(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】作業環境測定支援システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20220929BHJP
G06Q 10/06 20120101ALI20220929BHJP
G06Q 10/10 20120101ALI20220929BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q10/06 326
G06Q10/10 320
(21)【出願番号】P 2019043590
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】511113785
【氏名又は名称】株式会社ミライト・ワン
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】岩井 喜照
(72)【発明者】
【氏名】吹田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】落合 秀行
(72)【発明者】
【氏名】中田 正一
【審査官】毛利 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-170865(JP,A)
【文献】特開2002-366616(JP,A)
【文献】特開2005-250557(JP,A)
【文献】特表2009-503919(JP,A)
【文献】特開2017-59240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業現場に設置され、当該作業現場の作業環境を測定する測定装置(1)と、
測定装置(1)で測定された測定値および測定値の測定日時を含む測定データを記憶する外部記憶部(2)と、
作業者とともに作業現場に同行する作業主任者が携帯する第1の端末(3)と、
作業現場から離れた場所に設置され、前記作業主任者以外のオペレーターが操作する第2の端末(4)と、
を備え、
外部記憶部(2)および第2の端末(4)は、それぞれインターネット(5)に接続され、第1の端末(3)は、該第1の端末(3)が備える携帯電話通信手段(20)を介してインターネット(5)に接続されており、
測定装置(1)および第1の端末(3)は、それぞれ互いに無線通信可能な近距離無線通信手段(13・19)を備え、測定装置(1)で測定された測定値は、近距離無線通信手段(13・19)を介して第1の端末(3)で取得できるように構成されており、
第1の端末(3)は、取得した測定値のうち第1の端末(3)が備える承認手段(30)で承認された測定値をもとに測定データを生成し、当該第1の端末(3)で生成された測定データは外部記憶部(2)に記憶されるようになっており、
前記外部記憶部(2)に記憶されている承認された測定値および測定値の測定日時を含む測定データが第2の端末(4)で取得可能に構成されていることを特徴とする作業環境測定支援システム。
【請求項2】
作業現場に設置され、当該作業現場の作業環境を測定する測定装置(1)と、
測定装置(1)で測定された測定値および測定値の測定日時を含む測定データを記憶する外部記憶部(2)と、
作業者とともに作業現場に同行する作業主任者が携帯する第1の端末(3)と、
作業現場から離れた場所に設置され、前記作業主任者以外のオペレーターが操作する第2の端末(4)と、
を備え、
外部記憶部(2)および第2の端末(4)は、それぞれインターネット(5)に接続されており、
測定装置(1)および第1の端末(3)は、それぞれインターネット(5)に接続可能な携帯電話通信手段(40・20)を備え、測定装置(1)で測定された測定値は、インターネット(5)を介して第1の端末(3)で取得できるように構成されており、
第1の端末(3)は、取得した測定値のうち第1の端末(3)が備える承認手段(30)で承認された測定値をもとに測定データを生成し、当該第1の端末(3)で生成された測定データは外部記憶部(2)に記憶されるようになっており、
前記外部記憶部(2)に記憶されている承認された測定値および測定値の測定日時を含む測定データが第2の端末(4)で取得可能に構成されていることを特徴とする作業環境測定支援システム。
【請求項3】
第2の端末(4)で取得した測定データに含まれる測定値に、第2の端末(4)に記憶されている測定値の適正範囲から外れる異常値が含まれている場合に、作業環境が危険であることを報知する異常報知手段(28)が第2の端末(4)に設けられている請求項1または2に記載の作業環境測定支援システム。
【請求項4】
測定データは入孔対象を特定する固有の識別コードを含み、識別コードを含む測定データが外部記憶部(2)に記憶されるように構成されている請求項1から3のいずれかひとつに記載の作業環境測定支援システム。
【請求項5】
第2の端末(4)は、一定時間毎に外部記憶部(2)にアクセスして記憶されている測定データに含まれる測定日時を抽出し、抽出した測定日時のうち最新の測定日時から現在時刻までの経過時間を算出するように構成されており、
前記経過時間が所定時間を超えたとき、所定時間が経過したことを報知する注意喚起報知手段(27)が第2の端末(4)に設けられている請求項1から4のいずれかひとつに記載の作業環境測定支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールやピット内で作業する際に義務付けられている酸素濃度等の作業環境測定の実施を支援する作業環境測定支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば通信用のマンホール内においてケーブルの引き込み作業を行うときには、作業者の入孔前にマンホール内の換気を実施し、さらに作業環境の酸素、硫化水素、一酸化炭素、可燃性ガスの濃度等が測定される。労働安全衛生法の規則では、測定装置による作業環境測定は、選任された作業主任者(酸素欠乏危険作業主任者等の有資格者)が行うことと規定されており、測定装置で測定された各気体濃度の測定値が適正範囲内であることを作業主任者が確認したのちに、初めて作業者の入孔が可能となる。また、作業者の入孔中は常時換気を実施し、さらに所定時間毎に作業環境測定を行う必要がある。これら入孔時および入孔中に測定された測定値および測定日時を含む測定データは、マンホール毎に測定結果記録表に記録される。この測定結果記録票は、3年間保存することが労働安全衛生法で義務付けられている。
