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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】積層基板、通信端末、及びカードリーダ
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20220929BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20220929BHJP
   H01Q 7/00 20060101ALI20220929BHJP
   H05K 3/46 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
H05K1/02 R
G06K7/10 232
H01Q7/00
H05K3/46 W
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018128561
(22)【出願日】2018-07-05
(65)【公開番号】P2020009862
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米山 裕二
(72)【発明者】
【氏名】竹内 淳朗
(72)【発明者】
【氏名】東 賀津久
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-157569(JP,A)
【文献】特開昭61-196593(JP,A)
【文献】特開2006-178647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
G06K 7/10
H01Q 7/00
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報が記録される媒体と非接触にて情報を送受信するための通信用素子がそれぞれ形成された少なくとも2つの導体層を有し、前記導体層が絶縁層を挟んで積層された積層基板であって、
各導体層の外形は、第一の方向に延び且つ前記第一の方向に直交する第二の方向に並ぶ2つの第一の辺と、前記第二の方向に延び且つ前記第一の方向に並ぶ2つの第二の辺と、を含む形状であり、
前記導体層のうちの最も外側に配置されている2つの前記導体層である外側導体層の各々は、隣接する前記第一の辺及び前記第二の辺における当該第一の辺の当該第二の辺に近い側の第一の端部及び当該第二の辺の当該第一の辺に近い側の第二の端部の隣に形成された第一のパターンを有し、
前記第一のパターンは、前記第一の辺に沿って延びる第一の直線部と、前記第一の方向における前記第一の直線部の前記第二の端部側の端の位置と同じ又は当該位置よりも前記第二の端部側の位置から前記第二の辺に沿って前記第一の端部から離れる方向に延びる第二の直線部と、を備え
前記第一のパターンは環状であり、
前記第一のパターンの内縁の形状は、矩形又は円形であり、
前記導体層は、2つの前記外側導体層の間に配置された少なくとも1つの内側導体層を含み、
前記内側導体層は、前記第一のパターンの内側と重なる領域に第二のパターンを有しており、
前記第二のパターンの外縁の形状は、前記第一のパターンの前記内縁の形状と相似形且つ当該形状よりも小さい形状、或いは、前記第一のパターンの前記内縁の形状と同一の形状である積層基板。
【請求項2】
請求項1記載の積層基板であって、
2つの前記第一のパターンは、同一形状である積層基板。
【請求項3】
請求項1又は2記載の積層基板であって、
前記第一のパターンの外形は矩形である積層基板。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の積層基板であって、
前記内側導体層を2つ含み、
前記第二のパターンは環状であり、
前記2つの前記内側導体層の一方が有する前記第二のパターンは、前記2つの前記内側導体層の他方が有する前記第二のパターンと同じ形状のパターンであり、前記一方の前記内側導体層は、当該パターンの内側に形成され、当該形状と相似形且つ当該形状よりも小さい第三のパターンを更に備える積層基板。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項記載の積層基板であって、
前記内側導体層を4つ含み、
前記第二のパターンは環状であり、
最も内側にある2つの前記内側導体層に形成された前記第二のパターンは、当該最も内側の内側導体層と前記外側導体層の間にある前記内側導体層に形成された前記第二のパターンよりも小さい積層基板。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載の積層基板であって、
前記第一のパターンの内側の領域の前記第一の方向及び前記第二の方向の各々の幅から、前記第二のパターンの前記第一の方向及び前記第二の方向の各々の幅を引いた値の半分の値は、前記導体層の積層ずれとして許容されるずれ量の範囲内である積層基板。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1項記載の積層基板であって、
