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特許7149082走行支援装置の走行支援方法及び走行支援装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】走行支援装置の走行支援方法及び走行支援装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20220929BHJP
   G01C 21/30 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G01C21/30
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2018041766
(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公開番号】P2019159462
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】藤田 晋
【審査官】菅家 裕輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/056249(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/056247(WO,A1)
【文献】特開2001-250199(JP,A)
【文献】特開2016-206999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲の道路構造データを取得するセンサと、道路上の車線境界データを有する地図を記憶したメモリとを備え、前記センサで取得した道路構造データと前記地図上における前記車線境界データとを用いて、前記車両の走行を支援する走行支援装置の走行支援方法であって、
前記地図上において、前記車両の目的地までに走行する予定の車線を示すルートを設定し、
前記地図上に設定した前記ルート上における前記車両の走行位置を検出し、
前記車両で検出した道路構造データを、前記ルート上の前記走行位置に基づいて地図座標系に変換し、
前記地図座標系に変換した前記道路構造データと、前記地図上における前記車線境界データとを統合して統合道路構造データを生成し、
前記統合道路構造データを用いて、前記車両の走行を支援する
ことを特徴とする走行支援方法。
【請求項2】
前記センサにより車両の周囲の車線境界情報を含む前記道路構造データを取得し、前記道路構造データより、前記車線内の前記車両の走行位置を特定し、
前記車線内前記走行位置と前記ルート上の前記走行位置とを用いて、前記道路構造データを地図座標系に変換する
ことを特徴とする請求項1に記載の走行支援方法。
【請求項3】
前記統合道路構造データを用いて、前記車両の走行軌跡を算出し、
前記走行軌跡に沿って走行するように、前記車両を制御する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の走行支援方法。
【請求項4】
前記道路構造データに対応する位置の前記車線境界データを、前記道路構造データに置き換えて、前記統合道路構造データを生成する
ことを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の走行支援方法。
【請求項5】
前記車両の前後方向より前記車両の左右方向を優先して前記統合道路構造データを生成する
ことを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の走行支援方法。
【請求項6】
前記車両の左右方向の道路構造データを取得したか否かを判定し、
前記車両の左右方向の道路構造データを取得した場合に、前記地図座標系に変換した前記道路構造データと、前記地図上における前記車線境界データとを統合する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の走行支援方法。
【請求項7】
前記ルート上に前記車両の前後方向の統合道路構造データを生成する位置を設定し、
前記位置に到達した場合に、前記車両の前後方向の統合道路構造データを生成する
ことを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の走行支援方法。
【請求項8】
前記車両の車速が所定値以上の場合に、前記車両の左右方向の前記統合道路構造データを生成し、
前記車両の車速が所定値未満の場合に、前記車両の左右方向と前後方向の前記統合道路構造データを生成する
ことを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の走行支援方法。
【請求項9】
前記目的地までの車線変更の回数が最少となるように前記ルートを設定する
ことを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の走行支援方法。
【請求項10】
前記目的地までに走行する予定の道路に、複数車線の道路が含まれる場合は、高速側の車線より低速側の車線を選択して前記ルートを設定する
ことを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の走行支援方法。
【請求項11】
前記車両で検出した道路構造データと、前記地図上における前記車線境界データとの間に所定の乖離がある場合は、前記地図上における前記道路構造データに基づいて、前記車両の走行を支援する
ことを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載の走行支援方法。
【請求項12】
前記地図に記憶される交差点を前記車両が走行しているときは前記統合道路構造データを生成しない
ことを特徴とする請求項1乃至11の何れか一項に記載の走行支援方法。
【請求項13】
前記地図に記憶される車線を前記車両が走行していないときは前記統合道路構造データを生成しない
ことを特徴とする請求項1乃至12の何れか一項に記載の走行支援方法。
【請求項14】
前記車両が車線を変更しているときは前記統合道路構造データを生成しない
ことを特徴とする請求項1乃至13の何れか一項に記載の走行支援方法。
【請求項15】
自動運転中の前記車両の運転者がオーバーライドを行っているときは前記統合道路構造データを生成しない
ことを特徴とする請求項1乃至14の何れか一項に記載の走行支援方法。
【請求項16】
GPSにより前記車両の位置である第1自車両位置を推定し、
走行軌跡モデルを用いて前記車両の位置である第2自車両位置を推定し、
前記第1自車両位置及び前記第2自車両位置のうちの精度が高い方の前記車両の位置を選択し、
選択した前記車両の位置を基準に前記道路構造データを地図座標系に変換し、前記統
合道路構造データを生成する
ことを特徴とする請求項1乃至15の何れか一項に記載の走行支援方法。
【請求項17】
推定した前記車両の位置の精度又は前記道路構造データに含まれる車線境界情報の認識精度に基づいて、前記統合道路構造データを生成するか否かを決定する
ことを特徴とする請求項16に記載の走行支援方法。
【請求項18】
前記認識精度が所定の精度以下のときは前記統合道路構造データを生成しない
ことを特徴とする請求項17記載の走行支援方法。
【請求項19】
前記車両の位置の精度が所定の精度以下の場合、前記車両が走行する道路の車線数に基づいて、前記統合道路構造データを生成するか否かを決定する
ことを特徴とする請求項17記載の走行支援方法。
【請求項20】
前記車線数が1である場合、前記統合道路構造データを生成する
ことを特徴とする請求項19記載の走行支援方法。
【請求項21】
前記車両の位置の精度が所定の精度以下の場合、前記車線と車線境界線の属性に基づいて、前記統合道路構造データを生成するか否かを決定する
ことを特徴とする請求項17記載の走行支援方法。
【請求項22】