【0003】
現状、測定結果記録票への記録は作業主任者が筆記することで行われている。そのため、マンホールに作業者が入孔する場合には、作業主任者が各マンホールの作業環境測定を行い、測定データを測定結果記録票に筆記する必要があり、その他の業務の多忙さから、当該記録票への筆記が失念されて、測定データが欠測するおそれがある。また雨天時には測定結果記録票への水濡れや破損等により、測定データが消失するおそれもある。
【0004】
一方、マンホール情報を管理するシステムは公知であり、例えば特許文献1には、各マンホールに配置される記憶手段と、非接触の読取り、書込み手段と通信手段が接続されるモバイルコンピュータと、マンホール情報が登録されるデータベースサーバとで構成される管理システムが開示されている。読取り、書込み手段は、記憶手段とモバイルコンピュータとの間の通信を担い、通信手段は、データベースサーバとモバイルコンピュータとの間の通信を担う。作業者がマンホールに配置された記憶手段に対して読取り、書込み手段を使ってアクセスすると、記憶手段に記憶されているマンホール情報がモバイルコンピュータの表示手段に表示される。モバイルコンピュータは、点検作業実施等のマンホール情報を更新したのち、アクセスしている記憶手段のマンホール情報を更新後のマンホール情報に書き換える。更新後のマンホール情報は、通信手段を介して本社等のデータベースサーバに送信され、当該データベースサーバに登録される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のマンホール情報の管理システムにおける記憶手段を、作業環境を測定する測定装置に置き換えることができれば、すなわち特許文献1の管理システムをマンホール等の作業環境測定に適用できれば、測定結果記録票への測定データの筆記を廃することができるので、作業主任者の負担を大幅に軽減できる。また、雨天時における測定データの消失も確実に回避できる。しかし特許文献1の管理システムでは、作業環境測定のように、随時変化する測定データを管理対象とすることは全く予定されておらず、しかも測定データの欠測対策も全く採られていない。このため、従来のシステムでは、依然として作業マンホールの作業環境測定を失念して、測定データの欠測が生じるおそれがあり、その点に改良の余地があった。
【0007】
本発明は、マンホール等への入孔時における所定時間毎の測定データの欠測を防ぐことができるとともに、適正な測定結果記録票を確実に得ることができる作業環境測定支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の作業環境測定支援システムは、作業現場に設置され、当該作業現場の作業環境を測定する測定装置1と、測定装置1で測定された測定値および測定値の測定日時を含む測定データを記憶する外部記憶部2と、作業者とともに作業現場に同行する作業主任者が携帯する第1の端末3と、作業現場から離れた場所に設置され、前記作業主任者以外のオペレーターが操作する第2の端末4とを備える。外部記憶部2および第2の端末4は、それぞれインターネット5に接続され、第1の端末3は、当該第1の端末3が備える携帯電話通信手段20を介してインターネット5に接続されている。測定装置1および第1の端末3は、それぞれ互いに無線通信可能な近距離無線通信手段13・19を備え、測定装置1で測定された測定値は、近距離無線通信手段13・19を介して第1の端末3で取得できるように構成されている。第1の端末3は、取得した測定値のうち第1の端末3が備える承認手段30で承認された測定値をもとに測定データを生成し、当該第1の端末3で生成された測定データは外部記憶部2に記憶されるようになっている。そして、当該外部記憶部2に記憶されている承認された測定値および測定値の測定日時を含む測定データが第2の端末4で取得可能に構成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の他の作業環境測定支援システムは、作業現場に設置され、当該作業現場の作業環境を測定する測定装置1と、測定装置1で測定された測定値および測定値の測定日時を含む測定データを記憶する外部記憶部2と、作業者とともに作業現場に同行する作業主任者が携帯する第1の端末3と、作業現場から離れた場所に設置され、前記作業主任者以外のオペレーターが操作する第2の端末4とを備える。外部記憶部2および第2の端末4は、それぞれインターネット5に接続されている。測定装置1および第1の端末3は、それぞれインターネット5に接続可能な携帯電話通信手段40・20を備え、測定装置1で測定された測定値は、インターネット5を介して第1の端末3で取得できるように構成されている。第1の端末3は、取得した測定値のうち第1の端末3が備える承認手段30で承認された測定値をもとに測定データを生成し、当該第1の端末3で生成された測定データは外部記憶部2に記憶されるようになっている。そして、当該外部記憶部2に記憶されている承認された測定値および測定値の測定日時を含む測定データが第2の端末4で取得可能に構成されていることを特徴とする。
【0010】
第2の端末4で取得した測定データに含まれる測定値に、第2の端末4に記憶されている測定値の適正範囲から外れる異常値が含まれている場合に、作業環境が危険であることを報知する異常報知手段28が第2の端末4に設けられている。
【0011】
測定データは入孔対象を特定する固有の識別コードを含み、識別コードを含む測定データが外部記憶部2に記憶されるように構成されている。
【0012】