前記通信用素子は、円環状のアンテナを含む積層基板。
【請求項8】
請求項1からのいずれか1項記載の積層基板を備える通信端末。
【請求項9】
請求項1からのいずれか1項記載の積層基板を備えるカードリーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末用の積層基板とこれを備える通信端末及びカードリーダに関する。
【背景技術】
【0002】
回路素子と配線等が形成された導体層と絶縁層とを交互に積層してなる積層基板において、導体層同士の位置ずれを検査するための特定のパターンを各導体層に形成することが行われている(例えば特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-141030号公報
【文献】特開2007-088353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
情報が記録される媒体と非接触で情報の通信を行う通信モジュールに用いられる積層基板には、通信を行うためのアンテナ等の通信用素子が含まれる。この積層基板において、例えば特許文献1,2に記載されている技術を用いて導体層同士の積層ズレを確認することで、通信モジュールとして性能に問題ないことが確認できる。しかし、上記技術は装置を使用しての測定であるため、時間もコストもかかってしまう。しかも、積層基板の外縁に対して通信用素子の位置が設計からずれていることが考えられる。このように、通信用素子の位置がずれていると、この積層基板を機器に組み込んだ際に、この機器に対する通信用素子の位置が所望の位置からずれてしまう。このようなずれがあると、機器における媒体との通信品質に影響を与えてしまう。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、通信用素子の位置ずれを目視にて容易に確認することのできる積層基板とこれを備える通信端末及びカードリーダを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の積層基板は、情報が記録される媒体と非接触にて情報を送受信するための通信用素子がそれぞれ形成された少なくとも2つの導体層を有し、前記導体層が絶縁層を挟んで積層された積層基板であって、各導体層の外形は、第一の方向に延び且つ前記第一の方向に直交する第二の方向に並ぶ2つの第一の辺と、前記第二の方向に延び且つ前記第一の方向に並ぶ2つの第二の辺と、を含む形状であり、前記導体層のうちの最も外側に配置されている2つの前記導体層である外側導体層の各々は、隣接する前記第一の辺及び前記第二の辺における当該第一の辺の当該第二の辺に近い側の第一の端部及び当該第二の辺の当該第一の辺に近い側の第二の端部の隣に形成された第一のパターンを有し、前記第一のパターンは、前記第一の辺に沿って延びる第一の直線部と、前記第一の方向における前記第一の直線部の前記第二の端部側の端の位置と同じ又は当該位置よりも前記第二の端部側の位置から前記第二の辺に沿って前記第一の端部から離れる方向に延びる第二の直線部と、を備え、前記第一のパターンは環状であり、前記第一のパターンの内縁の形状は、矩形又は円形であり、前記導体層は、2つの前記外側導体層の間に配置された少なくとも1つの内側導体層を含み、前記内側導体層は、前記第一のパターンの内側と重なる領域に第二のパターンを有しており、前記第二のパターンの外縁の形状は、前記第一のパターンの前記内縁の形状と相似形且つ当該形状よりも小さい形状、或いは、前記第一のパターンの前記内縁の形状と同一の形状であるものである。
【0007】
本発明の通信端末又はカードリーダは、前記積層基板を備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、通信用素子の位置ずれを目視にて容易に確認することのできる積層基板とこれを備える通信端末及びカードリーダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の積層基板の一実施形態である積層基板2を有する非接触式通信モジュール1のおもて側を示す平面図である。
図2図1に示す非接触式通信モジュール1の積層基板2の導体層の積層構成を説明するための模式図である。
図3図2に示す外側導体層21の確認パターン31が形成された部分を積層基板2のおもて面側から見た図である。
図4図2に示す外側導体層24の確認パターン34が形成された部分を積層基板2のおもて面側から見た図である。
図5図2に示す内側導体層22の確認パターン32が形成された部分を積層基板2のおもて面側から見た図である。
図6図2に示す内側導体層23の確認パターン33が形成された部分を積層基板2のおもて面側から見た図である。
図7】(a)は、位置ずれ及び積層ずれが発生していない状態の積層基板2の確認パターン30をおもて面2a側から図であり、(b)は、同状態の積層基板2の確認パターン30を裏面側から図である。
