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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】抗がん用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/155 20060101AFI20220929BHJP
   A61K 31/7004 20060101ALI20220929BHJP
   A61K 31/6615 20060101ALI20220929BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A61K31/155
A61K31/7004
A61K31/6615
A61P35/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021549929
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 KR2019015251
(87)【国際公開番号】W WO2020101302
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-05-12
(31)【優先権主張番号】10-2018-0138345
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521203865
【氏名又は名称】ノーム インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOAHM INC.
【住所又は居所原語表記】TechnoCube 507, 13-18, Songdogwahak-ro 16beon-gil Yeonsu-gu Incheon 21984, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐 萬哲
(72)【発明者】
【氏名】鄭 イウン
(72)【発明者】
【氏名】金 恩志
(72)【発明者】
【氏名】鄭 在仁
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0015669(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0136753(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0109926(KR,A)
【文献】The Journal of Nutrition,2003年,133,pp.3778S-3784S
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ビグアニド系(biguanide)化合物またはその薬学的に許容可能な塩;
(2)2-デオキシ-D-グルコース(2-deoxy-D-glucose);及び
(3)イノシトールヘキサホスフェート(inositol hexaphosphate)またはその薬学的に許容可能な塩、イノシトール(inositol)、またはこれらの混合物
を含み、
前記ビグアニド系化合物は、メトホルミン(metformin)またはフェンホルミン(Phenformin)である、
ことを特徴とする、がんの予防または治療用薬学組成物。
【請求項2】
前記組成物は、ビグアニド系化合物またはその薬学的に許容可能な塩、2-デオキシ-D-グルコース、イノシトールヘキサホスフェートまたはその薬学的に許容可能な塩を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、ビグアニド系化合物またはその薬学的に許容可能な塩、2-デオキシ-D-グルコース、イノシトールを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、ビグアニド系化合物またはその薬学的に許容可能な塩、2-デオキシ-D-グルコース、イノシトールヘキサホスフェートまたはその薬学的に許容可能な塩及びイノシトールを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記イノシトール化合物の異性体は、D-カイロイノシトール(D-chiro-inositol)、L-カイロイノシトール(L-chiro-inositol)、ミオイノシトール(myo-inositol)及びシロイノシトール(scyllo-inositol)で構成された群から選択されるいずれか一つ以上である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ビグアニド系化合物は、メトホルミン(metformin) であり、
メトホルミンまたはその薬学的に許容可能な塩:2-デオキシ-D-グルコース:イノシトールヘキサホスフェートまたはその薬学的に許容可能な塩の重量比は、1:0.2:0.5から1:5:20の範囲である請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記ビグアニド系化合物は、フェンホルミン(Phenformin)であり、
フェンホルミンまたはその薬学的に許容可能な塩:2-デオキシ-D-グルコース:イノシトールヘキサホスフェートまたはその薬学的に許容可能な塩の重量比は、1:1:1から1:50:200の範囲である請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
前記ビグアニド系化合物は、メトホルミン(metformin) であり、
メトホルミンまたはその薬学的に許容可能な塩:2-デオキシ-D-グルコース:イノシトールの重量比は、1:0.2:0.5から1:5:20の範囲である請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
前記ビグアニド系化合物は、フェンホルミン(Phenformin)であり、
フェンホルミンまたはその薬学的に許容可能な塩:2-デオキシ-D-グルコース:イノシトールの重量比は、1:1:1から1:50:200の範囲である請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
前記ビグアニド系化合物は、メトホルミン(metformin) であり、
メトホルミンまたはその薬学的に許容可能な塩:2-デオキシ-D-グルコース:イノシトールヘキサホスフェートまたはその薬学的に許容可能な塩:イノシトールの重量比は、1:0.2:0.5:0.5から1:5:20:20の範囲である請求項4に記載の組成物。
【請求項11】
前記ビグアニド系化合物は、フェンホルミン(Phenformin)であり、
フェンホルミンまたはその薬学的に許容可能な塩:2-デオキシ-D-グルコース:イノシトールヘキサホスフェートまたはその薬学的に許容可能な塩:イノシトールの重量比は、1:1:1:1から1:50:200:200の範囲である請求項4に記載の組成物。
【請求項12】
前記がんは、肝癌、肺癌、胃癌、膵癌、大腸癌、子宮頸癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、脳癌、骨肉腫及び膀胱癌で構成された群から選択されるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
(1)ビグアニド系化合物またはその薬学的に許容可能な塩;(2)2-デオキシ-D-グルコース;及び(3)イノシトールヘキサホスフェート(inositol hexaphosphate)またはその薬学的に許容可能な塩、イノシトール(inositol)、またはこれらの混合物を有効成分として含み、
前記ビグアニド系化合物は、メトホルミン(metformin)またはフェンホルミン(Phenformin)である、
ことを特徴とする、がんの予防または改善用食品組成物。
【請求項14】
がんの予防または治療のための医薬を製造するための(1)ビグアニド系化合物またはその薬学的に許容可能な塩;(2)2-デオキシ-D-グルコース;及び(3)イノシトールヘキサホスフェート(inositol hexaphosphate)またはその薬学的に許容可能な塩、イノシトール(inositol)、またはこれらの混合物の使用であって、
前記ビグアニド系化合物は、メトホルミン(metformin)またはフェンホルミン(Phenformin)である、
ことを特徴とする、使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(1)ビグアニド系(biguanide)化合物またはその薬学的に許容可能な塩;(2)2-デオキシ-D-グルコース(2-deoxy-D-glucose);及び(3)イノシトールヘキサホスフェート(inositol hexaphosphate)またはその薬学的に許容可能な塩、イノシトール(inositol)、またはこれらの混合物を有効成分として含むがんの予防または治療用薬学組成物、及びがんの予防または改善用食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
抗がん化学療法は、悪性腫瘍の成長を抑制、変形させる目的で抗がん剤を使用する治療方法であって、腫瘍によって1次選択療法または手術及び放射線治療前後の補助療法として、がん患者の60-75%に使用されている。
【0003】
今日、がんが誘発された時は、二つ以上の治療法を併用することががん治療の礎石である。単一療法は、依然として多様な形態のがんに対する治療法として広く使用されているが、このような通常の方法は、一般に併用療法より効果的でない。従来の単一治療技術は、選択的に盛んに増殖する細胞を標的とするが、究極的に健常な細胞とがん細胞の破壊を招く(Mokhtari et al.,Oncotarget.2017;8:38022-38043)。
【0004】
このように、化学療法は、がん細胞の代謝経路に介入してDNAとの直接的な相互作用によりDNAの複製、転写、翻訳過程を遮断するか、核酸前駆体の合成を妨害し、細胞の分裂を阻害することで細胞に対する毒性を示す。これによって、抗がん剤は、正常細胞にも致命的な損傷を与え、骨髄破壊による白血球、血小板、赤血球等の血球減少症;毛包細胞破壊による脱毛症状;卵巣と精巣に対する副作用で生理不順及び男性不妊の原因;消化器の粘膜細胞破壊による副作用で口内炎、悪心嘔吐及び食べ物嚥下障害と消化障害;下痢症状;尿細管壊死による腎毒性;神経系障害で発生する末梢神経炎と衰弱感;血管痛及び発疹等の血管障害;皮膚及び爪変色等の多様な副作用が現れる。従って、抗がん剤による副作用を最小化しながら治療効果を上昇させるための研究が急務となっている。
【0005】
また、抗がん治療が失敗する主要原因は、抗がん剤が初期には効果を奏するが、次第に薬剤耐性が発現され、免疫力が極度に悪化するためである。従って、薬剤の毒性を増加させずにがん治療効能を改善させる方法が必要である。抗がん剤の効能を向上させる一つの方式で抗がん剤を組み合わせて使用できるが、不幸なことに、抗がん効果のある薬物を組み合わせるとして全て相乗効果を奏するとは期待できず、相乗効果を有する薬物の組み合わせを見つけることは非常に難しい事である。従って、抗がん剤の副作用を最小化しながら、抗がん効果が最大限に発揮され得る抗がん複合製剤の開発が至急な実情である。
