(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】撮像レンズ
(51)【国際特許分類】
G02B 13/04 20060101AFI20220929BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
G02B13/04 D
G02B13/18
(21)【出願番号】P 2018072933
(22)【出願日】2018-04-05
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】521351719
【氏名又は名称】東京晨美光学電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112520
【氏名又は名称】林 茂則
(72)【発明者】
【氏名】山崎 郁
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-181382(JP,A)
【文献】特開平07-253540(JP,A)
【文献】特開2003-222796(JP,A)
【文献】特開2014-089241(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0146774(US,A1)
【文献】特開2018-180174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00-17/08
G02B 21/02-21/04
G02B 25/00-25/04
CODE V
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側に向かって順に、
光軸近傍で負の屈折力を有する第1レンズと、
光軸近傍で負の屈折力を有する第2レンズと、
光軸近傍で像側に凸面を向けた
正の屈折力を有する第3レンズと、
光軸近傍で正の屈折力を有する第4レンズと、
光軸近傍で像側に凸面を向けた負の屈折力を有する第5レンズとから構成され、
以下の条件式(1)、(2)
、(12)を満足することを特徴とする撮像レンズ。
(1)3.00<(T4/f)×100<5.90
(2)0.40<f2/f5<1.45
(12)-62<(D1/f1)×100<-29
ただし、
T4:第4レンズの像側の面から第5レンズの物体側の面までの光軸上の距離
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f2:第2レンズの焦点距離
f5:第5レンズの焦点距離
D1:第1レンズの光軸上の厚み
f1:第1レンズの焦点距離
【請求項2】
以下の条件式(7)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
(7)1.50<T1/T2<5.30
ただし、
T1:第1レンズの像側の面から第2レンズの物体側の面までの光軸上の距離
T2:第2レンズの像側の面から第3レンズの物体側の面までの光軸上の距離
【請求項3】
以下の条件式(8)を満足することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像レンズ。
(8)1.20<D1/D2<3.70
ただし、
D1:第1レンズの光軸上の厚み
D2:第2レンズの光軸上の厚み
【請求項4】
以下の条件式(11)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
(11)-8.50<r6/f<-2.00
ただし、
r6:第3レンズの像側の面の近軸曲率半径
f:撮像レンズ全系の焦点距離
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に使用されるCCDセンサやC-MOSセンサの固体撮像素子上に被写体の像を結像させる撮像レンズに係り、特に、小型化、高性能化が進むスマートフォンや携帯電話機、およびPDA(Personal Digital Assistant)やゲーム機、PC、ロボットなどの情報機器等、さらにはカメラ機能が付加された家電製品、および監視用カメラや自動車等に搭載される撮像装置に内蔵する撮像レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、家電製品や情報端末機器、自動車や公共交通機関にカメラ機能が搭載されることが一般的となった。また、監視用カメラや車載用カメラ等の撮像装置を構成する撮像素子は、年々小型化および高画素化が進んでおり、それに伴って撮像レンズも小型化や高性能化が求められている。
【0003】
監視用カメラや車載用カメラに用いられる撮像レンズには、例えば全画角で180度を超えるものが望まれる等、広角化に対する要望が強まってきている。さらに、高画素化に伴いより明るい撮像レンズが要求されている。
【0004】
従来の広角化と高性能化を目指した撮像レンズとしては、例えば、以下の特許文献1のような撮像レンズが知られている。
【0005】
