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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】監視システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20220929BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20220929BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20220929BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20220929BHJP
   G08G 1/005 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
H04N7/18 D
H04N7/18 U
G08B25/04 K
G08B25/00 510M
G08B21/02
G08G1/005
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017213143
(22)【出願日】2017-11-02
(65)【公開番号】P2019087824
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 正和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 朋紀
(72)【発明者】
【氏名】岩上 顕夫
(72)【発明者】
【氏名】川崎 栄嗣
【審査官】佐野 潤一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-032322(JP,A)
【文献】特開2017-016344(JP,A)
【文献】特開2003-044954(JP,A)
【文献】特開2003-324720(JP,A)
【文献】特開2011-060024(JP,A)
【文献】特開2016-174252(JP,A)
【文献】特開2017-103602(JP,A)
【文献】特開2004-135082(JP,A)
【文献】特開2014-174903(JP,A)
【文献】特許第5500303(JP,B1)
【文献】特開2005-332071(JP,A)
【文献】特開2008-085874(JP,A)
【文献】特開2003-224844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
H04N 5/222
G08B 21/00-31/00
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のエリア内の位置を撮像した第1の画像から認識された所定の所持物により対象者である視覚障碍者あるいは歩行不自由者を選定し、前記第1の画像内の前記対象者の特徴情報を特定し、前記所定のエリアの前記第1の画像が撮像された位置とは異なる位置撮像した第2の画像内の前記特定された特徴情報と同一の特徴情報を有する人物を前記対象者と同一人物であると判定し、前記第2の画像内の前記人物の画像が占める領域を示す画像を合成し、当該合成された画像を用いて前記所定エリア内での前記対象者の居場所を通知するための画面表示する監視システム。
【請求項2】
駅の改札を通過する通行人に向かい撮像するカメラと、前記駅のホームと線路を挟んだ向かい側から前記ホームに向かい撮像するカメラを備える
請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記駅のホームと線路を挟んだ向かい側において前記線路に沿って離間配置され、前記ホームに向かい撮像する複数のカメラを備える
請求項2に記載の監視システム。
【請求項4】
前記特徴情報を記憶する記憶手段と、離散配置された複数のカメラを備え、前記複数のカメラのいずれかが撮像した画像から最後に前記特徴情報が特定された後の経過時間が閾値に達した場合、前記記憶手段から前記特徴情報を削除する
請求項1に記載の監視システム。
【請求項5】
所定のエリアに離散配置された複数のカメラのいずれかで撮像した画像から認識された所定の所持物により対象者である視覚障碍者あるいは歩行不自由者を選定し、前記画像内の前記対象者の特徴情報を特定し、前記複数のカメラのうち前記画像を撮像したカメラとは異なるカメラで撮像した画像内の前記特徴情報と同一の特徴情報を有する人物を前記対象者と同一人物であると判定し、前記人物を前記対象者と同一人物であると判定した画像に対し当該画像の前記人物の画像が占める領域を示す画像を合成して画面に表示する監視システムであって、
