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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】減圧弁
(51)【国際特許分類】
   G05D 16/06 20060101AFI20220929BHJP
   F16K 1/44 20060101ALI20220929BHJP
   F16K 11/22 20060101ALI20220929BHJP
   F16K 17/04 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G05D16/06 R
F16K1/44 C
F16K11/22 Z
F16K17/04 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018111562
(22)【出願日】2018-06-12
(65)【公開番号】P2019215644
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】391060029
【氏名又は名称】株式会社ダンレイ
(74)【代理人】
【識別番号】100095245
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】上村 高弘
(72)【発明者】
【氏名】太田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】田口 二郎
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-050227(JP,U)
【文献】特開2013-196399(JP,A)
【文献】実開昭49-062723(JP,U)
【文献】米国特許第05931182(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/06
F16K 1/44
F16K 11/22
F16K 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側通路と二次側通路との境界部の流路面積を可変調整する止水機能を有する減圧弁機構と、二次側通路の内圧に応じて開閉する逃し弁機構とを備える減圧弁であって、シリンダに摺接する弁棒の一端部とシリンダの一端とが協働して減圧弁機構を形成し、弁棒の他端部と二次側通路の内圧に応じて弁棒長手方向に往復変位するダイアフラムとが協働して逃し弁機構を形成し、ダイアフラムに固定され弁棒長手方向の所定の遊びを持って弁棒の他端部に対峙する連結部材と弁棒他端部とから成る連結機構を備え、ダイアフラムの移動に伴って前記遊びが零になると連結部材が弁棒他端部に当接して両者が連結されることを特徴とする減圧弁。
【請求項2】
連結機構は、ダイアフラムに固定された連結部材に形成された開口と、弁棒の他端部から延びて連結部材の開口に進入する突起とを有し、前記開口の縁と突起との間に所定の遊びが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の減圧弁。
【請求項3】
ボディと、ボディの一部によって形成されたシリンダと、シリンダ内で往復摺動するピストンヘッドと、ピストンヘッドとシリンダ内周面との摺接部をシールするシール部材と、ピストンヘッドの一端部から延びてシリンダの一端部からシリンダ外の二次側通路へ突出するピストンロッドと、シリンダの前記一端部が形成する第1弁座と、ピストンロッドのシリンダ外へ突出した一端部に固定されて第1弁座と対峙する第1弁体と、シリンダ周壁のピストンロッドに対峙する部位に形成された開口と、ピストンヘッドを閉弁方向へ付勢する第1バネと、大径部と小径部とを有しピストンヘッドの他端部に小径部の一端部が対峙する筒体と、前記筒体に中心部が固定されたダイアフラムと、ボディの一部により形成されダイアフラムに対峙しダイアフラムとシリンダとピストンヘッドと協働して二次側通路に連通する感圧室を形成するダイアフラムケースと、ダイアフラムを感圧室側へ押圧する第2バネと、第2バネと前記筒体小径部の他端部とを収容すると共にダイアフラムケースと協働してダイアフラムの周縁部を挟持するバネケースと、前記筒体小径部の一端部に配設された第2弁座又は第2弁体と、ピストンヘッドの他端部に係合し前記筒体小径部の一端部に配設された第2弁座又は第2弁体に対峙する第2弁体又は第2弁座とを備え、第1弁体と第1弁座とが減圧弁機構の弁体と弁座とを形成し、第2弁座と第2弁体とが逃し弁機構の弁座と弁体を形成し、筒体大径部周壁に形成された開口にピストンヘッドの他端部から径方向外方へ延びる突起が進入し、前記開口の縁と突起との間に所定の遊びが形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の減圧弁。
【請求項4】
ボディと、ボディの一部によって形成されたシリンダと、シリンダ内で往復摺動するピストンヘッドと、ピストンヘッドとシリンダ内周面との摺接部をシールするシール部材と、ピストンヘッドの一端部から延びてシリンダの一端部からシリンダ外の二次側通路へ突出するピストンロッドと、シリンダの前記一端部が形成する第1弁座と、ピストンロッドのシリンダ外へ突出した一端部に固定されて第1弁座と対峙する第1弁体と、シリンダ周壁のピストンロッドに対峙する部位に形成された開口と、ピストンヘッドを閉弁方向へ付勢する第1バネと、大径部と小径部とを有しピストンヘッドの他端部に小径部の一端部が対峙する筒体と、前記筒体に中心部が固定されたダイアフラムと、ボディの一部により形成されダイアフラムに対峙しダイアフラムとシリンダとピストンヘッドと協働して二次側通路に連通する感圧室を形成するダイアフラムケースと、ダイアフラムを感圧室側へ押圧する第2バネと、第2バネと前記筒体小径部の他端部とを収容すると共にダイアフラムケースと協働してダイアフラムの周縁部を挟持するバネケースと、前記筒体小径部の一端部に配設された第2弁座又は第2弁体と、ピストンヘッドの他端部に係合し前記筒体小径部の一端部に配設された第2弁座又は第2弁体に対峙する第2弁体又は第2弁座とを備え、第1弁体と第1弁座とが減圧弁機構の弁体と弁座とを形成し、第2弁座と第2弁体とが逃し弁機構の弁座と弁体を形成し、ピストンヘッドの他端部から径方向外方へ延びる突起の先端に雄螺子が形成され、筒体大径部開放端部内周に突起先端の雄螺子と螺合する雌螺子が形成され、当該雌螺子に隣接して筒体大径部内奥部に前記突起の肉厚よりも幅広の環状溝が形成され、当該環状溝に開口が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の減圧弁。
【請求項5】
ピストンヘッドの他端部に係合する第2弁体又は第2弁座とピストンヘッドの他端部との間に前記第2弁体又は第2弁座を逃し弁機構の閉弁方向へ付勢する第3バネが配設されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の減圧弁。
【請求項6】
ピストンヘッドの他端部に係合する第2弁体又は第2弁座は、ピストンヘッドの他端部に固定されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の減圧弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次側通路と二次側通路との境界部の流路面積を可変調整する止水機能を有する減圧弁機構と、二次側通路の内圧に応じて開閉する逃し弁機構とを備える減圧弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一次側通路と二次側通路との境界部の流路面積を可変調整する止水機能を有する減圧弁機構と、二次側通路の内圧に応じて開閉する逃し弁機構とを備える減圧弁であって、シリンダに摺接する弁棒の一端部とシリンダの一端部とが協働して減圧弁機構を形成し、弁棒の他端部と二次側通路の内圧に応じて弁棒長手方向に往復変位するダイアフラムとが協働して逃し弁機構を形成する減圧弁が特許文献1に開示されている。
