(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】アクチュエータおよびカメラモジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20210101AFI20220929BHJP
G03B 5/00 20210101ALI20220929BHJP
H02K 33/18 20060101ALI20220929BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20220929BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G03B5/00 J
H02K33/18 A
H04N5/225 300
H04N5/232 480
(21)【出願番号】P 2018117990
(22)【出願日】2018-06-21
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 彰人
(72)【発明者】
【氏名】関本 芳宏
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-024938(JP,A)
【文献】特開2016-218400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
G03B 5/00
H04N 5/222-5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを第1軸の方向に位置決めするアクチュエータであって、
位置検出素子と、
前記第1軸と垂直な第2軸を長手方向として形成され、前記第2軸と平行な第1辺および第2辺、前記第1軸と平行な第3辺および第4辺を有するコイルと、
前記第1辺、前記第2辺それぞれに対して、前記第1軸および前記第2軸と垂直かつ反対向きの磁界を発生する永久磁石と、
を備え、
前記コイルと前記永久磁石が前記第1軸の方向に相対的に移動可能であり、
前記コイルは、少なくとも前記第3辺において、
内側コイルと外側コイルの二群からなる二重構造をなしており、
前記アクチュエータを前記第1軸および前記第2軸がなす平面に投影したときに、前記位置検出素子の磁気検出部は、前記第2軸の方向に関して、前記内側コイルと前記外側コイルの間に位置し、前記第1軸の方向に関して、前記第1辺と前記第2辺の間に位置することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
レンズを第1軸の方向に位置決めするアクチュエータであって、
位置検出素子と、
前記第1軸と垂直な第2軸を長手方向として形成され、前記第2軸と平行な第1辺および第2辺、前記第1軸と平行な第3辺および第4辺を有するコイルと、
前記第1辺、前記第2辺それぞれに対して、前記第1軸および前記第2軸と垂直かつ反対向きの磁界を発生する永久磁石と、
を備え、前記コイルと前記永久磁石が前記第1軸の方向に相対的に移動可能であり、
前記コイルは、少なくとも前記第3辺において、内側コイルと外側コイルの二群からなる二重構造をなしており、
前記位置検出素子は、前記内側コイルが発生する磁界の向きと前記外側コイルが発生する磁界の向きとが逆向きとなる領域に配置されることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
前記第3辺の幅は、前記第4辺の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1
または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記
内側コイルと前記外側コイルに含まれる巻き線あるいはコイルパターンの本数が異なることを特徴とする請求項
1から3のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記
外側コイルに含まれる巻き線あるいはコイルパターンの本数は、
前記内側コイルに含まれる巻き線あるいはコイルパターンの本数より少ないことを特徴とする請求項4に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記コイルは、
前記第3辺に加えて、前記第1辺、前記第2辺および前記第4辺においても、内側コイルと外側コイルの二群からなる二重構造をなしていることを特徴とする請求項
1から5のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記
内側コイルおよび前記外側コイルは、電気的に直列に接続されることを特徴とする請求項6に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記コイルは、
前記内側コイルおよび前記外側コイルそれぞれに、独立な電流を供給可能に構成されることを特徴とする請求項6に記載のアクチュエータ。
【請求項9】
前記コイルはパターンコイルであることを特徴とする請求項2から8のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項10】
前記コイルは巻き線コイルであることを特徴とする請求項2から8のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項11】
請求項1から
10のいずれかに記載のアクチュエータを備えることを特徴とするカメラモジュール。
【請求項12】
所定の方向に変位可能に支持される撮像レンズと、
コイルおよび永久磁石を含み、前記撮像レンズを位置決めするアクチュエータと、
前記撮像レンズの位置を磁気的に検出するための位置検出素子と、
を備え、
前記コイルは
少なくともその一辺において、内側コイルと外側コイルの二群からなる二重構造をなしており、
前記コイルの巻き軸方向から見て、前記位置検出素子の磁気検出部の中心が、前記内側コイルの内周エッジと外周エッジの中間位置と、前記外側コイルの内周エッジと外周エッジの中間位置との間に存在することを特徴とするカメラモジュール。
【請求項13】
所定の方向に変位可能に支持される撮像レンズと、
コイルおよび永久磁石を含み、前記撮像レンズを位置決めするアクチュエータと、
前記撮像レンズの位置を磁気的に検出するための位置検出素子と、
を備え、
前記コイルは少なくともその一辺において、内側コイルと外側コイルの二群からなる二重構造をなしており、
前記位置検出素子の磁気検出部の中心が、前記内側コイルが発生する磁界の向きと前記外側コイルが発生する磁界の向きとが逆向きとなる領域に配置されることを特徴とするカメラモジュール