前記特徴情報を記憶する記憶手段を備え、前記複数のカメラのうち特定のカメラ以外のカメラのいずれかが撮像した画像から最後に前記特徴情報が特定された後の経過時間が閾値に達した場合、前記記憶手段から前記特徴情報を削除し、前記特定のカメラで撮像された画像から最後に前記特徴情報が特定されている場合、最後に前記特徴情報が特定された後の経過時間が前記閾値に達しても前記記憶手段から前記特徴情報を削除しない監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駅ホームにおいて対象者を監視する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
駅ホームにおける視覚障碍者の転落事故を防止するための技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、駅の改札口に設けられた識別手段により改札口内への進入者の中から所定の監視対象条件を満たす監視対象者を識別し、識別された監視対象者のホーム内での動きを追跡し、その追跡情報から監視対象者の危険を検知して警報信号を出力するホーム監視システムが記載されている。
【0004】
特許文献2には、ステレオカメラから得られる3次元距離情報を基に、監視場所内で検出した歩行者の周囲の、白杖が存在する可能性のある部分のカラー画像のみに対して画像処理を施し、白杖を検出する白杖使用者検出システムが記載されている。
【0005】
特許文献3には、プラットフォーム上の歩行者位置を検知し、この検知位置が視覚障碍者誘導用ブロックに沿った歩行軌跡を描く場合、この歩行者を視覚障碍者と判定し、この歩行軌跡に基づいて、プラットフォームを予め分割して設けた複数の監視ゾーンのうちから、この視覚障碍者の位置と対応する特定監視ゾーンを特定し、この特定監視ゾーンに設置された落下検知器による線路への落下物の検知処理を開始し、落下物が検知された場合、歩行者転落を示す警報を予め設定された通知先へ通知する歩行者転落監視システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-224844号公報
【文献】特開2007-274234号公報
【文献】特開2012-243177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
視覚障碍者の転落事故を防止するために、駅係員は駅構内に入場した視覚障碍者の居場所を知りたい、というニーズがある。
【0008】
本発明は、駅構内等の所定エリア内における視覚障碍者等の対象者の居場所を、駅係員等のユーザが容易に知ることを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、所定のエリア内の位置を撮像した第1の画像から認識された所定の所持物により対象者である視覚障碍者あるいは歩行不自由者を選定し、前記第1の画像内の前記対象者の特徴情報を特定し、前記所定のエリアの前記第1の画像が撮像された位置とは異なる位置撮像した第2の画像内の前記特定された特徴情報と同一の特徴情報を有する人物を前記対象者と同一人物であると判定し、前記第2の画像内の前記人物の画像が占める領域を示す画像を合成し、当該合成された画像を用いて前記所定エリア内での前記対象者の居場所を通知するための画面表示する監視システムを、第1の態様として提供する。
【0010】
第1の態様の監視システムによれば、ユーザは所持物により選定された対象者の居場所を容易に知ることができる。
【0011】
第1の態様の監視システムにおいて、駅の改札を通過する通行人に向かい撮像するカメラと、前記駅のホームと線路を挟んだ向かい側から前記ホームに向かい撮像するカメラを備える、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0012】
第2の態様の監視システムによれば、駅構外から駅構内へ入場する通行人を望ましい角度で撮像した画像が得られるので、対象者の選定が高い精度で行われる。また、第2の態様の監視システムによれば、駅のホームで列車を待つ乗客を概ね正面から撮像した画像が得られるので、ホームの縁付近にいる対象者が高い精度で認識される。
【0013】
第2の態様の監視システムにおいて、前記駅のホームと線路を挟んだ向かい側において前記線路に沿って離間配置され、前記ホームに向かい撮像する複数のカメラを備える、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0014】
第3の態様の監視システムによれば、線路に沿って離間配置された複数のカメラのいずれかで撮像された画像から対象者の特徴情報が特定された場合、当該画像を撮像したカメラの画角内に対象者がいることが分かる。
【0015】
第1の態様の監視システムにおいて、前記特徴情報を記憶する記憶手段と、離散配置された複数のカメラを備え、前記複数のカメラのいずれかが撮像した画像から最後に前記特徴情報が特定された後の経過時間が閾値に達した場合、前記記憶手段から前記特徴情報を削除する、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0016】