図8図3及び図4に示した確認パターン31,34の変形例を示す図である。
図9】積層基板2の変形例を示す図である。
図10図3及び図4に示した確認パターン31,34の別の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(非接触式通信モジュールの構成)
図1は、本発明の積層基板の一実施形態である積層基板2を有する非接触式通信モジュール1のおもて側を示す平面図である。図2は、図1に示す非接触式通信モジュール1の積層基板2の導体層の積層構成を説明するための模式図である。
【0011】
非接触式通信モジュール1は、電磁誘導によって、情報が記録された媒体である非接触式ICカード(図示省略)と非接触で情報の送受信を行うためのモジュールである。この非接触式通信モジュール1は、通信端末の一例であるカードリーダ(図示省略)に取り付けられて使用される。このカードリーダは、非接触式通信モジュール1が取り付けられる本体部を備えている。また、このカードリーダは、たとえば、ATM(Automated Teller Machine)等の所定の上位装置に搭載されて使用される。
【0012】
非接触式通信モジュール1は、積層基板2を備えている。積層基板2は、ガラスエポキシ基板等のリジッド基板であり、略長方形の平板状に形成されている。非接触式通信モジュール1は、積層基板2のおもて側の面(おもて面)2aがカードリーダで処理される非接触式ICカードと対向するように、カードリーダの本体部に取り付けられる。
【0013】
積層基板2には、非接触式ICカードと情報の送受信を行ったり、非接触式ICカードに電力を供給したりするためのアンテナ4、5と、アンテナ4、5を覆うように配置されるシールドパターン6と、確認パターン30と、が形成されている。また、積層基板2のおもて面2aには、信号処理回路部8が実装されている。接地用パターンは、たとえば、積層基板2の、信号処理回路部8が実装された部分に形成されている。
【0014】
(積層基板の構成)
積層基板2は、導体が形成された導体層と、絶縁層とが交互に積み重ねられた基板である。図2に示すように、積層基板2は、シールドパターン6が形成された外側導体層21と、図示省略の通信用の回路素子及び配線が形成された内側導体層22と、アンテナ4が形成された内側導体層23と、アンテナ5が形成された外側導体層24と、これらの間に配置される絶縁層とを備える構成である。外側導体層21、内側導体層22、内側導体層23、及び外側導体層24は、積層基板2のおもて面2aから裏面に向かってこの順番に配置されている。
【0015】
外側導体層21、内側導体層22、内側導体層23、及び外側導体層24の各々の外形は、全ての同じ形状(略長方形状)であり、第一の方向である方向Yに延び且つ方向Yに直交する第二の方向である方向Xに並ぶ2つの辺2Yと、方向Xに延び且つ方向Yに並ぶ2つの辺2Xと、を含むものとなっている。
【0016】
アンテナ4は、円環状に配置されるアンテナコイルによって構成されている。アンテナ5は、円環状に配置されるアンテナコイルによって構成されている。すなわち、アンテナ4とアンテナ5はそれぞれ円環状に形成されている。アンテナ4のアンテナコイルの終端とアンテナ5のアンテナコイルの終端とは互いに接続されている。
【0017】
シールドパターン6は、積層基板2のおもて面2a側からアンテナ4、5の略全体を覆う円弧状に形成されている。このシールドパターン6は、たとえば、略半円弧状に形成された2個のシールドパターン部6aによって構成されている。2個のシールドパターン部6aは、その周方向の端部同士の間に隙間をあけた状態で形成されている。すなわち、シールドパターン6には、その周方向における2箇所に切れ目Gが形成されている。そのため、電磁誘導によってシールドパターン6に生じる電流がシールドパターン6を回るように流れることはない。なお、シールドパターン6の周方向における切れ目Gの箇所は、1箇所であっても良いし、3箇所以上であっても良い。
【0018】
非接触式通信モジュール1において、積層基板2を構成する各導体層に形成された回路素子や配線が、非接触ICカードとの通信を行うための通信用素子を構成している。
【0019】
図2に示すように、積層基板2の外側導体層21の表面には、外側導体層21に形成されたシールドパターン6を含む通信用素子の外側導体層21における形成位置の設計位置に対するずれを少なくとも確認するための確認パターン31が2つ形成されている。
【0020】
また、積層基板2の外側導体層24の表面には、外側導体層24に形成されたアンテナ5を含む通信用素子の外側導体層24における形成位置の設計位置に対するずれを少なくとも確認するための確認パターン34が2つ形成されている。確認パターン31と確認パターン34はそれぞれ第一のパターンを構成している。
【0021】