【0006】
近年、がん細胞の新陳代謝と成長に重要な細胞信号伝達経路を標的とする抗がん治療法を開発することが現在多くの関心の対象となっているが、がん細胞の代謝に関与する代表的な薬物には、ビグアニド(biguanide)系列の化合物であるメトホルミン(Metformin)と2-デオキシ-D-グルコース(2-deoxy-D-glucose)がある(Wokoun et al.,Oncol Rep.2017;37:2418-2424)。
【0007】
抗高血糖剤としてメトホルミンは、数十年にわたって2型糖尿病の最初の治療剤として使用されている。抗糖尿病治療剤としてのメトホルミンの広範な使用にもかかわらず、2001年に哺乳類で潜在的な抗がん効果が初めて報告された。また、メトホルミンで治療した2型糖尿病患者のがん危険の減少に関する最初の報告書は、わずか10年前に発表された。それ以来、多くの論文で、メトホルミンは、卵巣癌をはじめとする様々ながん細胞株及び異種移植動物または形質転換マウスで一貫した抗増殖作用を示した。代謝と関連して、メトホルミンは、複合I及びATP synthase抑制剤の新たな部類と明らかになり、ミトコンドリアに直接作用して呼吸を制限してエネルギーを非効率的にし、クエン酸循環を通してブドウ糖代謝を減少させる(Andrzejewski et al.,2014;2:12-25)。
【0008】
2-デオキシ-D-グルコースは、該当過程に対する腫瘍細胞の依存性のため、潜在的な抗がん剤と見なされてきた。2-デオキシ-D-グルコースは、グルコース類似体であって、グルコース伝達体により容易に吸収され得、該当作用の競争的抑制剤として作用してATP産生を減少させ、固形腫瘍でカスパーゼ-3の活性化を通して細胞死を誘導する(Zhang et al.,Cancer Lett.2014;355:176-183)。
【0009】
研究によると、二つの主要細胞エネルギー源を目標とする二つの薬剤であるメトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの併用療法が既存の化学療法の単独療法より大きな利点となり得ることを示している。即ち、メトホルミンは、血糖を下げるだけではなく、細胞活動に必要なエネルギーを作るミトコンドリアで呼吸鎖をブロックし、2-デオキシ-D-グルコースは、ブドウ糖分解を抑制するため、結局、二つの薬剤の併用で細胞のエネルギー伝達過程を防ぐというのである。このような代謝過程が活性化されると、がん細胞は、エネルギー消費が増加しても、供給されるエネルギーが減少するため、外部攻撃に脆弱な状態となる。
【0010】
いくつかの腫瘍タイプの報告によると、メトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの組み合わせは、細胞代謝を阻害し、腫瘍細胞死を起こすということが知られており、ヒト乳癌細胞の生存力が用量依存的に顕著に減少することを示したのは、糖化(2-デオキシ-D-グルコースとして)と酸化的リン酸化(メトホルミンとして)で同時新陳代謝妨害によって引き起こされた(Bizjak et al.,Sci Rep.2017;7:1761-1774)。
【0011】
しかし、一般に使用されるメトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの容量では、がんを十分に治療するには不足し、高容量の治療時、異常反応が現れ得るという限界点を有している(Raez et al.,Cancer Chemother Pharmacol.2013;71:523-530)。チョン(Cheong)等が研究したメトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの併用治療が乳癌細胞株に効果があることを示したが、これは、ヒトの人体内で耐えることができる濃度または血漿内投与可能な濃度より高かった(Cheong et al.,Mol Cancer Ther.2011;10:2350-2362)。他の論文では、メトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースの組み合わせがヒトの血漿で使用可能な濃度より高いメトホルミン濃度を使用して前立腺癌細胞で成功的にテストされた(Ben Sahra et al.,Cancer Res.2010;70:2465-2475)。
【0012】
これは、臨床的に有効な抗がん剤であるメトホルミンと2-デオキシ-D-グルコースが生体内で合理的に達成できる範囲内でその治療濃度を下げることが好ましいことを示唆する。
【0013】
一方、イノシトールヘキサホスフェートとイノシトールは、ほとんどの穀物、種子、豆と植物に多量含有されており、哺乳動物細胞にも存在する天然有機リン化合物であり、リン酸塩の少ないリン酸塩形態(IP1-5)と共に存在する。イノシトールヘキサホスフェートは、多様な細胞の信号伝達、細胞増殖及び分化のような重要な細胞機能の調節に重要な役割を果たし、天然抗酸化物質として認められている(Shamsuddin et al.,J Nutr.2003;133:3778S-3784S)。
【0014】
近年、イノシトールヘキサホスフェートは、がん予防と実験腫瘍の成長、進行及び転移に対する抑制効果が一部報告されたことがある(Vucenik et al.,Nutr Cancer.2006;55:109-125)。
【0015】
予備臨床研究では、イノシトールヘキサホスフェートとイノシトールを化学療法と併用投与すると、化学療法の副作用を減らし、肝転移のある乳癌や大腸癌患者の生活の質が向上するという報告があるが、依然としてイノシトールヘキサホスフェートまたはイノシトールヘキサホスフェート及びイノシトールで複合製剤となったことだけでは効果的にがん細胞の成長を抑制することが難しい実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そこで、本発明は、ビグアニド系化合物としてメトホルミンまたはフェンホルミンと2-デオキシ-D-グルコースが生体内で合理的に達成できる治療濃度を下げた状態でイノシトールヘキサホスフェート、イノシトール、またはこれらの混合物を複合製剤として使用した時にがん細胞成長抑制効果が顕著に増加することを確認することで本発明を完成し、前記複合製剤が化合物の低濃度の組み合わせでも効果的にがん細胞を死滅させることができることを確認することで、人体の安全性確保とともに、今後、がん治療分野で大きく活用されると期待される。
【0017】
即ち、本発明の一つの目的は、少量の薬物でもがんを効果的に治療でき、がん細胞特異的に毒性効果を奏し、副作用が減少したがんの予防または治療用薬学組成物を提供することである。
【0018】
また、本発明の他の目的は、がんの予防または改善用食品組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するための一つの様態として、本発明は、(1)ビグアニド系化合物またはその薬学的に許容可能な塩;(2)2-デオキシ-D-グルコース;及び(3)イノシトールヘキサホスフェート(inositol hexaphosphate)またはその薬学的に許容可能な塩、イノシトール(inositol)、またはこれらの混合物を有効成分として含むがんの予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0020】
他の様態として、本発明は、(1)ビグアニド系化合物またはその薬学的に許容可能な塩;(2)2-デオキシ-D-グルコース;及び(3)イノシトールヘキサホスフェート(inositol hexaphosphate)またはその薬学的に許容可能な塩、イノシトール(inositol)、またはこれらの混合物を有効成分として含むがんの予防または改善用食品組成物を提供する。
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
一つの様態として、本発明は、(1)ビグアニド系化合物またはその薬学的に許容可能な塩;(2)2-デオキシ-D-グルコース;及び(3)イノシトールヘキサホスフェート(inositol hexaphosphate)またはその薬学的に許容可能な塩、イノシトール(inositol)、またはこれらの混合物を有効成分として含むがんの予防または治療用薬学組成物に関するものである。
【0023】
本発明においては、(1)ビグアニド系化合物またはその薬学的に許容可能な塩;(2)2-デオキシ-D-グルコース;及び(3)イノシトールヘキサホスフェート(inositol hexaphosphate)またはその薬学的に許容可能な塩、イノシトール(inositol)、またはこれらの混合物を有効成分として含む複合製剤を製造することで、副作用が少なく、かつ少量でもがんを効果的に治療できる優れた抗がん剤を開発した。
【0024】
本発明の複合製剤は、単一化合物で治療する場合より複合製剤に含まれる個別化合物の量をさらに少なく使用することができ、これによって副作用の危険および/または深刻性は相当な水準下げながら治療の全体的な効果は有意味に高めることができる長所がある。
【0025】
本発明において、ビグアニド系化合物は、例えば、メトホルミン(Metformin)またはフェンホルミン(Phenformin)である。具体的に、メトホルミンは、下記化1の構造式を有する。
【化1】
具体的に、フェンホルミンは、下記化2の構造式を有する。
【化2】
【0026】
本発明においては、(1)ビグアニド系化合物またはその薬学的に許容可能な塩;(2)2-デオキシ-D-グルコース;及び(3)イノシトールヘキサホスフェート(inositol hexaphosphate)またはその薬学的に許容可能な塩、イノシトール(inositol)、またはこれらの混合物を複合製剤として使用したとき、少ない濃度でも高い抗がん効果を奏する。
【0027】
ビグアニド系列の薬物は、これに限定されるものではないが、細胞内エネルギーバランス及び栄養分代謝調節に中枢的な役割を果たしているAMPK(AMP-activated kinase)という酵素を活性化させる作用メカニズムを通して抗がん効果を奏することができる。
【0028】
ラット(rat)にメトホルミンを経口投与時、LD50が1,450mg/kgであって、メトホルミンは非常に安全性が確保された化合物であるということが分かるが、依然として高容量で使用されなければならない問題がある。一方、フェンホルミンは、経口用糖尿病治療剤であって、1950年後半に開発されてインスリン非依存型糖尿病(2型糖尿病)の治療に使用されようとしたが、乳酸アシドーシス(Lactic acidosis)という深刻な副作用により、1970年代後半、使用が全面禁止された。
【0029】
本発明においては、(1)ビグアニド系化合物またはその薬学的に許容可能な塩;(2)2-デオキシ-D-グルコース;及び(3)イノシトールヘキサホスフェート(inositol hexaphosphate)またはその薬学的に許容可能な塩、イノシトール(inositol)、またはこれらの混合物を複合製剤とした3種以上の化合物が含まれた組成物を製造し、前記組成物がそれぞれの単一製剤または2種化合物の組み合わせである組成物より遥かに低い濃度でも高い抗がん効果を奏し、メトホルミンまたはフェンホルミンが有している高容量投与の問題または副作用の問題点を改善できることを確認した(図1図4図6図9)。
