(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】車両用灯具ユニット
(51)【国際特許分類】
F21S 41/162 20180101AFI20220929BHJP
F21S 41/663 20180101ALI20220929BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220929BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20220929BHJP
【FI】
F21S41/162
F21S41/663
F21Y115:10
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2017205824
(22)【出願日】2017-10-25
【審査請求日】2020-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】金澤 隆志
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-146133(JP,A)
【文献】特開2016-110818(JP,A)
【文献】国際公開第2017/104678(WO,A1)
【文献】特開2012-238417(JP,A)
【文献】特開2018-098105(JP,A)
【文献】特開2016-039020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロービーム用配光パターンを形成する第1光学系と、ハイビーム用配光パターンを形成する第2光学系と、を備えた車両用灯具ユニットにおいて、
前記第1光学系は、
前端開口が後端開口より大きく前端開口から後端開口に向かうに従って錐体状に狭くなる、上下左右に設けられた第1反射面によって構成される第1筒型反射面と、
前記後端開口に対向して設けられた第1光源と、
前記前端開口に対向して設けられ、前記第1反射面のうち下に設けられた反射面の前端縁近傍に焦点が位置し、前記第1光源からの直射光及び前記第1筒型反射面で反射された前記第1光源からの反射光を前方に照射する第1投影レンズと、を備え、
前記第1反射面のうち下に設けられた反射面の前端縁は、前記ロービーム用配光パターンのカットオフラインに対応した形状に構成され、
前記第2光学系は、
前端開口が後端開口より大きく前端開口から後端開口に向かうに従って錐体状に狭くなる、上下左右に設けられた第2反射面によって構成される第2筒型反射面と、
前記後端開口に対向して設けられた第2光源と、
前記前端開口に対向して設けられ、前記第2光源近傍に焦点が設けられ、前記第2光源からの直射光及び前記第2筒型反射面で反射された前記第2光源からの反射光を前方に照射する第2投影レンズと、を備え、
前記第1光学系と前記第2光学系は、並列に配置され、
前記第1光源及び前記第2光源は、第1平面上に配置され、
前記第1投影レンズ及び前記第2投影レンズは、前記第1平面より前方の第2平面上に配置され、
前記第2反射面のうち下に設けられた反射面は、上に設けられた反射面より前方に延長された延長反射面を含み、
前記延長反射面は、前記第2投影レンズと前記第2投影レンズの前記焦点との間に配置されており、
前記第2投影レンズは、前記第2光源の中央近傍を通り、かつ、車両前後方向に延びる光軸に対して左側のレンズ部及び右側のレンズ部を含み、
水平方向に関し、前記左側のレンズ部のうち前記光軸から遠いレンズ部の焦点は、前記光軸から近くに位置し、前記左側のレンズ部のうち前記光軸から近いレンズ部の焦点は、前記光軸から遠くに位置し、前記左側のレンズ部のうち前記光軸から遠いレンズ部と前記光軸から近いレンズ部との間の中間のレンズ部の焦点は、前記光軸から遠いレンズ部の焦点と前記光軸から近いレンズ部の焦点との間に位置し、
水平方向に関し、前記右側のレンズ部のうち前記光軸から遠いレンズ部の焦点は、前記光軸から近くに位置し、前記右側のレンズ部のうち前記光軸から近いレンズ部の焦点は、前記光軸から遠くに位置し、前記右側のレンズ部のうち前記光軸から遠いレンズ部と前記光軸から近いレンズ部との間の中間のレンズ部の焦点は、前記光軸から遠いレンズ部の焦点と前記光軸から近いレンズ部の焦点との間に位置し、