また、積層基板2の内側導体層22の表面には、積層基板2に含まれる導体層の積層ずれ(積層方向に直交する方向への位置ずれ)を確認するための確認パターン32が2つ形成されている。さらに、積層基板2の内側導体層23の表面には、積層基板2に含まれる導体層の積層ずれを確認するための確認パターン33が2つ形成されている。確認パターン32は第二のパターンを構成している。
【0022】
(確認パターンの詳細構成)
図3は、図2に示す外側導体層21の確認パターン31が形成された部分を積層基板2のおもて面側から見た図である。2つの確認パターン31は、外側導体層21の4隅のうちの対角線方向に並ぶ2つの隅に形成されている。つまり、各確認パターン31は、外側導体層21の外形における隣接する2辺(辺2Y及び辺2X)における当該辺2Yの当該辺2Xに近い側の第一の端部E1及び当該辺2Xの当該辺2Yに近い側の第二の端部E2の隣に形成されている。確認パターン31は、外側導体層21に通信用素子を形成する際に同時に形成される。
【0023】
確認パターン31は、矩形状且つ板状の部材に、円形の開口部Kが形成された環状のパターンである。この部材は、例えば、回路素子や配線などと同じ材質で構成されているが、異なっていてもよい。具体的には、確認パターン31の外縁の形状は正方形であり、この外縁は、図3に示す辺2Yに沿って延びる第一の直線部31aと、第一の直線部31aの第二の端部E2側の端から図3に示す辺2Xに沿って第一の端部E1から離れる方向に延びる第二の直線部31bと、第一の直線部31aに平行な直線部31cと、第二の直線部31bに平行な直線部31dと、によって構成されている。また、確認パターン31の内縁31eの形状(言い換えると、開口部Kの形状)は円形となっている。
【0024】
外側導体層21に形成される通信用素子の位置は、この確認パターン31の位置を基準として決められている。つまり、この確認パターン31の位置が設計位置からずれれば、通信用素子の位置も設計位置からずれることとなる。積層基板2では、確認パターン31の第一の直線部31aとこれに隣接する辺2Yとの間の距離と、確認パターン31の第二の直線部31bとこれに隣接する辺2Xとの間の距離とが予め決められた値となるように、確認パターン31の形成位置が決められている。
【0025】
図4は、図2に示す外側導体層24の確認パターン34が形成された部分を積層基板2のおもて面側から見た図である。2つの確認パターン34は、外側導体層24の4隅のうちの対角線方向に並ぶ2つの隅に形成されている。つまり、各確認パターン34は、外側導体層24の外形における隣接する2辺(辺2Y及び辺2X)における当該辺2Yの当該辺2Xに近い側の第一の端部E1及び当該辺2Xの当該辺2Yに近い側の第二の端部E2の隣に形成されている。確認パターン34は、外側導体層24に通信用素子を形成する際に同時に形成される。
【0026】
確認パターン34は、確認パターン31と同一の形状であり、矩形状且つ板状の部材に、円形の開口部Kが形成された環状のパターンである。具体的には、確認パターン34の外縁の形状は正方形であり、この外縁は、図4に示す辺2Yに沿って延びる第一の直線部34aと、第一の直線部34aの第二の端部E2側の端から図4に示す辺2Xに沿ってこの第一の端部E1から離れる方向に延びる第二の直線部34bと、第一の直線部34aに平行な直線部34cと、第二の直線部34bに平行な直線部34dと、によって構成されている。また、確認パターン34の内縁34eの形状は円形となっている。
【0027】
外側導体層24に形成される通信用素子の位置は、この確認パターン34の位置を基準として決められている。つまり、この確認パターン34の位置が設計位置からずれれば、通信用素子の位置も設計位置からずれることとなる。積層基板2では、確認パターン34の第一の直線部34aとこれに隣接する辺2Yとの間の距離と、確認パターン34の第二の直線部34bとこれに隣接する辺2Xとの間の距離とが上記の予め決められた値となるように、確認パターン34の形成位置が決められている。
【0028】
外側導体層21における通信用素子の位置が設計通りであり、外側導体層24における通信用素子の位置が設計通りである場合には、確認パターン31と確認パターン34は積層方向から見た状態にて一致するようになっている。
【0029】
図5は、図2に示す内側導体層22の確認パターン32が形成された部分を積層基板2のおもて面側から見た図である。2つの確認パターン32は、内側導体層22の4隅のうちの対角線方向に並ぶ2つの隅に形成されている。各確認パターン32は、この上方に位置する外側導体層21の確認パターン31の内側(図5中に一点鎖線で示す確認パターン31の内縁31eで囲まれる領域)と重なる領域に形成されている。確認パターン32は、確認パターン31と例えば同じ材料にて構成された円環状のパターンである。確認パターン32は、確認パターン31の内縁31eの形状(円形)と相似形且つ当該形状よりも小さい形状である。
【0030】
