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特許7149123性能表のデータリンク機能を有するフライトマネジメントシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】性能表のデータリンク機能を有するフライトマネジメントシステム
(51)【国際特許分類】
   B64D 47/00 20060101AFI20220929BHJP
   B64F 5/10 20170101ALI20220929BHJP
【FI】
B64D47/00
B64F5/10
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018134221
(22)【出願日】2018-07-17
(65)【公開番号】P2019051924
(43)【公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-07-12
(31)【優先権主張番号】15/662,020
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム, グン, ザ セカンド
(72)【発明者】
【氏名】アルカンターラ, ロイ エス.
(72)【発明者】
【氏名】モスカリク, スティーヴン ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】アルキャビン, モニカ エス.
(72)【発明者】
【氏名】クライン, キャロライン
(72)【発明者】
【氏名】コアン, イアン
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-124813(JP,A)
【文献】特開2013-177120(JP,A)
【文献】特開2012-203907(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0093219(US,A1)
【文献】米国特許第09542851(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 47/00
B64F 5/10
B64F 5/00
B64D 45/00
G08G 5/00
G07C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行機の機上で実施される、
(a)飛行中にリアルタイムで測定されたトリップパラメータの値を取得するステップ、
(b)少なくとも、現在の性能表に保存された性能データを使用して、前記トリップパラメータの第1の予測値を計算するステップ、
(c)前記リアルタイムで測定された値の、前記第1の予測値からの乖離の大きさを計算するステップ、
(d)前記乖離の前記大きさが、所定の閾値を超過しているか否かを判定するステップ
(e)ステップ(d)で前記乖離の前記大きさが前記所定の閾値を超過していると判定した後に、更新された性能データに対するダウンリンク要求を送信するステップ、
(f)ステップ(d)における前記乖離の前記大きさが前記所定の閾値を超過しているとの判定に応答して、前記飛行機に機載の制御表示ユニットの画面上に要求欄を表示するステップ、及び
(g)前記要求欄に関連付けられた前記制御表示ユニットのライン選択キーを操作するステップ
を含む方法であって、ステップ(a)から(d)は前記飛行機の機上でコンピュータシステムによって実施され、ステップ(e)は前記飛行機の機上で通信管理ユニットによって実施され、ステップ(e)は、ステップ(g)に応答して自動で実施される、方法。
【請求項2】
記制御表示ユニットを使用して、前記所定の閾値を手動で設定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
新された性能データを含むアップリンクメッセージを受信すること、及び
記アップリンクメッセージの形式が正しいかどうかを判定することをさらに含み、
前記アップリンクメッセージを受信することは、前記通信管理ユニットによって実施され、前記アップリンクメッセージの形式が正しいかどうかを判定することは、前記コンピュータシステムによって実施される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記更新された性能データは、第1の変数の値第1の数だけ及び第2の変数の値第2の数だけ含む更新された性能表データであり、前記アップリンクメッセージの形式が正しいかどうかを判定することは、前記第1の数と第2の数が等しいかどうかを判定することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記更新された性能データは、複数の多項式の、係数のセット第1の数だけ及び指数のセット第2の数だけ含む更新された性能曲線データであり、前記アップリンクメッセージの形式が正しいかどうかを判定することは、前記第1の数及び前記第2の数のどちらもが、前記多項式の次数プラス1に等しいかどうかを判定することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
更新された性能データは、3つ以上の変数の値をそれぞれの数だけ含む更新された性能表データであり、前記アップリンクメッセージの形式が正しいかどうかを判定することは、前記3つ以上の変数のうちの1つの値の数が、3つ以上の変数のうちの残りの値の数の積と等しいかどうかを判定することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
新された性能データを含むアップリンクメッセージを受信することであって、前記更新された性能データは、更新された性能表を表す更新された性能表データ、及び/または更新された性能曲線を表す更新された性能曲線データを含む、受信すること、及び
個別の更新された性能表及び/または曲線を承認または却下することをさらに含
前記承認または却下することは、制御表示ユニット上のライン選択キーを操縦士が操作することによって実施される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
承認した前記性能表及び/または曲線のどれをフライトマネジメントシステムで使用するかを選択することをさらに含、前記選択することは、前記制御表示ユニット上のライン選択キーを前記操縦士が操作することによって実施される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
新された性能データを含むアップリンクメッセージを受信すること、及び
新された性能表を作成するために、前記現在の性能表に前記更新された性能データを追加することをさらに含
前記アップリンクメッセージを受信することは、前記通信管理ユニットによって実施され、前記更新された性能データを追加することは、前記コンピュータシステムによって実施される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
行セグメントの、開始ウェイポイント及び終了ウェイポイントを特定すること
記開始ウェイポイントで開始し前記終了ウェイポイントで終了する飛行セグメントに関する、前記更新された性能データのうちの少なくともいくつかを使用して、前記トリップパラメータの第2の予測値を計算すること、及び、
2の予測値を表す英数字のコードを表示すること、をさらに含
前記開始ウェイポイント及び前記終了ウェイポイントを特定することは、操縦士によって制御表示ユニットを用いて実施され、前記第2の予測値を計算することは、前記コンピュータシステムによって実施され、前記英数字のコードを表示することは、前記制御表示ユニットによって実施される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