特許文献1には、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、第3レンズと、正の屈折力を有する第4レンズと、負の屈折力を有する第5レンズとを備えた撮像レンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のレンズ構成で、広角化と低Fナンバー化を図ろうとした場合、周辺部における収差補正が非常に困難であり、良好な光学性能を得ることはできない。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、広角、低背、低Fナンバーの要求をバランスよく満足しながらも、諸収差が良好に補正された高い解像力を備える撮像レンズを提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明において使用する用語に関し、レンズの面の凸面、凹面、平面とは近軸(光軸近傍)における形状を指すものと定義し、屈折力とは、近軸における屈折力を指すものと定義し、極点とは接平面が光軸と垂直に交わる光軸上以外における非球面上の点として定義する。さらに、光学全長は、最も物体側に位置する光学素子の物体側の面から撮像面までの光軸上の距離として定義し、撮像レンズと撮像面との間に配置されるIRカットフィルタやカバーガラス等の厚みは、空気換算するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による撮像レンズは、物体側から像側に向かって順に、第1レンズと、光軸近傍で負の屈折力を有する第2レンズと、光軸近傍で像側に凸面を向けた第3レンズと、第4レンズと、第5レンズとから構成される。
【0011】
上記構成の撮像レンズは、第1レンズは、屈折力を強めることで、広角化を図る。第2レンズは、第3レンズに入射する光線の角度を小さく抑え、非点収差、像面湾曲を良好に補正する。第3レンズは、光軸近傍で像側に凸面を向けることにより、第3レンズの像側の面への光線入射角度を適切に抑制し、非点収差、像面湾曲、歪曲収差を良好に補正する。第4レンズは、低背化を維持しながら、球面収差、色収差を良好に補正する。第5レンズは、色収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差を良好に補正する。
【0012】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第1レンズの光軸近傍における屈折力は、負であることが望ましい。
【0013】
第1レンズを負の屈折力にすることで、広角化に有利になる。
【0014】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第2レンズの物体側の面は、光軸近傍で物体側に凸面を向けた形状とすることが望ましい。
【0015】
第2レンズの物体側の面を光軸近傍で物体側に凸面とすることで、コマ収差、像面湾曲の良好な補正が可能になる。
【0016】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第5レンズの物体側の面は、光軸近傍で物体側に凹面を向けた形状とすることが望ましい。
【0017】
第5レンズの物体側の面を光軸近傍で物体側に凹面とすることで、コマ収差、非点収差、像面湾曲の良好な補正が可能になる。
【0018】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第5レンズの像側の面は、光軸近傍で像側に凸面を向けた形状とすることが望ましい。
【0019】
第5レンズの像側の面を光軸近傍で像側に凸面とすることで、第5レンズの像側の面への光線入射角度を適切に抑制し、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0020】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第5レンズの像側の面は、光軸上以外の位置に極点を有する非球面が形成された形状であることが望ましい。
【0021】
第5レンズの像側の面に、光軸上以外の位置に極点を有する非球面形状を形成することにより、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0022】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(1)を満足することが望ましい。
(1)3.00<(T4/f)×100<5.90
ただし、T4は第4レンズの像側の面から第5レンズの物体側の面までの光軸上の距離、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0023】
条件式(1)は、第4レンズと第5レンズの光軸上の間隔を適切な範囲に規定するための条件である。条件式(1)の範囲を満足することで、コマ収差、非点収差の良好な補正が可能になる。
【0024】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第5レンズの光軸近傍における屈折力は、負であることが望ましく、さらには以下の条件式(2)を満足することがより望ましい。
(2)0.40<f2/f5<1.45
ただし、f2は第2レンズの焦点距離、f5は第5レンズの焦点距離である。
【0025】
第5レンズを負の屈折力にすることで、バックフォーカスを確保しながら色収差の良好な補正が可能になる。また、条件式(2)は、第2レンズと第5レンズの屈折力を適切な範囲に規定するものである。条件式(2)の範囲を満足することで、負の屈折力を第2レンズと第5レンズに適切にバランスさせることが可能になる。その結果、広角化を図りながら、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0026】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
(3)1.60<T1/f<3.70
