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特許7149039車両の燃料タンクの逆流防止装置およびその取付機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】車両の燃料タンクの逆流防止装置およびその取付機構
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/03 20060101AFI20220929BHJP
   B60K 15/04 20060101ALI20220929BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
F16K15/03 F
B60K15/04 C
F02M37/00 301M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018169555
(22)【出願日】2018-09-11
(65)【公開番号】P2020041608
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】寺田 和正
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】天野 威
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/145694(WO,A1)
【文献】特開2014-076774(JP,A)
【文献】特表2010-525248(JP,A)
【文献】特開2005-114062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/00-15/20
B60K 15/04
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を燃料が通過可能な筒状部と、開閉可能な弁体から構成された樹脂製の逆流防止装置であって、
前記筒状部は、前記弁体の回転軸に対応して設けられた軸受部と、前記弁体が接離する弁座と、前記筒状部の内壁であって、前記軸受部の上流側から突出し、下流方向に延在する弁体開閉腕を有し、
前記弁体は、回転軸と、該回転軸と一体化された弁板と、前記弁板および/または前記回転軸の上流側から突出し、前記筒状部の前記弁体開閉腕が当接し、前記弁体開閉腕に対して前記弁体を閉じる方向に力を働かせる弁体開閉腕ガイド部を有することを特徴とする車両の燃料タンクの逆流防止装置。
【請求項2】
前記筒状部の外壁であり、前記弁体開閉腕の位置より下流側、且つ前記弁座の位置より上流側には、爪部が形成されている請求項1に記載の車両の燃料タンクの逆流防止装置。
【請求項3】
前記筒状部の前記軸受部より下流側の内壁または/および前記弁板の下流側には、突起部が形成されている請求項1または請求項2に記載の車両の燃料タンクの逆流防止装置。
【請求項4】
金属製または樹脂製であり、上流側先端部には外側に拡がる鍔部と、下流側先端部は内側に曲げられた結合部が設けられたカラーを有し、該カラーの前記結合部の上流側内部に前記筒状部の前記爪部が挿入されることにより、前記カラーと一体化される請求項2に記載の車両の燃料タンクの逆流防止装置。
【請求項5】
内部を燃料が通過可能であり、外壁に爪部を有する筒状部と、開閉可能な弁体から構成される樹脂製の逆流防止装置と、
上流側先端部には外側に拡がる鍔部と、下流側先端部には内側に向けられた結合部と、前記鍔部と前記結合部の間の外周部に突部を有する金属製または樹脂製の筒状のカラーとからなり、
