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特許7148998管状細胞構造体培養維持装置および管状細胞構造体維持補助具
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  • 特許-管状細胞構造体培養維持装置および管状細胞構造体維持補助具 図1
  • 特許-管状細胞構造体培養維持装置および管状細胞構造体維持補助具 図2
  • 特許-管状細胞構造体培養維持装置および管状細胞構造体維持補助具 図3
  • 特許-管状細胞構造体培養維持装置および管状細胞構造体維持補助具 図4A
  • 特許-管状細胞構造体培養維持装置および管状細胞構造体維持補助具 図4B
  • 特許-管状細胞構造体培養維持装置および管状細胞構造体維持補助具 図4C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】管状細胞構造体培養維持装置および管状細胞構造体維持補助具
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20220929BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220929BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20220929BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12M1/00 A
C12N5/071
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020512951
(86)(22)【出願日】2018-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2018014895
(87)【国際公開番号】W WO2019198126
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】511155187
【氏名又は名称】株式会社サイフューズ
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】五條 理志
(72)【発明者】
【氏名】上 大介
(72)【発明者】
【氏名】松林 久美香
(72)【発明者】
【氏名】秋枝 静香
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-077229(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102005001747(DE,A1)
【文献】特開2006-311887(JP,A)
【文献】特開2002-315566(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0033927(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
C12N 1/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に中空部を有する管状の細胞構造体について前記中空部を維持しながら所定期間培養するための棒状の管状細胞構造体維持補助具であって、前記管状細胞構造体維持補助具は、
前記細胞構造体の前記中空部に挿入可能であって、前記中空部に挿入された際に前記管状細胞構造体維持補助具が前記細胞構造体の内面に密着可能となる外径と、
前記管状細胞構造体維持補助具の両端に開口を有し、その開口の間を貫通する貫通通路と、を備え、
前記管状細胞構造体維持補助具は、ジメチルポリシロキサンでできた酸素透過構造を有する管状細胞構造体維持補助具。
【請求項2】
内側に中空部を有する管状の細胞構造体について前記中空部を維持しながら所定期間培養するための棒状の管状細胞構造体維持補助具であって、前記管状細胞構造体維持補助具は、
前記細胞構造体の前記中空部に挿入可能であって、前記中空部に挿入された際に前記管状細胞構造体維持補助具が前記細胞構造体の内面に密着可能となる外径と、
前記管状細胞構造体維持補助具の両端に開口を有し、その開口の間を貫通する貫通通路と、を備え、
前記管状細胞構造体維持補助具は、前記貫通通路から前記管状細胞構造体維持補助具の外面への酸素透過構造を有し
前記管状細胞構造体維持補助具は、フッ素系樹脂材料でできていて、前記酸素透過構造は前記貫通通路から前記管状細胞構造体維持補助具の外面へ穿設された孔である管状細胞構造体維持補助具。
【請求項3】
内側に中空部を有する管状の細胞構造体について前記中空部を維持しながら所定期間培養するための管状細胞構造体培養維持装置であって、前記管状細胞構造体培養維持装置は、
培養液を満たした培養チャンバであって、その培養液を前記培養チャンバの内部に導入する第一入口および第二入口と、その培養液を前記培養チャンバから排出する第一出口および第二出口と、を備える培養チャンバと、
前記培養液を還流させるポンプと、
前記第一出口から前記ポンプを経由して前記第一入口に流体的に連通する第一管路と、
前記第二出口から前記ポンプを経由して前記第二入口に流体的に連通して第二管路と、
前記細胞構造体の前記中空部に挿入可能な棒状体であって、前記棒状体の両端に開口を有し、その開口の間を貫通する貫通通路と、を有する棒状体と、
前記第二入口に取り付け可能なアダプタであって、前記貫通通路の一方の開口に挿入されて前記第二入口と流体的に連通可能なアダプタとを備え、
前記棒状体は、前記貫通通路から前記棒状体の外面への酸素透過構造を有し、前記中空部に挿入された際に前記棒状体が前記細胞構造体の内面に密着可能な外径を備え
前記棒状体はジメチルポリシロキサンである管状細胞構造体培養維持装置。
