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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20220929BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20220929BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20220929BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H01L21/60 311Q
H01L23/30 R
H01L21/78 Q
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018091772
(22)【出願日】2018-05-10
(65)【公開番号】P2019197840
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(72)【発明者】
【氏名】久保田 健二
(72)【発明者】
【氏名】森 大地
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-093788(JP,A)
【文献】特開2013-115185(JP,A)
【文献】特開2013-127997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 23/29
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ上にアンダーフィルフィルムを貼り付ける工程(A)と、
上記アンダーフィルフィルムが貼り付けられたウエハをダイシングする工程(B)と、
上記アンダーフィルフィルムが貼り付けられたウエハが個片化されたアンダーフィルフィルム付きチップと電子部品とを熱圧着する工程(C)と、
上記工程(A)の後から、上記ウエハが個片化される前までに、上記アンダーフィルフィルムが貼り付けられたウエハを、上記アンダーフィルフィルムの最低溶融粘度が100000Pa・s未満になるように加熱する工程(D)とを有し、
上記工程(D)では、上記アンダーフィルフィルムが貼り付けられたウエハを、100~200℃で、30秒以下加熱する、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
上記アンダーフィルフィルムは、アクリルポリマーと、エポキシ樹脂と、エポキシ硬化剤と、硬化促進剤と、無機フィラーとを含有する接着剤組成物からなる、請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
上記接着剤組成物は、アクリルポリマーの含有量が10~20質量%であり、エポキシ樹脂の含有量が23~32質量%であり、エポキシ硬化剤の含有量が10~12質量%であり、硬化促進剤の有量が1~2質量%であり、無機フィラーの含有量が35~47質量%である、請求項2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
工程(D)では、上記アンダーフィルフィルムの最低溶融粘度が3000Pa・s超~100000Pa・s未満になるように加熱する、請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
上記アンダーフィルフィルムは、エポキシ基及びアミド基を有するアクリルゴムポリマーと、エポキシ樹脂と、エポキシ硬化剤と、硬化促進剤と、無機フィラーとを含有する接着剤組成物からなる、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
上記工程(C)は、上記熱圧着前に、上記アンダーフィルフィルム付きチップを加熱することを含まない、請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
上記工程(A)と、上記工程(D)と、上記工程(B)と、上記工程(C)とをこの順に有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
ウエハ上にアンダーフィルフィルムを貼り付ける工程(A)と、
上記アンダーフィルフィルムが貼り付けられたウエハをダイシングする工程(B)と、
上記アンダーフィルフィルムが貼り付けられたウエハが個片化されたアンダーフィルフィルム付きチップと電子部品とを熱圧着する工程(C)と、
上記工程(A)の後から、上記ウエハが個片化される前までに、上記アンダーフィルフィルムの粘度が上昇するように、上記アンダーフィルフィルムが貼り付けられたウエハを、上記アンダーフィルフィルムの最低溶融粘度が100000Pa・s未満になるように加熱する工程(D)とを有する、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な液状のアンダーフィル材では、薄膜化した半導体チップの実装や3D実装などが困難となっている。このため、例えば、半導体IC(Integrated Circuit)電極と基板電極とを金属接合又は圧接接合する前にアンダーフィルフィルムを基板上に貼り付ける「先供給型アンダーフィルフィルム(PUF:Pre-applied Underfill Film)」の使用が検討されている。