【0030】
本発明において、2-デオキシ-D-グルコースは、化3で表示される構造を有する。
【化3】
【0031】
前記化3の化合物は、該当作用の抑制剤として作用効果を有する。
【0032】
本発明においては、2-デオキシ-D-グルコースとビグアニド系化合物またはこれらの薬学的に許容可能な塩にイノシトールヘキサホスフェートまたはこれらの薬学的に許容可能な塩、イノシトール、またはこれらの混合物を複合製剤として使用したとき、少ない濃度でも高い抗がん効果が奏されることを確認した。2-デオキシ-D-グルコースは、ブドウ糖の誘導体であって、ブドウ糖代謝過程において解糖作用(glycolysis)を抑制し、小胞体内タンパク質の糖化(glycosylation)を阻害して小胞体ストレスを誘導する作用効果を有する。このように、ブドウ糖分解抑制剤である2-デオキシ-D-グルコースは、単独ではがん細胞を殺すことはできないものと示されたが、本発明の複合製剤をなして優れた抗がん効果を奏する。
【0033】
本発明において、イノシトールヘキサホスフェートおよび/またはイノシトールは、がん細胞で様々な重要な経路を調節できる。本発明において、イノシトールヘキサホスフェートは、具体的に化4の構造を有する。
【化4】
【0034】
本発明において、イノシトールは、具体的に化5の構造を有する。
【化5】
【0035】
本発明においては、イノシトールヘキサホスフェート(inositol hexaphosphate)またはその薬学的に許容可能な塩、イノシトール(inositol)、またはこれらの混合物をビグアニド系化合物またはその薬学的に許容可能な塩と2-デオキシ-D-グルコースに組み合わせることで低い濃度でも高い抗がん効果が奏されることを確認した。
【0036】
本発明において、ビグアニド系化合物及びイノシトールヘキサホスフェートは、薬学的に許容可能な塩の形態で存在し得る。塩としては、薬学的に許容可能な遊離酸により形成された酸付加塩が有用である。本明細書に使用されたように、「薬学的に許容可能な塩」とは、患者に比較的非毒性であり、無害な有効作用を有する濃度で、この塩に起因した副作用がビグアニド系化合物及びイノシトールヘキサホスフェートの有益な効能を低下させない任意の全ての有機または無機付加塩を意味する。
【0037】
このとき、付加塩として、無機酸としては、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、酒石酸等を使用することができ、有機酸としては、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、コハク酸、シュウ酸、安息香酸、酒石酸、フマル酸、マンデル酸、プロピオン酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、グルコン酸、ガラクツロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グルクロン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、炭酸、バニリン酸、ヨウ化水素酸等を使用することができ、これらに制限されない。
【0038】
また、塩基を使用して薬学的に許容可能な金属塩を作ることができる。アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩は、例えば、化合物を過量のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物溶液中に溶解させ、非溶解化合物塩をろ過した後、ろ液を蒸発、乾燥させて得る。このとき、金属塩としては、特にナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム塩またはこれらの混合塩を製造することが製薬上適するが、これらに制限されるものではない。
【0039】
ビグアニド系化合物(メトホルミンまたはフェンホルミン)とイノシトールヘキサホスフェートそれぞれの薬学的に許容可能な塩は、特に断りのない限り、ビグアニド系化合物(メトホルミンまたはフェンホルミン)とイノシトールヘキサホスフェートそれぞれに存在し得る酸性または塩基性基の塩を含む。例えば、薬学的に許容可能な塩としては、ヒドロキシ基のナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウム塩等が含まれ得、アミノ基のその他の薬学的に許容可能な塩としては、臭化水素酸塩、硫酸塩、水素硫酸塩、リン酸塩、水素リン酸塩、二水素リン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩(メシレート)及びp-トルエンスルホン酸(トシレート)塩等があり、当業界に知られた塩の製造方法を通して製造され得る。
【0040】
本発明のビグアニド系化合物(メトホルミンまたはフェンホルミン)の塩としては、薬学的に許容可能な塩として、メトホルミンまたはフェンホルミンと同等な抗がん効果を奏するメトホルミンまたはフェンホルミン塩であればいずれも使用可能であり、好ましくは、塩酸メトホルミン、コハク酸メトホルミン、クエン酸メトホルミン、または塩酸フェンホルミン、コハク酸フェンホルミン、クエン酸フェンホルミン等が可能であるが、これに限定されるものではない。
【0041】
本発明のイノシトールヘキサホスフェート塩としては、薬学的に許容可能な塩として、イノシトールヘキサホスフェートと同等な抗がん効果を奏するイノシトールヘキサホスフェート塩であればいずれも使用可能であり、好ましくは、イノシトールヘキサホスフェートナトリウム、イノシトールヘキサホスフェートカリウム、イノシトールヘキサホスフェートカルシウム、イノシトールヘキサホスフェートアンモニウム、イノシトールヘキサホスフェートマグネシウム、イノシトールヘキサホスフェートカルシウムマグネシウム等が可能であるが、これに限定されるものではない。
【0042】
本発明のビグアニド系化合物、2-デオキシ-D-グルコース、及びイノシトールヘキサホスフェートはそれぞれこれらの誘導体も含む。前記「誘導体」とは、前記化合物の抗がん活性が変わらない限度内で前記化合物の一部を化学的に変化、例えば、官能基の導入、置換、欠失させて製造した化合物を意味するものであり、本発明に制限なく含まれ得る。
【0043】
本発明において、イノシトールは、多様な異性体での形態で存在し得る。異性体は、鏡像異性体と部分立体異性体をいずれも含む。薬学的に抗がん効果を奏するイノシトールであればいずれも使用可能であり、好ましくは、D-カイロイノシトール(D-chiro-inositol)、L-カイロイノシトール(L-chiro-inositol)、ミオイノシトール(myo-inositol)及びシロイノシトール(scyllo-inositol)で構成された群から選択されるいずれか一つ以上が可能であるが、これに限定されるものではない。
【0044】
それぞれ抗がん効果が知られた2種以上の薬物を組み合わせるとして、組み合わされた薬物が互いに相乗効果(シナジー効果)を奏するとは期待できず、むしろ、組み合わせにより薬物の機能が相殺される場合があって、相乗効果を有する薬物の組み合わせを見つけることは非常に難しい事である。本発明においては、抗がん剤の最小濃度使用で副作用を最小化しながら抗がん効果は最大限に発揮できる抗がん複合製剤を開発した。
【0045】
本発明において、好ましいがんの予防または治療用薬学組成物の様態は、ビグアニド系化合物またはこれらの薬学的に許容可能な塩、2-デオキシ-D-グルコース、及びイノシトールヘキサホスフェートまたはその薬学的に許容可能な塩を含む組成物;ビグアニド系化合物またはこれらの薬学的に許容可能な塩、2-デオキシ-D-グルコース、及びイノシトールを含む組成物;ビグアニド系化合物またはこれらの薬学的に許容可能な塩、2-デオキシ-D-グルコース、イノシトールヘキサホスフェートまたはその薬学的に許容可能な塩及びイノシトールを含む組成物であってよい。
【0046】
本発明において、前記ビグアニド系化合物としては、メトホルミンまたはこれらの薬学的に許容可能な塩、またはフェンホルミンまたはこれらの薬学的に許容可能な塩であってよい。
【0047】
ビグアニド系化合物としては、メトホルミンを中心とした組成物を検討すると、本発明のがんの予防または治療用薬学組成物は、メトホルミンまたはこれらの薬学的に許容可能な塩、2-デオキシ-D-グルコース、及びイノシトールヘキサホスフェートまたはその薬学的に許容可能な塩を含む組成物;メトホルミンまたはこれらの薬学的に許容可能な塩、2-デオキシ-D-グルコース、及びイノシトールを含む組成物;メトホルミンまたはこれらの薬学的に許容可能な塩、2-デオキシ-D-グルコース、イノシトールヘキサホスフェートまたはその薬学的に許容可能な塩及びイノシトールを含む組成物であってよい。
【0048】
また他のビグアニド系化合物としては、フェンホルミンを中心とした組成物を検討すると、本発明のがんの予防または治療用組成物は、フェンホルミンまたはこれらの薬学的に許容可能な塩、2-デオキシ-D-グルコース、及びイノシトールヘキサホスフェートまたはその薬学的に許容可能な塩を含む組成物;フェンホルミンまたはこれらの薬学的に許容可能な塩、2-デオキシ-D-グルコース、及びイノシトールを含む組成物;フェンホルミンまたはこれらの薬学的に許容可能な塩、2-デオキシ-D-グルコース、イノシトールヘキサホスフェートまたはその薬学的に許容可能な塩及びイノシトールを含む組成物であってよい。
【0049】
本発明の一実施例においては、ビグアニド系化合物またはこれらの薬学的に許容可能な塩と2-デオキシ-D-グルコース及びイノシトールヘキサホスフェートまたはその薬学的に許容可能な塩で構成された複合製剤が試験管内でがん細胞株の細胞増殖を抑制できることを確認した(実施例1)。
【0050】
また、ビグアニド系化合物またはこれらの薬学的に許容可能な塩、2-デオキシ-D-グルコース、及びイノシトールヘキサホスフェートまたはその薬学的に許容可能な塩を含む組成物;ビグアニド系化合物またはこれらの薬学的に許容可能な塩、2-デオキシ-D-グルコース、及びイノシトールを含む組成物;ビグアニド系化合物またはこれらの薬学的に許容可能な塩、2-デオキシ-D-グルコース、イノシトールヘキサホスフェートまたはその薬学的に許容可能な塩及びイノシトールで構成された3種以上の化合物からなる複合製剤を使用した場合、化合物の組み合わせによって、生体内で相乗的がんの予防または治療効果が奏され、がん抑制濃度が顕著に減少することを確認することができた(実施例5乃至9)。
【0051】
即ち、本発明によれば、ビグアニド系化合物、2-デオキシ-D-グルコース、イノシトールヘキサホスフェート及びイノシトールそれぞれは、単独で使用する場合、抗がん効果が不十分で過量で使用しなければならないが、前記化合物を組み合わせた複合製剤で使用するようになると、少ない量でもがん細胞を効果的に死滅できることを確認した。
【0052】
特に、メトホルミン/2-デオキシ-D-グルコース/イノシトールヘキサホスフェートの複合製剤、メトホルミン/2-デオキシ-D-グルコース/イノシトールの複合製剤、及びメトホルミン/2-デオキシ-D-グルコース/イノシトールヘキサホスフェート/イノシトールの複合製剤は、各化合物の単一製剤やメトホルミン/2-デオキシ-D-グルコースのような2種の化合物が含まれた複合製剤よりがん抑制濃度の低減効果が非常に高く奏された。
