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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】洗浄乾燥システム及び乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 15/00 20060101AFI20220929BHJP
   F26B 15/12 20060101ALI20220929BHJP
   A23L 15/00 20160101ALI20220929BHJP
【FI】
F26B15/00 C
F26B15/12 C
A23L15/00 E
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020207832
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2022094756
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2021-10-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592234702
【氏名又は名称】株式会社籠谷
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】100221006
【弁理士】
【氏名又は名称】金澤 一磨
(72)【発明者】
【氏名】竹内 建吾
(72)【発明者】
【氏名】横山 博哉
(72)【発明者】
【氏名】仮屋薗 隆三
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-507965(JP,A)
【文献】特開平11-155413(JP,A)
【文献】特開2010-075193(JP,A)
【文献】特開昭53-149582(JP,A)
【文献】特開2009-213357(JP,A)
【文献】米国特許第06357140(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 15/00
F26B 15/12
A23L 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵を洗浄し、搬送し、乾燥する、洗浄乾燥システムであって、
洗浄部と、洗浄後の卵を搬送しつつ乾燥する乾燥装置とを備え、
前記乾燥装置は、
前記卵を回転させながら搬送する搬送コンベヤと、
前記搬送コンベヤによって搬送される前記卵を乾燥する乾燥部と、を備え、
前記搬送コンベヤは、搬送方向に直交するコンベヤ幅方向に卵を並べて搬送するものであり、
前記乾燥部は、
前記コンベヤ幅方向に延びるスリットを有し、前記スリットを通じて、前記コンベヤ幅方向に並べられている卵に向けて、一定幅の帯状の乾燥用空気を吹き付ける複数のスリットノズルと、
前記スリットノズルの数に対応する数の空気吐出口部を有するノズルヘッダーと、
前記ノズルヘッダーに対し配管を通じて乾燥用空気を供給するブロワと、
各前記空気吐出口部を各前記スリットノズルに接続する継ぎ手と、を有し、
前記スリットノズルが、前記搬送方向に沿って一定間隔で複数配列されていることを特徴とする洗浄乾燥システム。
【請求項2】
前記スリットノズルは、搬送方向に沿って左右2列に設けられ、
各列に対しノズルヘッダーがそれぞれ設けられている、
請求項1に記載の洗浄乾燥システム。
【請求項3】
前記スリットノズルのスリットの下方を通過する部分に、前記コンベヤ幅方向において前記卵が並べられている、
請求項1又は2に記載の洗浄乾燥システム。
【請求項4】
前記ノズルヘッダーと前記ブロワとの間にサイレンサが設けられている、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の洗浄乾燥システム。
【請求項5】
前記搬送コンベヤは、
複数の凹状の周回溝部が軸線方向に並んで形成され回転しながら移動する多数のローラ部材を有し、
搬送方向前後に位置する前記ローラ部材の周回溝部の間に卵が嵌まることで、前記ローラ部材の回転により、前記卵が回転しながら搬送されるものである、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の卵の洗浄乾燥システム。
【請求項6】
