(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】変状規模計測システム及び変状規模計測プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 7/02 20060101AFI20220929BHJP
G01C 11/04 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G01C7/02
G01C11/04
(21)【出願番号】P 2018124660
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100102716
【氏名又は名称】在原 元司
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】小澤 淳眞
(72)【発明者】
【氏名】筒井 胤雄
(72)【発明者】
【氏名】船田 征
(72)【発明者】
【氏名】山崎 崇徳
(72)【発明者】
【氏名】本田 禎人
(72)【発明者】
【氏名】川口 誠史
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-328022(JP,A)
【文献】特開2016-194515(JP,A)
【文献】特開2016-206022(JP,A)
【文献】特開2006-010312(JP,A)
【文献】特開2017-049152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-15/14
G01B 11/00-11/30
G01S 7/48-7/51
17/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変状箇所の画像データである変状画像データを取得する変状画像データ取得手段と、
前記変状画像データの範囲内にある点から撮像装置までの距離を取得する撮像距離データ取得手段と、
前記変状画像データの対象領域における
河川管理施設の法面の傾斜情報または山の斜面の傾斜情報である地形特徴情報を取得する地形特徴情報取得手段と、
前記撮像装置の画角を取得する画角取得手段と、
前記変状画像データにおいて、変状面積を演算する変状箇所の範囲を受け付ける変状範囲受付手段と、
前記撮像距離データ取得手段が取得した距離と、前記画角と、前記変状画像データのピクセルサイズとに基づき、1ピクセル当たりの長さを演算するピクセル長さ演算手段と、
前記傾斜情報に基づき前記ピクセル長さ演算手段が演算した1ピクセル当たりの長さを補正するピクセル長さ補正手段と、
前記変状範囲受付手段が受け付けた変状箇所の範囲と、前記撮像装置の画角と、
前記ピクセル長さ補正手段が補正した前記ピクセル長さとに基づき、前記変状箇所の面積を演算する変状面積演算手段と、
を備えることを特徴とする変状規模計測システム。
【請求項2】
前記変状画像データは、
前記河川管理施設における変状箇所の画像データである、請求項1に記載の変状規模計測システム。
【請求項3】
前記画角は、前記撮像装置の焦点距離とイメージセンサーサイズとに基づいて前記画角取得手段が演算する、請求項1または請求項2に記載の変状規模計測システム。
【請求項4】
コンピュータを、
変状箇所の画像データである変状画像データを取得する変状画像データ取得手段、
前記変状画像データの範囲内にある点から撮像装置までの距離を取得する撮像距離データ取得手段、
前記変状画像データの対象領域における
河川管理施設の法面の傾斜情報または山の斜面の傾斜情報である地形特徴情報を取得する地形特徴情報取得手段、
前記撮像装置の画角を取得する画角取得手段、
前記変状画像データにおいて、変状面積を演算する変状箇所の範囲を受け付ける変状範囲受付手段、
前記撮像距離データ取得手段が取得した距離と、前記画角と、前記変状画像データのピクセルサイズとに基づき、1ピクセル当たりの長さを演算するピクセル長さ演算手段、
前記傾斜情報に基づき前記ピクセル長さ演算手段が演算した1ピクセル当たりの長さを補正するピクセル長さ補正手段、
前記変状範囲受付手段が受け付けた変状箇所の範囲と、前記撮像装置の画角と、