前記車両が走行する道路が、互いに対向する2車線の道路である場合、前記車線境界線の属性によらず、前記道路構造データと前記2車線のうちの前記車両の進行方向と同じ方向の車線の前記車線境界データを統合して前記統合道路構造データを生成する
ことを特徴とする請求項21記載の走行支援方法。
【請求項23】
前記車両が走行する道路が、同方向の複数の車線を有する道路である場合、前記車線境界線の属性と前記車両の進行方向に基づいて、前記統合道路構造データを生成する
ことを特徴とする請求項21記載の走行支援方法。
【請求項24】
車両の周囲の道路構造データを取得するセンサと、道路上の車線境界データを有する地図を記憶したメモリとを備え、前記センサで取得した道路構造データと前記地図上における前記車線境界データとを用いて、前記車両の走行を支援する走行支援装置であって、
前記地図上において、前記車両の目的地までに走行する予定の車線を示すルートを設定
するルート設定部と、
前記地図上に設定した前記ルート上における前記車両の走行位置を検出する対象車線特定部と、
前記車両で検出した道路構造データを、前記ルート上の前記走行位置に基づいて地図座標系に変換し、前記地図座標系に変換した前記道路構造データと、前記地図上における前記車線境界データとを統合して統合道路構造データを生成する統合道路構造データ生成部と、
前記統合道路構造データを用いて、前記車両の走行を支援する走行支援部と
を備えることを特徴とする走行支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行支援装置の走行支援方法及び走行支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来においては、白線を認識できない場合に、道路地図情報(地図)から自車線の道路形状を含む車線情報を取得し、また自車両に備えたセンサにより先行車両の移動軌跡を取得し、地図からの車線情報とセンサで取得した移動軌跡より、自車両前方の移動可能領域を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-016403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、GPSを用いて求めた自車両の位置を基に、地図における車線の構造と車両で検出した移動軌跡を統合するため、求めた自車両の位置に誤差がある場合、地図上における車線の構造と自車両のセンサで検出した移動軌跡とを正確な位置で統合できないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的は、自車両のセンサで検出した道路構造データと地図上における車線境界データとを正確に統合できる走行支援方法及び走行支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係わる走行支援方法は、地図上において、車両の目的地までに走行する予定の車線を示すルートを設定し、地図上に設定したルート上における車両の走行位置を検出し、車両で検出した道路構造データを、ルート上の走行位置に基づいて地図座標系に変換する。そして、地図座標系に変換した道路構造データと車線境界データとを統合して統合道路構造データを生成する。そして、統合道路構造データを用いて、車両の走行を支援する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自車両のセンサで検出した道路構造データと地図上における車線境界データとを正確に統合できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施例における走行支援装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
図2図2は、第1実施例における走行支援方法のフローチャートである。
図3図3は、地図の一部とルートRTの例を示す図である。
図4図4は、実際に走行した実ルートTと検出データの例を示す図である。
図5図5は、自車両100が4車線の道路を走行する様子を示す図である。
図6図6は、地図において設定したルートRTと走行軌跡Pの例を示す図である。
図7図7は、地図において統合道路構造データを生成する様子を示す図である。
図8図8は、自車両100が停止線STの手前で停車する様子を示す図である。
図9図9は、第2実施例における走行支援装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
図10図10は、ステップS1に代えて第2実施例で行う処理を示すフローチャートである。
図11図11は、第1自車両位置P1と第2自車両位置P2の例を示す図である。
図12図12は、自車両100が旋回する様子を示す図である。
図13図13は、旋回量Sと旋回状態と自車両位置の関係を示す図である。
図14図14は、摩擦係数μと旋回状態と自車両位置の関係を示す図である。
図15図15は、経過時間Tと旋回量Sと自車両位置の関係を示す図である。
図16図16は、経過時間Tと摩擦係数μと自車両位置の関係を示す図である。
図17A図17Aは、第1自車両位置P1を用いて検出した車線境界線D11、D12を示す図である。
図17B図17Bは、第2自車両位置P2を用いて検出した車線境界線D21、D22を示す図である。
図17C図17Cは、車線境界線D11、D12と実際の車線境界線D31、D32を示す図である。
図18A図18Aは、車線数が2以上の道路を自車両100が走行する様子を示す図である。
図18B図18Bは、自車両100と認識した車線境界線D41、D42を示す図である。
図19図19は、自車両100が車線L41を走行し、車線L41に対向する車線L42を他車両120が走行する様子を示す図である。
図20図20は、自車両100が車線L51を走行し、同方向の車線L52を他車両120が走行する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
(第1実施例)
図1は、第1実施例における走行支援装置の概略構成を示す。走行支援装置は、車両(以下、自車両という)に搭載され、地図データベース1、自車両位置推定部2、ルート設定部3、対象車線特定部4、道路構造データ取得部5、統合道路構造データ生成部6及び走行支援部7を備える。
【0011】
走行支援装置は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータには、走行支援装置として機能させるためのコンピュータプログラム(走行支援プログラム)がインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、マイクロコンピュータは、走行支援装置が備える複数の情報処理回路(2~7)として機能する。なお、ここでは、ソフトウェアによって走行支援装置が備える複数の情報処理回路(2~7)を実現する例を示すが、もちろん、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路(2~7)を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路(2~7)を個別のハードウェアにより構成してもよい。更に、情報処理回路(2~7)は、自車両にかかわる他の制御に用いる電子制御ユニット(ECU)と兼用してもよい。
【0012】
地図データベース1は、道路上の車線境界データを有する地図を記憶しているマイクロコンピュータのメモリである。車線境界データは、車線とその周囲との境界を示す座標データを含んでいる。境界は、2つの車線の境界にある白や黄色の連続線や破線など(車線境界線)、車線と歩道の境界に設けられたガードレールや縁石、路側帯などである。また、車線境界データは、車線境界線の色、線種などを示す属性データを含む。
【0013】
また、地図は、車線の幅、車線における車両の進行方向などの情報(車線の属性)を含んでいる。また、地図は、車両が停止すべき位置を示す停止線、交差点の信号機、交差点や道路脇の標識の座標データを記憶している。
