(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】車載用のタイミングコントローラおよびそれを用いた自動車
(51)【国際特許分類】
G09G 5/00 20060101AFI20220929BHJP
G09G 5/377 20060101ALI20220929BHJP
G09G 5/22 20060101ALI20220929BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20220929BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20220929BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G09G5/00 510C
G09G5/00 510X
G09G5/00 550C
G09G5/36 520M
G09G5/00 555D
G09G5/22 650M
B60R16/02 640K
G02F1/133 580
B60K35/00 Z
(21)【出願番号】P 2017155322
(22)【出願日】2017-08-10
【審査請求日】2020-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 洋治
【審査官】西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-088128(JP,A)
【文献】特開2012-090088(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0221414(US,A1)
【文献】国際公開第2008/062592(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/021133(WO,A1)
【文献】特開2014-129075(JP,A)
【文献】特開2007-121673(JP,A)
【文献】特開2011-251684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 5/00 - 5/42
B60R 16/02
G02F 1/133
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用のタイミングコントローラであって、
画像プロセッサから、車両に関する特定情報を含む
メイン画像を表す入力画像データを受信するメイン入力インタフェースと、
車両から、前記車両に関する前記特定情報を示す車両信号であって、特定のインタフェースを必要とせずに受信可能な車両信号を受ける入力ピンと、
前記画像プロセッサまたは別のプロセッサから、ディスプレイパネルに表示すべきキャラクタを指定する外部制御データを受信するサブ入力インタフェースと、
前記サブ入力インタフェースが前記外部制御データを受信すると、前記外部制御データにもとづいて、当該外部制御データが指示する前記キャラクタを含むサブ画像データを生成するとともに、前記外部制御データの生成、または伝送に支障が生じた場合に、前記入力ピンを介
して受信した前記車両信号にもとづいて、
当該車両信号が示す前記特定情報を表す前記サブ画像データを生成するサブ画像発生器と、
前記入力画像データおよび前記サブ画像データの少なくとも一方にもとづいて、ディスプレイパネルに表示すべき出力画像データを生成する画像処理回路と、
を備えることを特徴とするタイミングコントローラ。
【請求項2】
異常を検出する異常検出器をさらに備え、
前記異常が検出されると、前記サブ画像発生器がイネーブルとなることを特徴とする請求項1に記載のタイミングコントローラ。
【請求項3】
前記サブ画像発生器は常時アクティブであり、
前記画像処理回路は、前記入力画像データに前記サブ画像データを重ね合わせて前記出力画像データを生成することを特徴とする請求項1に記載のタイミングコントローラ。
【請求項4】
前記サブ入力インタフェースは、SPI(Serial Peripheral Interface)またはI
2C(Inter-Integrated Circuit)インタフェースであることを特徴とする請求項1に記載のタイミングコントローラ。
【請求項5】
前記サブ画像発生器は、
複数のキャラクタを記述する複数のキャラクタデータを保持するメモリと、
前記車両信号にもとづいて、前記ディスプレイパネルに表示すべきキャラクタを指定する制御データを生成する情報デコーダと、
前記制御データが指定する前記キャラクタに対応するキャラクタデータを前記メモリから読出し、前記キャラクタを描画して前記サブ画像データを生成する画像デコーダと、
を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のタイミングコントローラ。
【請求項6】
前記キャラクタは、セグメント型キャラクタであり、
