IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立マクセル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-アルカリ二次電池 図1
  • 特許-アルカリ二次電池 図2
  • 特許-アルカリ二次電池 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】アルカリ二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/32 20060101AFI20220929BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220929BHJP
   H01M 4/34 20060101ALI20220929BHJP
   H01M 4/24 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
H01M10/32 A
H01M4/62 C
H01M4/34
H01M4/24 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018036068
(22)【出願日】2018-03-01
(65)【公開番号】P2019153402
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078064
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 鐵雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115901
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 英樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄介
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 光俊
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-214125(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102832419(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M10/00-10/04
H01M10/06-10/34
H01M10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極およびアルカリ電解質を有するアルカリ二次電池であって、
前記正極は、銀酸化物を含有する正極合剤層を有しており、
前記負極は、亜鉛粒子および亜鉛合金粒子より選択される亜鉛系粒子を含有しており、
前記アルカリ電解質は、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムと、水酸化リチウムと、ポリアルキレングリコール類とを含有していることを特徴とするアルカリ二次電池。
【請求項2】
前記アルカリ電解質における水酸化リチウムの含有量が、0.1~5質量%である請求項1に記載のアルカリ二次電池。
【請求項3】
前記アルカリ電解質におけるポリアルキレングリコール類の含有量が、0.1~8質量%である請求項1または2に記載のアルカリ二次電池。
【請求項4】
前記正極合剤層は、絶縁性無機粒子を更に含有している請求項1~のいずれかに記載のアルカリ二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充放電サイクル初期の容量低下が抑制されており、充放電サイクル特性に優れたアルカリ二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
亜鉛や亜鉛合金を含有する負極と、アルカリ電解質とを有するアルカリ電池は、一次電池として広く一般に使用されている。
【0003】
また、その一方で、前記のような構成のアルカリ電池を、二次電池として利用することも検討されている。そして、アルカリ二次電池における種々の特性を高めるために、例えば、正極活物質である銀材料に特定量のドーパントを用いたり、負極とセパレータとの間に特定のアニオン伝導性膜を介在させたり、アルカリ電解液にポリアルキレングリコールなどの添加剤を含有させたりする技術が提案されている(特許文献1、2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2013-541815号公報(請求項1、段落[0173]など)
