(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】移動物体認識装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20220929BHJP
G01C 21/30 20060101ALI20220929BHJP
G01S 13/89 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G01C21/30
G01S13/89
(21)【出願番号】P 2017182137
(22)【出願日】2017-09-22
【審査請求日】2020-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】中川 亮
【審査官】久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-292541(JP,A)
【文献】特開2008-152388(JP,A)
【文献】特開2015-210588(JP,A)
【文献】特開2009-186277(JP,A)
【文献】特開2003-270342(JP,A)
【文献】特開2015-105836(JP,A)
【文献】特開2005-227947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G01C 21/30
G01S 13/931
G01S 13/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位信号を受信して自車両の位置を推定する自車位置推定手段と、
道路地図情報を記憶する記憶手段と、
前記自車両の前方及び前側方からの反射パルスを受信して周辺物体の距離及び方角を検知するレーダ検知手段と、
前記道路地図情報に前記自車位置推定手段で推定した前記自車両の位置をマップマッチングして前記自車両の道路地図上の位置を取得する地図自車位置取得手段と、
前記レーダ検知手段で検知した前記周辺物体を前記自車両からの距離及び方角に基づき前記道路地図情報にマップマッチングして前記周辺物体の道路地図上の位置を取得する地図周辺物体位置取得手段と、
前記地図周辺物体位置取得手段で取得した前記周辺物体の道路地図上の位置が前記自車両の進行路上に位置し、且つ
該周辺物体が前記自車両の進行方向に関する相対的な位置関係を示す情報を保有している場合、前記周辺物体を移動物体として認識する移動物体認識手段と
を備える移動物体認識装置において、
前記移動物体認識手段で認識した前記移動物体が前記自車両の進行路に位置し、且つ該移動物体の進行方向が該自車両の進行方向と相違している場合、虚像と判定して
前記道路地図上にマップマッチングした該移動物体
を消去する虚像検出手段
を備えることを特徴とする移動物体認識装置。
【請求項2】
前記自車両の進行方向に関する相対的な位置関係を示す情報には、該自車両と
前記周辺物体との相対位置、相対速度、前記自車両を基準とする
該周辺物体の移動方向が含まれている
ことを特徴とする請求項1記載の移動物体認識装置。
【請求項3】
前記虚像検出手段は、前記移動物体認識手段で認識した前記移動物体が前記自車両の進行路の後方に位置している場合であっても、該移動物体の進行方向が該自車両の進行方向と相違している場合は虚像と判定して該移動物体を前記道路地図上から消去する
ことを特徴とする請求項1或いは2記載の移動物体認識装置。
【請求項4】
前記移動物体認識手段で認識した前記移動物体が前記自車両の進行路の後方に位置し、且つ該移動物体の進行方向が該自車両の進行方向と同一の場合、該移動物体を実像と認識する実像認識手段
を更に有することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の移動物体認識装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両に搭載したレーダ検知手段で検知した移動物体を虚像と判定した場合は当該移動物体を消去する移動物体認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両前方の移動物体や、自車両に対して後方から接近する移動物体を検知し、自車両と移動物体との位置関係を測定する装置としてレーダセンサ等のレーダ検知手段が多く用いられている。この種のレーダ検知手段は、超音波レーダ、ミリ波レーダ、レーザレーダ等からなり、このレーダ検知手段から発信したパルスを移動物体に放射し、その反射パルスを受信するもので、受信した反射パルスに基づき、その到達時間、方角から自車両と移動物体との距離、相対速度、自車両を基準とする移動方向等を測定する。そして、測定した移動物体の位置情報は、先行車追従制御、車線変更制御等の車両制御において利用される。