前記キャラクタデータは、対応するキャラクタを構成する複数のセグメントに対応する複数のセグメントデータを含むことを特徴とする請求項5に記載のタイミングコントローラ。
【請求項7】
前記車両信号は車速信号を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のタイミングコントローラ。
【請求項8】
前記車両信号はバッテリの電圧を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のタイミングコントローラ。
【請求項9】
前記車両信号は温度を示すことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のタイミングコントローラ。
【請求項10】
前記出力画像データをデータドライバに出力する出力インタフェースをさらに備えることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のタイミングコントローラ。
【請求項11】
ひとつの半導体基板に一体集積化されたことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のタイミングコントローラ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載のタイミングコントローラを備えることを特徴とする自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフィックコントローラや他の機器からの画像データを受け、ゲートドライバやソースドライバに情報を伝送するタイミングコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、画像表示システムのブロック図である。画像表示システム100Rは、液晶パネルや有機ELパネルなどのディスプレイパネル102と、ゲートドライバ104、ソースドライバ106、グラフィックコントローラ110およびタイミングコントローラ200Rを備える。グラフィックコントローラ110は、ディスプレイパネル102に表示すべき画像データを生成する。この画像データに含まれるピクセル(RGB)データは、シリアル形式で、タイミングコントローラ200Rに伝送される。
【0003】
タイミングコントローラ200Rは、画像データを受け、各種の制御信号/タイミング信号(同期信号)を生成する。ゲートドライバ104は、タイミングコントローラ200Rからの信号と同期してディスプレイパネル102の走査線LSを順に選択する。またRGBデータは、ソースドライバ106に供給される。
【0004】
通常、タイミングコントローラ200Rとグラフィックコントローラ110の間は、差動シリアルインタフェースで接続される。画像表示システム100Rの起動開始から、タイミングコントローラ200Rとグラフィックコントローラ110の間のシリアルインタフェースのリンクが確立するまでの間、画像データの伝送ができず、したがってディスプレイパネル102に画像を表示できない。あるいは、一旦リンクが確立した後に、ノイズなどの影響でリンクが切断されると、再びリンクが確立するまでの間、ディスプレイパネル102に画像を表示できない。そのほか、ケーブルの抜け、断線が生じた場合、シリアルインタフェースやグラフィックコントローラ110の一部が故障した場合も同様である。本明細書において、これらのように、画像が表示できない状態を、「表示不能状態」と称する。
【0005】
従来のタイミングコントローラ200Rには、表示不能状態において何らかの情報をディスプレイパネル102に表示するための機能が実装される場合があった。たとえばタイミングコントローラ200Rは、あらかじめ決められたフェイルセーフ用の表示パターン201を保持している。表示パターン201としては、カラーバーや単色のスクリーンなどが例示される。そしてタイミングコントローラ200Rは、表示不能状態において、グラフィックコントローラ110からの画像データの代替として、フェイルセーフ用の表示パターン201をソースドライバ106に送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-225235号公報
【文献】特開2006-232199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、
図1の画像表示システム100Rについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0008】
近年、自動車等の乗り物の機械式の計器類を、電子式、すなわちディスプレイパネルに置き換える動きが進められている。ディスプレイパネルを利用することで、レイアウトの自由度が格段に高まり、あるいは機械式では不可能であったさまざまな演出が可能となる。
【0009】
自動車のメータパネルには、速度メータ、タコメータ、燃料計、各種警告灯などが含まれる。たとえば速度メータをディスプレイパネルに表示する場合、表示不能状態が発生すると、速度情報を運転者に提示できなくなる。