。
【請求項14】
前記位置検出素子の位置
において、前記内側コイルが発生する磁界と前記外側コイルが発生する磁界がつり合うように、前記内側コイルと前記外側コイルのターン数比を決定することを特徴とする請求項
12または13に記載のカメラモジュール。
【請求項15】
前記内側コイルのターン数よりも、前記外側コイルのターン数
が少
ないことを特徴とする請求項
14に記載のカメラモジュール。
【請求項16】
前記内側コイルと外側コイルを並列接続とし、前記位置検出素子の位置
において、前記内側コイルが発生する磁界と前記外側コイルが発生する磁界がつり合うように、前記内側コイルに供給する電流値と前記外側コイルに供給する電流値との比を決定することを特徴とする請求項
12または13に記載のカメラモジュール。
【請求項17】
前記内側コイルに供給する電流値よりも、前記外側コイルに供給する電流値を小さくすることを特徴とする請求項
16に記載のカメラモジュール。
【請求項18】
前記コイルはパターンコイルであることを特徴とする請求項
12から17のいずれかに記載のカメラモジュール。
【請求項19】
前記コイルは前記永久磁石に対向して配置され、
前記位置検出素子は前記永久磁石に対向して配置されており、
前記永久磁石が駆動用と位置検出用を兼ねていることを特徴とする請求項
12から18のいずれかに記載のカメラモジュール。
【請求項20】
前記位置検出素子による位置検出信号を用いて、フィードバック制御によって前記撮像レンズの位置が制御されることを特徴とする請求項
12から19のいずれかに記載のカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気的な位置検出手段を利用したアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレット端末、コンピュータなどの多くの電子機器に、撮像機能が搭載されており、撮像機能は、撮像素子やレンズ、オートフォーカス機構などを統合したカメラモジュールと称されるモジュールにより提供される。
【0003】
カメラモジュールは、オートフォーカスや光学手ブレ補正(OIS:Optical Image Stabilization)のため、レンズ(あるいはレンズ群)を位置決めするためのアクチュエータを備える。
【0004】
図1は、アクチュエータ100の基本構成を示すブロック図である。アクチュエータ100は、ボイスコイルモータ(VCM)であり、コイル101および永久磁石110を備える。アクチュエータ100は、X軸方向に力を発生する。コイル101は、X軸と垂直なY軸に長手を有する。永久磁石110は、コイル101のY方向に伸びる2辺S1,S2それぞれに対して、逆向きの磁束密度Bを形成する。辺S1に含まれる1本の巻き線に着目すると、電流IがY軸正方向に流れ、Z軸正方向の磁束密度Bと作用することにより、巻き線と永久磁石110との間に、X軸正方向のローレンツ力が発生する。
F=BIL
永久磁石110が固定され、コイル101が移動可能なムービングコイル型の場合、コイル101がX軸方向に変位する。Lは辺S1,S2のY方向の長さである。辺S2に着目すると、電流IがY軸負方向に流れ、Z軸負方向の磁束密度Bと作用することにより、巻き線あたり、F=BILが発生する。
【0005】
近年、スマートフォンなどに搭載されるカメラモジュールにおいては、撮像レンズの位置(変位量)を検出して、この位置情報をフィードバックすることで、撮像レンズの位置を高精度かつ高速に制御する機能を取り入れるものが増加してきている。特に、光学手ブレ補正(OIS)としてフィードバック制御を取り入れることにより、高精度の手ブレ補正が可能となるため、暗い場所で、遠方の被写体をブレなく撮影したいという要求の高まりとともに、OISを採用したカメラは今後も増加していくであろう。
【0006】
また、オートフォーカス(AF)機能においても、フィードバック制御を取り入れることで、高速のフォーカス引き込みや焦点位置維持の高精度化を目指したカメラモジュールも増加しつつある。
【0007】
このようなフィードバック制御を用いるためには、上記のように撮像レンズの位置(変位量)を検出する必要がある。カメラモジュールでは磁気的な位置検出手段が採用される場合が多い。これは、光学的な位置検出手段を採用すると漏れた光が撮像素子に入射してゴーストとなる恐れがあること、撮像レンズを駆動するアクチュエータとして
図1のボイスコイルモータ(VCM)を用いた場合に、ここで用いられる駆動用の永久磁石110を磁気的な位置検出手段の一部として兼用できること、などが理由として挙げられる。
【0008】
VCMの駆動用磁石を位置検出手段として用いる場合、通常は磁石に対向して駆動用コイルが存在するということに注意を払う必要がある。ホール素子などの位置検出素子も磁石に対向して配置する必要があり、駆動用コイルが位置検出素子に近接して配置されることが想定される。一般的に知られるように、コイルに電流を印加すると磁界が発生し、この磁界による磁束が位置検出素子に入射する。このように、コイル起因の磁束が位置検出手段に入射すると、たとえ撮像レンズが変位していなくても電流の変化によって位置検出素子は位置検出信号の変化を出力してしまう。本明細書においてこれを磁気かぶりノイズと称することにする。このような磁気かぶりノイズは、本来の位置検出信号に対してノイズとなるため、撮像レンズの位置制御精度を悪化させる懸念がある。磁気かぶりノイズが極力小さくなるような位置に位置検出素子を配置することが望ましい。
【0009】
駆動用磁石に対向して配置される駆動用コイルと位置検出素子の位置関係として、さまざまな配置例が開示されている。たとえば、特許文献1には、駆動用コイルの巻き線の内側または外側に位置検出素子を配置した例が開示されている。また、特許文献2には、2つの駆動用コイルを並んで配置し、その中間に位置検出素子を配置した例が開示されている。
【0010】
図2(a)~(c)は、特許文献1および2に開示されている駆動用コイルと位置検出素子(ホール素子)との位置関係の概略図である。
【0011】
図2(a)は、特許文献1に開示されているように、コイル101の巻き線の内側にホール素子102を配置した例である。特許文献1では、コイルの巻き線の中央にホール素子が配置されているが、
図2(a)では、エッジ効果によってコイル101による磁束密度が最大となるコイル101の内側エッジ近傍にホール素子102を配置する例とした。
【0012】
