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特許7148995高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミック及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミック及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/583 20060101AFI20220929BHJP
   C04B 35/645 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C04B35/583
C04B35/645
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020054230
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021031377
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-06-08
(31)【優先権主張番号】201910791250.4
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514276562
【氏名又は名称】燕山大学
【氏名又は名称原語表記】YANSHAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 438, Hebei Street, Haigang District, Qinhuangdao City, HeBei 066004 P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャオ チーション
(72)【発明者】
【氏名】チャン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウー インジュ
(72)【発明者】
【氏名】チャン ショアンショアン
(72)【発明者】
【氏名】フー ウェンタオ
(72)【発明者】
【氏名】ユイ トンリー
(72)【発明者】
【氏名】ホー チュイロン
(72)【発明者】
【氏名】シュイ ポー
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ジョンユアン
(72)【発明者】
【氏名】ティエン ヨンチュン
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-529611(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104086142(CN,A)
【文献】特開2000-007439(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108529572(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105481369(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0226528(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/583
C04B 35/645
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温圧縮強度が400MPa以上、室温総圧縮ひずみが9%以上、室温塑性ひずみが4%以上、室温弾性ひずみが4%以上である、
ことを特徴とする高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミック。
【請求項2】
前記室温弾性ひずみが5%以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミック。
【請求項3】
所定の重量のオニオン構造の球状窒化ホウ素ナノ粉末を計量して、プリプレス成型し、プリプレス成型後のプリプレスプリフォームを焼結金型に入れる工程A)と、
工程A)中のプリプレスプリフォームを焼結金型とともに放電プラズマ焼結装置又はホットプレス焼結装置中に入れて焼結する工程B)と、
冷却後に金型を取り出し、離型して高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミックブロックを得る工程C)と、
を含み、
工程B)で印加される焼結圧力の大きさは30MPa~50MPaで、焼結温度は1600℃~1800℃で、保温時間は5min~20minであることを特徴とする高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミックの調製方法。
【請求項4】
工程C)における冷却とは、工程B)の装置内の温度が室温になるまで自然に冷却することである、
ことを特徴とする請求項3に記載の高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミックの調製方法。
【請求項5】
工程A)において、焼結金型は黒鉛金型であり、黒鉛金型の周囲はカーボンフェルトで包まれている、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミックの調製方法。
【請求項6】
