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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】エチレン系ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/02 20060101AFI20220929BHJP
   C08F 4/64 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C08F10/02
C08F4/64
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2016574376
(86)(22)【出願日】2015-06-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-07-27
(86)【国際出願番号】 US2015038273
(87)【国際公開番号】W WO2016003880
(87)【国際公開日】2016-01-07
【審査請求日】2018-06-18
【審判番号】
【審判請求日】2020-11-27
(31)【優先権主張番号】62/018,863
(32)【優先日】2014-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ミリドゥラ・カプール
(72)【発明者】
【氏名】メフメット・デミローズ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ピー・フォンテーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ジャージー・クロシン
(72)【発明者】
【氏名】エンドレ・スズロミ
(72)【発明者】
【氏名】カール・エヌ・アイバーソン
(72)【発明者】
【氏名】ザック・ティー・リッカウェイ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ジェイ・ヤング
(72)【発明者】
【氏名】スーザン・ジー・ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】ルース・フィゲロア
【合議体】
【審判長】杉江 渉
【審判官】蔵野 雅昭
【審判官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/058639号
【文献】国際公開第2014/003926号
【文献】欧州特許第2491062号明細書
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F4/60-4/70
C08F6/00-246/00
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の特性、
a)1.3~2.6のZSVR値、
b)1.5~2.8のMWD、及び
c)25超50以下のタンデルタ(0.1rad/s、190℃)を含む、エチレン/α-オレフィンインターポリマーであるエチレン系ポリマーであって、
前記エチレン系ポリマーが、0.9g/10分以上のメルトインデックス(I2)を有し、
前記エチレン系ポリマーが、0.885~0.940g/ccの密度を有し、
前記α-オレフィンが、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、および4-メチル-1-ペンテンからなる群から選択される、エチレン系ポリマー。
【請求項2】
前記エチレン系ポリマーが、0.9~500g/10分のメルトインデックス(I2)を有する、請求項1に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項3】
前記エチレン系ポリマーが、60℃~100℃の温度で、CEF-コモノマー分布において単一ピークを有する、請求項1または2に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項4】
前記エチレン系ポリマーが、60℃~100℃の温度で、CEF-コモノマー分布において単一ピークを有し、25%ピーク高さでの前記ピーク幅が、30℃未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項5】
前記エチレン系ポリマーが、5.0~10のI10/I比を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項6】
前記エチレン系ポリマーが、1.7~2.5のMWDを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項7】
前記エチレン系ポリマーが、0.9~5g/10分のメルトインデックス(I2)を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項8】
前記エチレン系ポリマーが、1.3~2.1のZSVR値を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項9】
以下の特性、
a)1.34~1.68のZSVR値、
b)1.9~2.0のMWD、
c)30.1~44.2のタンデルタ(0.1rad/s、190℃)、
d)0.93~1.05g/10分のメルトインデックス(I2)
e)0.912~0.914g/ccの密度、
f)6.8~8.9℃のCEF:25%ピーク高さでのピーク幅、
を含む、エチレン/α-オレフィンインターポリマーであり、
前記α-オレフィンが、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、および4-メチル-1-ペンテンからなる群から選択される、エチレン系ポリマー。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2014年6月30日に出願され、参照により本明細書に組み込まれる、米国仮出願第62/018,863号の利益を主張する。
【0002】
ポリエチレン等のエチレン系ポリマーは、多種多様な物品の製造における使用で知られている。ポリエチレン重合プロセスは、様々な樹脂を異なる用途での使用に好適にする異なる物理的特性を有する、多種多様な結果として生じるポリエチレン樹脂を生成するための多くの方法において異なり得る。エチレンモノマー、及び随意に、典型的に3~10個の炭素原子を有する1つ以上のαオレフィンコモノマーが、1つ以上の触媒系の存在下、圧力下で、循環ポンプによりループ反応器内で循環される溶液相ループ反応器内でエチレン系ポリマーが生成され得ることが一般に知られている。エチレンモノマー、及び随意に1つ以上のコモノマーは、アルカンまたはイソアルカンなどの液体希釈剤中に存在する。水素が反応器に添加されることもある。エチレン系ポリマーを生成するための触媒系は、典型的に、クロミウム系触媒系、チーグラー・ナッタ触媒系、及び/または分子(メタロセンもしくは非メタロセンのいずれか)触媒系を含み得る。エチレン系ポリマーを開発する研究努力にもかかわらず、改善された特性を有する新たなエチレン系ポリマーの必要性が依然として存在する。これらの必要性は、以下の発明によって満たされた。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、以下の特性、
a)1.2~2.6のZSVR値、
b)1.5~2.8のMWD、及び
c)5.0~50のタンデルタ(0.1rad/s、190℃)を含むエチレン系ポリマーを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】1つの発明(発明9=発明11)ならびに2つの比較(比較3及び比較4)エチレン系ポリマーの従来のGPCプロファイルを示す。
図2】1つの発明(発明9=発明11)ならびに2つの比較(比較3及び比較4)エチレン系ポリマーのCEF(結晶化溶出分別-コモノマー分布)プロファイルを示す。
図3】1つの発明(発明9=発明11)ならびに2つの比較(比較3及び比較4)エチレン系ポリマーのタンデルタプロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
上述されるように、本発明は、以下の特性、
a)1.2~2.6のZSVR値、
b)1.5~2.8のMWD、及び
c)5.0~50のタンデルタ(0.1rad/s、190℃)を含むエチレン系ポリマーを提供する。
【0006】
エチレン系ポリマーは、本明細書に記載される2つ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0007】
MWD(=Mw/Mn)は、下記のように従来のGPC方法に従って測定される。
【0008】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、以下の特性、d)0.9g/10分未満、さらに0.8g/10分以下、さらに0.6g/10分以下のメルトインデックス(I2)、及び5.0超、さらに6.0超、さらに7.0超のタンデルタ(0.1rad/s、190℃)を有する。さらなる実施形態では、エチレン系ポリマーは、0.05以上、さらに0.1以上のメルトインデックスを有する。
【0009】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、以下の特性、e)0.9g/10分以上のメルトインデックス(I2)、及び15超、さらに20超、さらに25超のタンデルタ(0.1rad/s、190℃)、及び1.3~2.6、さらに1.3~2.5、さらに1.3~2.3のZSVR値を有する。さらなる実施形態では、エチレン系ポリマーは、10以下、さらに5.0以下、さらに2.0以下のメルトインデックスを有する。
【0010】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレン/α-オレフィンインターポリマーである。
【0011】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、0.885~0.940g/cc、さらに0.890~0.930g/cc、さらに0.892~0.920g/cc(1cc=1cm)の密度を有する。
【0012】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、0.05~500g/10分、さらに0.05~100g/10分、さらに0.1~50g/10分、さらに0.1~20g/10分、さらに0.1~5g/10分、さらに0.1~2g/10分のメルトインデックス(I2)を有する。
【0013】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、5.0~50、さらに7.0~45、さらに8.0~45のタンデルタ(0.1rad/s、190℃)を有する。
【0014】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、60℃~100℃、さらに60℃~95℃の温度で、CEF-コモノマー分布において単一ピークを有する。
【0015】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、25%ピーク高さでピークの幅が30℃(30度C)未満、25℃(25度C)未満、20℃(20度C)未満、最も好ましくは15℃(15度C)未満の単一ピークを有するCEFプロファイルを有する。
【0016】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、60℃~100℃の温度で、CEF-コモノマー分布において単一ピークを有し、ピークは、25%ピーク高さで30℃(30度C)未満、25℃(25度C)未満、20℃(20度C)未満、最も好ましくは15℃(15度C)未満のピークの幅を有する。
【0017】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、60℃~95℃の温度で、CEF-コモノマー分布において単一ピークを有し、ピークは、25%ピーク高さで30℃(30度C)未満、25℃(25度C)未満、20℃(20度C)未満、最も好ましくは15℃(15度C)未満のピークの幅を有する。
【0018】
本発明エチレン系ポリマーは、本明細書に記載される2つ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0019】
本発明はまた、本明細書に記載される発明エチレン系ポリマーを含む組成物を提供する。
【0020】
発明組成物は、本明細書に記載される2つ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0021】
本発明はまた、発明組成物から形成される少なくとも1つの成分を含む物品を提供する。
【0022】
発明物品は、本明細書に記載される2つ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0023】
エチレン系ポリマー
「エチレン系ポリマー」という用語は、本明細書で使用される場合、多量のエチレンモノマー(ポリマーの重量に基づいて)を重合形態で含み、随意に1つ以上のコモノマーを含み得るポリマーを指す。微量の不純物(例えば、触媒残基)が、ポリマーに組み込まれ得る、及び/またはポリマー内に存在し得る。
【0024】
本発明エチレン系ポリマー、例えば、エチレンのホモポリマー(1種類のモノマーのみから調製されるポリマーを指すために用いられ、微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解を伴う)、インターポリマー、またはコポリマー、及び随意にα-オレフィンなどの1つ以上のコモノマーは、1.2~2.6、またはあるいは1.2~2.5、またはあるいは1.3~2.6、またはあるいは1.3~2.3、またはあるいは1.3~2.2、またはあるいは1.3~2.1の範囲のゼロ剪断粘度比(ZSVR)を有する。
【0025】
「エチレン系インターポリマー」という用語は、本明細書で使用される場合、多量の重合エチレンモノマー(ポリマーの重量に基づいて)、及び少なくとも1つのコモノマー、例えば、及びα-オレフィンを含むポリマーを指す。
【0026】
「エチレン系コポリマー」という用語は、本明細書で使用される場合、多量の重合エチレンモノマー(ポリマーの重量に基づいて)、及び1つのコモノマー(例えば、α-オレフィン)を2種類のみのモノマーとして含むポリマーを指す。
【0027】
「エチレン/α-オレフィンインターポリマー」という用語は、本明細書で使用される場合、多量の重合エチレンモノマー(ポリマーの重量に基づいて)、及び少なくとも1つのα-オレフィンを含むインターポリマーを指す。
【0028】
「エチレン/α-オレフィンコポリマー」という用語は、本明細書で使用される場合、多量の重合エチレンモノマー(コポリマーの重量に基づいて)及びα-オレフィンを2種類のみのモノマーとして含むコポリマーを指す。
【0029】
一実施形態では、本発明エチレン系ポリマー、例えば、エチレンのホモポリマー、インターポリマー、またはコポリマー、及び随意に1つ以上のコモノマー、例えばα-オレフィンは、0.885~0.940g/cmの範囲の密度を有する。0.885~0.940g/cmの全ての個別の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、この密度は、下限0.885、0.888、0.890、または0.894g/cm~上限0.940、0.938、0.935、0.932、0.930、0.928、0.925、0.922、0.920、0.918、0.915、0.912、0.910、または0.905g/cmであり得る。
【0030】
一実施形態では、本発明エチレン系ポリマー、例えば、エチレンのホモポリマー、インターポリマー、またはコポリマー、及び随意に1つ以上のコモノマー、例えばα-オレフィンは、(従来のGPC法に従って測定される)1.5~2.8の範囲の分子量分布(M/M)を有し、例えば、分子量分布(M/M)は、1.5~2.7の範囲であり得るか、またはあるいは、分子量分布(M/M)は、1.5~2.6、またはあるいは1.6~2.7、またはあるいは1.6~2.6、またはあるいは1.6~2.5、またはあるいは1.7~2.7、またはあるいは1.7~2.6、またはあるいは1.7~2.5、またはあるいは1.7~2.2の範囲であり得る。
【0031】
一実施形態では、本発明エチレン系ポリマー、例えば、エチレンのホモポリマー、インターポリマー、またはコポリマー、及び随意に1つ以上のコモノマー、例えばα-オレフィンは、20,000g/モル以上の範囲、例えば、20,000~350,000g/モル、さらに50,000~300,000g/モル、さらに80,000~250,000g/モル、さらに90,000~200,000g/モルの範囲の重量平均分子量(M)を有する。
【0032】
一実施形態では、本発明エチレン系ポリマー、例えば、エチレンのホモポリマー、インターポリマー、またはコポリマー、及び随意に1つ以上のコモノマー、例えばα-オレフィンは、0.05~500g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有する。0.05~500g/10分の全ての個別の値及び部分範囲が本明細書に組み込まれ、本明細書に開示され、例えば、メルトインデックス(I)は、下限0.05、0.1、0.5、0.2、0.5、1、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、10、15、20、30、40、50、60、80、90、100、または150g/10分~上限0.9、1、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、10、15、20、30、40、50、60、80、90、100、200、または500g/10分であり得る。
【0033】
一実施形態では、本発明エチレン系ポリマー、例えば、エチレンのホモポリマー、インターポリマー、またはコポリマー、及び随意に1つ以上のコモノマー、例えばα-オレフィンは、5.0~10の範囲のメルトフロー比(I10/I)を有する。5~10の全ての個別の値及び部分範囲が本明細書に組み込まれ、本明細書に開示され、例えば、メルトフロー比(I10/I)は、下限5.0、5.2、5.3、5.4、または5.5~上限7.0、7.5、7.8、8.0、8.2、8.5、9.0、または10であり得る。
【0034】
一実施形態では、エチレン系ポリマー、例えば、エチレンのホモポリマー、インターポリマー、またはコポリマー、及び随意に1つ以上のコモノマー、例えばα-オレフィンは、1000C当たり0~3長鎖分岐(LCB)の範囲の長鎖分岐頻度を有する。
【0035】