第4の態様の監視システムによれば、監視対象のエリアから立ち去ったと見込まれる通行人が対象者から除外される。
【0017】
また、本発明は、所定のエリアに離散配置された複数のカメラのいずれかで撮像した画像から認識された所定の所持物により対象者である視覚障碍者あるいは歩行不自由者を選定し、前記画像内の前記対象者の特徴情報を特定し、前記複数のカメラのうち前記画像を撮像したカメラとは異なるカメラで撮像した画像内の前記特徴情報と同一の特徴情報を有する人物を前記対象者と同一人物であると判定し、前記人物を前記対象者と同一人物であると判定した画像に対し当該画像の前記人物の画像が占める領域を示す画像を合成して画面に表示する監視システムであって、前記特徴情報を記憶する記憶手段を備え、前記複数のカメラのうち特定のカメラ以外のカメラのいずれかが撮像した画像から最後に前記特徴情報が特定された後の経過時間が閾値に達した場合、前記記憶手段から前記特徴情報を削除し、前記特定のカメラで撮像された画像から最後に前記特徴情報が特定されている場合、最後に前記特徴情報が特定された後の経過時間が前記閾値に達しても前記記憶手段から前記特徴情報を削除しない監視システムを、第5の態様として提供する。
【0018】
第5の態様の監視システムによれば、監視すべきエリアからトイレ等の監視すべきでないエリアへと一時的に入り、その後、監視すべきエリア内へと戻ってくる対象者が、対象者から除外されない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態に係る監視システムの主要構成を示す図。
図2】一実施形態に係る監視システムが用いるデータベースの構成を示した図。
図3】一実施形態に係る監視システムが用いるデータベースの構成を示した図。
図4】一実施形態に係る監視システムが用いるデータベースの構成を示した図。
図5】一実施形態に係る監視システムが備えるカメラの配置例を示した図。
図6図5の一部を拡大した図。
図7】一実施形態に係る監視システムが画像から通行人の特徴情報を特定する手法の例を説明するための図。
図8】一実施形態に係る情報処理装置の機能的構成を示す図。
図9】一実施形態に係る情報処理装置が行う処理の流れを示した図。
図10】一実施形態に係る情報処理装置が行う処理の流れを示した図。
図11】一実施形態に係る情報処理装置が行う処理の流れを示した図。
図12】一実施形態に係る情報処理装置により表示される画面を例示した図。
図13】一実施形態に係る情報処理装置が行う処理の流れを示した図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態>
<監視システムの全体構成>
以下、本発明の一実施形態に係る監視システム1を説明する。監視システム1は、駅に入場した視覚障碍者(対象者の一例)の駅構内における居場所を駅係員に通知するシステムである。
【0021】
図1は、監視システム1の主要構成を示す図である。監視システム1は、情報処理装置11と、複数のカメラ12を備える。
【0022】
複数のカメラ12は駅構内の様々な箇所に離散配置されている。情報処理装置11は、複数のカメラ12の各々から、それらのカメラ12が撮像した画像を取得する。情報処理装置11はカメラ12から取得した画像から監視の対象者を選定し、選定した対象者の特徴情報を用いて駅構内における対象者の居場所を特定し、特定した居場所を駅係員に通知する。
【0023】
<情報処理装置の構成>
情報処理装置11は、制御部111、記憶部112、表示部113、操作部114、及びインタフェース115を備える。
【0024】
制御部111は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有し、CPUがROM及び記憶部112に記憶されているコンピュータプログラム(以下、単にプログラムという)を読み出して実行することにより情報処理装置11の各部を制御する。
【0025】
また、制御部111は、水晶、セラミック、シリコン、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等を用いた振動子を備えており、振動子が発生するクロック信号はCPUの動作の統制に用いられる。
【0026】
記憶部112は、ハードディスクドライブやソリッドステートドライブ等の二次記憶装置であり、制御部111のCPUに読み込まれる各種のプログラムを記憶する。また、記憶部112は、対象者の選定に用いる所持物の特徴情報を格納するデータベースである所持物DB1121と、選定された対象者の特徴情報を格納するデータベースである対象者DB1122と、複数のカメラ12の各々の位置情報を格納するデータベースであるカメラDB1123を記憶している。
【0027】
