・2a・2b・2c・2d・2e・2f・2g・2h・2i・2j・2k・2l・21m・22m・23m・24m・25m 低伸縮領域(第2領域)
10・10A・10B・13 電荷発生糸
31 第1編目
50・50A・50B・50C・50D・50E・50F・50G・50H・50I・50J・50K・50L・50M・51・52・53 レッグウエア(編地、電荷発生領域)
321・322・323 第2編目
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14