図6は、図2に示す内側導体層23の確認パターン33が形成された部分を積層基板2のおもて面側から見た図である。2つの確認パターン33は、内側導体層23の4隅のうちの対角線方向に並ぶ2つの隅に形成されている。各確認パターン33は、この下方に位置する外側導体層24の確認パターン34の内側(図6中に一点鎖線で示す確認パターン34の内縁34eで囲まれる領域)と重なる領域に形成されたパターン33aとパターン33bにより構成されている。
【0031】
パターン33bは、確認パターン32の形状と同じ形状(円環状)のパターンであり、確認パターン31と例えば同じ材料にて構成されている。パターン33aは、パターン33bの内側に形成され、パターン33bの形状(円環状)と相似形且つ当該形状よりも小さいパターンであり、確認パターン31と例えば同じ材料にて構成されている。パターン33bは、第二のパターンを構成し、パターン33aは、第三のパターンを構成する。
【0032】
確認パターン31,34の内側の領域(開口部K)の方向Y及び方向Xの各々の幅(つまり、開口部Kの直径)から、確認パターン32又はパターン33bの方向Y及び方向Xの各々の幅(つまり、確認パターン32又はパターン33bの外縁直径)を引いた値の半分の値(パターン間の幅)と、確認パターン32の内縁直径からパターン33aの外縁直径を引いた値の半分の値(パターン間の幅)とが、それぞれ、例えば導体層の積層ずれとして許容されるずれ量の範囲内となるよう、確認パターン31、確認パターン32、確認パターン33、及び確認パターン34は設計されている。本実施形態においては、パターン間の幅が、許容されるずれ量と一致するように構成されている。さらに、確認パターン32、33の幅も、ずれ量と一致するように構成されている。このように構成することにより、ずれ量が積層ずれとして許容される範囲内か否か目視で確認しやすくなる。
【0033】
各導体層において、確認パターン31、確認パターン32、確認パターン33、及び確認パターン34が形成されている領域は、可視光に対して透過率の高い領域となっており、この領域と重なる絶縁層についても、可視光に対する透過率の高いものとなっている。導体層の材質と、絶縁層の材質と、確認パターン31、確認パターン32、確認パターン33、及び確認パターン34の材質を調整することで、積層基板2をおもて面2a側から見た場合には、おもて面2aから数えて、例えば、3つ目の導体層の確認パターンまでは明確に視認可能に構成することができ、積層基板2を裏面側から見た場合には、裏面から数えて、例えば、3つ目の導体層の確認パターンまでは明確に視認可能に構成することができる。
【0034】
図7(a)は、位置ずれ及び積層ずれが発生していない状態の積層基板2の確認パターン30をおもて面2a側から図である。図7(b)は、同状態の積層基板2の確認パターン30を裏面側から図である。
【0035】
図7(a)に示すように、積層基板2をおもて面2a側から見ると、確認パターン31の内側に、パターン33bに重なる確認パターン32を確認することができ、確認パターン32の内側にパターン33aを確認することができる。
【0036】
図7(b)に示すように、積層基板2を裏面側から見ると、確認パターン34の内側に、確認パターン32に重なるパターン33bを確認することができ、パターン33bの内側にパターン33aを確認することができる。
【0037】
(非接触式通信モジュールの検査の流れ)
非接触式通信モジュール1の検査者は、図7(a)に示す確認パターン30を見て、第一の直線部31aと、これに隣接する外側導体層21の辺2Yとの距離と、第二の直線部31bと、これに隣接する外側導体層21の辺2Xとの距離とが一致しているかを確認する。この2つの距離が一致していれば、外側導体層21は設計通りに製造されていると判断することができる。さらに、第一の直線部31aおよび第二の直線部31bと、辺2Xおよび2Yとが平行になっているか確認する。平行でない場合、外側導体層21に対して、確認パターン31、すなわち通信用素子等が、ねじれて(回転して)製造(配置)されていると判断できる。
【0038】
また、検査者は、図7(b)に示す確認パターン30を見て、第一の直線部34aと、これに隣接する外側導体層24の辺2Yとの距離と、第二の直線部34bと、これに隣接する外側導体層24の辺2Xとの距離とが一致しているかを確認する。この2つの距離が一致していれば、外側導体層24は設計通りに製造されていると判断することができる。さらに、第一の直線部34aおよび第二の直線部34bと、辺2Xおよび2Yとが平行になっているか確認する。平行でない場合、外側導体層24に対して、確認パターン34、すなわち通信用素子等が、ねじれて(回転して)製造(配置)されていると判断できる。
【0039】
外側導体層21,24が設計通りに製造されていることが確認できたら、検査者は、図7(a)に示す確認パターン30を見て、確認パターン31の内縁に確認パターン32の外縁が接触しているかどうかを確認する。この接触が確認された場合には、外側導体層21に対する内側導体層22の積層ずれが許容できない値になっていると判断することができる。
【0040】