【0014】
地図は、例えば、HDマップ(High Definition Map)と称されるものである。この場合、地図データは、車両のセンサを用いて走行中に得た画像などから生成したものであり、必ずしも正確ではない。例えば、異なる車両で得た画像などから生成されることもあり、これも正確でない一因となっている。
【0015】
よって、正確でない地図の車線に走行軌跡を設定し、走行軌跡に沿って車両が走行するように制御した場合、自車両が実際の車線を逸脱して走行する可能性がある。
【0016】
そのため、実際の車線の位置を示すデータ(後述の統合道路構造データ)を生成し、統合道路構造データを用いて、自車両の走行を支援することが好ましい。これにより、車線の逸脱を防止できる。
また、統合道路構造データは、地図上に生成してもよい。これにより、地図を正確なものに更新することができる。例えば、地図において不連続になってしまった車線境界を連続にし、連続性を補償することができる。
【0017】
自車両位置推定部2は、走行軌跡モデルとGPS(グローバル・ポジショニング・システム:全地球測位システム)のいずれか一方により自車両の位置(以下、自車両位置という)を推定する(算出する)。そして、時間経過に伴い、自車両位置の推定を繰り返し、最新の自車両位置で古い自車両位置を更新する。走行軌跡モデルによる自車両位置の推定方法は、オドメトリによる自己位置推定として知られている。自車両位置は、誤差を含み、地図における自車両の位置とは必ずしも一致しない。
【0018】
ルート設定部3は、地図における自車両の位置から目的地までに走行する予定の道路を算出し、算出した道路から、自車両が走行する予定の車線を算出し、地図において、算出した車線をルートRTとして設定する。
【0019】
対象車線特定部4は、地図に設定したルートRTから、自車両位置に基づき、自車両が現在走行する車線(以下、対象車線という)を特定する。
道路構造データ取得部5は、自車両に搭載したセンサであり、車両の周囲の道路構造データを取得する。道路構造データ取得部5はレーザレーダやミリ波レーダ、カメラなどで構成することができる。
【0020】
統合道路構造データ生成部6は、自車両で検出した道路構造データを、ルートRTを用いて地図座標系に変換し、地図座標系に変換した道路構造データと、地図上における車線境界データとを統合して統合道路構造データを生成する。統合道路構造データは、地図とは別に生成してもよいし、地図において生成してもよい。
【0021】
走行支援部7は、統合道路構造データを用いて、自車両の走行を支援する。例えば、統合道路構造データを用いて、自車両の走行軌跡を算出し、走行軌跡に沿って走行するように、自車両を制御する。
【0022】
図2は、第1実施例における走行支援方法のフローチャートである。
【0023】
(ステップS1)まず、自車両位置推定部2が自車両位置を推定(算出)する。
(ステップS3)次に、ルート設定部3が、地図における自車両の位置から目的地までに走行する予定の道路を算出する。
(ステップS5)次に、ルート設定部3が、算出した道路から、自車両が目的地までに走行する予定の車線を算出し、地図において、算出した車線をルートRTとして設定する。
【0024】
図3は、地図の一部を示している。ルートRTは、地図において設定したルートRTである。自車両は、このルートRTに沿って走行することになる。まず自車両は、片側2車線の道路R1の右車線を交差点K1に向かって走行し、交差点K1を右折する。続いて、片側1車線の道路R2を走行し、交差点K2を左折する。続いて自車両は、片側2車線の道路R3の左車線を走行し、右車線に車線変更する。続いて自車両は、交差点K3を右折し、片側2車線の道路R4の左車線を走行する。ルートRTには、交差点K4や道路R5や道路R6は含まれない。
【0025】
また、前述のように、地図は必ずしも正確ではないので、道路R7のように不連続となる道路や車線が含まれる可能性がある。すなわち、道路R7などでは車線境界線の連続性が補償されていない。
【0026】
図2に戻り、説明を続ける。
(ステップS7)対象車線特定部4は、地図において設定したルートRTから、自車両位置に基づき、自車両が現在走行する対象車線を特定し、対象車線の車線境界データを地図から取得する。自車両の走行に伴い自車両位置は更新されるので、ここでは最新の自車両位置を使用する。そして、自車両位置から地図における自車両の位置を求め、ルートRTから自車両の位置の車線を選択し、これを対象車線とする。そして、対象車線の車線境界データを地図から取得する。
【0027】
(ステップS9)次に、道路構造データ取得部5(センサ)が、自車両の周囲の構造を検出する。例えば、自車両に搭載されたカメラにより自車両の周囲を撮影する。または、レーザレーダやミリ波レーダを自車両の周囲の構造物に照射する。
【0028】
(ステップS11)次に、道路構造データ取得部5は、ステップS9の検出結果に基づき、自車両の周囲の道路構造データを取得する。道路構造データには、自車両の進行方向及びその反対方向(以下、前後方向と総称する)の道路構造データと、自車両の進行方向に向かって右及び左方向(以下、左右方向と総称する)の道路構造データとがある。前後方向、左右方向とも自車両の外側の方向である。具体的には、道路構造データ取得部5は、周囲の構造物について、自車両位置を原点とした相対座標系の座標データ(道路構造データ)を算出する。
【0029】
自車両の左右方向の道路構造データには、自車両の左右方向にある車線境界の座標データ、すなわち車線境界情報が含まれる。車線境界情報は、車線境界線、道路と歩道の境界に設けられたガードレールや縁石、路側帯などの座標データである。また、左右方向の道路構造データには、車線境界線の色などの属性情報が含まれる。
【0030】
自車両の前後方向の道路構造データには、自車両の前後方向にある、車両が停止すべき位置を示す停止線、交差点の信号機などの座標データが含まれる。
【0031】
(ステップS13)次に、道路構造データ取得部5が、ルートRTを用いて、相対座標系で算出された道路構造データを、地図で使用される地図座標系の道路構造データに変換する。ここでは、道路構造データより、車線内の自車両の走行位置を特定し、走行位置とルートRTを用いて、道路構造データを地図座標系の道路構造データに変換する。道路構造データ取得部5は自車両位置を基準として車線境界線の座標データすなわち道路構造データを取得するので、車線内の自車両の走行位置を特定したことになる。
【0032】
そして、ルートRTにおける自車両の位置と走行位置が同じとして、道路構造データを地図座標系の道路構造データに変換する。よって、走行位置とルートRTを用いて、道路構造データを地図座標系の道路構造データに変換したことになる。また、道路構造データ取得部5は、同様に、道路構造データに含まれる車線境界情報を地図座標系の車線境界情報に変換する。
【0033】
図4において、実際に走行したルート(実ルートTという)を示す。また、図4は、道路構造データを便宜的に構造(車線境界線など)に変換して示す。図4に示すように、ルートTに含まれる道路R1、R2、R3、R4、交差点K1、K2、K3については道路構造データが得られる。一方、ルートTに含まれない、図3の交差点K4や道路R5や道路R6については道路構造データが得られない。
【0034】
図2に戻り、説明を続ける。
(ステップS15)次に、統合道路構造データ生成部6が、道路構造データと車線境界データを統合すべきタイミングであるか否かを判定する。この判定については、後で説明する。統合すべきタイミングでないと判定した場合(NO)、ステップS7に戻る。
【0035】
(ステップS17)統合道路構造データ生成部6は、統合すべきタイミングであると判定した場合(S15:YES)、ステップS13で得た道路構造データと、ステップS7で得た車線境界データとを統合して統合道路構造データを生成する。統合道路構造データは、地図とは別に生成してもよいし、地図において生成してもよい。道路構造データと車線境界データとを統合する具体例として、地図において統合道路構造データを生成する場合は、道路構造データに対応する位置の車線境界データを道路構造データに置き換えて統合道路構造データを生成することができる。また、地図に統合道路構造データを生成する場合は、地図が記憶する車線の属性(車線の幅など)を道路構造データに基づいて更新することが好ましい。
【0036】
(ステップS19)次に、走行支援部7が、統合道路構造データを用いて、自車両の走行を支援し、処理を終える。
例えば、走行支援部7は、統合道路構造データを用いて、自車両の走行軌跡を算出し、走行軌跡に沿って走行するように、自車両を制御する。走行支援部7は、自車両のアクセル、ブレーキ及びステアリングを制御することで、自車両を走行軌跡に沿って走行させる。
【0037】
ここで、道路構造データと車線境界データとの間に所定の乖離がある場合について説明する。例えば、道路構造データと車線境界データとで位置の乖離が所定値(例えば50cm)以上であれば乖離があると判断する。また、代表点の乖離、中心点の乖離、またはそれぞれの点の乖離の平均値が所定値以上であれば、乖離があると判断してもよい。
【0038】
乖離がある場合、道路構造データが示す車線と車線境界データが示す車線が相違している可能性がある。よって、これらを統合すると、統合道路構造データの正確性が低下する可能性がある。この統合道路構造データを用いて、自車両の走行支援を行うと、車線の逸脱などの可能性が高まる。
【0039】
道路構造データは実際に検出して得たものなので、車線境界データより正確性が高いと推定できる。よって、走行支援部7は、道路構造データと車線境界データとの間に所定の乖離がある場合、統合道路構造データでなく、道路構造データを用いて、上記のように、自車両の走行を支援する。これにより、車線の逸脱などを防止することができる。
【0040】
さて、地図上において統合道路構造データを生成することで、地図の正確性を高めることができる。これにより、地図に自車両の位置を示した場合、自車両が実際とは異なる位置に示される可能性が低くなる。すなわち、地図に示される自車両の位置の精度を高めることができる。
【0041】
また、自車両が図3の道路R7のように不連続な道路や車線を走行し、地図上において統合道路構造データを生成することで、道路R3のように連続な道路や車線にすることができる。すなわち、車線境界線の連続性を補償することができる。
【0042】
(比較例)
ここで、比較例として、ルートRTが道路レベルのルートRTであった場合を挙げ、第1実施例と比較する。
【0043】
図5に示すように、自車両100が一方通行の4車線の道路を走行しているとする。比較例の場合、道路を構成する車線L1~L4を区別できないため、実際には自車両100は車線L2を走行しているのに、地図では自車両100は別の車線を走行していることになる可能性が高い。車線数が多いほど、このような車線の誤認の可能性は高まる。
【0044】
一方、第1実施例では、自車両100の目的地までに走行する予定の対象車線を特定できるので、別の車線を走行していることとなる可能性を低くできる。車線数が多くても、その中の1つ(対象車線)を特定できるので、車線数によらず、車線の誤認の可能性を低くできる。
【0045】
図6に示すように、実際は直線の道路なのに、地図が不正確なことからクランク状になっている道路R13にルートRTを設定すると、ルートRTが曲がってしまう。そこで、実際は直線の道路R12に対し、走行軌跡Pを設定し、走行軌跡Pに沿って自車両を走行させることで、直線の道路R12で自車両を真っ直ぐ走行させることができる。
【0046】
このように、自車両の周囲の道路構造データと道路上の車線境界データを統合して統合道路構造データを生成し、統合道路構造データを用いて、車両の走行軌跡を算出し、走行軌跡に沿って走行するように、自車両を制御することで、実際の走行状況に沿った適切な走行軌跡を算出でき、安定した走行支援を実行できる。
【0047】
以上のように、第1実施例によれば、地図上において、自車両の目的地までに走行する予定の車線を示すルートRTを設定し(S5)、自車両のセンサで検出した道路構造データを、ルートRTを用いて地図座標系に変換する(S13)。そして、地図座標系に変換した道路構造データと、地図上における車線境界データとを統合して統合道路構造データを生成し(S17)、統合道路構造データを用いて、自車両の走行を支援する(S19)。
自車両は、設定されたルートRTに沿って走行することが予定される。特に、自車両が、車両の走行制御の内、少なくとも操舵の制御を自律的に行う自動運転走行を行っている場合は、設定されたルートRTに沿って走行することが予定される。ルートRTに沿って走行する自車両のセンサで検出した道路構造データを、ルートRTを用いて地図座標系に変換する。これにより、自車両のセンサで検出した道路構造データと地図上における車線境界データとを正確に統合することができる。すなわち、HDマップと実際の道路構造との誤差を小さくすることができる。
【0048】
一般的にセンサで道路構造のデータを検出する場合、近距離のデータしか検出できないが、高精度に道路構造を検出できる。一方、地図のデータは、誤差を含むことがあるが、自車両から離れた位置の道路構造を地図から検出できる。これらを統合することにより、一長一短を補った統合データ(統合道路構造データ)を生成することができる。したがって、走行軌跡を算出した際に、自車両から近距離の位置では高精度に、また離れた位置までの走行計画を立てることができる。換言すれば、自車両周辺の道路構造データと自車両遠方の車線境界データの間を跨ぐ走行軌跡を算出することができる。
【0049】
ちなみに、自車両から離れた位置では、自車両から近距離の位置よりも走行するまでの時間に多少余裕があるため、近距離の位置の位置精度に比べ、求められる精度は低い。精度は低くても自車両から離れた位置までの走行計画を立てることで、離れた位置までを見据えた走行計画を立てることができ、自車両の挙動の急変など、乗員に与える違和感を抑制することができる。
【0050】
また、センサ(5)により自車両の周囲の車線境界情報を含む道路構造データを取得し(S11)、道路構造データより、車線内の走行位置を特定し、走行位置とルートRTを用いて、道路構造データ(車線境界情報を含む)を地図座標系に変換する(S13)。よって、また、統合道路構造データにおける車線境界情報が正確となり、車線境界線の連続性を補償することができる。
【0051】
また、統合道路構造データを用いて、自車両の走行軌跡を算出し、走行軌跡に沿って走行するように、自車両を制御する(S19)。これにより、上記のように、自車両から近距離の位置では高精度に、また離れた位置までの走行計画を立て、走行計画に沿って自車両を走行させることができる。
【0052】
また、道路構造データに対応する位置の車線境界データを道路構造データに置き換えて統合道路構造データを生成する(S17)ことで、地図の正確性を高めることができる。また、地図における車線境界線の連続性を補償することができる。
【0053】
(第1実施例における実施態様)
ここで、第1実施例における実施態様について説明する。
【0054】
(実施態様A1)
実施態様A1としては、自車両の前後方向より左右方向を優先して統合道路構造データを生成する。例えば、自車両の左右方向だけで道路構造データと車線境界データを統合し統合道路構造データを生成する。例えば、前後方向の統合道路構造データは、所定の条件を満たした場合にのみ生成する。例えば、左右方向の統合道路構造データを生成する条件を、前後方向の統合道路構造データを生成する条件より緩くする。
【0055】
第1実施例は、走行する予定の対象車線を特定できることにより効果が得られるので、自車両の左右方向の道路構造データに車線境界情報(車線境界線などの座標データ)を含ませている。
【0056】