前記左
側のレンズ部の焦点群及び前記右
側のレンズ部の焦点群は、水平方向に関し、焦線を構成する車両用灯具ユニット。
【請求項2】
前記第1光源及び前記第2光源は、同一基板に実装されており、
前記第1投影レンズ及び前記第2投影レンズは、一体成形されている請求項1に記載の車両用灯具ユニット。
【請求項3】
ハイビーム用配光パターンを形成する車両用灯具において、
前端開口が後端開口より大きく前端開口から後端開口に向かうに従って錐体状に狭くなる、上下左右に設けられた反射面によって構成される筒型反射面と、
前記後端開口に対向して設けられた光源と、
前記前端開口に対向して設けられ、前記光源近傍に焦点が設けられ、前記光源からの直射光及び前記筒型反射面で反射された前記光源からの反射光を前方に照射する第2投影レンズと、を備え、
前記上下左右に設けられた反射面のうち下に設けられた反射面は、上に設けられた反射面より前方に延長された延長反射面を含み、
前記延長反射面は、前記第2投影レンズと前記第2投影レンズの前記焦点との間に配置されており、
前記第2投影レンズは、
前記光源の中央近傍を通り、かつ、車両前後方向に延びる光軸に対して左側のレンズ部及び右側のレンズ部を含み、
水平方向に関し、前記左側のレンズ部のうち前記光軸から遠いレンズ部の焦点は、前記光軸から近くに位置し、前記左側のレンズ部のうち前記光軸から近いレンズ部の焦点は、前記光軸から遠くに位置し、前記左側のレンズ部のうち前記光軸から遠いレンズ部と前記光軸から近いレンズ部との間の中間のレンズ部の焦点は、前記光軸から遠いレンズ部の焦点と前記光軸から近いレンズ部の焦点との間に位置し、
水平方向に関し、前記右側のレンズ部のうち前記光軸から遠いレンズ部の焦点は、前記光軸から近くに位置し、前記右側のレンズ部のうち前記光軸から近いレンズ部の焦点は、前記光軸から遠くに位置し、前記右側のレンズ部のうち前記光軸から遠いレンズ部と前記光軸から近いレンズ部との間の中間のレンズ部の焦点は、前記光軸から遠いレンズ部の焦点と前記光軸から近いレンズ部の焦点との間に位置し、
前記左
側のレンズ部の焦点群及び前記右
側のレンズ部の焦点群は、水平方向に関し、焦線を構成する車両用灯具ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、並列に(例えば、上下に並列に)配置された第1光学系と第2光学系とを備えた車両用灯具が提案されている(例えば、特許文献1(
図3等)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用灯具においては、一方の光学系がダイレクトプロジェクション型(直射型とも呼ばれる)の光学系で、他方の光学系がプロジェクタ型の光学系として構成されているため、車両前後方向の寸法が長くなるという課題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、車両前後方向の寸法を短くすることができる車両用灯具ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一つの側面は、ロービーム用配光パターンを形成する第1光学系と、ハイビーム用配光パターンを形成する第2光学系と、を備えた車両用灯具において、前記第1光学系は、前端開口が後端開口より大きく前端開口から後端開口に向かうに従って錐体状に狭くなる、上下左右に設けられた第1反射面によって構成される第1筒型反射面と、前記後端開口に対向して設けられた第1光源と、前記前端開口に対向して設けられ、前記第1反射面のうち下に設けられた反射面の前端縁近傍に焦点が位置し、前記第1光源からの直射光及び前記第1筒型反射面で反射された前記第1光源からの反射光を前方に照射する第1投影レンズと、を備え、前記第1反射面のうち下に設けられた反射面の前端縁は、前記ロービーム用配光パターンのカットオフラインに対応した形状に構成され、前記第2光学系は、前端開口が後端開口より大きく前端開口から後端開口に向かうに従って錐体状に狭くなる、上下左右に設けられた第2反射面によって構成される第2筒型反射面と、前記後端開口に対向して設けられた第2光源と、前記前端開口に対向して設けられ、前記第2光源近傍に焦点が設けられ、前記第2光源からの直射光及び前記第2筒型反射面で反射された前記第2光源からの反射光を前方に照射する第2投影レンズと、を備え、前記第1光学系と前記第2光学系は、並列に配置され、前記第1光源及び前記第2光源は、第1平面上に配置され、前記第1投影レンズ及び前記第2投影レンズは、前記第1平面より前方の第2平面上に配置されたことを特徴とする。