本願において特徴情報は、画像から特定された特徴を示す情報を意味する。特徴情報としては、例えばHOG(Histograms of Oriented Gradients)特徴量を統計処理して得られる特徴情報が利用可能であるが、特徴情報の特定手法としては様々な手法が実用化されており、それらのいずれが採用されてもよい。
【0028】
図2は所持物DB1121の構成を示した図である。所持物DB1121は、視覚障碍者が歩行時に通常所持し、視覚障碍者でない通行人は通常所持しない複数種類の所持物(以下、それらの所持物を総称して「所持物J」という)の各々に応じたデータレコードの集まりである。所持物Jは、例えば白杖や盲導犬、盲導犬のハーネスに設けられたハンドル等である。なお、本実施形態において所持物Jの数は複数であるものとするが、例えば白杖のみを所持物Jとして扱ってもよい。
【0029】
所持物DB1121の各データレコードは、「所持物ID」欄と、「特徴情報」欄を有している。「所持物ID」欄には所持物Jの識別情報が格納される。「特徴情報」欄には所持物Jのサンプル画像から特定された特徴情報が格納される。
【0030】
図3は対象者DB1122の構成を示した図である。対象者DB1122は、選定された対象者の各々に応じたデータレコードの集まりである。本実施形態において、選定された対象者とは、駅構外から駅構内へ移動した人物のうち、所持物Jのいずれかを所持している人物である。
【0031】
対象者DB1122の各データレコードは、「対象者ID」欄、「特徴情報」欄、「カメラID」欄、「最終認識時刻」欄、及び「画像内領域」欄を有している。「対象者ID」欄には対象者の識別情報が格納される。「特徴情報」欄には対象者の特徴情報が格納される。「カメラID」欄には最後に対象者が認識された画像を撮像したカメラ12の識別情報が格納される。「最終認識時刻」欄には最後に対象者が認識された画像の撮像時刻が格納される。「画像内領域」欄にはカメラ12が撮像した画像において対象者の画像が占める領域を示す情報が格納される。
【0032】
対象者DB1122の「特徴情報」欄に格納される特徴情報は、対象者の身体そのもの(顔、髪型、体型等)に関する特徴情報に加え、対象者の身体に伴っている付帯物(被服、所持物等)の特徴情報を含む。
【0033】
図4はカメラDB1123の構成を示した図である。カメラDB1123は、複数のカメラ12の各々に応じたデータレコードの集まりであり、各データレコードは、「カメラID」欄と、「位置」欄と、「撮像方向」欄を有している。
【0034】
「カメラID」欄にはカメラ12を識別する識別情報が格納される。「位置」欄にはカメラ12の位置を示す情報が格納される。「撮像方向」欄にはカメラ12の撮像方向を示す情報が格納される。
【0035】
図1を参照しつつ、監視システム1の構成の説明を続ける。表示部113は、液晶ディスプレイ等の表示装置を有しており、制御部111の制御下で、カメラ12から取得した画像等の各種情報を表示する。
【0036】
操作部114は、ユーザからの操作を受け付ける操作子を備えており、ユーザにより行われた操作に応じた信号を制御部111に供給する。なお、操作部114がユーザの指又はスタイラス等の操作体の接触(又は近接)を検知するタッチパネルを有し、表示部113が有する液晶ディスプレイと操作部114が有するタッチパネルが積層されてタッチスクリーンを構成していてもよい。
【0037】
インタフェース115は、複数のカメラ12の各々と有線又は無線により接続されて、カメラ12から画像を取得する。
【0038】
<カメラの配置例>
図5は複数のカメラ12の配置例を示した図である。図5に示される空間は、改札E1の外側の空間である駅構外R0と、改札E1の内側の空間である駅構内R1とに大別される。また、図5に示される駅構内R1は、広場R11と、ホームR12と、商業施設R13とに区分される。
【0039】
広場R11は改札E1とホームR12との間に配置されている空間であり、通行人は広場R11を自由に通行できる。ホームR12は、線路Lに沿って走行する列車Vに対し乗客が乗降を行うための空間である。線路Lは乗客がそこに転落すると列車Vに接触する危険がある危険領域である。ホームR12は危険領域に隣接しており、そこにいる乗客が危険領域に転落する可能性があるため、駅係員はホームR12に視覚障碍者がいる場合、特にその居場所を正しく知る必要がある。
【0040】
商業施設R13は、例えば、レストラン、物品の販売店、トイレ、喫煙所、休憩室、授乳室、おむつ替えスペース等、鉄道利用に付随するサービスを提供する施設である。図5の例では、商業施設R13はゲートE2で広場R11と区切られているが、ゲートE2は改札を伴わず通行人が自由に通過可能である。商業施設R13は危険領域から離れているため、駅係員には対象者が商業施設R13内にいることが通知されれば十分であり、商業施設R13内における対象者の居場所が駅係員に通知される必要はない。
【0041】