前記逆流防止装置の前記爪部を前記カラーの前記結合部に挿入することにより前記逆流防止装置と前記カラーを一体化し、且つ前記逆流防止装置を下流側にして、樹脂製の燃料タンクのロアパイプに挿入して装着することを特徴とする車両の燃料タンクの逆流防止装置の取付機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等車両の給油口から燃料タンクに至る間、若しくは燃料タンクの入り口近傍に配置され、燃料タンク内部の燃料が給油口方向に逆流することを防止する逆流防止装置および逆流防止装置の取付機構に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の逆流防止装置(逆止弁)として、図8に示すように、逆止弁100は、弁体200、弁ケース300およびばね230の3部品とからなる。弁体200は、棒状の支軸210と、円を直線で切欠いた形(かまぼこ形)でその外周が円弧状部分221と直線状部分222とからなる板状の弁板220と、軸心が同一になるように並んだ二つの巻回部231が連結部233を介して連結され、両方の巻端部232が延出された形状のばね230とで構成されている。支軸210は弁板220の面に対して所定間隔離れて平行に取付けられている。ばね230は、二つの巻回部231が支軸210の両端部に外挿され、連結部233が弁板220に当接し、巻端部232が弁ケース300に係合するように取付けられる。
【0003】
弁体200は、支軸210を軸心として回動可能であると共に、ばね230により弁ケース300の弁座315に当接する方向に常時付勢されているので、給油口から給油した燃料が燃料タンクに向かって流れるときは、流体の圧力がばね230の力に対抗して弁板220を押し、流路を開放し、給油口から燃料タンクに向かって燃料が流れることができる。また、給油が終了すれば、自然に弁ケース300の弁座315に当接して閉まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-158243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の逆流防止装置の組付け方法は、発明の詳細な説明の記載および図面を参酌すれば、次の通りと考えられる。まず、ばね230の二つの巻回部231を押し拡げた状態で弁体200の支軸210の両端部から挿入する。挿入後、ばね230の二つの巻回部231は、弁板220の二つの板状アーム211の外側に位置する。
【0006】
次に、ばね230の連結部233を弁板220の板状アーム211の下部の所定の位置に当接させる。最後に、ばね230の巻端部232が弁ケース300の弁座315近傍に係合するように弁体200の支軸210を弁ケース300の軸受部314に嵌め込んで組付けられる。
【0007】
したがって、特許文献1の逆流防止装置の組付け方法では、弁板220へのばね230の確実な挿入と固定、ばね230の巻端部232を弁ケース300の弁座315近傍への係合させることを考慮した弁板220を弁ケース300へ嵌め込む時の弁板220の嵌め込み角度などチェックポイントが多く、作業性や信頼性に問題がある。
【0008】
一方、1台の自動車は2万から3万点の部品から構成されており、重さがトン単位にもなる。各部品の軽量化や組付け等の簡素化を含むコスト低減については、一つひとつの部品単体についての効果は大きいものではないが、それらの総和は非常に大きな効果を生じるため、課題解決においては、軽量化や組付け等の簡素化を含むコスト低減を考慮する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、内部を燃料が通過可能な筒状部と、開閉可能な弁体から構成された樹脂製の逆流防止装置であって、筒状部は、弁体の回転軸に対応して設けられた軸受部と、弁体が接離する弁座と、筒状部の内壁であって、軸受部の上流側から突出し、下流方向に延在する弁体開閉腕を有し、弁体は、回転軸と、回転軸と一体化された弁板と、弁板および/または回転軸の上流側から突出し、筒状部の弁体開閉腕が当接し、弁体開閉腕に対して弁体を閉じる方向に力を働かせる弁体開閉腕ガイド部を有することを特徴とする車両の燃料タンクの逆流防止装置である。
【0010】
請求項1の本発明では、上記構造を有しているので、燃料の供給に伴い、弁体の弁板には燃料により下流側に力が加わり、筒状部の弁体開閉腕が、弁体の弁体開閉腕ガイド部により拡げられる方向に変位することにより、弁体が開くので、燃料を燃料タンクに供給することが可能になる。一方、筒状部の弁体開閉腕には弁体の弁体開閉腕ガイド部により弁体を閉じる方向に力が働いているので、弁体の開度を燃料供給量に応じて調整することが可能になる。そして、燃料の供給が終了すると、弁体の弁板には燃料による下流側への力が無くなるので、筒状部の弁体開閉腕が元の位置に向かい変位し、最終的に、弁体が弁座に当接して閉じる。したがって、簡易な構造の逆流防止装置を提供することができる。
