(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】抗菌性組成物およびそれを用いた抗菌処理用エアゾール組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 59/16 20060101AFI20220929BHJP
A01N 25/08 20060101ALI20220929BHJP
A01N 37/40 20060101ALI20220929BHJP
A01N 25/06 20060101ALI20220929BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20220929BHJP
A61L 2/22 20060101ALI20220929BHJP
B05B 9/04 20060101ALN20220929BHJP
A61L 101/02 20060101ALN20220929BHJP
A61L 101/34 20060101ALN20220929BHJP
A61L 101/38 20060101ALN20220929BHJP
A61L 101/32 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
A01N59/16 A
A01N25/08
A01N37/40
A01N25/06
A01P1/00
A61L2/22
B05B9/04
A61L101:02
A61L101:34
A61L101:38
A61L101:32
(21)【出願番号】P 2020098044
(22)【出願日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000197975
【氏名又は名称】石原ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126310
【氏名又は名称】山口 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】高岡 要
(72)【発明者】
【氏名】高島 大樹
【審査官】▲高▼岡 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-100205(JP,A)
【文献】特開昭63-250325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌剤として無機系抗菌剤の銀担持ゼオライトを0.05~2.0質量%と、
分散剤としてスメクタイト族粘土鉱物
である3八面体型の水系スメクタイトを0.02~6.0質量%
かつ銀担持ゼオライト100質量部に対して30質量部以上と、
アルコール性有機溶剤を
25~55質量%と、
残量としての水と、
を含有してなることを特徴とする抗菌性組成物。
【請求項2】
前記分散剤は、スメクタイト族粘土鉱物がサポナイト、スティブンサイト及びヘクトライトからなる群の中から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の抗菌性組成物。
【請求項3】
前記抗菌剤として芳香族環を有する有機系抗菌剤を含有してなる請求項1又は請求項2に記載の抗菌性組成物。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の抗菌性組成物と噴射剤とを含有してなることを特徴とする抗菌処理用エアゾール組成物。
【請求項5】
前記噴射剤は、ジメチルエーテル及び/又は液化石油ガスである請求項4に記載の抗菌処理用エアゾール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性組成物およびそれを用いた抗菌処理用エアゾール組成物の技術に関し、より詳細には、抗菌剤が含まれていない製品に抗菌性を付与し、又は抗菌性をさらに高める用途に使用される抗菌性組成物およびそれを用いた抗菌処理用エアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、抗菌技術の分野においては、有機系抗菌剤と比較して安全性、耐熱性及び永続性に優れることから、銀、銅、亜鉛等の抗菌金属を主体とした無機系抗菌剤について検討が進められている。特に、多孔性セラミックの一種であるゼオライトに銀イオンを担持させた銀担持ゼオライトは、銀イオンの抗菌性能を有効に発揮でき、また使用しやすい形態であることから、高い安全性が求められる分野での抗菌成分として注目されている。