図2(b)は、同じく特許文献1に開示されているように、コイル101の巻き線の外側にホール素子102を配置した例である。
【0013】
図2(c)は、特許文献2に開示されているように、2つ並んだコイル101の中間位置で、コイルの厚さ方向に若干ずれた位置にホール素子102を配置した例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2017-90887号公報
【文献】特開2013-24938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者らは、駆動用コイルと位置検出素子との位置関係について検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0016】
図3は、単一のコイルによる磁束密度の大きさの分布を示す等高線図である。コイル101の内側エッジ近傍および外側エッジ近傍における磁束密度の、コイル厚さ方向成分の大きさを示している。ここでは、コイルターン数を100ターンとし、1Aの電流を印加した場合の磁束密度を計算しており、各等高線の数字はそれをmT(ミリテスラ)単位で示している。また、破線は実線とは磁束の方向が上下逆向きになっていることを示している。図中のポイントP10は、
図2(a)におけるホール素子の検出部の位置を想定し、ポイントP20は、
図2(b)におけるホール素子の検出部の位置を想定している。
【0017】
図からもわかるように、P10やP20の位置にホール素子を配置したのでは、ホール素子位置でかなり大きな磁束密度になってしまうため、大きな磁気かぶりノイズがホール素子に漏れ込むことになる。このように、コイル厚さと同程度の位置にホール素子を配置する場合、コイルの巻き線の外側で、コイルから十分に引き離してホール素子を配置する必要がある。コイルの外側エッジの近傍にホール素子を配置したい場合は、コイルの厚さ方向に隔ててホール素子を配置する必要がある。コイルの巻き線の内側では、内側エッジ近傍よりも巻き中央付近の方が若干磁束密度は小さくなるものの、依然大きな値を示しており、巻き線の内側にホール素子を配置するのは避けるのが望ましい。以上のように、ホール素子を配置すべきでない位置が多々あり、配置の自由度が小さいというのが問題である。
【0018】
図4は、2つのコイルによる磁束密度の大きさの分布を示す等高線図である。2つのコイル101の中間位置近傍における磁束密度の、コイル厚さ方向成分の大きさを示している。ここでは、各コイルのターン数を100ターンずつ、印加電流を1Aとした場合の磁束密度を計算しており、等高線の数字はそれをmT(ミリテスラ)単位で示している。また、破線は実線とは磁束の方向が上下逆向きになっていることを示している。図中のポイントP30は2つのコイル101の中間位置を想定し、ポイントP40は、
図2(c)におけるホール素子の検出部の位置を想定している。
【0019】
図からもわかるように、P40の位置では磁束密度がほぼゼロであり、磁気かぶりノイズの問題は発生しないが、P30の位置ではホール素子位置でかなり大きな磁束密度になってしまうため、大きな磁気かぶりノイズがホール素子に漏れ込むことになる。カメラモジュールとしての厚さの制限等により、P30のような位置にホール素子を配置せざるをえない場合には、磁気かぶりノイズが問題となってしまう。以上のように、ホール素子を配置すべきでない位置がかなりの範囲で存在し、配置の自由度が小さいというのが問題である。
【0020】
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、磁気かぶりノイズを低減可能なアクチュエータの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明のある態様は、位置検出素子とともに用いられ、レンズを第1軸の方向に位置決めするアクチュエータに関する。アクチュエータは、第1軸と垂直な第2軸を長手方向として形成され、第2軸と平行な第1辺および第2辺、第1軸と平行な第3辺および第4辺を有するコイルと、第1辺、第2辺それぞれに対して、第1軸および第2軸と垂直かつ反対向きの磁界を発生する永久磁石と、を備える。使用において、位置検出素子は第3辺の近傍に配置され、コイルは、少なくとも第3辺において幅方向に複数の部分に分裂(split)している。
【0022】
本発明のある態様は、カメラモジュールに関する。カメラモジュールは、所定の方向に変位可能に支持される撮像レンズと、撮像レンズを駆動するためのコイルおよび永久磁石と、撮像レンズの位置を磁気的に検出するための位置検出素子と、を備えたカメラモジュールであって、コイルは内側コイルと外側コイルの二群からなる二重構造をなしていることを特徴としている。
【0023】
この態様によると、内側コイルが発生する磁界と外側コイルが発生する磁界とが打ち消しあう位置が存在し、位置検出素子を配置するのに好適な位置を創出することが可能となる。
【0024】
また、コイルと位置検出素子とが近接して配置され、コイルの巻き軸方向から見て、位置検出素子の磁気検出部の中心が、内側コイルの内周エッジと外周エッジの中間位置と、外側コイルの内周エッジと外周エッジの中間位置との間に存在してもよい。
【0025】
これにより、内側コイルが発生する磁界の向きと外側コイルが発生する磁界の向きとが逆向きとなる領域に位置検出素子を配置できるため、コイルへの通電により生成される磁束が位置検出素子に入射することによる磁気かぶりノイズが低減できる。
【0026】
また、位置検出素子の位置に対応して、内側コイルと外側コイルのターン数比を決定してもよい。
【0027】
これにより、位置検出素子の位置において、内側コイルが発生する磁界と外側コイルが発生する磁界が逆向きで、かつ大きさが同等となるようにすることが可能となり、コイルへの通電により生成される磁束が位置検出素子に入射することによる磁気かぶりノイズが低減できる。
【0028】
また、内側コイルのターン数よりも、外側コイルのターン数を少なくしてもよい。
【0029】
これにより、内側コイルが発生する磁界と外側コイルが発生する磁界とが打ち消しあう領域を、より外周側に寄せることが可能となり、磁気かぶりノイズが低減できる好適位置に位置検出素子を配置したときのコイルと位置検出素子の干渉を防ぐことが容易となる。
【0030】
また、内側コイルと外側コイルを並列接続とし、位置検出素子の位置に対応して、内側コイルに供給する電流値と外側コイルに供給する電流値との比を決定してもよい。
【0031】