図5に示す配置例において、複数のカメラ12は、カメラ12a、カメラ12b、カメラ12c、カメラ12d、カメラ12e、及びカメラ12fに分類される。カメラ12aは、改札E1を通過し駅構外R0から駅構内R1へと入場する通行人に向かい撮像するカメラである。また、カメラ12bは、改札E1を通過し駅構内R1から駅構外R0へと退場する通行人に向かい撮像するカメラである。
【0042】
図6は、図5のうち改札E1の周辺を拡大した図である。図6の例では、1つの改札E1に関しカメラ12a又はカメラ12bは1つずつ配置されている。カメラ12a及びカメラ12bの数と撮像方向はこれに限れない。例えば、1つの改札E1に関し、当該改札E1を通過する通行人の正面、右側面、及び、左側面のように、通行人に対し異なる方向で撮像する複数のカメラ12a又はカメラ12bが配置されてもよい。
【0043】
カメラ12cは、ホームR12と線路Lを挟んだ向かい側からホームR12に向かい撮像するカメラである。複数のカメラ12cが線路Lに沿って離間配置されている。複数のカメラ12cの間隔は、ホームR12の縁にいる人物がいずれかのカメラ12cにより撮像されるように、カメラ12cの画角とカメラ12cからホームR12の縁までの距離に応じて調整された間隔である。駅係員は、いずれかのカメラ12cが撮像した画像において対象者が認識された場合、当該画像を撮像したカメラ12cの位置に基づき、ホームR12における当該対象者の居場所を特定することができる。
【0044】
カメラ12dはホームR12から商業施設R13へ入る通行人を撮像するカメラであり、カメラ12eは商業施設R13からホームR12へ出る通行人を撮像するカメラである。カメラ12d及びカメラ12eの数と撮像方向は図5に示したものに限られない。
【0045】
<情報処理装置の機能的構成>
図7は画像から通行人の特徴情報を特定する手法の例を説明するための図である。また、図8は情報処理装置11の機能的構成を示す図である。
【0046】
情報処理装置11の制御部111は、記憶部112に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、取得部1111、特定部1112、選定部1113、登録部1114、判定部1115、合成部1117、計時部1119、及び削除部1118として機能する。なお、図6において、操作部114、及びインタフェース115を省略する。
【0047】
取得部1111は、複数のカメラ12の各々から当該カメラ12が撮像した画像を取得する。特定部1112は、取得部1111が取得した画像に写っている人物の特徴情報を特定する。具体的には、特定部1112は、取得部1111がカメラ12から取得した画像を、例えば、図7(b)に示すように複数のセル(図7(b)の例では、12×7=84のセル)に分割する。図7(b)の例では、1つのセルは5×5=25のピクセルで構成される。
【0048】
特定部1112は、各ピクセルの輝度の勾配方向と強度とを算出し、算出した勾配方向と強度とをヒストグラム化して、各セルの特徴量を算出する。続いて、特定部1112は、複数の隣接するセルで構成されるブロック(例えば3×3=9のセルで構成されるブロック)毎に特徴量を集計してこれを正規化する。正規化された特徴量は、画像に含まれる人物を検知するために用いられ、また、検知された人物を他の人物と判別するために用いられる。
【0049】
選定部1113は、取得部1111がカメラ12aから取得した画像から特定部1112が特定した特徴情報に所持物Jの特徴情報が含まれる場合、当該画像に写っている人物を対象者として選定する。なお、取得部1111がカメラ12aから取得する画像は、所定のエリア(駅構内R1へ入場する通行人が通過する改札E1及びその周辺のエリア)で撮像した画像である。
【0050】
具体的には、選定部1113は、カメラ12aから取得された画像から特定部1112が特定した特徴情報と同一の特徴情報が所持物DB1121に登録されている場合、当該画像に写っている所持物は所持物J(白杖等)であり、画像内の当該所持物Jを所持している人物は視覚障碍者であるため、その人物を対象者として選定する。なお、本願において、2つの特徴情報が同一とは、2つの特徴情報の類似度を所定の規則に従い算出した場合、当該類似度が所定の閾値以上に高いことを意味し、2つの特徴情報が厳密に一致することは要さない。
【0051】
登録部1114は、選定部1113により対象者に選定された人物に関し特定部1112により特定された特徴情報を対象者DB1122に登録する。
【0052】
判定部1115は、取得部1111がカメラ12a以外のカメラ12(カメラ12b~12f)から取得した画像から特定部1112が特定した特徴情報に対象者の特徴情報が含まれる場合、当該画像に対象者が写っていると判定する。具体的には、判定部1115は、カメラ12b~12fから取得された画像から特定部1112が特定した特徴情報と同一の特徴情報が対象者DB1122に登録されている場合、当該画像に対象者が写っていると判定する。
【0053】