前記ピクセル長さ補正手段が補正した前記ピクセル長さとに基づき、前記変状箇所の面積を演算する変状面積演算手段、
として機能させる、変状規模計測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変状規模計測システム及び変状規模計測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川点検等により堤防、護岸その他の河川管理施設で発見された、損傷等の変状の大きさを計測する場合には、作業員による現地測量、写真測量技術による図化、あるいはオルソ写真や3次元データを作成して、変状の大きさを計測していた。
【0003】
しかし、作業員による現地測量は、測量できる場所に制限がある。また、写真測量技術による図化、あるいはオルソ写真や3次元データを作成して変状の大きさを計測する方法は、高精度な計測を行うことができるが、高性能な計測機器が必要となるためコストが増大し、また、計測したデータが膨大になるため処理時間を要し、迅速に変状範囲を計測することができなかった。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、3次元座標値が既知の地点から可視光を測量面に向かって複数照射し、照射した複数の可視光照射点の3次元座標値を既知の地点の3次元座標値から算出し、デジタルカメラにて撮影した撮影画像と、照射した複数の可視光照射点を利用して、正射投影画像を作成する方法が開示されている。
【0005】
しかし、可視光照射点が複数照射できない測量面や地形の特徴が加味されていない照射点から正射投影画像を作成した場合、精度の良い正射投影画像を作成することができなかった。そのため、作成した正射投影画像から精度よく変状の大きさを計測することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、低コストで高精度に変状の規模を計測できる変状規模計測システム及び変状規模計測プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、変状規模計測システムであって、変状箇所の画像データである変状画像データを取得する変状画像データ取得手段と、前記変状画像データの範囲内にある点から撮像装置までの距離を取得する撮像距離データ取得手段と、前記変状画像データの対象領域における地形特徴情報を取得する地形特徴情報取得手段と、前記撮像装置の画角を取得する画角取得手段と、前記変状画像データにおいて、変状面積を演算する変状箇所の範囲を受け付ける変状範囲受付手段と、前記変状範囲受付手段が受け付けた変状箇所の範囲と、前記撮像装置の画角と、前記地形特徴情報取得手段が取得した前記地形特徴情報とに基づき、前記変状箇所の面積を演算する変状面積演算手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記、変状画像データは、堤防、護岸その他の河川管理施設における変状箇所の画像データであるのが好適である。
【0010】
また、上記画角は、前記撮像装置の焦点距離とイメージセンサーサイズとに基づいて前記画角取得手段が演算してもよい。
【0011】
また、上記撮像距離データ取得手段が取得する距離は、前記撮像装置の撮影レンズの中心の延長に設置されたレーザ測距装置により測定した距離であるのが好適である。
【0012】
また、上記地形特徴情報は、堤防、護岸その他の河川管理施設の法面の傾斜情報であるのが好適である。
【0013】
また、上記撮像距離データ取得手段が取得した距離と、前記画角と、前記変状画像データのピクセルサイズとに基づき、1ピクセル当たりの長さを演算するピクセル長さ演算手段と、前記傾斜情報に基づき前記ピクセル長さ演算手段が演算した1ピクセル当たりの長さを補正するピクセル長さ補正手段と、をさらに備え、前記変状面積演算手段は、前記ピクセル長さ補正手段が補正した前記ピクセル長さを使用して前記変状箇所の面積を演算するのが好適である。
【0014】