【0011】
また、本発明では弁体と筒状部の2部品で構成できるので、ばねが不要になり、部品点数が削減される。また、組付けは、弁体の回転軸を筒状部の軸受部に装着するだけで完了するため、組付け工数も削減される。加えて、組付け時のチェックポイントも少なくなるので、組付けの信頼性が向上する。更には、コスト低減を図ることができる。
【0012】
請求項2の本発明は、筒状部の外周であり、弁体開閉腕の位置より下流側、且つ弁座の位置より上流側には、爪部が形成されている車両の燃料タンクの逆流防止装置である。請求項2の本発明では、記筒状部の外周には、爪部が形成されているので、逆流防止装置を、燃料タンクの給油口から燃料タンクに至る間のパイプ等に装着する場合に、逆流防止装置がパイプ等から抜けるのを防止することができる。
【0013】
燃料が供給され、弁体に燃料が当たり、逆流防止装置全体に下流側に力が加わった場合に、筒状部の弁体開閉腕が弁体の弁体開閉腕ガイド部により拡げられる方向に変位することに伴い、弁体開閉腕の付け根部には、筒状部を外側に押す力が発生する。爪部は、弁体開閉腕の位置より下流側、且つ弁座の位置より上流側に形成されているので、筒状部の爪部にも外側に押す力が発生することになり、燃料供給時に弁体に下流側に向かう力が発生したときにも、逆流防止装置がパイプ等から抜けることを防止することができる。
【0014】
請求項3の本発明は、筒状部の軸受部より下流側の内壁または/および弁体の下流側には、突起部が形成されている車両の燃料タンクの逆流防止装置である。請求項3の本発明では、筒状部の軸受部より下流側の内壁または/および弁体の下流側には、突起部が形成されているので、燃料の流量が急に増加し、その勢いによって、弁体に対して、大きな力が発生した場合であっても、弁体の下流部に形成された突起部が筒状部の内壁に当接、または、弁体が筒状部の軸受部より下流側の内壁に形成された突起部に当接、または、弁体の下流部に形成された突起部と軸受部より下流側の内壁に形成された突起部が当接して、弁体の開き過ぎを防止し、弁体開閉腕が弁体の弁体開閉腕ガイド部を乗り越え、弁体が元の位置に戻らなくなる不具合の発生を防止することができる。したがって、逆流防止装置の信頼性が向上する。
【0015】
請求項4の本発明は、金属製または樹脂製であり、上流側先端部には外側に拡がる鍔部と、下流側先端部は内側に曲げられた結合部が設けられたカラーを有し、カラーの結合部の上流側内部に筒状部の爪部が挿入されることにより、カラーと一体化される車両の燃料タンクの逆流防止装置である。
【0016】
請求項4の本発明では、金属製または樹脂製であり、上流側先端部には外側に拡がる鍔部と、下流側先端部は内側に曲げられた結合部が設けられたカラーを有し、カラーの結合部の上流側内部に筒状部の爪部が挿入されることにより、カラーと一体化されるので、特に燃料タンクのロアパイプ内、若しくは燃料タンクの入り口近傍に逆流防止装置を装着することが可能になる。
【0017】
請求項5の本発明は、内部を燃料が通過可能であり、外壁に爪部を有する筒状部と、開閉可能な弁体から構成される樹脂製の逆流防止装置と、上流側先端部には外側に拡がる鍔部と、下流側先端部には内側に向けられた結合部と、鍔部と結合部の間の外周部に突部を有する金属製または樹脂製の筒状のカラーとからなり、逆流防止装置の爪部をカラーの結合部に挿入することにより逆流防止装置とカラーを一体化し、且つ逆流防止装置を下流側にして、樹脂製の燃料タンクのロアパイプに挿入して装着することを特徴とする車両の燃料タンクの逆流防止装置の取付機構である。
【0018】
請求項5の本発明では、上記取付機構により、逆流防止装置とカラーを一体化し、カラーの上流側を持ち、燃料タンクのロアパイプ内、若しくは燃料タンクの入口近傍などの手の届きにくい場所に逆流防止装置を装着することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