【0053】
本発明に係る各複合製剤において、各化合物の組み合わせの重量比は、特に制限されない。
【0054】
例えば、メトホルミンまたはその薬学的に許容可能な塩:2-デオキシ-D-グルコース:イノシトールヘキサホスフェートまたはその薬学的に許容可能な塩の重量比は、1:0.2:0.5~1:5:20の範囲であってよく、治療するがんの種類によって組み合わせの相対量は変わり得る。
【0055】
また他の例として、フェンホルミンまたはその薬学的に許容可能な塩:2-デオキシ-D-グルコース:イノシトールヘキサホスフェートまたはその薬学的に許容可能な塩の重量比は、1:1:1~1:50:200の範囲であってよく、治療するがんの種類によって組み合わせの相対量は変わり得る。
【0056】
また他の例として、メトホルミンまたはその薬学的に許容可能な塩:2-デオキシ-D-グルコース:イノシトールの重量比は、1:0.2:0.5~1:5:20の範囲であってよく、治療するがんの種類によって組み合わせの相対量は変わり得る。
【0057】
また他の例として、フェンホルミンまたはその薬学的に許容可能な塩:2-デオキシ-D-グルコース:イノシトールの重量比は、1:1:1~1:50:200の範囲であってよく、治療するがんの種類によって組み合わせの相対量は変わり得る。
【0058】
また他の例として、メトホルミンまたはその薬学的に許容可能な塩:2-デオキシ-D-グルコース:イノシトールヘキサホスフェートまたはその薬学的に許容可能な塩:イノシトールの重量比は、1:0.2:0.5:0.5~1:5:20:20の範囲であってよく、治療するがんの種類によって組み合わせの相対量は変わり得る。
【0059】
また他の例として、フェンホルミンまたはその薬学的に許容可能な塩:2-デオキシ-D-グルコース:イノシトールヘキサホスフェートまたはその薬学的に許容可能な塩:イノシトールの重量比は、1:1:1:1~1:50:200:200の範囲であってよく、治療するがんの種類によって組み合わせの相対量は変わり得る。
【0060】
本発明において使用される用語「がん(cancer)」とは、細胞の死滅調節と関連した疾病であって、正常なアポトーシス均衡が崩れる場合、細胞が過多増殖するようになることで生じる疾病をいう。このような非正常な過多増殖細胞は、場合によって周囲の組織及び臓器に侵入して腫塊を形成し、体内の正常な構造を破壊するか変形させるようになるが、このような状態をがんという。一般に、腫瘍(tumor)とは、身体組織の自律的な過剰成長により非正常に育った塊を意味し、良性腫瘍(benign tumor)と悪性腫瘍(malignant)とに区分できる。悪性腫瘍は、良性腫瘍に比して成長速度が非常に速く、周辺の組織に浸潤しながら転移(metastasis)が起こって生命を脅かすようになる。このような悪性腫瘍を通常「がん(cancer)」と呼び、がんの種類としては、脳脊髄腫瘍、脳癌、頭頸部癌、肺癌、乳癌、胸腺腫、食道癌、胃癌、大腸癌、肝癌、膵癌、胆道癌、腎癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、胚細胞腫瘍、卵巣癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、リンパ腫、急性白血病、慢性白血病、多発性骨髄腫、肉腫、悪性黒色腫及び皮膚癌等がある。本発明の抗がん用組成物は、がんの種類に制限なく使用され得るが、本発明の目的上、肝癌、肺癌、胃癌、膵癌、大腸癌、子宮頸癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、脳癌、骨肉腫及び膀胱癌で構成された群から選択されたいずれか一つ以上のがんの予防または治療に有用に使用され得る。
【0061】
本発明において使用される用語「予防または治療」とは、(1)ビグアニド系化合物またはその薬学的に許容可能な塩;(2)2-デオキシ-D-グルコース;及び(3)イノシトールヘキサホスフェート(inositol hexaphosphate)またはその薬学的に許容可能な塩、イノシトール(inositol)、またはこれらの混合物を有効成分として含む組成物を利用することでがんの発病を抑制するか発病を遅延する全ての行為をいい、特に「治療」とは、前記組成物を使用してがんを好転させるか有益に変更する全ての行為を意味する。
【0062】
従って、本発明は、がんの予防または治療を要する対象体に(1)ビグアニド系化合物またはその薬学的に許容可能な塩;(2)2-デオキシ-D-グルコース;及び(3)イノシトールヘキサホスフェート(inositol hexaphosphate)またはその薬学的に許容可能な塩、イノシトール(inositol)、またはこれらの混合物を治療学的有効量で投与することを含む、がんの予防または治療方法を提供する。
【0063】
本発明のがんの予防または治療用組成物は、前記言及した有効成分以外に必要に応じてがん治療用化学療法剤をさらに含むことができる。
【0064】
また、本発明のがんの予防または治療用組成物は、薬剤学的に許容される担体をさらに含むことができる。本発明の組成物は、それぞれの使用目的に合わせて、常法によって、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾル等の経口型剤形、滅菌注射溶液の形態、軟膏剤等の外用剤、坐剤等に剤形化して使用され得、このような組成物に含まれ得る担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート、鉱物油等が挙げられる。
【0065】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等が含まれ、このような固形製剤は、前記組成物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチン等を混ぜて剤形化する。また、単純な賦形剤以外にマグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用される。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内溶液剤、乳剤、シロップ剤等が該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、液体パラフィン以外に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤等が含まれ得る。
【0066】
非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステル等が使用され得る。注射剤の基剤としては、溶解剤、等張化剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤及び防腐剤のような従来の添加剤を含むことができる。
【0067】
本発明の組成物は、経口、静脈内、皮下、皮内、鼻腔内、腹腔内、筋肉内、経皮等、多様な方式を利用して投与でき、投与量は、患者の年齢、性別、体重によって変わり得、当業者により容易に決定され得る。本発明に係る組成物の投与量は、投与経路、疾病の程度、性別、体重、年齢等によって増減し得るが、好ましくは、4種化合物の複合製剤の場合、ビグアニド系化合物としてメトホルミンを使用する場合は、1日当たり5~80mg/kg(体重)、フェンホルミンを使用する場合は、1日当たり0.1~10mg/kg(体重)であり、2-デオキシ-D-グルコースは、1日当たり0.1~160mg/kg(体重)であり、イノシトールヘキサホスフェートは、1日当たり2~600mg/kg(体重)、そしてイノシトールは、1日当たり2~600mg/kg(体重)である。ただし、前記投与量により本発明の範囲が限定されるものではない。
【0068】
また一つの様態として、本発明は、(1)ビグアニド系化合物またはその薬学的に許容可能な塩;(2)2-デオキシ-D-グルコース;及び(3)イノシトールヘキサホスフェート(inositol hexaphosphate)またはその薬学的に許容可能な塩、イノシトール(inositol)、またはこれらの混合物を個体に投与してがんを予防または治療する方法に関するものである。
【0069】
また一つの様態として、本発明は、(1)ビグアニド系化合物またはその薬学的に許容可能な塩;(2)2-デオキシ-D-グルコース;及び(3)イノシトールヘキサホスフェート(inositol hexaphosphate)またはその薬学的に許容可能な塩、イノシトール(inositol)、またはこれらの混合物を含むがんの予防または治療に使用するための組成物に関するものである。
【0070】
また一つの様態として、本発明は、がんの予防または治療のための医薬を製造するための(1)ビグアニド系化合物またはその薬学的に許容可能な塩;(2)2-デオキシ-D-グルコース;及び(3)イノシトールヘキサホスフェート(inositol hexaphosphate)またはその薬学的に許容可能な塩、イノシトール(inositol)、またはこれらの混合物の使用に関するものである。
【0071】
また一つの様態として、本発明は、(1)ビグアニド系化合物またはその薬学的に許容可能な塩;(2)2-デオキシ-D-グルコース;及び(3)イノシトールヘキサホスフェート(inositol hexaphosphate)またはその薬学的に許容可能な塩、イノシトール(inositol)、またはこれらの混合物を有効成分として含むがんの予防または改善用食品組成物に関するものである。
【0072】
前記ビグアニド系化合物は、メトホルミンまたはフェンホルミンであってよい。
【0073】
前記組成物には、有効成分以外に食品学的に許容可能な食品補助添加剤が含まれ得る。
【0074】
本発明において使用される用語「食品補助添加剤」とは、食品に補助的に添加され得る構成要素を意味し、各剤形の健康機能食品を製造するのに添加されるものであって、当業者が適宜選択して使用できる。食品補助添加剤の例としては、種々の栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤等の風味剤、着色剤及び充填剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤等が含まれるが、前記例により本発明の食品補助添加剤の種類が制限されるものではない。
【0075】
本発明の食品組成物には、健康機能食品が含まれ得る。本発明において使用される用語「健康機能食品」とは、人体に有用な機能性を有する原料や成分を使用して錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液状及び丸等の形態に製造及び加工した食品をいう。ここで「機能性」とは、人体の構造及び機能に対して栄養素を調節するか、生理学的作用等のような保健用途に有用な効果を得ることを意味する。本発明の健康機能食品は、当業界で通常使用される方法によって製造可能であり、前記製造時には、当業界で通常添加する原料及び成分を添加して製造できる。また、前記健康機能食品の剤形もまた健康機能食品として認められる剤形であれば制限なく製造され得る。本発明の食品用組成物は、多様な形態の剤形に製造され得、一般薬品とは異なり食品を原料として薬品の長期服用時に発生し得る副作用等がない長所があり、携帯性に優れ、本発明の健康機能食品は、抗がん剤の効果を増進させるための補助剤として摂取が可能である。