更新部1116は、判定部1115によって、カメラ12b~12fから取得された画像に対象者が写っていると判定された場合、当該判定の結果に応じて所持物DB1121に格納されているデータを更新する。
【0054】
合成部1117は、取得部1111がカメラ12から取得した画像のうち、判定部1115によって対象者が写っていると判定された画像に対し、当該画像において対象者の画像が占める領域を示す画像を合成する。対象者の画像が占める領域を示す画像としては、例えば当該領域の外縁を線で示す画像、当該領域を覆うように配置される透過率50%程度の赤色等の画像等が例示されるが、これらに限られない。すなわち、合成部1117により生成される画像を見た駅係員が、画像内に写っているどの人物が対象者であるかを見分けることができる限り、どのような態様の画像が合成されてもよい。
【0055】
削除部1118は、対象者DB1122のデータレコードのうち、最終認識時刻から現在時刻までの経過時間が所定の閾値を超えているデータレコードを削除する。
【0056】
計時部1119は、制御部111が備える振動子から出力されるクロック信号に基づき現在時刻を特定する。計時部1119により特定される現在時刻は登録部1114、更新部1116、及び削除部1118により利用される。
【0057】
<情報処理装置の動作>
<対象者の入場に伴う登録>
図9は駅構外R0から駅構内R1へ入場する新たな対象者を対象者DB1122に登録するために情報処理装置11が行う処理の流れを示した図である。図9の処理は、取得部1111がカメラ12aから画像を取得する毎に実行される。
【0058】
取得部1111がカメラ12aから画像を取得すると、特定部1112は取得部1111が取得した画像から画像に含まれる人物(所持物を含む)の特徴情報を特定する(ステップS101)。
【0059】
続いて、選定部1113は、特定部1112により特定された特徴情報と同一の特徴情報が所持物DB1121に登録されているか否かを判定する(ステップS102)。特定部1112により特定された特徴情報と同一の特徴情報が所持物DB1121に登録されていない場合(ステップS102;NO)、情報処理装置11は対象者の入場に伴う情報の登録に関する処理を終了する。
【0060】
一方、特定部1112により特定された特徴情報と同一の特徴情報が所持物DB1121に登録されている場合(ステップS102;YES)、選定部1113は取得部1111が取得した画像に写っている人物を対象者として選定する(ステップS103)。続いて、登録部1114は選定部1113により選定された対象者に関する情報を対象者DB1122に登録する。
【0061】
具体的には、ステップS103において、登録部1114は、対象者DB1122に新たなデータレコードを追加し、「対象者ID」欄にユニークな任意の識別情報を、「特徴情報」欄に対象者の特徴情報を、「カメラID」欄に取得部1111が取得した画像を撮像したカメラ12aの識別情報を、「最終認識時刻」欄に現在時刻を示す情報を、「画像内領域」欄に取得部1111が取得した画像において対象者の画像が占める領域を示す情報を格納する。その後、情報処理装置11は対象者の入場に伴う情報の登録に関する処理を終了する(ステップS104)。
【0062】
<対象者の退場に伴う削除>
図10は駅構内R1から駅構外R0へ退場する対象者の情報を対象者DB1122から削除するために情報処理装置11が行う処理の流れを示した図である。図10の処理は、取得部1111がカメラ12bから画像を取得する毎に実行される。
【0063】
取得部1111がカメラ12bから画像を取得すると、特定部1112は取得部1111が取得した画像から画像に含まれる人物(所持物を含む)の特徴情報を特定する(ステップS201)。
【0064】
続いて、判定部1115は、特定部1112により特定された特徴情報と同一の特徴情報が対象者DB1122に登録されているか否かを判定する(ステップS202)。特定部1112により特定された特徴情報と同一の特徴情報が対象者DB1122に登録されていない場合(ステップS202;NO)、情報処理装置11は対象者の退場に伴う情報の削除に関する処理を終了する。
【0065】
一方、特定部1112により特定された特徴情報と同一の特徴情報が対象者DB1122に登録されている場合(ステップS202;YES)、当該特徴情報に応じた対象者は駅構外R0へ退場したので、その後、監視を要さない。従って、削除部1118は特定部1112により特定された特徴情報と同一の特徴情報を格納しているデータレコードを対象者DB1122から削除する(ステップS203)。その後、情報処理装置11は対象者の退場に伴う情報の削除に関する処理を終了する。
【0066】
<対象者の検知に伴う更新>
図11は広場R11、ホームR12、又は商業施設R13おいて対象者が検知された場合に、対象者DB1122に格納されている当該対象者の情報を更新するために情報処理装置11が行う処理の流れを示した図である。図11の処理は、取得部1111がカメラ12c、12d、12e、又は12fから画像を取得する毎に実行される。