第2の端末4は、一定時間毎に外部記憶部2にアクセスして記憶されている測定データに含まれる測定日時を抽出し、抽出した測定日時のうち最新の測定日時から現在時刻までの経過時間を算出するように構成されており、前記経過時間が所定時間を超えたとき、所定時間が経過したことを報知する注意喚起報知手段27が第2の端末4に設けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、外部記憶部2、作業主任者が携帯する第1の端末3、および第2の端末4をそれぞれインターネット5に接続し、測定装置1と第1の端末3とを互いに無線通信で接続した。また本発明においては、第1の端末3が、測定装置1から取得した測定値のうち第1の端末3が備える承認手段30で承認された測定値をもとに測定データを生成し、当該第1の端末3で生成された測定データはインターネット5を介して外部記憶部2に記憶されるようにした。このように作業主任者が携帯する第1の端末3が備える承認手段30で承認された測定値から測定データが生成されるように構成されていると、作業主任者は測定を行う毎に測定データを筆記で記録する必要がなくなるため、当該作業主任者の作業負担を大幅に軽減することができる。なお、外部記憶部2に記憶される測定データは、作業主任者が承認した測定値、つまり有資格者である作業主任者が数値を確認した測定値を含むものであるため、当該測定データを外部記憶部2から読み出して、これを測定結果記録票に転記した場合でも規則上何ら問題は生じない。
【0014】
加えて、本発明においては、外部記憶部2に記憶された承認された測定値および測定値の測定日時を含む測定データを第2の端末4で取得できるようにしたので、第2の端末4を操作するオペレーターは、測定データを第2の端末4で取得しその測定日時を確認することで作業主任者が所定時刻毎の作業環境測定を実施しているか否かを確認することができる。これにより、作業主任者が作業環境測定を失念しているとオペレーターが判断した場合には、電話連絡等により作業環境測定の実施を作業主任者に促すことができる。つまり、オペレーターは作業環境測定の実施にあたり作業主任者をサポートすることができる。以上により、本発明によれば、マンホール等への入孔時における所定時間毎の測定データの欠測を防いで、適正な測定結果記録票を確実に得ることができる。また、オペレーターが測定値を確認することで、作業主任者およびオペレーターの2名で、気体濃度が適正範囲内であるかを確認することができるので(2重にチェックすることができるので)、異常値見落としのリスクを大幅に削減することができる。
【0015】
本発明の他の作業環境測定支援システムにおいては、測定装置1、外部記憶部2、第1の端末3、および第2の端末4をそれぞれインターネット5に接続したうえで、第1の端末3は、測定装置1から取得した測定値のうち第1の端末3が備える承認手段30で承認された測定値をもとに測定データを生成するものとし、当該第1の端末3で生成された測定データが外部記憶部2に記憶されるようにした。加えて、外部記憶部2に記憶された承認された測定値および測定値の測定日時を含む測定データを第2の端末4で取得できるようにした。これにより、作業主任者は測定毎に測定データを筆記で記録する必要がなくなるため、作業主任者の負担を大幅に軽減することができる。また、オペレーターは、測定データを第2の端末4で取得しその測定日時を確認することで作業主任者が所定時刻毎の作業環境測定を実施しているか否かを確認することができる。以上より、本発明によれば、マンホール等への入孔時における所定時間毎の測定データの欠測を防いで、適正な測定結果記録票を確実に得ることができる。また、本発明によれば、オペレーターが測定値を確認することで、作業主任者およびオペレーターの2名で、気体濃度が適正範囲内であるかを確認することができるので、異常値見落としのリスクを大幅に削減することができる。
【0016】
測定データに含まれる測定値に適正範囲から外れる異常値が含まれていたときに、作業環境が危険であることを報知する異常報知手段28が第2の端末4に設けられていると、当該第2の端末4を操作するオペレーターは、当該異常報知手段28の作動により、直ちに作業環境が危険状態にあることを知ることができる。従って、オペレーターは、作業主任者からの報告を受ける前に、現場代理人(統括安全衛生責任者)等への報告など、異常値測定時の対応を速やかに取ることができる。作業主任者は、作業者に対する出孔指示など、現場対応に専念できる。
【0017】
測定データは入孔対象を特定する固有の識別コードを含み、識別コードを含む測定データが外部記憶部2に記憶されるように構成されていると、識別コード毎に測定データをひとまとめにして管理することで、ひとつのシステムで複数の入孔対象の測定データを同時に扱うことができる。従って、入孔対象の増加に伴って、測定データの管理作業が煩雑化することを防ぐことができる。
【0018】
第2の端末4は、一定時間毎に外部記憶部2にアクセスして記憶されている測定データに含まれる測定日時を抽出し、抽出した測定日時のうち最新の測定日時から現在時刻までの経過時間を算出するように構成されており、前記経過時間が所定時間を超えたとき、所定時間が経過したことを報知する注意喚起報知手段27が第2の端末4に設けられている形態を採ることができる。これによれば、注意喚起報知手段27が作動することで、オペレーターは、所定時間が経過したにも関わらず測定データが外部記憶部2に記録されていないことを確実に知ることができる。従って、オペレーターが作業主任者に対して電話連絡等により作業環境測定の実施を促すなどの対応を取ることで、所定時間毎の測定データが欠測されることを確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例1に係る作業環境測定支援システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】実施例1に係る作業環境測定支援システムの運用方法を説明するためのフローチャートである。
【
図3】ディスプレイに表示される入孔記録のテンプレートの一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施例2に係る作業環境測定支援システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図5】実施例2に係る作業環境測定支援システムの運用方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施例1)