一実施形態では、本発明エチレン系ポリマー、例えば、エチレンのホモポリマー、インターポリマー、またはコポリマー、及び随意に1つ以上のコモノマー、例えばα-オレフィンは、本発明エチレン系ポリマー100万部当たり少なくとも0.01重量部の、本発明触媒系から残留する金属残渣及び/または金属酸化物残渣をさらに含み得る。本発明エチレン系ポリマー中の触媒系から残る金属残渣及び/または金属酸化物残渣は、X線蛍光(XRF)によって測定することができ、参照基準に対して較正される。
【0036】
本発明エチレン系ポリマー、例えばエチレンのインターポリマーまたはコポリマー、及び随意に1つ以上のコモノマー、例えばα-オレフィンは、ポリマーの重量に基づいて、1つ以上のα-オレフィンコモノマー由来の48重量%未満の単位を含み得る。48重量%未満の全ての個別の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、本発明エチレン系ポリマーは、1つ以上のα-オレフィンコモノマー由来の37重量%未満の単位、またはあるいは、1つ以上のα-オレフィンコモノマー由来の30重量%未満の単位、またはあるいは、1つ以上のα-オレフィンコモノマー由来の23重量%未満の単位、及びα-オレフィンコモノマー由来の少なくとも0重量%の単位、またはあるいは、α-オレフィンコモノマー由来の少なくとも1.3重量%の単位、またはあるいは、α-オレフィンコモノマー由来の少なくとも2.8重量%の単位、またはあるいは、α-オレフィンコモノマー由来の少なくとも9.5重量%の単位を含み得る。
【0037】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレン/α-オレフィンインターポリマー、さらにエチレン/α-オレフィンコポリマーである。好適なα-オレフィンが後述される。
【0038】
本発明エチレン系ポリマー、例えばエチレンのインターポリマーまたはコポリマー、及び随意に1つ以上のコモノマー、例えばα-オレフィンは、ポリマー中の重合モノマー単位の総モルに基づいて、1つ以上のα-オレフィンコモノマー由来の20モル%未満の単位を含み得る。20モル%未満の全ての個別の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、本発明エチレン系ポリマーは、1つ以上のα-オレフィンコモノマー由来の13モル%未満の単位、またはあるいは、1つ以上のα-オレフィンコモノマー由来の9.5モル%未満の単位、またはあるいは、1つ以上のα-オレフィンコモノマー由来の7.0モル%未満の単位、及びα-オレフィンコモノマー由来の少なくとも0モル%の単位、またはあるいは、α-オレフィンコモノマー由来の少なくとも0.3モル%の単位、またはあるいは、α-オレフィンコモノマー由来の少なくとも0.7モル%の単位、またはあるいは、α-オレフィンコモノマー由来の少なくとも2.5モル%の単位を含み得る。
【0039】
α-オレフィンコモノマーは、典型的に、20個以下の炭素原子を有する。例えば、α-オレフィンコモノマーは、好ましくは3~10個の炭素原子、及びより好ましくは3~8個の炭素原子を有し得る。例示のα-オレフィンコモノマーとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、及び4-メチル-1-ペンテンが挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上のα-オレフィンコモノマーは、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンからなる群から、またはあるいは、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群から選択され得る。
【0040】
一実施形態では、本発明エチレン系ポリマー、例えば、エチレンのホモポリマー、インターポリマー、またはコポリマー、及び随意に1つ以上のコモノマー、例えばα-オレフィンは、ポリマーの重量に基づいて、エチレン由来の少なくとも52重量%未満の単位を含み得る。少なくとも52重量%の全ての個別の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、本発明エチレン系ポリマーは、エチレン由来の少なくとも63重量%の単位、またはあるいは、エチレン由来の少なくとも70重量%の単位、またはあるいは、エチレン由来の少なくとも77重量%の単位、またはあるいは、エチレン由来の少なくとも85重量%の単位、及びエチレン由来の最大100重量%の単位、またはあるいは、エチレン由来の最大98.7重量%の単位、またはあるいは、エチレン由来の最大97.2重量%の単位、またはあるいは、エチレン由来の最大90.5重量%の単位を含み得る。
【0041】
本発明エチレン系ポリマー、例えば、エチレンのホモポリマー、インターポリマー、またはコポリマー、及び随意に1つ以上のコモノマー、例えばα-オレフィンは、1つ以上の添加物をさらに含み得る。かかる添加物としては、帯電防止剤、色増強剤、染料、湿潤剤、顔料、一次抗酸化剤、二次抗酸化剤、加工助剤、UV安定剤、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明エチレン系ポリマーは、任意の量の添加物を含有してもよい。本発明エチレン系ポリマーは、本発明エチレン系ポリマー及び1つ以上の添加物の重量に基づいて、約0~約10合計重量パーセント、さらに0.1~10合計重量パーセントのかかる添加物を含み得る。本発明エチレン系ポリマーは、充填剤をさらに損ない得、この充填剤としては、有機充填剤または無機充填剤が挙げられ得るが、これらに限定されない。かかる充填剤、例えば、炭酸カルシウム、タルク、Mg(OH)は、本発明エチレン系ポリマーならびに1つ以上の添加物及び/または充填剤の重量に基づいて、約0~約20パーセント、さらに1~20パーセントのレベルで存在し得る。本発明エチレン系ポリマーは、1つ以上のポリマーとさらにブレンドされて、ブレンドを形成することができる。
【0042】
本発明エチレン系ポリマーは、本明細書に記載される2つ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0043】
本発明エチレン系ポリマーは、好ましくは溶液重合プロセスを使用し、1つ以上の反応器、例えばループ反応器、等温反応器、撹拌タンク反応器、バッチ反応器を並列、直列、及び/またはそれらの任意の組み合わせで使用して生成される。
【0044】
一般に、溶液相重合プロセスは、1つ以上の十分に撹拌された反応器、例えば1つ以上のループ反応器または1つ以上の球状等温反応器内で、120℃~300℃の範囲、例えば120または130または135または140または145または150または155または160℃~150または155または165または170または175または180または185または190または195または200または205または210または215または220または230または240または250℃の温度で、300~1500psiの範囲、例えば400~750psiの圧力で起こる。溶液相重合プロセスはまた、1つ以上の十分に撹拌された反応器、例えば1つ以上のループ反応器、または1つ以上の球状等温反応器内で、18g/L~1g/L、例えば、18または16または14または12または10または8または6g/L~11または9または7または5または3または1g/Lの範囲の反応器エチレン出口濃度で起こる。溶液相重合プロセスにおける滞留時間は、典型的に2~30分、例えば、10~20分の範囲である。エチレン、1つ以上の溶媒、1つ以上の触媒系、例えば、式Iの前駆触媒、随意に1つ以上の共触媒、及び随意に1つ以上のコモノマーを含む触媒系が、1つ以上の反応器に連続して供給される。例示の溶媒としては、イソパラフィンが挙げられるが、これに限定されない。例えば、かかる溶媒は、商品名ISOPAR EとしてExxonMobil Chemical Co.(Houston,Texas)から市販されている。次に、結果として生じるエチレン系ポリマー及び溶媒の混合物が反応器から除去され、エチレン系ポリマーが単離される。溶媒は、典型的に、溶媒回収装置、すなわち、熱交換器及び気液分離器ドラムによって回収され、次に重合系に再循環される。
【0045】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、溶液重合により、二重反応器システム、例えば、二重ループ反応器システム内で生成され得、ここで、エチレン、及び随意に1つ以上のα-オレフィンが、本明細書に記載される式Iの前駆触媒、及び随意に1つ以上の共触媒を含む触媒系の存在下で重合する。一実施形態では、エチレン系ポリマーは、溶液重合により、二重反応器システム、例えば、二重ループ反応器システム内で生成され得、ここで、エチレン、及び随意に1つ以上のα-オレフィンが、本明細書に記載される式Iの前駆触媒、及び随意に1つ以上の他の触媒を含む触媒系の存在下で重合する。本明細書に記載される触媒系は、第1の反応器または第2の反応器内で、随意に1つ以上の他の触媒と組み合わせて使用され得る。一実施形態では、エチレン系ポリマーは、溶液重合により、二重反応器システム、例えば、二重ループ反応器システム内で生成され得、ここで、エチレン、及び随意に1つ以上のα-オレフィンが、本明細書に記載される式Iの前駆触媒を含む触媒系の存在下で、これらの両方の反応器内で重合する。
【0046】
式Iの金属-配位子錯体を含む前駆触媒は、本明細書に記載される1つ以上の共触媒、例えば、カチオン形成共触媒、強ルイス酸、またはそれらの組み合わせと組み合わせることによって活性化されて活性触媒組成物を形成することができる。使用に好適な共触媒としては、ポリマーまたはオリゴマーアルミノキサン、特にメチルアルミノキサン、ならびに不活性、相溶性、非配位性、イオン形成化合物が挙げられる。好適な例示の共触媒としては、修飾メチルアルミノキサン(MMAO)、ビス(水素化獣脂アルキル)メチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1-)アミン、トリエチルアルミニウム(TEA)、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
別の実施形態では、本発明エチレン系ポリマー、例えばエチレンのホモポリマー、インターポリマー、またはコポリマー、及び随意に1つ以上のコモノマー、例えばα-オレフィンは、溶液重合により、単一反応器システム、例えば、単一ループ反応器システム内で生成され得、ここで、エチレン、及び随意に1つ以上のα-オレフィンが1つ以上の触媒系の存在下で重合する。
【0048】
上述されるように、一実施形態では、エチレン系ポリマーは、以下、
A)少なくとも1つの共触媒と、
B)式(I)の金属-配位子錯体を含む前駆触媒との反応生成物を含む少なくとも1つの触媒系の存在下で、少なくともエチレンを重合させることを含むプロセスによって形成され、
【0049】
【化1】
【0050】
式中、
Mが、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムであり、各々が独立して、+2、+3、または+4の形式的酸化状態であり、nが、0~3の整数であり、nが0である場合、Xが不在であり、
各Xが独立して、(C-C40)ヒドロカルビル、(C-C40)ヘテロヒドロカルビル、もしくはハロゲン化物であり、各Xが独立して、中性、モノアニオン性、もしくはジアニオン性の単座配位子であるか、または
2つのXが一緒になって、中性、モノアニオン性、もしくはジアニオン性の二座配位子を形成し、
X及びnが、式(I)の前記金属-配位子錯体が全体的に中性であるような方法で選択され、
各Zが独立して、酸素原子、硫黄原子、-N[(C-C40)ヒドロカルビル]-、または-P[(C-C40)ヒドロカルビル]-であり、
Lが、置換もしくは非置換(C-C40)ヒドロカルビレン、または置換もしくは非置換(C-C40)ヘテロヒドロカルビレンであり、
Lについて、前記(C-C40)ヒドロカルビレンが、式(I)中のR21とR22を連結する1炭素原子~10炭素原子リンカー骨格を含む部分(それにLが結合される)を有するか、または
Lについて、前記(C-C40)ヘテロヒドロカルビレンが、式(I)中のR21とR22を連結する1原子~10原子リンカー骨格を含む部分を有し、前記(C-C40)ヘテロヒドロカルビレンの前記1原子~10原子リンカー骨格の前記1~10個の原子の各々が独立して、以下、i)炭素原子、ii)各ヘテロ原子が独立して、-O-もしくは-S-である、ヘテロ原子、またはiii)-S(O)-、-S(O)-、-Si(R-、-Ge(R-、-P(R)-、もしくは-N(R)-から選択される置換基であって、式中、各Rが独立して、置換もしくは非置換(C-C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C-C30)ヘテロヒドロカルビルである、前記置換基のうちの1つであり、
21及びR22が各々独立して、CまたはSiであり、
~R20が各々独立して、以下、置換もしくは非置換(C-C40)ヒドロカルビル、置換もしくは非置換(C-C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、-S(O)R、-S(O)、-N=C(R、-OC(O)R、-C(O)OR、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R、ハロゲン原子、及び水素原子からなる群から選択され、式中、各Rが独立して、置換もしくは非置換(C-C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C-C30)ヘテロヒドロカルビルであり、
17が水素原子である場合、R18が、置換もしくは非置換(C-C40)ヒドロカルビル、置換もしくは非置換(C-C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、-S(O)R、-S(O)、-N=C(R、-OC(O)R、-C(O)OR、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R、ハロゲン原子、または水素原子であり、式中、各Rが独立して、置換もしくは非置換(C-C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C-C30)ヘテロヒドロカルビルであるか、あるいは
18が水素原子である場合、R17が、置換もしくは非置換(C-C40)ヒドロカルビル、置換もしくは非置換(C-C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、-S(O)R、-S(O)、-N=C(R、-OC(O)R、-C(O)OR、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R、ハロゲン原子、または水素原子であり、式中、各Rが独立して、置換もしくは非置換(C-C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C-C30)ヘテロヒドロカルビルであり、かつ/あるいは
19が水素原子である場合、R20が、置換もしくは非置換(C-C40)ヒドロカルビル、置換もしくは非置換(C-C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、-S(O)R、-S(O)、-N=C(R、-OC(O)R、-C(O)OR、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R、ハロゲン原子、または水素原子であり、式中、各Rが独立して、置換もしくは非置換(C-C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C-C30)ヘテロヒドロカルビルであるか、あるいは
20が水素原子である場合、R19が、置換もしくは非置換(C-C40)ヒドロカルビル、置換もしくは非置換(C-C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、-S(O)R、-S(O)、-N=C(R、-OC(O)R、-C(O)OR、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R、ハロゲン原子、または水素原子であり、式中、各Rが独立して、置換もしくは非置換(C-C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C-C30)ヘテロヒドロカルビルであり、
式Iについて、R~R22のうちの2つ以上が、随意に、1つ以上の環構造を形成することができ、各環構造が、いずれの水素原子も除く3~50個の原子を環内に有し、
式Iについて、1つ以上の水素原子が、1つ以上の重水素原子で随意に置換されてもよい。
【0051】
式Iの前駆触媒は、本明細書に記載される2つ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0052】
本明細書で使用される場合、R1=R、R2=R、R3=Rなどである。当該技術分野で既知のように、Oは酸素であり、Sは硫黄であり、Siはケイ素であるなどである。
【0053】
一実施形態では、式Iについて、R17が水素原子である場合、R18が、置換もしくは非置換(C-C40)ヒドロカルビル、置換もしくは非置換(C-C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、-S(O)R、-S(O)、-N=C(R、-OC(O)R、-C(O)OR、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R、またはハロゲン原子であり、式中、各Rが独立して、置換もしくは非置換(C-C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C-C30)ヘテロヒドロカルビルであるか、あるいは
18が水素原子である場合、R17が、置換もしくは非置換(C-C40)ヒドロカルビル、置換もしくは非置換(C-C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、-S(O)R、-S(O)、-N=C(R、-OC(O)R、-C(O)OR、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R、またはハロゲン原子であり、式中、各Rが独立して、置換もしくは非置換(C-C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C-C30)ヘテロヒドロカルビルであり、かつ/あるいは
19が水素原子である場合、R20が、置換もしくは非置換(C-C40)ヒドロカルビル、置換もしくは非置換(C-C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、-S(O)R、-S(O)、-N=C(R、-OC(O)R、-C(O)OR、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R、またはハロゲン原子であり、式中、各Rが独立して、置換もしくは非置換(C-C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C-C30)ヘテロヒドロカルビルであるか、あるいは