また、本発明の他の実施形態は、変状規模計測プログラムであって、コンピュータを、変状箇所の画像データである変状画像データを取得する変状画像データ取得手段、前記変状画像データの範囲内にある点から撮像装置までの距離を取得する撮像距離データ取得手段、前記変状画像データの対象領域における地形特徴情報を取得する地形特徴情報取得手段、前記撮像装置の画角を取得する画角取得手段、前記変状画像データにおいて、変状面積を演算する変状箇所の範囲を受け付ける変状範囲受付手段、前記変状範囲受付手段が受け付けた変状箇所の範囲と、前記撮像装置の画角と、前記地形特徴情報取得手段が取得した前記地形特徴情報とに基づき、前記変状箇所の面積を演算する変状面積演算手段、として機能させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低コストで高精度に変状の規模を計測できる変状規模計測システム及び変状規模計測プログラムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態にかかる変状規模計測システムの例の機能ブロック図である。
【
図2】実施形態にかかる変状面積演算部が、変状箇所の大きさ(変状規模)を演算する方法の説明図である。
【
図3】実施形態にかかる変状面積演算部が、計測対象の面が撮影方向に対して傾いている場合に、変状箇所の大きさ(変状規模)を演算する方法の説明図である。
【
図5】実施形態にかかる地形特徴情報取得部が、完成図(出来形情報)から、計測対象Oの面Fの傾きを地形特徴情報として取得する方法の説明図である。
【
図6】実施形態にかかる変状規模計測システムの動作例のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0018】
図1には、実施形態にかかる変状規模計測システムの例の機能ブロック図が示される。
図1において、変状規模計測システム100は、変状画像データ取得部10、撮像距離データ取得部12、地形特徴情報取得部14、画角取得部16、変状範囲受付部18、変状面積演算部20、ピクセル長さ演算部22、ピクセル長さ補正部24、表示制御部26、通信部28、記憶部30及びCPU32を含んで構成されている。上記変状規模計測システム100は、CPU32、ROM、RAM、不揮発性メモリ、I/O、通信インターフェース等を備え、装置全体の制御及び各種演算を行うコンピュータとして構成されており、上記各機能は、例えばCPU32とCPU32の処理動作を制御するプログラムとにより実現される。
【0019】
変状画像データ取得部10は、変状箇所の画像データである変状画像データを取得する。ここで、変状箇所とは、堤防、護岸その他の河川管理施設等に生じた亀裂、陥没、沈下等、山の斜面の崩落(崖崩れ)等の損傷箇所をいう。また、変状画像データは、デジタルカメラ等の撮像装置で撮影した変状箇所の画像データである。変状画像データ取得部10は、上記画像データを、デジタルカメラから直接読み出す方法、適宜なサーバコンピュータから送信された画像データを通信部28を介して受け取る方法、フラッシュメモリ、ディスク装置等の適宜な記憶装置から読み出す方法等により取得し、記憶部30に記憶させる。
【0020】
撮像距離データ取得部12は、変状画像データの範囲内にある点から撮像装置までの距離を取得する。また、上記点から撮像装置までの距離は、例えばデジタルカメラ等の撮像装置に設置したレーザ測距装置により測定した距離であり、撮像距離データ取得部12は、上記変状画像データと同時に取得して記憶部30に記憶させる。
【0021】
地形特徴情報取得部14は、上記変状画像データの対象領域における地形特徴情報を取得して記憶部30に記憶させる。ここで、地形特徴情報とは、変状画像データの対象領域における地形の特徴に関する情報であり、例えば堤防、護岸その他の河川管理施設の法面の傾斜情報(傾斜角度)、山の斜面の形状等が含まれる。堤防、護岸その他の河川管理施設の法面の傾斜角度は、当該施設の完成図(出来形情報)から得ることができ、山の斜面の形状等は当該地域の数値地形モデル(DTM)から得た斜面の傾斜情報(傾斜角度)等である。得られた地形特徴情報は、グリッドデータ、TINデータ等の位置情報付3次元データとして記憶部30に記憶させる。
【0022】
画角取得部16は、デジタルカメラ等の撮像装置の画角を取得して記憶部30に記憶させる。撮像装置の画角は、デジタルカメラ等の撮像装置から出力される情報を画角取得部16が取得してもよいし、使用者が撮影時の画角をキーボード、マウス等のポインティングデバイス、タッチパネル等の適宜な入力手段により入力し、画角取得部16に取得させる構成としてもよい。また、撮像装置の焦点距離とイメージセンサーサイズとから画角取得部16が演算して取得する構成としてもよい。