【発明の効果】
【0076】
本発明の組成物は、過量で使用しなければならない問題点を有する特定薬物を適宜組み合わせて相乗的抗がん効果を奏し、少ない量でもがん細胞を死滅させ、効果的にがんを治療することができる。さらに、本発明の組成物は、正常細胞で毒性を示さずにがん細胞特異的に毒性効果を奏して副作用なしにがん細胞だけを死滅させることができるので、抗がん剤及びがんの予防または改善のためのものとして有用に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1】ヒトに由来したがん細胞株に対してメトホルミン(MET)、2-デオキシ-D-グルコース(2DG)及びイノシトールヘキサホスフェート(IP6)の単独及び複合製剤をヒトの血漿で使用可能な低濃度で処理し、48時間後、MTT分析法による細胞生存率を百分率で示したグラフである。各棒の縦棒は、標準偏差を示す。統計分析は、GraphPad Prism 6.0ソフトウェアを使用してTukeyの多重比較事後分析を利用した一元分散分析(one-way ANOVA)テストにより遂行された。 (1A)ヒトの肝に由来したがん細胞であるHepG2細胞株に対して調査したグラフである。(1B)ヒトの肺に由来したがん細胞であるA549細胞株に対して調査したグラフである。(1C)ヒトの胃に由来したがん細胞であるAGS細胞株に対して調査したグラフである。(1D)ヒトの膵臓に由来したがん細胞であるPANC-1細胞株に対して調査したグラフである。(1E)ヒトの大腸に由来したがん細胞であるDLD-1細胞株に対して調査したグラフである。(1F)ヒトの子宮頸部に由来したがん細胞であるHeLa細胞株に対して調査したグラフである。
図2】ヒトに由来したがん細胞株に対してメトホルミン(MET)、2-デオキシ-D-グルコース(2DG)及びイノシトールヘキサホスフェート(IP6)の単独及び複合製剤をヒトの血漿で使用可能な低濃度で処理し、48時間後、MTT分析法による細胞生存率を百分率で示したグラフである。各棒の縦棒は、標準偏差を示す。統計分析は、GraphPad Prism 6.0ソフトウェアを使用してTukeyの多重比較事後分析を利用した一元分散分析(one-way ANOVA)テストにより遂行された。(2A)ヒトの乳房に由来したがん細胞であるMDA-MB-231細胞株に対して調査したグラフである。(2B)ヒトの前立腺に由来したがん細胞であるPC-3細胞株に対して調査したグラフである。(2C)ヒトの卵巣に由来したがん細胞であるSK-OV-3細胞株に対して調査したグラフである。(2D)ヒトの膀胱に由来したがん細胞であるT24細胞株に対して調査したグラフである。(2E)ヒトの脳に由来したがん細胞であるU-87 MG細胞株に対して調査したグラフである。(2F)ヒトの骨肉に由来したがん細胞であるSaos-2細胞株に対して調査したグラフである。****p<0.0001。
図3】ヒトに由来したがん細胞株に対してフェンホルミン(PHE)、2DG及びIP6の単独及び複合製剤をヒトの血漿で使用可能な低濃度で処理し、48時間後、MTT分析法による細胞生存率を百分率で示したグラフである。各棒の縦棒は、標準偏差を示す。統計分析は、GraphPad Prism 6.0ソフトウェアを使用してTukeyの多重比較事後分析を利用した一元分散分析(one-way ANOVA)テストにより遂行された。 (3A)ヒトの肝に由来したがん細胞であるHepG2細胞株に対して調査したグラフである。(3B)ヒトの肺に由来したがん細胞であるA549細胞株に対して調査したグラフである。(3C)ヒトの胃に由来したがん細胞であるAGS細胞株に対して調査したグラフである。(3D)ヒトの膵臓に由来したがん細胞であるPANC-1細胞株に対して調査したグラフである。(3E)ヒトの大腸に由来したがん細胞であるDLD-1細胞株に対して調査したグラフである。(3F)ヒトの子宮頸部に由来したがん細胞であるHeLa細胞株に対して調査したグラフである。
図4】ヒトに由来したがん細胞株に対してフェンホルミン(PHE)、2DG及びIP6の単独及び複合製剤をヒトの血漿で使用可能な低濃度で処理し、48時間後、MTT分析法による細胞生存率を百分率で示したグラフである。各棒の縦棒は、標準偏差を示す。統計分析は、GraphPad Prism 6.0ソフトウェアを使用してTukeyの多重比較事後分析を利用した一元分散分析(one-way ANOVA)テストにより遂行された。(4A)ヒトの乳房に由来したがん細胞であるMDA-MB-231細胞株に対して調査したグラフである。(4B)ヒトの前立腺に由来したがん細胞であるPC-3細胞株に対して調査したグラフである。(4C)ヒトの卵巣に由来したがん細胞であるSK-OV-3細胞株に対して調査したグラフである。(4D)ヒトの膀胱に由来したがん細胞であるT24細胞株に対して調査したグラフである。(4E)ヒトの脳に由来したがん細胞であるU-87 MG細胞株に対して調査したグラフである。(4F)ヒトの骨肉に由来したがん細胞であるSaos-2細胞株に対して調査したグラフである。****p<0.0001。
図5】ヒトに由来した正常な細胞株に対してMET、2DG及びIP6の複合製剤をヒトの血漿で使用可能な低濃度で処理し、48時間後、MTT分析法による細胞生存率を百分率で示したグラフである。****p<0.0001。
図6】MET、2DG及びIP6の単独及び複合製剤を使用した4T1細胞での生存率とタンパク質発現を示した図である。*p<0.05。****p<0.0001。
図7】4T1細胞に対するMET、2DG及びIP6の単独及び複合製剤のATP合成抑制グラフである。*p<0.05。****p<0.0001。
図8】実験動物でMET、2DG、IP6及びInsの単独及び複合製剤投与による3日間隔で腫瘍の体積を測定したグラフである。*p<0.05、****p<0.0001。
図9】実験動物でMET、2DG、IP6及びInsの単独及び複合製剤投与後、19日目の腫瘍の重さを測定したグラフである。*p<0.05、**p<0.01、****p<0.0001。
図10】実験動物でMET、2DG、IP6及びInsの単独及び複合製剤投与後、18日目の体重を測定したグラフである。NS(有意差なし)。
図11】MET、2DG、IP6及びInsの単独及び複合製剤の肺転移発生率を調査したグラフである。
図12】MET、2DG、IP6及びInsの単独及び複合製剤が腫瘍組織の組織形態学的変化に及ぼす影響を調査したヘマトキシリン-エオシン(hematocylin & eosin)染色をした図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
本発明の利点及び特徴、そして、それらを達成する方法は、詳細に後述されている実施例を参照すると、明確になるだろう。しかし、本発明は、以下において開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形状に具現され、単に、本実施例は、本発明の開示が完全なものとなるようにし、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇により定義されるだけである。
【0079】
下記実施例においては、ビグアニド系化合物としてメトホルミンまたはフェンホルミンの薬学的に許容可能な様々な塩の形態の中で塩酸メトホルミン(Metformin HCl)、塩酸フェンホルミン(Phenformin HCl)を使用した。これらの塩の形態は、実施例によって限定されるものではない。
【0080】
下記実施例においては、イノシトールヘキサホスフェートの薬学的に許容可能な様々な塩の形態の中でイノシトールヘキサホスフェート(Phytic acid)を使用した。これらの形態は、実施例によって限定されるものではない。
【0081】
下記実施例においては、イノシトールの異性体の中でミオイノシトール(myo-inositol)を使用した。これらの異性体は、実施例によって限定されるものではない。
【0082】
細胞培養
本試験に使用した細胞は、腫瘍細胞として、肝癌(HepG2)、肺癌(A549)、胃癌(AGS)、膵癌(PANC-1)、大腸癌(DLD-1)、子宮頸癌(HeLa)、乳癌(MDA-MB-231)、前立腺癌(PC-3)、卵巣癌(SK-OV-3)、膀胱癌(T24)、膠芽腫(U-87 MG)、骨肉腫(Saos-2)、マウス由来乳癌(4T1)を使用し、非腫瘍細胞としては、前立腺(PZ-HPV-7)、大腸(CCD-18Co)、肺(MRC5)細胞株を使用したが、全ての細胞株は、韓国細胞株銀行(Korean Cell Line Bank)または米国ATCC(American Type Culture Collection,Rockville,MD)で購入して使用した。
前記細胞は、Roswell Park Memorial Institute 1640 Medium(RPMI1640,Hyclone,Logan,UT,USA)に10%fetal bovine serum(FBS,Hyclone)、1%penicillin/streptomycin(P/S,Hyclone)を添加した細胞培養液を利用し、37℃インキュベーター(5%CO/95%air)で維持・培養した。細胞が培養皿の80%程度満たされると、phosphate-buffered saline(PBS,Hyclone)で細胞の単層を洗い、0.25%trypsin-2.65 mM EDTA(Hyclone)を処理して継代培養し、培地は2日毎に取り替えた。
【0083】
使用した薬物
塩酸メトホルミン(Metformin HCl、以下、MET)、塩酸フェンホルミン(Phenformin HCl、以下、PHE)、2-デオキシ-D-グルコース(2-deoxy-D-glucose、以下、2DG)、イノシトールヘキサホスフェート(Phytic acid、以下、IP6)、ミオイノシトール(myo-inositol、以下、Ins)は、シグマ社(St.Louis,USA)で購入した。本発明において実験を通して得られた結果をまとめた表と図面で使用した全ての薬物は、略語として表記した。
【0084】
参照例1:試験管内細胞成長抑制分析
METまたはPHE、2DG及びIP6の細胞毒性は、MTT assay[3-(4,5-dimethyl thiazolyl-2)-2,5-diphenyltetrazolium bromide assay]を通して確認した。前記細胞(3~4×10細胞/ウェル)を96ウェル培養プレート内に分注して12時間以上安定化させた後、各ウェルの培地を除去し、それぞれの細胞に対するMETまたはPHE、2DGそしてIP6を濃度別にまたは混合して血清が含まれていない培地と共に処理した。対照群細胞に対しては、PBSを培地内に添加した。48時間の間、COが含まれた37℃で培養後、対照群及び混合物を含む培地をきれいに除去し、MTT(Sigma Aldrich,St.Louis,MO,USA)試薬(0.5mg/ml)と共に37℃で4時間の間培養した。以後にはMTT試薬を含む培地をきれいに除去し、生きている細胞により形成されたMTT formazan結晶は、DMSO(Sigma)を入れて室温で15min以上放置して溶解させた。マイクロプレートリーダー(BioTek(登録商標) Instruments,Inc.,Winooski,VT,USA)を使用して560nmの波長で吸光度を測定した。