【0003】
この種の無機系抗菌剤は、母材となる樹脂成分や塗料成分等とともに配合して当初から製品中に含有させるだけでなく、無機系抗菌剤を含む抗菌性組成物(原液)を噴射剤とともに配合した抗菌処理用エアゾール組成物とし、これを容器に加圧充填して対象物に噴霧することで、抗菌成分が含まれていない製品や、抗菌性をさらに高めたい製品の表面に添着させることができる。特に、エアゾール組成物としては、銀担持ゼオライトのように抗菌金属を多孔性セラミック等に担持させた無機系抗菌剤を用いることで、対象物の表面に添着された抗菌成分の蒸散を抑制でき、安定した抗菌効果を持続させることができる。
【0004】
従来の抗菌処理用エアゾール組成物に用いられる抗菌性組成物としては、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されるように、無機系抗菌剤としての銀担持ゼオライトをアルコール性有機溶剤又は水等の溶媒に分散させた抗菌性組成物が提案されている。かかる抗菌性組成物が原液として噴射剤と配合されることで、抗菌処理用のエアゾール組成物(スプレー製品)が得られる。
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に開示される抗菌性組成物のように、溶媒として有機溶剤の配合量(原液中95質量%以上)が多いと、銀担持ゼオライトの比重が大きいため、溶媒中で沈降や凝集を生じ易くてその再分散性も悪く、これを抗菌処理用エアゾール組成物の原液として使用した場合には、スプレー製品として対象物に期待されるような抗菌性を付与できないという問題があった。また、火気により引火し易いことから取扱性が悪く、噴霧時に皮膚や粘膜への刺激の原因となる恐れもあった。
【0006】
他方、特許文献2に開示される抗菌性組成物のように、溶媒として水の配合量(原液中90質量%以上)が多いと、これを抗菌処理用エアゾール組成物の原液として使用した場合には、対象物へ噴霧した後の乾燥性が悪く、液だれして任意の箇所に抗菌性を付与できないという問題があった。特に、部分的に菌体が付着し易く、菌体の繁殖により健康や衛生に重大な問題をもたらす恐れがある絨毯、マット、ソファー等の繊維製品に向けたスプレー製品としては乾燥に時間がかかり、実用的でなはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭63-250325号公報
【文献】特開2005-89414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明では、抗菌性組成物およびそれを用いた抗菌処理用エアゾール組成物に関し、前記従来の課題を解決するもので、無機系抗菌剤の分散性に優れ、対象物に取扱性よく安定して抗菌性を付与することができる抗菌性組成物およびそれを用いた抗菌処理用エアゾール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、銀担持ゼオライトを含む抗菌性組成物として、水とアルコール性有機溶剤との混合溶媒中に分散剤として所与のスメクタイト族粘土鉱物を好適に配合することで、無機系抗菌剤の分散性に優れ、対象物に取扱性よく安定して抗菌性を付与することができる従来にない抗菌性組成物が得られることを見出し、本発明の完成に至ったのである。
【0010】
すなわち、請求項1においては、抗菌剤として無機系抗菌剤の銀担持ゼオライトを0.05~2.0質量%と、分散剤としてスメクタイト族粘土鉱物である3八面体型の水系スメクタイトを0.02~6.0質量%かつ銀担持ゼオライト100質量部に対して30質量部以上と、アルコール性有機溶剤を25~55質量%と、
残量としての水と、を含有してなるものである。
【0013】
請求項2においては、前記分散剤は、スメクタイト族粘土鉱物がサポナイト、スティブンサイト及びヘクトライトからなる群の中から選ばれる少なくとも一種であるものである。
【0014】
請求項3においては、前記抗菌剤として芳香族環を有する有機系抗菌剤を含有してなるものである。
【0015】
請求項4においては、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の抗菌性組成物と噴射剤とを含有してなるものである。
【0016】