飛行機の機載システムであって、コンピュータシステム及び、前記コンピュータシステムと通信する通信管理ユニットを備え、前記コンピュータシステムが、
(a)飛行中にリアルタイムで測定されたトリップパラメータの値を取得し、
(b)少なくとも、現在の性能表に保存された性能データを使用して、前記トリップパラメータの第1の予測値を計算し、
(c)前記リアルタイムで測定された値の、第1の予測値からの乖離の大きさを計算し、
(d)前記乖離の前記大きさが、所定の閾値を超過しているか否かを判定し、
(e)ステップ(d)で、操縦士の介入なしに行われた、前記乖離の前記大きさが前記所定の閾値を超過しているとの判定に応答して、更新された性能データのダウンリンク要求を送信するよう、通信管理ユニットに命令し、
(f)ステップ(d)における前記乖離の前記大きさが前記所定の閾値を超過しているとの判定に応答して、前記飛行機に機載の制御表示ユニットの画面上に要求欄を表示し、
(g)前記要求欄に関連付けられた前記制御表示ユニットのライン選択キーの操作を受信するように構成されており、
前記通信管理ユニットは、前記コンピュータシステムからのダウンリンク要求を送信する命令の受領に応答して、更新された性能データに対するダウンリンク要求を送信するように構成されている、飛行機の機載システム。
【請求項12】
記通信管理ユニットは、更新された性能データを含むアップリンクメッセージを受信するようにさらに構成されており、
前記コンピュータシステムは、更新された性能表を作成するため、現在の性能表に前記更新された性能データを追加し、前記更新された性能データのうちの少なくともいくつかを使用してトリップパラメータの第2の予測値を計算し、前記制御表示ユニットに第2の前記予測値を表示するよう命令するようにさらに構成されており、
前記制御表示ユニットは、前記第2の予測値を表示する命令を前記コンピュータシステムから受領するのに応答して、前記第2の予測値を表す英数字のコードを表示するように構成されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記制御表示ユニットは、操縦士が入力した開始ウェイポイント及び終了ウェイポイントを前記コンピュータシステムに通信するようにさらに構成されており、前記コンピュータシステムは、前記開始ウェイポイントで開始し前記終了ウェイポイントで終了する飛行セグメントに関する前記トリップパラメータの前記第2の予測値を計算する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
飛行機の機上で実施される、
(a)飛行中にリアルタイムで測定されたトリップパラメータの値を取得するステップ、
(b)少なくとも、現在の性能表に保存された性能データを使用して、前記トリップパラメータの第1の予測値を計算するステップ、
(c)前記リアルタイムで測定された値の、前記第1の予測値からの乖離の大きさを計算するステップ、
(d)前記乖離の前記大きさが、所定の閾値を超過しているか否かを判定するステップ、
(e)ステップ(d)で前記乖離の前記大きさが前記所定の閾値を超過していると判定した後に、更新された性能データに対するダウンリンク要求を送信するステップ、
(f)更新された性能データを含むアップリンクメッセージを受信するステップであって、前記更新された性能データは、更新された性能表を表す更新された性能表データ、及び/または更新された性能曲線を表す更新された性能曲線データを含む、受信するステップ、及び
(g)各個別の更新された性能表及び/または曲線を承認または却下するステップ
を含む方法であって、前記承認または却下するステップは、制御表示ユニット上のライン選択キーを操縦士が操作することによって実施され、ステップ(a)から(d)は前記飛行機の機上でコンピュータシステムによって実施され、ステップ(e)は前記飛行機の機上で通信管理ユニットによって実施される、方法。
【請求項15】
飛行機の機載システムであって、コンピュータシステム及び、前記コンピュータシステムと通信する通信管理ユニットを備え、前記コンピュータシステムが、
(a)飛行中にリアルタイムで測定されたトリップパラメータの値を取得し、
(b)少なくとも、現在の性能表に保存された性能データを使用して、前記トリップパラメータの第1の予測値を計算し、
(c)前記リアルタイムで測定された値の、第1の予測値からの乖離の大きさを計算し、
(d)前記乖離の前記大きさが、所定の閾値を超過しているか否かを判定し、
(e)ステップ(d)で、操縦士の介入なしに行われた、前記乖離の前記大きさが前記所定の閾値を超過しているとの判定に応答して、更新された性能データのダウンリンク要求を送信するよう、前記通信管理ユニットに命令し、
(f)更新された性能データを含むアップリンクメッセージを受信し、ここで前記更新された性能データは、更新された性能表を表す更新された性能表データ、及び/または更新された性能曲線を表す更新された性能曲線データを含むものであり、
(g)各個別の更新された性能表及び/または曲線を承認または却下することを示す、制御表示ユニット上のライン選択キーを受信するように構成されており、
前記通信管理ユニットは、前記コンピュータシステムからのダウンリンク要求を送信する命令の受領に応答して、更新された性能データに対するダウンリンク要求を送信するように構成されている、飛行機の機載システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本書で開示する技術は、概して、飛行機用のフライトマネジメントシステム(FMS)に関する。具体的には、フライトマネジメントシステムにおける、予測飛行プロファイル及び関連するトリップ予測パラメータを計算する技法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の飛行機の操縦室内に設置されているフライトマネジメントシステムは、飛行に関する様々の枢要な役割を果たしている。例えば、ナビゲーション、ガイダンス、飛行計画、データリンク、及び性能である。性能に関する役割として、フライトマネジメントシステムは、性能データベースに保存された空力及び推進の性能データ(以下、「ベースライン性能データ」と称する)を利用して、予測飛行プロファイル及び、速度、高度、到着予定時刻(ETA)、及び予測燃料消費量といった関連するトリップ予測パラメータを計算する、様々な内部アルゴリズム(以下、「性能アルゴリズム」と称する)を有する。しかし、飛行機の特性は、飛行機の空力性能及び推進性能に生じる小さいけれども漸進的な変化によって、経時的に変化し得る。例えば、修理、アンテナ、設定変更などといった機体の変化や、エンジンの劣化によって、飛行機の燃料流量及び抗力特性は、経時的に変化する。その結果、飛行機が運航を続けるのにつれて、性能アルゴリズム及びベースライン性能データは、時間と共に実際の飛行機の性能から乖離し得る。それによって、飛行機の真の性能を反映するため、航空会社が性能データベースを最新の表でタイムリー且つ効率的に更新したがるという状況が作り出される。
【0003】
多くの航空会社が、個々の飛行機の真の燃料流量及び抗力特性を反映するために、地上での大規模な飛行/燃料計画立案を通じて燃料性能を向上させたいと思っている。フライトマネジメントシステムにおける性能データベースは、通常、飛行機が顧客の航空会社に引き渡される前に制御された環境で行われる一連の飛行試験結果を表す、空力データ及び推進データを含んでいる。飛行機の真の性能を反映するためには、性能データベースを最新の表でタイムリー且つ効率的に更新することが必要である。現在は、データリンクを介してフライトマネジメントシステム内の性能データベース表を更新することは可能ではない。実際、現在のFMSデータリンクは、いかなるデータであっても、テーブル形式または多項式(即ち曲線)形式でアップリンクまたはダウンリンクすることができない。