工程A)において、プリプレス成型は双方向で圧力を印加し、印加される圧力の大きさは2MPa~5MPaで、保圧時間は1分~5分である、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミックの調製方法。
【請求項7】
工程A)で用いられる原料は、オニオン構造の球状窒化ホウ素ナノ粉末であり、その粒径が10nm~1000nmである、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミックの調製方法。
【請求項8】
工程B)における焼結工程は、真空度が1×10-1Pa以上になるまで真空を引いた後に焼結圧力まで昇圧させ、焼結圧力が安定になった後に焼結温度まで昇温させ、高温焼結後に加熱を停止して圧力を開放させる、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミックの調製方法。
【請求項9】
工程B)における昇温の速度は、20℃/分~100℃/分である、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミックの調製方法。
【請求項10】
室温圧縮強度が400MPa以上、室温総圧縮ひずみが9%以上、室温塑性ひずみが4%以上、室温弾性ひずみが4%以上である、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミックの調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塑性セラミック調製技術分野に関し、特に高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミック及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックは、金属と異なって、脆性材料であり、室温下では可塑性がなく、わずかな弾性変形しか持たない。弾性限界を超えると(通常、弾性限界の変形は1%未満である)、セラミック中の亀裂が急速に拡大し、セラミック体全体を瞬時に破壊して、セラミックの工程での多くの応用を阻害する。六方晶窒化ホウ素(hBN)セラミックは、セラミック材料の一種類として、高熱伝導率、低誘電率、優れた潤滑性、耐食性、高い熱安定性及び優れた耐熱衝撃性などを有し、冶金、電子、化工、航空などの分野で非常に広い応用を有するが、強度が低く、弾性が低く、可塑性がないことはその応用を制限している。
【0003】
六方晶窒化ホウ素の結晶構造は、黒鉛に類似し、層内のホウ素原子と窒素原子とは、sp2共有結合方式で結合され、隣接する層は、比較的弱いファンデルワールス力で結合されている。このような層状結晶構造により、六方晶窒化ホウ素の非常に悪い焼結特性及び外力作用下でのスリップ変形が引き起こされるため、伝統的な焼結工程で得られる高純度六方晶窒化ホウ素セラミックは強度がいずれも比較的低く、一般的にいずれも130MPa未満であり、同時に弾性ひずみも比較的小さく(1%未満)、塑性変形も発見されていない。例えば、中国特許出願第201410422994.6号は、高純度窒化ホウ素セラミックを無圧焼結する方法に関する出願であり、当該方法で調製される六方晶窒化ホウ素セラミックは、機械的性能が比較的悪く、その実施例1で得られる六方晶窒化ホウ素セラミックは、その室温折り曲げ強度がわずか30.7MPaで、ビッカース硬度がわずか0.08GPaであり、断裂靭性が0.69MPa・m1/2である。焼結助剤(例:B、Al、ZrO、CaO、SiAlON、Si、AlN、SiC、YAG、YSiO、ムライトなど)を添加することにより得られる焼結助剤含有の複合セラミック材料は、その強度は改善されるが、普通、六方晶窒化ホウ素セラミックの熱伝導率、耐熱衝撃性及び誘電などの性能の低下が引き起こされ、その弾性も顕著に改善されず、同じく塑性が発見されていない。例えば、特許願第201510683710.3号の窒素化硅/六方晶窒化ホウ素ナノ複相セラミックの調製方法、特許願第201410833418.0号のナノ級六方晶窒化ホウ素/二酸化珪素多相セラミック材料の調製方法が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術課題とは、高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミック及びその調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記技術課題を解決するために、室温圧縮強度が約400MPa以上、室温総圧縮ひずみが約9%以上、室温塑性ひずみが約4%以上、室温弾性ひずみが約4%以上(約5%以上であることが好ましい)である、高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミックという技術案を採用している。
【0006】
また、本発明は、高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミックの調製方法を開示し、当該調製方法は、
所定の重量のオニオン構造の球状窒化ホウ素ナノ粉末を計量して、プリプレス成型し、プリプレス成型後のプリプレスプリフォームを焼結金型に入れる充填工程A)と、
工程A)中のプリプレスプリフォームを焼結金型とともに放電プラズマ焼結装置又はホットプレス焼結装置中に入れて焼結する焼結工程B)と、