ただし、T1は第1レンズの像側の面から第2レンズの物体側の面までの光軸上の距離、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0027】
条件式(3)は、第1レンズと第2レンズの光軸上の間隔を適切な範囲に規定するための条件である。条件式(3)の範囲を満足することで、非点収差、像面湾曲の良好な補正が可能になる。
【0028】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(4)を満足することが望ましい。
(4)0.10<T2/T3<0.80
ただし、T2は第2レンズの像側の面から第3レンズの物体側の面までの光軸上の距離、T3は第3レンズの像側の面から第4レンズの物体側の面までの光軸上の距離である。
【0029】
条件式(4)は、第2レンズと第3レンズとの間隔、および第3レンズと第4レンズとの間隔を適切な範囲に規定するものである。条件式(4)を満足することにより、第2レンズと第3レンズとの間隔、および第3レンズと第4レンズとの間隔の差が大きくなることが抑制され、低背化が図られる。また、条件式(4)の範囲を満足することで、第3レンズは最適な位置に配置され、当該レンズによる諸収差補正機能をより効果的なものとする。
【0030】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
(5)-19.5<(D5/f5)×100<-9.00
ただし、D5は第5レンズの光軸上の厚み、f5は第5レンズの焦点距離である。
【0031】
条件式(5)は、第5レンズの光軸上の厚みを適切な範囲に規定するものである。条件式(5)の上限値を下回ることで、第5レンズの光軸上の厚みが薄くなり過ぎることを防ぎ、レンズの成型性を良好にする。一方、条件式(5)の下限値を上回ることで、第5レンズの光軸上の厚みが厚くなり過ぎることを防ぎ、第5レンズの物体側、および像側の空気間隔の確保を容易にする。その結果、低背化を維持できる。
【0032】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(6)を満足することが望ましい。
(6)0.30<T2/f<1.00
ただし、T2は第2レンズの像側の面から第3レンズの物体側の面までの光軸上の距離、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0033】
条件式(6)は、第2レンズと第3レンズの光軸上の間隔を適切な範囲に規定するための条件である。条件式(6)の範囲を満足することで、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0034】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(7)を満足することが望ましい。
(7)1.50<T1/T2<5.30
ただし、T1は第1レンズの像側の面から第2レンズの物体側の面までの光軸上の距離、T2は第2レンズの像側の面から第3レンズの物体側の面までの光軸上の距離である。
【0035】
条件式(7)は、第1レンズと第2レンズとの間隔、および第2レンズと第3レンズとの間隔を適切な範囲に規定するものである。条件式(7)を満足することにより、第1レンズと第2レンズとの間隔、および第2レンズと第3レンズとの間隔の差が大きくなることが抑制され、低背化が図られる。また、条件式(7)の範囲を満足することで、第2レンズは最適な位置に配置され、当該レンズによる諸収差補正機能をより効果的なものとする。
【0036】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(8)を満足することが望ましい。
(8)1.20<D1/D2<3.70
ただし、D1は第1レンズの光軸上の厚み、D2は第2レンズの光軸上の厚みである。
【0037】
条件式(8)は、第1レンズの光軸上の厚み、および第2レンズの光軸上の厚みを適切な範囲に規定するものである。条件式(8)の上限値を下回ることで、像面湾曲の良好な補正が可能になる。一方、条件式(8)の下限値を上回ることで、非点収差、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0038】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(9)を満足することが望ましい。
(9)12<r3/f<40
ただし、r3は第2レンズの物体側の面の近軸曲率半径、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0039】
条件式(9)は、第2レンズの物体側の面の近軸曲率半径を適切な範囲に規定するものである。条件式(9)の上限値を下回ることで、非点収差の良好な補正が可能になる。一方、条件式(9)の下限値を上回ることで、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0040】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(10)を満足することが望ましい。
(10)6.50<r5/f<42.00
ただし、r5:第3レンズの物体側の面の近軸曲率半径、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0041】