図1から
図3に、本発明に係る作業環境測定支援システムを、マンホールへのケーブル引き込み作業における作業環境測定の実施の支援に適用した実施例1を示す。
図1において作業環境測定支援システムは、作業現場のマンホール近傍の地上部分に設置され、マンホール内の作業環境を測定する測定装置1と、測定装置1で測定された作業環境の測定値および測定値の測定日時を含む測定データを記憶する外部記憶部2と、作業者とともに作業現場に同行する選任された作業主任者(酸素欠乏危険作業主任者等の有資格者)が携帯する作業者端末(第1の端末)3と、作業現場から離れた場所に設置され、前記作業主任者以外が操作する補助端末(第2の端末)4とを備える。外部記憶部2は、インターネット5に接続されているクラウドサーバや共用サーバーからなる。
【0021】
測定装置1は、入孔対象のマンホール内における測定箇所で保持される測定プローブ8と、該測定プローブ8で採取された空気に含まれる各種気体成分の濃度を測定する測定部9と、該測定部9で測定された気体成分の濃度等の測定値を数値表示する表示パネル10と、測定の実行や表示パネル10の表示状態を切り換える操作ボタン群からなる操作部11と、測定完了等の各種通知を音と光で報知するスピーカと発光ランプからなる報知手段12とを備える。また、測定装置1は、作業者端末3との間で無線通信を行うための装置側通信モジュール(近距離無線通信手段)13を備えている。測定プローブ8は、中空ケーブルを介して測定部9に接続されている。測定部9は、測定箇所の作業環境における酸素、硫化水素、一酸化炭素、可燃性ガスの各濃度を測定する。報知手段12は、測定装置1に予め記憶された測定値の適正範囲から外れる異常値が測定された場合に駆動され、測定値に異常値が含まれていることを音と光で報知する。
【0022】
作業者端末3は携帯性に優れることが望ましく、例えばスマートフォンやタブレット端末からなり、表示部と操作部を兼ねるタッチパネル17と、各種通知を音と振動で報知するスピーカおよびバイブレータからなる報知手段18とを備える。また、作業者端末3は、測定装置1との間で無線通信を行うための端末側通信モジュール(近距離無線通信手段)19と、公衆回線通信網や携帯電話通信網を介してインターネット5に接続するための携帯電話通信モジュール(携帯電話通信手段)20とを備えており、さらに両通信モジュール19・20で送受信されるデータの一時記憶部としての内部メモリ21を備える。携帯電話通信モジュール20は、携帯無線電波の受信エリア内において作業者端末3の電源が投入されているとき、常時インターネット5との通信が確立されている。
【0023】
上記の装置側通信モジュール13および端末側通信モジュール19の通信規格は近距離無線通信規格に準拠しており、測定装置1と作業者端末3との1対1の通信の確立を容易化するため、ブルートゥース(BLUETOOTH:登録商標)規格に準拠する近距離無線通信規格を採用している。なお、両通信モジュール13・19は、WiFi(Wireless Fidelity)規格、NFC(Near Field Communication)規格などの近距離無線通信規格であってもよい。
【0024】
補助端末4は工事を請け負った会社の事務所に設置されており、事務所のオペレーターにより操作される。補助端末4はインターネット5に接続されたパーソナルコンピュータからなり、測定データ等の各種情報を表示するディスプレイ23と、キーボードおよびマウスからなる操作部24と、例えばディスプレイ23に表示された表示内容を紙媒体に出力するプリンタ25と、各種通知を音で報知するスピーカからなる報知手段26とを備える。報知手段26は、補助端末4を操作しているオペレーターに対して、注意喚起を行う注意喚起報知手段27と、異常を知らせる異常報知手段28とを兼ねている。補助端末4のオペレーションシステムや当該オペレーションシステム上で動作するソフトウェア等は、ハードディスクからなる記憶装置29に記憶されている。記憶装置29には、補助端末4がインターネット5を介して外部記憶部2にアクセスして取得した測定データも記憶される。インターネット5への接続形態は有線接続、または無線接続のいずれの形態であってもよい。
【0025】
次に本実施例の作業環境測定支援システムの運用方法を説明する。なお、作業者端末3には作業環境測定支援システム専用のアプリケーション(以下、「専用アプリ」という。)がインストールされており、補助端末4には、作業環境測定支援システム専用のソフトウェア(以下、「専用ソフト」という。)がインストールされている。まず工事当日の工事開始に先立って、事務所のオペレーターは補助端末4の専用ソフトを起動して、工事日、工事予定の工事名、工事の発注番号、現場代理人の氏名、入孔対象となるマンホールの固有の識別コード等の基礎データを関連付けて専用ソフトに登録しておく。また、作業主任者は作業開始前に作業者端末3の専用アプリを起動し、インターネット5を介して専用ソフトにアクセスして、登録されている基礎データを取得し、自身の氏名を基礎データに付加登録しておく。
【0026】
作業現場に到着した作業者は、入孔対象のマンホールの開蓋に係る安全(例えば交通整理の実施)を確保したうえで開蓋し送風機等の換気設備にてマンホール内の換気作業を行う。換気作業の開始を確認した作業主任者は作業者端末3を操作して、取得した基礎データから入孔対象となるマンホールの識別コードを選択し、当該マンホールの換気開始時刻を入力する。ある程度換気が進行した時点で、測定装置1をマンホール近傍の地上に設置する。地下のよこ坑の中途部に繋がるマンホールにおいては、マンホールの上層(測定箇所A)、中層(測定箇所B)、下層(測定箇所C)、およびよこ坑の上流側入口(測定箇所D)、下流側入口(測定箇所E)の計5か所において作業環境を測定する。なお、地下のT字坑や十字坑の分岐部に繋がるマンホールにおいては、マンホールの上層、中層、下層に加えて、それぞれのよこ坑入口が測定箇所の対象となる。