【0010】
図1の画像表示システム100Rでは、フェイルセーフ用の表示パターン201として、設計段階で決めた情報しか表示できず、したがって速度情報などのリアルタイム性の高い情報を提示することができない。
【0011】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、表示不能状態において、あるいは通常状態において、ディスプレイパネルにリアルタイム性の要求される情報を表示可能なタイミングコントローラの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある態様は、車載用のタイミングコントローラに関する。タイミングコントローラは、画像プロセッサから入力画像データを受信するメイン入力インタフェースと、車両から、車両の状態を示す車両信号を受ける入力ピンと、車両信号にもとづいてサブ画像データを生成するサブ画像発生器と、入力画像データおよびサブ画像データの少なくとも一方にもとづいて、ディスプレイパネルに表示すべき出力画像データを生成する画像処理回路と、を備える。
【0013】
車両信号は、特定のインタフェース(レシーバ)を必要とせずに受信可能、アクセス可能な信号であってもよい。あるいは車両信号は、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)などのインタフェースを介してアクセス可能な信号であってもよい。この態様によれば、車両信号にもとづいて、タイミングコントローラが外部のプロセッサに依存せずに、車両情報を示すサブ画像データを生成できる。したがって、表示不能状態(あるいは正常状態)において、ディスプレイパネルにリアルタイム性の要求される情報を表示できる。
【0014】
タイミングコントローラは、異常を検出する異常検出器をさらに備えてもよい。異常が検出されると、サブ画像発生器がアクティブとなってもよい。
これにより、表示不能状態において、ディスプレイパネルにリアルタイム性の要求される情報を表示できる。
【0015】
サブ画像発生器は常時アクティブであってもよい。画像処理回路は、入力画像データにサブ画像データを重ね合わせて出力画像データを生成してもよい。
これにより、車両信号から得られる情報に関しては、車両側の処理をバイパスして、タイミングコントローラが直接、画像データを生成することができる。
【0016】
タイミングコントローラは、画像プロセッサまたは別のプロセッサから、ディスプレイパネルに表示すべきキャラクタを指定する外部制御データを受信するサブ入力インタフェースをさらに含んでもよい。サブ入力インタフェースは、メイン入力インタフェースとは独立している。サブ画像発生器は、サブ入力インタフェースが外部制御データを受信すると、外部制御データにもとづいてサブ画像データを生成してもよい。
これにより、メイン入力インタフェースに異常が生じた場合に、あるいはメイン入力インタフェースが正常であっても状況に応じて、ディスプレイパネルに画像情報を表示できる。
【0017】
サブ入力インタフェースは、SPI(Serial Peripheral Interface)またはI2C(Inter-Integrated Circuit)インタフェースであってもよい。これらは広く一般に利用されるインタフェースであるため、実装が容易である。
【0018】
サブ画像発生器は、複数のキャラクタを記述する複数のキャラクタデータを保持するメモリと、車両信号にもとづいて、ディスプレイパネルに表示すべきキャラクタを指定する内部制御データを生成する情報デコーダと、内部制御データが指定するキャラクタに対応するキャラクタデータをメモリから読出し、キャラクタを描画してサブ画像データを生成する画像デコーダと、を含んでもよい。
【0019】
キャラクタは、セグメント型キャラクタであってもよい。キャラクタデータは、対応するキャラクタを構成する複数のセグメントに対応する複数のセグメントデータを含んでもよい。
セグメント型キャラクタを利用することにより、複数のアルファベットや数字のキャラクタそれぞれのビットマップ情報を保持する必要がなくなるため、タイミングコントローラ側のメモリも小規模で足りる。本明細書において「セグメント型キャラクタ」には、16セグメント、14セグメントや7セグメントなどのキャラクタのほか、複数のドットで構成されるドットマトリクス型キャラクタも含まれる。
【0020】
車両信号は車速信号を含んでもよい。
車速は、いかなる状態においても最優先で運転者に表示すべき情報の筆頭といえる。一方で多くの車両は、市販の汎用カーナビが車速を取得できるように、車速を示す車速信号(車速信号)に容易にアクセス可能となっている。そこで、タイミングコントローラに車速信号を直接入力することにより、異常が発生したとしても、車速情報をディスプレイパネルに表示することが可能となる。
【0021】
車両信号はバッテリの電圧を含んでもよい。車両信号は、温度計の出力を含んでもよい。
【0022】
タイミングコントローラは、出力画像データをデータドライバに出力する出力インタフェースをさらに備えてもよい。