【0003】
先供給型アンダーフィルフィルムを使用した実装方法は、例えば、以下のように行われる(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
工程1:ウエハにアンダーフィルフィルムを貼り付け、ダイシングしてアンダーフィルフィルム付きチップを得る。
工程2:アンダーフィルフィルム付きチップと電子部品とを位置合わせする。
工程3:アンダーフィルフィルム付きチップを、アンダーフィルフィルムに流動性が生じるが、本硬化が生じない程度に加熱した後、アンダーフィルフィルム付きチップと電子部品とを熱圧着する。
【0005】
このような実装方法において、1チップあたりの生産タクト(UPH:Unit Per Hour)を向上させる方法として、例えば、マルチヘッド化、一括圧着などが考えられる。しかし、マルチヘッド化は、装置の価格が高額であり、1チップあたりのコストが増加してしまう。また、一括圧着は、ボンダー(ヒートツール)による温度制御が困難であるため、チップの位置によって昇温速度に差が生じてしまい、バンプ間の樹脂噛み込みなどの接合不良やボイドが発生することがある。
【0006】
生産タクトを向上させるためには、アンダーフィルフィルムの粘度も重要な要素となる。アンダーフィルフィルムの粘度が低すぎると、熱圧着時に、ボイドが発生するおそれがある。また、アンダーフィルフィルムの粘度が高すぎると、ウエハにアンダーフィルフィルムを貼り付ける際に、押し込み不足によりボイドが混入するおそれがある。
【0007】
そのため、従来の実装方法では、上述の工程3のように、熱圧着前に、ボイド抑制のために1チップごとにアンダーフィルフィルムの粘度を調節するための加熱時間(保持時間)を要していた。この加熱時間が生産タクト向上の妨げの1つとなっていた。
【0008】
したがって、短時間で高品質な実装が可能な方法、具体的には、1チップあたりの生産タクトが短く、接続性、ボイド排除性が良好な半導体装置が得られる方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2016-146412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本技術は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、短時間で高品質な半導体装置が得られる半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本技術に係る半導体装置の製造方法は、ウエハ上にアンダーフィルフィルムを貼り付ける工程(A)と、アンダーフィルフィルムが貼り付けられたウエハをダイシングする工程(B)と、アンダーフィルフィルムが貼り付けられたウエハが個片化されたアンダーフィルフィルム付きチップと電子部品とを接続させる工程(C)と、工程(A)の後から、ウエハが個片化される前までに、アンダーフィルフィルムが貼り付けられたウエハを、アンダーフィルフィルムの最低溶融粘度が100000Pa・s未満になるように加熱する工程(D)とを有する。
【発明の効果】
【0012】
本技術によれば、短時間で高品質な半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法と従来の半導体装置の製造方法におけるアンダーフィルフィルムの粘度の時間推移の一例を示すグラフである。
図2図2は、本実施の形態に係るアンダーフィルフィルムの溶融粘度カーブの一例を示すグラフである。
図3図3は、ウエハ上にアンダーフィルフィルムを貼り付ける工程の一例を模式的に示す斜視図である。
図4図4は、ウエハをダイシングする工程の一例を模式的に示す斜視図である
図5図5は、半導体チップをピックアップする工程の一例を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、搭載前の半導体チップと電子部品とを模式的に示す断面図である。
図7図7は、熱圧着後の半導体チップと電子部品とを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本技術に係る半導体装置の製造方法は、ウエハ上にアンダーフィルフィルムを貼り付ける工程(A)と、アンダーフィルフィルムが貼り付けられたウエハをダイシングする工程(B)と、アンダーフィルフィルムが貼り付けられたウエハが個片化されたアンダーフィルフィルム付きチップと電子部品とを接続させる工程(C)と、工程(A)の後からアンダーフィルフィルムが貼り付けられたウエハが個片化されるまでに、アンダーフィルフィルムが貼り付けられたウエハを、アンダーフィルフィルムの最低溶融粘度が100000Pa・s未満になるように加熱する工程(D)とを有する。