前記搬送コンベヤの搬送速度に対応する該第1のモータの回転数を制御する第1のインバータと、
前記乾燥部の前記ブロワの風量に対応する該第2のモータの回転数を制御する第2のインバータと、を備え、
前記第1のインバータの周波数を30Hz未満とし、
前記第2のインバータの周波数を50Hz以上とする、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の洗浄乾燥システム。
【請求項7】
前記第1のインバータの周波数を20Hzより大きく30Hz未満とし、
前記第2のインバータの周波数を50Hzより大きく60Hz以下とする、
請求項6に記載の洗浄乾燥システム。
【請求項8】
前記搬送コンベヤの搬送速度を4.85cm/s未満とし、
前記ブロワの吐出圧力を33.3kPa以上とする、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の洗浄乾燥システム。
【請求項9】
前記搬送コンベヤの搬送速度を3.24cm/sより大きく4.85cm/s未満とし、
前記ブロワの吐出圧力を33.3kPaより大きく40kPa以下とする、
請求項8に記載の洗浄乾燥システム。
【請求項10】
前記第1のインバータと前記第2のインバータが、1のインバータで構成されている、
請求項6又は7に記載の洗浄乾燥システム。
【請求項11】
前記搬送コンベヤは、複数の卵が載置され並んで搬送される複数の列を有し、
前記複数の列のうち、両側の列には卵が載置されないよう構成し、
それ以外の列に卵が載置されて並んで搬送される、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の洗浄乾燥システム。
【請求項12】
前記搬送コンベヤは、乾燥後の卵を割卵機に搬送するもので、
前記搬送コンベヤの搬送速度が、前記割卵機の割卵速度と連動している、
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の洗浄乾燥システム。
【請求項13】
前記洗浄部は、
洗浄水が貯留される洗浄水タンクと、
前記搬送部に卵の汚れを回転ブラシにて落とすブラッシング部と、を有し、
前記洗浄装置と接続されている、
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の洗浄乾燥システム。
【請求項14】
前記洗浄部は、
前記洗浄水タンクと前記ブラッシング部とを接続する接続部と、を更に有し、
前記接続部に前記搬送コンベヤの一部が載置され、前記ブラッシング部は前記搬送コンベヤを覆うように配されている、
請求項13記載の洗浄乾燥システム。
【請求項15】
前記洗浄水タンクは、卵が浸漬されて洗浄され、
前記洗浄水が、水である、
請求項13又は14記載の洗浄乾燥システム。
【請求項16】
洗浄後の卵を搬送しつつ乾燥するための乾燥装置であって、
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄乾燥システム及び乾燥装置に関するものであり、特に卵など球形のものの洗浄や乾燥に用いるものである。
【背景技術】
【0002】
液卵製造ラインとして、鶏舎等から供給される卵を洗浄する洗浄部と、洗浄された卵を乾燥する乾燥部と、乾燥された卵を割卵して液卵とする割卵部とを連続して有するものが知られている。
【0003】
かかる液卵製造ラインにおいて、洗浄部と割卵部との間の乾燥部において、できるだけ短時間で乾燥させることで、ライン長さを短くすることが求められている。
【0004】
ところで、そのような乾燥部において、乾燥を促進するために、空気吹き出しブロワを設けることが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、ローラ部材が回転しながら卵を回転させつつ、前記卵を搬送する搬送手段も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-53217号公報
【文献】特開昭61-139362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、前述したようなラインの乾燥部において、卵を回転させながら搬送しつつ、搬送されている卵に空気吹き出しブロワを用いて大量の空気を吹き付けて乾燥することが考えられるが、空気吹き出しブロワでは、搬送方向に直交するコンベヤ幅方向に並べられる各卵の表面に均等に空気を吹き付けるのは困難である。そのため、すべての卵を乾燥させるためには、搬送速度を遅くするなどの必要が生じ、乾燥に要する時間が長くなる。