これにより、位置検出素子の位置において、内側コイルが発生する磁界と外側コイルが発生する磁界が逆向きで、かつ大きさが同等となるようにすることが可能となり、コイルへの通電により生成される磁束が位置検出素子に入射することによる磁気かぶりノイズが低減できる。
【0032】
また、内側コイルに供給する電流値よりも、外側コイルに供給する電流値を小さくしてもよい。
【0033】
これにより、位置検出素子の位置において、内側コイルが発生する磁界と外側コイルが発生する磁界が逆向きで、かつ大きさが同等となるようにすることが可能となり、コイルへの通電により生成される磁束が位置検出素子に入射することによる磁気かぶりノイズが低減できる。
【0034】
また、コイルはパターンコイルであってもよい。
【0035】
これにより、二群構成の内側コイルと外側コイルとが、あらかじめパターン化されて形成されているため、別々に巻き線した内側コイルと外側コイルを個別に位置決めして実装するよりも、高精度でかつ容易に実装できる。
【0036】
また、コイルは永久磁石に対向して配置され、位置検出素子は永久磁石に対向して配置されており、永久磁石が駆動用と位置検出用を兼ねていてもよい。
【0037】
これにより、永久磁石が駆動用と位置検出用で兼用できるため、部品点数が削減できる。
【0038】
また、位置検出素子による位置検出信号を用いて、フィードバック制御によって撮像レンズの位置が制御されてもよい。
【0039】
これにより、磁気かぶりノイズが低減された状態の位置検出信号を用いてフィードバック制御を行うので、より高精度な撮像レンズの位置制御が実現できる。
【0040】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【0041】
さらに、この課題を解決するための手段の記載は、すべての欠くべからざる特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、コイルへの通電により発生する磁束が位置検出素子に入射して生じる磁気かぶりノイズを低減し、より高精度な撮像レンズの位置制御を実現したカメラモジュールを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図2】
図2(a)、(b)は、従来の駆動用コイルと位置検出素子との位置関係の概略を示す斜視図である。
【
図3】単一のコイルによる磁束密度の大きさの分布を示す等高線図である。
【
図4】2つのコイルによる磁束密度の大きさの分布を示す等高線図である。
【
図5】実施の形態に係るアクチュエータの基本構成を示す斜視図である。
【
図6】
図6(a)は、
図5のアクチュエータの第3辺の断面図であり、
図6(b)は、
図5のアクチュエータの投影図である。
【
図7】
図7(a)は、第1変形例に係るコイルの平面図であり、
図7(b)~(c)はその等価回路図である。
【
図11】実施の形態に係るカメラモジュールの概略構成を示す斜視図である。
【
図12】第1実施例に係るカメラモジュールの断面図である。
【
図14】
図13のコイル構成において、外側コイルのターン数比を50%としたときの磁束密度の大きさの分布を示す等高線図である。
【
図15】
図13のコイル構成において、外側コイルのターン数比を30%としたときの磁束密度の大きさの分布を示す等高線図である。
【
図16】
図13のコイル構成において、外側コイルのターン数比を10%としたときの磁束密度の大きさの分布を示す等高線図である。
【
図17】ポイントP1における磁束密度と、内側コイルと外側コイルのターン数比の関係を示す図である。
【
図18】外側コイルのターン数比が18%の場合における、ポイントP1とP2を結ぶ線分上での磁束密度の変化を示す図である。
【
図19】外側コイルのターン数比が100%の場合における、ポイントP1とP2を結ぶ線分上での磁束密度の変化を示す図である。
【
図20】外側コイルのターン数比が0%の場合における、ポイントP1とP2を結ぶ線分上での磁束密度の変化を示す図である。
【
図21】第2実施例に係るカメラモジュールの断面図である。
【
図23】
図23(a)~(c)は、ホール素子の配置例を示す図である。
【
図24】
図14から
図16におけるポイントP2の磁束密度と内側コイルと外側コイルのターン数比の関係を示す図である。
【
図25】
図14から
図16におけるポイントP3の磁束密度と、内側コイルと外側コイルのターン数比の関係を示す図である。
【
図26】
図14から
図16におけるポイントP4での磁束密度と、内側コイルと外側コイルのターン数比の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0045】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0046】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0047】
<アクチュエータ>
図5は、実施の形態に係るアクチュエータ200の基本構成を示す図である。アクチュエータ200は、コイル210および永久磁石230を備える。アクチュエータ200は、位置検出素子であるホール素子102とともに用いられ、対象物(不図示)を第1軸(X軸)の方向に位置決めする。なお位置検出素子はホール素子に限定されず、磁気抵抗素子を用いてもよい。
【0048】
コイル210は、第1軸(X軸)と垂直な第2軸(Y軸)を長手方向として形成される。コイル210は、第1辺S1~第4辺S4を有する。第1辺S1および第2辺S2は、第2軸(Y軸)と平行であり、第3辺S3および第4辺S4は、第1軸(X軸)と平行である。
【0049】
永久磁石230は、第1辺S1、第2辺S2それぞれに対して、第1軸(X軸)および第2軸(Y軸)と垂直かつ反対向き(すなわちZ軸正方向とZ軸負方向)の磁界を発生する。
【0050】
使用において、ホール素子102は第3辺S3の近傍に配置される。コイル210は、少なくとも第3辺S3において、幅方向(すなわちY軸方向)に複数の部分に分裂している。
図4では、第3辺S3が、2つの部分(第1部分212および第2部分214と称する)に分裂している。
【0051】
以上がアクチュエータ200の基本構成である。続いてその動作を説明する。
図6(a)は、
図5のアクチュエータ200の第3辺S3の断面図である。コイル210は巻き線コイルであり、第1部分212、第2部分214それぞれに含まれる巻き線には、紙面と直交する向きに電流が流れる。Y方向に着目すると、第1部分212より外側の領域A
1では、第1部分212が形成する磁界H
1と、第2部分214が形成する磁界H
2は強めあう。また第2部分214より内側の領域A