特許文献1の減圧弁には、減圧弁機構と逃し弁機構とを一体化できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-196399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
減圧弁に接続された水回り機器の利用者が長期不在の場合等において、減圧弁上流側の水道元栓が閉じられ、減圧弁下流側の水回り機器の水栓が開かれて、減圧弁が全開状態になり、そのままの状態で長期に亙って放置され、減圧弁摺動部の癒着や乾燥によるスケール等の減圧弁摺動部への付着等により、減圧弁摺動部が固着して、減圧弁機構が作動不能になる場合がある。この場合、減圧弁機構と逃し弁機構とが一体化した特許文献1の減圧弁では、逃し弁機構のみが作動可能になり、水回り機器への給水を再開すべく水道元栓を開いた時に、逃し弁機構のみが作動して給水が逃し弁機構を介して外部環境に排水され、当該排水が停止しない事態を生じ得る。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、一次側通路と二次側通路との境界部の流路面積を可変調整する止水機能を有する減圧弁機構と、二次側通路の内圧に応じて開閉する逃し弁機構とを備える減圧弁であって、シリンダに摺接する弁棒の一端部とシリンダの一端部とが協働して減圧弁機構を形成し、弁棒の他端部と二次側通路の内圧に応じて弁棒長手方向に往復変位するダイアフラムとが協働して逃し弁機構を形成する減圧弁であって、弁棒とシリンダとの摺接部が固着した場合に、逃し弁機構を利用して前記固着を解消する機構を備える減圧弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては、一次側通路と二次側通路との境界部の流路面積を可変調整する止水機能を有する減圧弁機構と、二次側通路の内圧に応じて開閉する逃し弁機構とを備える減圧弁であって、シリンダに摺接する弁棒の一端部とシリンダの一端部とが協働して減圧弁機構を形成し、弁棒の他端部と二次側通路の内圧に応じて弁棒長手方向に往復変位するダイアフラムとが協働して逃し弁機構を形成し、ダイアフラムに固定され弁棒長手方向の所定の遊びを持って弁棒の他端部に対峙する連結部材と弁棒他端部とから成る連結機構を備え、ダイアフラムの移動に伴って前記遊びが零になると連結部材が弁棒他端部に当接して両者が連結されることを特徴とする減圧弁を提供する。
水回り機器への給水を再開すべく水道元栓が開かれ、減圧弁機構が全開状態で固着し、逃し弁機構のみが作動して給水が逃し弁機構を介して外部環境に排水されている時に、水道元栓の開度が増加し給水圧が増加し、逃し弁開弁方向のダイアフラムの変位が増加して、連結機構の遊びが無くなると、連結機構がダイアフラムに固定された連結部材を弁棒他端部に当接させて両者を連結する。この結果、給水圧の増加に伴ってダイアフラムが弁棒を駆動し、弁棒摺接部の固着が解消され、減圧弁機構が作動を開始し、減圧弁は正常作動状態になり、逃し弁機構は二次側通路の内圧に応じて開閉することになる。
本発明の好ましい態様においては、連結機構は、ダイアフラムに固定された連結部材に形成された開口と、弁棒の他端部から延びて連結部材の開口に進入する突起とを有し、前記開口の縁と突起との間に所定の遊びが形成されている。
ダイアフラムに固定された連結部材に形成された開口と、弁棒の他端部から延びて連結部材の開口に進入する突起と、前記開口の縁と突起との間に形成した所定の遊びとにより、連結機構を形成することができる。
【0006】