一方、自車両の前後方向の道路構造データには停止線のデータが含まれる。停止線は、車線境界線などに比べ、走行中において検出できる可能性が低い。つまり、停止線は、自車両が10m程度より近づかなければ検出できないことがある。
【0057】
停止線などに比べ、車線境界線などは、走行中において検出できる可能性が高い。つまり、車線境界線などは、車線を走行中、常に自車両の左右方向に存在する。よって、自車両の左右方向の道路構造データを用いた統合道路構造データの生成を優先することで、統合道路構造データや地図の正確性をより高めることができる。また、自車両の左右方向を優先することで、車線境界線の連続性を補償することができる。
【0058】
また、優先的に左右方向の統合道路構造データを地図において生成することで、結果的に、自車両の前後方向についても地図の正確性を高めることができる。具体的には、自車両がルートRTに沿って走行している途中で、左右何れか方向に旋回することにより自車両のヨー角(旋回角)が約90度変化する。これにより、旋回前の自車両の左右方向及び前後方向は、旋回後の自車両の前後方向及び左右方向へ変化する。この為、旋回の前後を通じて左右方向の統合道路構造データを地図において作成することにより、左右方向のみならず前後方向についても、地図の正確性を高めることができる。
【0059】
図7に示すように、地図において道路R11の位置は、道路R11を走行する車両の左側にずれているとする。しかし、地図において左右方向の統合道路構造データを生成することで、道路R11が、正確な位置の道路R111に更新される。これにより、道路R111に交差する道路R12が交差点に接続する位置が正しくなる。すなわち、道路R12を走行する車両の前後方向において地図の正確性を高めることができる。
【0060】
(実施態様A2)
実施態様A2としては、自車両の左右方向の道路構造データを取得したか否かを判定し、自車両の左右方向の道路構造データを取得した場合に、地図座標系に変換した道路構造データと、地図上における車線境界データとを統合する。つまり、自車両の左右方向の道路構造データを取得してない場合は、統合道路構造データを生成しない。これにより、統合道路構造データの生成に要する処理負荷を軽減できる。
【0061】
(実施態様A3)
実施態様A3としては、ルートRT上に自車両の前後方向の統合道路構造データを生成する位置を設定し、自車両が、設定した位置に到達した場合に、前後方向の統合道路構造データを生成する。例えば、自車両が停止線の手前、10m前に到達したら、統合道路構造データを生成する。また、停止の3秒前などで到達としてもよく、その他の到達判定方法で到達を判定してもよい。
例えば、ルートRTに予め停止線などの位置を設定する。そして、地図を読み込み、予め設定した停止線などの位置に自車両が到達した場合に、車両の前後方向の統合道路構造データを生成する。
【0062】
図8に示すように、例えば、自車両100が停止線STの手前で停車したときに、停止線STについて自車両100の前後方向の道路構造データを取得し、自車両100の前後方向の統合道路構造データを生成する。これにより、走行中、常に停止線STを検出しなくてよく、必要最小限の処理により、地図における停止線STの位置などを正しく修正することができる。なお、前後方向について統合道路構造データを生成する位置は、停止線以外にも、右左折の手前の位置(横断歩道などの位置)としてもよい。
【0063】
(実施態様A4)
実施態様A4としては、自車両の車速が所定値以上の場合に、自車両の左右方向の統合道路構造データを生成し、自車両の車速が所定値未満の場合に、自車両の左右方向と前後方向の統合道路構造データを生成する。なお、車速が所定値以上の場合に、左右方向の統合道路構造データを生成し、車速が所定値未満の場合には、統合道路構造データの生成について特に定めなくてもよい。
【0064】
自車両の左右方向にある車線境界線などは、自車両との距離が車両の進行方向の位置によって異なることは少ない。つまり、自車両が走行しても車線変更しない限り、車線境界線などとの距離はほぼ同じである。よって、車速が比較的速くても車線境界線などは検出できる。
【0065】
一方、前後方向にある停止線などは、自車両との距離が車両の進行方向の位置によって異なることが多い。つまり、自車両が走行すると車両と停止線などの間の距離が大きく変化するので、車速が速いときは停止線などは検出しにくい。
【0066】
よって、上記のように、車速が所定値以上の場合に左右方向の統合道路構造データを生成し、所定値未満の場合に左右方向と前後方向の統合道路構造データを生成するのが好ましい。これにより、統合道路構造データの正確性をより高めることができる。
【0067】
(実施態様A5)
実施態様A5では、ルート設定部3が、目的地までの車線変更の回数が最少となるようにルートRTを設定する。例えば、走行軌跡モデル(オドメトリ)により自車両位置を推定する場合、自車両が旋回している場合よりも自車両が直進している場合の方が自車両位置が正確となる。よって、車線の変更回数が少ないと、自車両が直進する時間が増え、自車両位置が正確となる。例えば、自車両位置が不正確だと、統合道路構造データの正確性が低下する。そこで、変更回数を最少とすることで、自車両位置が正確になり、統合道路構造データの正確性を高めることができる。
【0068】
(実施態様A6)
実施態様A6では、ルート設定部3が、目的地まで走行する予定の道路に、複数の車線の道路が含まれる場合は、高速側の車線より低速側の車線を選択してルートRTを設定する。例えば、GPSにより自車両位置を推定する場合、GPS信号は、一定の間隔で送信されるので、車速が高速となる高速側の車線では、GPS信号を受信する受信地点の間隔が長くなる。つまり、正しい自車両位置が得られる地点が少なくなり、統合道路構造データの正確性を高めることが難しい。一方、車速が低速となる低速側の車線では、GPS信号を受信する受信地点の間隔が短くなる。つまり、正しい自車両位置が得られる地点が多くなり、統合道路構造データの正確性を高めることができる。すなわち、低速側の車線を優先してルートRTを設定することで、結果として、統合道路構造データの正確性を高めることができる。
【0069】
また、実施態様A4で述べたように、低速時では、自車両の前後方向と左右方向のどちらの統合道路構造データも生成できるので、低速側の車線を優先することで、統合道路構造データの正確性をより高めることができる
【0070】
(ステップS15について)
ここで、ステップS15について説明する。以下の説明において、ステップS7に戻るか、ステップS17に進むかを判定するための複数の判定基準を示す。いずれか1つを実行してもよいし、複数の判定基準を組み合わせてもよい。
【0071】
(判定基準B1)
ステップS15では、地図に記憶される交差点を自車両が走行している場合は、ステップS7に戻り、交差点を自車両が走行していない場合は、ステップS17に進む。よって、交差点を自車両が走行しているときは、統合道路構造データを生成しない。
【0072】
交差点では、正確な統合道路構造データを得るのに適した構造物(車線境界線など)がないことが多いので、統合道路構造データを生成すると、統合道路構造データの正確性が低下する可能性がある。よって、交差点では統合道路構造データを生成しないことで、統合道路構造データにおける正確性の低下を防止できる。交差点を走行しているか否かは、地図と地図に設定したルートRTから判定してもよいし、道路構造データから判定してもよい。また、交差点では統合道路構造データを生成しないことで、統合道路構造データの生成に要する処理負荷とシステムのリソースを低減できる。
【0073】
(判定基準B2)
ステップS15では、地図に記憶される車線を自車両が走行していない場合は、ステップS7に戻り、地図に記憶される車線を自車両が走行している場合は、ステップS17に進む。よって、地図に記憶される車線を自車両が走行していないときは、統合道路構造データを生成しない。
【0074】