請求項5においては、前記噴射剤は、ジメチルエーテル及び/又は液化石油ガスであるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、無機系抗菌剤の分散性に優れ、対象物に取扱性よく安定して抗菌性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の抗菌性組成物の抗菌性試験結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、発明を実施するための形態を説明する。
【0020】
本発明の抗菌性組成物は、無機系抗菌剤として、多孔性セラミックの一種であるゼオライトに銀イオンを担持させた銀担持ゼオライトを含有してなるものである。銀担持ゼオライトは、銀イオンをゼオライトの骨格構造内に含有することで、抗菌効果とともに消臭効果も併せて発現させることができ、後述する有機系抗菌剤が併用されることで相乗的な効果も期待できる。
【0021】
銀担持ゼオライトは、抗菌性組成物において所望の抗菌効果が発揮されるものであれば特に限定されないが、例えば、銀担持ゼオライト中の銀担持量が0.1~10.0質量%の範囲で含有されるものを使用すればよい。そのような銀担持ゼオライトとしては、例えば、市販品であるゼオミックAW10N(商品名、シナネンゼオミック社製)、ゼオミックAJ10N(商品名、シナネンゼオミック社製)、ゼオミックAK10N(商品名、シナネンゼオミック社製)等として入手可能である。
【0022】
無機系抗菌剤の配合量は、抗菌性組成物の全量に対して0.05~2.0質量%の範囲で用いられ、好ましくは0.1~1.0質量%の範囲、より好ましくは0.1~0.5質量%の範囲で用いられる。無機系抗菌剤の含有量が0.05質量%より少ないと抗菌効果が低く、一方で2.0質量%より多いと分散性が低減して固形分が析出するため、抗菌処理用エアゾール組成物の原液として抗菌性組成物を使用する場合に噴射不能を起こす恐れがあるからである。
【0023】
本発明の抗菌性組成物は、無機系抗菌剤の遅効的な抗菌効果を補完し、即効的な抗菌性能の発現が期待できることから、必要に応じて有機系抗菌剤が好ましく配合される。有機系抗菌剤としては、公知なものとしてフェノール系、イソチアゾロン系、ピリジン・キノリン系、イミダゾール系、チアゾール系、アルコール系、有機ハロゲン系、カルボン酸系、エステル系、エーテル系、有機窒素系、含窒素硫黄系、第四級アンモニウム塩系等が挙げられる。特に、これらの中では、抗菌性組成物の変色抑制効果が期待できることから芳香族環を有する有機系抗菌剤が好ましく用いられる。
【0024】
芳香族環を有する有機系抗菌剤としては、例えば、4-イソプロピル-3-メチル-フェノール、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、オルトフェニルフェノール、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸ベンジル、パラクロロメタキシレノール、パラクロロメタクレゾール等のフェノール系抗菌剤;ベンゾイソチアゾリノン等のベンゾイソチアゾロン系抗菌剤;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の第四級アンモニウム塩系抗菌剤の一種;フェノキシエタノール等のアルコール系抗菌剤の一種;2-(4-チアゾリル)-ベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系抗菌剤;パラヒドロキシ安息香酸メチルエステル等のエステル系抗菌剤の一種;2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル等のエーテル系抗菌剤の一種等が挙げられる。中でも、フェノール系抗菌剤が好ましく用いられる。
【0025】
有機系抗菌剤の配合量は、抗菌性組成物の全量に対して0.1~5.0質量%の範囲で用いられ、好ましくは0.2~3.0質量%の範囲、より好ましくは0.4~1.0質量%の範囲で用いられる。有機系抗菌剤の含有量が0.1質量%より少ないと無機系抗菌剤を補完した抗菌効果が低く、一方で5.0質量%より多いと溶媒中のアルコール性有機溶剤の配合量によっては不溶分が析出する場合があるからである。
【0026】
本発明の抗菌性組成物は、分散剤として所与のスメクタイト族粘土鉱物を好適に配合することで、水とアルコール性有機溶剤との混合溶媒中で無機系抗菌剤(銀担持ゼオライト)の沈降・凝集を防止して、優れた分散性を発現させたことを特徴とするものである。
【0027】