同様に、検査者は、図7(a)に示す確認パターン30を見て、確認パターン32の内縁にパターン33aの外縁が接触しているかどうかを確認する。この接触が確認された場合には、内側導体層22に対する内側導体層23の積層ずれが許容できない値になっていると判断することができる。
【0041】
さらに、検査者は、図7(b)に示す確認パターン30を見て、確認パターン34の内縁にパターン33bの外縁が接触しているかどうかを確認する。この接触が確認された場合には、外側導体層24に対する内側導体層23の積層ずれが許容できない値になっていると判断することができる。
【0042】
(実施形態の非接触式通信モジュールの効果)
非接触式通信モジュール1によれば、図7に示す確認パターン30の目視だけで、外側導体層21,24における通信用素子の形成位置の位置ずれの有無を判断することができる。例えば、この位置ずれがある場合には、その非接触式通信モジュールを採用しない、又は、アンテナ特性を補正するための作業を行う等の対応が可能となる。したがって、非接触式通信モジュール1をカードリーダに組み込んだときのカードリーダの通信品質の低下を防ぐことができる。
【0043】
また、非接触式通信モジュール1によれば、図7に示す確認パターン30の目視だけで、外側導体層21,24に対する内側導体層22,23の積層ずれや、内側導体層22,23同士の積層ずれの有無とその大きさを判断することができる。積層ずれが許容できない状態となっている場合には、その非接触式通信モジュールを採用しない、又は、アンテナ特性を補正するための作業を行う等の対応を行うことで、カードリーダ1の通信品質の低下を防ぐことができる。
【0044】
また、非接触式通信モジュール1によれば、確認パターン31と確認パターン34が同一の形状となっているため、外側導体層21,24における通信用素子の形成位置の位置ずれの有無の判断がしやすくなる。これにより検査を効率よく行うことが可能となる。
【0045】
また、非接触式通信モジュール1では、確認パターン31と確認パターン34の各々の外形が矩形となっている。また、確認パターン31、34は、それぞれ対角線方向に並ぶ2つの隅に形成されている。このため、外側導体層21,24における通信用素子の、外側導体層21、24に対する同一面内における回転による位置ずれを含む形成位置の位置ずれの有無の判断がしやすくなる。また、確認パターン31,34の形成を容易に行うことができる。
【0046】
また、非接触式通信モジュール1では、内側導体層23に形成された確認パターン33が、パターン33aとパターン33bの2つによって構成されている。パターン33bがあることで、外側導体層24に対する内側導体層23の積層ずれを、他の導体層同士の積層ずれと同条件にて確認することができる。このため、積層ずれの確認精度を高めることができる。また、パターン33aがあることで、内側導体層22、23の積層ずれの確認が容易となる。
【0047】
(外側導体層に形成される確認パターンの変形例)
図8は、図3及び図4に示した確認パターン31,34の変形例を示す図である。図8に示す確認パターン31(34)は、第一の直線部31a(34a)と、第二の直線部31b(34b)のみで構成されている。このように、確認パターン31,34はL字状の構成であっても、外側導体層21,24における通信用素子の位置ずれの検出を行うことは可能である。
【0048】
なお、確認パターン31(34)は、図8において第一の直線部31a(34a)と第二の直線部31b(34b)を直線で繋いだ三角形のパターンとしたり、図8において第一の直線部31a(34a)と第二の直線部31b(34b)を曲線で繋いだ扇形のパターンとしたりしてもよい。この変形例の構成では、積層ずれについては確認が難しいため、内側導体層22,23の確認パターン32,33は削除してあってもよい。
【0049】
(実施形態の非接触式通信モジュールの積層基板の変形例)
図9は、図2に示す積層基板2の変形例を示す図である。図9に示す積層基板2は、図2に示す積層基板2の構成に、内側導体層25と内側導体層26を追加し、更に、内側導体層23からパターン33bを削除したものである。図9に示す各導体層の間には絶縁層が配置されている。内側導体層25及び内側導体層26は、内側導体層23と外側導体層24の間に配置されている。
【0050】
内側導体層26には、外側導体層24の確認パターン34の開口部Kと重なる領域に、確認パターン32と同じパターン32aが形成されている。内側導体層25には、外側導体層24の確認パターン34の開口部Kと重なる領域に、パターン33aと同じパターン330aが形成され、更に、パターン330aの内側に、パターン330aよりも小さいパターン330bが形成されている。図9の変形例においては、確認パターン32、パターン33a、パターン330a、パターン330b、及びパターン32aがそれぞれ第二のパターンを構成する。
【0051】