条件式(10)は、第3レンズの物体側の面の近軸曲率半径を適切な範囲に規定するものである。条件式(10)の上限値を下回ることで、非点収差の良好な補正が可能になる。一方、条件式(10)の下限値を上回ることで、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0042】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(11)を満足することが望ましい。
(11)-8.50<r6/f<-2.00
ただし、r6は第3レンズの像側の面の近軸曲率半径、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0043】
条件式(11)は、第3レンズの像側の面の近軸曲率半径を適切な範囲に規定するものである。条件式(11)の上限値を下回ることで、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。一方、条件式(11)の下限値を上回ることで、非点収差の良好な補正が可能になる。
【0044】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(12)を満足することが望ましい。
(12)-62<(D1/f1)×100<-29
ただし、D1は第1レンズの光軸上の厚み、f1は第1レンズの焦点距離である。
【0045】
条件式(12)は、第1レンズの光軸上の厚みを適切な範囲に規定するものである。条件式(12)の上限値を下回ることで、第1レンズの光軸上の厚みが薄くなり過ぎることを防ぎ、レンズの成型性を良好にする。一方、条件式(12)の下限値を上回ることで、第1レンズの光軸上の厚みが厚くなり過ぎることを防ぎ、第1レンズの像側の空気間隔の確保を容易にする。その結果、低背化を維持できる。
【0046】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(13)を満足することが望ましい。
(13)8<r3/r4<30
ただし、r3は第2レンズの物体側の面の近軸曲率半径、r4は第2レンズの像側の面の近軸曲率半径である。
【0047】
条件式(13)は、第2レンズの物体側、および像側の面の近軸曲率半径の関係について規定するものである。条件式(13)の範囲を満足することにより、非点収差、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0048】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(14)を満足することが望ましい。
(14)-3.80<r7/r8<-1.00
ただし、r7は第4レンズの物体側の面の近軸曲率半径、r8は第4レンズの像側の面の近軸曲率半径である。
【0049】
条件式(14)は、第4レンズの物体側、および像側の面の近軸曲率半径の関係について規定するものである。条件式(14)を満足することで、物体側の面、および像側の面の屈折力が過剰になることを抑制することができる。その結果、良好な収差補正が図られる。また、第4レンズの製造誤差感度を低減させる効果が得られる。
【0050】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(15)を満足することが望ましい。
(15)-6.50<f1/f<-1.80
ただし、f1は第1レンズの焦点距離、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0051】
条件式(15)は、第1レンズの屈折力を適切な範囲に規定するものである。条件式(15)の上限値を下回ることで、第1レンズの負の屈折力が適切なものとなり、球面収差の良好な補正が可能になる。また、低背化に 有利になる。一方、条件式(15)の下限値を上回ることで、広角化に有利になる。
【0052】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(16)を満足することが望ましい。
(16)-4.50<f2/f<-1.00
ただし、f2は第2レンズの焦点距離、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0053】
条件式(16)は、第2レンズの屈折力を適切な範囲に規定するものである。条件式(16)の上限値を下回ることで、第2レンズの負の屈折力が適切なものとなり、低背化に有利になる。
【0054】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(17)を満足することが望ましい。
(17)-5.50<f5/f<-1.50
ただし、f5は第5レンズの焦点距離、fは撮像レンズ全系の焦点距離である。
【0055】
条件式(17)は、第5レンズの屈折力を適切な範囲に規定するものである。条件式(17)の上限値を下回ることで、第5レンズの負の屈折力が適切なものとなり、低背化に有利になる。一方、条件式(17)の下限値を上回ることで、コマ収差、像面湾曲の良好な補正が可能になる。
【発明の効果】
【0056】
本発明により、広角化、低背化、低Fナンバー化の要求をバランスよく満足しながらも、諸収差が良好に補正された解像力の高い撮像レンズを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】本発明の実施例1の撮像レンズの概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施例1の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
【
