(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】カードリーダ及び異物検知方法
(51)【国際特許分類】
G06K 13/06 20060101AFI20220929BHJP
G06K 7/08 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G06K13/06 B
G06K7/08 040
(21)【出願番号】P 2018115613
(22)【出願日】2018-06-18
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 宗政
(72)【発明者】
【氏名】北澤 康博
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-174164(JP,A)
【文献】特開2006-085361(JP,A)
【文献】特開2016-110415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 13/06
G06K 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入口に挿入されたカードから磁気を検出するための磁気検出部と、前記挿入口から挿入された前記カードが搬送されるカード搬送路を含む本体部と、前記本体部に配置された、前記カードの挿入方向における前記カードの先端を検知するためのカード検知センサと、
前記カードの搬送方向における前記カード検知センサと前記挿入口の間に配置された、前記カードを搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラを駆動するモータと、前記モータの回転量を検出するエンコーダと、を有するカードリーダであって、
前記磁気検出部と前記カード検知センサは、前記挿入方向における前記カードの長さ未満の距離を空けて配置されており、
前記カード検知センサによって前記挿入口に挿入された挿入物の先端が検知された場合に、前記磁気検出部によって検出される磁気の監視を開始し、前記磁気検出部によって磁気が未検出となる期間における前記挿入物の移動距離が所定値以上となる場合に、前記カード以外の物体が挿入されたことを検知する制御部を備え
、
前記制御部は、前記挿入口に挿入された前記挿入物の先端が前記カード検知センサによって検知されてからの前記エンコーダの出力に基づいて、前記移動距離を求めるカードリーダ。
【請求項2】
請求項
1記載のカードリーダであって、
前記制御部は、前記カード検知センサによって前記挿入物の先端が検知された後に前記搬送ローラのトルクに異常が発生している場合には、前記異常が生じている期間を前記磁気が未検出となる期間から除外するカードリーダ。
【請求項3】
請求項1
又は2記載のカードリーダであって、
前記制御部は、前記挿入物が前記挿入口に挿入された状態にて前記磁気検出部により磁気が検出されない場合には、前記磁気の監視を行わないカードリーダ。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1項記載のカードリーダであって、
前記挿入口に挿入されたカードから金属を検出するための金属検出部を備え、
前記制御部は、前記カード検知センサによって前記挿入物の先端が検知された後、前記金属検出部の出力の監視を開始し、前記金属検出部によって金属が検出された場合に、前記カード以外の物体が挿入されたことを検知するカードリーダ。
【請求項5】
請求項
4記載のカードリーダであって、
前記制御部は、前記挿入物が前記挿入口に挿入された状態にて前記磁気検出部により磁気が検出された場合には、前記金属検出部の出力の前記監視を行わないカードリーダ。
【請求項6】
挿入口に挿入されたカードから磁気を検出するための磁気検出部と、前記挿入口から挿入された前記カードが搬送されるカード搬送路を含む本体部と、前記本体部に配置された、前記カードの挿入方向における前記カードの先端を検知するためのカード検知センサと、
前記カードの搬送方向における前記カード検知センサと前記挿入口の間に配置された、前記カードを搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラを駆動するモータと、前記モータの回転量を検出するエンコーダと、を有するカードリーダにおける異物検知方法であって、
前記磁気検出部と前記カード検知センサは、前記挿入方向における前記カードの長さ未満の距離を空けて配置されており、
前記カード検知センサによって前記挿入口に挿入された挿入物の先端が検知された場合に、前記磁気検出部によって検出される磁気の監視を開始し、前記磁気検出部によって磁気が未検出となる期間における前記挿入物の移動距離が所定値以上となる場合に、前記カード以外の物体が挿入されたことを検知
し、前記挿入口に挿入された前記挿入物の先端が前記カード検知センサによって検知されてからの前記エンコーダの出力に基づいて、前記移動距離を求める異物検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードに記録されたデータの読取やカードへのデータの記録を行うカードリーダに関する。また、本発明は、かかるカードリーダにおける異物検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カードに記録された磁気データの読取やカードへの磁気データの記録を行うカードリーダが広く利用されている。カードリーダが利用される金融機関等の業界では、犯罪者がカードリーダのカード挿入部に磁気ヘッドを取り付けて、この磁気ヘッドでカードの磁気データを不正に取得するいわゆるスキミングが大きな問題となっている。犯罪者によるスキミングの手口は年々巧妙化しており、カードリーダの内部に、カードの磁気データを読み取るためのスキミング用磁気ヘッド等のスキミング用の装置(以下、「インサートスキマー」と言う。)が取り付けられるといった事態が生じている。特許文献1には、カードリーダの内部にインサートスキマーが挿入されたことを検知する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インサートスキマーの挿入を検知する技術は、特許文献1に記載されているものに限らず、複数の技術を組み合わせて実施できるようにしておくことが防犯上有利である。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、特許文献1とは異なる方法にて、特定形状のインサートスキマー等の異物がカードリーダの内部に挿入されたことを検知することが可能なカードリーダ及び異物検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカードリーダは、挿入口に挿入されたカードから磁気を検出するための磁気検出部と、前記挿入口から挿入された前記カードが搬送されるカード搬送路を含む本体部と、前記本体部に配置された、前記カードの挿入方向における前記カードの先端を検知するためのカード検知センサと、前記カードの搬送方向における前記カード検知センサと前記挿入口の間に配置された、前記カードを搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラを駆動するモータと、前記モータの回転量を検出するエンコーダと、を有するカードリーダであって、前記磁気検出部と前記カード検知センサは、前記挿入方向における前記カードの長さ未満の距離を空けて配置されており、前記カード検知センサによって前記挿入口に挿入された挿入物の先端が検知された場合に、前記磁気検出部によって検出される磁気の監視を開始し、前記磁気検出部によって磁気が未検出となる期間における前記挿入物の移動距離が所定値以上となる場合に、前記カード以外の物体が挿入されたことを検知する制御部を備え、前記制御部は、前記挿入口に挿入された前記挿入物の先端が前記カード検知センサによって検知されてからの前記エンコーダの出力に基づいて、前記移動距離を求めるものである。