【0003】
ところで、移動物体からの反射パルスは、レーダ検知手段に直接受信されるもの以外に、壁面等の障害物に反射されて受信される二次反射パルス(マルチパス)がある。レーダ検知手段がマルチパスを受信した場合、入射直前に反射した壁面を透過した方向に、実在しない虚像(ゴースト)である移動物体が存在すると誤判定されてしまう不都合がある。
【0004】
そのため、実像と虚像とを識別し、虚像を移動物体から消去する技術が種々提案されている。例えば、特許文献1(特開2005-128603号公報)には、自車位置を道路地図データ上に特定し、レーダ検知手段で受信した反射パルスから物体(移動物体)が道路地図データの道路上に存在するか否かを調べ、道路上に実在しない場合、その移動物体は虚像であると判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば、
図5に示すように、自車両Mのレーダ検知手段から前方を走行する周辺移動物体(先行車)Pに対してパルスを放射し、その反射パルスが中央分離帯の壁面W1で反射してレーダ検知手段に受信された場合、対向車線の道路上に実際には存在しない移動物体PG1が虚像(ゴースト)として検出される。この場合、上述した文献に開示されている技術では、道路地図データが隣接する対向車線を識別できない精度であれば、虚像として消去することができない。尚、同図の塗潰し矢印は道路の進行方向を示す。
【0007】
一方、
図4(a)に示すように、例えば、自車両Mが、いわゆる丁字路から優先道路に左折しようとするに際し、接近する周辺移動物体Pからの反射パルスが壁面W1に反射して、自車両Mのレーダ検知手段に受信された場合、この実在しない移動物体PG1は、自車進行路上で検出されているので、虚像として消去することが困難となる。尚、
図4、
図5においては、説明を容易にするため、反射パルスのみを示し、自車両Mから放射されるパルスは省略している。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、レーダ検知手段で検知した反射パルスに基づき、実在しない移動物体が道路地図データの道路上にマップマッチングされた場合であっても、当該移動物体を虚像として消去することで、信頼の高い実像のみを残すことのできる移動物体認識装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、測位信号を受信して自車両の位置を推定する自車位置推定手段と、道路地図情報を記憶する記憶手段と、前記自車両の前方及び前側方からの反射パルスを受信して周辺物体の距離及び方角を検知するレーダ検知手段と、前記道路地図情報に前記自車位置推定手段で推定した前記自車両の位置をマップマッチングして前記自車両の道路地図上の位置を取得する地図自車位置取得手段と、前記レーダ検知手段で検知した前記周辺物体を前記自車両からの距離及び方角に基づき前記道路地図情報にマップマッチングして前記周辺物体の道路地図上の位置を取得する地図周辺物体位置取得手段と、前記地図周辺物体位置取得手段で取得した前記周辺物体の道路地図上の位置が前記自車両の進行路上に位置し、且つ該周辺物体が前記自車両の進行方向に関する相対的な位置関係を示す情報を保有している場合、前記周辺物体を移動物体として認識する移動物体認識手段とを備える移動物体認識装置において、前記移動物体認識手段で認識した前記移動物体が前記自車両の進行路に位置し、且つ該移動物体の進行方向が該自車両の進行方向と相違している場合、虚像と判定して前記道路地図上にマップマッチングした該移動物体を消去する虚像検出手段
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、移動物体認識手段で認識した移動物体が自車両の進行路の前方に位置し、且つ移動物体の進行方向が自車両の進行方向と相違している場合には、虚像と判定して道路地図上から消去するようにしたので、レーダ検知手段で検知した反射パルスに基づき、実在しない移動物体が道路地図データの道路上にマップマッチングされた場合であっても、当該移動物体を虚像として消去することで、信頼の高い実像のみを残すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】走行環境認識処理ルーチンを示すフローチャート(その1)
【
図3】走行環境認識処理ルーチンを示すフローチャート(その2)
【
図4】(a)は丁字路から優先道路へ左折する際に先行する移動物体を虚像と認識する態様を示す説明図、(b)は丁字路から優先道路へ左折する際に右手から接近する移動物体を虚像と認識する態様を示す説明図
【