【0004】
新しい(即ち更新された)性能データベースの、フライトマネジメントシステムへの送信を開始するには、飛行機が地上で止まっている間に、整備クルーが、飛行機の操縦室から性能データベースのダウンリンク要求を送信する必要がある。これは通常、航空会社にとって、時間と人件費を増大させる。整備クルーが操縦室に入って新しい性能データベースをフライトマネジメントシステム内にロードすることができる時間は、非常に限られている。
【0005】
FMSのデータリンク機能を経由してアップロードされた性能表を組み込むように構成された、フライトマネジメントシステムを提供することが有利であろう。
【発明の概要】
【0006】
以下で詳細に開示されている主題は、飛行機特性の変化をモニタリングすることが可能なフライトマネジメントシステムを対象にしている。フライトマネジメントシステムは、更新された飛行機性能表/曲線データを、地上局からデータリンクを介してアップロードできるようにする、データリンク管理機能付きで構成されている。(本書で使用する場合、「表/曲線データ」という用語は、表または曲線のどちらかの形式であるデータを意味する)。フライトマネジメントシステムは、更新された空力性能及び推進性能のデータをデータリンクを介して受信したのを受けて、データベース内の一式の飛行機性能表または曲線を作成または更新する。この飛行機性能表または曲線は、飛行プロファイル、並びに、到着予定時刻及び予測燃料消費量といったトリップ予測パラメータを、より正確に計算するために使用され得る。それによって、フライトマネジメントシステムに最新の性能表を送達することに関わるコストを削減し得る。
【0007】
具体的には、本書では、性能表/曲線データのフライトマネジメントシステムへのアップリンクを可能にし、それによって最新の性能データを迅速かつ効率的に飛行機に配備できるようにする、システム及び方法が提案される。本書で開示されるデータリンク機能は、動作の上では、既存のデータリンク機能と同様なものであろう。更新された性能表/曲線データがフライトマネジメントシステムにアップリンクされた後は、操縦士は、新しい性能データ表または曲線に関する基本的情報をレビューし、これらを操縦室の制御表示ユニット(以下、「CDU」と称する)の適切なページ上で承認するか、または却下することが可能である。CDUは、操縦士が様々な他の航空機システムをモニタリングして制御するのを可能にする、インターフェースシステムである。CDUは、航空機のフライトマネジメントシステムに関する主要インターフェースである。
【0008】
最新の性能データ表及び/または曲線を保存することは、飛行機の性能値の予測の更新を計算する性能アルゴリズムによって補正または更新されたデータが常時使用されるのを回避することで、フライトマネジメントシステムにとって利益になる。飛行機の正しい性能値の予測は、単にデータ表または曲線内で検索することができ、それによってFMSの計算リソースが解放される。これはまた、計算の面でも効率が良い。
【0009】
ある実施形態によると、機載の性能表に基づいて計算された性能値の予測がリアルタイムの性能値とマッチしないことがフライトマネジメントシステムによって検出されたときに、更新された性能表/曲線データに対するダウンリンク要求を自動または手動で送信する方法が、提供される。これは、(リアルタイムで測定された飛行機の特性値の、飛行機の予測特性値からの乖離が、所定の閾値パーセント以上であるというように)特定の閾値に基づいていることができるか、または、(一定の時間間隔または全フライト前といったように、)特定の期間に基づいていることができる。これらの閾値と期間は、種々の航空会社によってカスタマイズすることが可能である。
【0010】
同じ実施形態または別の実施形態によると、地上ベースのシステムから飛行機に対してデータをアップリンクする方法が提供される。この方法は、(2つ以上の変数の値を含む)性能表または(複数の多項式の係数及び指数の値を含む)曲線を、飛行機に機載のフライトマネジメントシステムのメモリ内に迅速かつ効率的にロードするための、アップリンクメッセージプロトコルを使用している。航空機乗組員は、直ちに新しい値を使用して更新された性能表/曲線を活用するか、または後刻まで待つかを選択することができる。新しく受信したデータアップリンクは、現在の飛行で使用するか、または、将来の複数回の飛行のために、それまでの間もしくは整備クルーがこのデータアップリンクを削除または更新すると決めるまでの間、非一過性で有形のコンピュータ可読記憶媒体(例えばメモリ)内に保存することができる。
【0011】
同じ実施形態または別の実施形態によると、種々の飛行フェーズに対して、更新された性能表または曲線を選択的に適用する方法が提供される。データを一旦受け入れるとデータ一式全体を使用しなければならない既存のフライトマネジメントシステムのデータリンクメッセージとは異なり、飛行計画のどのサブセットに更新された性能表または曲線を適用するかを、航空機乗組員が特定することができる。これによって、航空機乗組員が飛行機を制御する方法に関してさらなる柔軟性が提供され、航空機乗組員が更新された性能表または曲線のエラーを検出した場合、これらを無効化してベースライン性能データベースに復帰するための手段が提供される。また、これによって、更新された性能表または曲線の使用によって実現し得る性能のメリットを、航空機乗組員がリアルタイムで見る機会が与えられる。
【0012】
予測飛行プロファイル及び関連するトリップ予測パラメータを計算するための、システム及び方法の様々な実施形態を一定の詳細で以下に開示するが、これらの実施形態のうちの1つ以上は、以下の態様うちの1つ以上によって特徴づけられていてよい。
【0013】
以下で詳細に開示する本主題の一態様は、飛行機の機上で実施される、(a)現在の飛行中または過去の飛行中にリアルタイムで測定されたトリップパラメータの値を取得するステップ、(b)少なくとも、現在の性能表に保存された性能データを使用して、トリップパラメータの第1の予測値を計算するステップ、(c)リアルタイムで測定された値の、第1の予測値からの乖離の大きさを計算するステップ、(d)乖離の大きさが、所定の閾値を超過しているか否かを判定するステップ、及び、(e)ステップ(d)で乖離の大きさが所定の閾値を超過していると判定した後に、更新された性能データに対するダウンリンク要求を送信するステップを含み、ステップ(a)から(d)は飛行機の機上でコンピュータシステムによって実施され、ステップ(e)は飛行機の機上で通信管理ユニットによって実施される、方法である。本方法は、ステップ(e)の後に実施される、(f)更新された性能データを含むアップリンクメッセージを受信するステップ、及び(g)更新された性能表を作成するために、現在の性能表に更新された性能データを追加するステップをさらに含んでいてよく、ステップ(f)は通信管理ユニットによって実施され、ステップ(g)はコンピュータシステムによって実施される。ある実施形態によると、アップリンクメッセージは、更新された性能表を表す更新された性能表データ、及び/または更新された性能曲線を表す更新された性能曲線データを含む。操縦士は、制御表示ユニット上のライン選択キーを操作することによって、各個別の更新された性能表及び/または曲線を、承認するかまたは却下し得る。
【0014】