【0007】
この側面によれば、上記従来技術と比べ、車両前後方向の寸法を短くすることができる車両用灯具ユニットを提供することができる。
【0008】
これは、第1光学系及び第2光学系がいずれもダイレクトプロジェクション型の光学系として構成されていることによるものである。
【0009】
また、この側面によれば、第1光源及び第2光源が同一の第1平面上に配置され、かつ、第1投影レンズ及び第2投影レンズが同一の第2平面上に配置されたシンプルな構造の車両用灯具ユニットを提供することができる。
【0010】
これは、第1投影レンズと第1光源との間に第1筒型反射面を設けて、相対的に焦点距離が短い第1投影レンズの焦点を下に設けられた反射面の前端縁近傍に位置させたこと、及び、相対的に焦点距離が長い第2投影レンズの焦点を第2光源近傍に位置させたこと、によるものである。
【0011】
また、上記発明において、好ましい態様は、前記第1光源及び前記第2光源は、同一基板に実装されており、前記第1投影レンズ及び前記第2投影レンズは、一体成形されていることを特徴とする。
【0012】
この態様によれば、第1光源及び第2光源が同一の基板上に配置され、かつ、第1投影レンズ及び第2投影レンズが一体成形された、組み立てが容易な車両用灯具ユニットを提供することができる。
【0013】
また、上記発明において、好ましい態様は、前記第2反射面のうち下に設けられた反射面は、上に設けられた反射面より前方に延長された延長反射面を含むことを特徴とする。
【0014】
この態様によれば、ハイビーム用配光パターンの、水平線より上の鉛直方向の厚みを、水平線より下の鉛直方向の厚みより厚くすることができる。
【0015】
これは、下に設けられた反射面が、上に設けられた反射面より前方に延長された延長反射面を含むことによるものである。
【0016】
本発明の一つの側面は、ハイビーム用配光パターンを形成する車両用灯具において、前端開口が後端開口より大きく前端開口から後端開口に向かうに従って錐体状に狭くなる、上下左右に設けられた反射面によって構成される筒型反射面と、前記後端開口に対向して設けられた光源と、前記前端開口に対向して設けられ、前記光源近傍に焦点が設けられ、前記光源からの直射光及び前記筒型反射面で反射された前記光源からの反射光を前方に照射する投影レンズと、を備え、前記上下左右に設けられた反射面のうち下に設けられた反射面は、上に設けられた反射面より前方に延長された延長反射面を含むことを特徴とする。
【0017】
この側面によれば、ハイビーム用配光パターンの、水平線より上の鉛直方向の厚みを、水平線より下の鉛直方向の厚みより厚くすることができる。
【0018】
これは、下に設けられた反射面が、上に設けられた反射面より前方に延長された延長反射面を含むことによるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】車両用灯具ユニット10の鉛直断面図である。
【
図6】(a)第2筒型反射面31の斜視図、(b)
図6(c)に示す第2筒型反射面31のK-K断面図、(c)第2筒型反射面31の正面図、(d)
図6(c)に示す第2筒型反射面31のJ-J断面図である。
【
図7】(a)ロービーム用配光パターンP
Loの例、(b)ハイビーム用配光パターンP
Hiの例、(c)左側のレンズ部33Lで制御された光によって形成された配光パターンP
Hi_1の例、(d)右側のレンズ部33Rで制御された光によって形成された配光パターンP
Hi_2の例である。
【