筒状部に形成された弁体開閉腕と、弁体に形成された弁体開閉腕に対して弁体を閉じる方向に力を働かせる弁体開閉腕ガイド部との組み合わせによる簡易な構造により、弁体の開度を燃料供給量に応じて調整でき、部品点数が削減され、組付けが容易であり、信頼性が高く、且つ低コストの逆流防止装置を提供することができる。また、カラーとの組み合わせにより、樹脂製の燃料タンクのロアパイプに挿入し、ロアパイプ内もしくは燃料タンクの入り口近傍に逆流防止装置を装着することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態を示すもので、逆流防止装置の筒状部を上流側から見た時の斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態を示すもので、逆流防止装置の筒状部を下流側から見た時の斜視図である。
図3】本発明の第1の実施形態を示すもので、逆流防止装置の弁体の、(a)は、上流側から見た時の平面図、(b)は側面図である。
図4】本発明の第1の実施形態を示すもので、弁体を筒状部に装着した逆流防止装置であり、弁体が閉じている場合の断面模式図である。
図5】本発明の第1の実施形態を示すもので、弁体を筒状部に装着した逆流防止装置であり、弁体が開いている場合の断面模式図である。
図6】本発明の第2の実施形態を示すもので、逆流防止装置とカラーを一体化することに関し、(a)はカラーを下流側から見た時の斜視図、(b)は逆流防止装置とカラーを一体化したときの断面模式図である。
図7】本発明の第3の実施形態を示すもので、逆流防止装置とカラーを一体化し、樹脂製の燃料タンクのロアパイプに装着した場合の断面模式図である。
図8】従来の逆流防止装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1から図5は、本発明の第1の実施形態を示すものである。逆流防止装置1は、樹脂製の弁体2と、樹脂製の筒状部3の2部材からなる。なお、樹脂としては、燃料に対する耐腐食性を有するものであれば、特に限定されないが、成形のしやすさを考慮した場合、熱可塑性の樹脂が好ましく、燃料に対する耐腐食性に加え、機械的強度に優れたポリアセタールがさらに好ましい。
【0022】
まず、弁体2について、以下に説明する。図3(a)に示すように、弁体2は円の中心線Xから変位した位置に棒状の回転軸21と、円を直線で切り欠いた形でその外周が円弧状部22と直線状部23とからなる板状の弁板24が一体に成形されている。なお、弁板24の円弧状部22の形状は、後述する筒状部3に設けられる弁座34の形状に合わせるように形成すればよい。また、図3の弁板24では、図1図2の筒状部3に形成される弁座34の形状に合わせるために、円の中心線Xに対して回転軸21と反対側に、筒状部3の外径に相当する突出円弧状部25が円弧状部22の外側に突出して形成されている。
【0023】
図3図4および図5に示すように、弁体2の上流側には、円の中心線Y上であって、回転軸21および弁板24から突出した弁体開閉腕ガイド部26が形成されている。弁体開閉腕ガイド部26の後述する筒状部3の弁体開閉腕32が当接する側は、回転軸21上から凸円弧状に突出している。ここで、弁体開閉腕ガイド部26の突出高さは、弁体開閉腕32が最も変位したとき、すなわち、弁体2が最も開いたときに、移動した弁体開閉腕32と弁体開閉腕ガイド部26との当接部分が弁体開閉腕ガイド部26を乗り越えない高さになるように設計されている。
【0024】
なお、回転軸21上から突出した弁体開閉腕ガイド部26の弁体開閉腕32が当接する側の形状は、筒状部3の弁体開閉腕32が弁体開閉腕ガイド部26に当接し、弁体開閉腕32に対して弁体2を閉じる方向に力が働き、燃料供給量に対応して弁体2がスムーズに開閉できれば、上記の凸円弧状には限られない。
【0025】