【0015】
図1は、半導体装置の製造方法におけるアンダーフィルフィルムの粘度の時間推移の一例を示すグラフである。横軸は、時間(工程(A)以降の各行程)を表し、縦軸はアンダーフィルフィルムの粘度を表す。図1中、グラフ(1)は、本技術の方法の場合であり、グラフ(2)は従来の方法の場合である。グラフ(1)、(2)における破線は、該当する工程を行わないことを表す。グラフ(1)において、工程(D)では、アンダーフィルフィルムの樹脂がゲル化点に達して、反応系が液体状態からゴム状態に変化し、さらに反応により、ゴム状態からガラス状態に変化し始めた段階と考えらえる。また、グラフ(1)において、工程(C)では、アンダーフィルフィルムの樹脂がガラス状態からゴム状態となるときにグラフが若干下がり、再びゴム状態からガラス状態となるときにグラフが上昇したと考えられる。
【0016】
図2は、アンダーフィルフィルムの溶融粘度カーブの一例を示すグラフである。本製造方法では、工程(A)の後(例えば図2中のAの粘度状態)から、アンダーフィルフィルムが貼り付けられたウエハが個片化(ダイシング)される前までに、図2中のBに示す矢印のように、アンダーフィルフィルムの粘度を上昇させる工程(D)を有する。これにより、図2中のCに示すように、加熱前に比べてアンダーフィルフィルムの粘度を上昇させ、従来必要であった1チップごとのアンダーフィルフィルムの粘度調節時間を省略することができる。また、ウエハにアンダーフィルフィルムを貼り付けた後にアンダーフィルフィルムの粘度を調節するため、ウエハにアンダーフィルフィルムを貼付ける際に、押し込み不足によるボイドの混入を抑制できる。さらに、熱圧着前にアンダーフィルフィルムの粘度を調節するため、熱圧着時にアンダーフィルフィルムの粘度が低すぎることに起因するボイド発生を抑制できる。したがって、本技術に係る半導体装置の製造方法では、短時間で高品質な半導体装置を得ることができる。
【0017】
以下、本技術に係る半導体装置の製造方法の具体例を説明する。半導体装置の製造方法の一例は、上述した工程(A)と、工程(D)と、工程(B)と、工程(C)とをこの順に有する。
【0018】
[工程(A1)]
工程(A)では、ウエハ上にアンダーフィルフィルムを貼り付ける。例えば、図3に示すように、ウエハ2の直径よりも大きな直径を有するリング状又は枠状のフレームを有する治具3によりウエハ2を固定し、ウエハ上にアンダーフィルフィルム1を所定の温度で貼り付ける(ラミネートする)。貼付け温度は、ボイド排除性の観点から、25℃~100℃が好ましく、40℃~80℃がより好ましい。
【0019】
ウエハ2には、多数のIC(Integrated Circuit)が作り込まれている。また、ウエハ2の接着面(アンダーフィルフィルム1が貼り付けられる面)には、スクライブラインによって区分される半導体チップ毎に、バンプと呼ばれる接続用のハンダ付き電極が形成されている。このハンダ付き電極は、例えば、銅などからなる電極上にハンダが接合されたものである。
【0020】
アンダーフィルフィルム1は、ウエハ2のダイシング時にウエハ2を保護・固定し、ピックアップ時に保持するダイシングテープとして機能する。アンダーフィルフィルム1は、例えば、アクリルポリマーと、エポキシ樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤と、無機フィラーとを含有する接着剤組成物(アンダーフィル材)から形成することができる。
【0021】
アクリルポリマーは、接続性等の観点から、エポキシ基及びアミド基を有するアクリルゴムポリマーが好ましい。アクリルポリマーの重量平均分子量の下限値は、例えば、5.0×10以上が好ましく、1.0×10以上がより好ましい。また、アクリルポリマーの重量平均分子量の上限値は、例えば、10以下が好ましく、7.0×10以下がより好ましい。アクリルポリマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。アンダーフィル材中のアクリルポリマーの含有量は、5~30質量%が好ましく、10~20質量%がより好ましい。
【0022】
エポキシ樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、スピロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テルペン型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などを挙げることができる。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、エポキシ基を2以上有することが好ましい。エポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。アンダーフィル材中のエポキシ樹脂の含有量は、10~40質量%が好ましく、23~32質量%がより好ましい。