【0007】
また、日本における卵の加工の規定においては、卵を次亜塩素酸ナトリウム水溶液などで表面を洗浄すること、洗浄後の卵は水切りされていること(一定程度濡れていても問題ないこと)などとされている。しかしながら、欧州や諸外国においては様々な規定があり、例えば、卵の洗浄には水を使うこと、洗浄後の卵が乾燥されていることなどの規定が用いられる国もある。なお、乾燥されているとは、洗浄前の濡れていない卵と同等の乾燥度をいう。また、加工前の卵は乾燥されていることが取り扱い等の面でも望ましい。そこで、本発明の発明者らは、卵の乾燥、すなわち、洗浄前の卵の乾燥度と同等の乾燥度を目指すべく、鋭意研究のすえ、本発明をなしたものである。
【0008】
本発明は、スリットノズルを利用することで、搬送方向に直交する幅方向に並べられている各卵に均等に乾燥用空気を吹き付け、卵の乾燥度を従来よりも向上した卵の洗浄乾燥システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る一の態様の洗浄乾燥システムは、卵を洗浄し、搬送し、乾燥する、洗浄乾燥システムであって、洗浄部と、洗浄後の卵を搬送しつつ乾燥する乾燥装置とを備え、前記乾燥装置は、前記卵を回転させながら搬送する搬送コンベヤと、前記搬送コンベヤによって搬送される前記卵を乾燥する乾燥部と、を備え、前記搬送コンベヤは、搬送方向に直交するコンベヤ幅方向に卵を並べて搬送するものであり、前記乾燥部は、前記コンベヤ幅方向に延びるスリットを有し、前記スリットを通じて、前記コンベヤ幅方向に並べられている卵に向けて、一定幅の帯状の乾燥用空気を吹き付ける複数のスリットノズルと、前記スリットノズルの数に対応する数の空気吐出口部を有するノズルヘッダーと、前記ノズルヘッダーに対し配管を通じて乾燥用空気を供給するブロワと、各前記空気吐出口部を各前記スリットノズルに接続する継ぎ手と、を有し、前記スリットノズルが、前記搬送方向に沿って一定間隔で複数配列されていることを特徴とする。
【0010】
このようにすれば、乾燥装置において、搬送方向に沿って一定間隔でもってスリットノズルが複数配列され、搬送方向に直交する方向に延びるスリットを通じて卵に向けて、一定幅の帯状の乾燥用空気が幅広く吹き付けられる。これにより、コンベヤ幅方向に並べられ回転しながら搬送される各卵に対し、乾燥用空気が前記コンベヤ幅方向において均等に、繰り返し吹き付けられ、乾燥時間を長くすることなく、洗浄された後の卵を効率よく乾燥することができる。
【0011】
また、各スリットノズル個別に乾燥用空気が供給されるので、十分な空気が各スリットノズルに対し効率よく供給される。
【0012】
前記の洗浄乾燥システムは、前記スリットノズルは、搬送方向に沿って左右2列に設けられ、各列に対しノズルヘッダーがそれぞれ設けられている。このようにすれば、搬送方向に沿って左右2列に分けて設けられているので、各列に対し別のブロワによって乾燥用空気が供給され、乾燥に十分な空気を安定して供給することができる。
【0013】
前記の洗浄乾燥システムは、前記スリットノズルのスリットの下方を通過する部分に、前記コンベヤ幅方向において前記卵が並べられている。このようにすれば、スリットノズルのスリットの下を通過する部分のみ、前記卵を搬送するので、空気の供給に無駄が生じない。
【0014】
前記の洗浄乾燥システムは、前記ノズルヘッダーと前記ブロワとの間にサイレンサが設けられている。このようにすれば、騒音の低減に有利である。
【0015】
前記の洗浄乾燥システムは、前記搬送コンベヤが、複数の凹状の周回溝部が軸線方向に並んで形成され回転しながら移動する多数のローラ部材を有し、搬送方向前後に位置する前記ローラ部材の周回溝部の間に卵が嵌まることで、前記ローラ部材の回転により、前記卵が回転しながら搬送されるものである。このようにすれば、各卵が、前後2つの周回溝部の間において安定して支持され、回転しながら搬送される。
【0016】
前記の洗浄乾燥システムは、前記搬送コンベヤの搬送速度に対応する該第1のモータの回転数を制御する第1のインバータと、前記乾燥部の前記ブロワの風量に対応する該第2のモータの回転数を制御する第2のインバータとを備え、前記第1のインバータの周波数が30Hz未満であり、前記第2のインバータの周波数が50Hz以上である。より望ましくは、前記第1のインバータの周波数が20Hzより大きく30Hz未満であり、前記第2のインバータの周波数が50Hzより大きく60Hz以下である。このようにすれば、洗浄後の卵がブロワによって十分に乾燥され、従来に比べて乾燥度が向上する。