図8】第2投影レンズ33と光源像との関係を説明するための図である。
【
図9】第2投影レンズ33と光源像との関係を説明するための図である。
【
図10】第2投影レンズ33と光源像との関係を説明するための図である。
【
図11】第1光学系20を下側に、第2光学系30を上側に配置した場合の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態である車両用灯具ユニット10について添付図面を参照しながら説明する。各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0021】
【0022】
図1に示す車両用灯具ユニット10は、車両用前照灯(ヘッドランプ)であり、車両(図示せず)の前端部の左側及び右側に搭載される。車両用灯具ユニット10は、図示しないが、アウターレンズとハウジングとによって構成される灯室内に配置され、ハウジング等に取り付けられる。
【0023】
図2は、車両用灯具ユニット10の正面図である。
図3は車両用灯具ユニット10の鉛直断面図、
図4は第1光学系の水平断面図、
図5は第2光学系の水平断面図である。
【0024】
図1~
図5に示すように、本実施形態の車両用灯具ユニット10は、ロービーム用配光パターンを形成する第1光学系20と、ハイビーム用配光パターンを形成する第2光学系30と、を備える。第1光学系20と第2光学系30は、例えば、上下方向に並列に配置されている。具体的には、第1光学系20は上側に、第2光学系30は下側に配置されている。なお、これとは逆に、第1光学系20は下側に、第2光学系30は上側に配置してもよい。また、第1光学系20と第2光学系30は、左右方向に並列に配置してもよいし、斜め方向に並列に配置してもよい。
【0025】
図3、
図4に示すように、第1光学系20は、第1筒型反射面21と、第1光源22と、第1投影レンズ23と、を備えるダイレクトプロジェクション型(直射型とも呼ばれる)の光学系である。第1筒型反射面21、第1光源22、第1投影レンズ23は、車両前後方向に延びる第1光軸AX1上に配置されている。
【0026】
第1筒型反射面21は、前端開口A1が後端開口A2より大きく前端開口A1から後端開口A2に向かうに従って錐体状(四角錐体状)に狭くなる筒型反射面で、上下左右に設けられた反射面21a、21b、21c、21dによって構成される。以下、反射面21a、21b、21c、21dを特に区別しない場合、反射面21と記載する。反射面21が本発明の第1反射面の一例である。
【0027】
下に設けられた反射面21bの前端縁21b1(エッジ部)は、ロービーム用配光パターンのカットオフラインに対応した形状に構成される。前端縁21b1は、図示しないが、Z型の段差部を有する。
【0028】
図3、
図4に示すように、第1筒型反射面21は、第1光源22(発光面)からの光が第1筒型反射面21内を通過するように、後端開口A2と第1光源22(発光面)とが対向した状態で保持部材40に保持される。第1筒型反射面21の後端開口A2は、正面視で、第1光源22(発光面)を取り囲んでいる(図示せず)。
【0029】
第1筒型反射面21は、例えば、左右両側に設けられたネジ穴N1、N2及び基板Kに形成されたネジ穴(図示せず)に挿入されたネジ(図示せず)を保持部材40にネジ止めすることで保持部材40に保持される。
【0030】
第1光源22は、矩形(例えば、1mm角)の発光面を備えたLEDやLD等の半導体発光素子である。第1光源22は、発光面を前方(正面)に向けた状態で基板Kに実装される。第1光源22の数は、特に限定されず、1であってもよいし、複数であってもよい。第1光源22は、複数の場合、水平方向に一列に配置される。基板Kは、ネジ止め等により保持部材40に保持される。
【0031】
第1投影レンズ23は、第1筒型反射面21を通過した第1光源22(発光面)からの直射光及び第1筒型反射面21からの反射光が透過するように、第1投影レンズ23の裏面23bと第1筒型反射面21の前端開口A1とが対向した状態で保持部材40に保持される(
図3、
図4参照)。
【0032】
図1、