20が水素原子である場合、R19が、置換もしくは非置換(C-C40)ヒドロカルビル、置換もしくは非置換(C-C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、-S(O)R、-S(O)、-N=C(R、-OC(O)R、-C(O)OR、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R、またはハロゲン原子であり、式中、各Rが独立して、置換もしくは非置換(C-C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C-C30)ヘテロヒドロカルビである。
【0054】
一実施形態では、式Iについて、各Zは酸素原子である。
【0055】
一実施形態では、式Iについて、R21及びR22は、各々C(炭素)である。
【0056】
一実施形態では、各Xは独立して、(C-C40)ヒドロカルビル、(C-C40)ヘテロヒドロカルビル、またはハロゲン化物である。さらなる実施形態では、両方のX基は同じである。
【0057】
一実施形態では、各Xは独立して、(C-C40)ヒドロカルビル、またはハロゲン化物である。さらなる実施形態では、両方のX基は同じである。
【0058】
一実施形態では、各Xは独立して、(C-C40)ヒドロカルビルである。さらなる実施形態では、両方のX基は同じである。
【0059】
一実施形態では、各Xは独立して、(C-C)アルキル、さらにエチルまたはメチル、さらにメチルである。さらなる実施形態では、両方のX基は同じである。
【0060】
一実施形態では、式Iについて、Lは、以下、-CHCHCH-、
-CHCH-、または-CH-、さらに-CHCH-または-CH-、さらに-CH-から選択される。
【0061】
一実施形態では、式Iについて、各(C-C40)ヒドロカルビル及び各(C-C40)ヘテロヒドロカルビルは置換されていない。
【0062】
一実施形態では、式Iについて、少なくとも1つの(C-C40)ヒドロカルビル、及び/または少なくとも1つの(C-C40)ヘテロヒドロカルビルは独立して、少なくとも1つのR置換基上で置換され、各R置換基が独立して、以下、ハロゲン原子、ポリフルオロ置換基、ペルフルオロ置換基、FC-、FCHO-、FHCO-、FCO-、(RSi-、(RGe、(R)O-、(R)S-、(R)S(O)-、(R)S(O)-、(RP-、(RN-、(RC=N-、NC-、(R)C(O)O-、(R)OC(O)-、(R)C(O)N(R)-、または(RNC(O)-から選択され、各Rが独立して、置換もしくは非置換(C-C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C-C30)ヘテロヒドロカルビルである。
【0063】
一実施形態では、式Iについて、各(C-C40)ヒドロカルビル、及び各(C-C40)ヘテロヒドロカルビルは独立して、少なくとも1つのR置換基上で置換され、各R置換基が独立して、以下、ハロゲン原子、ポリフルオロ置換基、ペルフルオロ置換基、FC-、FCHO-、FHCO-、FCO-、(RSi-、(RGe、(R)O-、(R)S-、(R)S(O)-、(R)S(O)-、(RP-、(RN-、(RC=N-、NC-、(R)C(O)O-、(R)OC(O)-、(R)C(O)N(R)-、または(RNC(O)-から選択され、各Rが独立して、置換もしくは非置換(C-C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C-C30)ヘテロヒドロカルビルである。
【0064】
一実施形態では、R~R22のうちの2つ以上が、1つ以上の環構造を形成しない。
【0065】
一実施形態では、式Iは、1つ以上の重水素原子を含有しない。
【0066】
一実施形態では、式Iについて、前駆触媒は、以下のI1~I76、
【0067】
【化2-1】
【0068】
【化2-2】
【0069】
【化2-3】
【0070】
【化2-4】
【0071】
【化2-5】
【0072】
【化2-6】
【0073】
【化2-7】
【0074】
【化2-8】
【0075】
からなる群から選択される。
【0076】
さらなる実施形態では、式Iについて、前駆触媒は、以下のI1~I20、さらにI1~I12、さらにI1~I6からなる群から選択される。
【0077】
一実施形態では、式Iについて、R、R、R、R、R、R、R10、R12、R13、及びR15は、各々水素である。
【0078】
一実施形態では、式Iについて、Mはジルコニウムまたはハフニウムであり、nは2であり、各Xは独立して、(C-C40)ヒドロカルビル、(C-C40)ヘテロヒドロカルビル、またはハロゲン化物であり、R、R、R、R、R、R、R10、R12、R13、及びR15は、各々水素である。
【0079】
一実施形態では、式Iについて、Mはジルコニウムであり、各Zは酸素原子である。
【0080】
一実施形態では、式Iについて、R及びR16は各々独立して、以下のi)~v)、
【0081】
【化3】
【0082】
から選択される。
【0083】
さらなる実施形態では、R及びR16の両方が同じである。構造i)~v)の各々において、点線(---)は、式Iの残りの構造に付着した場合の点を示す。
【0084】
一実施形態では、式Iについて、R及びR16は各々独立して、以下のi)~ii)から選択される。さらなる実施形態では、R及びR16の両方が同じである。
【0085】
実施形態では、式Iについて、R17またはR18が水素原子であり、他方が置換もしくは非置換(C-C40)ヒドロカルビル、置換もしくは非置換(C-C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、-S(O)R、-S(O)、-N=C(R、-OC(O)R、-C(O)OR、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R、またはハロゲン原子であり、式中、各Rが独立して、置換もしくは非置換(C-C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C-C30)ヘテロヒドロカルビルである。さらなる実施形態では、R19またはR20が水素原子であり、他方が置換もしくは非置換(C-C40)ヒドロカルビル、置換もしくは非置換(C-C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、-S(O)R、-S(O)、-N=C(R、-OC(O)R、-C(O)OR、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R、またはハロゲン原子であり、式中、各Rが独立して、置換もしくは非置換(C-C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C-C30)ヘテロヒドロカルビルである。
【0086】
一実施形態では、R17またはR18が水素であり、他方が非置換ヒドロカルビルである。さらなる実施形態では、R19またはR20が水素であり、他方が非置換ヒドロカルビルである。
【0087】
一実施形態では、式Iについて、R17、R18、R19、及びR20は各々独立して、非置換(C-C40)ヒドロカルビルである。さらなる実施形態では、R17、R18、R19、及びR20は各々独立して、非置換(C-C30)ヒドロカルビル、さらに非置換(C-C20)ヒドロカルビル、さらに非置換(C-C10)ヒドロカルビル、さらに非置換(C-C)ヒドロカルビル、さらに非置換(C-C)ヒドロカルビルである。
【0088】
一実施形態では、式Iについて、R及びR14は各々独立して、非置換(C-C40)ヒドロカルビルである。さらなる実施形態では、R及びR14は各々独立して、非置換(C-C30)ヒドロカルビル、さらに非置換(C-C20)ヒドロカルビル、さらに非置換(C-C10)ヒドロカルビル、さらに非置換(C-C)ヒドロカルビル、さらに非置換(C-C)ヒドロカルビルである。
【0089】
一実施形態では、式Iについて、R及びR11は各々独立して、非置換(C-C40)ヒドロカルビルまたはハロゲンである。さらなる実施形態では、R及びR11は各々独立して、非置換(C-C30)ヒドロカルビル、さらに非置換(C-C20)ヒドロカルビル、さらに非置換(C-C10)ヒドロカルビル、さらに非置換(C-C)ヒドロカルビル、さらに非置換(C-C)ヒドロカルビルである。別の実施形態では、式Iについて、R及びR11は各々独立して、ハロゲン、さらにClまたはF、さらにFである。
【0090】
別の実施形態では、本発明は、上記の式Iの金属-配位子錯体を含む前駆触媒、及び1つ以上の共触媒を含む触媒系を提供する。
【0091】
ある特定の炭素原子含有化学基(例えば、(C-C40)アルキル)を説明するために使用される場合、括弧付きの表現(C-C40)は、「(C-C)」という形態によって表すことができ、化学基の非置換バージョンが、x個の炭素原子~y個の炭素原子を含むことを意味し、式中、各x及びyが独立して、化学基について記載される整数である。
【0092】
「置換」という用語は、化学化合物に関して本明細書で使用される場合、少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、O、S、N、Pなど)を含む置換基を指す。置換基としては、上記のR置換基、以下、ハロゲン原子、ポリフルオロ置換基、ペルフルオロ置換基、FC-、FCHO-、FHCO-、FCO-、(RSi-、(RGe-、(R)O-、(R)S-、(R)S(O)-、(R)S(O)-、(RP-、(RN-、(RC=N-、NC-、(R)C(O)O-、(R)OC(O)-、(R)C(O)N(R)-、及び(RNC(O)-(式中、Rは上述される)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
「非置換」という用語は、化学化合物に関して本明細書で使用される場合、少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、O、S、N、Pなど)を含む置換基の欠失を指す。
【0094】
「ヒドロカルビル」という用語は、本明細書で使用される場合、水素及び炭素原子のみを含有する単価(モノラジカルまたはラジカル)化学基を指す。
【0095】
「置換ヒドロカルビル」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの水素原子が少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換基で置換される、ヒドロカルビルを指す。
【0096】
「ヘテロヒドロカルビル」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの炭素原子またはCH基またはCH基が、ヘテロ原子、または少なくとも1つのヘテロ原子を含有する化学基で置換される、ヒドロカルビルを指す。ヘテロ原子としては、O、N、P、及びSが挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
「置換ヘテロヒドロカルビル」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの水素原子が少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換基で置換される、ヘテロヒドロカルビルを指す。
【0098】
「ヒドロカルビレン」という用語は、本明細書で使用される場合、水素及び炭素原子のみを含有する二価(ジラジカル)化学基を指す。
【0099】
「置換ヒドロカルビレン」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの水素原子が少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換基で置換される、ヒドロカルビレンを指す。
【0100】
「ヘテロヒドロカルビレン」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの炭素原子またはCH基またはCH基が、ヘテロ原子、または少なくとも1つのヘテロ原子を含有する化学基で置換される、ヒドロカルビレンを指す。ヘテロ原子としては、O、N、P、及びSが挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
「置換ヘテロヒドロカルビレン」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの水素原子が少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換基で置換される、ヘテロヒドロカルビレンを指す。
【0102】
いくつかの実施形態では、式(I)の金属-配位子錯体の化学基(例えば、X、L、R~R22など)の各々は、非置換であり得る(例えば、置換基Rを使用しない)。他の実施形態では、式(I)の金属-配位子錯体の化学基のうちの少なくとも1つは独立して、これらの置換基のうちの1つ以上(例えば、R)を含有する。好ましくは、全ての化学基を説明する場合、合計20個以下のR、より好ましくは合計10個以下のR、さらにより好ましくは合計5個以下のRが、式(I)の金属-配位子錯体中に存在する。本発明化合物が2つ以上の置換基Rを含有する場合、各Rは独立して、同じまたは異なる原子に結合される。
【0103】
本明細書で使用される場合、「(C-C40)ヒドロカルビル」という用語は、1~40個の炭素原子の炭化水素ラジカルを指す。各炭化水素ラジカルは独立して、芳香族(6個以上の炭素原子)または非芳香族、飽和または不飽和、直鎖または分岐鎖、環式(単環式及び多環式、二環式もしくは非環式を含む融合及び非融合多環式、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含むであり得、各炭化水素ラジカルは独立して、それぞれ別の炭化水素ラジカルと同じであるか、または異なる。各炭化水素ラジカルは、上で定義されるように、1つ以上のR置換基で随意に置換され得る。「(C-C30)ヒドロカルビル」は、「(C-C40)ヒドロカルビル」について上述されるものと同様に定義される。
【0104】
好ましくは、(C-C40)ヒドロカルビルは独立して、(C-C40)アルキル、または(C-C40)シクロアルキルである。より好ましくは、前述の(C-C40)ヒドロカルビル基の各々は独立して、最大20個の炭素原子(すなわち、(C-C20)ヒドロカルビル)、さらにより好ましくは最大12個の炭素原子を有する。さらに、(C-C40)ヒドロカルビルは、上で定義されるように、1つ以上のR置換基で随意に置換される。
【0105】
本明細書で使用される場合、「(C-C40)ヒドロカルビレン」という用語は、1~40個の炭素原子の炭化水素ジラジカルを指す。各炭化水素ジラジカルは独立して、芳香族(6個以上の炭素原子)または非芳香族、飽和または不飽和、直鎖または分岐鎖、環式(単環式及び多環式、二環式もしくは非環式を含む融合及び非融合多環式、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含むであり得、各炭化水素ジラジカルは独立して、それぞれ別の炭化水素ジラジカルと同じであるか、または異なる。さらに炭化水素ラジカルは、上で定義されるように、1つ以上のR置換基で随意に置換され得る。
【0106】
好ましくは(C-C40)ヒドロカルビレンは独立して、(C-C20)シクロアルキル-(C-C20)アルキレン、(C-C40)アリール、または(C-C20)アリール-(C-C20)アルキレンである。より好ましくは、前述の(C-C40)ヒドロカルビレン基の各々は独立して、最大20個の炭素原子(すなわち、(C-C20)ヒドロカルビル、さらにより好ましくは最大12個の炭素原子を有する。(C-C40)ヒドロカルビレンは、上で定義されるように、1つ以上のR置換基で随意に置換され得る。
【0107】
「(C-C40)ヘテロヒドロカルビル」という用語は、1~40個の炭素原子のヘテロ炭化水素ジラジカルを指す。各ヘテロ炭化水素は独立して、1つ以上のヘテロ原子、O、S、S(O)、S(O)、Si(R、Ge(R、P(R)、及びN(R)を含んでもよく、式中、独立して、各Rが非置換(C-C18)ヒドロカルビルであり、各Rが非置換(C-C18)ヒドロカルビルであり、各Rが非置換(C-C18)ヒドロカルビルである。各(C-C40)ヘテロヒドロカルビルは独立して、飽和もしくは不飽和、直鎖もしくは分岐鎖、環式(単環式及び多環式、融合及び非融合多環式等)もしくは非環式、またはそれらの2つ以上の組み合わせであってもよく、各々がそれぞれ互いに同じであるか、または異なる。「(C-C30)ヒドロカルビル」は、「(C-C40)ヘテロヒドロカルビル」について上述されるものと同様に定義される。
【0108】
「(C-C40)ヘテロヒドロカルビレン」という用語は、1~40個の炭素原子のヘテロ炭化水素ジラジカルを指す。各ヘテロ炭化水素は独立して、1つ以上のヘテロ原子、O、S、S(O)、S(O)、Si(R、Ge(R、P(R)、及びN(R)を含んでもよく、式中、独立して、各Rが非置換(C-C18)ヒドロカルビルであり、各Rが非置換(C-C18)ヒドロカルビルであり、各Rが非置換(C-C18)である。各(C-C40)ヘテロヒドロカルビレンは独立して、非置換もしくは置換(例えば、1つ以上のRによって)、芳香族もしくは非芳香族、飽和もしくは不飽和、直鎖もしくは分岐鎖、環式(単環式及び多環式、融合及び非融合多環式等)もしくは非環式、またはそれらの2つ以上の組み合わせであり、各々がそれぞれ互いに同じであるか、または異なる。
【0109】
好ましくは、(C-C40)ヘテロヒドロカルビルは独立して、(C-C40)ヘテロアルキル、(C-C40)ヒドロカルビル-O-、(C-C40)ヒドロカルビル-S-、(C-C40)ヒドロカルビル-S(O)-、(C-C40)ヒドロカルビル-S(O)-、(C-C40)ヒドロカルビル-Si(R-、(C-C40)ヒドロカルビル-Ge(R-、(C-C40)ヒドロカルビル-N(R)-、(C-C40)ヒドロカルビル-P(R)-、(C-C40)ヘテロシクロアルキルである。
【0110】
好ましくは、(C-C40)ヘテロヒドロカルビレンは独立して、(C-C19)ヘテロシクロアルキル-(C-C20)アルキレン、(C-C20)シクロアルキル-(C-C19)ヘテロアルキレン、(C-C19)ヘテロシクロアルキル-(C-C20)ヘテロアルキレン、(C-C40)ヘテロアリール、(C-C19)ヘテロアリール-(C-C20)アルキレン、(C-C20)アリール-(C-C19)ヘテロアルキレン、または(C-C19)ヘテロアリール-(C-C20)ヘテロアルキレンである。
【0111】