【0023】
変状範囲受付部18は、上記変状画像データにおいて、変状面積を演算する対象である変状箇所の範囲(変状範囲)として使用者が指定した変状画像上の領域を受け付けて記憶部30に記憶させる。この場合、変状範囲受付部18が、変状画像データ取得部10が取得した変状画像データを記憶部30から読み出し、変状画像データが表す変状画像を、表示制御部26を介して液晶表示装置その他の適宜な表示装置で表示させ、使用者は、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、タッチパネル等の適宜な入力手段により上記表示装置の画面上で変状範囲を指定し、変状範囲受付部18が指定された変状範囲を受け付ける構成とすることができる。
【0024】
変状面積演算部20は、上記変状範囲受付部18が受け付けた変状箇所の範囲と、上記画角取得部16が取得した撮像装置の画角と、上記地形特徴情報取得部14が取得した地形特徴情報とを記憶部30から読み出し、これらに基づいて上記変状箇所の面積を演算する。変状箇所の面積を演算する方法は後述する。演算した変状箇所の面積は記憶部30に記憶させる。
【0025】
ピクセル長さ演算部22は、上記撮像距離データ取得部12が取得した距離と、上記画角取得部16が取得した画角と、上記変状画像データ取得部10が取得した変状画像データのピクセルサイズ(画像の縦方向及び横方向における総ピクセル数)とに基づき、変状画像データの対象領域における1ピクセル当たりの実際の長さを演算し、記憶部30に記憶させる。演算方法は後述する。
【0026】
ピクセル長さ補正部24は、上記ピクセル長さ演算部22が演算した、上記対象領域における1ピクセル当たりの実際の長さを記憶部30から読み出し、上記地形特徴情報としての傾斜情報に基づき1ピクセル当たりの長さを補正して、補正後の値を記憶部30に記憶させる。
【0027】
表示制御部26は、変状範囲受付部18が表示させる変状画像、変状面積演算部20が演算した変状箇所の面積等を、液晶表示装置その他の適宜な表示装置を制御して表示する。
【0028】
通信部28は、適宜なインターフェースにより構成され、無線または有線の通信回線を介して、CPU32が外部のサーバ等と変状画像データ等のデータをやり取りするために使用する。
【0029】
記憶部30は、ハードディスク装置、ソリッドステートドライブ(SSD)等の不揮発性メモリで構成され、上記各種情報等、及びCPU32の動作プログラム等の、地表変状可視化装置が行う各処理に必要な情報を記憶させる。なお、記憶部30としては、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)、光磁気ディスク(MO)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ、電気的消去および書き換え可能な読出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュ・メモリ等を使用してもよい。また、記憶部30には、主としてCPU32の作業領域として機能するランダムアクセスメモリ(RAM)、及びBIOS等の制御プログラムその他のCPU32が使用するデータが格納される読み出し専用メモリ(ROM)を含めるのが好適である。
【0030】
図2(a)、(b)、(c)には、実施形態にかかる変状面積演算部20が、変状箇所の大きさ(変状規模)を演算する方法の説明図が示される。
図2(a)において、変状規模の計測対象(堤防、護岸その他の河川管理施設等)Oに対して、距離H
0の地点から撮像装置であるデジタルカメラDにより変状箇所を撮影している。デジタルカメラDで撮影した変状箇所の画像データを上記変状画像データ取得部10が取得する。ここで、距離H
0は、デジタルカメラDのカメラ中心Cから計測対象Oまでの光軸上の距離である。また、デジタルカメラDに設置されたレーザ測距装置Mlでは、レーザ照射口から計測対象Oまでの距離Hを測定する。この距離Hは、撮像距離データ取得部12が取得する。なお、H