【0023】
本発明の別の態様もまた、車載用のタイミングコントローラである。このタイミングコントローラは、画像プロセッサから、入力画像データを受信するメイン入力インタフェースと、車両から車速信号を受ける入力ピンと、車速信号にもとづいて車速を計算し、計算された車速を示すサブ画像データを生成するサブ画像発生器と、入力画像データおよびサブ画像データの少なくとも一方にもとづいて、ディスプレイパネルに表示すべき出力画像データを生成する画像処理回路と、を備える。
【0024】
タイミングコントローラは、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。
「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。
【0025】
本発明の別の態様は自動車である。自動車は、上述のいずれかのタイミングコントローラを備えてもよい。
【0026】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、あるいは本発明の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0027】
本発明のある態様によれば、表示不能状態あるいは通常状態において、ディスプレイパネルにリアルタイム性の要求される情報を表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】第1の実施の形態に係るタイミングコントローラを備える画像表示システムのブロック図である。
【
図3】
図3(a)、(b)は、
図2のタイミングコントローラの動作を説明する図である。
【
図4】タイミングコントローラのサブ画像発生器の構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図5(a)~(c)は、セグメント型キャラクタを説明する図である。
【
図6】
図6(a)、(b)は、画像処理回路の構成例を示すブロック図である。
【
図7】第2の実施の形態に係るタイミングコントローラを備える画像表示システムのブロック図である。
【
図8】タイミングコントローラのサブ画像発生器の構成例を示すブロック図である。
【
図9】
図9(a)、(b)は、タイミングコントローラの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0030】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0031】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0032】
(第1の実施の形態)
図2は、第1の実施の形態に係るタイミングコントローラ200Aを備える画像表示システム100Aのブロック図である。このタイミングコントローラ200Aは、車載用であり、自動車に搭載される。ディスプレイパネル102は、運転席正面のインストルメントパネル(ダッシュボード)に埋め込まれている。ディスプレイパネル102には、スピードメータ、タコメータ、燃料計、水温計、距離計など、自動車の走行に不可欠な情報を表示する計器類が、電子的に表示される。またディスプレイパネル102には、各種警告灯も表示される。
【0033】
タイミングコントローラ200Aは、
図1の画像表示システム100Rと同様に、グラフィックコントローラ110からの入力画像データS
0を受け、ソースドライバ106に出力画像データを供給し、ゲートドライバ104およびソースドライバ106に制御信号/同期信号を出力する。タイミングコントローラ200Aは、ひとつの半導体基板に集積化された機能ICであってもよい。
【0034】
タイミングコントローラ200Aは、メイン入力インタフェース202、画像処理回路204、出力インタフェース回路208、サブ画像発生器260、異常検出器270を備える。
【0035】
メイン入力インタフェース202、画像処理回路204、出力インタフェース回路208は、グラフィックコントローラ110からの画像データの表示に関する回路ブロックであり、従来のタイミングコントローラ200Rに備わるものと同じでよい。メイン入力インタフェース202は、グラフィックコントローラ110と第1ライン112を介して接続され、入力画像データS1を受信する。メイン入力インタフェース202とグラフィックコントローラ110とのインタフェースには、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)などの差動高速シリアルインタフェースを採用することができる。
【0036】
画像処理回路204は、メイン入力インタフェース202が受信した入力画像データS1に、さまざまな信号処理を施す。画像処理回路204の信号処理は特に限定されず、公知技術を用いればよいが、たとえば、γ補正、FRC(Frame Rate Control)処理、RGBマッピングなどが例示される。出力インタフェース回路208は、画像処理回路204の処理後の出力画像データS2を、ソースドライバ106に出力する。