「ハロゲン原子」という用語は、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、またはヨウ素原子(I)ラジカルを意味する。好ましくは、各ハロゲン原子は独立して、Br、F、またはClラジカルであり、より好ましくはFまたはClラジカルである。「ハロゲン化物」という用語は、フッ化物(F)、塩化物(Cl)、臭化物(Br)、またはヨウ化物(I)アニオンを意味する。
【0112】
好ましくは、式(I)の金属-配位子錯体において、S(O)またはS(O)ジラジカル官能基中にO-S結合以外のO-O、S-S、またはO-S結合は存在しない。より好ましくは、式(I)の金属-配位子錯体において、S(O)またはS(O)ジラジカル官能基中にO-S結合以外のO-O、N-N、P-P、N-P、S-S、またはO-S結合は存在しない。
【0113】
「飽和」という用語は、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、及び(ヘテロ原子含有基中の)炭素-窒素、炭素-リン酸、及び炭素-ケイ素二重結合を欠失することを意味する。
【0114】
「不飽和」という用語は、1つ以上の炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、及び(ヘテロ原子含有基中の)炭素-窒素、炭素-リン酸、及び/または炭素-ケイ素二重結合を含有することを意味する。
【0115】
Mは、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムである。一実施形態では、Mは、ジルコニウムまたはハフニウムであり、別の実施形態では、Mはハフニウムである。別の実施形態では、Mは、ジルコニウムである。いくつかの実施形態では、Mは、+2、+3、または+4の形式的酸化状態である。いくつかの実施形態では、nは、0、1、2、または3である。各Xは独立して、中性、モノアニオン性、もしくはジアニオン性の単座配位子であるか、または2つのXが一緒になって、中性、モノアニオン性、もしくはジアニオン性の二座配位子を形成する。X及びnは、式(I)の金属-配位子錯体が全体的に中性であるような方法で選択される。いくつかの実施形態では、各Xは独立して、単座配位子である。一実施形態では、2つ以上のX単座配位子が存在する場合、各Xは同じである。いくつかの実施形態では、単座配位子は、モノアニオン性配位子である。モノアニオン性配位子は、-1の正味形式的酸化状態を有する。各モノアニオン性配位子は独立して、水素化物、(C-C40)ヒドロカルビルカルバニオン、(C-C40)ヘテロヒドロカルビルカルバニオン、ハロゲン化物、硝酸塩、HC(O)O、(C-C40)ヒドロカルビルC(O)O、HC(O)N(H)、(C-C40)ヒドロカルビル-C(O)N(H)、(C-C40)ヒドロカルビルC(O)N((C-C20)ヒドロカルビル)、R、R、R、R、R、またはRSiであってもよく、式中、各R、R、及びRは独立して、水素、(C-C40)ヒドロカルビル、もしくは(C-C40)ヘテロヒドロカルビルであるか、またはR及びRが一緒になって、(C-C40)ヒドロカルビレンもしくは(C-C40)ヘテロヒドロカルビレンを形成し、Rは、上で定義されるとおりである。
【0116】
いくつかの実施形態では、Xの少なくとも1つの単座配位子は、中性配位子である。一実施形態では、中性配位子は、RNR、ROR、RSR、またはRPRである中性ルイス塩基基であり、式中、各Rは独立して、水素、(C-C40)ヒドロカルビル、[((C-C10)ヒドロカルビル)]Si、[(C-C10)ヒドロカルビル]Si(C-C10)ヒドロカルビル、または(C-C40)ヘテロヒドロカルビルであり、各R及びRが独立して、上で定義されるとおりである。
【0117】
いくつかの実施形態では、各Xは独立して、ハロゲン原子、非置換(C-C20)ヒドロカルビル、非置換(C-C20)ヒドロカルビルC(O)O-、またはRN-である単座配位子であり、式中、R及びRの各々は独立して、非置換(C-C20)ヒドロカルビルである。いくつかの実施形態では、各単座配位子Xは、塩素原子、(C-C10)ヒドロカルビル(例えば、(C-C)アルキルもしくはベンジル)、非置換(C-C10)ヒドロカルビルC(O)O-、またはRN-であり、式中、R及びRは各々独立して、非置換(C-C10)ヒドロカルビルである。
【0118】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つのXが存在し、2つのXが一緒になって、二座配位子を形成する。いくつかの実施形態では、二座配位子は、中性二座配位子である。一実施形態では、中性二座配位子は、式(RC=C(R)-C(R)=C(Rのジエンであり、式中、各Rが独立して、H、非置換(C-C)アルキル、フェニル、またはナフチルである。いくつかの実施形態では、二座配位子は、モノアニオン性モノ(ルイス塩基)配位子である。一実施形態では、モノアニオン性モノ(ルイス塩基)配位子は、式(D)、R-C(O)=CH-C(=O)-R(D)の1,3-ジオネートであってもよく、式中、各Rが独立して、H、非置換(C-C)アルキル、フェニル、またはナフチルである。いくつかの実施形態では、二座配位子は、ジアニオン性配位子である。ジアニオン性配位子は、-2の正味形式的酸化状態を有する。一実施形態では、各ジアニオン性配位子は独立して、炭酸塩、シュウ酸塩(すなわち、CC(O)O)、(C-C40)ヒドロカルビレンジカルバニオン、(C-C40)ヘテロヒドロカルビレンジカルバニオン、または硫酸塩である。
【0119】
前述のとおり、Xの数及び電荷(中性、モノアニオン性、ジアニオン性)は、式(I)の金属-配位子錯体が全体的に中性であるように、Mの形式的酸化状態に応じて選択される。
【0120】
いくつかの実施形態では、各Xは同じであり、式中、各Xは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2,2-ジメチルプロピル、トリメチルシリルメチル、フェニル、ベンジル、またはクロロである。いくつかの実施形態では、nは2であり、各Xは同じである。
【0121】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つのXは異なる。いくつかの実施形態では、nは2であり、各Xは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2,2-ジメチルプロピル、トリメチルシリルメチル、フェニル、ベンジル、及びクロロのうちの異なるものである。
【0122】
整数nは、Xの数を示す。一実施形態では、nは2または3であり、少なくとも2つのXは独立して、モノアニオン性単座配位子であり、第3のXは、存在する場合、中性単座配位子である。いくつかの実施形態では、nは2であり、少なくとも2つのXが一緒になって、二座配位子を形成する。いくつかの実施形態では、二座配位子は、2,2-ジメチル-2-シラプロパン-1,3-ジイルまたは1,3-ブタジエンである。
【0123】
いくつかの実施形態では、各Zは独立して、O、S、-N[(C-C40)ヒドロカルビル]-、または-P[(C-C40)ヒドロカルビル]-である。いくつかの実施形態では、各Zは異なる。いくつかの実施形態では、1つのZがOであり、1つのZが-N(CH)-である。いくつかの実施形態では、1つのZがOであり、1つのZがSである。いくつかの実施形態では、1つのZがSであり、1つのZが-N[(C-C40)ヒドロカルビル]-(例えば、-N(CH)-)である。いくつかの実施形態では、各Zは同じである。いくつかの実施形態では、各ZはOである。いくつかの実施形態では、各ZはSである。いくつかの実施形態では、各Zは-N[(C-C40)ヒドロカルビル]-(例えば、-N(CH)-)である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つ、及びいくつかの実施形態では,各Zは、-P[(C-C40)ヒドロカルビル]-(例えば、-P(CH)-)である。
【0124】
いくつかの実施形態では、Lは、以下、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CH(CH)CHCH(CH)-、-CH(CH)CH(CH)CH(CH)-、-CHC(CHCH-、1,3-シクロペンタン-ジイル、または1,3-シクロヘキサン-ジイルから選択される。いくつかの実施形態では、Lは、4炭素原子リンカー骨格を含む(例えば、Lは-CHCHCHCH-、-CHC(CHC(CHCH-、1,2-ビス(メチレン)シクロヘキサン、または2,3-ビス(メチレン)-ビシクロ[2.2.2]オクタンである)。いくつかの実施形態では、Lは、5炭素原子リンカー骨格を含む(例えば、Lは、-CHCHCHCHCH-または1,3-ビス(メチレン)シクロヘキサンである)。いくつかの実施形態では、Lは、6炭素原子リンカー骨格を含む(例えば、Lは、-CHCHCHCHCHCH-または1,2-ビス(エチレン)シクロヘキサンである)。
【0125】
前駆触媒を生成するためのプロセス
いくつかの実施形態では、本発明の配位子は、既知の手順を使用して調製され得る。具体的に、本発明の配位子は、配位子において所望される変型に応じて、様々な合成経路を使用して調製され得る。一般に、構築ブロックが調製され、次にそれらが一緒に架橋基と連結される。R基置換基における変型は、構築ブロックの合成に導入され得る。
【0126】
架橋における変型は、架橋基の合成と共に導入され得る。本発明の範囲内の特定の配位子は、下に示される一般スキームに従い調製されてもよく、構築ブロックが最初に調製され、次に一緒に連結される。これらの構築ブロックを使用するためのいくつかの異なる方法が存在する。一実施形態では、一般に、随意に置換されたフェニル環の各々は、別個の構築ブロックとして調製される。次に、この所望の随意に置換されたフェニルが組み合わせられてビフェニル構築ブロックになり、次に一緒に架橋される。別の実施形態では、随意に置換されたフェニル構築ブロックは、一緒に架橋され、次に追加の随意に置換されたフェニル構築ブロックが付加されて架橋ビアリール構造を形成する。出発物質または試薬は、一般に市販されているか、またはルーチン合成手段を介して調製される。
【0127】
下のスキームにおいて、配位子という用語は、前駆触媒への有機前駆体を指す。前記触媒は、配位子の、好適な金属(チタン、ジルコニウム、またはハフニウム)前駆体との反応から誘導される。主要な系に列記される一般的な略称は以下のとおりである:LGは、一般の脱離基であり、PGは、一般の保護基であり、一般的な例としては、以下のものが挙げられ、
【0128】
【化4】
【0129】
R、L、M、Z、Xは、上で定義されるとおりであり、Haはハロゲン化物、最も一般的にはBrまたはIであり、Meはメチルであり、Etはエチルであり、Phはフェニルであり、i-Prはイソプロピルであり、t-Buはtert-ブチルであり、t-Octはtert-オクチルであり、Tsはスルホン酸トルエンであり、THFはテトラヒドロフランであり、EtOはジエチルエーテルであり、DMFはジメチルホルムアミドであり、EtOAcは酢酸エチルであり、DIADはアゾジカルボン酸ジイソプロピルであり、GCはガスクロマトグラフィーであり、LCは液体クロマトグラフィーでありTLCは薄層クロマトグラフィーであり、NMRは核磁気共鳴であり、PTSAはパラトルエンスルホン酸であり、NISはN-ヨードスクシンイミドである。
【0130】
1a.2置換保護フェノールの調製(プロトコル1、炭素-窒素連結)。
【0131】
【化5】
【0132】
グローブボックス内の3首丸底フラスコに、所望の保護フェノール(約1.0当量)、所望のアリール-窒素化合物または窒素複素環(約0.6当量)、KPO(約2.1当量)、無水CuI(約0.03当量)、乾燥トルエン(約2mL/mmolのフェノール)、及び適切なN,N′-二置換ジアミン(約0.08当量)を充填する。次に、反応混合物を還流下で加熱する。反応の進行は、好適な技法(例えば、GC/MS、NMR分光法、TLC)によって監視することができ、場合によって、追加の無水CuI(約0.03当量)及びN,N′-二置換ジアミン(約0.08当量)を混合物に添加し、変換が完了したことが観察されるまで還流下での加熱を継続する。次に、反応を室温に放冷し、小シリカプラグで濾過し、THFで洗浄して濃縮し、粗生成物を得る。この粗物質を、再結晶化またはシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーのいずれかによって精製することができる。
【0133】
1b.2置換保護フェノールの調製(プロトコル2、炭素-炭素連結)。
【0134】
【化6】
【0135】
窒素雰囲気下に置いた3首丸底フラスコに、約等モル量のアリールハロゲン化物及びホウ素化アリール化合物、NaOH(アリールハロゲン化物に対して約6当量)、Pd(PPh(アリールハロゲン化物に対して約0.02当量)、脱気トルエン(アリールハロゲン化物1mmol当たり約5mL)、及び脱気水(アリールハロゲン化物1mmol当たり約1mL)を充填する。この系を窒素スパージし、次に、含有物を約24時間110℃に加熱する。反応物を冷却し、揮発物を真空下で除去する。残渣をEtO中に取り、ブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、シリカゲルのパッドで濾過した後、濃縮する。この粗物質を、再結晶化またはシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーのいずれかによって精製することができる。
【0136】
2.ホウ素化2置換保護フェノールの調製。
【0137】
【化7】
【0138】
オーブン乾燥した3首丸底フラスコに、窒素雰囲気下で所望の保護フェノール(約1.0当量)及び乾燥THF(保護フェノール1mmol当たり約6mL)を添加する。この溶液を約0~10℃(氷水浴)に冷却し、ヘキサン中の2.5M n-ブチルリチウム(約2.2当量)をゆっくり添加する。約4時間撹拌した後、所望のホウ酸エステルまたはホウ酸(約2.2当量)をゆっくり添加する。混合物を約0~10℃で1時間撹拌した後、反応物を室温に温め、次に約18時間撹拌する。反応混合物に、冷たい飽和重炭酸ナトリウム水溶液(保護フェノール1mmol当たり約6mL)を添加する。混合物を、いくつかの部分の塩化メチレンで抽出する。有機相を合わせ、冷たい飽和重炭酸ナトリウム水溶液、ブラインで洗浄した後、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮して粗生成物を得る。精製は、好適な溶媒(例えば、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン、またはメタノール)からの再結晶によって達成され得る。
【0139】
3a.対称架橋断片の調製。
【0140】
【化8】
【0141】
ミツノブ型:滴下漏斗を備えたオーブン乾燥した3首丸底フラスコを窒素雰囲気下に置き、それに、所望のアリールハロゲン化物(約1.0当量)、所望の接続単位(L部分及びR17~R22基を含有する、約0.45当量)、トリフェニルホスフィン(約1.0当量)、及びTHF(アリールハロゲン化物1mmol当たり約1.0mL)を充填する。次に、滴下漏斗に、DIAD(約1.0当量)及びTHF(アリールハロゲン化物1mmol当たり約0.5mL)を充填する。フラスコの内容物を、氷水浴中で約2~5℃に冷却し、滴下漏斗中のDIAD溶液を、反応温度を2~5℃で維持するような速度で添加する。結果として生じた混合物を2~5℃でさらに1時間撹拌し、続いてDIADを添加した後、周囲温度に温めて終夜撹拌する。揮発物を真空下で除去し、結果として生じた残渣をアルカン溶媒で抽出し、1M NaOH、水、1N HCl、及び水で連続的に洗浄する。有機部分を収集し、真空下で乾燥させる。精製は、好適な溶媒(例えば、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン、もしくはメタノール)からの再結晶、またはシリカゲル上のクロマトグラフィーによって達成され得る。
【0142】
2型:アセトン(アリールハロゲン化物1mmol当たり約7.0mL)中の所望のアリールハロゲン化物(約1.0当量)及び所望の接続単位(L部分及びR17~R22基を含有する、約0.45当量)の溶液に、KCO(約2.5当量)を添加する。次に、反応混合物を、還流下で約36時間加熱する。次に、結果として生じた懸濁液を冷却し、濾過し、真空下で濃縮する。精製は、好適な溶媒(例えば、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン、もしくはメタノール)からの再結晶、またはシリカゲル上のクロマトグラフィーによって達成され得る。
【0143】
3b.非対称架橋断片の調製。
【0144】
【化9】
【0145】
アセトン(アリールハロゲン化物1mmol当たり約7.0mL)中の所望のアリールハロゲン化物(約1.0当量)及び所望の接続単位(L部分及びR17~R22基、約1.5当量)の溶液に、KCO(約2.5当量)を添加する。次に、反応混合物を、還流下で約36時間加熱する。次に、結果として生じた懸濁液を冷却し、濾過し、真空下で濃縮する。精製は、好適な溶媒(例えば、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン、もしくはメタノール)からの再結晶、またはシリカゲル上のクロマトグラフィーによってこの段階で達成され得る。次に、得られた物質は、それをアセトン(アリールハロゲン化物1mmol当たり約7.0mL)中の別のアリールハロゲン化物(約1.0当量)、及びKCO(約2.5当量)と合わせ、還流下で加熱することによって類似の連続反応に供される。次に、結果として生じた懸濁液を冷却し、濾過し、真空下で濃縮する。精製は、好適な溶媒(例えば、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン、もしくはメタノール)からの再結晶、またはシリカゲル上のクロマトグラフィーによって達成され得る。
【0146】
5a.配位子の調製(同時二重スズキ反応)。
【0147】
【化10】
【0148】
オーブン乾燥した3首丸底フラスコに、窒素雰囲気下で、ビスアリールハロゲン化物(約1.0当量)及びトルエン(ビス-アリールハロゲン化物1mmol当たり約5mL)に溶解したホウ素化保護フェノール(約2.2当量)を、窒素雰囲気下で撹拌しながら添加する。これに、水(NaOH1mmol当たり約10mL)に溶解したNaOH(約1.0当量)を添加し、続いてPd(PPh(約0.04当量)を速やかに添加して、反応物を88℃に加熱する。反応の経過を、LCを介して監視することができる。完了したと見なしたときに、反応容器を周囲温度に冷却し、撹拌を停止する。結果として生じた二相性混合物から苛性層を除去し、20%HCl水溶液(ビス-アリールハロゲン化物1mmol当たり約1.5mL)を残りの有機部分に添加する。結果として生じた混合物を、還流下で約8時間加熱する。反応器を周囲温度に冷却し、水性相を除去して、有機層をブラインで洗浄した後、MgSO上で乾燥させる。この混合物を濾過し、濃縮して粗生成物を得て、これを好適な溶媒(例えば、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン、もしくはメタノール)からの再結晶、またはシリカゲル上のクロマトグラフィーによって精製することができる。
