IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋製罐株式会社の特許一覧 ▶ 東洋製罐グループホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-粘稠物質用容器 図1
  • 特許-粘稠物質用容器 図2
  • 特許-粘稠物質用容器 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】粘稠物質用容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 23/04 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
B65D23/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018045968
(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2019156449
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】丹生 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】柏原 貴
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 知之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 潤
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特許第5673870(JP,B1)
【文献】特開2008-222291(JP,A)
【文献】特開2016-005966(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194626(WO,A1)
【文献】特開平07-137743(JP,A)
【文献】特開2011-251519(JP,A)
【文献】特開2015-229496(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056820(WO,A1)
【文献】特開2011-255901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00-1/48
B65D 23/00-25/56
B65D 65/00-65/46
B65D 83/00
B65D 83/08-83/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘稠物質が収容される容器において、
該容器の胴部内面が、前記粘稠物質に対して滑落性を示す滑剤が樹脂中に分散された滑剤含有樹脂層により形成されており、該容器の胴部平断面でみて、該滑剤含有樹脂層の厚みが周方向で不均一となっており、この厚みの不均一性により、該容器を倒立状態に保持したとき、該粘稠物質が相対的に速く排出される高滑落領域と、該粘稠物質が相対的に遅く排出される低滑落領域とが形成されていることを特徴とする容器。
【請求項2】
300ml以下の容量を有している請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記粘稠物質が、食品、医薬品、練り歯磨きである請求項1または2に記載の容器。
【請求項4】
中空成形容器である請求項1~3の何れかに記載の容器。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載の容器に、8Pa・s以上の粘度(25℃)を有している粘稠物質を収容する粘稠物質の収容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘稠物質が収容される容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液状内容物が収容される容器では、容器の材質を問わず、内容物に対する排出性が要求される。水のように粘性の低い液体を収容する場合では、このような排出性はほとんど問題とならないが、例えば、マヨネーズやケチャップのように粘度の高い粘稠な内容物では、プラスチック製容器であろうがガラス製容器であろうが、内容物が速やかに排出され、しかも、容器内に残存することなく、最後まで使い切ることができるようにすることが求められている。
【0003】
ところで、上記のような排出性に関しては、容器等の成形体の表面に油膜を形成するという手段が種々提案されている(例えば特許文献1,2)。このような油膜の形成により、粘稠な内容物に対する滑り性が高められ、その排出性が向上するというものである。
【0004】
しかしながら、容器に特に粘稠な内容物が収容されているときには、内容物の排出が困難になることがあった。即ち、内容物排出のために、容器を倒立状態に保持したときに、粘稠な内容物が取り出し口に到達する前に、容器内にとどまった状態となってしまうのである。このような状態では、内容物と容器の底部との間に空気層が存在し、この空気層の圧よりも大気圧の方が大きいため、内容物の排出が困難になる。
特に、このような問題は、内容物が排出される首部の口径が小さく、容量が300ml以下の小容量容器において多く発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2012/100099