ここで「スメクタイト族粘土鉱物」とは、スメクタイト族に属する層状ケイ酸塩鉱物のことを言いい、ケイ素と酸素からなる層(シリカ四面体層)がアルミニウムと酸素からなる層(アルミニウム八面体層)を挟んだ構造層が積重してなるものである。スメクタイト族粘土鉱物としては、例えば、サポナイト、スティブンサイト、ヘクトライト、ソーコナイト等の3八面体型スメクタイト;モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト等の2八面体型スメクタイトが挙げられる。これらは、少なくとも一種が単独で用いられてもよいし、二種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0028】
スメクタイト族粘土鉱物としては、天然物、天然物からの精製物又は合成品の何れのものであっても特に限定されないが、親水性を示す水系スメクタイト(非有機化スメクタイト)が好ましく用いられる。例えば、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム等の第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で処理した非水系スメクタイト(有機化スメクタイト)では、銀担持ゼオライトの沈降・凝集防止効果が低く、分散性に劣る場合があるからである。
【0029】
スメクタイト族粘土鉱物としては、銀担持ゼオライトの分散性に優れるという点で、水系スメクタイトの中でも3八面体体型スメクタイトであるサポナイト、スティブンサイト及びヘクトライトからなる群の中から選ばれる少なくとも一種が好ましく用いられる。
【0030】
スメクタイト族粘土鉱物は、市販品をそのまま用いることができ、例えば、サポナイトの市販品であるスメクトンSA(商品名、クニミネ工業社製)、スティブンサイトの市販品であるスメクトンST(商品名、クニミネ工業社製)、ヘクトライトの市販品である商品名スメクトンSWN(商品名、クニミネ工業社製)、モンモリロナイトの市販品であるクニピア-G(商品名、クニミネ工業社製)、クニピア-G10(商品名、クニミネ工業社製)等として入手可能である。
【0031】
分散剤の配合量は、銀担持ゼオライトに対する所望の効果が発揮されれば特に限定されず、銀担持ゼオライトに対する分散性を発現するという点から、銀担持ゼオライト100質量部に対してスメクタイト族粘土鉱物が少なくとも30質量部以上の割合で用いられ、好ましくは30~300質量部、より好ましくは50~200質量部の割合で用いられる。また、抗菌性組成物の全量に対しては0.02~6.0質量%の範囲で用いられ、好ましくは0.05~2.0質量%の範囲、より好ましくは0.1~1.0質量%の範囲で用いられる。
【0032】
本発明の抗菌性組成物は、水とアルコール性有機溶剤との混合溶媒中に上述した抗菌剤(無機系抗菌剤及び有機系抗菌剤)並びに分散剤を存在させることにより、アルコール濃度を低くして取扱性を高めつつ、安定した抗菌効果を発現できる。アルコール性有機溶剤としては、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等を用いることができ、このようにエタノール等を用いることで殺菌効果も同時に得ることができる。
【0033】
溶媒の配合量は、抗菌処理用エアゾール組成物の原液として抗菌性組成物を使用した場合の取扱性を高めるという点から、アルコール性有機溶剤の配合量は、抗菌性組成物の全量に対して20~60質量%の範囲で用いられ、好ましくは25~55質量%の範囲、より好ましくは30~50質量%の範囲内で用いられる。また、水の配合量は、無機系抗菌剤中の全量における残量であり、抗菌性組成物の全量に対して40~80質量%の範囲で用いられ、好ましくは45~75質量%の範囲、より好ましくは50~70質量%の範囲内で用いられる。
【0034】
本発明の抗菌性組成物には、上述した無機系抗菌剤、有機系抗菌剤、分散剤及び溶媒に加えて、抗菌原料、消臭原料、pH調整剤、防錆剤、香料、酸化防止剤、防腐剤、色素、紫外線吸収剤等、抗菌処理用エアゾール組成物の原液として一般に用いられるその他の配合成分(配合剤)が配合される。これらの配合成分の配合量は、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合割合とすることができる。
【0035】
本発明の抗菌処理用エアゾール組成物は、上述した抗菌性組成物を原液として噴射剤と配合し、耐圧容器(エアゾール式噴霧器)に加圧充填する等の公知の方法で調製することができる。例えば、抗菌性組成物を原液として耐圧容器に充填し、次いで噴射剤をアンダーカップ充填等で充填した後にバルブ固着することで、所定の抗菌処理用のエアゾール組成物(スプレー製品)を得ることができる。