【0017】
前記の洗浄乾燥システムは、前記第1のインバータと前記第2のインバータが、1のインバータで構成されていてもよい。
【0018】
前記の洗浄乾燥システムは、前記搬送コンベヤの搬送速度が4.85cm/s未満であり、前記ブロワの吐出圧力が33.3kPa以上である。より望ましくは、前記搬送コンベヤの搬送速度が3.24cm/sより大きく4.85cm/s未満であり、前記ブロワの吐出圧力が33.3kPaより大きく40kPa以下である。このようにすれば、洗浄後の卵がブロワによって十分に乾燥され、従来に比べて乾燥度が向上する。
【0019】
前記の洗浄乾燥システムは、前記搬送コンベヤが、複数の卵が載置され並んで搬送される複数の列を有し、前記複数の列のうち、両側の列には卵が載置されないよう構成し、それ以外の列に卵が載置されて並んで搬送される。両側の列は、それ以外の中央の列に比べて乾燥がされづらいところ、このように構成することで、卵の乾燥度を向上することができる。ここで、両側の列に卵が載置されない構成とは、例えば両側の列をブレードで塞いだり、卵が搬送される入口部分に両側に行かないようガイドを付ける構成などが考えられる。
【0020】
前記の洗浄乾燥システムは、前記搬送コンベヤが、乾燥後の卵を割卵機に搬送するもので、前記割卵機と連動している。このようにすれば、搬送コンベヤの搬送速度は、割卵機の割卵速度に対応しているので、搬送コンベヤと割卵機との間で滞留することなく、洗浄処理、乾燥処理を経た卵を割卵機により順序よく割卵して、液卵を効率よく得られる。
【0021】
前記の洗浄乾燥システムは、前記洗浄部が、洗浄水が貯留される洗浄水タンクと、前記搬送部に卵の汚れを回転ブラシにて落とすブラッシング部とを有し、前記洗浄装置と接続されている。
【0022】
前記の洗浄乾燥システムは、前記洗浄部が、前記洗浄水タンクと前記ブラッシング部とを接続する接続部と、を更に有し、前記接続部に前記搬送コンベヤの一部が載置され、前記ブラッシング部は前記搬送コンベヤを覆うように配されている。
【0023】
このようにすれば、洗浄水で洗浄された後、再度各卵の汚れが回転ブラシの回転により落とすことができるので、卵の洗浄度が向上するとともに、この際にある程度の水切りも行われるので、卵の乾燥度が向上する。
【0024】
前記の洗浄乾燥システムは、前記洗浄水タンクが、卵が浸漬されて洗浄され、前記洗浄水が、水である。このようにすれば、従来の次亜塩素酸ナトリウム水溶液での洗浄でなく、水を用いて卵を洗浄できるので、水での洗浄のみに規定する諸外国にも対応できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、乾燥装置において、搬送方向に沿って一定間隔でもってスリットノズルを複数配列し、搬送方向に直交するコンベヤ幅方向に延びるスリットを通じて前記卵に向けて乾燥用空気を吹き付けるので、回転しながら搬送されている各卵に対し、乾燥用空気が均等に吹き付けられ、乾燥時間を長くすることなく、洗浄された卵を効率よく乾燥することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る一実施の形態である卵の洗浄・乾燥装置の正面図である。
図2】同側面図である。
図3】同要部平面図である。
図4】ノズルヘッダーを示し、(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は側面図である。
図5】スリットノズルを示し、(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は側面図である。
図6】サイレンサの一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る実施の形態を説明する。
図1は本発明に係る一実施の形態である卵の洗浄乾燥システムの正面図、図2は同側面図、図3は同要部平面図である。
【0028】