2においても、第1部分212が形成する磁界H
1と、第2部分214が形成する磁界H
2は強めあう。反対に、第3辺S3の幅Wに対応する領域A
3において、第1部分212が形成する磁界H
1と、第2部分214が形成する磁界H
2は打ち消しあう。したがって、領域A
3に含まれるように、より詳しくは合成磁界が極小となる箇所もしくはその近傍にホール素子102を配置することにより、磁気かぶりノイズの影響を低減することができる。ホール素子102の位置は、磁界に対して感度を有する部分(磁気検出部という)における合成磁界が小さくなるように配置すればよい。
【0052】
図6(b)は、
図5のアクチュエータ200の投影図である。アクチュエータ200の構成要素を第1軸(X軸)および第2軸(Y軸)がなす平面(XY平面)に投影したときに、ホール素子102の磁気検出部は、第2軸(Y軸)の方向に関して、第1部分212と第2部分214の間の領域A
3に位置する。また第1軸(X軸)の方向に関して、ホール素子102は第3辺S3の長さL
3の範囲に配置することができ、より好ましくは第3辺S3の長さの中心近傍に配置するとよい。
【0053】
図7(a)は、第1変形例に係るコイル210の平面図であり、
図7(b)~(c)はその等価回路図である。コイル210は、第1辺S1~第4辺S4のすべてにおいて、2つの部分に分割されている。すなわちコイル210は、外周コイル220と内周コイル222を含む。ホール素子102は、第3辺S3を形成する外周コイル220の部分212と、内周コイル222の部分214の間に配置することも可能である。
図7(b)に示すように外周コイル220と内周コイル222は電気的に直列に接続してもよい。この場合、それらに流れる電流は同じである。
【0054】
図7(b)に示すように外周コイル220と内周コイル222は電気的に直列に接続してもよい。この場合、それらに流れる駆動電流I
DRVは共通であり、ひとつのVCMドライバで駆動することが可能となる。この場合、第1部分212と第2部分214の距離、ホール素子102の位置、ならびに第1部分212と第2部分214それぞれに含まれる巻き線(あるいはコイルパターン)の本数(すなわち巻数)をパラメータとして、ホール素子102における合成磁界を低減させることができる。
【0055】
図7(c)に示すように、コイル210は、外周コイル220、内周コイル222それぞれに、独立な駆動電流I
DRV1,I
DRV2を供給可能に構成される。この場合、2つのVCMドライバが必要となるが、2つの駆動電流I
DRV1,I
DRV2をパラメータとして、ホール素子102における合成磁界を低減させることができる。
【0056】
図7(d)に示すように、外周コイル220と内周コイル222は、電気的に並列に接続してもよい。
【0057】
図8は、第2変形例に係るコイル210の平面図である。この変形例においてコイル210はパターンコイルとして形成される。
図8にはコイル210の1層のみを示すが、多層構造を有してもよい。
【0058】
図9は、第3変形例に係るコイル210の平面図である。上の説明では、コイル210が第3辺S3において2つの部分に分裂していたが、2または3以上の任意のN個(N≧2)の部分P
1~P
Nに分裂してもよい。この場合、複数の部分P
1~P
Nが形成する合成磁界がゼロとなる箇所に、ホール素子102を配置すればよく、あるいはホール素子102の位置において、合成磁界が最小となるように、複数の部分P
1~P
Nの間隔、それらの巻き線の本数などを最適化すればよい。
【0059】
図10は、第4変形例に係るコイル210の平面図である。上述のコイル210を別の観点から見ると、コイル210は、第3辺S3の幅W3が、それと対向する第4辺S4の幅W4よりも大きくなるように意図的に幅広に形成され、第3辺S3における幅方向(Y方向)の巻き線の分布を最適化することで、ホール素子102における合成磁界(磁束密度)を低減していると把握できる。この観点から、コイル210は第3辺S3において必ずしも複数の部分に分割される必要はなく、巻き線の密度が、外周側と内周側で異なっていてもよい。この変形例は、巻き線コイルでも実装できるが、パターンコイルを採用する場合に好適である。
【0060】
さらなる変形例として、
図7(a)のようにコイル210が複数のコイル220,222に分割される場合、あるコイルを巻き線コイルで形成し、別のコイルをパターンコイルで形成してもよい。
【0061】
<カメラモジュール>
続いて上述のアクチュエータ200を組み込んだカメラモジュール1について説明する。アクチュエータ200は、レンズの位置決めに利用される。
図11は、本発明の実施の形態に係るカメラモジュール1の概略構成を示す斜視図である。カメラモジュール1は、デジタルカメラやデジタルビデオカメラ、スマートフォンやタブレット端末に内蔵され、写真やビデオ撮影に利用される。カメラモジュール1は、AF機能とOIS機能を有するものとして説明するが、これに限定される訳ではなく、AF機能のみであってもかまわない。また、位置検出素子はOIS用として配置されることで説明するが、AF用に配置されたものでもかまわない。位置検出素子は、カメラモジュール用途ではホール素子が広く用いられているため、ホール素子として説明するが、これに限定される訳ではなく、MR素子、GMR素子のような磁気抵抗素子であってもかまわない。
【0062】
カメラモジュール1は、撮像レンズ2、撮像レンズ2を駆動するためのアクチュエータ3、撮像素子(
図12、
図21にて説明)を実装するモジュール基板4、モジュール基板4上で撮像素子をカバーし、上にアクチュエータ3を搭載するセンサーカバー5、モジュール基板4上に実装され、アクチュエータ3を駆動するアクチュエータドライバ6、手ぶれの角速度を検出するジャイロセンサ7、などから構成されている。ジャイロセンサ7は、スマートフォンなどの本体側に実装されたものを手ぶれ検出用途で用いる場合もあり、このような場合にはモジュール基板4側には無くてもよい。
【0063】
アクチュエータ3は、撮像レンズ2をその光軸方向(図のZ軸方向)に駆動してオートフォーカス動作をおこない、光軸に垂直な方向(図のX軸、Y軸方向)に駆動して手ぶれ補正動作をおこなう。このとき、撮像レンズ2の位置を検出し、この信号をフィードバックして位置制御すると、撮像レンズを高精度に位置決めできる。本実施の形態では、位置検出のための位置検出素子を備えており、その詳細な構成は後述する。
【0064】