【0149】
5b.配位子の調製(連続スズキ反応)。
【0150】
【化11】
【0151】
オーブン乾燥した3首丸底フラスコに、窒素雰囲気下で、ビス-アリールハロゲン化物(約1.0当量)及びトルエン(ビス-アリールハロゲン化物1mmol当たり約5mL)に溶解したホウ素化保護フェノール(約1.0当量)を、窒素雰囲気下で撹拌しながら添加する。これに、水(NaOH1mmol当たり約10mL)に溶解したNaOH(約1.0当量)を添加し、続いて好適なパラジウム触媒(約0.04当量)を速やかに添加して、反応物を88℃に加熱する。反応の経過を、LCを介して監視することができる。完了したと見なしたときに、反応容器を周囲温度に冷却し、第2のホウ素化保護フェノール(約1.0当量)及び好適なパラジウム触媒(約0.04当量)。反応物を88℃に加熱し、反応の経過を、LCを介して再度監視することができる。完了したと見なしたときに、反応容器を周囲温度に冷却し、撹拌を停止する。結果として生じた二相性混合物から苛性層を除去し、20%HCl水溶液(ビス-アリールハロゲン化物1mmol当たり約1.5mL)を残りの有機部分に添加する。結果として生じた混合物を、還流下で約8時間加熱する。反応器を周囲温度に冷却し、水性相を除去して、有機層をブラインで洗浄した後、MgSO上で乾燥させる。この混合物を濾過し、濃縮して粗生成物を得て、これを好適な溶媒(例えば、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン、もしくはメタノール)からの再結晶、またはシリカゲル上のクロマトグラフィーによって精製することができる。
【0152】
7.前駆触媒の調製。
【0153】
【化12】
【0154】
オーブン乾燥した3首丸底フラスコに、窒素雰囲気下でMCl(約1.0当量)及び冷たいトルエンまたはヘキサン(配位子1mmol当たり約10mLを-40~-20℃で充填する。次に、XMgBr(約4.0当量)を冷たい懸濁液に添加し、結果として生じた混合物を2~15分間撹拌する。次に、配位子(約0.95当量)を添加し、反応混合物を周囲温度に温め、約4時間撹拌した後、真空下で乾燥させる。結果として生じた残渣をヘキサン及び/またはトルエンで抽出し、濾過し、真空下で乾燥させる。この粗物質を、好適な溶媒(例えば、ヘキサン、トルエン)からの再結晶によってさらに精製することができる。
【0155】
実験
以下の実施例は、本発明を例証するが、本発明の範囲を制限することを意図しない。
【0156】
発明触媒の合成についての特定の実施形態
実施例1.1a.配位子1(L1)の調製。
【0157】
【化13】
【0158】
丸底フラスコに、3,6-ジ-tert-ブチル-9-(2-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-9H-カルバゾール(7.285g、11.91mmol)及びメソ-4,4’-ペンタン-2,4-ジイルビス(オキシ))ビス(3-ブロモ-1-メチルベンゼン)(2.194g、4.96mmol)、及び60mLのTHFを充填する。NaCO(3.156g、29.78mmol)を30mLの水に溶解し、THF溶液に添加して二相溶液を形成し、次にNと共に15分間スパージした。窒素充填したグローブボックス内で、Pd(P(t-Bu)(0.076g、0.15mmol)を20mL脱気THFに溶解し、次に反応混合物に添加し、これを還流下、窒素下で24時間加熱した。反応混合物を周囲温度に放冷し、次に、水性相を分離して破棄した。THFを有機相から回転蒸発器上で除去し、ジクロロメタン(120mL)を残渣に添加して、溶液を120mLの水で洗浄した。ブライン(30mL)を添加して、相分離を補助した。
【0159】
有機相を収集し、真空下で蒸発乾燥させた。残渣を50mLのジエチルエーテルに溶解し、シリカゲルのプラグで濾過して、減圧下で乾燥蒸発させた。MeOH(100mL)、THF(40mL)、及び濃縮HCl(4滴)を残渣に添加し、溶液を2時間還流させた。反応混合物を室温に放冷したが、沈殿は起こらなかった。したがって、溶液を、回転蒸発器上でその原体積の約半分に濃縮し、オレンジ色の固体を形成させた。固体を濾過し、メタノールで洗浄して、真空下で乾燥させた(1.83g)。母液を蒸発乾燥させた後、残渣をジエチルエーテル(約15mL)に溶解し、約200mLのメタノール中に注いで、少量の沈殿物を形成させた。体積を真空下で半分に減少させ、より多くの固体を破壊させた。薄オレンジ色の固体を濾過し、メタノールで洗浄し、真空下で乾燥させて純粋な生成物(1.90g)を得た。第3の生成物群(0.26g)を母液から回収した。全体単離収率:3.99g、64%。H NMR(400MHz,CDCl) δ 8.16(t,J=2.1Hz,4H)、7.40(m,8H)、7.17(d,J=2.2Hz,2H)、7.11(t,J=8.1Hz,4H)、6.88(dd,J=8.4,2.2Hz,2H)、6.64(d,J=8.3Hz,2H)、6.22(s,2H)、4.43(m,2H)、2.31(s,6H)、2.09(dt,J=13.8,6.8Hz,1H)、1.75(s,4H)、1.64(dt,J=16.1,5.9Hz,1H)、1.47(s,18H)、1.45(s,18H)、1.39(s,12H)、1.08(d,J=6.0Hz,6H)、及び0.82(s,18H)。
【0160】
1b.前駆触媒1(I1)の調製。
【0161】
【化14】
【0162】
配位子(0.500g、0.40mmol)を、乾燥窒素雰囲気下で10mLのヘキサンに溶解し、溶液を、5mLのヘキサン中のZrCl(0.093g、0.40mmol)の撹拌懸濁液に添加した。MeMgBr(0.63mL、1.64mmol、EtO中2.6M)を、シリンジを介して周囲温度で滴加した。混合物を14時間撹拌した。反応混合物の色は、次第に黒色になった。懸濁液を濾過し、濾過液を真空下で蒸発乾燥させた。ヘキサン(10mL)を残渣に添加し、薄い懸濁液を濾過して、濾過液を真空下で蒸発乾燥させた。ヘキサンでの処理を繰り返し、生成物を真空下で完全に乾燥させて良好な純度のI1を黄褐色の固体(0.193g、35%)として得た。H NMR(400MHz,C):δ 8.69(t,J=2.0Hz,2H)、8.45(d,J=1.7Hz,1H)、8.40(d,J=1.7Hz,1H)、7.38-7.85(m,16H)、7.13(d,J=2.2Hz,1H)、7.08(d,J=2.3Hz,1H)、6.65(dd,J=8.4,2.1Hz,1H)、6.62(dd,J=8.3,2.1Hz,1H)、5.02(d,J=6.5Hz,1H)、4.85(d,J=6.8Hz,1H)、4.33(dt,J=13.2,6.8Hz,1H)、3.86(m,1H)、1.88(s,3H)、1.87(s,3H)、0.79-1.71(m,70H)、0.73(d,J=6.7Hz,3H)、0.54(d,J=6.7Hz,3H)、-0.70(s,3H)、及び-0.86(s,3H)。13C{H}NMR(101MHz,CDCl) δ 151.4、147.9、142.5、142.2、139.8、139.7、132.7、131.7、129.9、129.0、128.8、127.8、126.6、125.0、123.4、123.2、116.2、115.5、109.5、73.4、57.1、42.4、38.2、34.7、32.4、32.1、32.1、31.9、31.7、31.6、20.6、及び19.7。
【0163】
実施例2.2a.メソ-4,4′-ペンタン-2,4-ジイルビス(オキシ)ビス(1-(tert-ブチル)-3-ヨードベンゼン)の調製。
【0164】
【化15】
【0165】
丸底フラスコに、メソ-ジトシラート(3.1g、7.5mmol)、2-ヨード-4-t-オクチルフェノール(5.0g、15.1mmol)、及びDMF(100mL)を充填した。KCO(4.2g、30.1mmol)を添加し、反応物を還流下で1日加熱した。次に、揮発物をバルブ対バルブ蒸留によって除去し、茶色の固体を産生した。固体をEtO(250mL)中に取り、3M NaOH溶液(2×100mL)、ブライン(100mL)で洗浄した後、MgSO上で乾燥させた。反応混合液を濾過し、回転蒸発器上で濃縮して粗生成物を産生し、カラムクロマトグラフィー(SiO、ヘキサン/EtOAc 95:5)によってさらに精製して所望の生成物(1.6g、29%理論上5.5g)を得た。H NMR(400MHz,CDCl) δ 7.74(d,J=2.3Hz,2H)、7.28(dd,J=8.7,2.3Hz,1H)、6.87(d,J=8.7Hz,2H)、4.77-4.61(m,2H)、2.42(dt,J=13.8,6.8Hz,1H)、1.84(dt,J=14.0,5.9Hz,1H)、1.68(s,4H)、1.36(d,J=6.1Hz,6H)、1.33(s,12H)、0.74(s,18H)。
【0166】
2d.配位子2(L2)の調製。
【0167】
【化16】
【0168】
丸底フラスコに、メソ-4,4′-ペンタン-2,4-ジイルビス(オキシ))ビス(1-(tert-オクチル)-3-ヨードベンゼン))(0.790g、1.08mmol)及び9-(5-メチル-2-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)-9H-カルバゾール(1.052g、2.37mmol)、及び40mLのTHFを充填した。NaCO(0.686g、6.47mmol)を20mLの水に溶解し、THF溶液に添加して二相溶液を形成し、次にNで15分間スパージした。Pd(P(t-Bu)(0.017g、0.03mmol)を、ドライボックス内で6mL脱気THFに溶解し、次に反応混合物に添加し、これを還流下、窒素下で3日間加熱した。反応混合物を周囲温度に放冷した後、水性相を破棄し、回転蒸発器を使用してTHFを有機相から除去した。ジクロロメタン(80mL)を添加し、溶液を、20mLのブラインと混合した80mLの水で洗浄した。有機相を真空下で蒸発乾燥させ、残渣を50mLのジエチルエーテルに溶解し、シリカゲルのプラグで濾過し、真空下で蒸発乾燥させた。メタノール(80mL)、THF(15mL)、及び濃縮HCl(6滴)を添加し、溶液を終夜還流させた後、溶媒を真空下で除去し、残渣を少量のメタノールで滴定し、再度真空下で乾燥させた。結果として生じた物質を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーを介して精製し、ヘキサン中1%EtOAc→ヘキサン中5%EtOAcで勾配溶出し、純粋な配位子L2(0.820g、74%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ 8.15(dd,J=7.5,1.2Hz,4H)、7.40(d,J=2.5Hz,2H)、7.33(m,10H)、7.23(m,6H)、7.16(dd,J=8.5,2.3Hz,2H)、6.66(d,J=8.7Hz,2H)、6.23(s,2H)、4.52(m,2H)、2.47(s,6H)、2.22(m,1H)、1.74(s,4H)、1.71(m,1H)、1.38(d,J=6.1Hz,12H)、1.18(d,J=6.0Hz,6H)、及び0.75(s,18H)。13C{H}NMR(101MHz,CDCl) δ 151.1、148.3、144.0、141.3、141.2、131.7、130.3、130.3、129.2、129.1、127.19、126.8、125.6、125.6、125.2、123.3、123.2、120.2、120.6、119.5、113.8、110.3、110.2、72.7、57.0、42.7、38.1、32.4、31.8、31.5、20.7、及び19.8。
【0169】
2d.前駆触媒2(I2)の調製。
【0170】
【化17】
【0171】
配位子L4(0.500g、0.49mmol)を、乾燥窒素雰囲気下で10mLのトルエンに溶解し、溶液を、5mLのトルエン中のZrCl(0.114g、0.490mmol)の撹拌懸濁液に添加した。MeMgBr(0.77mL、2.00mmol、EtO中2.6M)を、シリンジを介して周囲温度で滴加した。混合物を2時間撹拌した。反応混合物の色は、次第に黒色になった。ヘキサン(5mL)を懸濁液に添加し、次に濾過して、濾過液を真空下で蒸発乾燥させた。トルエン(15mL)及びヘキサン(5mL)を残渣に添加し、薄い懸濁液を濾過して、濾過液を真空下で蒸発乾燥させ、高純度のI4(292mg、52%)を得た。H NMR(400MHz,C) δ 8.35(m,2H)、8.10(m,2H)、7.67(m,1H)、7.57-7.32(m,12H)、7.23-7.08(m,5H)、6.84(ddd,J=10.8,8.5,2.5Hz,2H)、5.04(d,J=8.5Hz,1H)、4.87(d,J=8.6Hz,1H)、4.04(m,1H)、3.68(m,1H)、2.22(s,6H)、1.76-1.60(m,4H)、1.24(s,3H)、1.22(s,3H)、1.21(s,3H)、1.19(s,3H)、0.76(s,9H)、0.75(s,9H)、0.50(d,J=6.2Hz,3H)、0.32(d,J=6.5Hz,3H)、-0.77(s,3H)、及び-0.91(s,3H)。
【0172】
実施例3.3a.3,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-9H-カルバゾールの調製。
【0173】
【化18】
【0174】
オーバーヘッド撹拌器、窒素ガス発泡器、及び滴下漏斗を備えた500mLの3首丸底フラスコに、20.02g(120.8mmol)のカルバゾール、49.82g(365.5mmol)のZnCl、及び300mLのニトロメタンを室温で充填した。結果として生じた濃茶色のスラリーに、49.82g(365.5mmol)の2-クロロ-2-メチルプロパン(別名、三級塩化ブチル)を、滴下漏斗から2.5時間の期間にわたって滴加した。添加を完了した後、結果として生じたスラリーを、さらに18時間撹拌し、反応混合物を800mLの氷冷水に注ぎ、塩化メチレン(3×500mL)で抽出した。合わせた抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、最初に回転蒸発によって、次に高真空下での蒸発によって濃縮してニトロメタンを除去した。結果として生じた残渣を、熱い塩化メチレン(70mL)、続いて熱いヘキサン(50mL)に溶解し、結果として生じた溶液を室温に冷却した後、それを冷蔵庫に終夜置いた。形成した結果として生じた固体を単離し、冷たいヘキサンで洗浄した後、高真空下で乾燥させて10.80g(32.0%)の所望の生成物をオフホワイトの結晶として得た。H NMR(400MHz,CDCl) δ 8.11(d,J=1.6Hz,2H)、7.75(s,1H)、7.48(dd,J=8.5,1.9Hz,2H)、7.31(d,J=8.5Hz,2H)、1.48(s,18H)。13C{H}NMR(101MHz,CDCl) δ 142.17(s)、137.96(s)、123.45(s)、123.28(s)、116.11(s)、109.97(s)、34.73(s)、32.09(s)。
【0175】
3b.2-ヨード-4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノールの調製。
【0176】
【化19】
【0177】
125mLのメタノール中の10.30g(50.00mmol)の4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノールの撹拌溶液に、0℃で7.48g(50.00mmol)のNaI及び2.00g(50.0mmol)のNaOHを添加した。結果として生じた混合物に、86mLの5%NaOCl水溶液(市販の漂白剤)を1時間の期間にわたって添加した。結果として生じたスラリーを、さらに1時間0℃で撹拌した後、30mLの10%Na水溶液を添加し、結果として生じた反応混合物を、希釈塩酸の添加によって酸性化した。結果として生じた混合物を塩化メチレンで抽出し、結果として生じた有機層をブラインで洗浄した後、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。揮発物を真空下で除去し、結果として生じた残渣を、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、ヘキサン中5体積パーセント(vol%)の酢酸エチルで溶出して、11.00g(66%)の所望の生成物を粘性油として得た。H NMR(CDCl) δ 7.60(d,J=2.5Hz,1H)、7.25(dd,J=8.5及び2.2Hz,1H)、6.90(d,J=8.5Hz,1H)、5.13(s,1H)、1.69(s,2H)、1.32(s,6H)及び0.74(s,9H)。13C{H}NMR(CDCl) δ 152.21、144.52、135.56、128.03、114.17、85.36、56.92、38.01、32.43、31.90及び31.64。GC/MS(m/e):332(M)。
【0178】
3c.2-(2-ヨード-4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノキシ)テトラヒドロ-2H-ピランの調製。
【0179】
【化20】
【0180】
5mLの塩化メチレン中の4.91g(14.8mmol)の4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノール及び1.50g(17.8mmol)の3,4-ジヒドロピランの撹拌溶液に、0℃で0.039g(0.205mmol)のパラ-トルエンスルホン酸一水和物を添加した。結果として生じた溶液を室温に温め、そこで約10分間撹拌した。次に、トリエチルアミン(0.018g、0.178mmol)を添加し、結果として生じた混合物を50mLの塩化メチレンで希釈し、各50mLの1M NaOH、水、及びブラインで連続的に洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して粗物質を得て、これをシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって、ヘキサン中の5vol%の酢酸エチルを使用して精製し、5.18g(93.12%)の所望の生成物を金色の油として得た。H NMR(CDCl) δ 7.74(d,J=2.3Hz,1H)、7.27(dd,J=2.3及び8.6Hz,1H)、6.99(d,J=8.6Hz,1H)、5.49(m,1H)、3.91(m,1H)、3.61(m,1H)、2.20-1.60(m,6H)、1.69(s,2H)、1.34(s,6H)及び0.75(s,9H)。13C{H}NMR(CDCl) δ 153.27、145.49、136.98、127.08、114.44、96.72、87.09、61.69、56.91、37.95、32.33、31.81、31.52、31.44、30.26、25.27、18.36。