図1図3に示すように、卵の洗浄乾燥システム1は、卵を洗浄する洗浄装置1Aと、卵を搬送及び乾燥する乾燥装置1Bとを備え、これらが接続されている。そして、乾燥装置1Bが備える搬送コンベヤであるローラコンベヤ2によって卵Eを回転させながら搬送しつつ、洗浄し、それから乾燥するものである。そして、洗浄乾燥システム1は、なお、図示は省略しているが、ローラコンベヤ2によって、乾燥後の卵Eは、最終的には割卵機(図示せず)に搬送され、液卵とされる。
【0029】
ローラコンベヤ2は割卵機と連動しており、ローラコンベヤ2と割卵機それぞれに接続されたインバータを調整することで、モータの回転数を制御してローラコンベヤ2の搬送速度が調整される。この調整により、ローラコンベヤ2によって搬送される卵が、途中で停滞することなく、割卵機において順序よく割卵される。
【0030】
ローラコンベヤ2の両側には、ブロワ3が配置され、各ブロワ3から配管4を通じてノズルヘッダー5に乾燥用空気が供給され、ノズルヘッダー5から複数のスリットノズル6それぞれに乾燥用空気が分けて供給されるようになっている。
【0031】
ローラコンベヤ2は、多数のローラ部材7が回転しながら卵Eを搬送するものである。各ローラ部材7には、複数の凹状の周回溝部7aが軸線方向に並んで形成されている。周回溝部7aの断面形状は、卵Eの形状に対応しており、搬送方向前後に位置する2つのローラ部材7の周回溝部7aの間に卵が嵌まることで、卵Eは安定して支持され、ローラ部材7の回転により、卵Eが回転しながら搬送される。なお、本実施形態においては、ローラコンベヤ2は6列で構成されており、両側それぞれ1列をブレードで塞ぎ、両側の1列ずつを除く、中央4列に卵Eが載置されて、洗浄、搬送、乾燥される構成としている(図3参照)。
【0032】
スリットノズル6は、スリット6Baを通じて、卵Eに向けて空気を吹き付けるもので、左右に分かれて左右2列に配列されている。そして、各列は、スリットノズル6が、搬送方向において一定間隔でもって配列され、回転しながら搬送される卵を、急速に乾燥する部分を形成している。
【0033】
各ノズルヘッダー5は、図4に示すように、配管4に接続される接続部5aと、接続部5aに接続され搬送方向に沿って延びる筒状部5bとを有し、筒状部5bの接続と反対側に、スリットノズル6の数に対応する数の空気吐出部5cが設けられている。
【0034】
スリットノズル6は、図5に示すように、搬送方向に直交する方向に延び、一端側の開口部6Aaが長ニップル17を介して空気吐出部5cに接続され、他端が沈みプラグ18にて閉じられる中空本体部6Aと、中空本体部6Aの下部に連設され下端になるほど空気通路6Bの幅が狭くなるスリット形成部6Cとを備え、空気通路6Bの下端が、搬送方向に直交する方向に延びるスリット6Baとなる。
【0035】
卵Eを洗浄する部分は、洗浄水タンクが貯留され卵が投入される洗浄水タンク8を有し、その洗浄水タンク8内から、ローラコンベヤ2のローラ部材7が卵を回転させながら順次取り出し、ブラッシング部9において、各卵の汚れを回転ブラシにて落とし、それから前記乾燥する部分に搬送されるようになっている。また、洗浄水タンクに用いる洗浄水は、本実施形態においては水(水道水や井戸水、精製水など)を用いている。
【0036】
ローラ部材7は、卵に対応する断面形状の周回溝部7aを有するので、ローラ部材7が回転しながら移動することで、卵が2つのローラ部材7の周回溝部7aの間に嵌まり、回転しながら搬送される。
【0037】
1本のローラ部材7には複数の周回溝部7aが軸方向に規則的に設けられており、コンベヤ幅方向並んでいる各卵Eがそれぞれ回転しながら搬送される。スリット6Ba(スリットノズル6)よりの帯状の空気は、下方になるほどコンベヤ幅方向に広がるので、左右のスリットノズル6の間に対応する部分で搬送される卵Eにも乾燥用空気が吹き付けられ、回転しながら搬送される卵のすべてに乾燥用空気が吹き付けられることになる。なお、左右のスリットノズル6の間隔を狭めることで、乾燥効果を高めることができるし、コンベヤ幅に対応する長さを有する1つのスリットノズルとすることもできる。
【0038】
そして、乾燥する部分において、搬送方向に沿って一定間隔でもってスリットノズル6が複数配列されているので、コンベヤ幅方向に延びるスリット6Baを通じて、コンベヤ幅方向に列状に並んで搬送されている卵Eの列に向けて一定幅の帯状の空気が、スリットノズルの6の下方を通過するたびに吹き付けられる。
【0039】