【0067】
取得部1111がカメラ12c、12d、12e、又は12fから画像を取得すると、特定部1112は取得部1111が取得した画像から画像に含まれる人物(所持物を含む)の特徴情報を特定する(ステップS301)。
【0068】
続いて、判定部1115は、特定部1112により特定された特徴情報と同一の特徴情報が対象者DB1122に登録されているか否かを判定する(ステップS302)。特定部1112により特定された特徴情報と同一の特徴情報が対象者DB1122に登録されていない場合(ステップS302;NO)、情報処理装置11は対象者の検知に伴う情報の更新に関する処理を終了する。
【0069】
一方、特定部1112により特定された特徴情報と同一の特徴情報が対象者DB1122に登録されている場合(ステップS302;YES)、当該特徴情報に応じた対象者が駅構内R1で検知されたことになる。従って、更新部1116は特定部1112により特定された特徴情報と同一の特徴情報を格納しているデータレコードの「カメラID」欄、「最終認識時刻」欄、及び「画像内領域」欄の情報を更新する(ステップS303)。
【0070】
具体的には、更新部1116は、更新対象のデータレコードの「カメラID」欄に取得部1111が取得した画像を撮像したカメラ12の識別情報を、「最終認識時刻」欄に計時部1119により特定された現在時刻を示す情報を、「画像内領域」欄に取得部1111が取得した画像における対象者の画像が占める領域を示す情報を上書きする。
【0071】
続いて、合成部1117は、ステップS303において更新されたデータレコードの「カメラID」欄の情報が示すカメラ12から取得部1111が取得した最新の画像に、「画像内領域」欄の情報が示す領域を表示するための画像を合成する(ステップS304)。表示部113は、合成部1117による合成の施された画像を用いて、駅係員に対象者の居場所を通知するための画面(以下、「居場所通知画面」という)を表示する(ステップS305)。
【0072】
図12は表示部113により表示される居場所通知画面を例示した図である。駅係員は、例えば図12に例示の居場所通知画面を見ることにより、現在、ホームR12の左端付近に対象者Aがおり、広場R11の中央付近に対象者Bがおり、商業施設R13内のどこかに対象者Cがいることを直感的に知ることができる。
【0073】
<対象者の長時間に渡る非検知に伴う削除>
図13は駅構内R1において所定の閾値を超える長時間に渡り対象者が検知されなかった場合に、当該対象者が既に駅構外R0へ退場しているものとみなして、対象者の情報を対象者DB1122から削除するために情報処理装置11が行う処理の流れを示した図である。図13の処理は、例えば所定の時間の経過毎に実行される。
【0074】
削除部1118は、対象者DB1122のデータレコードを先頭から順に1つ、読み出す(ステップS401)。続いて、削除部1118は読み出したデータレコードの「カメラID」欄の情報が商業施設R13に入る通行人を撮像するカメラ12dのカメラIDであるか否かを判定する(ステップS402)。
【0075】
読み出したデータレコードの「カメラID」欄の情報がカメラ12dのカメラIDである場合(ステップS402;YES)、対象者は現在、商業施設R13内にいることになる。例えば、商業施設R13がレストラン等である場合、このデータレコードに応じた対象者は商業施設R13に長時間に渡り滞在する場合が多い。従って、削除部1118はこのデータレコードの「最終認識時刻」欄の情報が示す時刻から現在時刻までの経過時間の長短にかかわらず、このデータレコードを削除しない。この場合、情報処理装置11は処理をステップS405に移す。
【0076】
一方、読み出したデータレコードの「カメラID」欄の情報がカメラ12dのカメラIDでない場合(ステップS402;NO)、削除部1118はこのデータレコードの「最終認識時刻」欄の情報が示す時刻から現在時刻までの経過時間が所定の閾値を超えているか否かを判定する(ステップS403)。
【0077】
「最終認識時刻」欄の情報が示す時刻から現在時刻までの経過時間が所定の閾値を超えていない場合(ステップS403;NO)、このデータレコードに応じた対象者は駅構内R1(商業施設R13以外)のどこかにいる可能性が高い。従って、削除部1118はこのデータレコードを削除しない。この場合も、情報処理装置11は処理をステップS405に移す。
【0078】
一方、「最終認識時刻」欄の情報が示す時刻から現在時刻までの経過時間が所定の閾値を超えている場合(ステップS403;YES)、このデータレコードに応じた対象者は既に駅構外R0へ退場している可能性が高い。従って、削除部1118はこのデータレコードを削除する(ステップS404)。
【0079】