【0037】
以上がタイミングコントローラ200Aの基本構成である。タイミングコントローラ200Aは、入力画像データS1にもとづく画像(以下、メイン画像)に代えて、あるいはそれに加えて、車両信号S8にもとづく画像(以下、サブ画像)を表示可能となっている。サブ画像の表示に関連して、タイミングコントローラ200Aには、入力ピン250およびサブ画像発生器260が設けられる。
【0038】
入力ピン250には、車両から引き出された配線116が接続される。この配線116を介して、入力ピン250には、車両の状態を示す車両信号S8が入力される。この車両信号S8は、ディスプレイパネル102に表示すべき情報(車両の状態)のひとつ(特定情報という)と相関を有している。サブ画像発生器260は、車両信号S8にもとづいてサブ画像データS5Aを生成する。
【0039】
ディスプレイパネル102に表示すべき情報は、上述のように、スピードメータ、タコメータ、燃料計、水温計、距離計、各種警告、方向指示などが例示される。その限りでないが、以下の説明では、特定情報は車速であるものとする。この場合、入力ピン250には車速信号が入力される。車速信号は、多くの自動車において容易に取り出し可能である。
【0040】
画像処理回路204は、入力画像データS1およびサブ画像データS5Aの少なくとも一方にもとづいて、ディスプレイパネル102に表示すべき出力画像データS2を生成する。
【0041】
本実施の形態において、画像処理回路204は、正常時には入力画像データS1にもとづく出力画像データS2を生成し、入力画像データS1が受信されない異常状態、すなわち表示不能状態において、サブ画像データS5Aにもとづく出力画像データS2を生成する。
【0042】
タイミングコントローラ200Aはさらに、異常検出器270を備えてもよい。異常検出器270は、表示不能状態(異常状態)を検出する。異常検出器270は、(i)入力画像データS0あるいはS1を監視することにより、異常状態を検出してもよい。あるいは異常検出器270は、タイミングコントローラ200Aの外部から、異常状態を示すフラグを受け、このフラグにもとづいて異常を検出してもよい。
【0043】
サブ画像発生器260は、イネーブル状態、ディセーブル状態が切りかえ可能であり、正常状態においてディセーブル化(動作停止)され、異常が検出されると、イネーブル化される。
【0044】
以上がタイミングコントローラ200Aの構成である。続いてその動作を説明する。
図3(a)、(b)は、
図2のタイミングコントローラ200Aの動作を説明する図である。
【0045】
図3(a)は、正常状態におけるディスプレイパネルの表示画面を示す。正常状態では、グラフィックコントローラ110によって、スピードメータ500、タコメータ502、シフトインジケータ504、方向指示506、各種警告508を含むメイン画像データがディスプレイパネルに表示される。
【0046】
図3(b)は、異常状態におけるディスプレイパネルの表示画面を示す。異常状態では、ディスプレイパネルには、サブ画像データが表示される。サブ画像データは、特定情報である速度情報520と、異常状態であることを示すアラート522と、を含んでいる。サブ画像データは、特定情報を簡易的に示せれば十分であり、特定の文字(たとえば数字およびアルファベット)と、特定の図形情報(アイコン)の組み合わせで構成することができる。
【0047】
以上がタイミングコントローラ200Aの動作である。
このタイミングコントローラ200Aによれば、外部のグラフィックコントローラ110から画像データを受信できない状況においても、タイミングコントローラ200Aが車両信号にもとづいて特定情報を示すサブ画像データを生成して、ディスプレイパネルに表示することができる。これにより速度表示に関して、フェイルセーフ機能を提供できる。
【0048】
本発明は、
図2のブロック図や回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、回路に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や回路動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例や変形例を説明する。
【0049】
図4は、タイミングコントローラ200Aのサブ画像発生器260の構成例を示すブロック図である。サブ画像発生器260は、メモリ262、情報デコーダ264、画像デコーダ266を含む。メモリ262は、複数のキャラクタを記述する複数のキャラクタデータS10を保持する。メモリ262は、タイミングコントローラ200Aに内蔵され、あるいはタイミングコントローラ200Aに外付けられる不揮発性メモリである。あるいはメモリ262は揮発性メモリであり、タイミングコントローラ200Aの起動時に、外部の不揮発性メモリ(不図示)からメモリ262にキャラクタデータをロードするようにしてもよい。