【0027】
測定装置1を設置したのちは、
図2のフローチャートに示すように、作業主任者は作業者端末3を操作して、取得した基礎データから入孔対象となるマンホールの識別コードを選択して特定する(ステップS1)。マンホールの特定後、測定装置1とのペアリングを行い(ステップS2)、ペアリングが完了して測定装置1と作業者端末3との無線通信が確立されたら(ステップS3)、測定プローブ8をマンホールの上層部分、すなわち測定箇所Aにおいてケーブルで吊持保持する。
【0028】
測定プローブ8を吊持保持した状態で、測定装置1の操作部11を操作して測定を実行し、測定箇所Aにおける作業環境の測定を開始する(ステップS4)。測定が完了したら作業主任者は作業者端末3を操作して測定装置1に測定値の送信を要求し、送信要求を受信した測定装置1は作業者端末3へと測定日時を含む測定値を送信する(ステップS5)。これにて、測定箇所Aにおける測定日時と測定値とを作業者端末3で取得できる。なお、作業者端末3による測定値の送信要求を廃して、測定完了とともに自動的に測定値を作業者端末3に送信するように測定装置1を構成してもよい。測定日時等を含む測定値を取得した作業者端末3は、マンホールの識別コード、測定日時、および測定値を、測定箇所の特定欄と承認ボタン(承認手段)30とともにタッチパネル17に表示する(ステップS6)。承認ボタン30は、作業主任者が作業環境測定を実施し、測定した測定値を確認したことを保証するためのものである。
【0029】
測定値を含む表示内容を確認した作業主任者は、測定値等が測定箇所Aのものであることを測定箇所の特定欄から選択して決定し、タッチパネル17に表示された承認ボタン30をタッチする。これにより、入孔対象のマンホールの測定箇所Aにおける測定時間および測定値を含む測定データが作業者端末3で生成される(ステップS7)。仮に測定エラーなどで一部の気体濃度が測定されなかった場合、測定エラーとなった気体濃度はタッチパネル17に表示されないため、作業主任者は承認ボタン30をタッチせず作業環境の再測定を行う。生成された測定データは、マンホールの識別コード、測定箇所、測定日時、測定値を含んでおり、さらに先の工事日、工事名、発注番号、現場代理人氏名、作業主任者氏名、換気開始時刻等の基礎データが関連付けられたうえで、一時的に内部メモリ21に記憶される。
【0030】
次いで、各測定箇所B~Eについても、上記ステップS4からステップS7を実行する。すべての測定箇所A~Eでの測定が完了したら、作業者端末3を操作して、内部メモリ21に記憶された測定箇所A~Eにおける測定データを一括して外部記憶部2に送信する(ステップS8)。外部記憶部2は受信した当該測定データを記憶する(ステップS9、S10)。すべての測定箇所A~Eで異常値が測定されなかったことを確認した作業主任者は作業者に入孔を許可して作業を開始させる。なお、作業主任者は、測定箇所A~Eにおける作業環境の測定値に異常値が含まれていた場合も、タッチパネル17に表示された承認ボタン30をタッチして測定データとして承認する。このとき、作業主任者は作業者の入孔を禁じて、現場代理人等の判断を仰ぐ。
【0031】
作業者端末3には予め測定値の適正範囲が記憶されており、測定装置1から取得した測定値に、適正範囲から外れる異常値が含まれていた場合には、報知手段18を駆動して作業主任者に異常を報知する。これにより、作業主任者は、測定値に異常値が含まれていることを速やかに認識できる。このように、測定装置1および作業者端末3に、異常値が測定された場合に駆動される報知手段12・18が設けられていると、報知手段12・18のいずれか一方が不具合を起こしていた場合でも他方が駆動されることで、異常値が測定されたことを報知できるので、作業環境測定支援システムで信頼性の高い安全管理を実施することができる。
【0032】
作業者端末3は作業者の入孔後、定期的(例えば2時間毎)に上記ステップS1~S8を行って作業環境測定を実施し、入孔対象のマンホールの作業環境を監視して作業者の安全を確保する。作業者が入孔中の作業環境測定において異常値が測定された場合、作業主任者は速やかに作業者を出孔させて作業者の安全を確保したのち、現場代理人等の判断を仰ぐ。
【0033】
補助端末4の専用ソフトは、起動されると一定時間毎(例えば1分毎)に外部記憶部2にアクセスして、記憶装置29に記憶されている測定データよりも測定日時が新しい測定データが外部記憶部2に記憶されていないかどうかを確認している(ステップS11)。外部記憶部2に新しい測定日時の測定データが記憶されていた場合には、補助端末4は当該測定データの送信要求を外部記憶部2に送信する。なお、起動直後で記憶装置29に当日の測定データが記憶されていない場合、外部記憶部2に記憶された当日最初の測定データが最新の測定日時の測定データに該当する。外部記憶部2は送信要求を受信すると、最新の測定データを抽出し当該測定データを補助端末4へ送信する(ステップS12)。これにて、補助端末4は最新の測定データを取得し(ステップS13)、取得した測定データは記憶装置29に記憶される。
【0034】
補助端末4は最新の測定データを取得すると、まず予め記憶されている測定値の適正範囲と測定データに含まれる測定値とを比較し、取得した測定データに異常値が含まれていないかどうかを判断する(ステップS14)。補助端末4は前記判断をしたのち、当日最初に取得した測定データの場合には、工事名、工事の発注番号、現場代理人氏名、作業主任者氏名、マンホールの識別コード、換気開始時刻等の基礎データとともに、測定日時における測定箇所A~Eの各測定値を予め登録されている測定結果記録票(酸欠・有毒ガス濃度測定記録表)のテンプレート(
図3参照)に当てはめて、測定データが記載された測定結果記録票をディスプレイ23に表示する(ステップS15)。また、外部記憶部2から取得した測定データに含まれる基礎データが、先に取得し記憶装置29に記憶されている測定データと一致している場合(当日2回目以降の取得)には、補助端末4は所定時間毎に測定された測定値を含む測定データと判断して、テンプレートの次測定欄(右側)の空欄部分に測定日時と測定箇所A~Eの各測定値を当てはめて、新たな測定データが記載された測定結果記録票をディスプレイ23に表示する。