本発明の好ましい態様においては、減圧弁は、ボディと、ボディの一部によって形成されたシリンダと、シリンダ内で往復摺動するピストンヘッドと、ピストンヘッドとシリンダ内周面との摺接部をシールするシール部材と、ピストンヘッドの一端部から延びてシリンダの一端部からシリンダ外の二次側通路へ突出するピストンロッドと、シリンダの前記一端部が形成する第1弁座と、ピストンロッドのシリンダ外へ突出した一端部に固定されて第1弁座と対峙する第1弁体と、シリンダ周壁のピストンロッドに対峙する部位に形成された開口と、ピストンヘッドを閉弁方向へ付勢する第1バネと、大径部と小径部とを有しピストンヘッドの他端部に小径部の一端部が対峙する筒体と、前記筒体に中心部が固定されたダイアフラムと、ボディの一部により形成されダイアフラムに対峙しダイアフラムとシリンダとピストンヘッドと協働して二次側通路に連通する感圧室を形成するダイアフラムケースと、ダイアフラムを感圧室側へ押圧する第2バネと、第2バネと前記筒体小径部の他端部とを収容すると共にダイアフラムケースと協働してダイアフラムの周縁部を挟持するバネケースと、前記筒体小径部の一端部に配設された第2弁座又は第2弁体と、ピストンヘッドの他端部に係合し前記筒体小径部の一端部に配設された第2弁座又は第2弁体に対峙する第2弁体又は第2弁座とを備え、第1弁体と第1弁座とが減圧弁機構の弁体と弁座とを形成し、第2弁座と第2弁体とが逃し弁機構の弁座と弁体を形成し、筒体大径部周壁に形成された開口にピストンヘッドの他端部から径方向外方へ延びる突起が進入し、前記開口の縁と突起との間に所定の遊びが形成されている。
本発明の好ましい態様においては、減圧弁は、ボディと、ボディの一部によって形成されたシリンダと、シリンダ内で往復摺動するピストンヘッドと、ピストンヘッドとシリンダ内周面との摺接部をシールするシール部材と、ピストンヘッドの一端部から延びてシリンダの一端部からシリンダ外の二次側通路へ突出するピストンロッドと、シリンダの前記一端部が形成する第1弁座と、ピストンロッドのシリンダ外へ突出した一端部に固定されて第1弁座と対峙する第1弁体と、シリンダ周壁のピストンロッドに対峙する部位に形成された開口と、ピストンヘッドを閉弁方向へ付勢する第1バネと、大径部と小径部とを有しピストンヘッドの他端部に小径部の一端部が対峙する筒体と、前記筒体に中心部が固定されたダイアフラムと、ボディの一部により形成されダイアフラムに対峙しダイアフラムとシリンダとピストンヘッドと協働して二次側通路に連通する感圧室を形成するダイアフラムケースと、ダイアフラムを感圧室側へ押圧する第2バネと、第2バネと前記筒体小径部の他端部とを収容すると共にダイアフラムケースと協働してダイアフラムの周縁部を挟持するバネケースと、前記筒体小径部の一端部に配設された第2弁座又は第2弁体と、ピストンヘッドの他端部に係合し前記筒体小径部の一端部に配設された第2弁座又は第2弁体に対峙する第2弁体又は第2弁座とを備え、第1弁体と第1弁座とが減圧弁機構の弁体と弁座とを形成し、第2弁座と第2弁体とが逃し弁機構の弁座と弁体を形成し、ピストンヘッドの他端部から径方向外方へ延びる突起の先端に雄螺子が形成され、筒体大径部開放端部内周に突起先端の雄螺子と螺合する雌螺子が形成され、当該雌螺子に隣接して筒体大径部内奥部に前記突起の肉厚よりも幅広の環状溝が形成され、当該環状溝に開口が形成されている。
上記構成により、減圧弁機構と逃し弁機構とが一体化されると共に、ピストンヘッドとピストンロッドとが形成する弁棒とシリンダとの摺接部が固着した場合に、逃し弁機構を利用して前記固着を解消する機構を備える減圧弁が提供される。
本発明の好ましい態様においては、ピストンヘッドの他端部に係合する第2弁体又は第2弁座とピストンヘッドの他端部との間に前記第2弁体又は第2弁座を逃し弁機構の閉弁方向へ付勢する第3バネが配設されている。
第3バネのバネ定数を小さな値に設定することにより、第2弁体又は第2弁座を構成するシール材の経時的な性能劣化を防止できる。
本発明の好ましい態様においては、ピストンヘッドの他端部に係合する第2弁体又は第2弁座はピストンヘッドの他端部に固定されている。