【0085】
参照例2:単一製剤及び複合製剤の実験方法
前記細胞(3~4×10細胞/ウェル)を96ウェルプレートに播種し、単一製剤薬物としてMETまたはPHE、2DG及びIP6それぞれを濃度別に処理して細胞増殖抑制率を確認した。
複合製剤薬物としては、METまたはPHE、2DG及びIP6で構成された群から選択された2種以上の化合物で構成された複合製剤のIC50に該当する薬物の濃度で処理した。全ての細胞株は、単一または複合製剤の濃度で48時間培養後、成長抑制効果をMTT分析法で測定した。
【0086】
参照例3:ウェスタンブロット分析(Western blot analysis)
細胞内に存在するタンパク質を分離するために、total lysis buffer(50mM Tris、150mM NaCl、5mM ethylenediaminetetraacetic acid(EDTA)、1mM dithiothreitol(DTT)、0.5%nonidet P-40、100mM phenylmethylsulfonyl fluoride(PMSF)、20mM aprotinin、20mM leupeptin、pH8.0)を入れて4℃で30分間溶解した後、遠心分離(12,000rpm、10分)して上澄みを取った。
また、細胞質/核内タンパク質を分離するために、細胞に緩衝溶液A(10mM Hepes(pH7.9)、1.5mM MgCl、10mM KCl、0.5mM DTT、300mM Saccharose、0.1%NP-10、0.5mM PMSF)を加えて4℃で5分溶解させた後、遠心分離(1,000rpm、1分)でpellet(核タンパク質)を分離した。分離されたpelletを緩衝溶液B(20mM Hepes(pH7.9)、20%glycerol、100mM KCl、100mM NaCl、0.2mM EDTA、0.5mM DTT、0.5mM PMSF)で4℃15分溶解して遠心分離(10,000rpm、5min)で核内タンパク質を分離した。
前記のような方法で抽出したタンパク質をsodium dodecyl sulfate(SDS)-ポリアクリルアミドゲル(polyacrylamide gel)電気泳動後、タンパク質をニトロセルロース膜(nitrocellulose membrane,Whatman,GE Health Care Corp.,Fairfield,CT,USA)に電気泳動させた。特異タンパク質を探索するために、5%脱脂乳(skim milk,GIBCO-BRL,Invitrogen Co.,Grand Island,NY,USA)が含有されたTBS-Tで1時間反応させて非特異的なタンパク質をblocking後、特定タンパク質に対する抗体pAMPKα、ACCpS79、β-actin(Santa Cruz Biotechnology Inc.,Dallas,TX,USA)を2.5%脱脂乳が含有されたTBS-Tに1:1000で希釈して反応させた。
反応したmembraneに特定抗体に対する二次抗体を処理した後、enhanced chemilluminoesence(ECL,Amersham Life Science Corp.Arlington Heights,IL,USA)を使用してX-ray filmに感光させて特定タンパク質の発現を分析した。
【0087】
参照例4:実験動物
特定病原体のない(specific pathogen free)5週齢、雌BALB/c nudeマウスは、(株)オリエントバイオで購入して使用した。1週間の検疫及び適応過程を経た後、体重減少のない健常な動物を選別して実験に使用した。実験動物は、温度23±3℃、相対湿度50±10%、換気回数10-15回/時間、照明時間12時間(08:00-20:00)、照度150-300Luxに設定された飼育環境で飼育した。試験前の期間の間、実験動物は、実験動物用固形飼料((株)カーギルアグリピュリナ)と飲水を自由摂取するようにした。
【0088】
参照例5:腫瘍細胞移植及び試験物質投与
BALB/c nudeマウスは、1週間の適応期間を経た後、実験動物の左側乳房脂肪組織に乳癌細胞である4T1細胞(1×10cells/mouse)を注入した後、目視で腫瘍組織が発生することを観察した。実験動物の腫瘍組織の大きさが約100mmとなったとき、乱塊法に基づいて9個の試験群に分類した。即ち、対照群、MET群(MET 250mg/kg)、2DG群(2DG 500mg/kg)、Ins群(Ins 500mg/kg)、IP6群(IP6 500mg/kg)、MET+2DG群(MET 250mg/kg+2DG 500mg/kg)、MET+2DG+Ins群(MET 250mg/kg+2DG 500mg/kg+Ins 500mg/kg)、MET+2DG+IP6群(MET 250mg/kg+2DG 500mg/kg+IP6 500mg/kg)、MET+2DG+IP6+Ins群(MET 250mg/kg+2DG 500mg/kg+IP6 250mg/kg+Ins 250mg/kg)に分類し、各試験群は、各10匹の実験動物を使用した。試験物質は、蒸留水に溶かして18日間一定時間に腹腔投与した。
【0089】
参照例6:実験動物の体重及び腫瘍の体積の測定
試験期間の間、実験動物の体重は、試験物質投与日から1週間に1回一定の時間に体重を測定した。腫瘍の体積は、3日間隔でデジタルカリパス(caliper)を使用して腫瘍の長さと幅を測定し、次の計算式に代入して腫瘍の体積を計算した。
腫瘍の体積(mm)=(幅×長さ)/2
【0090】
参照例7:腫瘍の重さの測定
試験物質投与14日後に、実験動物をトリブロモエタノール(tribromoethanol)をt-アミルアルコール(tert-amyl alcohol)で希釈して作った麻酔剤を使用して麻酔し、眼窩から採血した。血液は、serum separate tube(Becton Dickinson)に入れて30分間室温で放置し、3,000rpmで20分間遠心分離して血清を分離し、分析前まで-70℃に保管した。実験動物から血液を取った後、腫瘍を摘出して重さを測定した。腫瘍は、重さを測定し、一部は10%neutral buffered formalin(NBF,Sigma-Aldrich Co.)に固定した後、パラフィンに包埋をして組織免疫染色を遂行した。肺は、Bouin’s solution(Sigma-Aldrich Co.)で固定した後、肺に転移された腫瘍結節(tumor nodule)を観察して肺転移率を調査した。
【0091】
参照例8:腫瘍組織のヘマトキシリン-エオシン(hematocylin & eosin)染色
10%neutral buffered formalinで固定された腫瘍組織をパラフィンに包埋し、包埋された組織から5μmの組織切片を作製した。パラフィン除去後、100%アルコールから0%エタノール(HO)まで順次にアルコールの%を下げることで組織を水和した。腫瘍組織の組織形態学的観察のために一般的な方法によってH&E染色を実施し、光学顕微鏡(Carl Zeiss)で腫瘍組織の組織形態学的変化を観察した。
【0092】
参照例9:統計処理
全ての分析数値は、平均±SDで示した。対照群と試験物質投与群の差を比較するためにGraphPad Prism 6.0ソフトウェアを使用してTukeyの多重比較事後分析を利用した一元分散分析(one-way ANOVA)または二元分散分析(two-way ANOVA)テストにより有意性を検証した。p<0.05以上である時のみ統計的に有意性があるものと判断した。
【0093】
実施例1.MET(またはPHE)、2DG及びIP6の単一製剤及び複合製剤の細胞増殖抑制実験
12種のがん細胞を使用してMET(またはPHE)、2DG及びIP6の単一製剤及び複合製剤の細胞増殖抑制効果を比較した。
【0094】
実施例1-1:MET、2DG及びIP6の単独及び併用投与後の細胞生存率
図1及び図2は、ヒトがん細胞株である肝癌(HepG2)、肺癌(A549)、胃癌(AGS)、膵癌(PANC-1)、大腸癌(DLD-1)、子宮頸癌(HeLa)、乳癌(MDA-MB-231)、前立腺癌(PC-3)、卵巣癌(SK-OV-3)、膀胱癌(T24)、膠芽腫(U-87 MG)、骨肉腫(Saos-2)を中心にMET、2DG及びIP6の単独及び併用投与後の細胞生存率を調査した図である。
【0095】
図1Aは、4mM濃度のMET、1mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した肝癌(HepG2)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、MET+2DG+IP6組み合わせたものの生存率は17.44±4.8であって、MET+2DG組み合わせたものの生存率である45.40±4.2より2.6倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0096】
図1Bは、4mM濃度のMET、1mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した肺癌(A549)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、MET+2DG+IP6組み合わせたものの生存率は19.43±5.2であって、MET+2DG組み合わせたものの生存率である48.84±5.3より2.5倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0097】
図1Cは、2mM濃度のMET、0.7mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した胃癌(AGS)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、MET+2DG+IP6組み合わせたものの生存率は15.20±4.2であって、MET+2DG組み合わせたものの生存率である53.00±3.8より3.5倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0098】
図1Dは、5mM濃度のMET、0.7mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した膵癌(PANC-1)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、MET+2DG+IP6組み合わせたものの生存率は25.27±5.2であって、MET+2DG組み合わせたものの生存率である65.40±4.3より2.6倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0099】