図2に示すように、第1投影レンズ23は、アクリルやポリカーボネイト等の透明樹脂を射出成形することにより、第2投影レンズ33、脚部50と共に一体成形されており、脚部50に設けられたネジ穴N5、N6に挿入されたネジ(図示せず)を保持部材40にネジ止めすることで保持部材40に保持される。
【0033】
図2に示すように、第1投影レンズ23は、正面視の外形が矩形の四隅をカットした形状(八角形形状)のレンズとして構成されている。
【0034】
図3に示すように、第1投影レンズ23の焦点F
23は、下に設けられた反射面21bの前端縁21b1近傍に位置する。
【0035】
上記構成の第1光学系20においては、第1光源22を点灯すると、第1光源22からの直射光及び第1筒型反射面21からの反射光が第1投影レンズ23を透過して前方に照射される。その際、第1光源22からの直射光及び第1筒型反射面21からの反射光によって第1筒型反射面21の前端開口A1に形成された光度分布が、第1投影レンズ23によって前方に反転投影される。これにより、ロービーム用配光パターンPLoが形成される。
【0036】
図7(a)は、ロービーム用配光パターンP
Loの例である。
図7(a)には、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に形成されるロービーム用配光パターンP
Loの一例が示されている。ロービーム用配光パターンP
Loは、下に設けられた反射面21bの前端縁21b1によって規定されるカットオフラインCLを上端縁に含む。
【0037】
図3、
図5に示すように、第2光学系30は、第2筒型反射面31と、第2光源32と、第2投影レンズ33と、を備えるダイレクトプロジェクション型(直射型とも呼ばれる)の光学系である。第2筒型反射面31、第2光源32、第2投影レンズ33は、車両前後方向に延びる、第1光軸AX1に対して平行な第2光軸AX2上に配置されている。
【0038】
図6(a)は第2筒型反射面31の斜視図、
図6(b)は
図6(c)に示す第2筒型反射面31のK-K断面図、
図6(c)は第2筒型反射面31の正面図、
図6(d)は
図6(c)に示す第2筒型反射面31のJ-J断面図である。
【0039】
図6に示すように、第2筒型反射面31は、前端開口B1が後端開口B2より大きく前端開口B1から後端開口B2に向かうに従って錐体状(四角錐体状)に狭くなる筒型反射面で、上下左右に設けられた反射面31a、31b、31c、31dによって構成される。以下、反射面31a、31b、31c、31dを特に区別しない場合、反射面31と記載する。反射面31が本発明の第2反射面の一例である。
【0040】
図3、
図5に示すように、第2筒型反射面31は、第2光源32(発光面)からの光が第2筒型反射面31内を通過するように、後端開口B2と第2光源32(発光面)とが対向した状態で保持部材40に保持される。第2筒型反射面31の後端開口B2は、正面視で、第2光源32(発光面)を取り囲んでいる(図示せず)。
【0041】
第2筒型反射面31は、例えば、左右両側に設けられたネジ穴N3、N4及び基板Kに形成されたネジ穴(図示せず)に挿入されたネジ(図示せず)を保持部材40にネジ止めすることで保持部材40に保持される。
【0042】
図3、
図6に示すように、下に設けられた反射面31bは、上に設けられた反射面31aより前方に延長された延長反射面31b1を含む。
【0043】
第2光源32は、矩形(例えば、1mm角)の発光面を備えたLEDやLD等の半導体発光素子である。第2光源32は、発光面を前方(正面)に向けた状態で基板Kに実装される。第2光源32の数は、特に限定されず、1であってもよいし、複数であってもよい。第2光源32は、複数の場合、水平方向に一列に配置される。
【0044】
以上のように、第1光源22及び第2光源32は、基板Kの実装面(平面PL1。
図3参照)上に配置されている。基板Kの実装面(平面PL1)は、第1光軸AX1(及び第2光軸AX2)に直交する平面である。基板Kの実装面(平面PL1)が本発明の第1平面の一例である。
【0045】