ピストンヘッドの他端部に係合する第2弁体又は第2弁座をピストンヘッドの他端部に固定すれば、逃し弁機構の構成が簡素化される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施例に係る減圧弁の、減圧弁機構全開時且つ逃し弁機構閉弁時の断面図である。
図2】本発明の実施例に係る減圧弁が備えるダイアフラムと弁棒の連結機構の構造図である。(a)は連結部材の側面図であり、(b)弁棒の側面図であり、(c)は(a)のc矢視図であり、(d)は(b)のd矢視図であり、(e)は(a)のA-A断面図であり、(f)は(a)のB-B断面図であり、(g)は連結部材と弁棒との組付け状態での側面図であり、(h)は(g)のh矢視図であり、(i)は連結部材と弁棒との組付け状態での側面図であり、(j)は(i)のj矢視図であり、(k)は連結部材と弁棒との組付け状態での側面図であり、(l)は(k)のl矢視図である。
図3】本発明の実施例に係る減圧弁の、減圧弁機構全開時且つ逃し弁機構閉弁時の部分拡大断面図である。
図4】本発明の実施例に係る減圧弁の、連結機構作動開始時の部分拡大断面図である。
図5】本発明の実施例に係る減圧弁の、正常作動時で且つ減圧弁機構と逃し弁機構とが閉弁している時の部分拡大断面図である。
図6】本発明の実施例に係る減圧弁の、正常作動時で且つ減圧弁機構が閉弁し逃し弁機構が開弁している時の部分拡大断面図である。
図7】本発明の他の実施例に係る減圧弁の、減圧弁機構全開時且つ逃し弁機構閉弁時の部分拡大断面図である。
図8】本発明の他の実施例に係る減圧弁の、減圧弁機構全開時且つ逃し弁機構閉弁時の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施例に係る減圧弁を説明する。
図1に示すように、減圧弁1はボディ2を備えている。ボディ2は、一次側通路2aと二次側通路2bとが内部に形成されると共に、シリンダ2cとダイアフラムケース2dとを有している。
減圧弁1は、シリンダ2c内で往復摺動するピストンヘッド3と、ピストンヘッド3とシリンダ2c内周面との摺接部をシールするOリング4と、ピストンヘッド3の一端部から延びてシリンダ2cの一端部からシリンダ2c外の二次側通路2bへ突出するピストンロッド5と、シリンダ2cの前記一端部が形成する第1弁座6と、ピストンロッド5のシリンダ2c外へ突出した一端部に固定されて第1弁座6と対峙する第1弁体7と、第1弁体7に係合してピストンヘッド3を閉弁方向へ付勢する第1バネ8と、ボディ2の二次側通路2bを形成する部位に水密に固定されて第1バネ8を収容すると共に第1弁体7を往復摺動可能に収容する第1バネ8用のバネ押さえ9と、シリンダ2c周壁のピストンロッド5に対峙する部位に形成された開口10と、ピストンヘッド3の他端部に一端部が対峙する筒体11と、筒体11の前記一端部の近傍部に中心部が固定されたダイアフラム12と、ボディ2の一部により形成されダイアフラム12に対峙しダイアフラム12とシリンダ2cとピストンヘッド3と協働して二次側通路2bに連通する感圧室13を形成する前述のダイアフラムケース2dと、ダイアフラム12を感圧室13側へ押圧する第2バネ14と、第2バネ14と筒体11の長手方向中央部と他端部とを収容すると共にダイアフラムケース2dと協働してダイアフラム12の周縁部を挟持するバネケース15と、筒体11の前記一端部に配設された第2弁座16と、第3バネ17を介してピストンヘッド3の他端部に係合し第2弁座16に対峙する第2弁体18と、を備えている。第3バネ17のバネ定数は小さな値に設定されている。
【0009】
筒体11は、感圧室13内に配設された大径部11aとバネケース15内へ延びる小径部11aとを有する第1部分11aと、バネケース15内に配設されて第1部分11aに連結固定された第2部分11bとを備えている。第1部分大径部11aと第2部分11bとが協働してダイアフラム12の中心部を挟持している。第1部分小径部11aの感圧室13内に位置する一端部に前述のごとく第2弁座16が配設されると共に、第1部分大径部11aはシリンダ2cに往復摺動可能に外嵌合している。第2部分11bは第2バネ14用のバネ押さえを形成し、第1部分11aから離隔した端部はバネケースの筒部15aに往復摺動可能に内嵌合している。