車線以外で車両が走行可能な場所として、空き地などがあるが、空き地などでは、交差点と同様に、正確な統合道路構造データを得るのに適した構造物が少ないので、統合道路構造データを生成しない。よって、統合道路構造データにおける正確性の低下を防止できる。空き地などを走行しているか否かは、地図と地図に設定したルートRTから判定してもよいし、道路構造データから判定してもよい。また、統合道路構造データを生成しないことで、統合道路構造データの生成に要する処理負荷とシステムのリソースを低減できる。
【0075】
(判定基準B3)
ステップS15では、自車両が車線を変更している場合は、ステップS7に戻り、車線を変更していない場合は、ステップS17に進む。よって、車線を変更しているときは、統合道路構造データを生成しない。
【0076】
例えば、地図に設定したルートRTに車線変更の位置を記憶させ、車線変更の位置では、統合道路構造データを生成しない。なお、実際には、車線変更の位置では車線変更できず、車線変更のタイミングが遅れることがあるが、遅れたタイミングで行う車線変更の際にも、統合道路構造データを生成しない。または、自動運転中の車線変更の際にも、統合道路構造データを生成しない。
【0077】
実施態様A5で述べたように、車線を変更し自車両が旋回している場合よりも、車線を変更せず自車両が直進している場合の方が自車両位置は正確となる。よって、車線を変更している場合は、統合道路構造データを生成しないことで、統合道路構造データにおける正確性の低下を防止できる。車線を変更しているか否かは、地図と地図に設定したルートRTから判定してもよいし、道路構造データから判定してもよい。また、統合道路構造データを生成しないことで、統合道路構造データの生成に要する処理負荷とシステムのリソースを低減できる。
【0078】
(判定基準B4)
ステップS15では、自車両が自動運転中であり、自車両の運転者がオーバーライドを行っている場合は、ステップS7に戻り、そうでない場合は、ステップS17に進む。よって、自動運転中の自車両の運転者がオーバーライドを行っている場合は、統合道路構造データを生成しない。
【0079】
オーバーライドとは、自動運転中に運転者がアクセル、ブレーキ又はステアリングの操作を行うことである。自動運転中のオーバーライドは、自車両位置に誤差が生じる要因となることがある。よって、オーバーライド中は統合道路構造データを生成しないことで、統合道路構造データにおける正確性の低下を防止できる。自動運転中のオーバーライドの有無は、自動運転の制御で使用する様々なフラグなどから判定できる。また、統合道路構造データを生成しないことで、統合道路構造データの生成に要する処理負荷とシステムのリソースを低減できる。
【0080】
(第2実施例)
次に、第2実施例について説明する。ここでは、第1実施例との違いを主に説明し、同一又は類似の内容については重複となるので説明を省略する。
【0081】
図9に示すように、第2実施例の走行支援装置は、第1実施例の走行支援装置に対し、自車両位置評価部8を加えたものである。また、自車両位置推定部2は、走行軌跡モデルを用いて自車両位置(第2自車両位置)を推定でき、また、GPSにより自車両位置(第1自車両位置)を推定できるようになっている。
【0082】
自車両位置評価部8は、自車両の旋回状態(詳細は後述する)が所定の条件を満たすか否かを判定する。旋回状態が条件を満たす場合、走行軌跡モデルを用いて推定した自車両位置(第2自車両位置)の方が、GPSにより推定した自車両位置(第1自車両位置)より精度が高いと判定する。一方、旋回状態が条件を満たさない場合、GPSにより推定した第1自車両位置の方が、走行軌跡モデルを用いて推定した第2自車両位置より精度が高いと判定する。
【0083】
図10は、図2のステップS1に代えて第2実施例で行う処理を示すフローチャートであり、この処理が終わると、図2のステップS3以降の処理が実行される。
【0084】
(ステップS21、S23)まず、自車両位置推定部2は、GPS衛星からGPS信号を受信し、GPS信号による自車両の位置を重視して、自車両位置を推定(算出)する。例えば、GPS信号による自車両の位置を自車両位置とする。以下、この自車両位置を第1自車両位置P1という。
【0085】
(ステップS25)また、自車両位置推定部2は、走行軌跡モデルを用いて自車両の位置を求め、この位置を重視して、自車両位置を推定する。例えば、走行軌跡モデルを用いて求めた自車両の位置を自車両位置とする。以下、この自車両位置を第2自車両位置P2という。
【0086】
なお、自車両位置推定部2は、第1実施例と同様に、時間経過に伴い、第1自車両位置P1と第2自車両位置P2の推定を繰り返し、最新の自車両位置で古い自車両位置を更新する。
【0087】
(ステップS27)次に、自車両位置評価部8が、自車両の旋回状態が所定の条件を満たすか否かを判定する。ステップS27の判定については後述する。
【0088】
(ステップS29)旋回状態が条件を満たす場合、自車両位置評価部8は、走行軌跡モデルを用いて推定した第2自車両位置P2の方が、GPSにより推定した第1自車両位置P1より精度が高いと判定し、第2自車両位置P2を選択し、処理を終える。
【0089】
(ステップS31)一方、旋回状態が条件を満たさない場合、自車両位置評価部8は、GPSにより推定した第1自車両位置P1の方が、走行軌跡モデルを用いて推定した第2自車両位置P2より精度が高いと判定し、第1自車両位置P1を選択し、処理を終える。
【0090】
この処理を終えると、図2のステップS3に進むが、自車両位置としては、ステップS29又はステップS31で選択した自車両位置(第1自車両位置P1又は第2自車両位置P2)を使用する。
つまり、ステップS13では、選択した自車両位置を基準に、道路構造データを地図座標系に変換し、ステップS17では、選択した自車両位置を基準に変換した道路構造データにより統合道路構造データを生成する。
【0091】
(第1自車両位置P1と第2自車両位置P2の説明)
ここで、GPSにより推定した第1自車両位置P1と走行軌跡モデルを用いて推定した第2自車両位置P2について説明する。
【0092】
図11に示すように、第1自車両位置P1は、自車両の走行に従い、変化していく。第2自車両位置P2も同様に、自車両の走行に従い、変化していく。第1自車両位置P1と第2自車両位置P2は誤差を含むので、図11に示すように必ずしも一致しない。
【0093】
例えば、GPSによる測位の状態が良く、第1自車両位置P1の精度が高い場合であっても、路面の摩擦係数が低く、自車両がスリップすることで、第2自車両位置P2の精度は低くなり、第1自車両位置P1と第2自車両位置P2は相違する。
【0094】
図12に示すように、自車両100がスリップすると、自車両の重心点101付近を中心として自車両100が旋回する。よって、スリップの程度に応じて、自車両100が旋回する状態(旋回状態という)が変化する。
【0095】
図10のステップS27では、GPSによる測位の状態が所定の状態より良い場合は、自車両の旋回状態に応じて、ステップS29又はS31に進む。測位の状態は、例えば、GPS信号の受信レベルに基づき判定することができる。
【0096】
(GPSによる測位の状態が所定の状態より良い場合)
ステップS27では、例えば、旋回状態として自車両の旋回量Sを用いる。
図13に示すように、旋回量Sが所定の旋回量閾値Sth以下(S≦Sth)の場合は、旋回状態が条件を満たすこととする。よって、この場合、走行軌跡モデルにより推定した第2自車両位置P2が選択される。逆に、旋回量Sが旋回量閾値Sthより大きい(S>Sth)場合は、旋回状態が条件を満たさないこととする。よって、この場合、GPSにより推定した第1自車両位置P1が選択される。
【0097】
また、ステップS27では、例えば、旋回状態として自車両が走行する路面の摩擦係数μを用いることもできる。図14に示すように、摩擦係数μが所定の摩擦係数閾値μthより大きい(μ>μth)場合は、旋回状態が条件を満たすこととする。よって、この場合、走行軌跡モデルにより推定した第2自車両位置P2が選択される。逆に、摩擦係数μが摩擦係数閾値μth以下(μ≦μth)の場合は、旋回状態が条件を満たさないこととする。よって、この場合、GPSにより推定した第1自車両位置P1が選択される。