よって、回転しながら搬送されている、各列を形成する各卵Eが、空気のダウンフローにより形成されるエアカーテン(一定幅の帯状の空気)を繰り返し通過することとなり、卵Eの殻に付着している水分が吹き飛ばされ、乾燥時間を長くすることなく、洗浄された卵Eが乾燥される。
【0040】
なお、ブロワ3の能力は、ローラコンベヤ2の速度やスリットノズル6の数などとの関係で、乾燥する部分の通過により洗浄された後の卵が乾燥されるように予め調整されている。また、ローラコンベヤ2にて卵Eが並べられて搬送されるので、乾燥用空気を無駄なく利用することができ、吹き付けむらなく、空気が吹き付けられる。なお、ブロワ3にはインバータが接続され、これによりブロワ3のモータの回転速度を調整して、風量を調整できる。
【0041】
ノズルヘッダー5と、ブロワ3との間の配管4の途中には、騒音低減のために、サイレンサ10が設けられている。サイレンサ10は、図6に示すように、両側にフランジ10Aaを有する外パイプ10Aと、その内周面側に設けられる吸音材10Bと、さらにその内周面側に設けられるパンチングメタル10Cとを備える。
【0042】
ローラコンベヤ2は、乾燥後の卵Eを、最終的には割卵機(図示せず)が設置されている場所まで搬送し、卵の殻が順次割られ、液卵とされる。
【0043】
(測定試験)
次に、本実施形態の洗浄乾燥システム1に用いられる乾燥装置1Bを用いて、卵の乾燥度について試験を行った。なお、本試験は、ブロワに(株)アンレット6BE65H 3.7kWインバータ変速仕様のルーツブロワを用い、スリットノズルをスリット幅0.5×スリット長さ176mmとした。また、スリットノズル6は8連とし、コンベヤ2両側から8連を向かい合わせ配置し、合計16個のスリットノズル6のブロワ構成とした。
【0044】
そして、前述した洗浄乾燥システム1において、1ノズルあたり風量1.23m3/min(吹出圧力40kPa)の能力でブロワ3を駆動し、左右8個ずつ合計16個のスリットノズル6(100mmピッチ)を使用する場合を最大として、ブロワ3に接続されたインバータでブロワ3の吹出圧力を調整し、併せてコンベヤ2に接続されるインバータで速度を調整して試験を行った。
【0045】
例えば、60Hzの場合の風量が1.23m3/min(吹出圧力40kPa)とすると、55Hzで風量1.13m3/min(吹出圧力36.7kPa)、50Hzで1.02m3/min(吹出圧力33.3kPa)、45Hzで風量0.92m3/min(吹出圧力30kPa)、40Hzで風量0.82m3/min(吹出圧力26.7kPa)である。
【0046】
続いて、上記した鶏卵洗浄後の乾燥度を確認する試験を行った結果を説明する。ここで、スリットノズル6は、コンベヤの搬送長さ約800mm中にコンベヤ両側から8連を向かい合わせて合計16個が配置され、6列のコンベヤを覆うように配されている。なお、事前に行った試験により、コンベヤ6列のうち両側の1列ずつの乾燥度が、間の4列よりも低かったため、両側の2列には卵を置かず、中央4列のみに卵を置いて乾燥度の試験を行った。したがって、1つのスリットノズルに対し、卵2つが下方を通過するようになっている。
【0047】
各スリットノズルは長さ180mmで、コンベヤ幅方向の間隔は90mm、コンベヤ2から高さ100mm、スリットノズル6の、搬送方向間隔90mm、コンベヤの搬送幅540mmとしている。卵表面の実測水分量(乾燥度)はユニバーサル水分計(HB-300(株)ケット科学研究所)を用いて測定し、検量線を利用して求め、コンベヤ2の搬送速度は、ハンドタコメータ(TM-5010 LINE SEIKI CO.,LTD.)を用いて直接測定した。
【0048】
なお、ローラコンベヤが接続されるインバータの周波数が30Hzの場合、卵の搬送やその後の割卵など不安定であったため、試験は28Hzを最大として行った。例えば、30Hzの場合の搬送速度は4.85cm/s、28Hzの場合の搬送速度は4.53cm/s、25Hzの場合の搬送速度は4.04cm/s、20Hzの場合の搬送速度は3.24cm/s、15Hzの場合の搬送速度は2.43cm/s、10Hzの場合の搬送速度は1.62cm/sである。
【0049】
そして、インバータによりブロワ能力を変化させると共に、ローラコンベヤ2(サノボテクノロジー(株)製)の搬送速度を変化させて、4つの代表的なサンプルについて実測水分量を測定した。ローラコンベヤ2は割卵機に連動し、ローラコンベヤ2の搬送速度は、割卵機の割卵速度と対応関係にあるので、試験結果を示す各表においては、割卵機の割卵速度を決定する割卵機インバータの周波数で表している。なお、卵の実測水分量は、洗浄水タンク8(水槽)に投入する前の状態(乾燥状態)では6.0~6.6%の範囲であり、洗浄後の卵が濡れた状態では16.9~20.5%の範囲であった。