【文献】WO2013/022467
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、倒立或いは倒立に近い状態に保持した場合においても、常に、粘稠な内容物の排出を速やかに行うことが可能な粘稠物質用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
粘稠物質が収容される容器において、
該容器の胴部内面が、前記粘稠物質に対して滑落性を示す滑剤が樹脂中に分散された滑剤含有樹脂層により形成されており、該容器の胴部平断面でみて、該滑剤含有樹脂層の厚みが周方向で不均一となっており、この厚みの不均一性により、該容器を倒立状態に保持したとき、該粘稠物質が相対的に速く排出される高滑落領域と、該粘稠物質が相対的に遅く排出される低滑落領域とが形成されていることを特徴とする容器が提供される。
本発明によれば、また、上記の容器に、8Pa・s以上の粘度(25℃)を有している粘稠物質を収容する粘稠物質の収容方法が提供される。
【0008】
本発明の容器においては、以下の態様が好適に採用される。
(1)300ml以下の容量を有していること。
(2)前記粘稠物質が、食品、医薬品、練り歯磨きであること。
(3)中空成形容器であること。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粘稠物質が収容される容器は、粘稠物質に対する滑落性を向上させる潤滑層が内面に形成されているものであり、大きく分けて、この潤滑層が液体により形成されている液層タイプと、この潤滑層が滑剤が配合された樹脂層から形成されている滑剤内添タイプとがある。
本発明においては、何れのタイプの容器においても、周方向でみて、粘稠物質に対する滑落性が不均一となっており、この不均一性により、この容器を倒立状態に保持したとき、粘稠物質が速く排出される高滑落領域と、粘稠物質が遅く排出される低滑落領域とが形成されている。即ち、容器を倒立状態に保持して内容物である粘稠物質を排出したとき、この粘稠物質が速やかに排出される部分と排出に時間がかかる部分とが存在する。このため、このような速度差によって容器の底部に粘稠物質によって閉じ込められた空気が容易に排出されることとなり、この結果として、例えば、粘稠物質が粘度(25℃)が8Pa・s以上の粘稠なペースト状物であったとしても、容器内にとどまることなく、その排出を常に容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の粘稠物質用容器における側面形状の一例を示す図。
図2図1の容器のA-A平断面の例を示す図。
図3】本発明の容器の機能を、従来公知の容器との比較により示す図であり、(a)は、本発明の容器を倒立状態の保持したときの内容物の排出状態を示す図であり、(b)従来公知の容器を倒立状態の保持したときの内容物の排出状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
先に述べたように、本発明の粘稠物質用の容器は、胴部内面に粘稠な内容物が速く排出される高滑落領域と粘稠な内容物が遅く排出される低滑落領域とが形成されている。
【0012】
図1を参照して、本発明の容器は、これに限定されるものではないが、中空筒状の胴部1を備えており、胴部1の一方側端部には、内容物の排出口となる首部3が形成されており、他方側端部は、底部5によって閉じられている。
また、容器の形態によっても異なるが、首部3の外面には、キャップにて封止するための螺子7が形成されている。
【0013】
本発明の容器は、胴部1の内面に、粘稠物質に対する滑落性を向上させる潤滑層を有しているものであるが、この潤滑層が示す滑落性を周方向で不均一とすることにより、内容物である粘稠物質に対する滑落速度が速い高滑落領域と滑落速度の低い低滑落領域を形成したものである。
【0014】
本発明において、容器の内面に形成される潤滑層には、液層タイプと滑剤内添タイプとがあるが、このタイプに応じて、図2に示す手段を採用することにより、高滑落領域と低滑落領域とを形成することができる。
【0015】
図2は、図1の容器の胴部1のA-A断面を示すものであるが、図2(a)は液層タイプの例であり、胴部1の内面に、粘稠物質に対しての滑落性を向上させるための潤滑液による液層21が形成されている。
かかる図2(a)では、液層21の厚みが周方向で不均一となっており、液層21が厚い厚みTを有する部分と、薄い厚みtを有する部分とが形成されている。即ち、T>tであり、厚い厚みTを有する部分が容器の軸方向に延びており、この部分は、高滑落領域となる。一方、薄い厚みtを有する部分も軸方向に延びており、この部分が、低滑落領域となる。
【0016】
また、図2(b),(c)は、滑剤内添タイプの例であり、胴部1の内面が滑剤含有樹脂層23により形成された構造を有しており、この滑剤が、粘稠な内容物と接触する内面にブリーディングすることにより、粘稠な内容物に対する滑落性が付与される。即ち、容器内面を形成している滑剤含有樹脂層23中の滑剤が、粘稠な内容物に対する滑落性を向上する潤滑剤として機能する。
【0017】
このような滑剤内添タイプにおいて、図2(b)では、図2(a)の液層タイプと同様、滑剤含有樹脂層23には厚み分布が形成されており、厚い厚みTを有する領域と、薄い厚みtを有する領域とが形成されている。即ち、T>tであり、厚い厚みTを有する領域及び薄い厚みtを有する領域は、それぞれ容器の軸方向に帯状に延びており、厚い厚みTを有する領域は、樹脂層23の表面にブリーディングする滑剤量が多く、従って、粘稠な内容物の滑落速度が速い高滑落領域となる。一方、薄い厚みtを有する領域は、樹脂層23の表面にブリーディングする滑剤量が少ないため、粘稠な内容物の滑落速度が遅い低滑落領域となる。