図9に示す変形例の積層基板2によれば、この積層基板2をおもて面2a側から見ると、確認パターン31の内側に、確認パターン32を確認することができ、確認パターン32の内縁の内側にパターン33aを確認することができる。この積層基板2を裏面側から見ると、確認パターン34の内側に、パターン32aを確認することができ、パターン32aの内縁の内側にパターン330a、330bを確認することができる。確認パターン31の内縁と確認パターン32の外縁との距離、確認パターン32の内縁とパターン33aの外縁との距離、確認パターン34の内縁とパターン32aの外縁との距離、パターン32aの内縁とパターン330aの外縁との距離を見ることで、各層での積層ずれを確認することができる。また、各導電層のパターンが積層基板2の積層方向の中心に向かうほど小さくなっているため、積層ずれの確認を容易に行うことができる。
【0052】
(その他の変形例)
図2に示した積層基板2において、内側導体層22の確認パターン32が確認パターン33に置換され、内側導体層23の確認パターン33が確認パターン32に置換された構成であってもよい。
【0053】
図2に示す積層基板2において内側導体層22が削除された構成であってもよい。この場合、内側導体層23に形成された確認パターン33からパターン33aを削除した構成とすればよい。また、この構成では、パターン33bは円環状である必要はなく、円であってもよい。
【0054】
図3,4に示す確認パターン31,34の内縁の形状(開口部Kの形状)は、円形ではなく矩形(長方形又は正方形)であってもよい。この場合、確認パターン32、パターン33a、及びパターン33bも該形状の相似形とすればよい。
【0055】
図3,4に示す確認パターン31,34は、同一の形状となっていなくてもよい。例えば、確認パターン31の直線部31dが外側に湾曲した構成であってもよい。
【0056】
図6に示す確認パターン33においてパターン33bを削除した構成であってもよい。積層基板2を構成する各導体層の外形は、一対の辺2Xと一対の辺2Yを有する形状であればよく、完全な矩形でなくともよい。例えば矩形において角が丸まった形状や角がカットされた形状であってもよい。その場合、確認パターン31、34の第一の直線部31a(34a)と第二の直線部31b(34b)との接続部の形状を、積層基板2の角の形状に合わせて、図10に例示したように、角が丸まった形状や角がカットされた形状としてもよい。また、図1に示す積層基板2の形状であっても、上記接続部の形状を、図10に例示したように、角が丸まった形状や角がカットされた形状としてもよい。
【0057】
図10の例では、第二の直線部31b(34b)は、方向Yにおける第一の直線部31a(34a)の第二の端部E2側の端よりも第二の端部E2側の位置から辺2Xに沿って第一の端部E1から離れる方向に延びる構成となる。なお、図10は、図8に示した確認パターン31、34の変形例として示しているが、図3及び図4に示した確認パターン31、34の第一の直線部31a(34a)と第二の直線部31b(34b)においても、図10に示した構成を適用可能である。
【0058】
図5に示した確認パターン32の外縁形状は、確認パターン31の内縁31eの形状と同一であってもよく、図6に示した確認パターン33の外縁形状は、確認パターン31の内縁31eの形状と同一であってもよい。
【0059】
アンテナ4、5は、円環状に配置されるアンテナコイルによって構成されるものとしたが、アンテナコイルの形状はこれに限定されるものではなく、例えば多角形状のループ状(環状)であってもよい。
【0060】
以上説明してきたように、本明細書には以下の事項が開示されている。
(1)
情報が記録される媒体と非接触にて情報を送受信するための通信用素子がそれぞれ形成された少なくとも2つの導体層を有し、前記導体層が絶縁層を挟んで積層された積層基板であって、
各導体層の外形は、第一の方向に延び且つ前記第一の方向に直交する第二の方向に並ぶ2つの第一の辺と、前記第二の方向に延び且つ前記第一の方向に並ぶ2つの第二の辺と、を含む形状であり、
前記導体層のうちの最も外側に配置されている2つの前記導体層である外側導体層の各々は、隣接する前記第一の辺及び前記第二の辺における当該第一の辺の当該第二の辺に近い側の第一の端部及び当該第二の辺の当該第一の辺に近い側の第二の端部の隣に形成された第一のパターンを有し、
前記第一のパターンは、前記第一の辺に沿って延びる第一の直線部と、前記第一の方向における前記第一の直線部の前記第二の端部側の端の位置と同じ又は当該位置よりも前記第二の端部側の位置から前記第二の辺に沿って前記第一の端部から離れる方向に延びる第二の直線部と、を備える積層基板。
【0061】
(1)によれば、第一のパターンの第一の直線部と、これに隣接する導体層の第一の辺との距離と、第一のパターンの第二の直線部と、これに隣接する積層基板の第二の辺との距離とを目視にて確認することで、外側導体層に含まれる通信用素子が、この外側導体層にて設計通りに配置されているかどうかを判断することができる。このため、積層基板を機器に組み込んだときの機器の通信品質の低下を防ぐことができる。
【0062】
(2)
(1)記載の積層基板であって、