【文献】国際公開第2017/047628号(請求項1、段落[0105]など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載されている技術によれば、アルカリ二次電池の各種特性を高めることが可能である一方で、アルカリ二次電池の今後の用途展開を考慮すると、例えば充放電サイクル特性の更なる向上が要求され、特に充放電サイクルの初期(10サイクル程度まで)における急激な容量低下を抑制することが求められる。よって、アルカリ二次電池の充放電サイクル特性の改善には、更なる検討が必要とされている。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、充放電サイクル初期の容量低下が抑制されており、充放電サイクル特性に優れたアルカリ二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアルカリ二次電池は、正極、負極およびアルカリ電解質を有し、前記負極は、亜鉛粒子および亜鉛合金粒子より選択される亜鉛系粒子を含有しており、前記アルカリ電解質は、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムと、水酸化リチウムと、ポリアルキレングリコール類とを含有していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、充放電サイクル初期の容量低下が抑制されており、充放電サイクル特性に優れたアルカリ二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のアルカリ二次電池の一例を模式的に表す側面図である。
図2図1に表すアルカリ二次電池の要部断面図である。
図3】実施例および比較例のアルカリ二次電池の充放電サイクル試験結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
亜鉛粒子および亜鉛合金粒子より選択される亜鉛系粒子(以下、単に「亜鉛系粒子」という場合がある)を含有する負極を有するアルカリ二次電池においては、充放電を繰り返すと、僅かな繰り返し数で急激に電池容量が低下してしまうことがある。その負極側の要因として、電池の充放電によって負極で亜鉛デンドライトが生成し、これが対極まで成長して内部短絡を引き起こすことが挙げられる。
【0011】
そこで、本発明のアルカリ二次電池においては、水酸化リチウムとポリアルキレングリコール類とを含有するアルカリ電解質を使用することとし、これにより、特に充放電サイクル初期の急激な容量低下を抑制して、優れた充放電サイクル特性の確保を可能とした。なお、水酸化リチウムは、アルカリ二次電池に係るアルカリ電解質の電解質塩として使用し得ることが知られているが、本発明では、電解質塩として使用する水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムと共に、水酸化リチウムをアルカリ電解質に含有させる。
【0012】
水酸化リチウムとポリアルキレングリコール類とを含有するアルカリ電解質を使用することによってアルカリ二次電池の充放電サイクル特性が向上する理由を、本発明者らは以下の機構によるものと推測している。
【0013】
亜鉛系粒子を含有する負極を有するアルカリ二次電池を放電させると、テトラヒドロキソ亜鉛(II)酸イオン〔Zn(OH) 2-〕が負極中で生成してアルカリ電解質中に放出される。そして、このテトラヒドロキソ亜鉛(II)酸イオンが、アルカリ二次電池の充電時に負極の亜鉛系粒子の表面まで戻って亜鉛デンドライトとなる。
【0014】
ところが、アルカリ電解質がポリアルキレングリコール類を含有していると、このポリアルキレングリコールが負極の亜鉛系粒子の表面に付着するため、テトラヒドロキソ亜鉛(II)酸イオンが亜鉛系粒子の表面まで戻り難くなると考えられる。また、アルカリ電解質が水酸化リチウムを含有していると、テトラヒドロキソ亜鉛(II)酸イオンがアルカリ電解質中で比較的安定に存在できるようになる。これらの作用によって、亜鉛デンドライトの生成が抑制され充放電サイクルでの短絡が生じ難くなると推測される。
【0015】
また、アルカリ電解質中の水酸化リチウムは、電池の充放電初期の充電効率を低下させる作用を有しているが、アルカリ電解質が更にポリアルキレングリコール類も含有している場合には、水酸化リチウムの前記作用が抑制される。
【0016】
本発明では、ポリアルキレングリコール類による前記の作用と、水酸化リチウムによる前記の作用とが相乗的に機能していると考えられ、これにより、特に充放電サイクル初期の急激な容量低下を良好に抑制して、優れた充放電サイクル特性を確保できていると推測される。
【0017】
本発明のアルカリ二次電池に係るアルカリ電解質には、例えば、電解質塩である水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムの水溶液(アルカリ電解液)が使用できる。そして、アルカリ電解質は、水酸化リチウムおよびポリアルキレングリコール類を更に含有している。
【0018】
アルカリ電解質における水酸化リチウムの含有量(濃度。以下同じ。)は、水酸化リチウムをアルカリ電解質に含有させることによる前記の効果をより良好に確保する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、水酸化リチウムの過剰な添加は、電池の内部抵抗増加に繋がることから、アルカリ電解質における水酸化リチウムの含有量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0019】