0=Hとなるようにレーザ測距装置Mlが設置されている。また、デジタルカメラDのカメラ中心Cから変状箇所内の点Bまでの距離がLxyで示される。また、デジタルカメラDの縦方向(上下方向)の画角がα、横方向の画角がβで示されており、これらは画角取得部16が取得した値である。
【0031】
上述したように、デジタルカメラDには、計測対象Oまでの距離を測定するためのレーザ測距装置Mlが設置されている。
図2(b)には、デジタルカメラDとこれに設置されたレーザ測距装置Mlとの関係が示される。
図2(b)において、デジタルカメラDのカメラ中心C(撮影レンズの中心)から左斜め上に延長した距離lcの位置にレーザ測距装置Mlが設置されている。なお、カメラ中心Cとレーザ測距装置Mlとの縦方向距離がlcyで示され、横方向距離がlcxで示されている。また、レーザ測距装置Mlで測定した計測対象Oまでの距離Hは、上記光軸と平行な線上での距離である。
【0032】
図2(c)には、デジタルカメラDの背後から見た各点の位置関係が示される。なお、
図2(c)の例は、各点を計測対象Oの平面上に投影した場合の位置が示されており、計測対象Oの面が鉛直方向と平行であることを前提としている。
図2(c)では、座標軸としてデジタルカメラDの縦方向にPy軸、横方向にPxが設定されており、それぞれデジタルカメラDの画像のピクセル数で長さを表している。従って、上記計測対象Oの平面は、デジタルカメラDで撮影した画像上の平面である。
【0033】
図2(c)において、デジタルカメラDのカメラ中心の座標が原点(0,0)、変状箇所内の点Bの座標が(x,y)で表されている。ここで、縦方向における1ピクセル当たりの画角をdα、横方向における1ピクセル当たりの画角をdβとすると、
【0034】
【0035】
ただし、Y、Xは、それぞれ縦方向、横方向における、デジタルカメラDで撮影した画像の総ピクセル数であり、ピクセル長さ演算部22が使用するピクセルサイズに相当する。
【0036】
仮に、点Bの座標(x,y)においてy=0とすると、変状箇所の画像における1ピクセル当たりの、計測対象Oでの縦方向の実際の長さLxy×dαは、
【0037】
【0038】
また、上記1ピクセル当たりの、計測対象Oでの横方向の実際の長さLxy×dβは、
【0039】
【0040】
ここで、y≠0であれば、上記Lxy×dα、Lxy×dβは、それぞれ、
【0041】
【0042】
以上に述べた縦方向、横方向における、1ピクセル当たりの計測対象Oでの実際の長さは、ピクセル長さ演算部22が演算する。
【0043】
なお、上記y≠0の場合には、Lxyと原点を通り、計測対象Oの面に直交する直線(
図2(a)においてH
0で示される距離を表す直線)とのなす角度を(dα×y)で近似している。
【0044】
変状面積演算部20は、変状範囲受付部18が受け付けた変状箇所の範囲を記憶部30から読み出し、変状箇所の範囲内の画素数を積算して、上記縦方向、横方向における1ピクセル当たりの実際の長さLxy×dα、Lxy×dβから求められる1ピクセル当たりの計測対象Oでの実際の面積を使用して、指定された変状箇所の面積を演算する。なお、変状箇所の範囲の指定方法の具体例は後述する。
【0045】
図3には、変状面積演算部20が、計測対象の面が撮影方向に対して傾き、水平面に対して傾斜角度がついている場合に、変状箇所の大きさ(変状規模)を演算する方法の説明図が示される。
図3において、計測対象Oの面Fの傾きは、予め完成図(出来形情報)から地形特徴情報取得部14が取得した傾斜情報であって、変状面積演算部20が記憶部30から読み出して使用する。
【0046】
図3の例では、計測対象Oの、デジタルカメラDで撮影される面Fとの距離は、デジタルカメラDのカメラ中心から計測対象Oまでの距離がHで示され、デジタルカメラDのカメラ中心から計測対象Oの面Fにおける変状箇所内の点Bまでの距離がLxyで示されている。また、LxyとHとの差分がΔHで示されている。なお、上記距離Hは、上記レーザ測距装置Mlで測定した距離である。
【0047】
ピクセル長さ補正部24は、上記ピクセル長さ演算部22が演算した、計測対象Oの面が鉛直方向と平行である場合の縦方向、横方向における、1ピクセル当たりの計測対象Oでの実際の長さLxy×dα、Lxy×dβを、上記ΔHを使用して、以下のように補正する。