第2投影レンズ33は、第2筒型反射面31を通過した第2光源32(発光面)からの直射光及び第2筒型反射面31からの反射光が透過するように、第2投影レンズ33の裏面33bと第2筒型反射面31の前端開口B1とが対向した状態で保持部材40に保持される(
図3、
図5参照)。
【0046】
図1、
図2に示すように、第2投影レンズ33は、第1投影レンズ23、脚部50と共に一体成形されており、脚部50に設けられたネジ穴N5、N6に挿入されたネジ(図示せず)を保持部材40にネジ止めすることで保持部材40に保持される。
【0047】
第2投影レンズ33は、
図2に示すように、正面視の外形が矩形で、正面視でのサイズが第1投影レンズ23とほぼ同じサイズで、かつ、
図3に示すように、縦断面でのサイズが第1投影レンズ23とほぼ同じサイズのレンズとして構成されている。
【0048】
図3に示すように、第1投影レンズ23(裏面23b)及び第2投影レンズ33(裏面33b)は、平面PL1に対して平行な平面PL2上に配置されている。平面PL2は、第1光軸AX1(及び第2光軸AX2)に直交する平面である。平面PL2が本発明の第2平面の一例である。
【0049】
第2投影レンズ33の焦点距離は、第1投影レンズ23の焦点距離より長い。
図3に示すように、第2投影レンズ33の焦点F
33は、鉛直方向に関し、第2光源32(発光面)の中央近傍に位置する。一方、第2投影レンズ33の焦点F
33の位置は、水平方向に関し、第2投影レンズ33の部分ごとに異なる。
【0050】
例えば、
図8に示すように、第2光軸AX2に対して左側のレンズ部33Lにおいては、第2光軸AX2から遠いレンズ部33Aの焦点F
33Aは、第2光軸AX2から近くに位置する。一方、
図9に示すように、第2光軸AX2から近いレンズ部33Bの焦点F
33Bは第2光軸AX2から遠くに位置する。そして、レンズ部33Aとレンズ部33Bとの間の中間のレンズ部の焦点は、焦点F
33Aと焦点F
33Bとの間に位置する。第2光軸AX2に対して右側のレンズ部33Rにおいても同様である。
【0051】
その結果、第2投影レンズ33の焦点F
33は、水平方向に関し、焦点ではなく、焦線となる。また、第2投影レンズ33の表面33aのうち、左側のレンズ部33Lと右側のレンズ部33Rとが接合する部分Lが第2光源32に向かって凹んだ形状となる。なお、第2投影レンズ33の表面33aのうち、左側のレンズ部33Lと右側のレンズ部33Rとが接合する部分Lは、第2投影レンズ33の表面33aと第2光軸AXを含む鉛直面とが交差する部分である(
図1、
図2参照)。
【0052】
上記構成の第2光学系30においては、第2光源32を点灯すると、第2光源32からの直射光及び第2筒型反射面31からの反射光が第2投影レンズ33を透過して前方に照射される。これにより、ハイビーム用配光パターンPHiが形成される。
【0053】
図7(b)は、ハイビーム用配光パターンP
Hiの例である。
図7(b)には、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン上に形成されるハイビーム用配光パターンP
Hiの一例が示されている。
【0054】
図7(c)は、左側のレンズ部33Lで制御された光によって形成された配光パターンP
Hi_1の例である。
図7(d)は、右側のレンズ部33Rで制御された光によって形成された配光パターンP
Hi_2の例である。
図7(c)に示す配光パターンP
Hi_1と
図7(d)に示す配光パターンP
Hi_2とが重畳されることで、
図7(b)に示すハイビーム用配光パターンP
Hiが形成される。
【0055】
図7(b)に示すように、ハイビーム用配光パターンP
Hiは、水平線Hより上の鉛直方向の厚みW1が、水平線Hより下の鉛直方向の厚みW2より厚いものとなる。
【0056】
これは、下に設けられた反射面31bが、上に設けられた反射面31aより前方に延長された延長反射面31b1を含むことによるものである(
図3、
図6参照)。
【0057】
また、ハイビーム用配光パターンPHiは、H線とV線との交点近傍が相対的に明るく、かつ、水平方向にワイドな視認性に優れたものとなる。その理由は、次のとおりである。