また、図3図4および図5において、弁体開閉腕ガイド部26の弁体開閉腕32が当接しない側は、弁板24に向けなだらかに傾斜し、端部においてほぼ弁板24と同じ高さになっている。なお、その形状は、限定されず、弁板24に向け略垂直形状でもよく、成形のしやすさを考慮すればよい。
【0026】
さらに、弁体開閉腕ガイド部26を形成する位置は、本実施形態では、回転軸21上から突出して形成されているが、弁板24の円弧状部22の大きさと回転軸21の位置、弁体開閉腕32の形状および変位の程度と弁体開閉腕32の強度等を考慮して形成すればよく、回転軸21から突出することには限定されず、弁板24上からであってもよい。
【0027】
また、図3(a)における弁体開閉腕ガイド部26の幅は、各部品の公差、弁体2の回転軸21と筒状部3の軸受部31の組付け精度等を考慮すると、弁体開閉腕ガイド部26上を弁体開閉腕32が当接しながら移動するときに、弁体開閉腕ガイド部26がねじれて変位しない、すなわち、図3(a)において、弁体開閉腕32が中心線Y方向に沿って変位することが可能な幅を有する必要がある。
【0028】
図3(b)に示すように、弁板24の下流側には、後述する筒状部3に形成される2か所の突起部33(図2)と当接する位置に突起部27が形成されている。この突起部27は、燃料の流量が急に増加し、その勢いによって、弁板24に対して、大きな力が発生した場合に、筒状部3の突起部33と当接し、弁体2の開き過ぎを防止し、筒状部3の弁体開閉腕32が弁体2の弁体開閉腕ガイド部26を乗り越え、弁体2が元の位置に戻らなくなる不具合の発生を防止するためである。
【0029】
なお、筒状部3の突起部33を弁板24と当接させて上記の目的を達成する場合は、突起部27は不要である。
【0030】
また、弁体開閉腕32の強度が十分であり、燃料の流量が急に増加し、その勢いによって、弁板24に対して大きな力が発生した場合でも、弁体開閉腕32が弁体2の弁体開閉腕ガイド部26を乗り越え、弁体2が元の位置に戻らなくなる不具合発生の心配のない場合は、突起部27は不要である。
【0031】
一方、図3(b)において、上下対称の形状になるように、弁体開閉腕ガイド部26と同じ形状を弁体2の下流側に、突起部27と同じ形状を弁体2の上流側に形成すると、弁体2を筒状部3に組み付けるときに、弁体2の上下方向を確認する必要がないので、組付け効率が向上する。
【0032】
次に、筒状部3について、以下に説明する。図1図2図4および図5に示すように、筒状部3は、内部に弁体2の回転軸21を装着するための軸受部31、軸受部31の上流側から突出し、下流方向に延在する弁体開閉腕32、軸受部31より下流側に突起部33、弁体2の円弧状部22が接離する弁座34が形成されている。また、筒状部3の外周であり、内部の弁体開閉腕32が突出する位置の下流側であり、且つ弁座34が形成されている位置の上流側には、爪部35が形成されている。
【0033】
弁体開閉腕32は、幅方向において、図3(a)における円の中心線Xと平行に突出ており、図4に示すように、筒状部3の内壁から略垂直若しくはやや下流側に突出した後、凸円弧状部を有すると共に、下流側且つ筒状部3の中心方向に向け延設されている。また、先端部はさらに筒状部3の中心に向けて屈曲した形状になっており、屈曲した形状の手前の部分が、弁体2の弁体開閉腕ガイド部26に当接している。ここで、屈曲部分は、弁体開閉腕32が弁体2の弁体開閉腕ガイド部26に当接した状態で、スムーズに移動し、弁体2が開閉するのを可能としている。
【0034】
なお、弁体開閉腕32は、直線を繋いだ形状であってもよい。さらに、先端部の屈曲形状は無くてもよい。先端部の屈曲形状がない場合は、弁体開閉腕32が弁体2の弁体開閉腕ガイド部26に当接し、スムーズに移動し、弁体2が開閉することを考慮すると、弁体開閉腕32の先端部は面取りされていることが望ましい。
【0035】