上記の段落に記載された本方法は、(h)飛行セグメントの、開始ウェイポイント及び終了ウェイポイントを特定するステップ、(i)開始ウェイポイントで開始し終了ウェイポイントで終了する飛行セグメントに関する、更新された性能データのうちの少なくともいくつかを使用して、トリップパラメータの第2の予測値を計算するステップ、及び、(j)第2の予測値を表す英数字のコード(symbology)を表示するステップをさらに含んでいてよく、ステップ(h)は操縦士によって制御表示ユニットを用いて実施され、ステップ(i)はコンピュータシステムによって実施され、ステップ(j)は制御表示ユニットによって実施される。
【0015】
以下で詳細に開示される本主題の別の態様は、飛行機の機上で実施される、(a)更新された性能データに対するダウンリンク要求を送信するステップ、(b)更新された性能データを含むアップリンクメッセージを受信するステップ、(c)更新された性能表を作成するため、現在の性能表に更新された性能データを追加するステップ、(d)更新された性能データのうちの少なくともいくつかを使用して、トリップパラメータの第1の予測値を計算するステップ、(e)第1の予測値を表す英数字のコードを表示するステップ、をさらに含み、ステップ(a)及び(b)は飛行機の機上で通信管理ユニットを用いて実施され、ステップ(c)及び(d)は飛行機の機上でコンピュータシステムによって実施され、ステップ(e)は飛行機の機上で制御表示ユニットによって実施される、方法である。
【0016】
以下で詳細に開示する本主題の一態様は、飛行機の機載システムであって、コンピュータシステム及び、コンピュータシステムと通信する通信管理ユニットを備え、コンピュータシステムが、(a)現在の飛行中または過去の飛行中にリアルタイムで測定されたトリップパラメータの値を取得し、(b)少なくとも、現在の性能表に保存された性能データを使用して、トリップパラメータの第1の予測値を計算し、(c)リアルタイムで測定された値の、第1の予測値からの乖離の大きさを計算し、(d)乖離の大きさが、所定の閾値を超過しているか否かを判定し、(e)ステップ(d)で、操縦士の介入なしに行われた、乖離の大きさが所定の閾値を超過しているとの判定に応答して、更新された性能データのダウンリンク要求を送信するよう、通信管理ユニットに命令するように構成されており、通信管理ユニットは、コンピュータシステムからのダウンリンク要求を送信するという命令の受領に応答して、更新された性能データに対するダウンリンク要求を送信するように構成されている、システムである。本システムは、コンピュータシステムと通信する制御表示ユニットをさらに備える。制御通信ユニットは、更新された性能データを含むアップリンクメッセージを受信するようにさらに構成されており、コンピュータシステムは、現在の性能表に更新された性能データを追加し、更新された性能データのうちの少なくともいくつかを使用してトリップパラメータの第2の予測値を計算し、制御表示ユニットに第2の予測値を表示するよう、命令するように構成されており、制御表示ユニットは、第2の予測値を表示する命令をコンピュータシステムから受領するのに応答して、第2の予測値を表す英数字のコードを表示するように構成されている。ある実施形態によると、制御表示ユニットは、操縦士がコンピュータシステムに入力した開始ウェイポイント及び終了ウェイポイントを通信するようにさらに構成されており、コンピュータシステムは、開始ウェイポイントで開始し終了ウェイポイントで終了する飛行セグメントに関する、トリップパラメータの第2の予測値を計算する。
【0017】
予測飛行プロファイル及び関連するトリップ予測パラメータを計算するためのシステム及び方法の他の態様が、以下で開示される。
【0018】
上記の特徴、機能、及び利点は、様々な実施形態において個別に実施することが可能であるか、またはさらに別の実施形態において組み合わされてよい。上記の態様及び他の態様を説明するため、以下で、図面を参照して様々な実施形態について記載する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】典型的なフライトマネジメントシステムの全体構造を示すブロック図である。
図2】更新された飛行機の性能表または曲線のデータがデータリンクを介して受信される一実施形態による、フライトマネジメントシステムのいくつかの構成要素を特定するブロック図である。
図3】民間航空機用の制御表示ユニットの前面図である。
図4】更新された飛行機の性能表または曲線のデータに対するダウンリンク要求を、自動または手動で送信するのに使用され得る、様々な設定可能な性能因子(即ち、燃料流量閾値、抗力閾値、及び継続期間)を示す、CDUの1ページを表す図である。
図5】ライン選択キー5R上の要求(REQUEST)欄を示す、CDUの1ページを表す図である。この欄は、航空機乗組員が更新された飛行機の性能表または曲線のデータに対するダウンリンク要求を手動で送信するのに使用される。この欄は、図4に表示されている条件のうちの1つが満足されたときにのみ、表示されてよい。
図6】フライトマネジメントシステムの判定ロジックによって実施されるいくつかのステップを含む、一実施形態による、アップリンクされた表または曲線を承認するかまたは却下するかに関するアルゴリズムのステップを特定するフローチャートである。
図7】アップリンクされた飛行機の性能表または曲線のリストを示す、CDUの1ページを表す図である。性能表または曲線のリストは、各アップリンクされた飛行機の性能表または曲線を個別に承認するかまたは却下するために、航空機乗組員によって使用される。
図8】フライトマネジメントシステムの判定ロジックによって実施されるいくつかのステップを含む、一実施形態による、承認した表または曲線のどれをフライトマネジメントシステムで使用するかの選択に関する、アルゴリズムのステップを特定するフローチャートである。
図9】承認された飛行機の性能表または曲線のリストを示す、CDUの1ページを表す図である。性能表または曲線のリストは、承認された性能表または曲線のどれをフライトマネジメントシステムで使用するかを個別に選択するために、航空機乗組員によって使用される。
図10図9に示すCDUのページを使用して選択された飛行機の性能表または曲線を使用するための開始ウェイポイント及び終了ウェイポイントを、航空機乗組員が特定できるようにするための、CDUの1ページを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下で図面を参照する。別々の図面中にある同様の要素には、同一の参照番号が付されている。
【0021】
改良された航空電子工学のフライトマネジメントシステムの例示的な実施形態が、以下に一定の詳細で記載される。しかしながら、本明細書中には、実際の実装のすべての特徴が記載されているわけではない。いかなるこうした実際の実施形態の開発においても、実装によって異なるシステム関連の制約及び事業関連の制約の順守といった、開発者の特定の目的を達成するためには、多数の実装ごとに固有の判断を行う必要があることは、当業者に理解されるであろう。さらに、こうした開発に伴う努力は、込み入った時間のかかるものであるかもしれないが、本開示から恩恵を受ける当業者にとって、取り組むべき所定の事柄であることは、理解されるだろう。
【0022】