【0007】
本発明の異物検知方法は、挿入口に挿入されたカードから磁気を検出するための磁気検出部と、前記挿入口から挿入された前記カードが搬送されるカード搬送路を含む本体部と、前記本体部に配置された、前記カードの挿入方向における前記カードの先端を検知するためのカード検知センサと、前記カードの搬送方向における前記カード検知センサと前記挿入口の間に配置された、前記カードを搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラを駆動するモータと、前記モータの回転量を検出するエンコーダと、を有するカードリーダにおける異物検知方法であって、前記磁気検出部と前記カード検知センサは、前記挿入方向における前記カードの長さ未満の距離を空けて配置されており、前記カード検知センサによって前記挿入口に挿入された挿入物の先端が検知された場合に、前記磁気検出部によって検出される磁気の監視を開始し、前記磁気検出部によって磁気が未検出となる期間における前記挿入物の移動距離が所定値以上となる場合に、前記カード以外の物体が挿入されたことを検知し、前記挿入口に挿入された前記挿入物の先端が前記カード検知センサによって検知されてからの前記エンコーダの出力に基づいて、前記移動距離を求めるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特定形状のインサートスキマー等の異物がカードリーダの内部に挿入されたことを検知することが可能なカードリーダ及び異物検知方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のカードリーダの一実施形態であるカードリーダ1の構成を説明するための平面図である。
【
図2】
図1に示すカード挿入検知機構14の構成を説明するための正面図である。
【
図3】
図1に示すプリヘッド10、ICチップセンサ9、カード検知機構15aおよび搬送ローラ26の構成を説明するための側面図である。
【
図4】
図1に示すカードリーダ1が搭載される上位装置3およびカードリーダ1のブロック図である。
【
図5】(a)は、カードリーダ1の内部に挿入されると想定されるインサートスキマーの第一の構成例を示す図であり、(b)は、カードリーダ1の内部に挿入されると想定されるインサートスキマーの第二の構成例を示す図である。
【
図6】
図5(a)に示すインサートスキマー50がカードリーダ1の本体部6に挿入された状態を示す平面図である。
【
図7】挿入物(インサートスキマー50又はカード2)が挿入口4に挿入されてシャッタ部材13が開放位置になった状態を示す図である。
【
図8】
図7の状態から挿入物(インサートスキマー50又はカード2)が前後方向の奥側に更に押し込まれた状態を示す図である。
【
図9】
図8の状態から挿入物(インサートスキマー50又はカード2)が前後方向の奥側に移動した状態を示す図である。
【
図10】カードリーダ1の制御部17が第一の検知処理を行う場合の動作例の詳細を説明するためのフローチャートである。
【
図11】
図10に示すステップS8の強制排出処理を説明するためのフローチャートである。
【
図12】カードリーダ1の制御部17が第二の検知処理を行う場合の動作例の詳細を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(カードリーダの構成)
図1は、本発明のカードリーダの一実施形態であるカードリーダ1の構成を説明するための平面図である。
図2は、
図1に示すカード挿入検知機構14の構成を説明するための正面図である。
図3は、
図1に示すプリヘッド10、ICチップセンサ9、カード検知機構15aおよび搬送ローラ26の構成を説明するための側面図である。
図4は、
図1に示すカードリーダ1が搭載される上位装置3およびカードリーダ1のブロック図である。
【0011】
カードリーダ1は、カード2に記録されたデータの読取やカード2へのデータの記録を行うための装置であり、ATM(Automated Teller Machine)等の上位装置3(
図4参照)に搭載されて使用される。
図1に示すように、カードリーダ1は、カード2が挿入される挿入口4が形成されるカード挿入部5と、本体部6とを備えている。カードリーダ1の本体部6の内部には、挿入口4から挿入されたカード2が搬送されるカード搬送路7が形成されており、カードリーダ1は、カード搬送路7でカード2を搬送するカード搬送機構8(
図3参照)を備えている。
【0012】
カードリーダ1では、
図1等に示すX方向でカード2が搬送される。また、カード2は、
図1等のX1方向に挿入され、X2方向に排出される。すなわち、X1方向は、挿入口4へのカード2の挿入方向であり、X2方向は、挿入口4からのカード2の排出方向である。また、X方向に直交する
図1等のZ方向は、挿入口4に挿入されたカード2の厚さ方向であり、X方向とZ方向とに直交する
図1等のY方向は、カード2の幅方向である。以下の説明では、X方向を前後方向とし、Y方向を左右方向とし、Z方向を上下方向とする。また、前後方向のうちの、挿入口4が形成される側(X2方向側)を「手前」側とし、その反対側(X1方向側)を「奥(後ろ)」側とする。また、上下方向のうちの、一方側(Z1方向側)を「上」側とし、その反対側(Z2方向側)を「下」側とする。
【0013】
カード2は、例えば、厚さが0.7~0.8mm程度の長方形状の塩化ビニール製のカードである。また、カード2は、国際規格(ISO/IEC7811)やJIS規格(JISX6302)に準拠した磁気ストライプ付きの接触式ICカードである。
図1に示すように、カード2の裏面(下面)には、磁気データが記録される磁気ストライプ2aが形成されている。また、カード2には、ICチップが内蔵されており、カード2のおもて面(上面)には、ICチップの外部接続端子2bが形成されている。磁気ストライプ2aおよび外部接続端子2bは、国際規格やJIS規格で規定された所定の位置に形成されている。
【0014】
カードリーダ1は、磁気ストライプ2aに記録された磁気データの読取および磁気ストライプ2aへの磁気データの記録の少なくともいずれか一方を行う磁気ヘッド24(