2つの前記第一のパターンは、同一形状である積層基板。
【0063】
(2)によれば、一方の外側導体層における通信用素子の位置の確認と、他方の外側導体層における通信用素子の位置の確認とを同じ形状のパターンの目視にて行うことができるため、位置ずれの確認がしやすくなる。
【0064】
(3)
(1)又は(2)記載の積層基板であって、
前記第一のパターンの外形は矩形である積層基板。
【0065】
(3)によれば、第一のパターンの外形と積層基板の4つの辺とが全て直線となるため、位置ずれの確認がしやすくなる。また、第一のパターンの形成を容易に行うことができる。
【0066】
(4)
(1)から(3)のいずれか1つに記載の積層基板であって、
前記第一のパターンは環状であり、
前記第一のパターンの内縁の形状は、矩形又は円形であり、
前記導体層は、2つの前記外側導体層の間に配置された少なくとも1つの内側導体層を含み、
前記内側導体層は、前記第一のパターンの内側と重なる領域に第二のパターンを有しており、
前記第二のパターンの外縁の形状は、前記第一のパターンの前記内縁の形状と相似形且つ当該形状よりも小さい形状、或いは、前記第一のパターンの前記内縁の形状と同一の形状である積層基板。
【0067】
(4)によれば、第一のパターンの内縁と第二のパターンの外縁との距離によって、外側導体層と内側導体層との積層ずれを容易に確認することができる。第一のパターンによって外側導体層における位置ずれがないことが確認され、その上で、第二のパターンによって外側導体層に対し内側導体層の積層ずれがないことが確認されれば、積層基板を機器に組み込んだ場合の内側導体層の機器に対する位置ずれも発生しないことになる。このため、機器の通信品質の低下を防ぐことができる。
【0068】
(5)
(4)記載の積層基板であって、
前記内側導体層を2つ含み、
前記第二のパターンは環状であり、
前記2つの前記内側導体層の一方が有する前記第二のパターンは、前記2つの前記内側導体層の他方が有する前記第二のパターンと同じ形状のパターンであり、前記一方の前記内側導体層は、当該パターンの内側に形成され、当該形状と相似形且つ当該形状よりも小さい第三のパターンを更に備える積層基板。
【0069】
(5)によれば、積層基板を表側から見た状態と裏側から見た状態とのいずれの状態においても、外側導体層と内側導体層の積層ずれを同条件にて確認することができる。このため、積層ずれの確認精度を高めることができる。
【0070】
(6)
(4)記載の積層基板であって、
前記内側導体層を4つ含み、
前記第二のパターンは環状であり、
最も内側にある2つの前記内側導体層に形成された前記第二のパターンは、当該最も内側の内側導体層と前記外側導体層の間にある前記内側導体層に形成された前記第二のパターンよりも小さい積層基板。
【0071】
(6)によれば、隣り合う2つの導体層同士の積層ずれの確認がしやすくなる。
【0072】
(7)
(4)から(6)のいずれか1つに記載の積層基板であって、
前記第一のパターンの内側の領域の前記第一の方向及び前記第二の方向の各々の幅から、前記第二のパターンの前記第一の方向及び前記第二の方向の各々の幅を引いた値は、前記導体層の積層ずれとして許容されるずれ量の範囲内である積層基板。
【0073】
(7)によれば、外側導体層の第一のパターンの内縁と内側導体層の第二のパターンが接触していなければ、これら外側導体層と内側導体層の積層ずれが許容範囲にあると判断することができる。このため、積層ずれのずれ量の確認を直感的且つ容易に行うことができる。
【0074】
(8)
(1)から(7)のいずれか1つに記載の積層基板であって、
前記通信用素子は、円環状のアンテナを含む積層基板。
【0075】
円環状のアンテナの場合、積層基板の外形の辺とアンテナとが平行にならず、導体層内におけるアンテナの位置ずれを確認しにくい。そのため、第一のパターンを有する構成が特に有効となる。
【0076】
(9)
(1)から(8)のいずれか1つに記載の積層基板を備える通信端末。
【0077】
(9)によれば、通信品質の低下を防ぐことができる。
【0078】
(10)
(1)から(8)のいずれか1つに記載の積層基板を備えるカードリーダ。
【0079】
(10)によれば、情報読み取りのための通信品質の低下を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0080】
1 非接触式通信モジュール
2 積層基板
4,5 アンテナ
21,24 外側導体層
22,23 内側導体層
2Y 辺(第一の辺)
2X 辺(第二の辺)
Y 方向(第一の方向)
X 方向(第二の方向)
E1 第一の端部
E2 第二の端部
30 確認パターン
31,34 確認パターン(第一のパターン)
32 確認パターン(第二のパターン)
33b パターン(第二のパターン)
33a パターン(第三のパターン)
31a,34a 第一の直線部
31b,34b 第二の直線部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10