【0023】
硬化剤(エポキシ樹脂硬化剤)は、フェノール類、イミダゾール類、酸無水物類、アミン類、ヒドラジド類、ポリメルカプタン類、ルイス酸-アミン錯体類などを用いることができる。これらの中でも、高い架橋密度が得られるフェノール化合物が好ましい。フェノール化合物としては、フェノールノボラック化合物、クレゾールノボラック化合物、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール化合物、ジシクロペンタジエンフェノール付加型化合物、フェノールアラルキル化合物などが挙げられる。フェノール化合物の中でも、耐熱性の観点からフェノールノボラック化合物が好ましい。硬化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。アンダーフィル材中の硬化剤の含有量は、1~20質量%が好ましく、10~12質量%がより好ましい。
【0024】
硬化促進剤としては、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾ-ル類、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7塩(DBU塩)、2-(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの第3級アミン類、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類、オクチル酸スズなどの金属化合物などが挙げられる。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。アンダーフィル材中の硬化促進剤の含有量は、0.1~10質量%が好ましく、1~2質量%がより好ましい。
【0025】
無機フィラーは、圧着時における樹脂層の流動性を調整する目的で用いられる。無機フィラーは、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を用いることができる。無機フィラーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。アンダーフィル材中の無機フィラーの含有量は、25~60質量%が好ましく、35~47質量%がより好ましい。
【0026】
また、接着剤組成物は、本技術の効果を損なわない範囲で、上述した成分以外の他の成分、例えば有機過酸化物、溶剤等をさらに含有してもよい。
【0027】
アンダーフィルフィルムは、例えば、上述した接着剤組成物を調製し、バーコーターを用いて、接着剤組成物を剥離処理された基材上に塗布し、乾燥させることにより得られる。
【0028】
[工程(D)]
工程(D)では、アンダーフィルフィルムが貼り付けられたウエハを、アンダーフィルフィルムの最低溶融粘度が100000Pa・s未満になるように加熱する。アンダーフィルフィルムの最低溶融粘度が100000Pa・s以上となると、後述する工程(C)の熱圧着時に良好な接続性が得られにくい傾向にある。また、アンダーフィルフィルムの最低溶融粘度は、3000Pa・s超~100000Pa・s未満に調節することが好ましく、20000~50000Pa・sに調節することがより好ましい。アンダーフィルフィルムの最低溶融粘度を3000Pa・s超に調節することにより、熱圧着時にボイドが発生することを抑制できる。
【0029】
工程(D)での加熱は、例えば、加熱手段(例えばホットプレート、加熱ボンダー)によって、アンダーフィルフィルムに流動性が生じるが、本硬化が生じない程度の所定の温度、圧力、時間の条件で行うことが好ましい。加熱温度は、アンダーフィルフィルムの最低溶融粘度到達温度以上とするのが好ましい。例えば、上述した接着剤組成物からなるアンダーフィルフィルムを用いた場合、加熱温度は、100~200℃が好ましい。また、加熱時間は、生産タクトを短くする観点から30分以下が好ましく、5分以下がより好ましく、30秒以下がさらに好ましく、5秒以下がさらにまた好ましく、2秒以下が特に好ましい。好ましい加熱条件は、例えば、200℃で2秒以下、180℃で5秒以下、130℃で5分以下、100℃で30分以下である。
【0030】
[工程(B)]
工程(B)では、アンダーフィルフィルムが貼り付けられたウエハをダイシングする。例えば、図4に示すように、ブレード4をスクライブラインに沿って押圧してウエハ2を切削し、個々の半導体チップに分割(個片化)する。
【0031】
[工程(C)]
工程(C)では、アンダーフィルフィルムが貼り付けられたウエハが個片化されたアンダーフィルフィルム付きチップと電子部品とを接続させる。例えば図5に示すように、半導体チップ5は、アンダーフィルフィルム1に保持されてピックアップされる。
【0032】
次に、例えば図6に示すように、アンダーフィルフィルム付きチップの電極7と、電子部品としてのボトムチップ10の電極12とが対向するように位置合わせする。
【0033】