図1参照)と、カード2の外部接続端子2bに接触する複数のIC接点バネ11を有するIC接点ブロック12とを本体部6の内部に備えている。
【0015】
また、カードリーダ1は、カード搬送路7を閉鎖するためのシャッタ部材13と、挿入口4にカード2が挿入されたことを検知するためのカード挿入検知機構14と、プリヘッド10と、ICチップセンサ9と、カード搬送路7におけるカード2の有無を検知するためのカード検知機構15a、15b、15c、15dと、カードリーダ1を制御する制御部17とを備えている。制御部17は、上位装置3の制御部である上位制御部18に接続されている(
図4参照)。
【0016】
カード挿入部5は、本体部6の前端に繋がっている。カード搬送路7は、
図3に示すように、カード搬送路7の上面を構成する上ガイド部材19と、カード搬送路7の下面を構成する下ガイド部材20とを備えている。上ガイド部材19および下ガイド部材20は、絶縁性を有する樹脂材料で形成されている。
図1に示すように、磁気ヘッド24およびIC接点ブロック12は、本体部6の内部に配置されている。磁気ヘッド24は、磁気ヘッド24のギャップ部がカード搬送路7に下側から臨むように配置されている。IC接点ブロック12は、磁気ヘッド24よりも奥側に配置されている。また、IC接点ブロック12は、上側からカード搬送路7に臨むように配置されている。磁気ヘッド24は、制御部17に電気的に接続されている(
図4参照)。なお、IC接点ブロック12は、磁気ヘッド24よりも手前(例えば、シャッタ部材13に近い方から数えて2つ目の搬送ローラ26と1つ目の搬送ローラ26の間)に配置される構成であってもよい。
【0017】
IC接点ブロック12には、IC接点バネ11がカード2の外部接続端子2bに接触可能な接触可能位置と、IC接点バネ11がカード2の外部接続端子2bに接触しないように退避する(具体的には、上側へ退避する)退避位置との間でIC接点ブロック12を移動させる移動機構21(
図4参照)が連結されている。移動機構21は、ソレノイド等の駆動源と、駆動源の動力をIC接点ブロック12に伝達するリンク機構等の動力伝達機構とを備えている。移動機構21は、制御部17に接続されている。具体的には、移動機構21の駆動源が制御部17に電気的に接続されている。IC接点バネ11は、制御部17に電気的に接続されている。制御部17は、IC接点バネ11に電流を供給する。移動機構21としては、例えば、国際公開第2018/61685号パンフレットに記載されている構造、国際公開第2016/158946号パンフレットに記載されている構造、又はカム溝を用いて移動させる構造等を用いることができる。
【0018】
カード挿入検知機構14は、挿入口4の奥側に配置されており、挿入口4に挿入されたカード2を検知する。カード挿入検知機構14は、挿入口4に挿入されたカード2の幅(左右方向の幅)を検知することで、挿入口4にカード2が挿入されたことを検知する幅検知機構である。このカード挿入検知機構14は、
図2に示すように、左右方向の両側のそれぞれに配置される2個のレバー部材22と、2個のセンサ23とを備えている。カード挿入検知機構14は、カード挿入部5の前端側部分に配置されている。また、カード挿入検知機構14は、制御部17に電気的に接続されている。具体的には、2個のセンサ23が制御部17に電気的に接続されている。センサ23は、互いに対向するように配置される発光部と受光部とを有する透過型の光学式センサである。このセンサ23は、発光部と受光部とが前後方向で対向するようにカード搬送路7の上側に配置されている。なお、
図1では、センサ23の図示を省略している。
【0019】
レバー部材22は、前後方向から見たときの形状が略L形状となるように形成されており、左右方向におけるカード搬送路7の両端側のそれぞれに配置されるカード接触部22aと、カード接触部22aの上端から左右方向の内側へ伸びる遮光部22bとから構成されている。このレバー部材22は、カード接触部22aと遮光部22bとの境界部分を回動の中心にするとともに前後方向を回動の軸方向とする回動が可能となるように、カード挿入部5のフレームに回動可能に保持されている。遮光部22bは、カード搬送路7の上側に配置されている。また、レバー部材22は、カード接触部22aの下端側がカード搬送路7の中に配置されるように、図示を省略するバネ部材によって付勢されている。
【0020】
挿入口4にカード2が挿入される前の待機時には、
図2の実線で示すように、カード接触部22aの下端側がカード搬送路7の中に配置されており、2個の遮光部22bのそれぞれは、センサ23の発光部と受光部との間を遮っている。このときには、カード挿入検知機構14は、オフ状態になっている。この状態で、短手方向の幅が所定の幅となっているカード2が挿入口4に挿入されると、
図2の二点鎖線で示すように、カード2の左右の両端が2個のカード接触部22aの下端側のそれぞれに接触して、センサ23の発光部と受光部との間から2個の遮光部22bのそれぞれが外れるまで、2本のレバー部材22が回動する。2個のセンサ23の発光部と受光部との間から2個の遮光部22bのそれぞれが外れると、カード挿入検知機構14は、オン状態になる。
【0021】
一方、挿入口4に挿入されたカード2の幅が所定の幅よりも狭くなっており、2個のセンサ23のうちの少なくともいずれか一方のセンサ23の発光部と受光部との間から遮光部22bが外れない場合には、カード挿入検知機構14は、オフ状態のままである。このように、カード挿入検知機構14は、挿入口4に挿入されたカード2の左右方向の幅が所定の幅である場合にオフ状態からオン状態に切り替わることで、カード2を検知する。なお、挿入口4にカード2が挿入される前の待機時に、2個の遮光部22bのそれぞれがセンサ23の発光部と受光部との間から外れていることで、カード挿入検知機構14がオフ状態になっていても良い。この場合には、所定の幅のカード2が挿入口4に挿入されて、センサ23の発光部と受光部との間が2個の遮光部22bのそれぞれに遮られると、カード挿入検知機構14がオン状態になる。カード挿入検知機構14の構成は、
図2に示したものには限定されない。例えば、カード接触部22aがカードの幅方向の一方側のみに配置され、他方はカードの搬送路の側面となっていいてもよい。この場合は、カード接触部22aとカードの搬送路の側面との距離が(カードの幅より僅かに狭い)所定の幅に設定されていることで、カードが挿入されると、その挿入が検出されることになる。
【0022】
シャッタ部材13は、カード挿入部5と本体部6との境界部分、言い換えると、カード挿入部5の奥端側部分に配置されている。シャッタ部材13には、シャッタ駆動機構25(
図4参照)が連結されている。シャッタ駆動機構25は、ソレノイド等の駆動源と、駆動源の動力をシャッタ部材13に伝達するリンク機構等の動力伝達機構とを備えている。シャッタ駆動機構25は、制御部17に接続されている。具体的には、シャッタ駆動機構25の駆動源が制御部17に電気的に接続されている。
【0023】
シャッタ部材13は、カード搬送路7を閉鎖する閉鎖位置(
図3の二点鎖線で示す位置)とカード搬送路7から退避してカード搬送路7を開放する開放位置(
図3の実線で示す位置)との間で移動可能となっている。