【0018】
また、図2(c)では、滑剤含有樹脂層23の厚みは均一であるが、この樹脂層23中に配合される滑剤の量について濃度分布が形成されており、例えば、領域23aでは、滑剤の配合量が多く、このような滑剤配合量が多い領域23aは、容器の軸方向に帯状に延びている。従って、この配合量の多い領域23aが、粘稠な内容物の滑落速度が速い高滑落領域となり、滑剤の配合量が少ない他の部分が、粘稠な内容物の滑落速度が遅い低滑落領域となる。
尚、かかる態様では、滑剤含有樹脂層23に滑剤の濃度分布が形成されていればよく、従って、上記の領域23aにのみ滑剤が配合され、他の領域には滑剤が配合されていなくともよい。
【0019】
従来公知の容器では、液層タイプや滑剤内添タイプの潤滑層が形成されているものであろうが潤滑層が形成されていないものであろうが、容器内面の滑り性というのは周方向において均一である。即ち、このような容器では、これを図3(b)に示されているように倒立状態に保持して粘稠な内容物10を排出すると、粘稠な内容物10が胴部1の内面に沿って均等に落下するため、首部3の開口部に到達する前に、容器内にとどまった状態に保持されてしまう。このような状態では、内容物10と底部5との間に空気層13が閉じ込められてしまい、空気層13の圧よりも大気圧の方が大きいため、内容物10が容器内にとどまったままの状態となり、その排出が困難となってしまう。
【0020】
しかるに、本発明においては、上述した図2(a)~(c)に示されているように、潤滑層(液層21或いは滑剤含有樹脂層23)による滑落性を周方向で不均一とすることにより、粘稠な内容物に対する滑落性の高い高滑落領域と滑落性の低い低滑落領域に形成されているため、これを倒立保持したとき、粘稠な内容物10は、高滑落領域側に集中して滑り落ちるため、粘稠な内容物10の落下が均等でない。従って、粘稠な内容物10と底部5との間の空気層13は、低滑落領域側(落下速度が遅い側)から容易に抜けることとなり、従って、容器内に粘稠な内容物10がとどまって排出困難となるという不都合が有効に回避されることとなる。
【0021】
尚、上述した本発明において、潤滑層(液層21或いは滑剤含有樹脂層23)の厚み差或いは滑剤配合量差により形成される高滑落領域と低滑落領域とは、粘稠な内容物10の排出速度差がある程度以上となる限りにおいて、2つの領域が離れて形成されていてもよいし、近接して形成されていてもよく、排出速度差を生じさせる手段に応じて、適宜の位置に形成されていればよい。
【0022】
また、本発明の粘稠物質用容器は、原理的には、滑落性の異なる内面が形成されているという条件を満足する限りにおいて、プラスチック、ガラス、金属等の任意の材料で形成されていてよいが、実際は、成形上の観点からプラスチック製であることが望ましい。
また、容器の形態も特に制限はされないが、好適には、中空成形により形成され、粘稠な内容物10を排出する開口(首部3の内径)が内容物10を収納する胴部断面に比べて小さいボトルやチューブなどの形態を有していることが最も好適である。即ち、内容物10を排出する開口が胴部断面より大きい又は同等な広口容器やカップなどでは、内容物10の詰まりという問題はほとんど生じないからである。
例えば、図1の例では、ブロー成形容器の形態が示されているが、チューブ容器であってもよい。
【0023】
本発明において、図2(a)に示されている液層21を形成する液体(潤滑液)は、容器内に収容される内容物10とは非混和性であり且つ不揮発性(例えば沸点が200℃以上)の液体の中から、内容物10の種類に応じて、内容物10に対して撥液性を示すものが使用される。例えば、食用油(動植物油)、脂肪酸トリグリセライド、フッ素系界面活性剤、流動パラフィン、シリコーンオイルなどが代表的であり、これらの中から、内容物10の種類に応じて液層21を形成する液体(潤滑液)を選択することができる。
【0024】
尚、上述した液層タイプの容器は、基本的には、容器内面が樹脂製のプラスチック容器に適用される。容器内面を熱可塑性樹脂、例えばオレフィン系樹脂やポリエステルなど(特にオレフィン系樹脂)により形成することにより、潤滑液による液層21を安定に保持することができるからである。
【0025】
さらに、上記のような厚み分布を有する液層21を形成する方法としては、スプレー式が代表的であり、例えば、容器成形後、潤滑液をスプレー噴霧して容器内面に液層21を形成する際、スプレーノズルの向きを、液層21の厚みを厚くする部分を指向するように固定してスプレー噴霧することにより容易に厚み分布を有する液層21を形成することができる。
この場合、液層21の厚み分布の程度などは、予めラボ試験を行い、目的とする内容物10の詰まりなどが生じないように、スプレー条件(噴霧圧や吐出量)を定めておけばよい。
また、以下に述べる滑剤内添タイプの容器において、滑剤含有樹脂層を形成する方法を利用して、厚み分布を有する液層21を形成することも可能である。
【0026】
また、図2(b)及び(c)に示される滑剤内添タイプの容器において、滑剤含有樹脂層23の形成に用いる滑剤としては、樹脂層23からのブリーディングにより粘稠な内容物10に対する滑落性向上効果を示すものが、内容物の種類に応じて選択されて使用される。このような滑剤の代表例としては、以下のものを例示することができる。
【0027】