【0036】
噴射剤としては、抗菌性組成物を噴射させるために含有される気体又は施用に際し気体となる公知の噴射剤を用いることができ、例えば、ジメチルエーテル、液化石油ガス、炭酸ガス、窒素ガス、アルゴンガス、空気、酸素ガス、フロンガス等が挙げられる。中でも、噴霧粒子の飛散を容易に抑制できることからジメチルエーテル又は液化石油ガスが好ましく用いられる。これらは、少なくとも一種が単独で用いられてもよいし、二種以上が組み合わせて用いられてもよく、二種類を併用する場合には、ジメチルエーテル及び液化石油ガスが組み合わされて用いられてもよい。
【0037】
噴射剤の配合量は、エアゾール組成物の全量に対して10~60質量%の範囲で用いられ、好ましくは15~40質量%の範囲で用いられる。噴射剤の配合量が過小である場合には良好な噴霧状態が得られず、一方で噴射剤の配合量が過大な場合には容器内に充填できる相対的な原液量が少なくなるとともに、噴射圧が強くなり使用感が悪くなる。なお、好ましい噴射圧は0.1~1.0MPaである。
【0038】
本発明の抗菌処理用エアゾール組成物は、対象物へ噴霧した後は、液だれ等することなく実用的な時間で混合溶媒が揮発乾燥して、対象物の任意の箇所に抗菌成分(無機系抗菌剤及び有機系抗菌剤)を添着させて抗菌性を付与することができる。対象物としては、部分的に菌体が付着し易く、菌体の繁殖により健康や衛生に重大な問題をもたらす恐れがある繊維製品に向けたスプレー製品として有用であるが、繊維製品に限定されるものではない。
【0039】
抗菌処理用エアゾール組成物の対象物としては、例えば、シート、絨毯、マット、ソファー、カーペット、被服、タオル、スリッパ、帽子等の他、不繊布、テント、ロープ等といった繊維製品に使用することができる。また、繊維製品の他には、例えば、タンス、クローゼット、食器棚、テーブル、いす、ソファー等の家具;冷蔵庫、ガスレンジ、レンジフード、換気扇、ランプシェード、シャンデリア、エアコン等の電化製品;内外壁、浴室、トイレ、キッチン周り等の住居等に使用することができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例により制限されるものではない。
【0041】
<使用原料>
本実施例の抗菌性組成物に使用した使用原料(配合成分)の詳細は、以下のとおりである。
【0042】
無機系抗菌剤としては、銀担持ゼオライト(銀担持量0.5質量%、ゼオミックAW10N/シナネンゼオミック社製)を用いた。
【0043】
有機系抗菌剤としては、以下の有機系抗菌剤A~Iを用いた。なお、有機系抗菌剤A~Fが芳香族環を有する抗菌剤であり、その内有機系抗菌剤A~Cがフェノール系抗菌剤である。
有機系抗菌剤A:パラオキシ安息香酸ブチル(ホクバリンB-100/北興産業社製)
有機系抗菌剤B:4-イソプロピル-3-メチルフェノール(ビオソール/大阪化成社製)
有機系抗菌剤C:パラクロロメタキシレノール(ホクバリンMX/北興産業社製)
有機系抗菌剤D:フェノキシエタノール(ニューポールEFP/三洋化成工業社製)
有機系抗菌剤E:塩化ベンザルコニウム(関東化学社製)
有機系抗菌剤F:ベンズイソチアゾリノン(ホクサイドBT/北興産業社製)
有機系抗菌剤G:オクチルイソチアゾリノン(レバナックスBS-50/昌栄化学社製)
有機系抗菌剤H:ソディウムピリジン(ホクサイドN38/北興産業社製)
有機系抗菌剤I:クロロメチルイソチアゾリノン(ホクサイドR-150/北興産業社製)
【0044】
分散剤としては、以下の分散剤A~Jを用いた。
分散剤A:サポナイト(スメクトンSA/クニミネ工業社製)
分散剤B:スティブンサイト(スメクトンST/クニミネ工業社製)
分散剤C:ヘクトライト(スメクトンSWN/クニミネ工業社製)
分散剤D:モンモリロナイト(クニピア-G/クニミネ工業社製)
分散剤E:モンモリロナイト(クニピア-G10/クニミネ工業社製)
分散剤F:有機化スメクタイト(スメクトンSAN/クニミネ工業社製)
分散剤G:有機化スメクタイト(スメクトンSTN/クニミネ工業社製)
分散剤H:有機化スメクタイト(スメクトンSEN/クニミネ工業社製)
分散剤I:特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤(ポイズ520/花王社製)