飛行機の性能は、性能特性を変化させるための何らかの修理作業や設定変更がその飛行機に対して行われたのでない限り、一夜にして変化するものではなく、ましてやいくつかの飛行の間に変化するものではない可能性が高い。むしろ、こうした変化は漸進的なものであり、それによって地上のシステムが、経時的に(例えば1か月にわたって)飛行機の性能のデータを収集し得ることが予期される。データの収集は、複数の方法で行われ得る。例えば、飛行機が地上にある間に整備クルーが飛行機まで行って、データをダウンロードすることができる。または、飛行機が空港のゲートに駐機するときに、自動的にデータを送信するシステムが存在することもできる。または、飛行機がリアルタイムでデータを送信することもできる。すると次には、この期間中に収集されたデータを使用して、地上のシステムが性能データを分析し、更新された表または曲線を生成するであろう。更新された表または曲線はコンピュータメモリに保存され、アップロードに向けて準備される。新しい表/曲線は、現在の飛行、またはいくつかの過去の飛行をさえも反映していない可能性があるが、それでもなお新しい表/曲線は、非常に正確なはずである。なぜならば、これらは1か月という期間にわたるデータを反映しているからである。次に、ある飛行中に、リアルタイムの飛行機の性能が、(既にフライトマネジメントシステム内にある)ベースライン性能データベースによって表される予測された飛行機の性能から絶えず過度に乖離することが、フライトマネジメントシステムによって検出されたとき、または、恐らく単に最後の更新から1か月が経過したときには、フライトマネジメントシステムは、更新した表/曲線を飛行機にアップリンクするよう要求するダウンリンクを、地上ベースのシステムに対して送信する。したがって、地上ベースのシステムが、リアルタイムの飛行機の性能が何であるかを知る必要はないのである。地上ベースのシステムは、単にフライトマネジメントシステムによってダウンリンクされた要求に対して応答し、更新された表/曲線を飛行機に対してアップリンクするだけである。
【0023】
図1は、1つ以上のフライトマネジメント用コンピュータ及び1つ以上の制御表示ユニットを備えるタイプの、典型的なフライトマネジメントシステム10の全体構造を示すブロック図である。図1では、1つのフライトマネジメント用コンピュータ12及び1つの制御表示ユニット(CDU)14のみが示されている。CDUは、フライトマネジメント用コンピュータ12と操縦士との間の主要インターフェースである。
【0024】
フライトマネジメント用コンピュータによって実行されるコンピュータコード(以下、「FMCソフトウェア」と称する)は、各飛行機情報管理システム(AIMS)のキャビネット内の各コアプロセッサ内に存在していてよい。FMCソフトウェアは、以下を含んでいてよい。フライトマネジメント機能、ナビゲーション機能18、推力管理機能20、及びベースライン性能データベース32(例えば、空力データ及び推進データを包含する空力/エンジンデータベース)。フライトマネジメント機能は、ガイダンス22、飛行計画24、データリンク管理機能26、性能管理機能28、CDUインターフェース、ベースライン性能データベース32へのインターフェース、及び他の諸機能を含む。ナビゲーション機能18は、センサ(慣性、無線、衛星)の選択、位置ソリューションの決定、及び他の機能を提供する。ナビゲーション機能18は、飛行計画、ガイダンス、及びディスプレイといった機能、並びにAIMSの外部の諸機能を支援するため、飛行機の状態と総称される、飛行機の位置、速度、トラック角度、及び他の飛行機のパラメータを計算する。
【0025】
フライトマネジメントシステム10は、大気データ、並びに慣性基準装置、ナビゲーションセンサ、エンジンセンサ及び燃料センサ、並びに他の飛行機システム(図1には図示せず)からの情報と共に、内部データベース及び、複数の機能を実施するために乗組員が入力したデータからの情報を、統合する。フライトマネジメント用コンピュータは、ナビゲーションデータベース(図1には図示せず)及びベースライン性能データベース32を含んでいてよい。
【0026】
フライトマネジメントシステム10は、性能管理機能28に関して、ベースライン性能データベース32内に保存された空力性能データ及び推進性能データを使用して、予測飛行プロファイル、並びにETA及び予測燃料消費量といった関連するトリップ予測パラメータを計算する、様々な内部アルゴリズムを有している。性能管理機能28は、空力モデル及び推進モデル、並びに最適化アルゴリズムを使用して、航空交通管制によって課された飛行計画の制約の範囲内で選択された性能モードと整合した、フルフライト形態の垂直プロファイルを生成する。性能管理機能28への入力は、燃料流量、全燃料量、フラップ位置、エンジンデータ及びエンジンリミット、高度、対気速度、マッハ数、大気温度、垂直速度、飛行プランに沿った進捗、並びに制御表示ユニット14からの操縦士による入力を含む。出力は、マッハ数の目標値、飛行機の最適な制御のための較正された対気速度及び推力の目標値、並びに乗組員に対する助言データである。
【0027】
経済上昇、経済巡航、及び長距離巡航といった、各飛行フェーズに関する様々な性能モードが、操縦士によって、制御表示ユニット14を通じて選択されてよい。巡航飛行のフェーズに対して、複数の性能モードが特定されてよい。デフォルトのモードは、速度制限付きの経済プロファイル(economy profile)である。経済プロファイルは、コスト指数の要因によって統御される、燃料コストまたは時間コストを最適化するために計算される。
【0028】
選択された性能モードに関する最適な垂直プロファイルを生成するために、空力モデル及び推進モデルが使用される。性能管理機能28の自動制御でオートスロットルまたはオートパイロットが使われていない場合、操縦士は、制御表示ユニット14及び速度テープ上のエアスピードバグ(airspeed bug)を参照することで、手動によって最適な速度スケジュールで飛行することができる。
【0029】
図1に示す実施形態によると、ベースライン性能データベース32は、機載のネットワークシステム(図1のONS)を使用して、データベースローダー16でロードされる。ベースライン性能データベース32は、飛行機の空力モデル、並びにエンジンのエンジン性能モデル及び推進速度(thrust rating)モデルに関する、あらかじめ保存されたデータを包含している。ベースライン性能データベース32は、制限速度及び目標速度といったリアルタイムのパラメータを計算するため、並びに飛行計画の予測といった予測に関する計算を実施するために、性能管理機能28によって使用される。ベースライン性能データベース32は、制限推力を計算するため、推力管理機能20によっても使用される。
【0030】
図1に示す性能管理機能28は、飛行機の性能データを、規定されたトリガに基づいて動的に作成・更新し、それによってフライトマネジメントシステム内の計算リソースのより良い利用を可能にする、性能アルゴリズムを実行するように構成されていることができる。図2に示すとおり、ベースライン性能データは、データベースローダー16によって、ベースライン性能データベース32内にロードされ得る。次に、性能アルゴリズム34は、ベースライン性能データベース32から関連するベースライン性能データを読み出し、予測トリップパラメータを計算するために使用する。この計算の結果は、航空機乗組員が見るために、制御表示ユニット14上に表示される。
【0031】
本書で詳細に開示されている実施形態によると、燃料流量及び抗力といった飛行機の特性の変化をモニタリングする機能を有する、改良されたフライトマネジメントシステムが提供され得る。所定の事象がトリガされたときに、フライトマネジメント用コンピュータが一式の動的な飛行機性能データ表または曲線を作成または更新するように、フライトマネジメント用コンピュータを構成することができる。それによって、性能アルゴリズムが最新の燃料流量データ及び抗力データを利用することが可能になる。フライトマネジメントシステムは、性能データ表内の更新された空力性能データ及び推進性能データを使用して、飛行プロファイル、並びに到着予定時刻及び予測燃料消費量といったトリップ予測パラメータを、さらに正確に計算することが可能である。
【0032】
性能データ表の入力/出力の定義は、フライトマネジメントシステム内か、または他のロード可能なデータベース内、もしくは他の既存のデータ表内に含まれていることができる。性能機能に関する更新データを有する性能データ表は、物理的な接続または無線接続を介して、フライトマネジメントシステムの外部の他のシステムへオフロードし、さらなる分析のために利用可能にすることができる。