弁座34は、筒状部3の内壁に形成された弁板24の円弧状部22が当接する部分と、筒状部3の下流側が切り欠かれ、弁板24の突出円弧状部25が当接する部分とから構成されている。弁板24に突出円弧状部25を設け、筒状部3の下流側を切り欠き、弁板24の突出円弧状部25が当接する部分を形成するのは、特に、逆流防止装置1を燃料タンク5内に設置し、弁体2が開いたときに、逆流防止装置1の下流側の空間が大きくなるような場合に、開いた弁板24の突出円弧状部25を介して燃料の供給流路が変更され、弁体2の少ない開度で燃料供給が可能となるからである。もちろん、弁体2が開いたときに、逆流防止装置1の下流側の空間が大きくならない場合は、弁体2において突出円弧状部25は不要であり、筒状部3の下流側の切り欠きも不要であり、弁座34は、筒状部3の内壁に周状に形成すれば良い。
【0036】
なお、弁板24の突起部27を筒状部3と当接させて上記の目的を達成する場合は、突起部33は不要である。
【0037】
筒状部3の軸受部31より下流側には、突起部33が2か所に形成されている。この突起部33は、燃料の流量が急に増加し、その勢いによって、弁板24に対して、大きな力が発生した場合に、弁体2の開き過ぎを防ぎ、弁体開閉腕32が弁体2の弁体開閉腕ガイド部26を乗り越え、弁体2が元の位置に戻らなくなる不具合の発生を防止するためである。
【0038】
さらに、前述の弁体2の突起部27と同様に、弁体開閉腕32の強度が十分であり、燃料の流量が急に増加し、その勢いによって、弁板24に対して大きな力が発生した場合でも、弁体開閉腕32が弁体2の弁体開閉腕ガイド部26を乗り越え、弁体2が元の位置に戻らなくなる不具合発生の心配のない場合は、突起部33は不要である。
【0039】
爪部35は、下流側の肉厚が厚い断面略三角形の形状になっており、後にパイプ等へ筒状部3を挿入するときに、挿入し易く、且つ挿入後に抜け難くなっている。また、爪部35が形成されている部分の筒状部3は3分割されており、その内の1つの内部に弁体開閉腕32が形成されている。爪部35が形成されている筒状部3の分割は、後にパイプ等へ筒状部3を挿入するときに、爪部35が形成されている筒状部3が内側に変位することにより、挿入を容易にするためである。
【0040】
次に、図4図5を用いて、本発明における弁体2の筒状部3への取付け、弁体開閉腕32と弁体開閉腕ガイド部26の動きを説明する。図3に示した弁体2を図1および図2に示した筒状部3に取付ける場合は、弁体2が少し開いた状態で、弁体2の弁体開閉腕ガイド部26により筒状部3の弁体開閉腕32を浮かせ、弁体2の回転軸21を筒状部3の軸受部31に装着する。筒状部3の弁体開閉腕32をやや浮かせることにより、筒状部3の弁体開閉腕32には、元の形状に戻ろうとする方向に力が発生しているので、装着後は、図4に示すように、弁体2の突出円弧状部25の上流側が、筒状部3の弁座34に当接するか、若干隙間を有した位置で固定される。
【0041】
なお、若干隙間を有した位置で固定された場合も、燃料供給後は、燃料タンク内の圧力が高くなるため、弁体2には下流側から力が加わり、弁体2は、筒状部3の弁座34に当接することになる。ここで、図4および以降の図において、記号「+」は弁体2の回転軸21の回転中心を示す。
【0042】
燃料が供給されると、図5に示すように、燃料の流れおよび重さにより、弁体2が開くと共に、筒状部3の弁体開閉腕32と弁体2の弁体開閉腕ガイド部26の当接部は、弁体開閉腕ガイド部26の上方に移動する。このとき、弁体開閉腕32には、弁体2を閉じる方向に力が働いているので、燃料の流れおよび重さとのバランスを取りながら弁体2の開度が調整される。
【0043】
また、燃料が最大流量に達した、若しくは予定した最大流量を越えた場合には、弁体2の突起部27と筒状部3の突起部33が当接する。その結果、弁体2のさらなる開きを防止することができ、弁体開閉腕32が弁体2の弁体開閉腕ガイド部26を乗り越え、弁体2が元の位置に戻らなくなる不具合の発生を防止することができる。
【0044】
燃料の供給が終了すると、弁体2の上流側には、燃料による力が生じなくなるので、筒状部3の弁体開閉腕32が図4に示す元の位置に戻り、弁体2が閉じ、燃料タンク内部の燃料が給油口方向に逆流することを防止することができる。
【0045】