【0098】
例えば、摩擦係数μは、自車両のアンチロックブレーキシステムの動作の有無を示すフラグ、自車両の滑りを制御するシステムの動作の有無を示すフラグ、自車両のトラクションを制御するシステムの動作の有無を示すフラグ、自車両のワイパーが動作しているか否か、自車両のカメラによる路面の認識結果、自車両でない他車から得たプローブ情報のいずれか1つ以上を用いて、推定することが可能である。
【0099】
(GPSによる測位の状態が所定の状態と同じ又は悪い場合)
一方、GPSによる測位の状態が所定の状態と同じ又は悪い場合は、ステップS29に進む。よって、この場合、走行軌跡モデルにより推定した第2自車両位置P2が選択される。
【0100】
なお、GPSによる測位の状態が所定の状態と同じ又は悪い場合であっても、図15に示すように、GPSによる測位の状態が所定の状態より良い時刻からの経過時間Tが所定の経過時間閾値Tth以下(T≦Tth)、且つ、旋回量Sが旋回量閾値Sthより大きい(S>Sth)場合は、例外的に、ステップS31に進む。よって、この場合、GPSにより推定した第1自車両位置P1が選択される。
【0101】
すなわち、経過時間Tが経過時間閾値Tth以下(T≦Tth)の場合は、第1自車両位置P1の精度は極端に低くはない。一方、旋回量Sが旋回量閾値Sthより大きい(S>Sth)場合は、第2自車両位置P2の精度は比較的低いので、精度が比較的高い第1自車両位置P1を選択する。
【0102】
また、GPSによる測位の状態が所定の状態と同じ又は悪い場合であっても、図16に示すように、GPSによる測位の状態が所定の状態より良い時刻からの経過時間Tが所定の経過時間閾値Tth以下(T≦Tth)、且つ、摩擦係数μが摩擦係数μth以下(μ≦μth)の場合は、例外的に、ステップS31に進む。よって、この場合、GPSにより推定した第1自車両位置P1が選択される。
【0103】
すなわち、経過時間Tが経過時間閾値Tth以下の場合は、第1自車両位置P1の精度は極端に低くはない。一方、摩擦係数μが摩擦係数μth以下の場合は、第2自車両位置P2の精度は比較的低いので、精度が比較的高い第1自車両位置P1を選択する。よって、精度が比較的高いGPSにより推定した第1自車両位置P1を選択でき、統合道路構造データの正確性を高めることができる。
【0104】
図17Aに示すように、第2実施例では、精度が高い第1自車両位置P1を用いて、車線境界線D11、D12を検出した場合、車線境界線D11、D12の位置の精度は高くなる。
【0105】
一方、図17Bに示すように、精度が低い第2自車両位置P2を用いて、車線境界線D21、D22を検出した場合、車線境界線D21、D22の位置の精度も低くなってしまう。
【0106】
第2実施例では、精度が低い第2自車両位置P2を用いず、精度が高い第1自車両位置P1を用いるので、図17Cに示すように、車線境界線D11、D12の位置は、実際の車線境界線D31、D32に非常に近くなる。よって、ステップS17で統合道路構造データを生成することで、精度が低い第2自車両位置P2を用いる場合よりも、統合道路構造データの正確性を高めることができる。
【0107】
逆に、第2自車両位置P2の方が精度が高い場合は、第2自車両位置P2を用いるので、車線境界線D21、D22の位置が、実際の車線境界線D1、D2に非常に近くなる。よって、精度が低い第1自車両位置P1を用いる場合よりも、統合道路構造データの正確性を高めることができる。
【0108】
また、第1自車両位置P1または第2自車両位置P2を選択した時には、自車両の位置に対応づけて、第1自車両位置P1または第2自車両位置P2のどちらを選択したかを記憶する。そして、その位置で再び自車両位置を検出する場合は、記憶した方の自車両位置を検出する。よって、自車両の旋回状態の判定が不要であり、統合道路構造データの生成に要する処理負荷とシステムのリソースを低減できる。
【0109】
(ステップS15について)
ここで、第2実施例におけるステップS15について説明する。以下の説明において、ステップS7に戻るか、ステップS17に進むかの判断について複数の判定基準を示す。いずれか1つを実行してもよいし、複数の判定基準を組み合わせてもよい
【0110】
(判定基準C1)
ステップS15では、自車両位置の精度に基づいて、ステップS17において統合道路構造データを生成するタイミングか否かを決定する。生成するタイミングでない場合は、ステップS7に戻り、生成するタイミングである場合は、ステップS17に進む。
【0111】
例えば、自車両位置の精度が所定の精度より高い場合は統合道路構造データを生成し、一方自車両位置の精度が所定の精度以下場合は生成しないこととする。よって、精度の低い自車両位置を用いることに起因して統合道路構造データの正確性が低下するのを防止できる。
【0112】
(判定基準C2)
ステップS15では、道路構造データ取得部5が取得した道路構造データに含まれる車線境界線情報の認識精度に基づいて、統合道路構造データを生成するタイミングか否かを決定する。生成するタイミングでない場合は、ステップS7に戻り、生成するタイミングである場合は、ステップS17に進む。
【0113】
例えば、カメラなどを用いて車線境界線を検出する場合、晴天の昼間で視界が良く、認識精度が所定の精度より高くなる場合が多く、この場合は統合道路構造データを生成する。一方、雨天や夜間で視界が悪く、認識精度が所定の精度以下の場合が多く、この場合は統合道路構造データを生成しないこととする。よって、認識精度の低い車線境界線を用いることに起因して統合道路構造データの正確性が低下するのを防止できる。
【0114】
(判定基準C3)
また、自車両位置の精度が所定の精度以下の場合、車両が走行する道路の車線数に基づいて、統合道路構造データを生成するか否かを決定することもできる。例えば、地図に車線数を記憶し、地図から車線数を取得する。
【0115】
図18Aに示すように、自車両100が、車線数が2以上の道路を走行している場合、自車両が車線境界線を認識すると、図18Bに示すように、自車両100に最も近い両側の車線境界線D41、D42だけ認識される場合がある。よって、車線境界線D41、D42が、図18Aにおける実際の車線境界線D41、D42、D43のどれかを特定できない。すなわち、車線境界線だけでは、自車両がどの車線を走行しているかは正確に分からず、車線を誤認する可能性があるので、統合道路構造データを生成しない。すなわち生成するタイミングでないとして、ステップS7に戻る。例えば、車線を誤認すると、統合道路構造データの正確性が低下する可能性がある。
【0116】
一方、車線数が1の場合は、自車両はその唯一の車線を走行していることになるので、統合道路構造データを生成する。すなわち生成するタイミングであるとして、ステップS17に進む。よって、車線の誤認に起因して統合道路構造データの正確性が低下するのを防止できる。
【0117】
(判定基準C4、C5)
また、自車両位置の精度が所定の精度以下の場合、車線と車線境界線の属性(属性データ)に基づいて、統合道路構造データを生成するか否かを決定することもできる。
【0118】
(判定基準C4)
例えば、図19に示すように、自車両100が走行する道路R15が、互いに対向する2車線(L41、L42)の道路であるとする。自車両100は、車線L41を走行し、車線L41に対向する車線L42を他車両120が走行している。なお、車線L41、L42における車両の進行方向(車線の属性)は地図から取得することができる。