アクチュエータドライバ6は、ひとつの半導体基板に集積化された機能ICである。ここでの「集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。アクチュエータドライバ6は、ジャイロセンサ7による位置指令信号にしたがって、撮像レンズ2が所定の位置となるように、位置検出信号をフィードバックして制御する。
【0065】
撮像レンズ2の位置を検出して、これをフィードバックして位置制御に用いることにより、ステップ応答における過渡振動を抑えて収束を速めたり、目標位置への位置決め精度を高めたり、外乱振動を受けた場合にも所定の位置に保持したりできる。
【0066】
以下では、コイルとホール素子の配置とその影響について、第1実施例および第2実施例を参照して説明する。
【0067】
<第1実施例>
第1実施例について、
図12から
図20を参照して説明する。まずは、
図12を用いて、カメラモジュール全体の構成を説明する。
図12は、第1実施例に係るカメラモジュールの断面図であり、
図11のA-A断面図である。
【0068】
撮像レンズ2は、レンズバレル8と、複数のレンズ玉9を備える。レンズ玉9は、図では3枚として例示しているが、もっと少なくても、もっと多くてもかまわない。
【0069】
アクチュエータ3は、レンズホルダー10、AF板バネ11、AFコイル12、永久磁石13、マグネットホルダー14、サスペンションワイヤー15、フレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuits)16、OISコイル17、ホール素子18、ベース19、カバー20、などを備える。ホール素子18は、図示したものがX方向の位置検出用だとすると、図示されない位置にY方向の位置検出用として別のホール素子が存在する。
【0070】
また、ホール素子18は、本実施の形態ではアクチュエータ3内のFPC16に実装されているが、アクチュエータ3外で、センサーカバー5上やモジュール基板4上に実装してもよい。
【0071】
レンズホルダー10は撮像レンズ2を保持している。レンズホルダー10とレンズバレル8は、撮像レンズ2の高さ調整後に接着される。レンズホルダー10の外周面にはAFコイル12が巻回されている。AFコイル12に対向して、マグネットホルダー14に永久磁石13が固定されており、AFコイル12に通電することで永久磁石13との間で電磁力(ローレンツ力)が作用し、AFコイル12は光軸方向(Z軸方向)に力を受ける。レンズホルダー10は上下2枚のAF板バネ11により、マグネットホルダー14に対して光軸方向に可動に支持されており、撮像レンズ2、レンズホルダー10、AFコイル12などでAF可動部30が形成される。
【0072】
AF板バネ11の上側バネの一部はマグネットホルダー14の外側まで突出しており、この突出部とサスペンションワイヤー15の上端とが連結されている。サスペンションワイヤー15の下端はFPC16に連結されており、AFコイル12の端子はAF板バネ11(上側)、サスペンションワイヤー15を通じてFPC16に電気的に接続される。サスペンションワイヤー15はマグネットホルダー14を光軸に垂直な方向に可動に支持しており、マグネットホルダー14、永久磁石13、AF可動部30などでOIS可動部40が形成される。
【0073】
FPC16上には、永久磁石13に対向してOISコイル17が設置される。OISコイル17と永久磁石13のペアは、アクチュエータ(VCM)を形成する。OISコイル17に通電することで永久磁石13との間で電磁力(ローレンツ力)が作用し、OISコイル17は光軸と垂直方向(X軸方向)に力を受けるが、OISコイル17はFPC16に固定されているため、反作用で永久磁石13が光軸と垂直方向の力を受ける。
【0074】
FPC16上には、同じく永久磁石13に対向してホール素子18が設置される。ホール素子18は、永久磁石13がX軸方向に変位することによる磁束(図のZ軸方向成分)の変化を検出し、これにより位置検出がなされる。OISコイルの構成、ホール素子との位置関係の詳細は後述する。本実施例では、OISコイル17とホール素子18はFPC16の同一面側に実装されている。
【0075】
なお、X軸用のOISコイル17と永久磁石13からなるアクチュエータは、レンズバレル8を挟んで反対側にも設けられる。さらに、カメラモジュール1は、Y軸方向のOIS用のアクチュエータを備えるがそれらは図示されない。Y軸用のアクチュエータは、紙面手前側と奥側に設けられる。OISに関連して設けられる複数のアクチュエータが、上述したアクチュエータ200のアーキテクチャを用いて構成される。
【0076】
永久磁石13はAFの駆動用、OISの駆動用、およびOISの位置検出用の3役を兼ねている。このように駆動用と位置検出用で永久磁石を兼用することで部品点数が削減される。
【0077】
FPC16はベース19上に貼り付けられている。カバー20は、天面に光路確保のための穴があけられており、アクチュエータ全体をカバーしている。OIS可動部40に永久磁石13が存在しているため、カバー20の材質は非磁性の金属(たとえば洋白などの銅合金)が望ましい。
【0078】
モジュール基板4上には撮像素子21が実装されており、撮像素子21を覆うようにセンサーカバー5が設けられている。センサーカバー5の中央部には穴があいており、この穴をふさぐようにIRカットガラス22が設けられている。IRカットガラス22は、薄いガラス板の表面にIRカット膜が形成されており、撮像レンズ2を通して入射した光の赤外成分をカットして、撮像素子21に入射させる。
【0079】
続いて、
図13を用いてOISコイル17の構成、ホール素子18との位置関係について説明する。
図13は、
図12における外側コイル、内側コイル、位置検出素子を抜き出した要素部品の斜視図である。
【0080】
本実施例ではFPC16の同一面側にOISコイル17とホール素子18が実装されているため、両者は同程度の高さに配置される。OISコイル17は二群で構成され、外側コイル17aと内側コイル17bを含む。それぞれのコイル17a,17bに電流を印加したとき、外側コイル17aが発する磁界の向きと内側コイル17bが発する磁界の向きとが逆向きとなる位置にホール素子18は配置される。電流は、それぞれのコイルで同じ向きに回るように流す。すると、コイルの巻きの内側を通る磁界は同じ向きとなるが、内側コイル17bの巻きの外側では磁界が逆向きに回りこむため、外側コイル17aの内側を通る磁界とは逆向きとなる。このように、磁界が逆向きになる位置にホール素子18を配置することで、ホール素子を通過する磁束密度を低下させることができ、磁気かぶりノイズを低減できる。
【0081】