冷却後(好ましくは、装置内の温度が室温になるまで自然に冷却した後)に金型を取り出し、離型して高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミックブロックを得る排出工程C)と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記の技術案を採用することにより、高強度、高可塑性、高弾性の窒化ホウ素緻密セラミックを取得する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1(a)は、本発明の実施例1で調製される生成物の室温一軸圧縮負荷除荷応力-ひずみグラフであり、図1(b)は、本発明の実施例1で調製される生成物の荷重によるビッカース硬度の変化図であり、図1(c)は、本発明の実施例1で調製される生成物のX線回折図である。
図2図2(a)は、本発明の実施例2で調製される生成物の室温一軸圧縮負荷除荷応力-ひずみグラフであり、図2(b)は、本発明の実施例2で調製される生成物の荷重によるビッカース硬度の変化図である。
図3図3(a)は、本発明の実施例3で調製される生成物の室温一軸圧縮負荷除荷応力-ひずみグラフであり、図3(b)は、本発明の実施例3で調製される生成物の荷重によるビッカース硬度の変化図であり、図3(c)は、本発明の実施例3で調製される生成物のX線回折図である。
図4図4(a)は、本発明の実施例4で調製される生成物の室温一軸圧縮負荷除荷応力-ひずみグラフであり、図4(b)は、本発明の実施例4で調製される生成物の荷重によるビッカース硬度の変化図である。
図5図5(a)は、本発明の実施例1~5で用いられるオニオン構造球状窒化ホウ素ナノ粉末の形態図であり、図5(b)は、本発明の実施例1~5で用いられるオニオン構造球状窒化ホウ素ナノ粉末の電子顕微鏡構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、数量詞で修飾しない場合は、特に明示的に1つのものに限定するか、又は文の文脈から単数のものを指すことが当業者に明らかである場合を除き、複数のものを含み得る。
【0010】
本明細書で数値範囲が開示されている場合、この範囲は連続的であり、範囲の最小値と最大値、及び最小値と最大値の間の各値を含む。また、範囲が整数を示す場合、この範囲の最小値と最大値の間のすべての整数を含む。また、複数の範囲を提供して特徴又は特性を説明する場合、これら範囲を組み合わせて使用してもよい。即ち、特に明記しない限り、本明細書で開示されるすべての範囲は、そこに含まれる有りと有らゆるサブ範囲が含まれると理解されるべきである。例えば、「1~10」の指定範囲には最小値1と最大値10の間の有りと有らゆるサブ範囲が含まれるとみなされるべきである。また、本発明の各構成要素の使用範囲には、本明細書に記載の下限及び上限の任意の組み合わせが含まれ、各具体的な実施例における当該構成要素の具体的な含有量を上限又は下限の組み合わせとして構成される範囲も含まれる。これらの範囲は全て本発明の範囲に含まれる。
【0011】
本発明は、室温圧縮強度が約400MPa以上、室温総圧縮ひずみが約9%以上、室温塑性ひずみが約4%以上、室温弾性ひずみが約4%以上(約5%以上であることが好ましい)である、高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミックを提供する。
【0012】
本明細書において、当業者によって理解されるように、「約」とは、当該用語の具体的な科学的文脈において、それによって定義される数字、パラメーター、又は特徴が特定の範囲内(例えば、±5%)の正と負のパーセンテージ誤差を可能にすることを意味する。なお、本明細書で使用する数量に関する全ての数字、数値、及び表現は様々な測定誤差の影響を受けるため、特に明記しない限り、全ての特定の数値は「約」という用語によって暗示的に修飾していると理解できる。
【0013】
本明細書において、「高可塑性」セラミックとは、当該セラミック材料の室温塑性ひずみが約3%以上、好ましくは約4%以上、より好ましくは約5%以上であることを意味する。
【0014】
本明細書において、「高弾性」セラミックとは、セラミック材料の室温弾性ひずみが約3%以上、好ましくは約4%以上、より好ましくは約5%以上であることを意味する。
【0015】
本明細書において、「緻密」セラミックとは、理論密度に対するセラミック材料の測定密度の相対百分率を指し、約85パーセント以上、好ましくは約90パーセント以上、より好ましくは約92パーセント以上、最も好ましくは約94%以上である。
【0016】
本発明の高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミックは、以下の調製方法で取得でき、当該調製方法は、
所定の重量のオニオン構造の球状窒化ホウ素ナノ粉末を計量して、プリプレス成型し、プリプレス成型後のプリプレスプリフォームを焼結金型に入れる充填工程A)と、
工程A)中のプリプレスプリフォームを焼結金型とともに放電プラズマ焼結装置又はホットプレス焼結装置中に入れて焼結する焼結工程B)と、
冷却後(好ましくは、装置内の温度が室温になるまで自然に冷却した後)に金型を取り出し、離型して高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミックブロックを得る排出工程C)と、を含む。
【0017】
オニオン構造の球状窒化ホウ素ナノ粉末を使用する場合、球状窒化ホウ素ナノ粉末は層状六方晶窒化ホウ素粉末に比べてよりよい流動性を有し、焼結過程でのインタースティシャルを促進し、比較的低い温度での緻密な焼結体の取得に有利である一方、オニオン構造の窒化ホウ素の内部には大量のしわが含まれ、圧縮過程でsp3結合が形成し易く、焼結体の強度を向上させる。
【0018】