バネケース15から排水筒19が延びている。
【0010】
シリンダ2c、ピストンヘッド3、第1弁座6、第1弁体7、第1バネ8、ダイアフラム12、第2バネ14等によって減圧弁機構αが形成されている。減圧弁機構αは中心軸線Xを有するリフト弁機構、即ち少なくとも1つの構成要素が中心軸線Xに沿って閉鎖面に垂直な開閉動作をする閉鎖部材をもつ締め切り機構である。第1弁体7は中心軸線Xに沿って閉鎖面に垂直な開閉動作をする。第1弁体7は、中心軸線X方向に互いに間隔を隔てたピストンヘッド3とシリンダ2c内周面との摺接部と、第1弁体7とバネ押さえ9との摺接部の2箇所で中心軸線X方向にガイドされている。
筒体11、ダイアフラム12、第2バネ14、第2弁座16、第3バネ17、第2弁体18により逃し弁機構βが形成されている。逃し弁機構βは、減圧弁機構αと中心軸線Xを共有するリフト弁機構である。第2弁座16と第2弁体18とは中心軸線Xに沿って閉鎖面に垂直な開閉動作をする。第2弁座16は、中心軸線X方向に互いに間隔を隔てた筒体第2部分11bとバネケース筒部15aとの摺接部と、筒体第1部分大径部11aとシリンダ2cとの摺接部の2箇所で中心軸線X方向にガイドされている。
上記説明から分かるように、ピストンヘッド3とピストンロッド5とでシリンダ2cに摺接する弁棒20を形成し、弁棒20の一端部とシリンダ2cの一端部とが協働して減圧弁機構αを形成し、弁棒20の他端部と二次側通路の内圧に応じて弁棒長手方向に往復変位するダイアフラム12とが協働して逃し弁機構βを形成している。
【0011】
弁棒20の他端部であるピストンヘッド3とダイアフラム12とを弁棒長手方向の所定の遊びを持って連結する連結機構γを説明する。
図1図2(a)~(f)に示すように、筒体第1部分大径部11aに一対の開口11aが形成されている。開口11aは筒体第1部分大径部11aの内周面に形成された縦溝11aに接続しており、また縦溝11aに対峙して爪部11aが開口11a内へ周方向に延びている。ピストンヘッド3のシリンダ2cから突出する端部に径方向外方へ放射状に延びる一対の突起21が形成されている。
図2(g)、(h)に示すように、突起21を縦溝11aに対峙させて、開放端側から弁棒20を筒体第1部分大径部11aへ挿入し、突起21を開口11aに進入させる。図2(i)、(j)に示すように、筒体第1部分大径部11aと弁棒20とを相対回転させて、突起21を開口11a内で周方向へ移動させる。突起21は爪部11aを押し退けつつ移動し、図2(k)、(l)に示すように、爪部11aを脱して開口11aの周方向終端部に達する。突起21は爪部11aに阻まれて、開口11aの周方向終端部に留め置かれ、弁棒20と筒体第1部分大径部11a、ひいてはダイアフラム12とが連結された状態になる。開口11aの周方向終端部内で、突起21は筒体第1部分大径部11aに対して弁棒20の長手方向に相対移動することができる。従って、弁棒20とダイアフラム12とは所定の遊びを持って連結される。突起21と開口11aとによって、弁棒20の他端部とダイアフラム12とを弁棒長手方向の所定の遊びをもって連結する連結機構γが形成される。
【0012】
減圧弁1の作動を説明する。
二次側通路2bに図示しない配管を介して接続された図示しない吐水装置が閉鎖され、前記配管内の水流が停止している時は、図5に示すように、第1弁体7が第1弁座6に当接して減圧弁機構αは閉弁している。逃し弁機構βも二次側通路2bの内圧(以下二次圧と呼ぶ)が開弁圧に達していないかぎり、第3バネ17の付勢力を受けた第2弁体18が第2弁座16に当接して閉弁している。