【0035】
作業者端末3の専用アプリにも前記と同様の測定結果記録票の表示機能が備えられており、作業者端末3においても測定結果記録票がタッチパネル17に表示される。作業主任者は、タッチパネル17に表示された測定結果記録票を確認して定期的に作業環境測定を実施する。なお、測定結果記録票のテンプレートは工事の発注元により様々であり、
図3に示すテンプレートは一例である。例示したテンプレートの記載事項のほか、例えば天候、作業者人員、気温、測定装置1の型式番号および整理番号等を記録する場合もある。これらは基礎データ中に含めて、測定データとして管理することができる。
【0036】
オペレーターは定期的にディスプレイ23に表示された測定結果記録票を見て、最後に取得した測定データの測定日時からどの程度時間が経過しているかを確認する。最後の作業環境測定から定期的な測定間隔時間(2時間)が経過している場合には、作業主任者が作業環境測定を失念していないかどうかを電話連絡で確認し、作業主任者に作業環境測定の実施を促す。
【0037】
本実施例の補助端末4は、一定時間毎の外部記憶部2へのアクセスで確認した最新の測定データの測定日時から現在時刻までの経過時間を算出するようになっており、経過時間が測定間隔時間(2時間)を超えたとき、補助端末4は注意喚起報知手段27を駆動して注意喚起音、例えば2連短音(ピピッ)を間隔をおいて断続的に出力して、定期測定時間が経過したことを事務所のオペレーターに報知する。また、補助端末4は、取得した測定データの測定値に異常値が含まれていた場合に、異常報知手段28を駆動して警報音、例えば長音(ピー)を短い間隔で断続的に出力して、作業環境が危険であることを事務所のオペレーターに報知する。
【0038】
本実施例の作業環境測定支援システムにおいては、測定データにマンホールの識別コードが含まれている。そのため、識別コードからどのマンホールの測定データかを容易に判別することができ、識別コード毎に測定データをひとまとめにして管理することで、ひとつのシステムで複数の入孔対象の測定データを同時に扱うことができる。同時刻に複数のマンホールに入孔する場合には、作業主任者は作業者端末3を携帯して各入孔対象のマンホールを巡回しつつ、上記の作業環境測定を実施する。
【0039】
外部記憶部2に記憶された測定データは、補助端末4の専用ソフトから任意に読み出すことができるように構成されている。例えば、工事日、工事名または発注番号のいずれかと、マンホールの識別コードを操作部24で入力指定することにより、補助端末4は外部記憶部2に記憶されている測定データから対象の測定データを抽出して、過去の測定結果記録票をディスプレイ23に表示させることができる。これによれば、補助端末4のディスプレイ23上で測定データを含む測定結果記録票を参照できるので、測定データを紙媒体で保存する必要がなく、測定結果記録票をペーパーレスで管理することが可能となる。なお、メンテナンスの発注元に測定結果記録票を提出する必要がある場合には、測定結果記録票をディスプレイ23に表示させたうえで、プリンタ25で紙媒体に印字しこれを提出することができる。外部記憶部2には、測定結果記録票を作成するうえで測定データとして保存が必要な最小限の測定データしか記憶されないので、規模の大きな外部記憶部2を用意する必要がない分、作業環境測定支援システムの運用コストを抑えることができる。
【0040】
以上のように、本実施例においては、作業者端末3が、測定装置1から取得した測定値のうち作業者端末3が備える承認ボタン30で承認された測定値をもとに測定データを生成し、当該作業者端末3で生成された測定データが外部記憶部2に記憶されるようにした。このように作業主任者が携帯する作業者端末3が備える承認ボタン30で承認された測定値から測定データを生成して外部記憶部2に記憶すると、測定毎の筆記により測定データを記録する必要が無くなるため作業主任者の負担を大幅に軽減できる。外部記憶部2に記憶される測定データは、作業主任者が承認した測定値、つまり有資格者である作業主任者が数値を確認した測定値を含み、これを外部記憶部2に記憶するので、当該測定データを外部記憶部2から読み出して、例えば測定結果記録票に転記した場合でも規則上何ら問題は生じない。
【0041】
加えて、外部記憶部2に記憶された承認された測定値および測定値の測定日時を含む測定データを補助端末4で取得できるようにしたので、補助端末4を操作するオペレーターは、測定データを補助端末4で取得しその測定日時を確認することで作業主任者が所定時刻毎の作業環境測定を実施しているか否かを確認できる。作業主任者が作業環境測定を失念しているとオペレーターが判断した場合には、電話連絡等により作業環境測定の実施を作業主任者に促すことができる。つまり、オペレーターは作業環境測定の実施にあたり作業主任者をサポートすることができる。以上により、本実施例の作業環境測定支援システムによれば、マンホール等への入孔時における所定時間毎の測定データの欠測を防いで、適正な測定結果記録票を確実に得ることができる。また、オペレーターが測定値を確認することで、作業主任者およびオペレーターの2名が、気体濃度が適正範囲内であるかを確認するので(2重にチェックすることができるので)、異常値の見落としのリスクを減らすことができる。
【0042】
測定データに含まれる測定値に異常値が含まれていたときに、作業環境が危険であることを報知する異常報知手段28を補助端末4に設けたので、補助端末4を操作するオペレーターは、当該異常報知手段28の作動により、直ちに作業環境が危険状態にあることを知ることができる。従って、オペレーターは、作業主任者からの報告を受ける前に、現場代理人(統括安全衛生責任者)等への報告など、異常値測定時の対応を速やかに取ることができる。作業主任者は、作業者に対する出孔指示など、現場対応に専念することができる。
【0043】