【0024】
プリヘッド10は、挿入口4から挿入されたカード2の磁気ストライプ2aに、規格で決められた所望の磁気データが記録されているのか否かを検知するための磁気ヘッドである。プリヘッド10は、カード挿入部5においてカード挿入検知機構14とシャッタ部材13の間に配置されており、挿入口4に挿入されたカード2の磁気ストライプ2aが形成されるべき位置から磁気を検出する。プリヘッド10は磁気検出部として機能する。プリヘッド10は、左右方向において、本体部6内の磁気ヘッド24とほぼ同じ位置に配置されている。
図3に示すように、プリヘッド10は、プリヘッド10のギャップ部が挿入口4に挿入されたカード2に対し下側から臨むように配置されている。
図1に示すように、プリヘッド10とカード検知機構15aとの間の前後方向の距離L1は、カードリーダ1が読み取り対象としている正規のカード2の前後方向の長さ未満となっている。
【0025】
ICチップセンサ9は、挿入口4から挿入されたカード2にICチップが搭載されているか否かを検知するためのセンサである。具体的には、ICチップセンサ9は、挿入口4から挿入されたカード2の外部接続端子2bに含まれる金属を検出する金属センサである。ICチップセンサ9は、カード挿入部5においてカード挿入検知機構14とシャッタ部材13の間に配置されており、挿入口4に挿入されたカード2の外部接続端子2bが形成されるべき位置から金属を検出する。ICチップセンサ9は金属検出部として機能する。ICチップセンサ9は、前後方向における位置がプリヘッド10と同じであり、左右方向において、本体部6内のIC接点ブロック12とほぼ同じ位置に配置されている。
図3に示すように、ICチップセンサ9は、挿入口4に挿入されたカード2に対し上側から臨むように配置されている。ICチップセンサ9とカード検知機構15aとの間の前後方向の距離L2は、上記の距離L1と同じとなっている。なお、距離L2は距離L1と同じでなくてもよい。距離L2の下限値は、カード2の前後方向の奥側の端部から外部接続端子2bの前後方向の手前側の端部までの距離よりも大きい値とされる。
【0026】
カード検知機構15a、15b、15c、15dは、本体部6の内部に配置されている。すなわち、カード検知機構15a、15b、15c、15dは、カード挿入検知機構14とプリヘッド10とICチップセンサ9よりも奥側に配置されている。また、カード検知機構15a、15b、15c、15dは、それぞれ前後方向にずれた状態で配置されている。カード検知機構15aよりも奥側にカード検知機構15bが配置され、カード検知機構15bよりも奥側にカード検知機構15cが配置され、カード検知機構15cよりも奥側にカード検知機構15dが配置されている。
図4に示すように、カード検知機構15a、15b、15c、15dは、制御部17に電気的に接続されている。また、
図3に示すように、カード検知機構15a、15b、15c、15dは、それぞれ、互いに対向するように配置される発光部15Aと受光部15Bとを有する透過型の光学式センサである。なお、
図3では、カード検知機構15b、15c、15dについては図示を省略している。
図3に示すように、発光部15Aと受光部15Bとは、上下方向でカード搬送路7を挟んだ状態で配置されている。
【0027】
発光部15Aと受光部15Bとの間にカード2がない場合には、受光部15Bは、発光部15Aからの光を受光している。このときには、カード検知機構15a、15b、15c、15dは、オフ状態になっている。この状態で、発光部15Aと受光部15Bとの間にカード2が入ると、発光部15Aから受光部15Bに向かう光が遮られて、カード検知機構15a、15b、15c、15dがオン状態になる。このように、カード検知機構15a、15b、15c、15dは、オフ状態からオン状態に切り替わることでカード2を検知する。カード検知機構15a、15b、15c、15dのうち、カード検知機構15aは、本体部6内において最も手前側に配置されるものであり、挿入口4に挿入されたカード2の前後方向の先端(方向X1の先端)を検出するためのカード検知センサを構成する。
【0028】
なお、カード検知機構15a、15b、15c、15dは、反射型の光学式センサであっても良い。この場合には、カード検知機構15a、15b、15c、15dの発光部からの光を受光部が受光していない場合に、カード検知機構15a、15b、15c、15dがオフ状態になり、カード検知機構15a、15b、15c、15dの発光部から射出されカード2で反射された光を受光部が受光すると、カード検知機構15a、15b、15c、15dがオン状態になる。
【0029】
図3に示すように、カード搬送機構8は、カード2に接触してカード搬送路7でカード2を搬送する3つの搬送ローラ26(
図1参照。
図3では最も手前側のもののみを図示)と、各搬送ローラ26を駆動するモータ28(
図4参照)と、モータ28の動力を各搬送ローラ26に伝達する動力伝達機構(図示省略)とを備えている。各搬送ローラ26は、本体部6の内部に配置されている。すなわち、搬送ローラ26は、カード挿入検知機構14よりも奥側に配置されている。
【0030】
図3に示すように、各搬送ローラ26には、パッドローラ29が対向配置されている。各搬送ローラ26とパッドローラ29とは上下方向で対向している。また、パッドローラ29は、搬送ローラ26に向かって付勢されており、カード2は、搬送ローラ26とパッドローラ29との間に挟まれた状態で搬送される。
【0031】
モータ28には、モータ28の回転を検知するためのエンコーダ30が取り付けられている(
図4参照)。本形態では、モータ28が停止している状態でも、搬送ローラ26を回転させることが可能になっており、モータ28が停止している状態で搬送ローラ26が回転すると、エンコーダ30でモータ28の回転が検知される。すなわち、モータ28が停止している状態で搬送ローラ26が回転すると、エンコーダ30で搬送ローラ26の回転が検知される。モータ28およびエンコーダ30は、制御部17に電気的に接続されている。
【0032】
(想定されるインサートスキマーの構成例)
図5(a)は、カードリーダ1の内部に挿入されると想定されるインサートスキマーの第一の構成例を示す図である。
図5(b)は、カードリーダ1の内部に挿入されると想定されるインサートスキマーの第二の構成例を示す図である。
図6は、
図5(a)に示すインサートスキマー50がカードリーダ1の本体部6に挿入された状態を示す平面図である。
【0033】
図5(a)、(b)に示すインサートスキマー50は、左右方向の幅がカード2の幅と略同じである長方形の平板状且つ導電性を有する導電性材料で形成された本体部を有している。具体的には、インサートスキマー50の本体部は、金属で形成されている。
図5(a)、(b)に示すインサートスキマー50の本体部には、カードリーダ1の本体部6内の最も手前側にある搬送ローラ26との接触を回避するための切欠き部50a又は開口部50dが形成されている。また、
図5(a)、(b)に示すインサートスキマー50の本体部には、カードリーダ1の本体部6にインサートスキマー50が取り付けられたときに、カード検知機構15aの発光部15Aから受光部15Bへ向かう光が遮られないように、貫通孔50bが形成されている。また、