二次側通路2bと感圧室13とは連通しているので、二次圧がダイアフラム12に印加される。一次圧(一次側通路2aの内圧)はOリング4がピストンヘッド3とシリンダ2cとの摺接部をシールすることにより、感圧室13には伝達されず、ダイアフラム12には印加されない。
前記吐水装置が開放されると、二次圧が低下し、ダイアフラム12に印加される二次圧による閉弁方向の付勢力が減少して、第1弁体7が第1弁座6から離れ、減圧弁機構αは開弁する。第1弁体7と第1弁座6との間に形成された環状隙間を水道水が流れる際に圧力損失が発生し、水道水は減圧される。
減圧弁機構αの作動中に、何らかの原因で二次圧が上昇すると、第2バネ14の付勢力に抗してダイアフラム12が第1弁座6から遠ざかる方向へ弾性変形し、ダイアフラム12に固定された筒体11がピストンヘッド3から遠ざかる方向へ移動し、第1バネ8の付勢力を受けたピストンヘッド3が、ひいては第1弁体7が筒体11に追随して移動し、第1弁体7が第1弁座6に接近する。この結果、第1弁座7と第1弁体6との間の環状隙間が狭まり、前記環状隙間を水道水が通過する際の圧力損失が増加する。この結果、二次圧が下降する。従って、減圧弁機構αにより、二次圧は所定値に維持される。
減圧弁機構αの作動中、第3バネ17の付勢力を受けた第2弁体18と第2弁座16との当接状態が維持され、逃し弁機構βは閉弁している。第3バネ7のバネ定数を小さな値に設定することにより、第2弁体18を構成するシール材の経時的な性能劣化を防止できる。
【0013】
減圧弁機構αの作動中に、二次圧が減圧弁機構αの閉弁圧まで上昇すると、第1弁体7が第1弁座6に当接して減圧弁機構αは閉弁状態になる。
二次圧が減圧弁機構αの閉弁圧を超えて更に上昇すると、ダイアフラム12が第1弁座6から遠ざかる方向へ更に弾性変形し、筒体11がピストンヘッド3から更に遠ざかる方向へ移動する。筒体11がピストンヘッド3から更に遠ざかる方向へ移動すると、第3バネ17の付勢力を受けた第2弁体18は第2弁座16との当接状態を維持して筒体11の移動に追随するが、二次圧が逃し弁機構βの開弁圧を超えて上昇すると、第2弁体18の移動がピストンヘッド3の端部に形成されたストッパー3aにより阻止され、ダイアフラム12の第1弁座6から遠ざかる方向への更なる弾性変形に追随してピストンヘッド3から遠ざかる方向へ移動する第2弁座16が、移動が規制された第2弁体18から離れ、図6に示すように、逃し弁機構βが開弁し、感圧室13が、ひいては二次側通路2bが、筒体第1部分大径部11aに形成された開口11aと、第2弁座16と第2弁体18の間の隙間と、筒状部材11の第1部分11aの中央穴と、バネケース15の内部空間と、排水筒19と、を介して外部環境に連通する。この結果、感圧室13内、ひいては二次側通路2b内の水がバネケース15の内部空間へ流入し、排水筒19を介して外部環境に放出され、二次圧が低下して、二次側通路2bに接続された吐水装置の損傷が防止される。
【0014】
二次側通路2bに図示しない配管を介して接続された減圧弁下流側の図示しない吐水装置の利用者が長期不在の場合等において、一次側通路2aに接続する減圧弁上流側の図示しない水道管の元栓が閉じられ、減圧弁下流側の吐水装置の水栓が開かれて、減圧弁機構αが全開状態になり、そのままの状態で長期に亙って放置され、ピストンヘッド摺動部のOリング4とシリンダ2cの癒着や乾燥によるスケール等のOリング摺接部への付着等によりピストンヘッド摺動部が固着して、減圧弁機構αが作動不能になる場合がある。
減圧弁機構αが全開状態となった減圧弁1の部分拡大図を図3に示す。
二次側通路2bが空で二次圧が零なので、ダイアフラム12に印加される二次圧による閉弁方向の付勢力が零になり、第1弁体7の第1弁座6からの距離が最大になり、減圧弁機構αが全開状態となっている。ピストンヘッド3の端部から延びる突起21がシリンダ2の端面に当接して第1弁体7の移動を規制している。逃し弁機構βは閉弁している。突起21と筒体第1部分大径部11aの開口11aの筒体第1部分小径部11aから離隔する側の縁11aとの間に遊びSが形成されている。