図3】本発明の実施例2の撮像レンズの概略構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施例2の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
【
図5】本発明の実施例3の撮像レンズの概略構成を示す図である。
【
図6】本発明の実施例3の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
【
図7】本発明の実施例4の撮像レンズの概略構成を示す図である。
【
図8】本発明の実施例4の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0059】
図1、
図3、
図5、および
図7はそれぞれ、本発明の実施形態の実施例1から4に係る撮像レンズの概略構成図を示している。
【0060】
図1に示すように、本実施形態の撮像レンズは、物体側から像側に向かって順に、第1レンズL1と、光軸Xの近傍で負の屈折力を有する第2レンズL2と、光軸Xの近傍で像側に凸面を向けた第3レンズL3と、第4レンズL4と、第5レンズL5とから構成される。
【0061】
また、第5レンズL5と撮像面IMG(すなわち、撮像素子の撮像面)との間には赤外線カットフィルタやカバーガラス等のフィルタIRが配置されている。なお、このフィルタIRは省略することが可能である。
【0062】
第1レンズL1は、屈折力を強めることで、広角化を図っている。第1レンズL1の形状は、光軸Xの近傍で物体側に凸面を向けているとともに、像側に凹面を向けたメニスカス形状に形成されている。そのため、球面収差、歪曲収差を良好に補正している。
【0063】
第2レンズL2は、光軸Xの近傍で物体側に凸面を向けているとともに、像側に凹面を向けたメニスカス形状に形成されている。そのため、球面収差、コマ収差、像面湾曲を良好に補正している。
【0064】
第3レンズL3は、正の屈折力を有し、光軸Xの近傍で物体側に凸面を向けているとともに、像側に凸面を向けた両凸形状に形成されている。そのため、非点収差、像面湾曲、歪曲収差を良好に補正している。
【0065】
開口絞りSTは、第3レンズL3と第4レンズL4との間に配置されている。開口絞りSTを、第3レンズL3と第4レンズL4との間に配置することにより、径方向の小型化を図ることができる。
【0066】
第4レンズL4は、正の屈折力を有するレンズであり、低背化を維持しながら、球面収差、色収差を良好に補正している。第4レンズL4の形状は、光軸Xの近傍で物体側、および像側が凸面の両凸形状にしているため、物体側、および像側の面の正の屈折力によって、低背化を図ることができる。また、両面を凸面にすることで強い曲率になることを抑え、製造誤差に対する感度を低減させる効果が得られる。
【0067】
第5レンズL5は、負の屈折力を有し、光軸Xの近傍で物体側に凹面を向けているとともに、像側に凸面を向けたメニスカス形状に形成されている。そのため、色収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差を良好に補正している。
【0068】
また、第5レンズL5の像側の面に、光軸X上以外の位置に極点を有する非球面形状を形成されているため、像面湾曲、歪曲収差をより良好に補正している。
【0069】
本実施形態において、第1レンズL1と第3レンズL3は、物体側の面、および像側の面ともに球面で形成したガラスレンズになっている。ガラス材料は、温度に伴う光学特性の変化が小さい。従って、本実施形態の撮像レンズを低温から高温に至る幅広い温度領域で使用する際も、高い品質を維持することが可能である。なお、レンズの材料をガラス材料にするか樹脂材料にするか、また、レンズ面を球面にするか非球面にするかは、使用環境や要求性能に応じて適宜選択すればよい。
【0070】
本実施の形態に係る撮像レンズは、全てのレンズが単レンズで構成されている。接合レンズを含まない構成は、非球面を多用することができるため、諸収差の良好な補正を容易にする。また、接合に係る工数が不要のため、低コストで製作することが可能となる。
【0071】
本実施形態における撮像レンズは、以下の条件式(1)から(17)を満足することにより、好ましい効果を奏するものである。
(1)3.00<(T4/f)×100<5.90
(2)0.40<f2/f5<1.45
(3)1.60<T1/f<3.70
(4)0.10<T2/T3<0.80
(5)-19.5<(D5/f5)×100<-9.00
(6)0.30<T2/f<1.00
(7)1.50<T1/T2<5.30
(8)1.20<D1/D2<3.70
(9)12<r3/f<40
(10)6.50<r5/f<42.00
(11)-8.50<r6/f<-2.00
(12)-62<(D1/f1)×100<-29
(13)8<r3/r4<30
(14)-3.80<r7/r8<-1.00
(15)-6.50<f1/f<-1.80
(16)-4.50<f2/f<-1.00
(17)-5.50<f5/f<-1.50
ただし、
D1:第1レンズL1の光軸X上の厚み
D2:第2レンズL2の光軸X上の厚み
D5:第5レンズL5の光軸X上の厚み
T1:第1レンズL1の像側の面から第2レンズL2の物体側の面までの光軸X上の距離
T2:第2レンズL2の像側の面から第3レンズL3の物体側の面までの光軸X上の距離
T3:第3レンズL3の像側の面から第4レンズL4の物体側の面までの光軸X上の距離
T4:第4レンズL4の像側の面から第5レンズL5の物体側の面までの光軸X上の距離
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f1:第1レンズL1の焦点距離