好ましくは、プリプレス成型は、双方向で圧力を印加する。双方向で圧力を印加することにより、プリプレス成型金型内のオニオン構造の球状窒化ホウ素ナノ粉末は、双方向で力を受けることができ、プリプレスプリフォームの上下の圧力勾配を低下できる。そのため、一方向の圧力の印加によって、上下の圧力勾配が大き過ぎて、プリプレスプリフォームの上下の密度の差が比較的大きくなり、焼結後のブロックの全体的な緻密度に影響することを回避できる。双方向の圧力の印加は、粉末をさらに緻密に圧縮させ、後続のプリプレスプリフォームの焼結に有利である。
【0019】
好ましくは、黒鉛金型の周囲はカーボンフェルトで包まれ、カーボンフェルトは黒鉛金型の真中の隙間を囲んで、黒鉛金型中の熱拡散を減らし、黒鉛金型の内部の温度勾配を減らして、焼結体の微細構造及び機械的性能の不均一を回避できる。
【0020】
好ましくは、焼結圧力は30MPa~50MPaに設定され、この圧力範囲内にある場合、比較的低い温度下での緻密な焼結体の取得を保証でき、印加圧力が比較的小さく、産業的コストを低下させ、産業的に大量に生産し易くするとともに、当該圧力範囲はオニオン構造の球状窒化ホウ素ナノ粉末の相転移速度を制御でき、結晶の成長が速すぎることを防止できる。
【0021】
本発明の幾つかの好ましい実施形態において、工程A)において、焼結金型は黒鉛金型であり、黒鉛金型の周囲はカーボンフェルトで包まれている。
【0022】
本発明の幾つかの好ましい実施形態において、工程A)において、プリプレス成型は双方向で圧力を印加し、印加される圧力の大きさは2MPa~5MPaで、保圧時間は1分~5分である。
【0023】
本発明の幾つかの好ましい実施形態において、工程A)で用いられる原料は、オニオン構造の球状窒化ホウ素ナノ粉末であり、その粒径が10nm~1000nmである。
【0024】
本発明の幾つかの好ましい実施形態において、工程B)における焼結工程は、真空度が1×10-1Pa以上になるまで真空を引いた後に焼結圧力まで昇圧させ、焼結圧力が安定になった後に焼結温度まで昇温させ、高温焼結後に加熱を停止して圧力を開放させる。
【0025】
本発明の幾つかの好ましい実施形態において、工程B)で印加される焼結圧力の大きさは30MPa~50MPaで、焼結温度は1600℃~2000℃で、保温時間は1分~30分である。
【0026】
本発明の幾つかの好ましい実施形態において、工程B)における焼結方式は、放電プラズマ焼結又はホットプレス焼結である。
【0027】
本発明の幾つかの好ましい実施形態において、工程B)における昇温の速度は、20℃/分~100℃/分である。
【実施例
【0028】
以下、実施例と組み合わせて本発明をさらに詳しく説明する。
【0029】
実施例1
本実施例の高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミックの調製方法は、以下の工程を含む。
工程A)充填:7gの粒径が10nm~1000nmであるオニオン構造の球状窒化ホウ素ナノ粉末を計量して、双方向で圧力を印加するプリプレス成型を行い、オニオン構造の球状窒化ホウ素ナノ粉末をプリプレス成型金型内に置き、印加圧力の大きさが5MPaで、保圧時間が1分であり、プリプレス成型金型は内径20mmの円型ステンレス鋼金型であり、プリプレス成型後のプリプレスプリフォームを焼結金型に入れ、焼結金型は黒鉛金型であり、黒鉛金型の周囲はカーボンフェルトで包まれている。
【0030】
工程B)焼結:工程A)中のプリプレスプリフォームを焼結金型とともに放電プラズマ焼結装置中に入れて焼結し、焼結方式は放電プラズマ焼結である。焼結工程において、真空度が1×10-1Paになるまで真空を引いた後に焼結圧力まで昇圧させ、焼結圧力の大きさは50MPaであり、焼結圧力が安定になった後に焼結温度まで昇温させ、昇温の速度が100℃/分で、焼結温度が1600℃で、保温時間が5分であり、高温焼結後に加熱プログラムをオフにして圧力を開放させる。焼結工程において、真空をかけずに焼結圧力まで昇圧してもよいが、プリプレスプリフォームには一定量の気孔が含まれ、ここで、水蒸気、水素、酸素は、溶解及び拡散過程によって密閉気孔から脱出でき、一酸化炭素、二酸化炭素及び窒素ガスなどは、溶解度が比較的低いため、密閉気孔から脱出し難い。プリプレスプリフォームが真空条件下に置かれているため、真空度が高ければ高いほど、ガスが密閉気孔から脱出し易く、最終的に調製される生成物の緻密度が向上し易いが、真空度が高ければ高いほど、真空を引く時間がより長くなり、生産コストが増加し易い。本発明の実施例はいずれも真空度が1×10-1Paになった後昇圧させる。
【0031】
本実施例で用いられる放電プラズマ焼結装置は住友石炭鉱業株式会社製のSPS-3.20MK-IVであるが、後続の実施例で用いられるホットプレス焼結装置は日本富士電波工業会社製のHIGH-MULTI-5000である。
【0032】
工程C)排出:装置内の温度が室温になるまで自然に冷却した後金型を取り出し、離型して高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミックブロックを得る。
【0033】