続いて、削除部1118は直前のステップS401において読み出したデータレコードが対象者DB1122の最後のデータレコードであるか否かを判定する(ステップS405)。直前のステップS401において読み出したデータレコードが対象者DB1122の最後のデータレコードでない場合(ステップS405;NO)、情報処理装置11は処理をステップS401に戻し、削除部1118は先のステップS401において読み出したデータレコードの次のデータレコードを読み出す。その後、ステップS402以降の処理が繰り返される。
【0080】
一方、直前のステップS401において読み出したデータレコードが対象者DB1122の最後のデータレコードである場合(ステップS405;YES)、情報処理装置11は対象者の非検知に伴う情報の削除に関する処理を終了する。
【0081】
上述したように、監視システム1は、所定のエリアで撮像した画像から認識された所持物により対象者を選定し、この画像内の対象者の特徴情報を特定して登録する。
【0082】
具体的には、監視システム1は、カメラ12aにより、改札E1を通過し駅構外R0から駅構内R1に移動する通行人を撮像する。対象者となる視覚障碍者は、多くの場合、白杖や盲導犬等の所持物Jを所持している。1つの改札E1を同時に二人以上の通行人が通過することはないので、視覚障碍者が改札E1を通過する際、カメラ12aから見て所持物Jが何かの後ろに隠れて写らないことはあまりない。従って、視覚障碍者が駅構内R1へ入る場合、当該視覚障碍者は高い精度で対象者に選定され、その後、監視の対象となる。
【0083】
また、監視システム1は、所定のエリアで撮像した画像と異なる画像内の特定された特徴情報と同一の特徴情報を有する人物を対象者と同一人物であると判定する。
【0084】
具体的には、監視システム1は、カメラ12c~12fにより撮像された画像内に写っている人物が対象者であるか否かを、人物の所持物の特徴情報に限らず、顔等を含む人物全体の特徴情報に基づき判定する。従って、駅構内R1において撮像された画像において対象者の所持物Jが何かの後ろに隠れて写っていなくても、対象者の隠れていない部分の特徴情報に基づき、高い精度で対象者の居場所が特定される。
【0085】
また、監視システム1は、所定の閾値を超える長時間に渡り対象者が検知されなかった場合、当該対象者の情報を対象者DB1122から削除する。従って、監視すべきエリアから立ち去ったと見込まれる対象者の情報が無駄に記憶されることはない。
【0086】
<変形例>
上述の実施形態は様々に変形され得る。以下に、それらの変形の例を示す。なお、以下に示す2以上の変形例が適宜組み合わされてもよい。
【0087】
<変形例1>
情報処理装置11の制御部111によって実行されるプログラムは、磁気テープや磁気ディスクなどの磁気記録媒体、光ディスクなどの光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリなどの、コンピュータ装置が読取り可能な記録媒体に記憶された状態で提供し得る。また、このプログラムを、インターネットなどの通信回線経由でダウンロードさせることも可能である。なお、上記の制御手段としてはCPU以外にも種々の装置が適用される場合があり、例えば、専用のプロセッサなどが用いられる。
【0088】
<変形例2>
上述した実施形態において、対象者は視覚障碍者であったが、例えば杖をついている高齢者、車椅子に乗っている歩行不自由者、ベビーカーを押している人など、視覚障碍者以外の通行人を対象者としてもよい。例えば車椅子に乗っている歩行不自由者を対象者とする場合、所持物DB1121には車椅子や車椅子の特徴的なパーツ等の特徴情報が登録され、用いられることになる。
【0089】
<変形例3>
カメラ12の位置や撮像方向が変化してもよい。例えば、駅構内R1の天井等に設けられたレール上に沿ってカメラ12が往復搬送されたり、駅構内R1を巡回するドローン等にカメラ12が搭載されたりしてもよい。この場合、カメラ12の位置及び撮像方向がリアルタイムに測定され、測定されたそれらの情報によってカメラDB1123の「位置」欄、及び「撮像方向」欄が継続的に更新される。
【0090】
なお、上述した実施形態において示した具体的な配置、処理のフロー、データの構成等は例示であって、それらは様々に変更されてよい。例えば、図5に示したホームR12と商業施設R13の数は各々1つであるが、これらの数が複数であってもよい。また、ホームR12、商業施設R13、改札E11等の配置は図5に示した配置に限られない。
【符号の説明】
【0091】
1…監視システム、11…情報処理装置、12…カメラ、111…制御部、112…記憶部、113…表示部、114…操作部、115…インタフェース、1111…取得部、1112…特定部、1113…選定部、1114…登録部、1115…判定部、1116…更新部、1117…合成部、1118…削除部、1119…計時部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13