【請求項4】
内側に中空部を有する管状の細胞構造体について前記中空部を維持しながら所定期間培養するための管状細胞構造体培養維持装置であって、前記管状細胞構造体培養維持装置は、
培養液を満たした培養チャンバであって、その培養液を前記培養チャンバの内部に導入する第一入口および第二入口と、その培養液を前記培養チャンバから排出する第一出口および第二出口と、を備える培養チャンバと、
前記培養液を還流させるポンプと、
前記第一出口から前記ポンプを経由して前記第一入口に流体的に連通する第一管路と、
前記第二出口から前記ポンプを経由して前記第二入口に流体的に連通して第二管路と、
前記細胞構造体の前記中空部に挿入可能な棒状体であって、前記棒状体の両端に開口を有し、その開口の間を貫通する貫通通路と、を有する棒状体と、
前記第二入口に取り付け可能なアダプタであって、前記貫通通路の一方の開口に挿入されて前記第二入口と流体的に連通可能なアダプタとを備え、
前記棒状体は、前記貫通通路から前記棒状体の外面への酸素透過構造を有し、前記中空部に挿入された際に前記棒状体が前記細胞構造体の内面に密着可能な外径を備え
前記棒状体は、フッ素系樹脂材料でできていて、前記酸素透過構造は前記貫通通路から前記棒状体の外面へ穿設された孔である管状細胞構造体培養維持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内側に中空部を有する管状の細胞構造体の維持装置および維持補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、隣接するように接触した細胞塊同士が融合する性質を利用し、基板の法線方向に延在するように予め固定されている複数の針状体からなる支持体を利用し、複数の細胞塊が隣接するように細胞塊(たとえば、スフェロイド)を立体的に積層して立体構造体を作製する手法が知られている。ここで、細胞塊とは、単一細胞を結合培養して、複数の細胞の塊として形成されたものをいう。
【0003】
この手法では、細胞塊51を取り出してその支持体の複数の針状体の各々にそれぞれに突き刺して細胞塊が串刺しになった状態を製作する手法が開示されている。たとえば、図4Aのように、たとえば血管用の細胞構造体5として、針状体を管状にならべて、細胞塊51をそれぞれに穿刺させるものである。一定の時間培養すると、図4Bのように、隣接する細胞塊51が融合して、針状体52には管状の細胞構造体5が形成される。そして、図4Cのように、細胞構造体5を針状体52から抜き去ると、長さLの管状の内側に中空部を有する管状の細胞構造体5が取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4517125号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
細胞構造体5を構成する細胞は隣接する細胞と融合する性質がある。したがって、管状の細胞構造体5を針状体52から抜き去って自立させ、細胞構造体5の各細胞が死滅することなく所定期間だけ細胞構造体5を保存する際には、細胞構造体5の外表面と内表面に万遍なく酸素を含んだ培養液を行き渡らせる必要がある。また、さらには、その際に、細胞構造体5の中で、対向する管壁同士が接すると、その接触部の細胞が融合して管路が封鎖してしまう問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
内側に中空部を有する管状の細胞構造体について前記中空部を維持しながら所定期間培養するための棒状の管状細胞構造体維持補助具であって、前記管状細胞構造体維持補助具は、前記細胞構造体の前記中空部に挿入可能であって、前記中空部に挿入された際に前記管状細胞構造体維持補助具が前記細胞構造体の内面に密着可能となる外径と、前記管状細胞構造体維持補助具の両端に開口を有し、その開口の間を貫通する貫通通路と、を備え、前記管状細胞構造体維持補助具は、前記貫通通路から前記管状細胞構造体維持補助具の外面への酸素透過構造を有している管状細胞構造体維持補助具により、解決する。
【0007】
内側に中空部を有する管状の細胞構造体について前記中空部を維持しながら所定期間培養するための管状細胞構造体培養維持装置であって、前記管状細胞構造体培養維持装置は、培養液を満たした培養チャンバであって、その培養液を前記培養チャンバの内部に導入する第一入口および第二入口と、その培養液を前記培養チャンバから排出する第一出口および第二出口と、を備える培養チャンバと、前記培養液を還流させるポンプと、前記第一出口から前記ポンプを経由して前記第一入口に流体的に連通する第一管路と、前記第二出口から前記ポンプを経由して前記第二入口に流体的に連通して第二管路と、前記細胞構造体の前記中空部に挿入可能な棒状体であって、前記棒状体の両端に開口を有し、その開口の間を貫通する貫通通路と、を有する棒状体と、前記第二入口に取り付け可能なアダプタであって、前記貫通通路の一方の開口に挿入されて前記第二入口と流体的に連通可能なアダプタとを備え、前記棒状体は、前記貫通通路から前記棒状体の外面への酸素透過構造を有し、前記中空部に挿入された際に前記棒状体が前記細胞構造体の内面に密着可能な外径を備える管状細胞構造体培養維持装置により解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば管状の細胞構造体の中空部を封鎖させることなく維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明における管状細胞構造体培養維持装置を示した図である。
図2】本発明における管状細胞構造体維持補助具を示した図であって、管状細胞構造体培養維持装置に取り付けられている状態を示した図である。