分散剤J:特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤(ポイズ530/花王社製)
【0045】
アルコール性有機溶剤としては、エタノールを用いた。
【0046】
<抗菌性組成物の分散性試験>
配合成分として無機系抗菌剤、有機系抗菌剤、分散剤及び溶媒を下記の表1に示す割合(質量%)で配合し、これを攪拌することで所定の試料(抗菌性組成物)を得た(実施例1~11、比較例1~4)。次に、各試料(抗菌性組成物)を透明のガラス瓶に入れ、50℃の雰囲気下で1週間放置した後、各試料を再攪拌する際の配合成分の分散状態に基づいて分散性評価した。評価は、容易に再分散する場合を「○」、再分散に強い撹拌が必要な場合を「△」、沈降・凝集して再分散が難しい場合を「×」とする3点方式で行った。
【0047】
【0048】
表1は、分散剤の種類(分散剤A~J)と配合量を変えて調製した抗菌性組成物の分散性試験を行った結果である。この結果から、抗菌剤(無機系抗菌剤及び有機系抗菌剤)、分散剤及び溶媒の配合成分と配合量を好適にした抗菌性組成物(実施例1~11)では、経時後も十分な再分散性を有し、分散性を長期に維持できる優れた安定性が示された。
【0049】
<抗菌性組成物の変色性試験>
配合成分として無機系抗菌剤、有機系抗菌剤、分散剤及び溶媒を下記の表2に示す割合(質量%)でそれぞれ配合し、これを攪拌することで所定の試料(抗菌性組成物)を得た(実施例12~17、比較例5~7)。次に、各試料(抗菌性組成物)を透明のガラス瓶に入れ、常温常圧の状態で3日間屋外暴露した後、各試料の色状態を目視にて確認することで変色性を評価した。評価は、ほとんど変色しない又は若干変色(白色~微黄色)する場合を「○」、激しく変色(黄色~茶色)する場合を「×」とする2点方式で行った。
【0050】
【0051】
表2は、有機系抗菌剤の種類(有機系抗菌剤A~I)を変えて調製した抗菌性組成物の変色性試験を行った結果である。この結果から、抗菌剤(無機系抗菌剤及び有機系抗菌剤)、分散剤及び溶媒の配合成分と配合量を好適にした抗菌性組成物(実施例12~17)では、経時後の変色が抑制され、優れた安定性が示された。
【0052】
<抗菌性組成物の抗菌性試験>
配合成分として無機系抗菌剤、有機系抗菌剤、分散剤及び溶媒を下記の表3に示す割合(質量%)でそれぞれ配合し、これを攪拌することで所定の試料(組成物)を得た(実施例18、比較例8)。次に、各試料(組成物)をペーパーディスク(直径8mm)に含浸させ、これをシャーレ(直径90mm)上の普通寒天培地(菌種:枯草菌及び大腸菌)の中央に載置し、29℃の雰囲気下で24時間培養した後、阻止円の有無を目視にて確認することで抗菌性を評価した。評価は、阻止円がハッキリと観測される場合を「○」、阻止円が観測されない場合を「×」とする2点方式で行った。
【0053】
【0054】
表3は、抗菌性組成物の抗菌性試験を行った結果である。この結果から、
図1に示した菌種ごとの抗菌性の有無を表す図と合わせて、抗菌剤(無機系抗菌剤及び有機系抗菌剤)、分散剤及び溶媒を好適に配合した抗菌性組成物(実施例18)は抗菌性を奏することが確認され、抗菌処理用エアゾール組成物の原液として有用であることが示された。
【0055】
<エアゾール組成物の溶解性試験及び乾燥性試験>
配合成分として無機系抗菌剤、有機系抗菌剤、分散剤及び溶媒を下記の表4に示す割合(質量%)でそれぞれ配合し、これを攪拌することで所定の抗菌性組成物を調製し、各抗菌性組成物を耐圧容器に20mlずつ採取し、各耐圧容器に噴射圧を0.3MPaに調整した噴射剤を充填することで所定の試料(エアゾール組成物)を得た(実施例19~20、比較例9~10)。次に、まず、各試料の溶解状態に基づいて溶解性を評価するとともに、各試料(エアゾール組成物)をファブリック製自動車シート(一脚)に全量噴霧し、常温下でドア閉止状態の車内に放置して、自動車シート表面が乾燥するまでに要する時間(分)を測定することで乾燥性を評価した。溶解性評価は、不溶分が認められない場合を「○」、不溶分の析出が認められる場合を「×」とする2点方式で行った。
【0056】
【0057】
表4は、アルコール性有機溶媒の配合量を変えて調製したエアゾール組成物の溶解性試験及び乾燥性試験を行った結果である。この結果から、アルコール性有機溶媒の配合量を好適にしたエアゾール組成物(実施例19~20)では、不溶分の析出がなく溶解性が良好で噴霧時の目詰まり等の不良を起こす恐れがないことが示され、乾燥時間が20分以内であり実用的な乾燥性を示すことが確認された。