【0033】
図2は、性能表36がフライトマネジメント用コンピュータ12内に存在し、デジタルデータリンクシステムを介して更新される一実施形態による、フライトマネジメントシステムのある構成要素を特定している。デジタルデータリンクシステムは、飛行機と地上局との間でショートメッセージを送信する。本書で開示されるデータリンク機能の実施に適切で、頻繁に使用されているデジタルデータリンクシステムは、航空機通信アドレス指定及び報告システム(ACARS)である。説明のため、ACARSを用いる例示のデータリンク方法を開示する。任意の他の適切な飛行機データリンク技術を(例えば、衛星を介して)使用することができる。
【0034】
ACARSシステムのうち飛行機に機載されている部分は、典型的には、飛行機と地上局との間の通信に使用される航空運航管理用アプリケーションが入っている、通信管理ユニット(CMU)30(図2参照)を含む。CMU30は、FMS内にあるAOCデータリンク用のプラットフォームを提供しており、それによって、飛行計画、風データなどの双方向通信が可能になる。本書で開示される実施形態によると、CMU30は、更新された飛行機の性能表または曲線のデータを生成するコンピュータシステムを有する地上局と、こうした更新された飛行機の性能表または曲線のデータを使用するフライトマネジメントシステムを有する飛行機との間の、双方向通信を可能にする。
【0035】
(地上局によって生成された、)更新された飛行機の性能表または曲線のデータを含む、アップリンクされた各メッセージが、CMU30によって受信される。データリンク管理機能26は、CMU30及び性能表36とのインターフェースとなるように構成されている。データリンク管理機能26は、操縦士によってCDU14に入力されたコマンドを表す制御信号(図2には図示せず)に応じて、性能表36に更新された性能データを追加するように、さらに構成されている。
【0036】
性能表36にデータが追加されると、性能表36は、性能アルゴリズム34によって使用される。図2に示すとおり、性能アルゴリズム34と性能表36との間に、双方向通信が存在している。また、性能アルゴリズム34とCDU14との間にも、双方向通信が存在している。こうして、操縦士はこの時点で、ベースライン性能データベース32を単独で使用するか、またはより正確な予測の計算のために性能表36と組み合わせて使用する、能力を有しているのである。
【0037】
ある実施形態によると、機載の性能表に基づいて計算された性能値の予測がリアルタイムの性能値とマッチしないことがフライトマネジメントシステム10によって検出されたときに、更新された性能表に対するダウンリンク要求を自動または手動で送信する方法が、提供される。これは、(測定された飛行機の特性値の、推定された飛行機の特性値からの乖離が、所定の閾値パーセント以上であるというように)特定の閾値に基づいていることができるか、または、(一定の時間間隔または全フライト前といったように、)特定の期間に基づいていることができる。これらの閾値と期間は、種々の航空会社によってカスタマイズすることが可能である。
【0038】
乖離が、何回かの飛行に関して航空会社が特定し得る特定の閾値(例えば、燃料流量の場合は1%)を超過している場合、フライトマネジメントシステム10は、より新しい(即ち更新された)性能表に対するダウンリンク要求を自動で送信し得るか、または、CDUのあるページ上に要求欄を表示して航空機乗組員にダウンリンク要求を送信する決定を促し得る。代替形態では、要求欄が常に表示され、操縦士がいつでもこの決定を行うことができる。フライトマネジメントシステムは、閾値の代わりに、NDBサイクルと同期するように30日ごとにダウンリンク要求を送信するように構成されていることができる。
【0039】
本書で提案される改良されたシステムのある実施形態によると、フライトマネジメントシステムは、燃料流量、抗力係数、及び期間といった様々な性能要因に関する特定された閾値%を、操縦士がCDU14を使って入力するように、構成されていることができる。
【0040】
図3は、民間航空機用のCDU14の前面図である。CDU14は、液晶ディスプレイ(LCD)スクリーン40及びキーパッド46を有する。キーパッド46は、CDUページキー、英数字入力キー、及び様々なCDU表示機能キーを含む。LCDスクリーン40は、少なくとも1つの入力欄、複数の表示ライン、及び表示ラインに対応する複数のライン選択キーを有し得る。典型的なCDU14は、12個の表示ラインと12個のライン選択キーを含み、このうち6個からなる一式44は左側に、6個からなる一式42は右側にある。LCDスクリーン40の左側にあるライン選択キーは、それぞれ1L~6Lの記号表示によって特定されており、一方でLCDスクリーン40の右側にあるライン選択キーは、それぞれ1R~6Rの記号表示によって特定されている。示されているCDU14の入力欄は、12番目の表示ラインの下方にあり、一般に「スクラッチパッド」と呼ばれる。スクラッチパッドは、入力の実行に先立って、レビュー用に全てのデータを保持するバッファである。キーパッド46を使ってCDU14内にデータがキー入力されると、入力された値は、LCDスクリーン40の底部にあるスクラッチパッド欄に表示される。CDUに情報を入力してCDU上で表示するための従来型の方法は、操縦士による多数の入力を必要とする。操縦士は、まずキーパッド46を使ってスクラッチパッドの入力欄に情報を入力し、次に、入力された情報を表示する表示ラインに関連付けられたライン選択キーの1つを押す。
【0041】
キーパッド46の標識された機能キーは、CDU14の特定の最上位のページを呼び出すためと、同時にそのページに表示される機能にライン選択キーを割り当てるためとに、使用される。飛行中は使用頻度が低いいくつかの機能は、インデックスキー及び飛行計画編集機能キーによって、次に各メニューページ上のライン選択キー1L~6L及び1R~6Rによって、アクセスされる。ライン選択キー1L~6L及び1R~6Rは、より下位のページにアクセスするか、機能モード間をトグルするか、関連付けられた欄にデータを入力するか、またはデータをスクラッチパッドにコピーするのに使用することができる。規定されていないライン選択キーが押下された場合には、いかなる操作も実行されず、いかなる告知も表示されない。
【0042】
図4は、LCDスクリーン40、並びにCDU14の(1L~6L及び1R~6Rと個別にマーキングされた)ライン選択キーの各セット42、44のみを表す図である。この例でLCDスクリーン40上に表示されているPERF FACTOR CDUのページは、燃料流量閾値の設定、抗力係数閾値の設定、及び継続時間の設定を含む。これらの設定に関する数値は、キーパッド46の数字キー(図3参照)を使って、スクラッチパッド上に個別に入力される。次に、適切なライン選択キー1L、2L、または3Lを使用して、所望の表示ラインが選択される。これらの設定によって、それぞれの所定の閾値が設定される。これらの所定の閾値は、超過されたときに、更新された飛行機の性能表または曲線のデータに対するダウンリンク要求を自動または手動で伝達するのをトリガするために、使用され得る。図4に示す例では、更新された性能データに対するダウンリンク要求は、以下に応じて送信される。(a)補正された燃料流量の、現在の燃料流量からの乖離が、所定の閾値1.5%以上になっている、(b)補正された抗力係数の、現在の抗力係数からの乖離が、所定の閾値2.0%以上になっている、または(c)直近のデータアップリンクから30日が満了している。
【0043】