図5(b)に示すインサートスキマー50の本体部には、カードリーダ1の本体部6にインサートスキマー50が取り付けられたときに、カード検知機構15bの発光部15Aから受光部15Bへ向かう光が遮られないように、切欠き部50cが形成されている。
図5(a)に示すインサートスキマー50は、切欠き部50aが大きく、搬送ローラ26と接触し得る本体部の面積が少ないため、手で押し込むことで本体部6に挿入される。
図5(b)に示すインサートスキマー50は、搬送ローラ26と接触し得る本体部の面積が多いため、挿入口4に挿入されると、搬送ローラ26によって搬送されることで、本体部6に挿入される。
【0034】
図5(a)、(b)に示すインサートスキマー50の本体部の前後方向の奥側の端部(先端)には、偽造の磁気ストライプ51が形成されており、この磁気ストライプ51の左隣には、正規のカード2の磁気ストライプから磁気情報を読み取るための磁気ヘッド52が形成されている。この磁気ストライプ51には、正規のカード2の磁気ストライプ2aの先端に記録されている情報と同じ情報が記録されている。インサートスキマー50の本体部における左右方向の磁気ストライプ51と同じ位置に貫通孔50bと磁気ヘッド52を形成しなければならないため、磁気ストライプ51の前後方向の長さは、正規のカード2の磁気ストライプ2aの前後方向の長さよりも十分に短くなっている。なお、磁気ヘッド52の位置は、例えば貫通孔50bの左側になることも想定される。また、貫通孔50bの前後方向の幅は、カード検知機構15aを確実に避けるためにある程度大きくなっていることが想定される。
【0035】
図4に示したカードリーダ1の制御部17は、カードリーダ1の全体を統括制御するものであり、具体的には、プログラムを実行して処理を行う各種のプロセッサと、RAM(Ramdom Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、を含む。各種のプロセッサとしては、プログラムを実行して各種処理を行う汎用的なプロセッサであるCPU(Central Prosessing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。これら各種のプロセッサの構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。制御部17は、各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ又はCPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。
【0036】
制御部17は、正規のカード2が挿入口4に挿入されてカード挿入検知機構14によりカード2の挿入が検知されると、プリヘッド10とICチップセンサ9を作動させる。そして、プリヘッド10によってカード2の磁気ストライプ2aの先端から所望の情報の読み取りが成功されるか、または、ICチップセンサ9によってICチップ(金属)の検出がなされると、制御部17は、シャッタ部材13を閉鎖位置から開放位置へ移動させる。これにより、カード2が本体部6の内部に取り込み可能な状態となる。
【0037】
また、制御部17は、
図5に示す磁気ストライプ51を持つインサートスキマー50が挿入口4に挿入されてカード挿入検知機構14によりインサートスキマー50の挿入が検知された場合も、プリヘッド10とICチップセンサ9を作動させる。そして、プリヘッド10によってインサートスキマー50の磁気ストライプ51から所望の情報の読み取りが成功されるか、またはICチップセンサ9によってインサートスキマー50の本体部の金属の検出がなされると、制御部17は、シャッタ部材13を閉鎖位置から開放位置へ移動させる。これにより、
図7に示すように、インサートスキマー50が本体部6の内部に挿入可能な状態となる。
図7において、シャッタ部材13は破線にて示されており、開放位置にあることを示している。
【0038】
制御部17は、
図7に示す状態の後、挿入物が
図5に示すようなインサートスキマー50であることを検知するための処理として、第一の検知処理と第二の検知処理とを行う。具体的には、制御部17は、
図7の状態から挿入物(インサートスキマー50又はカード2)がカード搬送路7に押し込まれて、最も手前側にあるカード検知機構15aによって挿入物(インサートスキマー50又はカード2)の先端が検知されると、第一の検知処理又は第二の検知処理を開始する。制御部17が第一の検知処理と第二の検知処理のどちらを行うかは、例えば上位装置3から設定可能である。
【0039】
(インサートスキマーの第一の検知処理)
図8は、
図7の状態から挿入物(インサートスキマー50又はカード2)が前後方向の奥側に更に押し込まれた状態を示す図である。制御部17は、
図8に示すようにカード状の挿入物(インサートスキマー50又はカード2)が押し込まれ、カード検知機構15aによって挿入物(インサートスキマー50又はカード2)の先端が検知された場合に、プリヘッド10によって検出される磁気の監視を開始する。そして、制御部17は、プリヘッド10によって磁気が未検出となる状態が続き、磁気が未検出となる状態が継続する期間における挿入物(インサートスキマー50又はカード2)の移動距離が所定値以上となる場合に、正規のカード2以外の物体(すなわちインサートスキマー50が)が挿入されたことを検知する。
【0040】
挿入物がカード2であった場合、カード検知機構15aによりカード2の先端が検知された時点では、カード2の磁気ストライプ2aの下方にプリヘッド10が位置する。そのため、この時点からカード2がX1方向に移動してカード挿入検知機構14がオフ状態になるまでの間は、プリヘッド10が磁気を連続して検出する。
【0041】
一方、挿入物がインサートスキマー50であった場合、カード検知機構15aによりインサートスキマー50の先端が検知された時点では、
図8に示すように、インサートスキマー50の貫通孔50bの下方にプリヘッド10が位置する。そのため、この時点からインサートスキマー50がX1方向に移動してカード挿入検知機構14がオフ状態になるまでの間は、プリヘッド10によって磁気が非検出となる。制御部17は、上記の時点からプリヘッド10によって磁気が非検出となっている期間における挿入物の移動距離を、搬送ローラ26を駆動するモータ28の回転を検出するエンコーダ30の出力から求め、この移動距離が予め決められた所定値以上となる場合に、挿入物がインサートスキマー50であると判定することができる。
【0042】
(インサートスキマーの第二の検知処理)
制御部17は、
図8に示すように挿入物(インサートスキマー50又はカード2)が押し込まれ、カード検知機構15aによって挿入物(インサートスキマー50又はカード2)の先端が検知された場合に、ICチップセンサ9の出力信号の監視を開始する。そして、制御部17は、ICチップセンサ9によって金属が検出された場合に、挿入物がインサートスキマー50であると判定し、正規のカード2以外の物体(すなわちインサートスキマー50)が挿入されたことを検知する。