【0058】
図8~
図10は、第2投影レンズ33と光源像との関係を説明するための図である。
【0059】
図8に示すように、左側のレンズ部33Lにおいては、第2光軸AX2から遠いレンズ部33Aにより、第2光源32(発光面)の光源像I
33Aが、仮想鉛直スクリーン上のH線とV線との交点付近に投影される。
【0060】
また、
図9に示すように、第2光軸AX2から近いレンズ部33Bにより、第2光源32(発光面)の光源像I
33Bが仮想鉛直スクリーン上のH線とV線との交点に対して右側にズレた位置に投影される。
【0061】
また、
図10に示すように、第2光軸AX2から遠いレンズ部33Aと第2光軸AX2から近いレンズ部33Bとの間の中間のレンズ部33Cにより、第2光源32(発光面)の光源像I
33C1が仮想鉛直スクリーン上のH線とV線との交点に対して右側にズレた位置(光源像I
33Aと光源像I
33Bとの間の中間位置)に投影される。
【0062】
図8~
図10に例示した光源像I
33A、I
33B、I
33C1は、実際には重畳される。これにより、H線とV線との交点近傍が相対的に明るい
図7(d)に示す配光パターンP
Hi_2が形成される。レンズ部33Rにおいても同様で、H線とV線との交点近傍が相対的に明るい
図7(c)に示す配光パターンP
Hi_1が形成される。
【0063】
そして、
図7(c)に示す配光パターンP
Hi_1と
図7(d)に示す配光パターンP
Hi_2とが重畳されることで、
図7(b)に示すハイビーム用配光パターンP
Hiが形成される。その結果、ハイビーム用配光パターンP
Hiは、H線とV線との交点近傍が相対的に明るいものとなる。
【0064】
また、
図10に示すように、左側のレンズ部33Lにおいては、レンズ部33Cにより、左に設けられた反射面31cからの反射光による第2光源32(発光面)の光源像I
33c2が、光源像I
33C1(光源像I
33A、I
33B)に対して左側にズレた状態で投影される。右側のレンズ部33Rにおいても同様である。その結果、ハイビーム用配光パターンP
Hiは、水平方向にワイドなものとなる。
【0065】
以上の理由により、ハイビーム用配光パターンPHiは、H線とV線との交点近傍が相対的に明るく、かつ、水平方向にワイドな視認性に優れたものとなる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態によれば、上記従来技術と比べ、車両前後方向の寸法を短くすることができる(小型化が可能な)車両用灯具ユニットを提供することができる。
【0067】
これは、第1光学系20及び第2光学系30がいずれもダイレクトプロジェクション型の光学系として構成されていることによるものである。
【0068】
また、本実施形態によれば、第1光源22及び第2光源32が同一の基板Kの実装面(平面PL1。
図3参照)上に配置され、かつ、第1投影レンズ23及び第2投影レンズ33が同一の平面PL2上に配置されたシンプルな構造の車両用灯具ユニット10を提供することができる。
【0069】
これは、第1投影レンズ23と第1光源22との間に第1筒型反射面21を設けて、相対的に焦点距離が短い第1投影レンズ23の焦点F23を下に設けられた反射面21bの前端縁21b1近傍に位置させたこと、及び、相対的に焦点距離が長い第2投影レンズ33の焦点F33を第2光源32(発光面)近傍に位置させたこと、によるものである。
【0070】
また、本実施形態によれば、第1光源22及び第2光源32が同一の基板K上に配置され、かつ、第1投影レンズ23及び第2投影レンズ33が一体成形された、組み立てが容易な車両用灯具ユニット10を提供することができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、ハイビーム用配光パターンP
Hiの、水平線Hより上の鉛直方向の厚みW1を、水平線Hより下の鉛直方向の厚みW2より厚くすることができる(
図7(b)参照)。これにより、上空方向の照射範囲を拡大することができるとともに、手前が明るくなりすぎ遠方視認性が低下するのを抑制することができる。
【0072】