図5】中央分離帯を有する走行車線を走行中における周辺環境認識処理を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態による運転支援装置は自車両Mに搭載されており、走行環境認識部1と車両制御部2と道路地図データベース3とを有している。
【0013】
又、走行環境認識部1の入力側に、GPS衛星を代表とする複数の測位衛星から発信される測位信号を受信するGNSS(Global Navigation Satellite System)受信部11、自車両Mの前部に配置されて前方及び前側方の障害物、移動物体(車両、自動二輪車、自転車、歩行者等)等の周辺物体を検出する、ミリ波レーダ、レーザレーダ等からなるレーダ検知手段としての前方レーダセンサ12等が接続されている。本実施形態では、この前方レーダセンサ12として、自車両Mの前方、及び前側方を含む比較的広角な範囲を走査することのできる広角レーダを採用している。
【0014】
走行環境認識部1は、CPU,RAM,ROM等を備える周知のマイクロコンピュータ、及びその周辺機器で構成されており、ROMにはCPUで実行するプログラムやベースマップ等の固定データ等が予め記憶されている。
【0015】
又、車両制御部2は車両制御を行う機能の総称であり、具体的には、自車両Mを車線に沿って走行させる車線維持制御(レーンキープ制御)、自車両Mを先行車に追従走行させる先行車追従制御(ACC:Adaptive Cruise Control)、安全に自車両Mを車線変更させる車線変更制御、障害物との衝突を事前に予測する衝突防止制御等を実現するための操舵制御、駆動源(エンジンや駆動用電動モータ等)の出力を制御するパワー制御、ブレーキ制御等の機能を有する。
【0016】
尚、車両制御部2もCPU,RAM,ROM等を備える周知のマイクロコンピュータ、及びその周辺機器で構成されており、ROMにはCPUで実行するプログラムやベースマップ等の固定データ等が予め記憶されている。
【0017】
道路地図データベース3はHDD等の記憶手段としての大容量記憶媒体であり、道路地図情報3aが記憶されている。この道路地図情報3aには道路の車線データ(車線数、車線幅データ、車線中央位置座標データ、車線の進行方位角データ、制限速度等)が道路地図上の各車線に所定間隔で格納されている。
【0018】
又、走行環境認識部1は、前方レーダセンサ12で受信した自車両Mの前方、及び前側方からの反射パルスに基づき前方走行環境情報を取得し、この情報に基づき、移動物体を検出すると共に、検出した移動物体がマルチパスによる虚像か否かを調べ、虚像と認識した場合には消去して、実在する移動物体のみを周辺移動物体として認識する。走行環境認識部1は、周辺移動物体を認識する機能として、自車位置推定部1a、移動物体認識部1b、周辺移動物体認識部1cを備えている。
【0019】
自車位置推定部1aは、GNSS受信部11で受信した測位信号に基づき自車位置を推定し、道路地図情報3aの道路地図上にマップマッチングする。
【0020】
移動物体認識部1bは、道路地図上にマップマッチングした自車位置を基準として、前方レーダセンサ12で取得した前方走行環境情報に基づき、周辺の物体(周辺物体)の中から自車両Mと移動物体との距離、相対速度、自車両を基準とする移動方向等に基づき、それが移動する移動物体か否かを認識する。
【0021】
周辺移動物体認識部1cは、移動物体認識部1bで認識した移動物体が実像か虚像かを調べ、実像と認識した場合は、当該移動物体を周辺移動物体として認識し、当該周辺移動物体の情報を車両制御部2へ送信する。一方、移動物体を虚像と判定した場合は、当該移動物体を道路地図上の情報から消去する。
【0022】
上述した走行環境認識部1で実行される各機能は、具体的には、
図2、
図3に示す走行環境認識処理ルーチンに従って行われる。ここで、ステップS1,S2での処理が自車位置推定部1aで実行する機能、ステップS3~S8での処理が移動物体認識部1bで実行する機能、ステップS9~S14での処理が周辺移動物体認識部1cで実行する機能に相当する。
【0023】
このルーチンでは、先ず、ステップS1においてGNSS受信部11で受信した、測位衛星からの測位信号に基づき自車位置(座標系)を推定する。従って、このステップでの処理が本発明の自車位置推定手段に対応している。
【0024】
そして、ステップS2で、推定した自車位置の座標を道路地図データベース3に格納されている道路地図情報3aの道路地図上にマップマッチングして、道路地図上の自車位置を取得する。従って、このステップでの処理が、本発明の地図自車位置取得手段に対応している。
【0025】