図4に示すPERF FACTOR CDUページに表示されているあらかじめ設定された条件のうちの任意の1つが満足されると、LCDスクリーン40上に、図5に示すCDUページが表示される。このCDUページには、操縦士はいつでもアクセスできる。この例でLCDスクリーン40上に表示されているPERF LIMITS CDUページは、時間誤差許容範囲(この例では、要求到着時刻(RTA)ウェイポイント(WPT)における8秒)、並びに上昇(CLB)、巡航(CRZ)、及び下降(DES)の各飛行フェーズに関する最低速度及び最高速度を含む。このCDUページはまた、航空機乗組員がライン選択キー5Rを押下し、更新された飛行機の性能テーブルまたは曲線のデータに対するダウンリンク要求を手動で送信できることを表す、要求欄もまた示している。PERF LIMITS CDUページが表示されているときにライン選択キー5Rが押下されると、それに応答して、データリンク管理機能26は、ダウンリンク要求を地上局に送信するよう、CMU30に命令する。代替形態では、フライトマネジメント用コンピュータ12は、閾値のうちの1つが超過されたときに、データリンク管理機能26が、CMU30に対してダウンリンク要求を送信することを自動的に命令するようにプログラムされていてよい。
【0044】
本書で開示される実施形態によると、地上局から飛行機に対してデータをアップリンクする方法が提供される。この方法は、(2つ以上の変数の値を含む)性能表または(複数の多項式の係数及び指数の値を含む)曲線を、フライトマネジメントシステム10内に迅速かつ効率的にロードするための、アップリンクメッセージプロトコルを使用している。航空会社は既に、飛行計画、風、離陸データ、及び代替空港をアップロードするために、様々なフライトマネジメントシステムのデータリンクメッセージを使用しており、更新された性能表または曲線のデータを含むアップリンクメッセージは、操作の上では、既存のデータリンクメッセージと同様であるだろう。
【0045】
フライトマネジメントシステム10の一実施形態によると、新しい性能データをアップリンクする方法は2つある。第1のプロトコルによると、性能表アップリンクによって、フライトマネジメントシステム10に対して性能表データをアップリンクする機能が提供される。アップリンクされた性能表データは、非一過性で有形のコンピュータ可読記憶媒体内に、(2つ以上の次元を有する)性能表の形式で保存される。それによって、これらの値は、トリップ予測といった性能の計算のために、フライトマネジメントシステム10によって効率的に検索され使用され得る。第2のプロトコルによると、性能表曲線アップリンクによって、フライトマネジメントシステム10に対して性能表曲線のデータをアップリンクする機能が提供される。アップリンクされた性能表データは、非一過性で有形のコンピュータ可読記憶媒体内に、性能表曲線の形式で保存される。
【0046】
第1のプロトコルによると、性能表アップリンクによって、フライトマネジメントシステム10に対して性能表データをアップリンクする機能が提供される。各性能表メッセ-ジは、メッセージの識別のためにPET/PTというテキストストリングで開始され、性能データ表の次元を形成する各変数(即ちパラメータタイプ)を命名する、一連の埋め込まれた要素識別子がそれに続く。(例えば、変数の数がNである場合、性能データ表はN個の次元を有することになろう。)メッセージ中に埋め込まれた要素識別子の次には、各変数に関して、性能表データに含まれるそれぞれの値の数を表すデータが続く。メッセージの残りの部分は、各変数に関するそれぞれのセットの値からなる。このケースでは、フライトマネジメントシステムは、各変数に関する値の数が同じであるかどうかをチェックするように構成されている。フライトマネジメントシステムは、メッセージがロードされた時点でこのチェックを実施する。各変数に関する値の数が同じでない場合には、フライトマネジメントシステムは、操縦士がデータをレビューできるようになる前に、このメッセージを却下する。
【0047】
性能表アップリンクによって、フライトマネジメントシステム10に対して性能表データをアップリンクする機能が提供される。アップリンクされた性能表データは、任意の飛行フェーズにおいて処理され得る。一実施例によると、全ての性能表メッセ-ジは、メッセージの識別のためにPET/PTで開始され、埋め込まれた要素識別子がこれに続く。2次元(2D)の性能表に関する性能表メッセージの形式は、以下のとおりである。
PET/PT,NameX,NameZ,nX,mZ,X1,X2,…,Xn,Z1,Z2,…,Zm
式中、NameXは変数Xの名称、NameZは変数Zの名称、nXは変数Xの値の数、mZは変数Zの値の数、X1,X2,…,Xnは変数Xのそれぞれの値、Z1,Z2,…,Zmは変数Zのそれぞれの値である。この場合、変数Xの値の数、及び変数Zの値の数は、合致しなければならない(即ちn=mである)。フライトマネジメントシステム10は、メッセージがロードされた時点でこのチェックを実施する。これらの数が同じでない場合には、操縦士がデータをレビューできるようになる前に、このメッセージは却下される。
【0048】
3次元(3D)の性能表に関する性能表メッセージの形式は、以下のとおりである。
PET/PT,NameX,NameY,NameZ,nX,mY,pZ,X1,X2,…,Xn,Y1,Y2,…,Ym,Z1,Z2,…,Zp
式中、NameXは変数Xの名称、NameYは変数Yの名称、NameZは変数Zの名称、nXは変数Xの値の数、mYは変数Yの値の数、pZは変数Zの値の数、X1,X2,…,Xnは変数Xのそれぞれの値、Y1,Y2,…,Ymは変数Yのそれぞれの値、Z1,Z2,…,Zpは変数Zのそれぞれの値である。この場合、変数Xの値の数と変数Yの値の数の積は、変数Zの値の数と合致しなければならない(即ちn*m=pである)。フライトマネジメントシステム10は、メッセージがロードされた時点でこのチェックを実施する。これらの数が同じでない場合には、操縦士がデータをレビューできるようになる前に、このメッセージは却下される。
【0049】
上記のメッセージ形式は、任意の次元の性能表用のデータを含むように、拡張することができる。例えば、変数W、X、Y、Zを有する4Dの性能表の場合、変数Xの値の数と変数Yの値の数と変数Wの値の数の積は、変数Zの値の数と合致しなければならない。
【0050】
第2のプロトコルによると、性能曲線アップリンクによって、フライトマネジメントシステム10に対して性能曲線のデータをアップリンクする機能が提供される。アップリンクされた性能曲線データは、任意の飛行フェーズにおいて処理され得る。曲線は、表内の実験によるデータまたはシミュレーションされたデータに基づいて、地上局で作成される。各曲線に関して、その曲線に最もよくフィットする多項式が計算される。本書で使用する場合、「多項式」という用語は、変数及び係数からなっており、加算、減算、乗算、及び、変数の非負の整数の指数の演算のみを含む数式を意味する。例えば、多項式は、以下の形態をとり得る。
f(x)=a+a+a+a+...
一実施形態によると、性能曲線のメッセージ形式に沿って配列された、係数a、a、aなど、及び指数0、1、2、3などを含むメッセージが、(地上局において)作成される。
【0051】
一実施例によると、メッセージの識別のために全ての性能曲線メッセ-ジはPTC/PTで開始され、埋め込まれた要素識別子がこれに続く。一式の2D性能曲線に関する性能表メッセージの形式(例えば、別々の補正されたコスト指数値の曲線のセットであって、X軸は重量/デルタ(WOD)を表し、Y軸は経済巡航速度(マッハ)を表す表)は、以下のとおりである。
PTC/PC,nP,mC,a0,a1,a2,…,aN,x0,x1,x2,…,xN,b0,b1,b2,…,bN,y0,y1,y2,…,yN,...