図3】本発明における管状細胞構造体培養維持装置を示した図であって、管状細胞構造体培養維持装置から分離された状態を示した図である。
図4A】細胞構造体を形成する工程において、細胞塊を針状体に穿刺した状態を示した模式図である。
図4B】細胞構造体を形成する工程において、隣接した細胞塊が融合して細胞構造体が形成された状態を示した模式図である。
図4C】細胞構造体を形成する工程において、形成された細胞構造体を針状体から抜き去る上程を示した状態を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、図1から図3を参照して、本発明の管状細胞構造体培養維持装置1について説明する。図1は本発明の実施の形態の管状細胞構造体培養維持装置1の概略図である。管状細胞構造体培養維持装置1は、管状の細胞構造体5の維持補助具たる棒状体2と、培養チャンバ3と、ポンプ4と、第一管路6と、第二管路7と、アダプタ8とを備える。図2は棒状体2を示した図であって、管状細胞構造体培養維持装置1に取り付けられている状態の図を示している。また、図3は棒状体2を示した図であって、管状細胞構造体培養維持装置1から取り外された状態の図を示している。細胞構造体5は、たとえば図4Aから図4Cおよび前記のとおりの工程で形成されたもので、細胞構造体5の内側に、断面の円形状の中空部を有する管状の構造をしている。この明細書では、細胞構造体5の断面の円形状の中空部の半径をRとして説明する。
【0011】
培養チャンバ3は密閉された容器であり、内部は培養液3aで満たされている。培養チャンバ3は、その培養液3aを培養チャンバ3の内部に導入する第一入口6dおよび第二入口7dと、その培養液3aを培養チャンバ3から排出する第一出口6cおよび第二出口7cとを備える。管状細胞構造体培養維持装置1は、第一出口6cからポンプ4を経由して第一入口6dに流体的に連通する第一管路6と、第二出口7cからポンプ4を経由して第二入口7dに流体的に連通する第二管路7とを備えている。培養液3aは、第一管路6と第二管路7の内部をポンプ4の駆動力で還流する。第一管路6は主に細胞構造体5の内部に培養液3aを供給するためのものであり、第二管路7は主に細胞構造体5の外部に培養液3aを行き渡らせるためのものである。
【0012】
すなわち、培養液3aで満たされた培養チャンバ3を始点にみると、培養液3aは第一出口6cから第一管路6bに流れ出てポンプ4に向かう。また、培養液3aは第二出口7cから第二管路7bに流れ出てポンプ4に向かう。その後、ポンプ4にて必要な栄養と酸素が供給された培養液3aは、ポンプ4の駆動力で、第一管路6aから第一入口6dを経て培養チャンバ3に戻る。また、第二管路7aから第二入口7dを経て培養チャンバ3に戻る。第二入口7d、第一出口6c、第二出口7cは、開放端部である。第一入口6dにはアダプタ8が取り付けられている。
【0013】
棒状体2は、断面が円の細長い円筒状の部材である。棒状体2の外径はRである。細胞構造体5の維持を行う段階で、棒状体2を細胞構造体5に挿入すると、細胞構造体5の内径は棒状体2の外径Rより若干大きい。しかし、細胞構造体5の内径は、培養した状態での時間の経過にしたがって細胞構造体5を構成する細胞が成熟する過程で徐々に収縮する性質があるので、棒状体2は、細胞構造体5と棒状体2との間にぴったりと隙間無く細胞構造体5に挿嵌される。その内部には、棒状体2の一端から他端までに至る棒状体2の長手方向の軸方向に沿って貫通するような管路2aを有する。棒状体2の長さは、棒状体2は、少なくとも細胞構造体5の長さよりも長い。棒状体2の先端2bは細胞構造体5の中空部が挿入しやすいようにテーパ形状になっている。
【0014】
棒状体2は、管路2aと棒状体2の外表面との間に酸素透過性を有するような構造を有している。たとえば、フッ素系樹脂材料の棒状体2の管路2aと棒状体2の外表面との間に酸素透過用の小さい貫通孔を穿設させてもよい。または、酸素透過用の小さい貫通孔を配置させることなく、ジメチルポリシロキサン(PDMS)のような酸素透過性材料としてもよい。酸素が溶解した培養液3aを管路2a内に導入することで、その培養液3aの通過において、酸素が棒状体2の外表面に至って細胞構造体5の全長に行きわたって、細胞構造体5が内面から酸素を受け入れることができる。
【0015】
棒状体2のテーパが配置された先端2bに対して反対側の根元となる後端2cはアダプタ8に嵌合可能な構造となっている。棒状体2の後端2cにおける管路2aにはアダプタ8の嵌合口8aが容易に挿嵌可能であるので、ワンタッチで挿入することが可能となる。たとえば、図2のように、棒状体2はアダプタ8を介して第一入口6dに取り付けられるとともに、図3のように容易に棒状体2はアダプタ8を介して第一入口6dから取り外すことが可能である。
【0016】
続いて、管状細胞構造体培養維持装置1および管状細胞構造体維持補助具たる棒状体2を如何に使用するかを説明する。まず、従来の技術で説明した方法に基づき、管状の細胞構造体5を形成させる。そして、棒状体2を管状の細胞構造体5の中空部に挿入して、細胞構造体5との内面が棒状体2の外周面に密着させる。この状態で、棒状体2が細胞構造体5の中空部に挿入された状態で、アダプタ8を介して第一入口6dに取り付けて管状細胞構造体培養維持装置1の中に設置し、管状細胞構造体培養維持装置1により、酸素を透過した培養液3aを棒状体2の管路2a内を通して、細胞構造体5の内外を培養液3aに浸して所定の期間だけ培養して成熟させる。その間の細胞構造体5には十分な培養液3aが補給される。
【符号の説明】
【0017】
1 管状細胞構造体培養維持装置
2 棒状体
2a 管路
2b 先端
2c 後端
3 培養チャンバ
3a 培養液
4 ポンプ
5 細胞構造体
6 第一管路
7 第二管路
8 アダプタ
8a 嵌合口
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C