測定データは入孔対象を特定する固有の識別コードを含むものとし、当該識別コードを含む測定データが外部記憶部2に記憶されるように構成したので、識別コード毎に測定データをひとまとめにして管理することで、ひとつのシステムで複数の入孔対象の測定データを同時に扱うことができる。従って、入孔対象の増加に伴って、測定データの管理作業が煩雑化することを防ぐことができる。
【0044】
補助端末4を、一定時間毎に外部記憶部2にアクセスして記憶されている測定データに含まれる測定日時を抽出し、抽出した測定日時のうち最新の測定日時から現在時刻までの経過時間を算出するように構成し、前記経過時間が所定時間を超えたとき、所定時間が経過したことを報知する注意喚起報知手段27を補助端末4に設けたので、注意喚起報知手段27が作動することで、オペレーターは、所定時間が経過したにも関わらず測定データが外部記憶部2に記録されていないことを確実に知ることができる。従って、オペレーターが作業主任者に対して電話連絡等により作業環境測定の実施を促すなどの対応を取ることで、所定時間毎の測定データが欠測されることを確実に防ぐことができる。
【0045】
(実施例2)
図4および
図5に、本発明に係る作業環境測定支援システムを、マンホールへのケーブル引き込み作業における作業環境測定の実施の支援に適用した実施例2を示す。本実施例の作業環境測定支援システムは、基本的には実施例1と同じ構成であるが、
図4に示すように測定装置1は近距離無線通信手段13に替えて携帯電話通信モジュール40を備えている点が大きく異なる。また、測定装置1は所定時間毎に自動的に測定を実行する自動実行モードが備わっている。測定装置1は携帯電話通信モジュール40により公衆回線通信網や携帯電話通信網を介してインターネット5に接続できる。携帯電話通信モジュール40は、携帯無線電波の受信エリア内において測定装置1の電源が投入されているとき、常時インターネット5との通信が確立されている。他は実施例1と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
【0046】
本実施例の作業環境測定支援システムの運用方法を説明する。なお、測定装置1を設置するまでの工程は実施例1と同じであるので説明を省略する。本実施例における作業者端末3の専用アプリは、入孔対象のマンホールの識別コードと測定装置1に付された固有の整理番号とを関連付ける機能を備えている。測定装置1を設置したのち作業主任者は作業開始前に作業者端末3の専用アプリを起動し、マンホールの識別コードと当該マンホールに設置された測定装置1の整理番号との関連付けを基礎データに登録する。
【0047】
測定プローブ8をマンホールの上層部分、すなわち測定箇所Aにおいてケーブルで吊持保持する。測定プローブ8を吊持保持した状態で、測定装置1の操作部11を操作して測定を実行し、測定箇所Aにおける作業環境の測定を開始する(ステップS21)。測定が完了した測定装置1は、自動的に測定日時、測定装置1の整理番号を含む測定値を外部記憶部2に送信し(ステップS22)、外部記憶部2は受信した当該測定値を記憶する(ステップS23、S24)。
【0048】
作業主任者は作業者端末3を操作して、測定しているマンホールの識別コードを含む測定値が外部記憶部2に記録されていかどうかを検索する(ステップS25)。このとき、先に測定装置1の整理番号とマンホールの識別コードとを関連付けてあるので、作業者端末3に識別コードを入力して検索することで、外部記憶部2に記憶された測定値が検索できる。測定値の検索が完了すると、検索された測定値のうち最新の測定日時の測定値が抽出され、抽出された測定値は作業者端末3へと送信される(ステップS26)。
【0049】
測定日時等を含む測定値を取得した作業者端末3は、当該測定値に含まれるマンホールの識別コード(測定装置1の整理番号)、測定日時、および測定値を、測定箇所の特定欄と承認ボタン30とともにタッチパネル17に表示する(ステップS27)。測定値を含む表示内容を確認した作業主任者は、測定値等が測定箇所Aのものであることを測定箇所の特定欄から選択して決定し、タッチパネル17に表示された承認ボタン30をタッチする。これにより、入孔対象のマンホールの測定箇所Aにおける測定時間および測定値を含む測定データが生成される(ステップS28)。仮に測定エラーなどで一部の気体濃度が測定されなかった場合、測定エラーとなった気体濃度はタッチパネル17に表示されないため、作業主任者は承認ボタン30をタッチせず作業環境の再測定を行う。生成された測定データは、マンホールの識別コード、測定箇所、測定日時、測定値が含まれており、さらに先の工事日、工事名、発注番号、現場代理人氏名、作業主任者氏名、換気開始時刻等の基礎データが関連付けられたうえで、一時的に内部メモリ21に記憶される。
【0050】
次いで、各測定箇所B~Eについても、上記ステップS21からステップS28を実行する。すべての測定箇所A~Eでの測定が完了したら、作業者端末3を操作して、内部メモリ21に記憶された測定箇所A~Eにおける測定データを一括して外部記憶部2に送信する(ステップS29)。外部記憶部2は受信した当該測定データを記憶する(ステップS30、S31)。すべての測定箇所A~Eで異常値が測定されなかったことを確認した作業主任者は作業者に入孔を許可して作業を開始させる。なお、作業主任者は、測定箇所A~Eにおける作業環境の測定値に異常値が含まれていた場合も、タッチパネル17に表示された承認ボタン30をタッチして測定データとして承認する。このとき、作業主任者は作業者の入孔を許可せず、作業者の入孔を禁じて、現場代理人等の判断を仰ぐ。
【0051】
作業者が入孔したのちは、測定プローブ8を例えば測定箇所Cにおいて吊持保持し、さらに測定装置1を自動測定モードに設定して、所定時間毎(例えば5分毎)に作業環境の測定を実行させる。自動測定モードで得られた、測定装置1の整理番号および測定値の測定日時を含む測定値は外部記憶部2に送信され、外部記憶部2は受信した当該測定値を順次記憶する。
【0052】
作業者端末3は作業者の入孔後、定期的(例えば2時間)に上記ステップS21~S29を行って作業環境測定を実施し、入孔対象のマンホールの作業環境を監視して作業者の安全を確保する。作業者の入孔中に異常値が測定された場合、作業主任者は速やかに作業者を出孔させて作業者の安全を確保したのち、現場代理人等の判断を仰ぐ。