【0050】
情報デコーダ264は、車両信号S8にもとづいて、ディスプレイパネル102に表示すべきキャラクタを指定する内部制御データS11を生成する。たとえば車両信号S8が車速信号である場合には、車速信号のパルスの周波数にもとづいて、車速をデコードする。デコードにより得られた車速の数値が、内部制御データS11となる。たとえば時速80km/hである場合には、内部制御データS11は、数字の8と0を指定するコードを含む。
【0051】
画像デコーダ266は、内部制御データS11が指定するキャラクタに対応するキャラクタデータS10をメモリ262から読出し、キャラクタを描画してサブ画像データS5Aを生成する。
【0052】
キャラクタの画像エンコード方式は特に限定されない。たとえばキャラクタは、ビットマップ(bmp)形式であってもよく、キャラクタデータS10は、ビットマップデータであってもよい。この場合、任意の文字や図形を、キャラクタとすることができる。
【0053】
あるいは任意の文字、図形(キャラクタ)を、ランレングス圧縮して、キャラクタデータS10を生成してもよい。これによりメモリ容量を節約できる。
【0054】
アルファベットや数字などの、特定の文字に関しては、セグメント型キャラクタを用いてもよい。「セグメント型キャラクタ」には、16セグメント、14セグメントや7セグメントなどのキャラクタのほか、複数のドットで構成されるドットマトリクス型キャラクタも含まれる。
【0055】
この場合、メモリ262に格納されるキャラクタデータS10は、(i)セグメント型キャラクタを構成する複数のセグメントの形状を記述する複数のセグメントデータと、(ii)各キャラクタが、いずれのセグメントを含むかを記述するデータと、を含んでもよい。
【0056】
図5(a)~(c)は、セグメント型キャラクタを説明する図である。セグメント型キャラクタ800は、複数のセグメント802のオン、オフの組み合わせで表される。
図5(a)には、16セグメント型のキャラクタが示されており、16個のセグメント802には便宜的な識別子A~Pが付されている。
図5(b)には、16セグメント型キャラクタを表すコードの一例が示される。16セグメント型キャラクタは、16ビット、すなわち2バイトのデータで表すことができ、したがって1キャラクタあたり、2バイトのメモリ領域を用意すれば、表示すべき文字や記号を一意に指定することができる。
【0057】
図5(c)には、16セグメント型キャラクタの一例が示されている。
図5(c)には、大文字のアルファベット、アラビア数字、その他の記号+、-、#、*が示されるが、そのほかにも、小文字のアルファベットやギリシャ数字、その他の記号、日本語のひらがな、カタカナ、漢字、その他の言語のキャラクタを表現することも可能である。
【0058】
画像処理回路204には、入力画像データS1と、セグメントデコーダ220が生成したサブ画像データS5Aが入力される。画像処理回路204は、入力画像データS1およびサブ画像データS5Aにもとづいて、ディスプレイパネルに表示すべき出力画像データS2を生成する。
【0059】
画像処理回路204による処理およびその構成にはいくつかのバリエーションが考えられる。
【0060】
たとえば画像処理回路204は、(i)入力画像データS1およびサブ画像データS5
Aの一方を選択し、出力画像データS2を生成してもよい。
図6(a)は、画像処理回路204の一構成例を示すブロック図であり、画像処理回路204は、その入力段に、入力画像データS1とサブ画像データS5
Aを受け、制御信号SEL1に応じた一方を選択するマルチプレクサ205を備えてもよい。後段のプロセッサ206は、マルチプレクサ205が選択した画像データに対して、所定の信号処理を施す。画像処理回路204は、メイン入力インタフェース202とグラフィックコントローラ110の間のリンクが確立する前において、サブ画像データS5
Aを選択してもよい。またメイン入力インタフェース202とグラフィックコントローラ110の間のインタフェースが故障している場合に、サブ画像データS5
Aを選択してもよい。入力画像データS1が正常に入力されるときには、画像処理回路204は入力画像データS1を選択する。あるいは画像処理回路204は、グラフィックコントローラ110からの制御データにもとづいて入力画像データS1とサブ画像データS5
Aの一方を選択してもよい。
【0061】
あるいは画像処理回路204は、(ii)入力画像データS1およびサブ画像データS5
Aを重ね合わせて、出力画像データS2を生成してもよい。
図6(b)は、画像処理回路204の一構成例を示すブロック図であり、入力画像データS1およびサブ画像データS5
Aを重ね合わせる合成回路207を備えてもよい。画像の重ね合わせにはαブレンディングなどの処理を用いることができる。あるいは、所定の領域にサブ画像データS5
Aを描画し、それ以外の領域に入力画像データS1を描画してもよい。プロセッサ206は、合成回路207によって合成された画像に対して所定の信号処理を施す。
【0062】