【0181】
3d.3,6-ジ-tert-ブチル-9-(2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イルオキシ)-5-(2,4,4-トリメチル-ペンタン-2-イル)フェニル)-9H-カルバゾールの調製。
【0182】
【化21】
【0183】
撹拌棒及び凝縮器を備えた50mLの3首丸底フラスコに、N雰囲気下で、以下、20mLの乾燥トルエン、5.00g(12.01mmol)の2-(2-ヨード-4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン、3.56g(12.01mmol)の3,6-ジ-tert-ブチルカルバゾール、0.488g(2.56mmol)のCuI、7.71g(36.2mmol)のKPO、及び0.338g(3.84mmol)のN,N′-ジメチルエチレンジアミンを添加した。結果として生じた反応混合物を、還流下で48時間加熱し、冷却し、シリカゲルの床で濾過した。シリカゲルをテトラヒドロフラン(THF)ですすぎ、結果として生じた溶液を濃縮して粗残渣を得た。アセトニトリルからの再結晶化によって精製を達成し、4.57g(67.0%)の所望の生成物を白色固体として得た。H NMR(CDCl) δ 8.13(t,J=1.71Hz,1H)、7.48(d,J=2.4Hz,1H)、7.40(m,3H)、7.31(d,J=8.68Hz,1H)、7.14(d,J=8.68Hz,1H)、7.08(d,J=8.56Hz,1H)、5.22(t,J=2.81Hz,1H)、3.72(td,J=11.12及び2.8Hz,1H)、3.47(dt,J=11.12及び3.47Hz,1H)、1.75(s,2H)、1.474(s,9H)、1.472(s,9H)、1.394(s,3H)、1.391(s,3H)、1.37-1.12(m,6H)、0.82(s,9H)。13C{H}NMR(CDCl) δ 150.96、144.22、142.07、140.02、127.49、126.60、126.56、123.14、123.12、122.96、116.37、115.88、115.72、110.18、109.52、97.02、61.56、57.03、38.23、34.69、32.41、32.07、31.86、31.72、31.50、29.98、25.06、17.61。
【0184】
3e.3,6-ジ-tert-ブチル-9-(2-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-9H-カルバゾールの調製。
【0185】
【化22】
【0186】
40mLのTHF中2.5g(4.4mmol)のカルバゾール誘導体の撹拌溶液に、0℃、窒素雰囲気下で2.8mL(7.0mmol)のn-ブチルリチウム(ヘキサン中の2.5M溶液)を、5分間にわたって添加した。溶液を0℃でさらに3時間撹拌した。2-イソプロポキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(1.44mL、7.0mmol)をこれに添加し、撹拌を0℃でさらに1時間継続した。反応混合物をゆっくり室温に温め、18時間撹拌した。反応混合物を回転蒸発器によって濃縮乾燥させ、100mLの氷冷水を添加した。混合物を塩化メチレンで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶媒の除去に続いて、アセトニトリルからの再結晶化によって、2.4g(78.6%)の表題の生成物を白色固体として得た。H NMR(CDCl) δ 8.30-7.96(m,2H)、7.81(d,J=2.5Hz,1H)、7.58-7.32(m,3H)、7.14(d,J=8.6Hz,2H)、4.85(d,J=2.8Hz,1H)、2.76(td,J=11.0,2.7Hz,1H)、2.59(dd,J=7.9,3.5Hz,1H)、1.73(s,2H)、1.67-0.87(m,6H)、1.46(s,9H)、1.45(s,9H)、1.38(s,9H)、1.37(s,9H)、0.78(s,9H);13C{H}NMR(CDCl) δ 156.25、145.86、142.05、142.01、139.79、139.78、133.82、130.61、129.72、123.39、123.37、123.05、115.59、115.55、110.20、110.11、101.41、83.64、61.20、56.95、38.37、34.68、32.42、32.08、31.90、31.45、29.97、25.06、25.04、24.79、18.16。MS m/e 716.38(M+Na)。
【0187】
3f.メソ-4,4′-ペンタン-2,4-ジイルビス(オキシ)ビス(3-ブロモ-1-フルオロベンゼン)の調製。
【0188】
【化23】
【0189】
温度計、磁気撹拌器、滴下漏斗、及び窒素パッドを備えた2Lの3首丸底フラスコに、2,4-ペンタンジオール(30.46g、292.5mmol、1当量)、2-ブロモ-4-フルオロフェノール(114.39g、598.9mmol、2.04当量)、トリフェニルホスフィン(157.12g、599.0mmol、2.04当量)、及びTHF(600mL)を充填し、内容物を氷水浴中で2℃に冷却した。THF(130mL)中のDIAD(121.11g、598.9mmol、2.04当量)の溶液を、滴下漏斗中に、反応を5℃未満に維持するような速度で添加した(添加には約4時間を要した)。結果として生じた混合物を2-℃でさらに1時間撹拌し、試料をGC-MS分析のために採取したところ、反応が完了に近かったことを示した。終夜、周囲温度で撹拌した後、揮発物を減圧下で除去した。シクロヘキサン(700mL)を残渣に添加し、スラリーを室温で30分間撹拌した。不溶性固体を濾過し、シクロヘキサン(100mL×3)ですすいだ。シクロヘキサン溶液を1N NaOH(200mL)、水(200mL)、1N HCl(200mL)、水(500mL×2)で洗浄し、減圧下で濃縮して油残渣を得た。油残渣をヘキサン(100mL)に溶解し、次にシリカゲル(315g)のパッドを通過させ、ヘキサン(300mL)及びヘキサン-EtOAc(体積で20:1、ヘキサン2L+EtOAc 100mL)で溶出し、濃縮し、乾燥させて所望の底群(123.8g、収率94%)を得た。H NMR(400MHz,C) δ 7.14(dd,J=8.4,3.9Hz,2H)、6.64(dt,J=9.1,3.9Hz,2H)、6.48(dd,J=9.0,3.7Hz,2H)、4.22(m,2H)、2.17(dt,J=13.6,6.5Hz,1H)、1.45(dt,J=13.6,5.6Hz,1H)、及び0.98(d,J=6.1Hz,6H)。13C NMR(101MHz,CDCl) δ 156.9(d,J=235.8Hz)、150.9(d,J=2.8Hz)、120.9(d,J=25.8Hz)、115.62(d,J=7.7Hz)、114.9(d,J=21.5Hz)、113.7(d,J=10.1Hz)、72.8、42.7、及び19.6。19F NMR(376MHz,C) δ -121.33。
【0190】
3g.配位子3(L3)の調製。
【0191】
【化24】
【0192】
方法1:2Lの反応容器に、メソ-4,4′-ペンタン-2,4-ジイルビス(オキシ))ビス(3-ブロモ-1-フルオロベンゼン)(80g、177.7mmol)及び3,6-ジ-tert-ブチル-9-(2-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-9H-カルバゾール(271.3g、391.0mmol)を添加し、窒素雰囲気下で撹拌しながら800mLのトルエンに溶解した。これに、NaOH(100mLの水に溶解した42.7g、1.0mol)を添加し、続いてPd(PPh(8.21g、7.11mmol)を速やかに添加して、反応物を88℃に加熱した。反応の経過を、LCを介して、完了したと見なされるまで5時間マークで監視した。この時点で、反応容器をrt(室温)に冷却し、苛性層を除去し、200mLの20%HCl溶液を添加し、反応物を再度88℃に5時間加熱した。反応器を周囲温度に冷却し、水性相を除去し、有機層をブラインで洗浄し、MgSO上で乾燥させた。MgSOを除去するための濾過に続いて、回転蒸発を介した濃縮により、オフホワイトの固体を得て、これをアセトニトリルで洗浄し、残りの固体を真空下で乾燥させて、純粋なDOC-6163配位子(199.5g、収率89%)を得た。
【0193】
方法2(二段階手順)
PhP(1.05g、4mmol)、メソ-4,4′-ペンタン-2,4-ジイルビス(オキシ))ビス(3-ブロモ-1-フルオロベンゼン)(45.01g、100.0mmol)、アリコート336(0.326g)及びトルエン(500mL)を、冷水凝縮器、磁気撹拌器、温度計、及び窒素パッドを備えた2Lの3首丸底フラスコに油浴中で添加した。混合物を窒素で30分間スパージした。Pd(OAc)(449.02mg、2.0mmol、0.02当量)を添加し、混合物を、固体Pd(OAc)が溶解されるまで5~10分間撹拌する一方、窒素でスパージした。次に、2N NaOH(300mL、窒素で事前にスパージした)を窒素下で添加し、混合物を窒素で5分間スパージした。反応混合物を75~78℃に加熱し、400mLのトルエン(窒素で30分間スパージした)中の3,6-ジ-tert-ブチル-9-(2-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-9H-カルバゾール(156.64g、220mmol)の溶液を、3時間にわたってシリンジポンプを介して添加した。反応混合物を80~86℃で終夜(LCによって監視して、反応は4~6時間で完了した)、窒素雰囲気下、105℃の油浴中で加熱して、暗色混合物を得た。50℃に冷却した後、空気を反応混合物中に1時間泡立てて触媒を破壊した。次に、反応混合物を相切断のために沈下させた。底水性層を除去し、トルエン(100mL)で抽出した。トルエン相を水(500mL×2)で洗浄した。2N HCl(300mL、100mL 6N HCl+200mL HOから調製された)を、トルエン溶液に添加した。結果として生じた混合物を、80~86℃で、105~108℃の油浴中、窒素下で終夜撹拌した。反応混合物のLC分析は、THP基の脱保護が完了したことを示した。反応混合物を周囲温度に放冷した。底水性層を除去し、これを後次にトルエン(100mL)で抽出した。黄色から茶色のトルエン相を水(500mL×2)で洗浄した。トルエン溶液を、シリカゲルのパッド(60~100g)で濾過した。シリカゲル湿潤ケーキをトルエン(100mL)ですすいだ。わずかに黄色のトルエン溶液を、減圧下で回転蒸発器によって濃縮し、粘性残渣(~185.5g)を得た。アセトニトリル(500mL)を残渣に添加し、混合物を回転蒸発器上で、60℃で回転させた。粘性残渣を徐々に溶解し、透明なわずかに黄色の溶液を形成した。しばらくした後、溶液から白色固体が沈殿した。周囲温度に終夜冷却した後、固体を濾過によって回収し、アセトニトリル(200mL×2)で洗浄/すすぎ、吸引して真空オーブン内で乾燥させ、所望の生成物(115.5g、収率92.0%)を得た。H NMR(400MHz,C) δ 8.45(t,J=2.4Hz,4H)、7.50-7.56(m,6H)、7.41(d,J=8.8Hz,2H)、7.16(CDHにより不明瞭)、6.32(s,2H)、6.30(dd,J=9.3,4.7Hz,2H)、6.23(s,2H)、4.16(m,2H)、2.01(dt,J=14.3,6.9Hz,1H)、1.55(s,4H)、1.37(dt,J=14.2,5.0Hz,1H)、1.44(s,18H)、1.43(s,18H)、1.20(s,12H)、0.83(d,J=6.0Hz,6H)、及び0.80(s,18H)。13C{H}NMR(101MHz,C) δ 158.2(d,J=241.2Hz)、149.8(d,J=1.7Hz)、148.9、143.2、143.0、143.0、140.7(d,J=5.5Hz)、131.1(d,J=7.5Hz)、129.4、127.2、126.1、124.2(d,J=2.7Hz)、118.9(d,J=23.4Hz)、117.3(d,J=9.2Hz)、116.8、115.8(d,J=22.8Hz)、110.2(d,J=10.0Hz)、73.7、57.1、42.66、38.3、34.9、32.5、32.2、32.1、31.7、31.6、及び19.5。19F NMR(376MHz,C) δ -120.95。
【0194】
3g.前駆触媒3(I3)の調製。
【0195】
【化25】
【0196】
5Lの反応器に4.5Lのトルエンを充填し、-30℃に冷却した。これに、ZrCl(38.81g、166.8mmol)、続いてMeMgBr(211.8mLの3M溶液、635.5mmol)を添加した。結果として生じた混合物を5分間撹拌し、その後、配位子L3(199.5g、158.9mmol)を添加した。懸濁液を徐々に室温に温め、さらに3時間撹拌した後、濾過した。次にトルエンを真空下で除去し、I3を良好な純度のオフホワイトの固体として得た(定量的、234g)。H NMR(400MHz,C) δ 8.53(m,2H)、8.41(dd,J=2.0,12.0Hz,2H)、7.72(m,2H)、7.67(d,J=3.0Hz,1H)、7.57-7.61(m,6H)、7.44(ddd,J=2.9,8.1,9.4Hz,2H)、7.24(dd,J=2.0,14Hz,2H)、7.01(dd,J=3.7,8.9Hz,2H)、6.95(dd,4.0,7.3Hz,1H)、6.60(m,2H)、4.95(dd,J=4.4,8.2Hz,2H)、4.82(dd,J=4.4,8.2Hz,2H)、4.21(m,2H)、3.78(m,2H)、1.64(s,3H)、1.58(s,3H)、1.48(s,9H)、1.46(s,9H)、1.32(s,9H)、1.30(s,9H)、0.77-0.90(m,8H)、1.20-1.28(m,8H)、0.60(d,J=7.3Hz,3H)、0.41(d,J=7.3Hz,3H)、-0.72(s,3H)、及び-0.88(s,3H)。19F NMR(376MHz,C) δ -114.83。
【0197】
実施例4.4a.2-ブロモ-1-(メトキシメトキシ)-4-メチルベンゼンの調製。
【0198】
【化26】
【0199】
2-ブロモ-4-メチルフェノール(13.1g、70.0mmol)、ジメトキシメタン(35mL)、p-トルエン-スルホン酸(100mg)、及び塩化メチレン(300mL)を、還流下、窒素雰囲気下で3日間、活性化3Å分子篩を収容するSoxhlet凝縮器を使用して加熱した。分子篩は、24時間毎に新たに活性化したものに交換した。反応混合物を冷却し、揮発物を回転蒸発によって除去した。残渣を100mLのエーテル中に取り、100mLの2M水酸化ナトリウム溶液、100mLの水、及び100mLのブラインで連続して洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、シリカゲルの小床を通過させた。溶媒の除去により、14.5g(92%)の純粋な2を薄黄色の油として得て、これを次のステップに使用した。H NMR(CDCl) δ 7.40(m,1H)、7.07(m,2H)、5.25(s,2H)、3.55(s,3H)及び2.31(s,3H)。
【0200】
4c.9-(5-メチル-2-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)-9H-カルバゾールの調製。
【0201】
【化27】
【0202】
窒素充填したグローブボックス内で、9-(5-メチル-2((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)フェニル)-9H-カルバゾール(40g、0.11mol)を、300mLのTHFに溶解し、PhLi(74.6mL、0.13mol、n-BuO中1.8M)をゆっくり添加することによって脱プロトン化した。反応混合物を1時間撹拌した。2-イソプロポキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(25.1mL、0.12mol)をゆっくり添加し、反応混合物をさらに1時間撹拌した。真空下での溶媒除去により、油性残基を生じ、これを450mLのクロロホルムに溶解し、水で洗浄した(2×450mL)。有機層をMgSO上で乾燥させ、濾過し、濾過液を真空下で濃縮して暗色の油を得て、次にこれを600mLのヘキサンと混合して、約250mLに濃縮し、大量の薄茶色の固体を形成させた。固体を濾過し、真空下で乾燥させた(42g、78%)。H NMR(400MHz,CDCl) δ 7.99(m,2H)、7.59(d,J=2.3Hz,1H)、7.28(ddd,J=15.4,8.2,1.1Hz,2H)、7.14(m,5H)、4.78(t,J=3.0Hz,1H)、2.44(m,2H)、2.25(s,3H)、1.59(m,1H)、1.28(s,6H)、1.27(s,6H)、1.09(m,4H)、0.82(m,1H)。
【0203】
4d.メソ-4,4′-ペンタン-2,4-ジイルビス(オキシ)ビス(3-ブロモ-1-メチルベンゼン)の調製。
【0204】
【化28】
【0205】
温度計、磁気撹拌器、及び滴下漏斗を備えた2Lの3首丸底フラスコに、メソ-2,4-ペンタンジオール(30.50g、293mmol)、2-ブロモ-4-メチルフェノール(112.03g、599mmol)、トリフェニルホスフィン(157.12g、599mmol)、及びTHF(600mL)を充填した。次に、反応容器を窒素雰囲気下に置き、滴下漏斗にジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD、121.11g、599mmol)及びTHF(250mL)を充填した。フラスコの内容物を、氷水浴中で約2℃に冷却し、滴下漏斗内のDIAD溶液を、反応温度を2~5℃で維持するような速度で添加した(添加には約3.5時間を要した)。結果として生じた混合物を、2~5℃でさらに1時間撹拌し(試料をGC-MS分析のために採取したところ、反応が完了に近かったことを示した)、次に周囲温度に温めた。揮発物を減圧下で除去し、固体残渣を得た(~424g)。残渣を、シクロヘキサン(1000mL)を用いて35℃で、回転蒸発器上で30分間回転させることによって、真空にすることなく抽出した。このプロセスを、シクロヘキサン(350mL×3)を用いて35℃でさらに3回繰り返した。合わせたシクロヘキサン溶液を、1N NaOH(350mL×2)、水(500mL)、1N HCl(350mL)、及び水(500mL×2)で洗浄した。洗浄したシクロヘキサン溶液を、約300mLに濃縮し、シリカゲル(350g)のパッドを通過させ、ヘキサン/EtOAc(体積で20:1)で溶出し、濃縮し、乾燥させて所望の底群(119.0g、91.5%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl) δ 7.26(d,J=2.3Hz,2H)、7.04(dd,J=8.5,2.3Hz,2H)、6.94(d,J=8.5Hz,2H)、4、63(m,2H)、2.39(dt,J=13.8,6.7Hz,1H)、2.26(s,6H)、1.82(dt,J=14.1,5.9Hz,1H)、及び1.37(d,J=6.1Hz,6H)。13C{H}NMR(101MHz,CDCl) δ 152.1、133.9、131.8、115.2、114.77、112.9、72.5、42.9、20.3、及び20.0。