【0043】
挿入物がカード2であった場合、カード検知機構15aによりカード2の先端が検知された時点では、ICチップセンサ9の下方を外部接続端子2bが既に通過した状態にある。そのため、この時点からカード2がX1方向に移動してカード2の取り込みが完了するまでの間は、ICチップセンサ9による金属の検出は行われない。
【0044】
一方、挿入物がインサートスキマー50であった場合、カード検知機構15aによりインサートスキマー50の先端が検知された時点では、
図8に示すように、インサートスキマー50の本体部の後端がICチップセンサ9の手前側に位置する。そのため、この時点からインサートスキマー50がX1方向に移動し、
図9に示すように、インサートスキマー50の本体部がICチップセンサ9の下方にくると、ICチップセンサ9によって金属が検出される。したがって、制御部17は、上記の時点からICチップセンサ9によって金属が検出された場合に、挿入物がインサートスキマー50であると判定することができる。
【0045】
(第一の検知処理の動作の具体例)
図10は、カードリーダ1の制御部17が第一の検知処理を行う場合の動作例の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0046】
制御部17は、カード検知機構15aによって挿入物(インサートスキマー50又はカード2)の先端が検知された場合に、プリヘッド10によって検出される磁気の監視を開始する。そして、制御部17は、プリヘッド10から信号が出力されると、この信号に基づいて磁気が検出されたか否かを判定する(ステップS1)。
【0047】
制御部17は、磁気が検出されたと判定した場合(ステップS1:YES)には、磁気検出有りの情報と、プリヘッド10から信号が出力された時刻と、を対応付けてRAMに記憶し、ステップS9に処理を移行する。ステップS9において、制御部17は、カード挿入検知機構14がオフ状態となって挿入物の取り込みが完了したか否かを判定し、取り込みが完了した場合(ステップS9:YES)には、第一の検知処理を終了し、取り込みが完了していない場合(ステップS9:NO)には、ステップS1に処理を戻す。
【0048】
制御部17は、ステップS1において磁気が検出されていないと判定した場合(ステップS1:NO)には、トルクリミット機能が有効となっているか否かを判定する(ステップS2)。
【0049】
トルクリミット機能とは、搬送ローラ26を駆動しているモータ28のトルクが通常の搬送に必要な値よりも大きくなりすぎた場合に、トルクが所定の値を超えないようにトルクに制限をかける機能を言う。カードリーダ1に挿入されたカード2にカードジャムが発生したり、カード2を使用者が掴んでカード2の搬送ができなくなったりした状態に、このトルクリミット機能が有効となる。トルクリミット機能が有効となっているかどうかの判定は、エンコーダ30の出力と電源電圧を監視することで行うことができる。
【0050】
制御部17は、ステップS2にてトルクリミット機能が有効になっていないと判定した場合(ステップS2:NO)には、磁気検出無しの情報と、プリヘッド10から信号が出力された時刻と、この時刻におけるエンコーダ30の検出パルス数と、を対応付けてRAMに記憶し、ステップS5に移行する。
【0051】
制御部17は、ステップS2にてトルクリミット機能が有効になっていると判定した場合(ステップS2:YES)には、トルクリミット機能が有効になったタイミングを判定し、このタイミングが第一の検知処理を開始する前であった場合(ステップS3:YES)には、磁気検出無しの情報と、プリヘッド10から信号が出力された時刻と、この時刻におけるエンコーダ30の検出パルス数と、を対応付けてRAMに記憶し、ステップS5に移行する。
【0052】
制御部17は、このタイミングが第一の検知処理を開始した後であった場合(ステップS3:NO)には、カードジャムやカード掴みによって磁気が検出できていない状態と判断し(ステップS4)、トルクリミット有りの情報と、磁気検出無しの情報と、プリヘッド10から信号が出力された時刻と、を対応付けてRAM記憶し、ステップS9に処理を移行する。
【0053】
ステップS5にて、制御部17は、RAMに記憶されている磁気検出無しの情報のうちの、トルクリミット有りの情報が対応付けられているものを除く磁気検出無しの情報を抽出する。そして、制御部17は、抽出した磁気検出無しの情報に対応するエンコーダ30の検出パルス数のうち、対応する時刻が連続するもの同士の差を距離に換算し、この距離の積算値を、磁気検出が無しの状態で挿入物が移動した距離Gapとして算出する(ステップS5)。
【0054】
そして、制御部17は、距離Gapが予め決められた閾値TH1(上述の所定値に相当)を超えているか否かを判定し(ステップS6)、距離Gapが閾値TH1以下であった場合(ステップS6:NO)には、ステップS9に処理を移行する。
【0055】
ステップS6の判定にて距離Gapが閾値TH1を超えていた場合(ステップS6:YES)には、制御部17は、挿入物がインサートスキマー50であると判断し(ステップS7)、インサートスキマー50の挿入を検知する。そして、制御部17は、インサートスキマー50をカード搬送路7から強制的に排出する強制排出処理を行う(ステップS8)。
【0056】
(強制排出処理の具体例)
図11は、
図10に示すステップS8の強制排出処理を説明するためのフローチャートである。まず、制御部17は、搬送ローラ26による挿入物の前後方向の奥側への搬送を停止し(ステップS31)、搬送ローラ26を逆回転させて挿入物を前後方向の手前側に搬送する排出搬送を開始する(ステップS32)。
【0057】
ステップS32の後、制御部17は、カード検知機構15aがオン状態となっているかどうか判定し(ステップS33)、オフ状態となっていた場合(ステップS33:NO)には、ステップS32の処理開始の時点からの経過時間が所定時間となるタイムアウトの状態か否かを判定する(ステップS34)。
【0058】
制御部17は、タイムアウトとなってない場合(ステップS34:NO)には、ステップS33に処理を戻す。制御部17は、タイムアウトとなった場合(ステップS34:YES)には、ステップS39にて、インサートスキマー50が挿入されたことを示すエラー情報をROMに記憶する。ステップS39の後、制御部17は、搬送ローラ26の駆動を停止する(ステップS40)。
【0059】
ステップS39の処理が行われると、ROMに記憶されたエラー情報が削除されるまでは、制御部17は、上位装置3からの要求に対してエラーを返し、カード2の取り込み動作は行わない。制御部17は、上位装置3からエラー解除要求を受けると、ROMに記憶されているエラー情報を削除し、通常の動作モードに戻る。
【0060】
ステップS33においてカード検知機構15aがオン状態となっていると判定された場合(ステップS33:YES)には、制御部17は、カード検知機構15aがオフ状態になったかどうか判定し(ステップS35)、オン状態が継続されている場合(ステップS35:NO)には、タイムアウトの状態か否かを判定する(ステップS36)。制御部17は、タイムアウトでない場合(ステップS36:NO)にはステップS35に処理を戻し、タイムアウトであった場合(ステップS36:YES)にはステップS39の処理を行う。