本発明は、調製される生成物である高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミックブロックの圧縮強度及び塑性ひずみをテストする時に材料機械的性能試験機を使用し、室温下でテストサンプルに対して各性能テストを行い、テストサンプルは円筒体である。テストサンプルである円筒体のサイズは、直径が3mmで、高さが4.5mmである。材料機械的性能試験機は、負荷ひずみ速度が1×10-5~1×10-2で、硬度のテストで用いられる微小硬度試験機は、ドイツKB Pruftechnik GmbH社製のKB-5BVZである。調製される生成物である高強度高可塑性窒化ホウ素セラミックブロックのテストにはビッカース圧子が用いられ、荷重が20g~500gで、保圧が30sであり、異なる荷重下で硬度を測定して硬度漸近線をフィッティングでき、即ち、テストサンプル硬度が漸近線で示される硬度である。
【0034】
図1(a)に示す実施例1で調製される生成物の一軸圧縮負荷除荷応力-ひずみグラフにおいて、圧縮強度は620MPaであり、応力ひずみグラフは明らかな非線形特徴を有し、ここで、塑性変形が8%で、弾性ひずみが5%で、総圧縮ひずみが13%である。図図1(b)に示すように、調製される生成物は、ビッカース硬度が1.04GPaである。図1(c)は、本発明の実施例1で調製される生成物のX線回折図を示し、実施例1で得られる焼結体は、構造が完全に黒鉛化されておらず、六方晶窒化ホウ素様構造を有している。本実施例1で調製される生成物に対して、アルキメデス排水法によって測定すると、その焼結体密度は2.10g/cmであり、理論密度の96%である。
【0035】
実施例2
本実施例の高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミックの調製方法は、そのプロセス工程が実施例1に似ていて、実施例1と異なる具体的なプロセスパラメータは、表1中の実施例2を参照することができる。
【0036】
図2(a)に示す実施例2で調製される生成物の一軸圧縮負荷除荷応力-ひずみグラフにおいて、圧縮強度は614MPaであり、応力ひずみグラフは明らかな非線形特徴を有し、塑性変形が6.3%で、弾性ひずみが4.9%で、総圧縮ひずみが11.2%である。図2(b)に示すように、調製される生成物は、ビッカース硬度が0.91 GPaである。本発明の実施例2で調製される生成物は、実施例1に似ている結晶構造を有する。本実施例2で調製される生成物に対して、アルキメデス排水法によって測定すると、その焼結体密度は2.09g/cmであり、理論密度の95.4%である。
【0037】
実施例3
本実施例の高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミックの調製方法は、そのプロセス工程が実施例1に似ていて、実施例1と異なる具体的なプロセスパラメータは、表1中の実施例3を参照することができる。
【0038】
図3(a)に示す実施例3で調製される生成物の一軸圧縮負荷除荷応力-ひずみグラフにおいて、圧縮強度は501MPaであり、応力ひずみグラフは明らかな非線形特徴を有し、塑性変形が4.8%で、弾性ひずみが4.8%で、総圧縮ひずみが9.6%である。図3(b)に示す本発明の実施例3で調製される生成物のX線回折図において、実施例3で調製される生成物は、実施例1に類似の不完全に黒鉛化された六方晶様窒化ホウ素構造を有する。本実施例1で調製される生成物に対して、アルキメデス排水法によって測定すると、その焼結体密度は2.07g/cmであり、理論密度の95%である。
【0039】
実施例4
本実施例の高可塑性高弾性窒化ホウ素緻密セラミックの調製方法は、そのプロセス工程が実施例1に似ていて、実施例1と異なる具体的なプロセスパラメータは、表1中の実施例4を参照することができる。
【0040】
図4(a)に示す実施例4で調製される生成物の一軸圧縮負荷除荷応力-ひずみグラフにおいて、圧縮強度は460MPaであり、応力ひずみグラフは明らかな非線形特徴を有し、塑性変形が4%で、弾性ひずみが5.1%で、総圧縮ひずみが9.1%である。図4(b)に示すように、調製される生成物は、ビッカース硬度が0.75 GPaである。本発明の実施例4で調製される生成物は、実施例1に類似の結晶構造を有する。本実施例4で調製される生成物に対して、アルキメデス排水法によって測定すると、その焼結体密度は2.07g/cmであり、理論密度の95%である。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
本具体的な実施形態の実施例は全て本発明の好ましい実施例であって、本発明の保護範囲を限定するものではない。よって、本発明の構造、形状、原理などに従って行われる全ての同等の変更は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【0044】
本発明の明細書は、様々な構成要素として選択可能な材料を列挙しているが、当業者であれば、上記の構成材料の列挙は限定的でも網羅的でもなく、本発明の説明において言及されていない同等の材料によって置き替えても、依然として本発明の目的を実現できることは、理解すべきである。本明細書で言及された具体的な実施例は、例として本発明の範囲を限定するのではなく、単に説明のためのものである。
【0045】
また、本発明の各構成要素の使用範囲には、説明に記載された任意の下限及び任意の上限の任意の組み合わせが含まれ、各具体的な実施例における構成要素の具体的な含有量を上限又は下限として組み合わせて形成される任意の範囲も含まれ、これらの範囲は全て本発明の範囲に含まれるが、スペースを節約するために、これらの組み合わせによる範囲は明細書には記載されていない。本明細書に列挙された本発明の各特徴は、本発明の他の任意の特徴と組み合わせることができ、これら組み合わせも全て本発明の範囲に含まれるが、スペースを節約するために、これらの組み合わせによる範囲は明細書には記載されていない。
図1
図2
図3
図4
図5