ホール素子を通過する磁束密度をほぼゼロに近づけるためには、磁界の向きを逆向きにするだけでなく、大きさもほぼ一致させるとよい。磁界(磁束密度)の大きさは印加する電流の大きさとコイルのターン数に比例するので、ホール素子18の位置で磁界(磁束密度)が実質的に等しくなるように(向きは逆)外側コイル17aと内側コイル17bの電流やターン数の配分を調節すればよい。外側コイル17aと内側コイル17bとが電気的に直列接続されている場合は(
図7(b))、電流値の配分を変えるのは難しいので、この場合はターン数で調節するとよい。外側コイル17aと内側コイル17bが電気的に並列接続されている場合(
図7(c))、電流値で調節してもよい。
【0082】
続いて、外側コイル17aと内側コイル17bのターン数の配分を変えたときの磁束密度変化について
図14~
図20を用いて説明する。
【0083】
図14~
図16には、外側コイル17aと内側コイル17bのそれぞれに電流を印加したときの、
図13の2点鎖線で囲まれた領域23の磁束密度のZ軸方向の成分の大きさ分布のシミュレーション結果が示される。
図14~
図16では、外側コイル17aと内側コイル17bのターン数の配分が異なっており、
図14は外側コイル17aの比率が50%の場合、
図15は同30%の場合、
図16は同10%の場合である。図中の曲線は、Z軸方向の磁束密度の大きさが等しくなる等高線を示しており、等高線に沿って書かれている数字は磁束密度の大きさをmT(ミリテスラ)単位で表したものである。また、等高線の破線は、実線とは磁界の方向が逆向きになっていることを示している。なお、磁束密度の数値は、各コイルに電流1Aを流し、両コイルの合計ターン数を100ターンとしたときのもので、一例にすぎない。
【0084】
図14の結果を見ると、コイルターン数が50:50という同一条件では、コイルの巻きの内側の磁束密度に比べて、コイルの巻きの外側の磁束密度が小さく、磁束密度の大きさが釣り合うのは、内側コイル17bの外側エッジ近傍となり、この部分にピンポイントで磁束密度がゼロ近くになる領域が存在する。しかしながら、この位置では内側コイル17bと干渉してしまうため、ホール素子を配置することができない。
【0085】
図15の結果を見ると、外側コイル17aによる磁束密度を低下させることで、打ち消しあって磁束密度がゼロ近くになる領域が左にシフトしているのがわかる。また、コイルの厚さ方向にも磁束密度小の領域が広がっている。
【0086】
図16の結果を見ると、外側コイル17aのターン数比が10%となり、打ち消しあって磁束密度がゼロ近くになる領域がさらに左にシフトし、コイルの厚さ方向にも磁束密度小の領域がさらに広がっている。
【0087】
このように、コイルターン数によって外側コイル17aと内側コイル17bの磁束密度の大きさをバランスさせることにより、磁束密度がゼロ近くになる領域の位置をコントロールできる。ホール素子の配置できる位置は、カメラモジュールの構造によってある程度の制限を受けるため、ホール素子の位置を決めたら、その位置の磁束密度が小さくなるようにコイルターン数の配分を設定すればよい。
【0088】
図14~
図16では、特定のモニターポイントをP1~P4で示している。P1は、コイル厚さの中央で、かつ外側コイル17aの内側エッジと内側コイル17bの外側エッジのちょうど中間の位置である。P2は、内側エッジと外側エッジの中間であるという点ではP1と同じで、コイル厚さ方向に一定距離隔てた位置となる。第2実施例として後述するが、FPC16の裏面側にホール素子を配置した場合は、このようにコイル厚さ方向に一定距離隔てた位置にホール素子の磁気検出部がくる。P3、P4は、コイル厚さ方向の距離がP2と同じで、左右の位置がシフトした位置である。P3は内側コイル17bの外側エッジと内側エッジの中間位置、P4は外側コイル17aの外側エッジと内側エッジの中間位置である。
【0089】
図17は、ポイントP1の位置におけるターン数比と磁束密度との関係を示す図である。パッケージ内の磁気検出部の位置によって、多少はコイル厚さ方向に位置がシフトする可能性はある。
図17の結果より、外側コイルのターン数の割合が増加するにつれて磁束密度が大きくなり、比率18%で磁束密度がゼロとなる。
【0090】
上記のように、ホール素子のパッケージ内の磁気検出部の位置が仕様によって多少異なる可能性があるため、コイル厚さ方向(Z軸方向)の磁束密度分布も確認した。外側コイルのターン数の割合は
図17で最適条件として求められた18%とした。
図18は、外側コイルのターン数比が18%の場合における、ポイントP1とP2を結ぶ線分上での磁束密度の変化を示す図である。横軸の0がP1の位置となる。この結果からわかるように、当然ながらP1の位置では磁束密度がゼロとなるが、そこからZ軸方向に位置がずれても、磁束密度の変化は小さく、磁気かぶりノイズを低減できる領域がピンポイントではなく、かなり広がっていることがわかる。
【0091】
図19は、外側コイルのターン数比が100%の場合における、ポイントP1とP2を結ぶ線分上での磁束密度の変化を示す図である。これは、
図11(a)のように、コイル巻きの内側にホール素子が存在するようなケースに相当する。
図20は、外側コイルのターン数比が0%の場合における、ポイントP1とP2を結ぶ線分上での磁束密度の変化を示す図である。これは
図11(b)のように、コイル巻きの外側にホール素子が存在するようなケースに相当する。
図19、
図20では、
図18と同じように横軸、縦軸がとられる。
【0092】
図19、
図20からわかるように、P1の位置でも(横軸0の位置)非常に大きな磁束密度の領域となっている。単一のコイルに隣接してホール素子を配置する従来例では、磁気かぶりノイズの影響を無視できない。
【0093】
なお、二群のコイルは別々に線材を巻いて形成したものを組み合わせて配置してもよいが、このような構成では外側コイルと内側コイルの実装時の位置合わせが面倒になるので、パターンコイルを用いた方が組立は容易である。パターンコイルは、コイル状のパターンをエッチング等によって形成するので、パターンの状態で二重構造にしておくことで、FPC16への実装時に外側コイルと内側コイルの位置合わせは不要となる。
【0094】
<第2実施例>
本発明の第2実施例について、
図21~
図26を用いて説明する。
図21は、第2実施例に係るカメラモジュールの断面図であり、
図11のA-A断面図である。
【0095】
まずは、
図21を用いて、カメラモジュール全体の構成を説明するが、ほとんどの部分で
図12のカメラモジュールと同じであるため、詳細な説明は省略する。
図21のカメラモジュールが