その後、ステップS3へ進み、道路地図上の自車位置を中心とする道路地図の周辺データを読込む。又、ステップS4で、前方レーダセンサ12で取得した前方走行環境情報に基づき、反射パルスの到達時間から求めた距離、及び方角等の情報に基づき自車両Mの周辺物体を検出する。そして、ステップS5へ進み、検出した各周辺物体を、前記自車位置を基準とする距離及び方角に基づき道路地図上にマップマッチングする。尚、周辺物体が複数検出された場合、個々の周辺物体についてマップマッチングを行う。従って、このステップS4,S5での処理が本発明の地図周辺物体位置取得手段に対応している。
【0026】
次いで、ステップS6へ進み、このステップS6~S8で、個々の周辺物体が移動物体(車両、自動二輪車、自転車、歩行者等)か否かを調べる。ステップS6では周辺物体が、自車両Mがマップマッチングしている道路、すなわち、道路地図上に設定した自車進行路にあるか否かを調べる。自車進行路は自動運転においては目的地まで導く目標進行路であり、
図5に示す直進路以外に、
図4(a),(b)に示す丁字路から左折で進入する優先道路も自車進行路となる。尚、
図4(a),(b)の白抜き矢印は車両の進行方向を示す。 又、車線維持制御では、
図5に示す直進路では自車両Mが走行している車線が自車進行路として設定される。一方、
図4(a),(b)に示す丁字路から優先道路に進入するに際しては運転者のターンシグナルスイッチの左折方向へのON操作を検知することで優先道路が自車進行路として設定される。尚、
図4、
図5は例示であり、自車進行路の設定はこれに限定されるものではない。
【0027】
そして、周辺物体が道路地図上に設定されている自車進行路から外れている場合(例えば、
図4(a)、
図5に示す周辺物体PG1)は、ステップS11へジャンプする。
図4(a)、
図5に示す周辺物体PG1は、自車両Mの前方レーダセンサ12からの放射したパルスの、後述する周辺移動物体Pからの反射パルスがガードレールや中央分離帯の壁面W1に反射されて受信されたマルチパスによる虚像である。尚、
図4、
図5においては、説明を容易にするため前方レーダセンサ12から放射するパルスは省略し、受信する反射パルスのみを示す。
【0028】
図4(a)に示す周辺物体PG1は道路地図上に登録されている道路から外れており、又、
図5に示す周辺物体PG1は道路地図上に登録されている対向車線上にある虚像であり、何れの場合も自車進行路から外れている。
【0029】
一方、周辺物体が自車両Mと同一の道路上にマップマッチングされている場合(例えば、
図4の周辺移動物体P、移動物体PG2)は、ステップS7へ進み、周辺物体が自車両Mの進行方向と関係する情報を保有しているか否かを調べる。尚、
図4(a)に示す移動物体PG2は、丁字路の右方向から自車両Mに接近する、後述する周辺移動物体(車両)Pの反射パルスが丁字路の壁面W2に反射して前方レーダセンサ12に受信されたマルチパスによる虚像である。同図(b)に示す移動物体PG2は、丁字路を通過した周辺移動物体(車両)Pの反射パルスが丁字路の壁面W2に反射して前方レーダセンサ12に受信されたマルチパスによる虚像である。
【0030】
ここで、自車両Mの進行方向と関係する情報とは、自車両Mとの相対位置、相対速度、自車両Mを基準とする移動方向等、自車両Mの進行方向に関する相対的な位置関係を示す各種パラメータであり、特定したパラメータの全てが該当する場合、情報を保有していると判定する。例えば、
図4に示す移動物体PG2は、自車両Mの進行方向に関する相対的な位置関係を示す情報を有していると判定される。
【0031】
そして、相対的な位置関係を示す情報を保有していると判定された場合は、ステップS8へ進む。又、このような情報を保有していないと判定された場合は、ステップS13へジャンプする。
【0032】
ステップS8へ進むと、当該周辺物体を移動物体として認識し、ステップS9へ進む。従って、この移動物体には実像(周辺移動物体P)と虚像(移動物体PG2)との双方が含まれている。尚、ステップS6~S8での処理が、本発明の移動物体認識手段に対応している。
【0033】
ステップS9以降では、認識した移動物体が実像である周辺移動物体Pか虚像かを調べ、虚像と判定した場合は、当該移動物体を道路地図上から消去する。
【0034】
先ず、ステップS9では、道路地図上にマップマッチングされている移動物体の位置と自車両Mの位置(自車位置)との関係から、対象とする移動物体が自車両Mの走行する進行路の前方に位置しているか否かを調べる。例えば、
図5に示すように、対象となる移動物体が前方に存在している場合はステップS11へ進む。
【0035】
又、対象としている移動物体が、
図4(a)に示す周辺移動物体P、同図(b)に示す移動物体PG2の場合は、ステップS10へ分岐する。一方、対象としている移動物体が、
図4(a)に示す移動物体PG2、同図(b)に示す周辺移動物体Pの場合は、ステップS11へ進む。