f2:第2レンズL2の焦点距離
f5:第5レンズL5の焦点距離
r3:第2レンズL2の物体側の面の近軸曲率半径
r4:第2レンズL2の像側の面の近軸曲率半径
r5:第3レンズL3の物体側の面の近軸曲率半径
r6:第3レンズL3の像側の面の近軸曲率半径
r7:第4レンズL4の物体側の面の近軸曲率半径
r8:第4レンズL4の像側の面の近軸曲率半径
なお、上記の各条件式をすべて満足する必要はなく、それぞれの条件式を単独に満たすことで、各条件式に対応した作用効果を得ることができる。
【0072】
また、本実施形態における撮像レンズは、以下の条件式(1a)から(17a)を満足することにより、より好ましい効果を奏するものである。
(1a)3.80<(T4/f)×100<5.60
(2a)0.60<f2/f5<1.15
(3a)1.90<T1/f<3.00
(4a)0.30<T2/T3<0.65
(5a)-15.5<(D5/f5)×100<-10.0
(6a)0.45<T2/f<0.85
(7a)2.40<T1/T2<4.40
(8a)1.60<D1/D2<3.10
(9a)19<r3/f<33
(10a)7.70<r5/f<35.00
(11a)-7.00<r6/f<-3.20
(12a)-52<(D1/f1)×100<-31
(13a)13<r3/r4<25
(14a)-3.10<r7/r8<-1.60
(15a)-5.20<f1/f<-2.80
(16a)-3.50<f2/f<-2.00
(17a)-4.50<f5/f<-2.30
ただし、各条件式の符号は前の段落での説明と同様である。
【0073】
本実施形態において、レンズ面の非球面に採用する非球面形状は、光軸方向の軸をZ、光軸に直交する方向の高さをH、近軸曲率半径をR、円錐係数をk、非球面係数をA4、A6、A8、A10、A12、A14、A16としたとき数式1により表わされる。
【0074】
【0075】
次に、本実施形態に係る撮像レンズの実施例を示す。各実施例において、fは撮像レンズ全系の焦点距離を、FnoはFナンバーを、ωは半画角を、ihは最大像高を、TTLは光学全長をそれぞれ示す。また、iは物体側から数えた面番号、rは曲率半径、dは光軸上のレンズ面間の距離(面間隔)、Ndはd線(基準波長)の屈折率、νdはd線に対するアッベ数をそれぞれ示す。なお、非球面に関しては、面番号iの後に*(アスタリスク)の符号を付加して示す。
【0076】
(実施例1)
【0077】
基本的なレンズデータを以下の表1に示す。
【0078】
【0079】
実施例1の撮像レンズは、表5に示すように条件式(1)から(17)を満たしている。
【0080】
図2は実施例1の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。球面収差図は、F線(486nm)、d線(588nm)、C線(656nm)の各波長に対する収差量を示している。また、非点収差図にはサジタル像面Sにおけるd線の収差量(実線)、タンジェンシャル像面Tにおけるd線の収差量(破線)をそれぞれ示している(
図4、
図6、
図8においても同じ)。また、歪曲収差図は、fを撮像レンズ全系の焦点距離、θを半画角としたとき、理想像高をfθとし、それからのずれ量を示している。
図2に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【0081】
(実施例2)
【0082】
基本的なレンズデータを以下の表2に示す。
【0083】
【0084】
実施例2の撮像レンズは、表5に示すように条件式(1)から(17)を満たしている。
【0085】
図4は実施例2の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。
図4に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【0086】
(実施例3)
【0087】
基本的なレンズデータを以下の表3に示す。
【0088】
【0089】
実施例3の撮像レンズは、表5に示すように条件式(1)から(17)を満たしている。
【0090】
図6は実施例3の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。
図6に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【0091】
(実施例4)
【0092】
基本的なレンズデータを以下の表4に示す。
【0093】
【0094】
実施例4の撮像レンズは、表5に示すように条件式(1)から(17)を満たしている。
【0095】
図8は実施例4の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。
図8に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【0096】
表5に実施例1から実施例4に係る条件式(1)から(17)の値を示す。
【0097】
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明に係る撮像レンズを、カメラ機能を備える製品へ適用した場合、当該カメラの広角化、低背化、低Fナンバー化への寄与とともに、高性能化を図ることができる。
【符号の説明】
【0099】
ST 開口絞り
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
ih 最大像高
IR フィルタ
IMG 撮像面