本発明において用いられるポリアルキレングリコール類は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどのアルキレングリコールが重合または共重合した構造を有する化合物であり、架橋構造や分岐構造を持つものであってもよく、また末端が置換された構造の化合物であってもよく、重量平均分子量としては、およそ200以上の化合物が好ましく用いられる。重量平均分子量の上限は特に規定はされないが、添加による効果をより発揮させやすくするためには化合物が水溶性である方が好ましく、通常は20000以下のものが好ましく用いられ、5000以下のものがより好ましく用いられる。
【0020】
より具体的には、エチレングリコールが重合した構造をもつポリエチレングリコール類や、プロピレングリコールが重合した構造をもつポリプロピレングリコール類などを好ましく用いることができる。
【0021】
前記ポリエチレングリコール類としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシドのほか、直鎖構造の化合物としては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物が好ましく用いられる。
【化1】
【0022】
前記一般式(1)中、Xはアルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、またはハロゲン原子、Yは水素原子またはアルキル基であり、nは平均で4以上を表す。
【0023】
なお、前記一般式(1)におけるnは、ポリエチレングリコール類における酸化エチレンの平均付加モル数に相当する。nは平均で4以上であり、nの上限は特に限定はされないが、重量平均分子量として、200~20000程度の化合物が好ましく用いられる。
【0024】
前記ポリプロピレングリコール類としては、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキシドのほか、直鎖構造の化合物としては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物が好ましく用いられる。
【化2】
【0025】
前記一般式(2)中、Zはアルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、またはハロゲン原子、Tは水素原子またはアルキル基であり、mは平均で3以上を表す。
【0026】
なお、前記一般式(2)におけるmは、ポリプロピレングリコール類における酸化プロピレンの平均付加モル数に相当する。mは平均で3以上であり、mの上限は特に限定はされないが、重量平均分子量として、200~20000程度の化合物が好ましく用いられる。
【0027】
ポリアルキレングリコール類は、酸化エチレンユニットと、酸化プロピレンユニットとを含むような共重合化合物(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなど)であってもよい。
【0028】
アルカリ電解質におけるポリアルキレングリコール類の含有量(濃度。ポリアルキレングリコール類として複数の化合物を用いる場合は、それらの合計量。以下、同じ。)は、ポリアルキレングリコール類をアルカリ電解質に含有させることによる前記の効果をより良好に確保する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。なお、アルカリ電解質中のポリアルキレングリコール類の量が多すぎると、電池の放電特性を損なう虞がある。よって、アルカリ電解質中のポリアルキレングリコールの量を制限して、電池の放電特性をより良好に維持する観点からは、アルカリ電解質におけるポリアルキレングリコール類の含有量は、8質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましい。
【0029】
前記の通り、アルカリ電解質には、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムを電解質塩として含有させる。アルカリ電解質は、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムのうちのいずれか一方のみを含有していていればよく、両方を含有していてもよい。
【0030】
アルカリ電解質における前記電解質塩の含有量は、アルカリ電解質において良好な導電性を確保できる範囲であればよいが、例えば、水酸化カリウムを使用する場合には、水酸化カリウムの含有量(濃度)は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、また、40質量%以下であることが好ましく、38質量%以下であることがより好ましい。
【0031】
アルカリ電解質には、前記の各成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて公知の各種添加剤を添加してもよい。例えば、アルカリ二次電池の負極に用いる亜鉛系粒子の腐食(酸化)を防止するために、酸化亜鉛を添加するなどしてもよい。なお、酸化亜鉛は、負極に添加することもできる。
【0032】
また、正極活物質として銀酸化物を使用する場合(詳しくは後述する)、アルカリ電解質には、マンガン化合物、スズ化合物およびインジウム化合物よりなる群から選択される1種以上が溶解していることが好ましい。
【0033】
銀酸化物を正極に含有するアルカリ二次電池を放電すると銀酸化物から銀が生成するが、この電池を充電すると銀の周りに銀酸化物の結晶が生成し、その後の電池反応を阻害する虞がある。マンガン化合物、スズ化合物またはインジウム化合物がアルカリ電解質中に溶解している場合には、これらの化合物由来のイオン(マンガンイオン、スズイオン、インジウムイオン)が、正極に吸着することにより、銀酸化物の結晶成長を抑えて、形成される銀酸化物の結晶を微細化する。そのため、電池の充電時に生成する銀酸化物の結晶が電池反応を阻害する問題の発生を抑制して、電池の充放電サイクル特性を更に高めることが可能となる。
【0034】
アルカリ電解質に溶解させるマンガン化合物としては、塩化マンガン、酢酸マンガン、硫化マンガン、硫酸マンガン、水酸化マンガンなどが挙げられる。また、アルカリ電解質に溶解させるスズ化合物としては、塩化スズ、酢酸スズ、硫化スズ、臭化スズ、酸化スズ、水酸化スズ、硫酸スズなどが挙げられる。更に、アルカリ電解質液に溶解させるインジウム化合物としては、水酸化インジウム、酸化インジウム、硫酸インジウム、硫化インジウム、硝酸インジウム、臭化インジウム、塩化インジウムなどが挙げられる。
【0035】
アルカリ電解質中におけるインジウム化合物、マンガン化合物およびスズ化合物の濃度(これらのうちの1種のみを溶解させる場合は、その濃度であり、2種以上を溶解させる場合は、それらの合計濃度である)は、前記の効果をより良好に確保する観点から、質量基準で、50ppm以上であることが好ましく、500ppm以上であることがより好ましく、また、10000ppm以下であることが好ましく、5000ppm以下であることがより好ましい。
【0036】
アルカリ二次電池の負極には、亜鉛粒子および亜鉛合金粒子から選択される亜鉛系粒子を含有するものを使用する。このような負極では、前記粒子中の亜鉛が活物質として作用する。亜鉛合金粒子の合金成分としては、例えば、インジウム(例えば含有量が質量基準で50~500ppm)、ビスマス(例えば含有量が質量基準で50~500ppm)などが挙げられる(残部は亜鉛および不可避不純物である)。負極の有する亜鉛系粒子は、1種単独でもよく、2種以上であってもよい。
【0037】
ただし、亜鉛系粒子には、合金成分として水銀を含有しないものを使用することが好ましい。このような亜鉛系粒子を使用している電池であれば、電池の廃棄による環境汚染を抑制できる。また、水銀の場合と同じ理由から、亜鉛系粒子には、合金成分として鉛を含有しないものを使用することが好ましい。
【0038】
亜鉛系粒子の粒度としては、例えば、全粉末中、粒径が75μm以下の粒子の割合が50質量%以下のものが好ましく、30質量%以下のものがより好ましく、また、粒径が100~200μmの粉末の割合が、50質量%以上、より好ましくは90質量%以上であるものが挙げられる。ここでいう亜鉛系粒子における粒度は、後述する銀酸化物の平均粒子径測定法と同じ測定方法により得られる値である。
【0039】
負極には、例えば、前記の亜鉛系粒子の他に、必要に応じて添加されるゲル化剤(ポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルロースなど)を含んでもよく、これにアルカリ電解質を加えることで構成される負極剤(ゲル状負極)を使用してもよい。負極中のゲル化剤の量は、例えば、0.5~1.5質量%とすることが好ましい。
【0040】
また、負極は、前記のようなゲル化剤を実質的に含有しない非ゲル状の負極とすることもできる(なお、非ゲル状負極の場合、亜鉛系粒子近傍に存在するアルカリ電解質が増粘しなければゲル化剤を含有しても構わないので、「ゲル化剤を実質的に含有しない」とは、アルカリ電解質の粘度への影響がない程度に含有していてもよい、という意味である)。ゲル状負極の場合には、亜鉛系粒子の近傍に、ゲル化剤と共にアルカリ電解質が存在しているが、ゲル化剤の作用によってこのアルカリ電解質が増粘しており、アルカリ電解質の移動、ひいては電解質中のイオンの移動が抑制されている。このため、負極での反応速度が抑えられ、これが電池の負荷特性(特に重負荷特性)の向上を阻害しているものと考えられる。これに対し、負極を非ゲル状として、亜鉛系粒子近傍に存在するアルカリ電解質の粘度を増大させずにアルカリ電解質中のイオンの移動速度を高く保つことで、負極での反応速度を高めて、負荷特性(特に重負荷特性)をより高めることができる。
【0041】
負極に含有させるアルカリ電解質には、電池に注入するものと同じものを使用することができる。
【0042】
負極における亜鉛系粒子の含有量は、例えば、60質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、また、75質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。
【0043】
負極は、インジウム化合物を含有していることが好ましい。負極がインジウム化合物を含有することによって、亜鉛系粒子とアルカリ電解質との腐食反応によるガス発生をより効果的に防ぐことができる。
【0044】
前記のインジウム化合物としては、例えば、酸化インジウム、水酸化インジウムなどが挙げられる。
【0045】
負極に使用するインジウム化合物の量は、質量比で、亜鉛系粒子:100に対し、0.003~1であることが好ましい。
【0046】
アルカリ二次電池に係る正極には、銀酸化物の他、オキシ水酸化ニッケルなどアルカリ二次電池の正極活物質として利用可能な化合物を使用することができ、例えば、正極活物質の他に導電助剤を含有する正極合剤層のみからなるもの(正極合剤の成形体)や、正極活物質および導電助剤を含有する正極合剤層を、集電体の片面または両面に形成した構造のものなどが挙げられる。