【0061】
ステップS35においてカード検知機構15aがオフ状態になっていると判定された場合(ステップS35:YES)には、制御部17は、カード挿入検知機構14がオン状態であるかどうかを判定し(ステップS37)、カード挿入検知機構14がオフ状態である場合(ステップS37:NO)には、タイムアウトの状態か否かを判定する(ステップS38)。制御部17は、タイムアウトでない場合(ステップS38:NO)にはステップS37に処理を戻し、タイムアウトであった場合(ステップS38:YES)にはステップS39の処理を行う。
【0062】
ステップS37にて、カード挿入検知機構14がオン状態であると判定された場合(ステップS37:YES)には、制御部17は、ステップS40にて搬送ローラ26の駆動を停止する。インサートスキマー50が
図5(b)に示すようなものであった場合には、ステップS37の判定がYESとなって、このインサートスキマー50が強制的に排出された状態となる。インサートスキマー50が
図5(a)に示すようなものであった場合には、ステップS34からステップS38のいずれかの判定がYESとなって、このインサートスキマー50が本体部6内部に収容された状態となる。
【0063】
(第二の検知処理の動作の具体例)
図12は、カードリーダ1の制御部17が第二の検知処理を行う場合の動作例の詳細を説明するためのフローチャートである。
図12において
図10と同じ処理には同一符号を付してある。
【0064】
制御部17は、カード検知機構15aによって挿入物(インサートスキマー50又はカード2)の先端が検知された場合に、ICチップセンサ9の出力の監視を開始する。そして、制御部17は、ICチップセンサ9によってサンプリングされた信号Snsを取得すると、この信号Snsに基づいて金属が検出されたか否かを判定する。
【0065】
具体的には、制御部17は、第二の検知処理が開始された後にICチップセンサ9から出力された過去の信号Snsの移動平均値SnsAvを取得し、この移動平均値SnsAvと、ステップS11にて取得した信号Snsとの差の絶対値を算出し、この絶対値が予め決められた閾値TH2を超える場合(ステップS12:YES)に、ICチップセンサ9によって金属が検出されたと判定して、挿入物がインサートスキマー50であると判断する(ステップS13)。ステップS13の後は、ステップS8にて、
図11に示した強制排出処理が開始される。
【0066】
制御部17は、上記の絶対値が閾値TH2以下の場合(ステップS12:NO)には、ICチップセンサ9によって金属が検出されていないと判定し、ステップS11で取得した信号Ssnを含めた過去の信号Snsの移動平均値SnsAvを算出する(ステップS15)。
【0067】
その後、制御部17は、カード挿入検知機構14がオフ状態となって挿入物の取り込みが完了したと判定した場合(ステップS16:YES)には、第二の検知処理を終了し、カード挿入検知機構14がオン状態のままで挿入物の取り込みが完了していないと判定した場合(ステップS16:NO)には、ステップS11に処理を戻す。
【0068】
(実施形態のカードリーダの効果)
カードリーダ1が行う第一の検知処理によれば、正規のカード2よりも前後方向の長さの短いダミーの磁気ストライプ51を先端に持つインサートスキマー50が挿入されることを想定すると、このインサートスキマー50の先端が本体部6内のカード検知機構15aによって検知された後は、インサートスキマー50の磁気ストライプ51が存在しない箇所に対してプリヘッド10による磁気検出が行われることになる。このため、プリヘッド10によって磁気が検出されない期間が長くなる場合に、インサートスキマー50が挿入されたと判断することができ、インサートスキマー50の挿入を検知することができる。
【0069】
カードリーダ1が行う第一の検知処理は、既存の製品に搭載されているプリヘッド10を利用してインサートスキマー50の挿入の検知を行うものであり、既存製品のファームウェアアップデートで対応することができるため、製品コストの上昇を防ぐことができる。
【0070】
また、カードリーダ1が行う第一の検知処理は、カード検知機構15aによって挿入物の先端が検知された後に、搬送ローラ26のトルクに異常が発生した場合(すなわちトルクリミット機能が有効となった場合)には、この異常が生じた時刻に対しては、トルクリミット有りの情報と磁気検出無しの情報が対応付けて記憶される。そして、
図10のステップS5にて距離Gapを算出する際には、この異常が生じた時刻に対応する磁気検出無しの情報(トルクリミット有りの情報が対応付けられた情報)は除外した上で、距離Gapの算出が行われる。このため、正規のカード2が挿入されており、このカード2から、カードジャム等によって磁気がうまく検出できない状態が連続して生じる場合であっても、このカード2がインサートスキマー50であると判断されるのを防ぐことができ、インサートスキマー50の挿入の検知を高精度に行うことができる。
【0071】
また、カードリーダ1が行う第二の検知処理によれば、ダミーの磁気ストライプ51を持たないインサートスキマーであっても、本体部に金属を用いたインサートスキマーであればこれを検知することができる。このため防犯効果を高めることができる。また、第二の検知処理は、既存の製品に搭載されているICチップセンサ9を利用してインサートスキマー50の挿入の検知を行うものであり、既存製品のファームウェアアップデートで対応することができるため、製品コストの上昇を防ぐことができる。
【0072】
(実施形態のカードリーダの変形例)
制御部17は、プリヘッド10によって磁気が未検出となる状態が続き、磁気が未検出となる状態が継続する期間の長さが閾値以上となる場合に、正規のカード2以外の物体(すなわちインサートスキマー50が)が挿入されたことを検知してもよい。
【0073】
カードリーダ1では、インサートスキマー50の検知を行うために、既存のプリヘッド10とICチップセンサ9を用いているが、この検知を行うための専用の磁気センサと金属センサをカード挿入部5に設ける構成であってもよい。
【0074】
制御部17は、第一の検知処理を行うよう上位装置3から設定されている場合には、カード挿入検知機構14により挿入物の挿入が検知された後、プリヘッド10によって磁気の検出がなされない場合に、第一の検知処理を行わないようにしてもよい。この場合には、制御部17は、カード挿入検知機構14により挿入物の挿入が検知された後、ICチップセンサ9によりICチップが検出された場合に、シャッタ部材13を開放位置に移動させればよい。この構成によれば、ICチップのみを搭載している、磁気ストライプを持たない正規のカード2が挿入された場合に、このカード2がインサートスキマー50として検知されてしまうのを防ぐことができる。
【0075】