あるいはメイン入力インタフェース202は、入力画像データS1およびサブ画像データS5
Aの一方を選択するモードと、それらを重ね合わせるモードが切り替え可能であってもよい。つまり
図6(a)と
図6(b)の両方の機能を備えてもよい。
【0063】
(第2の実施の形態)
図7は、第2の実施の形態に係るタイミングコントローラ200Bを備える画像表示システム100Bのブロック図である。
【0064】
画像表示システム100Bは、
図2の画像表示システム100Aに加えて、マイクロコントローラ(外部のプロセッサ)108を備える。マイクロコントローラ108は、第1の実施の形態で説明したサブ画像生成機能を利用して、ディスプレイパネル102に表示すべきキャラクタなどを指定する外部制御データS3を受信する。マイクロコントローラ108とグラフィックコントローラ110が統合されるシステムでは、外部制御データS3と入力画像データS0が、同じプロセッサにより生成される。
【0065】
タイミングコントローラ200Bはサブ入力インタフェース210を備える。サブ入力インタフェース210は、第2ライン114を介してマイクロコントローラ108と接続され、外部制御データS3を受信する。タイミングコントローラ200Bとマイクロコントローラ108とのインタフェースには、SPI(Serial Peripheral Interface)またはI2C(Inter-Integrated Circuit)インタフェースを用いることができる。
【0066】
第1ライン112と第2ライン114の独立性から、第1ライン112が故障した状態や、システムの起動時に、メイン入力インタフェース202とグラフィックコントローラ110のリンクが確立する前の状態においても、サブ入力インタフェース210は、グラフィックコントローラ110から外部制御データS3を受信可能となっている点に留意されたい。
【0067】
第1の実施の形態と同様に、画像処理回路204Bは、車両信号S8にもとづいたサブ画像データS5Aを生成可能である。それに加えて画像処理回路204Bは、サブ入力インタフェース210が受信した外部制御データS3にもとづいて、サブ画像データS5Bを生成可能である。
【0068】
外部制御データS3によって表示を制御可能な情報は複数であってもよく、そのうちのひとつは、車両信号S8が相関を有する特定情報であってもよい。たとえば外部制御データS3は、車速に加えて、エンジンの回転数、各種警告灯の点灯の有無を情報として含んでもよい。
【0069】
図8は、タイミングコントローラ200Bのサブ画像発生器260Bの構成例を示すブロック図である。サブ画像発生器260Bは、
図4のサブ画像発生器260と同様に構成することができる。相違点は、画像デコーダ266に外部制御データS3が入力されている点である。
【0070】
外部制御データS3は、ディスプレイパネル102に表示すべきキャラクタを指定する。画像デコーダ266は外部制御データS3が入力されると、外部制御データS3が指定するキャラクタに対応するキャラクタデータS10を読出し、サブ画像データS5Bを生成する。
【0071】
以上がタイミングコントローラ200Bの構成である。続いてタイミングコントローラ200Bの動作を説明する。
【0072】
図9(a)、(b)は、タイミングコントローラ200Bの動作を説明する図である。
図9(a)には、正常状態における車載用ディスプレイ600が示される。この車載用ディスプレイ600はディスプレイパネル102に対応しており、コンソールパネル602に埋め込まれる。正常時においては、グラフィックコントローラ110が生成する入力画像データS0には、スピードメータ604、エンジンの回転数を示すタコメータ606、燃料の残量608、ハイブリッド自動車や電気自動車にあってはバッテリの残量などが含まれる。
【0073】
図9(b)は、外部制御データS3にもとづく画像が示される。入力画像データS1が表示できない状況が生ずると、ディスプレイパネル102がブラックアウトし、運転に支障をきたす。
【0074】
そこで、マイクロコントローラ108は、入力画像データS1が表示できない状況において、それに代替する情報(たとえば車速610、エンジンの回転数612、燃料の残量、バッテリの残量など)を含む外部制御データS3を生成する。これにより、タイミングコントローラ200Bのサブ画像生成機能を利用して、有意な情報をリアルタイムで表示することができる。これにより安全性を高めることができる。
【0075】
あるいは、自動車のイグニションオンに際して、画像表示システム100が起動する際に、入力画像データS1が表示できるようになるまでの間、”PLEASE WAIT...”や、現在の時刻などの文字列を含む外部制御データS3を、タイミングコントローラ200Bに与えることにより、サブ画像データS5Bとして表示することが可能となる。
【0076】
以上がタイミングコントローラ200Bの動作である。このタイミングコントローラ200Bによれば、2重のフェイルセーフを実現できる。すなわち、通常状態では、グラフィックコントローラ110が生成した入力画像データS0にもとづくメイン画像をディスプレイパネル102に表示できる(