【0047】
正極の活物質として銀酸化物を用いる場合には、AgOやAgOを使用することができる。
【0048】
銀酸化物は、その粒度について特に限定はされないが、平均粒子径が、10μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。このようなサイズの銀酸化物を用いた場合には、充電時の利用率が向上し、充電終止電圧を比較的低くしても大きな充電容量が得られるため、電池の充放電サイクル特性を更に高めることができ、また、例えば、充電終止電圧を高めることによって生じ得る電池の膨れを抑えることが可能となる。
【0049】
ただし、あまり粒径の小さい銀酸化物は製造やその後の取り扱いが困難となることから、銀酸化物の平均粒子径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.03μm以上であることがより好ましい。
【0050】
本明細書でいう銀酸化物やその他の粒子(後記の絶縁性無機粒子および黒鉛粒子)の平均粒子径は、レーザー散乱粒度分布計(例えば、堀場製作所製「LA-920」)を用い、粒子を溶解しない媒体に、これらの粒子を分散させて測定した、体積基準での累積頻度50%における粒径(D50)である。
【0051】
正極合剤層の導電助剤としては、カーボンブラック粒子、黒鉛粒子などの炭素質材料の粒子などが挙げられる。なお、導電助剤には、カーボンブラック粒子と黒鉛粒子とを併用することがより好ましい。
【0052】
カーボンブラック粒子を使用することで、正極合剤層中で良好な導電ネットワークを形成しやすいため、例えば黒鉛粒子のみを使用する場合に比べて、正極活物質である銀酸化物の粒子との接点が多くなり、正極合剤層内の電気抵抗を効果的に低減することができ、これにより、充電時に正極活物質の反応効率を向上させることが可能となる。
【0053】
他方、カーボンブラック粒子のみを使用する場合には、正極合剤層の厚みによっては、その成形性を高めるためにバインダを使用する必要があるが、黒鉛粒子も併用した場合には、正極合剤層の成形性が向上するため、例えば正極合剤の成形体や正極合剤層が0.4mm以下、より好ましくは0.3mm以下と薄い場合であってもその成形性が良好となり、バインダを用いなくとも製造不良の発生を防ぐことが容易になる。
【0054】
正極合剤層に係る黒鉛粒子は、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)の粒子、人造黒鉛の粒子のいずれでもよく、これらのうちの1種または2種以上を使用することができる。
【0055】
前記の通り、黒鉛粒子には正極合剤層の成形性を高める機能があるが、この機能をより良好に発揮させる観点から、黒鉛粒子は、平均粒子径が、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、また、導電性の向上の観点からから、7μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
【0056】
正極合剤層に係るカーボンブラック粒子としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックなどが例示され、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。これらのカーボンブラック粒子の中でも、導電性が高く不純物が少ないアセチレンブラックが好ましく用いられる。
【0057】
また、正極活物質として銀酸化物を使用する場合、正極合剤層には、絶縁性無機粒子を更に含有させることが好ましく、これによって電池の充放電サイクル特性をより高めることができる。また、絶縁性無機粒子を使用する場合、更にカーボンブラック粒子と黒鉛粒子とを正極合剤層に含有させることで、電池の充放電サイクル特性を更に高めることができる。
【0058】
正極合剤層に係る絶縁性無機粒子としては、Si、Zr、Ti、Al、MgおよびCaより選択される少なくとも1種の元素の酸化物などの粒子が挙げられる。また、前記酸化物の具体例としては、Al、TiO、SiO、ZrO、MgO、CaO、AlOOH、Al(OH)などが挙げられ、アルカリ電解質(アルカリ電解液)に溶解しないか、難溶性である粒子が好ましく用いられる。これらの絶縁性無機粒子は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
絶縁性無機粒子は、その粒子径が大きすぎると、電池の充放電サイクル特性の向上効果が小さくなる虞がある。よって、電池の充放電サイクル特性をより良好に高める観点からは、絶縁性無機粒子の平均粒子径は、0.5μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることがより好ましい。
【0060】
また、絶縁性無機粒子の粒子径が小さすぎると、電池の充電効率(初期容量)の向上効果が小さくなる虞がある。よって、電池の充電効率をより良好に高める観点からは、絶縁性無機粒子の平均粒子径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましい。
【0061】