そして、熱圧着により、電極7のハンダ22を溶融させて金属結合を形成させるとともに、アンダーフィルフィルム1を完全硬化させる。これにより、例えば図7に示すように、半導体チップ5の電極7と、ボトムチップ10の電極12とを電気的、機械的に接続させることができる。熱圧着の際の温度条件は、例えば150℃以上300℃以下が好ましく、230~280℃がより好ましい。熱圧着の際の圧力条件は、例えば90N以下が好ましく、70N以下がより好ましい。熱圧着の際の時間条件は、例えば0.1秒以上60秒以下が好ましく、5~20秒とすることもできる。
【0034】
以上のように、本製造方法では、工程(A)の後から、アンダーフィルフィルムが貼り付けられたウエハが個片化される前に、アンダーフィルフィルムが貼り付けられたウエハを加熱してアンダーフィルフィルムの粘度を上昇させることにより、短時間で高品質な半導体装置を得ることができる。
【0035】
また、上述した例は、工程(B)の前に工程(D)を有する方法であるが、この例に限定されるものではない。例えば、他の例として、工程(B)において、アンダーフィルフィルムが貼り付けられたウエハを個片化する前までに、工程(D)を行ってもよい。この方法でも、短時間で高品質な半導体装置を得ることができる。
【0036】
また、上述した工程(C)では、熱圧着前にアンダーフィルフィルム付きチップをヒートツールで加熱(保持)することを含まないものとして説明したが、本技術の効果を損なわない範囲で加熱時間を設けてもよい。
【0037】
また、本製造方法は、上述したように半導体チップを1段ずつ圧着実装する例に限定されず、例えば、複数のアンダーフィルフィルムを介して、インターポーザ上に複数の半導体チップを積層配置させ、一括圧着させる場合に適用することもできる。
【実施例
【0038】
以下、本技術の実施例について説明する。本技術は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
[アンダーフィルフィルム]
下記材料を用いてアンダーフィルフィルムを作製した。
アクリルゴム:SG-80H(ナガセムテックス社製)、エポキシ価0.07eq/kg、Mw;35×10
エポキシ樹脂:EXA-4850-1000(DIC社製)、エポキシ当量350g/eq
エポキシ樹脂:HP-4710(DIC社製)、エポキシ当量170g/eq
硬化剤:TD-2131(DIC社製)、フェノールノボラック樹脂、軟化点78~82℃
硬化促進剤:U-CAT 3513N(サンアプロ社製)
無機フィラー:SC1050(アドマテックス社製)、球状シリカ
無機フィラー:アエロジルR805(アエロジル社製)、疎水性フュームドシリカ
【0040】
表1に示す配合比(質量部)となるように各成分を秤量して混合し接着剤組成物を得た。この接着剤組成物を剥離処理されたPETにバーコーターを用いて塗布し、80℃のオーブンで3分間乾燥させた。これにより、厚み20μmのアンダーフィルフィルムを作製した。
【0041】
【表1】
【0042】
[実施例1]
[半導体装置の作製]
[工程(A)]
アンダーフィルフィルムを、12インチのウエハ(チップ取り数1800ショット分)上に貼り付け、真空ラミネータ(名機社製)を用いて、65℃、30秒、0.1MPaの条件でラミネートした。これにより、アンダーフィルフィルムが貼り付けられたウエハが得られた。
【0043】
[工程(D)]
アンダーフィルフィルムが貼り付けられたウエハを、ホットプレート上で、200℃で、2秒間加熱した。
【0044】
[工程(B)]
加熱後のアンダーフィルフィルムが貼り付けられたウエハを、ダイシング(個片化)して、アンダーフィルフィルム付きチップを得た。このアンダーフィルフィルム付きチップは、以下のチップを備える。
大きさ:6.0×6.0mm□、厚み:0.2μm
バンプ仕様:Cu(厚み10μm)+Ni(厚み2μm)+はんだ(厚み5μm)、バンプ数:20443pin/15μmφ/40μmピッチ
【0045】
[工程(C)]
アンダーフィルフィルム付きチップを、フリップチップボンダー(FCB3、パナソニック社製)を用いて、ボトムチップ(大きさ:8.0×8.0mm□、厚み:0.2μm、バンプ仕様:上述したアンダーフィルフィルム付きチップのバンプと同様)に位置合わせし、ピーク温度250℃、10秒間、70Nの条件で熱圧着した。これにより、評価用の半導体装置を作製した。
【0046】
[実施例2]
工程(D)における加熱時間を1秒間に変更したこと、及び、工程(C)においてアンダーフィルフィルム付きチップをボトムチップに位置合わせした後、熱圧着前に、200℃で1秒間加熱したこと以外は、実施例1と同様に半導体装置を作製した。
【0047】
[実施例3]
工程(D)において、加熱温度を180℃に変更し、加熱時間を5秒間に変更したこと以外は、実施例1と同様に半導体装置を作製した。
【0048】
[比較例1]
工程(D)を行わなかったこと、及び、工程(C)においてアンダーフィルフィルム付きチップをボトムチップに位置合わせした後、熱圧着前に、200℃で2秒間加熱したこと以外は、実施例1と同様に半導体装置を作製した。