【0050】
【表1】
【0051】
この表1より、ブロワのインバータ周波数が40Hzの場合には、搬送速度を示すインバータ周波数が10Hzで乾燥度が低い最も高く、乾燥したと言えなくもないが、希望の乾燥度7.0以下には到達しなかった。なお、15Hzについては、乾燥が不十分であった。
【0052】
【表2】
【0053】
この表2より、ブロワのインバータ周波数が45Hzの場合には、40Hzの場合に比べて乾燥度は向上しているが、いずれも希望の乾燥度7.0以下には到達しなかった。
【0054】
【表3】
【0055】
この表3より、ブロワのインバータ周波数が50Hzの場合には、搬送速度を示すインバータ周波数が10Hz~28Hzである程度の乾燥度を得られることがわかるが、望ましくは、搬送速度を示すインバータ周波数が20Hz未満で、十分な乾燥が可能といえる。
【0056】
【表4】
【0057】
この表4より、ブロワのインバータ周波数が55Hzの場合は、搬送速度を示すインバータ周波数が10Hz~28Hzであれば、十分に乾燥可能といえる。
【0058】
【表5】
【0059】
この表5より、ブロワのインバータ周波数が60Hzの場合にも、搬送速度を示すインバータ周波数が10Hz~28Hzであれば、十分に乾燥可能といえる。
【0060】
表1~5の結果から、ブロワの風量(吹出圧力)をインバータ周波数50Hz以上で、ローラコンベヤの搬送速度をインバータ周波数28Hz以下とすれば、一定の乾燥度が得られることがわかった。望ましくは、ブロワの風量(吹出圧力)をインバータ周波数50Hz以上で、ローラコンベヤの搬送速度をインバータ周波数20Hz未満、またはブロワインバータ周波数で50Hzより大きくし、ローラコンベヤの搬送速度のインバータ周波数28Hz以下とすれば、十分な乾燥度を得られる。
【0061】
ブロワの風量とローラコンベヤの搬送速度を上記とすることで、卵を洗浄水タンク8(水槽)に投入した後に、コンベヤ両側から8連を向かい合わせ配置し合計16個のスリットノズルによるエアカーテン内を通過させることで、卵の大きさ、コンベヤ2上での卵の回転むら等の影響を受けず、洗浄水で濡れた状態を解消して、乾燥できることが確認された。
【0062】
一方、コンベヤの搬送速度は、多量の卵を加工する上で速い方が望ましいため、すなわち、単位時間あたりの卵の加工数を多くすることが望ましいため、ローラコンベヤの搬送速度をインバータ周波数25Hzまたは28Hzとし、ブロワのインバータ周波数55Hzまたは60Hzとした場合の卵の乾燥度について、多数の卵のサンプルの乾燥試験を複数回行った。
【0063】
その結果、いずれの場合も十分な乾燥度を得られることが確認された。なお、ブロワのインバータ周波数55Hz、ローラコンベヤのインバータ周波数25Hzの場合に乾燥度が最も高く、次いでブロワのインバータ周波数55Hz、ローラコンベヤのインバータ周波数28Hzの場合に乾燥度が高かった。
【0064】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。
【0065】
例えば、前記実施の形態では、ローラ部材7の軸線方向に沿って周回溝部7aが形成され、コンベヤ幅方向に一様に並べて卵Eを搬送するようにしているが、スリット6Ba(スリットノズル6)の下を通過する部分のみ(スリット6Baに対応する下方位置)に周回溝部を形成し、乾燥用空気が強く当たり乾燥効果が大きくなる部分に前記コンベヤ幅方向において卵Eが並べられるようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 洗浄乾燥システム
1A 洗浄装置
1B 乾燥装置
2 ローラコンベヤ(搬送コンベヤ)
3 ブロワ
4 配管
5 ノズルヘッダー
5a 接続部
5b 筒状部
5c 空気吐出部
6 スリットノズル
6A 中空本体部
6Aa 開口部
6B 空気通路
6Ba スリット
6C スリット形成部
7 ローラ部材
7a 周回溝部
8 洗浄水タンク
9 ブラッシング部
10 サイレンサ
10A 外パイプ
10Aa フランジ
10B 吸音材
10C パンチングメタル
17 長ニップル
18 プラグ
E 卵
図1
図2
図3
図4
図5
図6