図6は、本発明の第2の実施形態であり、図1から図4に示した逆流防止装置1をカラー4に装着して一体化するものである。カラー4は、金属製、具体的には、ステンレス製であり、図6(a)に示すように、その上流側先端部には外側に拡がる鍔部41が形成されている。また、下流側先端部は内側に曲げられた結合部42が形成されている。結合部42は直径の異なる2つの領域に分けられ、直径の大きい領域は、逆流防止装置1の筒状部3の爪部35を挿入する爪部挿入部43であり、直径の小さい領域は、筒状部3の爪部35と結合する爪部結合部44である。また、鍔部41と結合部42の間の外周部であり、結合部42近傍には、突部45が形成されている。なお、カラー4は樹脂で成形してもよい。樹脂としては、燃料に対する耐腐食性および後のパイプやホースとの締結などの機械的強度を有するものであれば、特に限定されない。
【0046】
図6(a)、(b)に示すように組付けられた逆流防止装置1を筒状部3の爪部35をカラー4の爪部挿入部43に挿入した後に、筒状部3を回転させると筒状部3の爪部35が爪部結合部44の内面に当接し、逆流防止装置1とカラー4が一体化される。これにより、カラー4の上流側、特に鍔部41を手で持ち、逆流防止装置1を下流側にして、燃料タンクのロアパイプ内、若しくは燃料タンクの入口近傍などの手の届きにくい場所に逆流防止装置を装着することが可能になる。
【0047】
図7は、本発明の第3の実施形態であり、上記の図1から図4に示した逆流防止装置1とカラー4を一体化したものを、実際に樹脂製の燃料タンク5のロアパイプ6内に装着する場合を示すものである。樹脂製の燃料タンク5は、例えば、高密度ポリエチレン樹脂を用い、ブロー成形により製造される。本実施形態においては、ロアパイプ6も同時に成形される。樹脂製の燃料タンク5は、炭化水素排出基準への対応として、高密度ポリエチレン樹脂を用いた樹脂本体層51の間に燃料透過バリア部52を使用した多層構造の燃料タンクである。また、燃料透過バリア部52には、例えば、ナイロンやEVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)が用いられる。
【0048】
まず、図1から図4に示した逆流防止装置1とカラー4を一体化し、逆流防止装置1を下流側にし、カラー4の上流側の鍔部41を手で持ち、ロアパイプ6の上流側から挿入し、ロアパイプ6の上流側端部と、カラー4の鍔部41を当接させる。次に、ロアパイプ6の外側にフィラーホース7を被せる。そして、最後に、フィラーホース7の外側からホースバンド8によってロアパイプ6にフィラーホース7を固定する。
【0049】
なお、本実施形態におけるカラー4の突部45は、フィラーホース7が被せられていない位置でロアパイプ6の内部と当接するように形成されている。これは、以下の理由による。カラー4の突部45により、カラー4の突部45とロアパイプ6との当接部において、ロアパイプ6には内側から外側の力が発生し、カラー4はロアパイプ6の上流側に抜け難くなっている。一方、フィラーホース7は、その外側からホースバンド8によってロアパイプ6に固定するので、この部分において、ロアパイプ6には外側から内側に力が発生している。
【0050】
カラー4の外周部に設けられた突部45が、フィラーホース7が被せられていないロアパイプ6の内部に当接する位置に形成されることにより、ロアパイプ6において、下流側では、突部45により内側から外側に力が発生しており、上流側では、フィラーホース7を介してホースバンド8による外側から内側への力が発生しているので、カラー4がロアパイプ6の上流側に抜けることをさらに抜け難くすることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 逆流防止装置
2 弁体
21 回転軸
22 円弧状部
23 直線状部
24 弁板
25 突出円弧状部
26 弁体開閉腕ガイド部
27 突起部
3 筒状部
31 軸受部
32 弁体開閉腕
33 突起部
34 弁座
35 爪部
4 カラー
41 鍔部
42 結合部
43 爪部挿入部
44 爪部結合部
45 突部
5 燃料タンク
51 樹脂本体層
52 燃料透過バリア部
6 ロアパイプ
7 フィラーホース
8 ホースバンド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8