図1Eは、5mM濃度のMET、0.4mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した大腸癌(DLD-1)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、MET+2DG+IP6組み合わせたものの生存率は26.70±4.7であって、MET+2DG組み合わせたものの生存率である65.40±4.6より2.4倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0100】
図1Fは、6mM濃度のMET、0.5mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した子宮頸癌(HeLa)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、MET+2DG+IP6組み合わせたものの生存率は24.67±3.6であって、MET+2DG組み合わせたものの生存率である52.89±4.6より2.1倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0101】
図2Aは、6mM濃度のMET、1mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した乳癌(MDA-MB-231)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、MET+2DG+IP6組み合わせたものの生存率は26.37±5.3であって、MET+2DG組み合わせたものの生存率である55.15±4.5より2.1倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0102】
図2Bは、5mM濃度のMET、1mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した前立腺癌(PC-3)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、MET+2DG+IP6組み合わせたものの生存率は19.51±5.6であって、MET+2DG組み合わせたものの生存率である66.70±4.6より3.4倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0103】
図2Cは、5mM濃度のMET、0.5mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した卵巣癌(SK-OV-3)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、MET+2DG+IP6組み合わせたものの生存率は22.80±5.2であって、MET+2DG組み合わせたものの生存率である66.80±3.6より2.9倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0104】
図2Dは、4mM濃度のMET、1mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した膀胱癌(T24)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、MET+2DG+IP6組み合わせたものの生存率は26.42±4.8であって、MET+2DG組み合わせたものの生存率である63.30±4.2より2.4倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0105】
図2Eは、5mM濃度のMET、0.4mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した膠芽腫(U-87 MG)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、MET+2DG+IP6組み合わせたものの生存率は20.80±5.7であって、MET+2DG組み合わせたものの生存率である61.32±4.8より2.9倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0106】
図2Fは、5mM濃度のMET、0.7mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した骨肉腫(Saos-2)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、MET+2DG+IP6組み合わせたものの生存率は24.52±5.7であって、MET+2DG組み合わせたものの生存率である64.33±4.9より2.6倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0107】
前記結果より、MET、2DG及びIP6の3重複合製剤は、単独または2重複合製剤より優れたがん細胞増殖抑制効果を確認した。
【0108】
実施例1-2:PHE、2DG及びIP6の単独及び併用投与後の細胞生存率
図3及び図4は、ヒトがん細胞株である肝癌(HepG2)、肺癌(A549)、胃癌(AGS)、膵癌(PANC-1)、大腸癌(DLD-1)、子宮頸癌(HeLa)、乳癌(MDA-MB-231)、前立腺癌(PC-3)、卵巣癌(SK-OV-3)、膀胱癌(T24)、膠芽腫(U-87 MG)、骨肉腫(Saos-2)を中心にMET、2DG及びIP6の単独及び併用投与後の細胞生存率を調査した図である。
【0109】
図3Aは、0.3mM濃度のPHE、1mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した肝癌(HepG2)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、MET+2DG+IP6組み合わせたものの生存率は20.21±4.1であって、MET+2DG組み合わせたものの生存率である49.55±4.8より2.5倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0110】
図3Bは、0.3mM濃度のPHE、1mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した肺癌(A549)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、MET+2DG+IP6組み合わせたものの生存率は22.41±5.2であって、MET+2DG組み合わせたものの生存率である54.77±5.8より2.4倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0111】
図3Cは、0.3mM濃度のPHE、0.7mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した胃癌(AGS)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、MET+2DG+IP6組み合わせたものの生存率は17.38±3.8であって、MET+2DG組み合わせたものの生存率である50.45±3.9より2.9倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0112】
図3Dは、0.2mM濃度のPHE、0.7mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した膵癌(PANC-1)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、MET+2DG+IP6組み合わせたものの生存率は25.27±5.2であって、MET+2DG組み合わせたものの生存率である65.40±4.3より2.6倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0113】
図3Eは、0.3mM濃度のPHE、0.4mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した大腸癌(DLD-1)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、MET+2DG+IP6組み合わせたものの生存率は22.21±4.8であって、MET+2DG組み合わせたものの生存率である60.98±4.7より2.7倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0114】
図3Fは、0.2mM濃度のPHE、0.5mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した子宮頸癌(HeLa)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、MET+2DG+IP6組み合わせたものの生存率は25.65±3.9であって、MET+2DG組み合わせたものの生存率である54.67±4.6より2.1倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0115】
図4Aは、0.2mM濃度のPHE、1mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した乳癌(MDA-MB-231)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、MET+2DG+IP6組み合わせたものの生存率は20.76±4.2であって、MET+2DG組み合わせたものの生存率である48.54±4.5より2.3倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0116】
図4Bは、0.3mM濃度のPHE、1mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した前立腺癌(PC-3)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、MET+2DG+IP6組み合わせたものの生存率は20.77±4.3であって、MET+2DG組み合わせたものの生存率である59.66±4.6より2.9倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0117】
図4Cは、0.4mM濃度のPHE、0.5mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した卵巣癌(SK-OV-3)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、MET+2DG+IP6組み合わせたものの生存率は20.44±4.2であって、MET+2DG組み合わせたものの生存率である60.54±5.1より3.0倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0118】
図4Dは、0.4mM濃度のPHE、1mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した膀胱癌(T24)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、MET+2DG+IP6組み合わせたものの生存率は21.45±4.2であって、MET+2DG組み合わせたものの生存率である58.70±4.5より2.7倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0119】