これは、下に設けられた反射面31bが、上に設けられた反射面31aより前方に延長された延長反射面31b1を含むことによるものである(
図3、
図6(d)参照)。
【0073】
また、本実施形態によれば、第1筒型反射面21を設けているため、第1筒型反射面21を設けない場合と比べ、第1光源22からの光を第1投影レンズ23に効率よく取り込むことができる。同様に、第2筒型反射面31を設けているため、第2筒型反射面31を設けない場合と比べ、第2光源32からの光を第2投影レンズ33に効率よく取り込むことができる。
【0074】
図11は、第1光学系20を下側に、第2光学系30を上側に配置した場合の問題点を説明するための図である。
【0075】
図11に示すように、第1光学系20を下側に、第2光学系30を上側に配置した場合、第1筒型反射面21(下に設けられた反射面21b)で反射された反射光RayBが第2投影レンズ33を透過して上空に照射され、グレア光が発生する恐れがある。
【0076】
これに対して、本実施形態によれば、
図3に示すように、第1光学系20を上側に、第2光学系30を下側に配置したため、第1筒型反射面21(下に設けられた反射面21b)で反射された反射光が第2投影レンズ33を透過して上空に照射され、グレア光が発生するのを抑制することができる。なお、
図3に示すように、第1光学系20を上側に、第2光学系30を下側に配置した場合、第1筒型反射面21(上に設けられた反射面21a)で反射された反射光RayAが第2投影レンズ33を透過するが、この第2投影レンズ33を透過する反射光RayAは下方(路面方向)に照射されることとなるため、反射光RayAに起因してグレア光が発生することはない。
【0077】
次に、変形例について説明する。
【0078】
上記実施形態では、本発明の車両用灯具ユニットを車両用前照灯(ヘッドランプ)に適用した例について説明したが、これに限らない。例えば、車両用前照灯(ヘッドランプ)以外の車両用灯具にも本発明の車両用灯具を適用してもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、第1光学系20と第2光学系30とを一つの車両用灯具ユニット10ユニットとして構成した例について説明したが、これに限らない。例えば、第1光学系20を一つの車両用灯具ユニットとして構成し、第2光学系30を別の一つの車両用灯具ユニットとして構成してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、第2投影レンズ33として、第2光軸AX2から遠いレンズ部33Aほど焦点F33Aが第2光軸AX2から近くに位置し、第2光軸AX2から近いレンズ部33Bほど焦点F33Bが第2光軸AX2から遠くに位置するレンズを用いた例について説明したが、これに限らない。例えば、これとは逆に、第2投影レンズ33として、第2光軸AX2から近いレンズ部33Bほど焦点F33Bが第2光軸AX2から遠くに位置し、第2光軸AX2から遠いレンズ部33Aほど焦点F33Aが第2光軸AX2から近くに位置するレンズを用いてもよい。
【0081】
なお、第1投影レンズ23の表面23a又は裏面23b、第2投影レンズ33の表面33a又は裏面33bに、規則的な構造、例えば、ドット、カット、ディンプルを施すことで、各レンズ23、33を透過する光を拡散させてもよい。
【0082】
上記各実施形態で示した各数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができるのは無論である。
【0083】
上記各実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。上記各実施形態の記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0084】
10…車両用灯具ユニット、20…第1光学系、21…第1筒型反射面、21b1…前端縁、22…第1光源、23…第1投影レンズ、23b…裏面、30…第2光学系、31…第2筒型反射面、31b1…延長反射面、32…第2光源、33…第2投影レンズ、40…保持部材