正極合剤層(正極合剤の成形体や集電体上に形成された正極合剤塗布層など)の組成としては、容量を確保するために、正極活物質として銀酸化物を使用する場合、その含有量は、正極合剤層を構成する固形分全体を100質量%として、例えば、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0062】
また、正極合剤層における導電助剤の含有量は、導電性の点から0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることが特に好ましく、一方、容量低下や充電時のガス発生を防ぐため、8質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。
【0063】
なお、正極合剤層にカーボンブラック粒子と黒鉛粒子とを含有させる場合、黒鉛粒子の含有量は、カーボンブラック粒子との併用による電池の充電効率や充放電サイクル特性の向上効果を良好に確保する観点から、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。そして、正極合剤層にカーボンブラック粒子と黒鉛粒子とを含有させる場合の黒鉛粒子の含有量は、例えば正極合剤層中の銀酸化物の量が少なくなりすぎて電池の容量が低下することを抑える観点から、7質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましい。
【0064】
また、正極合剤層にカーボンブラック粒子と黒鉛粒子とを含有させる場合、カーボンブラック粒子の含有量は、黒鉛粒子との併用による電池の充電効率や充放電サイクル特性の向上効果を良好に確保する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。ただし、正極合剤層中のカーボンブラック粒子の量が多すぎると、例えば電池を高温下で貯蔵した際に、正極の膨れ量が大きくなる虞がある。よって、電池の貯蔵(特に60℃程度の高温下での貯蔵)時の正極の膨れを抑えて、電池の貯蔵特性を向上させる観点からは、正極合剤層にカーボンブラック粒子と黒鉛粒子とを含有させる場合のカーボンブラック粒子の含有量は、1.5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0065】
また、正極合剤層に絶縁性無機粒子を含有させる場合、その含有量は、その使用による効果(特に電池の充放電サイクル特性向上効果)を良好に確保する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。ただし、正極合剤層中の絶縁性無機粒子の量が多すぎると、正極活物質の充填量が減少して電池の容量減少を招くほか、絶縁性無機粒子の種類によっては、充放電サイクルが進行した場合に、放電容量が急に低下してしまう場合もあることから、正極合剤層における絶縁性無機粒子の含有量は、7質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0066】
正極合剤層は、前記の通り、バインダを使用せずに形成することも可能であるが、強度を高める必要がある場合(導電助剤に黒鉛を使用しない場合など)にはバインダを用いてもよい。正極合剤層のバインダには、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂などが挙げられる。バインダを使用する場合、正極合剤層中のバインダの含有量は、0.1~20質量%であることが好ましい。
【0067】
正極は、正極合剤の成形体の場合には、例えば、正極活物質および導電助剤、更には必要に応じてアルカリ電解質(電池に注入するアルカリ電解質と同じものが使用できる)などを混合して調製した正極合剤を所定の形状に加圧成形することで製造することができる。
【0068】
また、正極合剤層と集電体とを有する形態の正極の場合には、例えば、正極活物質および導電助剤などを水またはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの有機溶媒に分散させて正極合剤含有組成物(スラリー、ペーストなど)を調製し、これを集電体上に塗布し乾燥し、必要に応じてカレンダ処理などのプレス処理を施す工程を経て製造することができる。
【0069】
ただし、正極は、前記の各方法で製造されたものに限定されず、他の方法で製造したものであってもよい。
【0070】
正極合剤の成形体を正極とする場合、その厚みは、0.15~4mmであることが好ましい。他方、正極合剤層と集電体とを有する形態の正極の場合、正極合剤層の厚み(集電体の片面あたりの厚み)は、30~300μmであることが好ましい。
【0071】
正極に集電体を用いる場合には、その集電体としては、例えば、SUS316、SUS430、SUS444などのステンレス鋼;アルミニウムやアルミニウム合金;を素材とするものが挙げられ、その形態としては、平織り金網、エキスパンドメタル、ラス網、パンチングメタル、金属発泡体、箔(板)などが例示できる。集電体の厚みは、例えば、0.05~0.2mmであることが好ましい。このような集電体の表面には、カーボンペーストや銀ペーストなどのペースト状導電材を塗布しておくことも望ましい。
【0072】