図12のカメラモジュールと異なるのは、OISコイル17とホール素子18がFPC16の反対側の面に実装されているという点である。上記のように、本実施例ではFPC16の反対面側にOISコイル17とホール素子18が実装されているため、両者はコイルの厚さ方向にある程度隔てて配置される。FPC16の裏面側に実装されたホール素子18の逃げのため、ベース19には掘り込み穴19aが設けられている。
【0096】
続いて、
図22を用いてOISコイル17の構成、ホール素子18との位置関係について説明する。
図22は、
図21における外側コイル、内側コイル、位置検出素子を抜き出した要素部品斜視図である。
【0097】
OISコイル17は第1実施例と同様、二群で構成され、外側コイル17aと内側コイル17bからなる。それぞれのコイルに電流を印加したとき、外側コイル17aが発する磁界の向きと内側コイル17bが発する磁界の向きとが逆向きとなる位置にホール素子18を配置する点も同じである。ホール素子18は、コイルの厚さ方向(Z軸方向)にずれた位置に配置されている。磁界が逆向きになる位置にホール素子18を配置することで、ホール素子を通過する磁束密度を低下させることができ、磁気かぶりノイズを低減できる。ホール素子を通過する磁束密度をほぼゼロに近づけるために、外側コイル17aと内側コイル17bの電流やターン数の配分を調節する点も第1実施例と共通である。
【0098】
本実施例では、FPC16の裏面側にホール素子18を実装しているため、OISコイル17と干渉することなく、X方向、Y方向の位置をある程度自由に設定できる。続いてホール素子18の配置例を説明する。
【0099】
図23(a)~(c)は、ホール素子の配置例を示す図であり、
図22におけるB-B断面図を表す。
図23(a)は、
図14~
図16におけるP2の位置に相当し、外側コイル17aと内側コイル17bの隙間の中間位置にホール素子18が配置されている。
【0100】
図23(b)は、
図14~
図16におけるP3の位置に相当し、内側コイル17bの外側エッジと内側エッジの中間位置にホール素子18が配置されている。これよりもさらに内側にホール素子18を配置してしまうと、外側コイル17aからの磁界も内側コイル17bからの磁界も同じ向きになってしまい、打ち消しあうどころか強め合うため、この位置が二重コイル構造として意味のある限界位置となる。
【0101】
図23(c)は、
図14~
図16におけるP4の位置に相当し、外側コイル17aの外側エッジと内側エッジの中間位置にホール素子18が配置されている。これよりもさらに外側にホール素子18を配置してしまうと、外側コイル17aからの磁界も内側コイル17bからの磁界も同じ向きになってしまい、打ち消しあうどころか強め合うため、この位置が二重コイル構造として意味のある限界位置となる。
【0102】
ポイントP2の位置におけるターン数比と磁束密度との関係を説明する。
図24は、
図14~
図16におけるポイントP2の磁束密度と、内側コイルと外側コイルのターン数比の関係を示す図である。
図24の結果より、外側コイルのターン数の割合が増加するにつれて磁束密度が大きくなり、比率4%で磁束密度がゼロとなる。
【0103】
図25は、
図14~
図16におけるポイントP3での磁束密度と、内側コイルと外側コイルのターン数比の関係を示す図である。
図25の結果より、ターン数比率を変化させても磁束密度はゼロにはならない。どうしてもこの位置にホール素子を配置しなければならない場合は、なるべく外側コイルのターン数比を小さく(究極は0)することが望ましい。
【0104】
ポイントP4の位置におけるターン数比と磁束密度との関係を説明する。
図26は
図14~
図16におけるポイントP4での磁束密度と、内側コイルと外側コイルのターン数比の関係を示す図である。
図26の結果より、外側コイルのターン数の割合が増加するにつれて磁束密度が大きくなり、比率12%で磁束密度がゼロとなる。
【0105】
なお、第2実施例のように、FPC16の裏面側にホール素子を配置した場合、表面側に配置した場合と比べて永久磁石からの距離は遠くなるため、本来の信号としての位置検出感度は低下してしまう。その代わり、コイルとの距離も離れるため、磁気かぶりノイズも低減しやすい。S/N比としてのトータル性能や、コイルとホール素子の配置スペースの関係などから、第1実施例のような構成あるいは第2実施例のような構成のどちらかを選択すればよい。さらには、選択肢はこの2つだけではなく、前述のようにセンサーカバー上やモジュール基板上にホール素子を配置してもかまわない。
【0106】
以上のようなカメラモジュールは、スマートフォンなどの携帯機器などに用いられる。特に、本発明のカメラモジュールの好適な応用のひとつは、光学手ぶれ補正(OIS)機能やオートフォーカス(AF)機能を備え、可動部の位置検出信号を用いてフィードバック制御を行う装置である。本発明を利用することで、コイルへの通電によって生じる磁気かぶりノイズを低減し、高精度のレンズ位置制御を可能とし、手振れ補正の補正精度を高めたり、オートフォーカスの引き込み時間を短縮したりすることが可能なカメラモジュールを実現できる。
【0107】
上述のカメラモジュール1では、AFのアクチュエータとしてムービングコイル型、OIS用のアクチュエータとしてムービングマグネット型を説明したがその限りでない。AF用のアクチュエータをムービングマグネット型で構成してもよいし、OIS用のアクチュエータを、ムービングコイル型で構成してよい。
図12等では、OISコイル17のコイル面はZ軸と垂直であったがその限りでなく、特許文献1の第8図に示されるような別のレイアウトを採用してもよい。
【符号の説明】
【0108】
1 カメラモジュール
2 撮像レンズ
3 アクチュエータ
4 モジュール基板
5 センサーカバー
6 アクチュエータドライバ
7 ジャイロセンサ
8 レンズバレル
9 レンズ玉
10 レンズホルダー
11 AF板バネ
12 AFコイル
13 永久磁石
14 マグネットホルダー
15 サスペンションワイヤー
16 FPC
17 OISコイル
17a 外側コイル
17b 内側コイル
18 ホール素子
19 ベース
19a 穴
20 カバー
21 撮像素子
22 IRカットガラス
23 領域
30 AF可動部
40 OIS可動部
100 アクチュエータ
101 コイル
102 ホール素子
110 永久磁石
200 アクチュエータ
210 コイル
230 永久磁石
S1 第1辺
S2 第2辺
S3 第3辺
S4 第4辺
212 第1部分
214 第2部分
220 外周コイル
222 内周コイル