【0048】
【0049】
なお、(Lxy×dα)c及び(Lxy×dβ)cは、上記点Bにおける1ピクセル当たりの実際の長さであり、補正後の値である。
【0050】
変状面積演算部20は、上述したように、変状箇所の範囲内の画素数と(Lxy×dα)c及び(Lxy×dβ)cとを使用して、指定された変状箇所の面積を演算する。
【0051】
図4には、変状箇所の範囲の指定方法の説明図が示される。
図4において、変状箇所Ahが液晶表示装置その他の適宜な表示装置に表示されており、使用者は、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、タッチパネル等の適宜な入力手段によりの変状箇所Ahの範囲(例えば、変状箇所と正常箇所との境界線)を画面上でなぞり、変状画像上の領域を指定する。なお、変状箇所の画像の特徴量から画像認識処理が実行され、他の領域(正常箇所)と切り分けるソフトウエアを使用して変状画像上の領域を指定する構成としてもよい。または、変状箇所の画像の特徴量から特徴量毎にグループ分けをし、グループ毎に分けられた領域を変状箇所としてもよい。変状範囲受付部18は、上記のようにして指定された変状画像上の領域を受け付けて記憶部30に記憶させる。
【0052】
図5には、地形特徴情報取得部14が、完成図(出来形情報)から、計測対象Oの面Fの傾きを地形特徴情報として取得する方法の説明図が示される。
図5において、各面Fの勾配は1:nで表されている。使用者は、上記nをキーボード等の入力手段から入力し、地形特徴情報取得部14が以下の式に基づいて勾配θを演算して取得する。
【0053】
【0054】
なお、θの値を直接入力する構成としてもよい。
【0055】
以上の場合、いずれの面Fの勾配であるかを指定する必要があるが、面Fを撮影する都度、当該画像の属性として入力してもよいし、変状面積演算部20が変状箇所の面積を演算する際にパラメータとして入力してもよい。入力された勾配(傾斜角度)は、地形特徴情報取得部14が受け付けて記憶部30に記憶させる。
【0056】
図6には、実施形態にかかる変状規模計測システム100の動作例のフロー図が示される。
図6において、変状画像データ取得部10が、デジタルカメラ等の撮像装置で撮影した変状箇所の画像データを取得し(S1)、撮像距離データ取得部12が、変状画像データの範囲内にある点から撮像装置までの距離(撮像距離H)を取得する(S2)。
【0057】
また、地形特徴情報取得部14は、上記変状画像データの対象領域における地形特徴情報を取得する(S3)。上述したとおり、地形特徴情報は、堤防、護岸その他の河川管理施設の法面の傾斜情報(傾斜角度)や山の斜面の形状等の情報である。
【0058】
また、画角取得部16は、使用者が入力したデジタルカメラ等の撮像装置の画角を取得する(S4)。
【0059】
次に、変状範囲受付部18は、変状画像データが表す変状画像を、表示制御部26を介して液晶表示装置その他の適宜な表示装置に表示させ、当該画面上で使用者が適宜な入力手段により指定した変状範囲を受け付ける(S5)。
【0060】
変状面積演算部20は、上記変状範囲受付部18が受け付けた変状箇所の範囲と、上記画角取得部16が取得した撮像装置の画角と、上記地形特徴情報取得部14が取得した地形特徴情報とに基づいて上記変状箇所の面積を演算する(S6)。
【0061】
上述した
図6の各ステップを実行するためのプログラムは、記録媒体に格納することも可能であり、また、そのプログラムを通信手段によって提供しても良い。その場合、例えば、上記説明したプログラムについて、「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」の発明または「データ信号」の発明として捉えても良い。
【符号の説明】
【0062】
10 変状画像データ取得部、12 撮像距離データ取得部、14 地形特徴情報取得部、16 画角取得部、18 変状範囲受付部、20 変状面積演算部、22 ピクセル長さ演算部、24 ピクセル長さ補正部、26 表示制御部、28 通信部、30 記憶部、32 CPU、100 変状規模計測システム。