アルカリ二次電池において、正極と負極との間には、通常、セパレータを介在させる。アルカリ二次電池に使用可能なセパレータとしては、ビニロンとレーヨンを主体とする不織布、ビニロン・レーヨン不織布(ビニロン・レーヨン混抄紙)、ポリアミド不織布、ポリオレフィン・レーヨン不織布、ビニロン紙、ビニロン・リンターパルプ紙、ビニロン・マーセル化パルプ紙などを用いることができる。また、親水処理された微孔性ポリオレフィンフィルム(微孔性ポリエチレンフィルムや微孔性ポリプロピレンフィルムなど)とセロファンフィルムとビニロン・レーヨン混抄紙のような吸液層(電解質保持層)とを積み重ねたものをセパレータとしてもよい。セパレータの厚みは、20~500μmであることが好ましい。
【0073】
また、正極と負極との間には、ポリマーをマトリクスとし、かつ前記マトリクス中に金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩およびケイ酸塩よりなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物の粒子を分散させたアニオン伝導性膜を配置することが好ましい。
【0074】
アルカリ二次電池の形態については特に制限はなく、外装缶と封口板とをガスケットを介してカシメ封口したり、外装缶と封口板とを溶接して封口したりする電池ケースを有する扁平形(コイン形、ボタン形を含む);金属ラミネートフィルムからなる外装体を有するラミネート形;有底筒形の外装缶と封口板とをガスケットを介してカシメ封口したり、外装缶と封口板とを溶接して封口したりする電池ケースを有する筒形〔円筒形、角形(角筒形)〕;など、いずれの形態とすることもできる。
【0075】
なお、カシメ封口を行う形態の外装体を使用する場合、外装缶と封口板との間に介在させるガスケットの素材には、ポリプロピレン、ナイロンなどを使用できるほか、電池の用途との関係で耐熱性が要求される場合には、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)などのフッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル(PEE)、ポリスルフォン(PSF)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの融点が240℃を超える耐熱樹脂を使用することもできる。また、電池が耐熱性を要求される用途に適用される場合、その封口には、ガラスハーメチックシールを利用することもできる。
【0076】
また、充電時に外装缶を構成する鉄などの元素が溶出するのを防ぐため、外装缶の内面には、金などの耐食性の金属をメッキしておくことが望ましい。
【0077】
本発明のアルカリ二次電池は、アルカリ一次電池(酸化銀一次電池など)が採用されている用途に使用し得るほか、従来から知られているアルカリ二次電池や非水電解質二次電池が採用されている用途にも適用することができる。
【実施例
【0078】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
【0079】
実施例1
正極活物質として平均粒子径:5μmの酸化銀(AgO)を用い、更に、黒鉛粒子(BET比表面積が20m/gで、平均粒子径が3.7μm)、カーボンブラック粒子(BET比表面積が68m/gで、一次粒子の平均粒子径が35nmのアセチレンブラック)、およびTiO粒子(平均粒子径:250nm)を用いて正極合剤層を形成した。
【0080】
酸化銀、黒鉛粒子、カーボンブラック(CB)粒子およびTiO粒子を、それぞれ85.6質量%、3.8質量%、0.6質量%および10質量%となる割合で混合して正極合剤を構成し、この正極合剤80mgを金型に充填し、充填密度5.7g/cmで、直径5.17mm、高さ0.6mmの円板状に加圧成形することによって、正極合剤成形体(正極合剤層)を作製した。
【0081】
PTFEの水系分散液(固形分:60質量%):5gと、ポリアクリル酸ナトリウムの水溶液(濃度:2質量%):2.5gと、ハイドロタルサイト粒子(平均粒子径:0.4μm):2.5gとを混練し、圧延して100μmの厚みの膜を作製し、更に直径5.7mmの円形に打ち抜いたものを、アニオン伝導性膜として電池の組み立てに用いた。
【0082】
負極活物質には、添加元素としてIn:500ppm、Bi:400ppmおよびAl:10ppmを含有する、アルカリ一次電池で汎用されている無水銀の亜鉛合金粒子を用いた。前述した方法により求めた前記亜鉛合金粒子の粒度は、平均粒子径(D50)が120μmであり、粒径が75μm以下の粒子の割合は25質量%以下であった。
【0083】
前記亜鉛合金粒子と、ZnOとを、97:3の割合(質量比)で混合し、負極を構成するための組成物(負極用組成物)を得た。この組成物:19mgを量り取って負極の作製に用いた。
【0084】
アルカリ電解液には、35質量%の濃度で水酸化カリウムを溶解させた水溶液に、更に、酸化亜鉛、水酸化リチウム(LiOH)およびポリエチレングリコール(PEG)を、それぞれ3質量%、0.5質量%および1質量%の濃度で溶解させた水溶液を用いた。
【0085】
セパレータには、ポリエチレン主鎖にアクリル酸をグラフト共重合させた構造を有するグラフト共重合体で構成された2枚のグラフトフィルム(厚み:30μm)を、セロハンフィルム(厚み:20μm)の両側に配置し、更にビニロン-レーヨン混抄紙(厚み:100μm)を積層したものを、直径5.7mmの円形に打ち抜いて用いた。
【0086】