制御部17は、第二の検知処理を行うよう上位装置3から設定されている場合には、カード挿入検知機構14により挿入物の挿入が検知された後、プリヘッド10によって磁気の検出がなされた場合に、第二の検知処理を行わないようにしてもよい。この場合には、制御部17は、カード挿入検知機構14により挿入物の挿入が検知された後、ICチップセンサ9により金属が検出された場合に、シャッタ部材13を開放位置に移動させればよい。この構成によれば、金属製の磁気カードや金属製アンテナを内蔵する非接触IC磁気カード等の正規のカードが挿入された場合に、これら正規のカードがインサートスキマー50として検知されてしまうのを防ぐことができる。
【0076】
制御部17は、第一の検知処理と第二の検知処理を並行して行ってもよい。この場合、制御部17は、第一の検知処理と第二の検知処理のいずれか一方にてインサートスキマー50の挿入を検知した場合に、
図11に示す強制排出処理を行えばよい。または、制御部17は、第一の検知処理と第二の検知処理の両方にてインサートスキマー50の挿入を検知した場合に、
図11に示す強制排出処理を行えばよい。これにより、インサートスキマー50の挿入検知の精度を高めることができる。
【0077】
カードリーダ1が、挿入口4の近傍に妨害磁界発生装置を有している場合もある。この場合には、制御部17が、第一の検知処理または第二の検知処理を行う際に、妨害磁界発生装置から磁界を間欠にて発生させるよう制御し、妨害磁界発生装置から磁界を発生させていない期間において、プリヘッド10による磁気の検出と、ICチップセンサ9による金属の検出とを行うようにするとよい。
【0078】
制御部17は、挿入物がインサートスキマー50であると判定した場合に、強制排出処理を行わず、エラー情報をROMに記憶して動作を終了させてもよい。この場合には、制御部17は上位装置3に対してインサートスキマー50が挿入されたことを通知する。そして、この通知を受けて、上位装置3の管理者がインサートスキマー50を取り除く等の対応を行えばよい。
【0079】
図10の動作例において、ステップS2、ステップS3、及びステップS4は必須ではなく省略してもよい。
【0080】
以上説明してきたように、本明細書には以下の事項が開示されている。
【0081】
(1)
挿入口に挿入されたカードから磁気を検出するための磁気検出部と、前記挿入口から挿入された前記カードが搬送されるカード搬送路を含む本体部と、前記本体部に配置された、前記カードの挿入方向における前記カードの先端を検知するためのカード検知センサと、を有するカードリーダであって、
前記磁気検出部と前記カード検知センサは、前記挿入方向における前記カードの長さ未満の距離を空けて配置されており、
前記カード検知センサによって前記挿入口に挿入された挿入物の先端が検知された場合に、前記磁気検出部によって検出される磁気の監視を開始し、前記磁気検出部によって磁気が未検出となる期間における前記挿入物の移動距離が所定値以上となる場合に、前記カード以外の物体が挿入されたことを検知する制御部を備えるカードリーダ。
【0082】
正規のカードよりも長さの短いダミーの磁気ストライプを先端部に持つインサートスキマーが挿入されることを想定する。(1)によれば、このインサートスキマーの先端が本体部内のカード検知センサによって検知された後は、インサートスキマーの磁気ストライプが存在しない箇所に対して磁気検出部による磁気検出が行われることになる。このため、磁気が未検出となる期間における挿入物の移動距離が大きい場合に、挿入物をインサートスキマーとして判断することができ、インサートスキマーの挿入を検知することができる。
【0083】
(2)
(1)記載のカードリーダであって、
前記カード搬送路で前記カードを搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラの回転量を検出するエンコーダと、を備え、
前記制御部は、前記エンコーダの出力に基づいて前記移動距離を求めるカードリーダ。
【0084】
(2)によれば、移動距離を正確且つ容易に求めることができる。
【0085】
(3)
(2)記載のカードリーダであって、
前記制御部は、前記カード検知センサによって前記挿入物の先端が検知された後に前記搬送ローラのトルクに異常が発生している場合には、前記異常が生じている期間を前記磁気が未検出となる期間から除外するカードリーダ。
【0086】
(3)によれば、カードジャムやユーザによるカード掴みの発生により、搬送ローラは回転しているにもかかわらずカードが移動しない場合であっても、カードジャムやカード掴みが発生している期間を除外して磁気が未検出となる期間を判定するため、正規のカードがインサートスキマーと判断される可能性を減らすことができる。
【0087】
(4)
(1)から(3)のいずれか1項記載のカードリーダであって、
前記制御部は、前記挿入物が前記挿入口に挿入された状態にて前記磁気検出部により磁気が検出されない場合には、前記磁気の監視を行わないカードリーダ。
【0088】
(4)によれば、ICチップのみを持つ正規のカードが挿入された場合に、このカードがインサートスキマーと判断されてしまうのを防ぐことができる。
【0089】
(5)
(1)から(4)のいずれか1項記載のカードリーダであって、
前記挿入口に挿入されたカードから金属を検出するための金属検出部を備え、
前記制御部は、前記カード検知センサによって前記挿入物の先端が検知された後、前記金属検出部の出力の監視を開始し、前記金属検出部によって金属が検出された場合に、前記カード以外の物体が挿入されたことを検知するカードリーダ。
【0090】
(5)によれば、ダミーの磁気ストライプを持たないインサートスキマーであっても、本体部に金属を用いたインサートスキマーであればこれを検知することができる。
【0091】
(6)
(5)記載のカードリーダであって、
前記制御部は、前記挿入物が前記挿入口に挿入された状態にて前記磁気検出部により磁気が検出された場合には、前記金属検出部の出力の前記監視を行わないカードリーダ。
【0092】
(6)によれば、金属製磁気カードや金属製アンテナを内蔵する非接触IC磁気カード等の正規のカードが挿入された場合に、このカードがインサートスキマーと判断されてしまうのを防ぐことができる。
【0093】
(7)
挿入口に挿入されたカードから磁気を検出するための磁気検出部と、前記挿入口から挿入された前記カードが搬送されるカード搬送路を含む本体部と、前記本体部に配置された、前記カードの挿入方向における前記カードの先端を検知するためのカード検知センサと、を有するカードリーダにおける異物検知方法であって、
前記磁気検出部と前記カード検知センサは、前記挿入方向における前記カードの長さ未満の距離を空けて配置されており、
前記カード検知センサによって前記挿入口に挿入された挿入物の先端が検知された場合に、前記磁気検出部によって検出される磁気の監視を開始し、前記磁気検出部によって磁気が未検出となる期間における前記挿入物の移動距離が所定値以上となる場合に、正規のカード以外の物体が挿入されたことを検知する異物検知方法。
【符号の説明】
【0094】
1 カードリーダ
2 カード
4 挿入口
6 本体部
7 カード搬送路
9 ICチップセンサ(金属検出部)
10 プリヘッド(磁気検出部)
15a カード検知機構(カード検知センサ)
17 制御部