(a)流動、天然または合成パラフィン、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス等の炭化水素系のもの。
(b)ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸系のもの。
(c)ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド等の脂肪族アミド系のもの。
(d)ブチルステアレート、硬化ヒマシ油、エチレングリコールモノステアレート等の脂肪酸エステル系のもの。
(e)セチルアルコール、ステアリルアルコール等のアルコール系のもの。
(f)ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の金属石ケン。
(g)ポリオルガノシロキサン。
(h)中鎖脂肪酸トリグリセライド、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリントリオレート、デカグリセリンオレート等のグリセリン脂肪酸エステル系のもの。
尚、上記の滑剤は、通常は固体であるが、これらの中には、液層21の形成に使用し得る液状物質、例えば流動パラフィンなども含まれている。このような液状の滑剤を使用したとき、これを多量に配合し、ブリーディング量を多くしたとき、液層21(即ち、連続した膜)を形成して液層タイプの容器となるが、その配合量を少なくし、滑剤分子が島状に分布させるときには、滑剤内添タイプの容器となる。
【0028】
上述した滑剤内添タイプの容器は、当然、容器内面が樹脂製のプラスチック容器に適用され、滑剤含有樹脂層23の形成に使用される樹脂としては、容器に成形可能な熱可塑性樹脂が使用され、特に包装容器の分野で広く使用されているオレフィン系樹脂やポリエステルなどが好適に使用される。
【0029】
さらに、上記のような滑剤含有樹脂層23の厚み分布や滑剤の濃度分布を形成する方法としては、これに限定されるものではないが、以下の方法が代表的である。
【0030】
即ち、図2(b)に示されているように、滑剤含有樹脂層23に厚み分布を形成する場合には、例えば押出成形により容器を成形する際、容器の内層を形成するサーキュラーダイの形状を、樹脂流路幅を不均等になるように設定すればよい。
また、この方法は、液層タイプの容器の製造にも適用できる。即ち、容器の内面に形成する樹脂に潤滑液を配合して上記のように押出成形を行なえば、ブリーディングにより形成される液層21に厚み分布を形成することができる。
【0031】
また、滑剤の濃度分布を形成する場合には、容器内面を形成する樹脂に滑剤を多く配合した組成物と、滑剤の配合量が少ない(或いは滑剤が配合されていない)樹脂組成物と用意し、所謂ストライプ押出により、滑剤含有樹脂層23に滑剤の濃度分布を形成することができる。
また、この方法も、液層タイプの容器の製造にも適用できる。即ち、容器の内面に形成する樹脂に潤滑液の配合量が多い組成物と、配合量が少ない(或いは配合されていない)組成物と用いてストライプ押出を行なえば、潤滑液の配合量が多い樹脂組成物により形成されている領域は、液層21の厚みが厚く、配合の少ない(或いは配合されていない)樹脂組成物により形成された領域は、液層21の厚みが薄い(或いは液層21が形成されていない)領域となる。
【0032】
尚、滑剤含有樹脂層23の厚み分布や濃度分布の程度、さらには滑剤含有樹脂層23の厚みなどは、予めラボ試験を行い、目的とする内容物10の詰まりなどが生じないように定めておけばよい。
【0033】
上述した本発明の容器においては、容器の胴部1の内面に高滑落領域と低滑落領域が形成されている限りにおいて、単層構造の容器であってもよいし、多層構造の容器であってもよいが、通常は、多層構造を有していることが好ましい。例えば、胴部1が、エチレンビニルアルコール共重合体等のガスバリア性樹脂の中間層を備えた多層構造とすることが好適である。単層構造の場合、容器内面の液層21を形成している潤滑液或いは容器内面の滑剤含有樹脂層23中の滑剤が胴部壁を通過して容器の外面にブリーディングしてしまうおそれがあるが、ガスバリア性樹脂の中間層を設けた場合には、このような容器外面への潤滑液或いは滑剤の移行を遮断することができるからである。
【0034】
本発明において、容器に収容する粘稠な内容物10としては、粘性の高い粘稠なペースト状物、具体的には、粘度(25℃)が8Pa・s以上の粘稠なペースト状内容物の収容に使用される。このようなペースト状内容物には、ゲルのような形態を有するものが多く、各種食品類に限らず、医薬品、練り歯磨きなどがある。
【0035】
また、本発明の粘稠物質用容器において、その内容量は300ml以下、特に150ml以下であることが好適である。即ち、このような小容量のものは、首部3の内径が小さく、粘稠な内容物10の詰まりを生じ易いため、このような詰りを解消できる本発明は、このような小容量容器に特に有効である。
さらに、本発明の粘稠物質用容器は、その容量が70mlよりも大きいことが望ましい。即ち、この容量が小さ過ぎる場合、潤滑液の液層の厚み分布、滑剤含有樹脂層の厚み分布、さらには、滑剤の配合量の分布を形成することが困難となるおそれがあるからである。
【0036】
本発明の粘稠物質用容器は、倒立による粘稠な内容物の排出性に優れており、これを利用して各種の用途に広く使用される。
【符号の説明】
【0037】
1:胴部
3:首部
5:底部
10:内容物
13:空気層
21:液層
23:滑剤含有樹脂層
図1
図2
図3