【0049】
[比較例2]
工程(D)において、加熱時間を5秒間に変更したこと以外は、実施例1と同様に半導体装置を作製した。
【0050】
[比較例3]
工程(D)を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に半導体装置を作製した。
【0051】
<アンダーフィルフィルムの最低溶融粘度>
実施例1~3、比較例2について、工程(D)での加熱後のアンダーフィルフィルムについて測定した最低溶融粘度を表2に示す。なお、比較例1、3については、工程(D)を行わなかったため、工程(A)でのラミネート後に測定したアンダーフィルフィルムの最低溶融粘度を表2に示す。アンダーフィルフィルムの最低溶融粘度到達温度は150℃であった。なお、アンダーフィルフィルムの最低溶融粘度及び最低溶融粘度到達温度は、レオメータ(TA社製ARES)を用いて、5℃/min、1Hzの条件で測定した。
【0052】
<接続性の評価>
半導体装置のチップ間の接続(デイジーチェーン接続)状態をプローブテスタで確認した。全ての導通経路の接続が確認できた場合をOKと評価し、1ヶ所でも接続できていない場合をNGと評価した。結果を表2に示す。
【0053】
<ボイドの評価>
半導体装置のチップ間のボイドの有無を、SAT(Scanning Acoustic Tomograph)を用いて非破壊検査した。ボイドが発生していない場合をOKと評価し、ボイドが発生していた場合をNGと評価した。結果を表2に示す。
【0054】
<UPHの評価>
1ウエハ(=個片化されるチップ数1800)に要した、工程(D)での加熱(ウエハコンタクト)時間と、工程(C)での熱圧着前の加熱(チップコンタクト)時間の合計に基づく生産タクトを評価した。比較例1(従来の方法)を基準して、1ウエハに要した、ウエハコンタクトの時間と、チップコンタクトの時間の合計が短いOKと評価し、それ以外をNGと評価した。結果を表2に示す。
【0055】
実施例1では、ウエハコンタクトの時間が2秒であり、チップコンタクトの時間が0秒であった。そのため、実施例1では、1ウエハに要したウエハコンタクトの時間と、チップコンタクトの時間の合計が2秒であった。
【0056】
実施例2では、ウエハコンタクトの時間が1秒であり、チップコンタクトの時間が1秒であった。そのため、実施例2では、1ウエハに要したウエハコンタクトの時間(2秒)と、チップコンタクトの時間(1秒×1800チップ=1800秒)との合計が約30分であった。
【0057】
実施例3では、ウエハコンタクトの時間が5秒であり、チップコンタクトの時間が0秒であった。そのため、実施例3では、1ウエハに要したウエハコンタクトの時間と、チップコンタクトの時間の合計が5秒であった。
【0058】
比較例1では、ウエハコンタクトの時間が0秒であり、チップコンタクトの時間が2秒であった。そのため、比較例1では、1ウエハに要したウエハコンタクトの時間(0秒)と、チップコンタクトの時間(2秒×1800チップ=3600秒)の合計が、約60分であった。
【0059】
比較例2では、ウエハコンタクトの時間が5秒であり、チップコンタクトの時間が0秒であった。そのため、比較例2では、1ウエハに要したウエハコンタクトの時間と、チップコンタクトの時間の合計が5秒であった。
【0060】
比較例3では、ウエハコンタクトの時間が0秒であり、チップコンタクトの時間が0秒であった。そのため、比較例3では、1ウエハに要したウエハコンタクトの時間と、チップコンタクトの時間の合計が0秒であった。
【0061】
<総合評価>
上述した接続性、ボイド及びUHPの評価のうち、全てがOKの場合をOKと評価し、それ以外をNGと評価した。結果を表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
比較例1では、工程(A)の後からウエハが個片化される前までに、アンダーフィルフィルムの最低溶融粘度が100000Pa・s未満になるように加熱する工程(D)を行わなかったため、UPH評価が良好ではなかった。比較例2では、工程(D)においてアンダーフィルフィルムの最低溶融粘度が100000Pa・s未満となるように加熱しなかったため、接続性が良好ではなかった。比較例3では、工程(D)を行わず、工程(C)でも保持時間を設けなかったため、ボイド排除性が良好ではなかった。
【0064】
実施例1~3では、工程(A)の後からウエハが個片化される前までに、アンダーフィルフィルムの最低溶融粘度が100000Pa・s未満になるように加熱したため、接続性、ボイド排除性、UPH評価がいずれも良好であった。
【符号の説明】
【0065】
1 アンダーフィルフィルム、2 ウエハ、3 治具、4 ブレード、5 半導体チップ、6 半導体、7 電極、8 ハンダ、9 硬化したアンダーフィルフィルム、10 ボトムチップ、11 基材、12 電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7