前記の正極(正極合剤成形体)、負極(負極用組成物)、アルカリ電解液、アニオン伝導性膜およびセパレータを、内面に金メッキを施した鋼板よりなる外装缶と、銅-ステンレス鋼(SUS304)-ニッケルクラッド板よりなる封口板と、ナイロン66製の環状ガスケットとから構成された電池容器内に封止し、図1に示す外観で、図2に示す構造を有し、直径5.8mm、厚さ2.7mmのアルカリ二次電池を作製した。なお、前記アニオン伝導性膜は、負極に面するように配置し、前記セパレータを正極側に配置した。
【0087】
図1および図2に示すアルカリ二次電池1は、正極4、セパレータ6およびアニオン伝導性膜7を内填した外装缶2の開口部に、負極5を内填した封口板3が、断面L字状で環状のガスケット(樹脂製ガスケット)8を介して嵌合しており、外装缶2の開口端部が内方に締め付けられ、これにより樹脂製ガスケット8が封口板3に当接することで、外装缶2の開口部が封口されて電池内部が密閉構造となっている。すなわち、図1および図2に示す電池では、外装缶2、封口板3および樹脂製ガスケット8からなる電池容器内の空間(密閉空間)に、正極4、負極5、セパレータ6およびアニオン伝導性膜7を含む発電要素が装填されており、更にアルカリ電解液(図示しない)が注入され、セパレータに保持されている。そして、外装缶2は正極端子を兼ね、封口板3は負極端子を兼ねている。正極4は、前記の通り、酸化銀、黒鉛粒子、カーボンブラック粒子およびTiO粒子を含有する正極合剤の成形体である。
【0088】
実施例2
アルカリ電解液に溶解させる水酸化リチウムの濃度を1質量%とした以外は、実施例1と同様にしてアルカリ二次電池を作製した。
【0089】
実施例3
アルカリ電解液に溶解させる水酸化リチウムの濃度を2質量%とした以外は、実施例1と同様にしてアルカリ二次電池を作製した。
【0090】
比較例1
酸化銀、黒鉛粒子およびカーボンブラック粒子を、それぞれ95.6質量%、3.8質量%および0.6質量%となる割合で混合して正極合剤を構成した以外は、実施例1と同様にして正極合剤成形体を作製した。
【0091】
前記正極合剤成形体を正極とし、アルカリ電解液として、35質量%の濃度で水酸化カリウムを溶解させた水溶液に、更に酸化亜鉛を3質量%の濃度で溶解させた水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてアルカリ二次電池を作製した。
【0092】
比較例2
アルカリ電解液として、35質量%の濃度で水酸化カリウムを溶解させた水溶液に、更に、酸化亜鉛および水酸化リチウムを、それぞれ3質量%および2質量%の濃度で溶解させた水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてアルカリ二次電池を作製した。
【0093】
比較例3
アルカリ電解液として、35質量%の濃度で水酸化カリウムを溶解させた水溶液に、更に、酸化亜鉛およびポリエチレングリコールを、それぞれ3質量%および1質量%の濃度で溶解させた水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてアルカリ二次電池を作製した。
【0094】
比較例4
アルカリ電解液として、35質量%の濃度で水酸化カリウムを溶解させた水溶液に、更に酸化亜鉛を3質量%の濃度で溶解させた水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてアルカリ二次電池を作製した。
【0095】
実施例および比較例のアルカリ二次電池について、以下の方法で充放電サイクル特性を評価した。実施例および比較例のアルカリ二次電池に対し、定電流-定電圧充電(CC:2mA、CV:1.8V、終止電流:0.2mA)および定電流放電(電流値:2mA、終止電圧:1.0V)を1サイクルとする充放電サイクルを140回繰り返して、サイクル毎の放電容量測定を行った。測定結果について、横軸にサイクル数を取り、縦軸に放電容量(mAh)を取ってグラフとしたものを図3に示す。
【0096】
また、実施例および比較例のアルカリ二次電池における正極合剤の構成並びにアルカリ電解液の添加剤の構成を、表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
図3に示す通り、水酸化リチウムおよびポリアルキレングリコール(PEG)を含有するアルカリ電解液を用いた実施例1~3のアルカリ二次電池は、これらの両者を含有していないアルカリ電解液を用いた比較例1、4の電池、PEGを含有していないアルカリ電解液を用いた比較例2の電池、および水酸化リチウムを含有していないアルカリ電解液を用いた比較例3の電池に比べて、サイクル数が進んでも容量の低下が良好に抑制されており、優れた充放電サイクル特性を有していた。
【0099】
なお、水酸化リチウムを含有する一方でPEGを含有しないアルカリ電解液を用いた比較例2の電池では、充放電サイクル初期の充電効率が悪く、放電容量が極端に低くなっていたが、水酸化リチウムと共にPEGを含有するアルカリ電解液を用いた実施例1~3の電池では、充放電サイクル初期の充電効率を向上させることができ、水酸化リチウムに起因する前記の問題を抑制することができた。
【符号の説明】
【0100】
1 アルカリ二次電池
2 外装缶
3 封口板
4 正極(正極合剤の成形体)
5 負極
6 セパレータ
7 アニオン伝導性膜
8 ガスケット
図1
図2
図3