自車両100は、実質的に1車線(L41)の道路を走行していることになるので、車線境界線の属性(色や線種)によらず、自車両100で検出した道路(車線L41)についての道路構造データと、地図における、2車線のうちの自車両の進行方向と同じ方向の車線(車線L41)についての車線境界データを統合して統合道路構造データを生成する。すなわち、このような条件が満たされれば、ステップS17へ進み、満たされなければ、ステップS7に戻る。なお、自車両の進行方向は、自車両位置の時間経過に応じた推移から求めることができる。
【0119】
よって、自車両位置の精度が所定の精度以下の場合であっても、統合道路構造データの正確性を高めることができる。
【0120】
(判定基準C5)
また、図20に示すように、自車両100が走行する道路R16が、同方向の複数の車線(L51、L52)を有する道路であるとする。自車両100は、車線L51を走行し、他車両120は、車線L52を走行している。なお、車線L51、L52における車両の進行方向(車線の属性)は地図から取得することができる。自車両100が同方向の複数の車線(L51、L52)を有する道路を走行していることは、地図と自車両位置から判定することができる。自車両の進行方向は、自車両位置の時間経過に応じた推移から求めることができる。
【0121】
図20の場合、車線境界線の属性と自車両の進行方向に基づいて、統合道路構造データを生成する。例えば、車線L51、L52の境界にある車線境界線D51の色(属性)は、車線L51の左の車線境界線D52の色(属性)とは異なり、車線L52の右の車線境界線D53の色(属性)とも異なることがある。この場合、自車両の進行方向と車線境界線の色(属性データ)に基づいて、自車両100で検出した道路(車線L51)についての道路構造データと、地図における車線L51についての車線境界データを統合して統合道路構造データを生成する。なぜなら、左右の車線境界線の色が異なるので、車線L51を車線L52であると誤認する可能性が低いからである。すなわち、このような条件が満たされれば、ステップS17へ進み、満たされなければ、ステップS7に戻る。
【0122】
よって、自車両位置の精度が所定の精度以下の場合であっても、統合道路構造データの正確性を高めることができる。
【0123】
以上のように、第2実施例によれば、走行軌跡モデルを用いて車両の位置を推定し、GPSにより車両の位置を推定し、2つの車両の位置のうちの精度が高い方の車両の位置を選択し、選択した車両の位置を基準に、道路構造データを地図座標系に変換し、統合道路構造データを生成する。よって、精度が高い方の車両の位置を選択でき、統合道路構造データの正確性を高めることができる。
【0124】
自車両位置に誤差がある場合、先行車両の位置を正確に検出することができない、つまり、一車線分ずれて地図と統合してしまうことが起きてしまい、実際の道路に沿った正確な制御を実行することができない。そこで、第2実施例では、上記のように、精度が高い方の車両の位置を選択することで、統合道路構造データの正確性を高めることができるので、実際の道路に沿った正確な制御を実行できるようになる。
【0125】
また、GPSによる測位の状態が所定の状態より良い場合は、第1自車両位置P1と第2自車両位置P2のどちらが正確かは、状況によって変わるので、車両の旋回状態に応じて、一方の車両の位置を選択することで、精度が高い方の車両の位置を選択でき、統合道路構造データの正確性を高めることができる。
【0126】
また、上記のように旋回状態として車両の旋回量を用いることで、旋回量から精度の高い位置を選択でき、統合道路構造データの正確性を高めることができる。
【0127】
また、上記のように旋回量が所定の旋回量閾値以下(R≦Sth)の場合は、走行軌跡モデルにより推定した第2自車両位置を選択し、旋回量が所定の旋回量閾値より大きい(S>Sth)場合は、GPSにより推定した第1自車両位置を選択することで、旋回量から精度の高い位置を選択でき、統合道路構造データの正確性を高めることができる。
【0128】
また、上記のように旋回状態として車両が走行する路面の摩擦係数を用いることで、摩擦係数から精度の高い位置を選択でき、統合道路構造データの正確性を高めることができる。
【0129】
また、上記のように摩擦係数が所定の摩擦係数閾値より大きい(μ>μth)場合は、走行軌跡モデルにより推定した第2自車両位置を選択し、摩擦係数が所定の摩擦係数閾値以下(μ≦μth)の場合は、GPSにより推定した第1自車両位置を選択することで、摩擦係数から精度の高い位置を選択でき、統合道路構造データの正確性を高めることができる。
【0130】
また、上記のように前記車両のアンチロックブレーキシステムの動作の有無を示すフラグ、車両の滑りを制御するシステムの動作の有無を示すフラグ、車両のトラクションを制御するシステムの動作の有無を示すフラグ、車両のワイパーが動作しているか否か、車両のカメラによる路面の認識結果、車両でない他車から得たプローブ情報のいずれか1つ以上を用いて、摩擦係数を推定することで、これらの車両情報から推定した摩擦係数から精度の高い位置を選択でき、統合道路構造データの正確性を高めることができる。
【0131】
また、上記のように、GPSによる測位の状態が所定の状態と同じ又は悪く、且つ、GPSによる測位の状態が所定の状態より良い時刻からの経過時間が所定の経過時間閾値以下(T≦Tth)、且つ、車両の旋回量が所定の旋回量閾値より大きい(S>Sth)場合は、GPSにより推定した第1自車両位置を選択する。よって、精度が高いGPSにより推定した第1自車両位置を選択でき、統合道路構造データの正確性を高めることができる。
【0132】
また、上記のように、GPSによる測位の状態が所定の状態と同じ又は悪く、且つ、GPSによる測位の状態が所定の状態より良い時刻からの経過時間が所定の経過時間閾値以下(T≦Tth)、且つ、車両が走行する路面の摩擦係数が所定の摩擦係数閾値以下(μ≦μth)の場合は、GPSにより推定した第1自車両位置を選択する。よって、精度が高いGPSにより推定した第1自車両位置を選択でき、統合道路構造データの正確性を高めることができる。
【0133】
なお、本実施の形態では、自車両に走行支援装置を搭載した。しかし、自車両に通信可能なサーバ装置又は自車両でない他車両に自車両に走行支援装置を搭載し、必要な情報と指示はサーバ装置又は他車両と自車両の間の通信により送受信することで、同様の自車両に走行支援方法を遠隔的に行ってもよい。サーバ装置と自車両の間の通信は無線通信又は路車間通信により実行可能である。他車両と自車両の間の通信は所謂車車間通信により実行可能である。
【0134】
以上、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0135】
上述の各実施形態で示した各機能は、1又は複数の処理回路により実装され得る。処理回路は、電気回路を含む処理装置等のプログラムされた処理装置を含む。処理装置は、また、実施形態に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や従来型の回路部品のような装置を含む。
【符号の説明】
【0136】
1 地図データベース(メモリ)
2 自車両位置推定部
3 ルート設定部
4 対象車線特定部
5 道路構造データ取得部
6 統合道路構造データ生成部
7 走行支援部
8 自車両位置評価部
100 自車両(車両)
101 重心点
120 他車両
D11、D12、D21、D22、D31、D32、D41、D42、D43、D51、D52、D53 車線境界線
K1、K2、K3 交差点
L1~L4、L41、L42、L51、L52
P 走行軌跡
P1 第1自車両位置
P2 第2自車両位置
T 実際に走行した実ルート
RT 地図において設定するルート
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R11、R12、R13、R15、R16、R111 道路
S 旋回量
Sth 旋回量閾値
T 経過時間
Tth 経過時間閾値
μ 摩擦係数
μth 摩擦係数閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図18A
図18B
図19
図20