【0206】
4e.配位子4(L4)の調製。
【0207】
【化29】
【0208】
2Lの反応容器に、メソ-4,4′-ペンタン-2,4-ジイルビス(オキシ))ビス(3-ブロモ-1-メチル-ベンゼン)(40.0g、90.5mmol)及び9-(5-メチル-2-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)-9H-カルバゾール(96.2g、199.0mmol、2.2当量)を添加し、窒素雰囲気下で撹拌しながら300mLのトルエンに溶解した。これに、NaOH(100mLの水に溶解した21.7g、0.5mol、6当量)を添加し、続いてPd(PPh(4.18g、3.61mmol、0.04当量)を速やかに添加した。次に、完了するまで反応物を88℃に加熱した。反応の経過を、LCを介して、完了したと見なされるまで7時間マークで監視した。この時点で、反応容器を周囲温度に冷却し、苛性層を除去し、200mLの20%HCl溶液を添加し、反応物を還流下で5時間加熱した。反応器を周囲温度に冷却し、撹拌を停止して、水性層を除去した。有機層をブラインで洗浄し、MgSO上で乾燥させた後、濾過し、回転蒸発を介して濃縮してオフホワイトの固体を得た。粗残基をアセトニトリルで洗浄し、真空下で乾燥させて純粋なL2配位子(44.2g、収率60%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl) δ 8.13(d,J=7.6Hz,4H)、7.25(m,18H)、6.91(dd,J=8.3,2.0Hz,2H)、6.64(d,J=8.3Hz,2H)、6.30(s,2H)、4.45(m,2H)、2.41(s,6H)、2.32(s,6H)、2.16(m,1H)、1.68(m,1H)、及び1.14(d,J=6.1Hz,6H)。13C{H}NMR(101MHz,CDCl) δ 151.4、148.4、141.4、141.3、133.1、131.9、130.6、130.1、129.3、128.8、128.0、125.8、125.4、123.4、123.4、120.3、119.6、114.9、110.4、110.3、73.3、42.7、20.8、20.7、及び19.9。
【0209】
4f.前駆触媒4(I4)の調製。
【0210】
【化30】
【0211】
5Lの反応容器に3Lのトルエンを充填し、-30℃に冷却した。これに、ZrCl(29.6g、127mmol)、続いてMeMgBr(161mLの3M溶液、484mmol)を添加した。結果として生じた混合物を5分間撹拌し、その後、配位子(100g、121mmol)を添加した。懸濁液を徐々に室温に温め、さらに3時間撹拌した後、濾過した。濾過物を濃縮し、H NMR分光法を介して分析したところ、I4の存在を示したが低純度であった。次に、濾過ケーキを塩化メチレン(1.5L)で抽出し、濃縮して高純度のI4を得た(66g、収率58%)。H NMR(400MHz,CDCl) δ 8.30(dd,J=8.5,12.1Hz,2H)、8.12(dd,J=7.4,10.3Hz,2H)、7.57(d,J=8.25Hz,1H)、7.26-7.0(m,21H)、6.40(dd,J=2.2,8.5Hz,1H)、6.30(dd,J=2.5,7.15Hz,1H)、4.44(d,J=8.1Hz,1H)、4.30(d,J=7.9Hz,1H)、4.05(m,1H)、3.70(m,1H)、2.38(s,3H)、2.37(s,3H)、2.23(s,6H)、1.35(m,1H)、0.59(d,J=6.8Hz,3H)、0.43(d,J=7.2Hz,3H)、-1.51(s,3H)、及び-1.68(s,3H)。
【0212】
実施例5.5a.rac-4,4′-ペンタン-2,4-ジイルビス(オキシ)ビス(3-ブロモ-1-フルオロベンゼン)の調製。
【0213】
【化31】
【0214】
磁気撹拌器を備えた2Lの丸底フラスコに、rac-2,4-ペンタンジオール(16.9g、162.3mmol)、2-ブロモ-4-フルオロフェノール(65.09g、340.8mmol)、トリフェニル-ホスフィン(89.38g、340.76mmol)、及びTHF(600mL)を充填し、氷水浴中で0℃に冷却した。THF(130mL)中のDIAD(67.09g、340.76mmol)の溶液を、滴下漏斗を介してフラスコにゆっくり添加した。結果として生じた混合物を終夜、周囲温度で撹拌し、翌日に揮発物を減圧下で除去した。ペンタン(700mL)を残渣に添加し、スラリーを室温で30分間撹拌した。不溶性固体を濾過し、ペンタン(100mL×3)ですすいだ後、減圧下で濃縮して油残渣を得た。油残渣をヘキサン(100mL)に溶解し、次にシリカゲルのパッドを通過させ、ヘキサン(300mL)、続いてヘキサン-EtOAc(体積で4:1)で溶出し、高純度の所望の生成物(42.1g、収率48%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ 7.20(dd,J=7.8,3.0Hz,2H)、6.83(ddd,J=9.1,7.7,3.0Hz,2H)、6.74(dd,J=9.1,4.9Hz,2H)、4.68(六重線,J=6.1Hz,2H)、2.05(dd,J=7.3,5.5Hz,2H)、及び1.35(d,J=6.2Hz,6H)。13C{H}NMR(101MHz,CDCl):δ 156.5(d,J=243.2Hz)、151.1(d,J=2.8Hz)、120.1(d,J=25.8Hz)、116.0(d,J=8.4Hz)、114.8(d,J=22.7Hz)、113.3(d,J=10.1Hz)、73.4、44.8、及び20.2。19F NMR(376MHz,C) δ -121.22。
【0215】
5e.配位子5(L5)の調製。
【0216】
【化32】
【0217】
バイアルに、rac-4,4′-ペンタン-2,4-ジイルビス(オキシ))ビス(3-ブロモ-1-フルオロベンゼン)(0.602g、1.34mmol)及び5mLのトルエンに溶解した上群(2.04g、2.94mmol)を、窒素雰囲気下で撹拌しながら添加した。これに、NaOH(1mLの水に溶解した0.321g、8.02mmol)を添加し、続いてPd(PPh(0.060g、0.054mmol)を速やかに添加して、反応物を88℃に加熱した。反応の経過を、LCを介して、完了したと見なされるまで5時間マークで監視した。この時点で、反応容器を室温に冷却し、苛性層を除去し、2mLの20%HCl溶液を添加し、反応物を再度加熱して5時間還流した。反応器を周囲温度に冷却し、水性相を除去して、有機層をブラインで洗浄し、MgSO上で乾燥させた。MgSOを除去するための濾過に続いて、回転蒸発を介した濃縮により、オフホワイトの固体を得て、これをアセトニトリルで洗浄し、残りの固体を真空下で乾燥させて、純粋なL5(1.41g、収率84%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ 8.19(dt,J=3.3,1.5Hz,4H)、7.44(m,6H)、7.32(t,J=1.8Hz,2H)、7.07(m,6H)、6.66(td,J=8.3,3.1Hz,2H)、6.41(dd,J=9.2,4.6Hz,2H)、5.91(s,2H)、4.36(m,2H)、1.74(s,4H)、1.71(m,2H)、1.49(s,18H)、1.47(s,18H)、1.39(s,12H)、0.92(d,J=5.8Hz,6H)、及び0.80(s,18H)。13C NMR(101MHz,CDCl):δ 157.5(d,J=241.3Hz)、150.0(d,J=1.8Hz)、147.9、142.8、142.6(d,J=8.4Hz)、139.8(d,J=10.9Hz)、130.2(d,J=7.8Hz)、129.0、127.2、126.56、124.8、123.6(d,J=13.3Hz)、123.3、123.1、118.2(d,J=23.4Hz)、116.4、116.3、115.4(d,J=22.8Hz)、109.2(d,J=31.6Hz)、73.1、57.0、44.7、38.2、34.7(d,J=1.6Hz)、32.4、32.0、31.9、31.7、31.6、及び19.7。19F NMR(376MHz,C) δ -121.96。
【0218】
5e.前駆触媒5(I5)の調製。
【0219】
【化33】
【0220】
フラスコに、30mLの冷たいトルエン(-30℃)及びZrCl(0.340g、1.50mmol)を充填した。結果として生じた懸濁液に、MeMgBr(1.90mLのEtO中3M溶液、5.70mmol)を添加した。結果として生じた混合物を2~3分間撹拌し、その時点で配位子L5(1.79g、1.43mmol)を添加した。懸濁液を自然に室温に温め、2時間撹拌した。次に、溶媒を真空下で除去し、濃茶色の懸濁液をヘキサン(100mL)で抽出し、濾過した。濾過液を回収し、真空下で乾燥させて、I5を良好な純度のオフホワイトの固体(1.46g、収率75%)として得た。H NMR(400MHz,C) δ 8.59(m,2H)、8.40(m,2H)、7.79-7.52(m,8H)、7.43(dd,J=8.4,1.9Hz,2H)、7.23(dd,J=12.7,2.5Hz,2H)、6.98(dt,J=9.0,3.2Hz,2H)、6.66(ddd,J=8.9,7.4,3.2Hz,1H)、6.59(ddd,J=8.9,7.4,3.1Hz,1H)、5.04(dd,J=8.9,5.0Hz,1H)、4.88(dd,J=8.9,4.9Hz,1H)、4.16(m,1H)、3.74(m,1H)、1.80(m,1H)、1.67-1.57(m,5H)、1.48(s,9H)、1.47(s,9H)、1.31(s,9H)、1.30(s,9H)、1.28-1.20(m,12H)、0.86(s,9H)、0.85(s,9H)、0.59(d,J=6.4Hz,3H)、0.40(d,J=6.6Hz,3H)、-0.82(s,3H)、-0.82(s,3H)。19F NMR(376MHz,C) δ -114.59、及び-114.68。
【0221】
本研究で使用される前駆触媒を下に示す(発明実施例I1、I3、及びI4、比較実施例C11)。
【0222】
【化34】
【0223】
連続反応器エチレン/オクテン共重合(発明1~7は参考例である)
原材料(エチレン、1-オクテン)及びプロセス溶媒(狭い沸点範囲の高純度イソパラフィン溶媒、SHELLから市販されている商品名SBP100/140)を、反応環境への導入前に分子篩で精製する。水素を1160psig(80バール)で供給し、約580psig(40バール)に低減し、高純度グレードとして供給し、さらに精製しない。反応器モノマー供給(エチレン)ストリームを、機械圧縮器を介して、525psigの反応圧を超えて加圧する。溶媒及びコモノマー(1-オクテン)供給物を、機械容積式ポンプを介して、525psigの反応圧を超えて加圧する。AkzoNobelから市販されている修飾メチルアルミノキサン(MMAO)を、不純物捕集剤として使用する。個別の触媒成分(前駆触媒、共触媒)を、精製された溶媒(ISOPARE)で特定の成分濃度に手動でバッチ希釈し、525psigに加圧する。この共触媒は、BoulderScientificから市販されている[HNMe(C18H37)2][B(C6F5)4]であり、前駆触媒に対して1.2モル比で使用する。全ての反応供給ストリームを質量流量計で測定し、コンピュータ自動弁制御システムで独立して制御する。
【0224】
連続溶液重合を、5Lの連続撹拌タンク反応器(CSTR)内で実行する。この反応器は、全ての新鮮な溶媒、モノマー、コモノマー、水素、及び触媒成分供給物の独立制御を有する。反応器への合わせた溶媒、モノマー、コモノマー、及び水素供給物を、5℃~50℃のいずれか、典型的に25℃に温度制御する。重合反応器への新鮮なコモノマー供給物を、溶媒供給物と共に供給する。共触媒を、前駆触媒成分に対する計算された特定のモル比(1.2モル当量)に基づいて供給する。各新鮮な注入位置の直後に、静的混合要素を用いて、供給ストリームを循環する重合反応器内容物と混合する。重合反応器(溶媒、モノマー、コモノマー、水素、触媒成分、及び溶融ポリマーを含有する)からの流出物は、第1の反応器ループを出て、制御弁(第1の反応器の圧力の特定の目標圧力での維持に関与する)を通過する。ストリームが反応器を出ると、水と接触して反応を停止させる。さらに、抗酸化剤などの様々な添加物が、この時点で添加され得る。次に、ストリームは別の組の静的混合要素を通過して、触媒死滅剤及び添加物を均一に分散させる。
【0225】
添加物の添加後、この流出物(溶媒、モノマー、コモノマー、水素、触媒成分、及び溶融ポリマーを含有する)は、熱交換器を通過して、他方のより低い沸点の反応成分からのポリマーの分離に備えて、ストリーム温度を上昇させる。次に、ストリームは二段階分離及び脱揮システムに入り、ここでポリマーが、溶媒、水素、ならびに未反応モノマー及びコモノマーから除去される。分離及び脱揮されたポリマー溶融物を、水中ペレット化のために特別に設計されたダイを通してポンプで送り、均一な固体ペレットに切断し、乾燥させ、貯蔵のために箱に移す。
【0226】
【表1】
【0227】
【表2】
【0228】
【表3】
【0229】
【表4】
【0230】
【表5】
【0231】
【表6】
【0232】
表1~6に見られるように、本発明エチレン系ポリマーは、低レベルの長鎖分岐、低ゼロ剪断粘度比、最適タンデルタ、狭いコモノマー分布(CEFプロファイル、各発明ポリマーは、60℃~100℃の温度でCEF-コモノマー分布において単一ピークを有していた(「25%ピーク高さでのピークの幅」については、表2、4、及び6を参照されたい))、及び狭い分子量分布を特徴とする、構造的特性の固有の組み合わせを有する。本発明ポリマーは、改善された特性(例えば、光学的特性、落槍耐衝撃性、穿刺抵抗、耐亀裂性など)を有する成型物品の製造に有用である。
【0233】
試験方法
密度
密度について測定された試料を、ASTM D-1928に従って調製する。測定を、ASTM D-792、方法Bを使用して、試料押圧の1時間以内に行う。
【0234】
メルトインデックス
メルトインデックス(I)を、ASTM-D 1238、条件190℃/2.16kgに従って測定し、10分当たりの溶出されたグラムで報告する。メルトフロー速度(I10)を、ASTM-D 1238、条件190℃/10kgに従って測定し、10分当たりの溶出されたグラムで報告する。
【0235】
従来のゲル浸透クロマトグラフィー(従来のGPC)
PolymerChAR(Valencia,Spain)からのGPC-IR高温クロマトグラフィーシステムは、精密検出器(Amherst,MA)、2角度レーザー光散乱検出器モデル2040、IR5赤外線検出器、及び4-細管粘度計(いずれもPolymerChARから)を備えていた。データ収集を、PolymerChAR InstrumentControlソフトウェア及びデータ収集インターフェースを使用して行った。このシステムは、Agilent Technologies(Santa Clara,CA)からのオンライン溶媒脱気デバイス及びポンプシステムを備えていた。
【0236】
注入温度を150℃で制御した。使用したカラムは、Polymer Laboratories(Shropshire,UK)からの3つの10ミクロン「Mixed-B」カラムであった。使用した溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンであった。試料を「50ミリリットルの溶媒中0.1グラムのポリマー」の濃度で調製した。クロマトグラフィー溶媒及び試料調製溶媒は各々、「200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)」を含有した。両方の溶媒源を窒素スパージした。エチレン系ポリマー試料を160℃で3時間穏やかに撹拌した。注入量は200マイクロリットルであり、流量は1ミリリットル/分であった。GPCカラムセットを、21個の「狭い分子量分布」のポリスチレン標準物を流すことによって較正した。これらの標準物の分子量(MW)は、580~8,400,000g/モルの範囲であり、これらの標準物は、6個の「カクテル」混合物中に含まれた。各標準混合物は、個別の分子量間で少なくとも十進の分離を有していた。標準混合物をPolymer Laboratoriesから購入した。ポリスチレン標準物を、1,000,000g/モル以上の分子量の場合、「50mLの溶媒中0.025g」で調製し、1,000,000g/モル未満の分子量の場合、「50mLの溶媒中0.050g」で調製した。
【0237】
ポリスチレン標準物は、80℃で穏やかに撹拌しながら30分間溶解させた。狭い標準混合物を最初に流し、次に「最高分子量成分」が減少する順に流して、劣化を最小限に抑えた。ポリスチレン標準物ピーク分子量を、等式1を使用してポリエチレン分子量に変換し(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Letters,6,621(1968))、
Mポリエチレン=Ax(Mポリスチレン)(等式1)、
式中、Mは分子量であり、A=0.4316であり、B=1.0である。
【0238】
数平均分子量(Mn(従来のgpc))、重量平均分子量(Mw(従来のgpc))、及びz平均分子量(Mz(従来のgpc))を、下の等式2~4に従って計算した。
【0239】
【数1】
【0240】
等式2~4中、RVは、「1秒当たり1点」で収集されたカラム保持量(直線状に間隔を空けた)であり、IRは、GPC器具のIR5測定チャネルからのベースラインを控除したIR検出シグナル(ボルト)であり、MPEは、等式1から決定されたポリエチレン相当MWである。データ計算を、PolymerChARの「GPC Oneソフトウェア(バージョン2.013H)」を使用して行った。
【0241】
クリープゼロ剪断粘度測定法
ゼロ剪断粘度を、AR-G2応力制御レオメータ(TA Instruments、New Castle,Del)上で、「直径25mm」の平行プレートを使用して190℃で行われたクリープ試験によって得た。固定具をゼロにする前に、レオメータオーブンを、少なくとも30分間、試験温度に設定した。試験温度で、圧縮成型された試料ディスクをプレート間に挿入し、5分間平衡させた。次に、上部プレートを、所望の試験間隙(1.5mm)の上で50μm(器具設定)に低下させた。いかなる余分の材料も切り落とし、上部プレートを所望の間隙まで低下させた。窒素パージ下、5L/分の流量で測定を行った。デフォルトクリープ時間を2時間に設定した。