図4Eは、0.2mM濃度のPHE、0.4mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した膠芽腫(U-87 MG)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、MET+2DG+IP6組み合わせたものの生存率は15.76±4.2であって、MET+2DG組み合わせたものの生存率である54.32±4.8より3.4倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0120】
図4Fは、0.2mM濃度のPHE、0.7mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した骨肉腫(Saos-2)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、MET+2DG+IP6組み合わせたものの生存率は22.76±4.2であって、MET+2DG組み合わせたものの生存率である61.93±4.7より2.7倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0121】
前記結果より、PHE、2DG及びIP6の3重複合製剤は、単独または2重複合製剤より優れたがん細胞増殖抑制効果を確認した。
【0122】
実施例2:MET、2DG及びIP6の複合製剤が正常細胞に及ぼす影響
図5は、MET、2DG及びIP6の複合製剤が正常細胞に及ぼす影響を調べるために、腫瘍細胞として、前立腺癌(PC-3)、大腸癌(DLD-1)、肺癌(A549)細胞株を、非腫瘍細胞としては、前立腺(PZ-HPV-7)、大腸(CCD-18Co)、肺(MRC5)細胞株に前記3種の組み合わせ製剤を処理し、48時間後にMTT分析法で細胞毒性を調査した図である。
【0123】
5mM濃度のMET、1mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6の複合製剤で処理したPC-3、PZ-HPV-7細胞株での結果を見ると、腫瘍細胞であるPC-3細胞株では生存力が大きく減少したのに対し、非腫瘍細胞PZ-HPV-7細胞株では生存力に影響を及ぼさなかった(P<0.0001)。
【0124】
5mM濃度のMET、0.4mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6の複合製剤で処理したDLD-1、CCD-18Co細胞株での結果を見ると、腫瘍細胞であるDLD-1細胞株では生存力が大きく減少したのに対し、非腫瘍細胞CCD-18Co細胞株では生存力に影響を及ぼさなかった(P<0.0001)。
【0125】
4mM濃度のMET、1mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6の複合製剤で処理したA549、MRC5細胞株での結果を見ると、腫瘍細胞であるA549細胞株では生存力が大きく減少したのに対し、非腫瘍細胞MRC5細胞株では生存力に影響を及ぼさなかった(P<0.0001)。
【0126】
前記3種の組み合わせ製剤の各非腫瘍細胞に対する細胞死は、腫瘍細胞とは異なる様相を示し、生体内で安全な薬物であることが確認された。
【0127】
実施例3:MET、2DG及びIP6の単独及び複合製剤による4T1細胞の生存率とタンパク質発現
生きている細胞の代謝過程は、ATPとADPをエネルギー源として使用し、AMPを生成するようになる。AMPK(AMP-activated protein kinase)は、serine/threonine kinaseであって脂質とブドウ糖代謝の調節因子として知られており、眼の糖尿に重要な調節作用をする。AMPKは、細胞内エネルギー消耗時に増加するAMPにより活性化されてATP使用を抑制させ、異化作用(catabolism)を誘導してエネルギー恒常性(homeostasis)を維持するのに核心的な役割を果たす。AMPK活性化は、がん細胞の増殖を抑制する作用をし、脂肪代謝の側面では、脂肪酸合成を誘導する酵素であるACC(acetyl CoA carboxylase)を抑制する。
【0128】
図6Aは、5mM濃度のMET、2mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理したマウス由来乳癌(4T1)細胞株での生存率を示している。併用処理した製剤は、対照群を含む単独処理したものより生存力が大きく減少した(P<0.0001)。併用処理したグループとの比較では、(MET+2DG+IP6)群の生存率は23.04±4.0であって、(MET+2DG)群の生存率である50.03±4.0より2.2倍の高い減少を示した(P<0.0001)。
【0129】
図6B図6Cにおいて、(MET+2DG)群より(MET+2DG+IP6)群でAMPKを顕著に活性化させ(P<0.0001)、ACCのリン酸化を減少させた(P<0.05)。
【0130】
実施例4.4T1細胞に対するMET、2DG及びIP6の単独及び複合製剤のATP合成抑制
ATP(アデノシン三リン酸、adenosine triphosphate)は、生物のエネルギー源であり、細胞内ATP合成が抑制されるとエネルギー代謝活性度が減少する。実施例3のマウス由来乳癌細胞株4T1に対してMET、2DG及びIP6のATP合成抑制効果を確認した。
4T1の各細胞(10-10cells)を60mm培養皿で24時間の間培養し、4mM濃度のMET、1mM濃度の2DG、1mM濃度のIP6で単独及び併用処理した後、さらに48時間の間培養した。以後、細胞を回収し、計数して100μlの10体積%FBSが含まれたRPMI培養液に希釈し、これを96-ウェルプレートの各ウェルに移した。前記細胞が入っているウェルにプロメガATP分析キット(G7572,Promega,Durham,NC,USA)の分析バッファ(rL/L reagent+reconstitution buffer)100μlを添加し、蛍光の発光程度を560nmで吸光度測定した。その結果を図7に示した。
【0131】
実験の結果、図7のように、実験に使用された4T1細胞株で単独及び併用処理において単独よりは併用処理でATP合成が阻害されるものと示された(P<0.0001)。そして、MET+2DG+IP6群は、MET+2DG群よりATP合成が顕著に阻害されるものと示された(P<0.05)。その結果、MET+2DG+IP6群の複合製剤ががん細胞で最も効果的にエネルギー準位を減少させるということが分かった。
【0132】
実施例5.MET、2DG及びIP6の単独及び複合製剤が腫瘍の体積変化に及ぼす影響
腫瘍組織の大きさが約100mmであるとき、試験群を分類して試験物質投与を開始し、試験物質投与の開始日から3日間隔で腫瘍の体積を測定した。実験の結果、図8のように、試験物質投与の3日目から対照群と比較して単独及び併用処理群の腫瘍の体積が減少する傾向を示した。試験物質投与の18日目、腫瘍の体積が1486.8±67.0mmである対照群と比較して単独投与群でMET群1400.5±58.6mm、2DG群1350.3±55.2mm、IP6群1108.5±66.3mm、Ins群1190.1±67.3mmと若干の腫瘍の体積が減少したが、有意差はなかった。しかし、MET+2DG群820.1±67.0mmは、対照群及び単独投与群と比較して高い有意差を示した(P<0.0001)。複合製剤のうち腫瘍の体積がMET+2DG+IP6群515.02±54.9mmとMET+2DG+IP6+Ins群350.03±33.0mmでMET+2DG群と比較して高い有意差を示した(P<0.0001)。MET+2DG+IP6群とMET+2DG+Ins群は、MET+2DG+IP6+Ins群との比較で有意差を示し(P<0.05)、MET+2DG+IP6+Ins群が最も高い減少を示して、高い腫瘍成長抑制効果を示した(図8)。
【0133】
実施例6.MET、2DG及びIP6の単独及び複合製剤が腫瘍の重さに及ぼす影響
試験物質投与の19日目、実験動物を犠牲にして腫瘍を摘出し、腫瘍の重さを測定して図9に示した。対照群の腫瘍の重さは1.244±0.22gであり、MET群1.134±0.15g、2DG群1.092±0.18g、IP6群0.874±0.18g、Ins群0.904±0.20gで、複合製剤であるMET+2DG群0.621±0.14g、IP6+Ins群0.599±0.12gとは有意的に減少することを示した(P<0.0001)。そして、MET+2DG+IP6群0.342±0.11gとMET+2DG+IP6+Ins群0.203±0.06gは、対照群及び単独投与と対比して高い有意差を示し(P<0.0001)、2重複合製剤であるMET+2DG群と有意差を示した(P<0.01)。また、MET+2DG+IP6群とMET+2DG+IP6+Ins群の比較でも有意差を示し(P<0.05)、全体的にはMET+2DG+IP6+Ins群が腫瘍の大きさにおいて最も大きな減少を示した(図9)。
【0134】
実施例7.実験動物の体重に及ぼす影響
試験期間の間、6日毎に1回、実験動物の体重を測定した。試験物質投与の6日目、対照群と比較して単独及び併用処理群が体重減少において有意差はなかった。試験終了時点である試験物質投与の18日目、対照群の23.34±0.52gと比較してMET+2DG群22.90±0.41g、MET+2DG+IP6群22.90±0.47g、MET+2DG+IP6+Ins群22.90±0.50gであり、体重減少では有意差は示されなかった(図10)。
【0135】
実施例8.MET、2DG及びIP6の単独及び複合製剤が肺転移発生率に及ぼす影響
本腫瘍動物モデルでがん細胞が肺に転移されることを観察した。試験物質が転移に及ぼす影響を調査するために、肺転移率を調査して図11に示した。対照群、MET群、2DG群では100%(10匹のうち10匹)であった肺転移率がIP6群90%(10匹のうち9匹)、Ins群90%(10匹のうち9匹)、MET+2DG群80%(10匹のうち8匹)、IP6+Ins群80%(10匹のうち8匹)、MET+2DG+IP6群30%(10匹のうち3匹)、MET+2DG+Ins群30%(10匹のうち3匹)、MET+2DG+IP6+Ins群20%(10匹のうち2匹)と肺転移率が減少した。各試験群のうちMET+2DG+IP6+Ins群の肺転移率が最も高い抑制を示した(図11)。
【0136】
実施例9.腫瘍組織の組織形態学的変化に及ぼす影響
試験物質による腫瘍組織の組織形態学的変化を調査するために、H&E染色後、顕微鏡で観察した結果を図12に示した。対照群の腫瘍組織の外側周辺は4T1細胞で緻密に構成されており、中心部で凝固性壊死(coagulative necrosis)が観察された。MET+2DG群とIP6+Ins群の腫瘍組織は、対照群と比較して中心部の凝固性壊死部位が増加し、MET+2DG+IP6群、MET+2DG+Ins群及びMET+2DG+IP6+Ins群の場合、正常な4T1細胞が占める比率が顕著に減少した(図12)。
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