【0053】
補助端末4の専用ソフトは、起動されると一定時間毎(例えば1分毎)に外部記憶部2にアクセスして、記憶装置29に記憶されている測定データよりも測定日時が新しい測定データが外部記憶部2に記憶されていないかどうかを確認している(ステップS32)。外部記憶部2に新しい測定日時の測定データが記憶されていた場合には、補助端末4は当該測定データの送信要求を外部記憶部2に送信する。なお、起動直後で記憶装置29に当日の測定データが記憶されていない場合、外部記憶部2に記憶された当日最初の測定データが最新の測定日時の測定データに該当する。外部記憶部2は送信要求を受信すると、最新の測定データを抽出し当該測定データを補助端末4へ送信する(ステップS33)。これにて、補助端末4は最新の測定データを取得し(ステップS34)、取得した測定データは記憶装置29に記憶される。
【0054】
補助端末4は最新の測定データを取得すると、まず予め記憶されている測定値の適正範囲と測定データに含まれる測定値とを比較し、取得した測定データに異常値が含まれていないかどうかを判断する(ステップS35)。補助端末4は前記判断をしたのち、当日最初に取得した測定データの場合には、工事名、工事の発注番号、現場代理人氏名、作業主任者氏名、マンホールの識別コード、換気開始時刻等の基礎データとともに、測定日時における測定箇所A~Eの各測定値を予め登録されている測定結果記録票のテンプレート(
図3参照)に当てはめて、測定データが記載された測定結果記録票をディスプレイ23に表示する(ステップS36)。また、外部記憶部2から取得した測定データに含まれる基礎データが先に取得した測定データと一致している場合(当日2回目以降)には、補助端末4は所定時間毎に測定された測定値を含む測定データと判断して、テンプレートの次測定欄の空欄部分に測定日時と測定箇所A~Eの各測定値を当てはめて、新たな測定データが記載された測定結果記録票をディスプレイ23に表示する。作業者端末3の専用アプリにも前記と同様の測定結果記録票の表示機能が備えられており、作業者端末3においても測定結果記録票がタッチパネル17に表示される。作業主任者は、タッチパネル17に表示された測定結果記録票を確認して定期的に作業環境測定を実施する。
【0055】
オペレーターは定期的にディスプレイ23に表示された表示測定結果記録票を見て、最後に取得した測定データの測定日時からどの程度時間が経過しているかを確認する。最後の作業環境測定から定期的な測定間隔時間(2時間)が経過している場合には、作業主任者が定期的に実施する測定を失念していないかどうかを電話連絡で確認し、作業主任者に作業環境測定の実施を促す。
【0056】
外部記憶部2には、作業主任者による承認は受けていないが、自動実行モードで測定された作業環境の測定値が記憶されている。本実施例の作業者端末3の専用アプリおよび補助端末4の専用ソフトは、当該測定値を取得参照できるように構成されている。作業主任者あるいは事務所のオペレーターは測定値の変化を確認することで、例えば酸素濃度が低下傾向にある場合には、換気が適切に行われていない可能性があると推測でき、換気設備の点検を行って、作業者が危険にさらされるのを未然に防ぐことができる。
【0057】
また、外部記憶部2には、所定時間毎に測定された測定値が順次記録される分、外部記憶部2の容量を大きく確保する必要があるが、測定値に含まれる測定日時が例えば2週間よりも以前の測定値においては削除するように構成することができ、こうした構成によれば、外部記憶部2内において測定値が占める容量を小さくすることができる。また、測定値は、外部記憶部2に記憶させずに、測定装置1から作業者端末3へと直接送信することも可能である。この場合には、外部記憶部2には、入孔記録を作成するうえで入孔データとして保存が必要な最小限の入孔データしか記憶されないので、規模の大きな外部記憶部2を用意する必要がない分、作業環境測定支援システムの運用コストを抑えることができる。
【0058】
以上のように、本実施例においても、作業者端末3が、測定装置1から取得した測定値のうち作業者端末3が備える承認ボタン30で承認された測定値をもとに測定データを生成し、当該作業者端末3で生成された測定データが外部記憶部2に記憶されるようにしたので、測定毎の筆記により測定データを記録する必要がないので作業主任者の負担を軽減できる。加えて、外部記憶部2に記憶された承認された測定値および測定値の測定日時を含む測定データが補助端末4で取得できるようにしたので、補助端末4を操作するオペレーターは、測定データを補助端末4で取得しその測定日時を確認することで作業主任者が所定時刻毎の作業環境測定を実施しているか否かが判断できる。従って、マンホール等への入孔時における所定時間毎の測定データの欠測を防いで、適正な測定結果記録票を確実に得ることができる。また、オペレーターが測定値を確認することで、作業主任者およびオペレーターの2名で、気体濃度が適正範囲内であるかを確認することができるので(2重にチェックすることができるので)、異常値見落としのリスクを大幅に削減することができる。
【0059】
本発明に係る支援システムの構成要素や運用時の操作方法は上記実施例に挙げたものに限られない。複数台の第1の端末3で支援システムを運用する形態を採ることができ、また、複数台の第2の端末4を異なる場所にそれぞれ設置する形態を採ることもできる。本発明の作業環境測定支援システムは、マンホール以外の酸素欠乏等防止規則で定められる酸素欠乏危険場所における作業環境測定の実施の支援にも適用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 測定装置
2 外部記憶部
3 第1の端末(作業者端末)
4 第2の端末(補助端末)
5 インターネット
13 近距離無線通信手段(装置側通信モジュール)
19 近距離無線通信手段(端末側通信モジュール)
20 携帯電話通信手段(携帯電話通信モジュール)
27 注意喚起報知手段
28 異常報知手段
30 承認手段(承認ボタン)
40 携帯電話通信手段(携帯電話通信モジュール)