【0036】
ステップS10へ進むと、移動物体の進行方向と自車両の進行方向とを比較し、ほぼ一致している場合はステップS14へ進み、大きく相違している場合はステップS12へ分岐する。尚、この場合、移動物体の進行方向と道路地図に記憶されている道路の進行方向を示す方位角とを比較するようにしても良い。
【0037】
図4(a)に示すように、優先道路を走行する車両が実像である周辺移動物体Pの場合、自車両Mの進行路とほぼ同じ方向へ進行する。一方、
図4(b)に示すように、移動物体PG2が周辺移動物体Pの虚像である場合、この移動物体PG2は、周辺移動物体Pと対称な方向へ移動するため自車両Mの進行方向とは逆方向への移動となる。
【0038】
そのため、移動物体の進行方向が自車両Mとほぼ一致する場合は、実像と判定しステップS14へ進み、進行方向が大きく相違する場合は虚像と判定し、ステップS12へ進む。
【0039】
又、ステップS9からステップS11へ進むと、上述したステップS10と同様、移動物体の進行方向と自車両の進行方向とを比較し、ほぼ一致している場合はステップS14へジャンプし、大きく相違している場合はステップS12へ進む。この場合も、上述と同様、移動物体の進行方向と道路地図に記憶されている道路の進行方向を示す方位角とを比較するようにしても良い。
【0040】
図4(a)に示すように、優先道路を走行する車両が虚像の移動物体PG2の場合、進行方向は自車両Mとほぼ逆方向となる。一方、
図4(b)に示すように、移動物体が実像の周辺移動物体Pである場合、進行方向は自車両Mとほぼ同一となる。そのため、移動物体の進行方向が自車両Mとほぼ一致する場合は、実像と判定しステップS14へジャンプし、進行方向が大きく相違する場合は虚像と判定し、ステップS12へ進む。
【0041】
そして、ステップS12へ進むと、当該移動物体(
図4(a),(b)のPG2)は虚像であると認識し、ステップS13へ進み、当該移動物体を道路地図から消去して、ルーチンを抜ける。尚、ステップS9~S13での処理が本発明の虚像検出手段に対応している。
【0042】
一方、ステップS10、或いはステップS11からステップS14へ進むと、移動物体を実像である周辺移動物体Pと認識する。尚、このステップS9からステップS10を経てステップS14へ至る処理が本発明の実像認識手段に対応している
その後、ステップS15へ進み、当該周辺移動物体Pの情報を車両制御部2へ送信してルーチンを抜ける。
【0043】
車両制御部2では、走行環境認識部1で認識した周辺移動物体Pの情報に基づき、例えば、
図4(a)に示すように、自車両Mが丁字路から優先道路に左折で進入しようとするに際し、右手から周辺移動物体(図では車両)Pの接近が検出された場合、自動運転においては、当該周辺移動物体Pが通過するまで停止状態を維持する。その際、前方から接近してくる移動物体PG2は虚像と判断して消去されているため、車両制御部2による急ブレーキ等の誤動作を未然に防止することができる。
【0044】
又、
図4(b)に示すように、周辺移動物体Pが丁字路を通過した後、自車両Mを優先道路に左折で進入しようとするに際し、虚像である右手の移動物体PG2が消去されているため、当該移動物体PG2の誤検出による発進時のブレーキ作動を未然に防止することができる。
【0045】
このように、本実施形態では、前方レーダセンサ12で検出した実在しない移動物体を道路地図データの道路上にマップマッチングした場合であっても、自車両Mと関係する情報(自車両Mとの相対位置、相対速度、自車両Mを基準とする移動方向等)を保有しているか否かを調べ、更に、移動物体と自車両Mとの移動方向を調べ、自車両Mと関係する情報を保有しておらず、或いは情報を保有していても移動方向が大きく相違している場合は、虚像として消去するようにしたので、信頼の高い実像のみを周辺移動物体Pとして認識することができる。
【0046】
その結果、車両制御部2には自車両Mの運転に必要な周辺移動物体Pの情報のみが送信されるため誤作動が未然に防止され良好な走行制御性を得ることができる。 尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば自車両Mが丁字路を右折し、或いは十字路を直進、或いは右左折する際にも、本発明を適用することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0047】
1…走行環境認識部、
1a…自車位置推定部、
1b…移動物体認識部、
1c…周辺移動物体認識部、
2…車両制御部、
3…道路地図データベース、
3a…道路地図情報、
11…GNSS受信部、
12…前方レーダセンサ、
M…自車両、
P…周辺移動物体、
PG1…周辺物体、
PG2…移動物体、
W1,W2…壁面