図9(a)、
図3(a))。
【0077】
そして、グラフィックコントローラ110との通信エラーが発生した場合には、マイクロコントローラ108によって、速度やエンジンの回転数などの情報を含む外部制御データS3を生成することにより、運転者に重要なリアルタイム情報を提示しつづけることができる(
図9(b))。
【0078】
さらに外部制御データS3の生成、あるいは伝送に支障が生じた場合には、タイミングコントローラ200Bが、グラフィックコントローラ110やマイクロコントローラ108には依存せずに、車両信号S8にもとづいて、必要最低限のリアルタイム情報を提示し続けることができる(
図3(b))。
【0079】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0080】
(変形例1)
実施の形態では、フェイルセーフのために、サブ画像データを用いたがその限りでない。たとえば、グラフィックコントローラ110は、スピードメータ500を除いた入力画像データS0を生成してもよい。サブ画像発生器260は常時、アクティブ(イネーブル)であり、速度情報を示すサブ画像データS5Aを生成し、入力画像データS1とサブ画像データS5Aを合成して、出力画像データS2を生成してもよい。
【0081】
(変形例2)
実施の形態では、車両信号S8が、車速信号である場合を説明したがその限りでない。たとえば特定情報は車載バッテリに関する情報であり、車両信号S8はバッテリの電圧であってもよい。車載バッテリは、スターターバッテリであってもよい。ハイブリッド自動車や電気自動車の場合には、リチウムイオン電池の電圧を監視対象としてもよい。これにより、バッテリの電圧低下状態、劣化状態や残量などを、タイミングコントローラ200の情報デコーダ264において判定し、サブ画像として表示することができる。
【0082】
あるいは特定情報は温度であり、車両信号S8は、温度計の出力を含んでもよい。これにより、エンジンの温度をサブ画像として表示できる。
【0083】
ひとつのタイミングコントローラ200に入力される車両信号S8の個数は2以上であってもよい。
【0084】
(変形例3)
実施の形態では、タイミングコントローラ200とソースドライバ106が別個のチップであったが、それらは統合されていてもよい。この場合、出力インタフェース回路208が省略される。
【0085】
(変形例4)
実施の形態では、車両信号S8が、特定のインタフェース(レシーバ)を必要とせずに受信可能、アクセス可能な信号であったがその限りではない。車両信号S8は、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)などのインタフェースを介してアクセス可能な信号であってもよい。この場合のCANやLINのトランシーバを、上述のサブ入力インタフェース210と混同してはならない。
【0086】
サブ入力インタフェース210を介して入力される外部制御データは、ディスプレイパネル102に表示すべきキャラクタを直接的に指定するデータであるといえる。つまり外部制御データS3を生成するマイクロコントローラ108は、どのコードを与えると、どのような情報がディスプレイパネルに表示されるかを予め知っており、外部制御データS3は、マイクロコントローラ108の内部処理を意識して生成されていると言える。一方、CANやLINなどのインタフェースによってアクセス可能な車両信号S8は、必ずしもキャラクタを直接的に指定するものではない。したがって車両信号S8は、タイミングコントローラ108の内部処理を意識せずに生成されていると言える。
【0087】
CANやLINなどのトランシーバをタイミングコントローラ200に実装することにより、サブ画像発生器260によって表示可能な特定情報を拡張できる。
【0088】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0089】
100…画像表示システム、102…ディスプレイパネル、104…ゲートドライバ、106…ソースドライバ、108…マイクロコントローラ、110…グラフィックコントローラ、112…第1ライン、114…第2ライン、200…タイミングコントローラ、201…表示パターン、202…メイン入力インタフェース、204…画像処理回路、205…マルチプレクサ、206…プロセッサ、207…合成回路、208…出力インタフェース回路、210…サブ入力インタフェース、250…入力ピン、260…サブ画像発生器、262…メモリ、264…情報デコーダ、266…画像デコーダ、270…異常検出器、S0,S1…入力画像データ、S2…出力画像データ、S3…外部制御データ、S5…サブ画像データ、S8…車両信号、S10…キャラクタデータ、S11…内部制御データ、500…スピードメータ、502…タコメータ、504…シフトインジケータ、600…車載用ディスプレイ、800…セグメント型キャラクタ、900…サブ画像。