【0242】
各試料を、空気中10MPaの圧力下で5分間、177℃で「厚さ2mm×直径25mm」の円形平板に圧縮成型した。次に、試料を押圧機から取り出し、作業台上に置いて冷却した。
【0243】
20Paの一定低剪断応力を試料の全てに加えて、安定状態剪断速度がニュートン領域内である程度に十分に低くなることを確実にした。本研究の試料の結果として生じた安定状態剪断速度は、10-3~10-4-1の範囲であった。安定状態は、「log(J(t))対log(t)」のプロットの最後の10%時間窓において、全データの線形回帰を取ることによって決定し、ここで、J(t)はクリープコンプライアンスであり、tはクリープ時間であった。線形回帰の傾斜が0.97を超える場合、安定状態に到達したと見なし、クリープ試験を停止した。本研究の全ての例において、傾斜は2時間以内に基準を満たす。安定状態剪断速度を、「ε対t」のプロットの最後の10%時間窓において、データ点の全ての線形回帰の傾斜から決定し、ここで、εは歪みであった。ゼロ剪断粘度を、加えられた応力と安定状態剪断速度の比率から決定した。
【0244】
試料がクリープ試験中に劣化したかを決定するために、同じ標本上での0.1~100rad/sのクリープ試験前及び試験後に、小振幅振動剪断試験を行った。これらの2つの試験の複素粘度値を比較した。0.1rad/sでの粘度値の差が5%を超えた場合、試料がクリープ試験中に劣化したと見なし、結果を破棄した。
【0245】
ゼロ剪断粘度比(ZSVR)を、以下の等式5に従って、当量平均分子量(Mw(従来のgpc))における分岐ポリエチレン材料のゼロ剪断粘度(ZSV)と線状ポリエチレン材料のZSVの比率として定義する(下に続くANTECを参照されたい)。
【0246】
【数2】
【0247】
ZSV値を、上記の方法により、190℃でのクリープ試験から得た。Mw(従来のgpc)値を、上述されるように、従来のGPC方法(等式3)によって決定した。線状ポリエチレンのZSVとそのMw(従来のgpc)との間の相関を、一連の線状ポリエチレン参照物質に基づいて確立した。ZSV-Mw関係についての説明は、以下のANTEC会報、Karjala et al.,Detection of Low Levels of Long-chain Branching in Polyolefins,Annual Technical Conference-Society of Plastics Engineers(2008),66th 887-891で見つけることができる。
【0248】
CEF方法
コモノマー分布分析は、結晶化溶出分別(CEF)(スペインのPolymerChAR(B Monrabal et al,Macromol.Symp.,257,71-79,2007も参照されたい)によって行った。オルト-ジクロロベンゼン(ODCB)を、「600ppm抗酸化剤ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)」と共に溶媒として使用した。試料調製は、オートサンプラーを用いて160℃で2時間、4mg/mL(別途指定されない限り)で振動させながら行った。注入量は300μLであった。CEFの温度プロファイルは以下のとおり、110℃から30℃まで3℃/分での結晶化、30℃で5分間の熱均衡、30℃から140℃まで3℃/分での溶出であった。結晶化中の流量は、0.052mL/分であった。溶出中の流量は、0.50mL/分であった。1データ点/秒でデータを収集した。
【0249】
CEFカラムに、125μm±6%(MO-SCI Specialty Products)で、1/8インチステンレス管を使用してガラスビーズを充填した。ガラスビーズは、MO-SCI Specialtyによって酸洗浄した。カラム量は2.06mLであった。ODCB中のNIST標準参照物質線状ポリエチレン1475a(1.0mg/mL)及びEicosane(2mg/mL)の混合物を使用して、カラム温度較正を行った。溶出加熱速度を調節することによって温度を較正し、それにより、NIST線状ポリエチレン1475aは、101.0℃でピーク温度を有し、Eicosaneは、30.0℃のピーク温度を有した。CEFカラム分割は、NIST線状ポリエチレン1475a(1.0mg/mL)及びヘキサコンタン(Fluka,purum,≧97.0%、1mg/mL)の混合物を用いて計算した。ヘキサコンタン及びNISTポリエチレン1475aのベースライン分離が達成された。ヘキサコンタン(35.0~67.0℃)の面積対NIST 1475a(67.0~110.0℃)の面積は、「50対50」であり、35.0℃以下での可溶性分画の量は、1.8重量%未満(<)であった。CEFカラム分割は、等式1Aに定義され、カラム分割は6.0であった。
【0250】
【数3】
【0251】
CEF溶出プロファイルの25%高さでのピーク幅の決定
CEF器具を、本明細書に記載のCEF方法に従って較正し、相対IR検出器シグナルのプロットを、温度の関数として作製した。単一ベースラインをIR測定シグナルから控除し、順にその最低及び最高溶出温度(典型的に25℃から110℃の間)でのゼロ相対質量で開始及び終了する、相対質量-溶出プロファイルプロットを作成した。相対質量-溶出プロファイルプロットにおいて、35℃~95℃の間の総積分シグナルの少なくとも50%の面積を表すピークが割り当てられた。ピークが相対質量-溶出高さの少なくとも10%ベースラインに戻らなかった(それらの最低点において10%を超える高さで接続された)場合、単一ピークの部分として定義された(重畳されたピークを数学的に分離するために、逆重畳も同様の数的方法も使用されない)。次にピークを、質量-溶出プロファイルプロットにおけるピークの最大高さの25%での幅、℃について測定した。
【0252】
動的剪断レオロジー
各試料を、空気中10MPaの圧力下で5分間、177℃で「厚さ3mm×直径25mm」の円形平板に圧縮成型した。次に試料を押圧機から取り出し、作業台上に置いて冷却する。定温の周波数掃引測定を、窒素パージ下、「25mm」平行プレートを備えたARES歪み制御レオメータ(TA Instruments)上で行った。各測定について、レオメータは、間隙をゼロにする前に、少なくとも30分間熱平衡させた。試料ディスクをプレート上に置き、190℃で5分間溶融させた。次にプレートを2mmに閉じ、試料を縁取りした後、試験を開始した。この方法は、追加5分の遅延が組み込まれ、温度平衡を可能にした。190℃で、0.1~100rad/sの周波数範囲にわたって、10年間隔当たり5つの点において実験を行った。歪み振幅は、10%で一定であった。振幅及び相に関して、応力反応を分析し、そこから貯蔵弾性(G′)、損失弾性(G′′)、複合弾性(G*)、動的粘度(η*またはEta*)、及びtanδ(またはタンデルタ)を計算した。
【0253】
本発明は、その趣旨及び本質的属性から逸脱することなく他の形態で具現化され得、したがって本発明の範囲を示すものとして、前述の明細書ではなく、添付の特許請求の範囲を参照すべきである。
また、他の実施態様として以下の形態が挙げられる。
[1]
以下の特性、
a)1.2~2.6のZSVR値、
b)1.5~2.8のMWD、及び
c)5.0~50のタンデルタ(0.1rad/s、190℃)を含む、エチレン系ポリマー。
[2]
前記エチレン系ポリマーが、以下の特性、0.9g/10分未満のメルトインデックス(I2)、及び5.0超のタンデルタ(0.1rad/s、190℃)を有する、上記[1]に記載のエチレン系ポリマー。
[3]
前記エチレン系ポリマーが、以下の特性、0.9g/10分以上のメルトインデックス(I2)、及び15超のタンデルタ(0.1rad/s、190℃)、及び1.3~2.6のZSVR値を有する、上記[1]に記載のエチレン系ポリマー。
[4]
前記エチレン系ポリマーが、エチレン/α-オレフィンインターポリマーである、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー。
[5]
前記ポリマーが、0.885~0.940g/ccの密度を有する、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー。
[6]
前記ポリマーが、0.05~500g/10分のメルトインデックス(I2)を有する、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー。
[7]
前記ポリマーが、60℃~100℃の温度で、CEF-コモノマー分布において単一ピークを有する、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー。
[8]
前記ポリマーが、60℃~100℃の温度で、CEF-コモノマー分布において単一ピークを有し、25%ピーク高さでの前記ピークの幅が、30℃未満である、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー。
[9]
前記ポリマーが、5.0~10のI10/I比を有する、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー。
[10]
前記ポリマーが、1.7~2.5のMWDを有する、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー。
[11]
前記ポリマーが、0.1~5g/10分のメルトインデックス(I2)を有する、上記[1]~[10]のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー。
[12]
前記エチレン系ポリマーが、以下、
A)少なくとも1つの共触媒と、
B)式(I)の金属-配位子錯体を含む前駆触媒との反応生成物を含む少なくとも1つの触媒系の存在下で、少なくともエチレンを重合させることを含むプロセスによって形成され、
【化35】
式中、
Mが、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムであり、各々が独立して、+2、+3、または+4の形式的酸化状態であり、nが、0~3の整数であり、nが0である場合、Xが不在であり、
各Xが独立して、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、もしくはハロゲン化物であり、各Xが独立して、中性、モノアニオン性、もしくはジアニオン性の単座配位子であるか、または
2つのXが一緒になって、中性、モノアニオン性、もしくはジアニオン性の二座配位子を形成し、
X及びnが、式(I)の前記金属-配位子錯体が全体的に中性であるような方法で選択され、
各Zが独立して、酸素原子、硫黄原子、-N[(C~C40)ヒドロカルビル]-、または-P[(C~C40)ヒドロカルビル]-であり、
Lが、置換もしくは非置換(C~C40)ヒドロカルビレン、または置換もしくは非置換(C~C40)ヘテロヒドロカルビレンであり、
Lについて、前記(C~C40)ヒドロカルビレンが、式(I)中のR21とR22を連結する1炭素原子~10炭素原子リンカー骨格を含む部分(それにLが結合される)を有するか、または
Lについて、前記(C~C40)ヘテロヒドロカルビレンが、式(I)中のR21とR22を連結する1原子~10原子リンカー骨格を含む部分を有し、前記(C~C40)ヘテロヒドロカルビレンの前記1原子~10原子リンカー骨格の前記1~10個の原子の各々が独立して、以下、i)炭素原子、ii)各ヘテロ原子が独立して、-O-もしくは-S-である、ヘテロ原子、またはiii)-S(O)-、-S(O)-、-Si(R-、-Ge(R-、-P(R)-、もしくは-N(R)-から選択される置換基であって、式中、各Rが独立して、置換もしくは非置換(C~C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C~C30)ヘテロヒドロカルビルである、前記置換基のうちの1つであり、
21及びR22が各々独立して、CまたはSiであり、
~R20が各々独立して、以下、置換もしくは非置換(C~C40)ヒドロカルビル、置換もしくは非置換(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、-S(O)R、-S(O)、-N=C(R、-OC(O)R、-C(O)OR、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R、ハロゲン原子、及び水素原子からなる群から選択され、式中、各Rが独立して、置換もしくは非置換(C~C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C~C30)ヘテロヒドロカルビルであり、
17が水素原子である場合、R18が、置換もしくは非置換(C~C40)ヒドロカルビル、置換もしくは非置換(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、-S(O)R、-S(O)、-N=C(R、-OC(O)R、-C(O)OR、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R、ハロゲン原子、または水素原子であり、式中、各Rが独立して、置換もしくは非置換(C~C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C~C30)ヘテロヒドロカルビルであるか、あるいは
18が水素原子である場合、R17が、置換もしくは非置換(C~C40)ヒドロカルビル、置換もしくは非置換(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、-S(O)R、-S(O)、-N=C(R、-OC(O)R、-C(O)OR、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R、ハロゲン原子、または水素原子であり、式中、各Rが独立して、置換もしくは非置換(C~C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C~C30)ヘテロヒドロカルビルであり、かつ/あるいは
19が水素原子である場合、R20が、置換もしくは非置換(C~C40)ヒドロカルビル、置換もしくは非置換(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、-S(O)R、-S(O)、-N=C(R、-OC(O)R、-C(O)OR、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R、ハロゲン原子、または水素原子であり、式中、各Rが独立して、置換もしくは非置換(C~C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C~C30)ヘテロヒドロカルビルであるか、あるいは
20が水素原子である場合、R19が、置換もしくは非置換(C~C40)ヒドロカルビル、置換もしくは非置換(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、-S(O)R、-S(O)、-N=C(R、-OC(O)R、-C(O)OR、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R、ハロゲン原子、または水素原子であり、式中、各Rが独立して、置換もしくは非置換(C~C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C~C30)ヘテロヒドロカルビルであり、
式Iについて、R~R22のうちの2つ以上が、随意に、1つ以上の環構造を形成することができ、各環構造が、いずれの水素原子も除く3~50個の原子を環内に有し、
式Iについて、1つ以上の水素原子が、1つ以上の重水素原子で随意に置換されてもよい、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー。
[13]
式Iについて、R17が水素原子である場合、R18が、置換もしくは非置換(C~C40)ヒドロカルビル、置換もしくは非置換(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、-S(O)R、-S(O)、-N=C(R、-OC(O)R、-C(O)OR、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R、またはハロゲン原子であり、式中、各Rが独立して、置換もしくは非置換(C~C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C~C30)ヘテロヒドロカルビルであるか、あるいは
18が水素原子である場合、R17が、置換もしくは非置換(C~C40)ヒドロカルビル、置換もしくは非置換(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、-S(O)R、-S(O)、-N=C(R、-OC(O)R、-C(O)OR、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R、またはハロゲン原子であり、式中、各Rが独立して、置換もしくは非置換(C~C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C~C30)ヘテロヒドロカルビルであり、かつ/あるいは
19が水素原子である場合、R20が、置換もしくは非置換(C~C40)ヒドロカルビル、置換もしくは非置換(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、-S(O)R、-S(O)、-N=C(R、-OC(O)R、-C(O)OR、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R、またはハロゲン原子であり、式中、各Rが独立して、置換もしくは非置換(C~C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C~C30)ヘテロヒドロカルビルであるか、あるいは
20が水素原子である場合、R19が、置換もしくは非置換(C~C40)ヒドロカルビル、置換もしくは非置換(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、-S(O)R、-S(O)、-N=C(R、-OC(O)R、-C(O)OR、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R、またはハロゲン原子であり、式中、各Rが独立して、置換もしくは非置換(C~C30)ヒドロカルビル、または置換もしくは非置換(C~C30)ヘテロヒドロカルビルである、上記[12]に記載のエチレン系ポリマー。
[14]
上記[1]~[13]のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマーを含む、組成物。
[15]
上記[14]に記載の組成物から形成される少なくとも1つの成分を含む、物品。
図1
図2
図3