図3に示す減圧弁機構αの全開状態で、長期に亙る放置によってピストンヘッド摺動部のOリング4とシリンダ2cの癒着や乾燥によるスケール等のOリング摺接部への付着等により、ピストンヘッド摺動部が固着して減圧弁機構αが作動不能になっている時に、減圧弁下流側の吐水装置への給水を再開すべく水道元栓が開かれると、逃し弁機構βのみが作動して給水が逃し弁機構βを介して外部環境に排水される。
水道元栓の開度が増加等し給水圧が増加すると、逃し弁機構開弁方向のダイアフラム12の変位が増加して、開口11aの縁11aが突起21に接近し、図4に示すように、連結機構γの遊びSが無くなり、開口11aの縁11aが突起21に当接すると、筒体第1部分大径部11a、ひいてはダイアフラム12とピストンヘッド3の端部とが連結される。換言すれば、連結機構γがダイアフラム12とピストンヘッド3の端部とを連結する。この結果、給水圧の増加に伴ってダイアフラム12がピストンヘッド3を駆動し、Oリング4摺接部の固着が解消され、減圧弁機構αが作動を開始し、減圧弁1は正常作動状態になり、逃し弁機構βは二次圧に応じて開閉することになる。
【0015】
減圧弁1の正常作動時において、二次圧が減圧弁機構αの閉弁圧を超えて逃し弁機構βの開弁圧未満である時は図5に示すように、減圧弁機構αと逃し弁機構βとは閉弁している。この時連結機構γの突起21と開口縁11aとの間には遊びSが存在している。
二次圧が減圧弁機構αの閉弁圧と逃し弁機構βの開弁圧を超えると、図6に示すように、減圧弁機構αは閉弁し逃し弁機構βは開弁する。減圧弁1の正常作動状態において、逃し弁機構βが作動する時、遊びSが零になる前に、二次圧が逃し弁機構βの開弁圧未満になるように、Sの値が設定されている。従って減圧弁1の正常作動状態において、連結機構γが作動して、減圧弁機構αを毀損するような事態は発生しない。
【0016】
第2弁体18に代えて第2弁座を配設し、第2弁座16に代えて第2弁体を配設しても良い。
ピストンヘッド3の他端部に係合する第2弁体18又は第2弁座をピストンヘッド3の他端部に固定しても良い。逃し弁機構の構成が簡素化される。
ピストンヘッド3と一体形成された突起21に代えて、図7に示すように、ピストンヘッド3とは別体のピン21’をピストンヘッド3に圧入固定し、或いは接着固定しても良い。この場合、ピストンヘッド3を筒体第1部分大径部11aに挿入した後に、開口11aを介してピン21’をピストンヘッド3に固定すれば良いので、筒体縦溝11a、爪部11aは不要である。
図8に示すように、ピストンヘッド3と一体形成された突起21の先端に雄螺子21aを形成し、筒体第1部分大径部11aの開放端部内周に雌螺子11aを形成し、雌螺子11aに隣接して筒体第1部分大径部11aの内奥部に突起21の肉厚よりも幅広の環状溝11aを形成し、環状溝11aの底壁の一部に開口11aを形成しても良い。
この場合、ピストンヘッド3を筒体第1部分大径部11aに螺入して突起21を、所定の遊びSを持たせて環状溝11aに対峙させれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、逃し弁機構を備える減圧弁に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0018】
1 減圧弁
2 ボディ
2a 一次側通路
2b 二次側通路
2c シリンダ
2d ダイアフラムケース
3 ピストンヘッド
6 第1弁座
7 第1弁体
8 第1バネ
11 筒体
11a 筒体第1部分大径部
11a 開口
12 ダイアフラム
13 感圧室
14 第2バネ
15 バネケース
16 第2弁座
17 第3バネ
18 第2弁体
19 排水筒
20 弁棒
21 突起
α 減圧弁機構
β 逃し弁機構
γ 連結機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8