式中、nPは多項式の次数、mCは曲線の数、a0,a1,a2,…,aNは第1の曲線当てはめの係数、x0,x1,x2,…,xNは第1の曲線当てはめの指数、b0,b1,b2,…,bNは第2の曲線当てはめの係数、y0,y1,y2,…,yNは第2の曲線当てはめの指数であり、第3、第4、などの曲線当てはめに関しても同様である。この場合、曲線フィッティングに関する係数及び指数の各セットの数は、多項式の次数プラス1に合致しなければ(即ち等しくなければ)ならない。フライトマネジメントシステム10は、メッセージがロードされた時点でこのチェックを実施する。これらの数がマッチしない場合には、操縦士がデータをレビューできるようになる前に、このメッセージは却下される。
【0052】
図6は、性能アルゴリズム34内のFMSの判定ロジックによって実施されるいくつかのステップと、操縦士によって実施されるいくつかのステップとを含む、一実施形態による、アップリンクされた表または曲線を承認するかまたは却下するかに関するアルゴリズム100のステップを特定する、フローチャートである。アップリンクメッセージに含まれている更新された性能データは、フライトマネジメントシステム10によって受信される(ステップ102)。FMS判定ロジックは、メッセ-ジの形式が正しいか否かを判定する(ステップ104)ように構成されている。例えば、アップリンクされた性能表データの場合には、変数Xの数は変数Zの数と等しいか、またはアップリンクされた性能曲線データの場合には、係数及び指数の各セットの数は、多項式の次数プラス1と等しいか、が判定される。一方、FMSの判定ロジックが、メッセージが正しくないと判定した場合には、そのメッセージは却下される(ステップ106)。他方、FMSの判定ロジックが、メッセージが正しいと判定した場合には、そのメッセージは却下されない。後者の場合には、航空機乗組員は、新しい性能表/曲線に関するに関する基本情報をレビューして(ステップ108)、それらを適切なCDUページ上で承認または却下する(ステップ110)ことが可能である。このようにして、性能表または曲線を、迅速かつ効率的にフライトマネジメントシステム10内にロードすることができる。具体的には、FMS判定ロジックは、操縦士がアップリンクされた表または曲線を承認したか却下したかを判定するように構成されている。一方で、操縦士が特定の表または曲線を承認した場合、FMS判定ロジックは、承認された表または曲線を、他の表及び曲線と共に性能表36内に保存する(ステップ112)。他方、操縦士が特定の表または曲線を却下した場合、FMS判定ロジックは、その却下された表または曲線を、フライトマネジメントシステム中で一時的に保存されている場所である、メモリ装置から取り除く(即ち、削除する)(ステップ114)。
【0053】
図7は、アップリンクされているがまだ航空機乗組員によって承認されていない飛行機の性能表のリストの一部を示す、CDUの1ページを表す図である。このCDUページは、「PERF UPDATE」と命名されている。この実施例では、列挙された表は、ベースライン性能データに適用され得る、補正因子を含む。CDUの次のページ(図示せず)に列挙されていてよいこの他の表(例えば、ECON CLB SPD、ECON CRZ SPD、及びECON DES SPDと命名された表)は、ベースライン性能データ内の対応する表を「代替する」のに使用され得る。したがって、フライトマネジメント用コンピュータは、一切の補正因子をベースライン性能データに適用しないこと(これは、ゼロに等しい因子を適用することと同じである)によって、または、単にベースライン性能データ内の表を使ってアップリンクされた表を無視することによって、ベースライン性能データに「復帰」することができるのである。
【0054】
引き続き図7を参照すると、航空機乗組員は、PERF UPDATEページに列挙された、それぞれのアップリンクされた飛行機の性能表または曲線を個別に承認または却下するために、CDU14と相互作用することができる。個別のアップリンクされた性能表/曲線に関して、航空機乗組員は、フライトマネジメントシステム10内に保存するか、またはフライトマネジメントシステム10から取り除くかするため、ライン選択キー1L~6L及び1R~6Rを使用して承認(A)と却下(R)の間でトグルすることができる。この選択(AまたはR)は、比較的大きなフォントサイズを使用して選択されたオプション(例えばA)を表す文字を表示し、比較的小さいフォントサイズを使用して選択されなかったオプション(例えばR)を表す文字を表示することによって、CDUのページ上に表示される。アップリンクされたメッセージに含まれていない表や曲線に関しては、トグルは利用できない。
【0055】
航空機乗組員は、直ちに新しい値を使用して性能表を活用するか、または後刻まで待つかを選択できる。航空機乗組員の選択に応じて、アップリンクメッセージ内の性能データは、現在の飛行で使用するか、または、将来の複数回の飛行のために、それまでの間もしくは整備クルーがこのデータを削除または更新すると決めるまでの間、非一過性で有形のコンピュータ可読記憶媒体(例えばメモリ)に保存することができる。
【0056】
図8は、FMSの判定ロジックによって実施されるいくつかのステップと、操縦士によって実施されるいくつかのステップとを含む、一実施形態による、受け入れたどの表または曲線をフライトマネジメントシステムで使用するかの選択に関するアルゴリズムのステップを特定する、フローチャートである。承認された表及び曲線は、PERF UPDATEページに列挙される(ステップ202)。操縦士は、CDUの適切なページにナビゲートすることによって、承認された表及び曲線に関する基本情報をレビューすることができる(ステップ204)。加えて、航空機乗組員は、ライン選択キーを使用して、各表示ラインに関してイエス(Y)とノー(N)の間をトグルし、承認された表及び曲線のうちのどれをフライトマネジメントシステム10が使用すべきか使用すべきでないかを選択することができる(ステップ206)。一方で、操縦士が特定の表または曲線の使用を選択した場合、選択された表または曲線は、FMSでの計算に使用されるであろう(ステップ208)。他方、操縦士が特定の表または曲線の使用を選択しなかった場合、選択された表または曲線は、FMSでの計算に使用されないであろう(ステップ210)。
【0057】
図9は、承認された飛行機の性能表または曲線のリストを示す、PERF UPDATE CDUのページを表す図である。性能表または曲線のリストは、承認した飛行機の性能表または曲線のどれをフライトマネジメントシステム10で使用するかを個別に選択するために、航空機乗組員によって使用される。個別のアップリンクされた性能表/曲線に関して、航空機乗組員は、ライン選択キー1L~6L及び1R~6Rを使ってイエス(Y)とノー(N)の間でトグルし、承認された表及び曲線のうちのどれをフライトマネジメントシステム10で使用すべきか使用すべきでないかを選択することができる。この選択(YまたはN)は、比較的大きなフォントサイズを使用して選択されたオプション(例えばY)を表す文字を表示し、比較的小さいフォントサイズを使用して選択されなかったオプション(例えばN)を表す文字を表示することによって、CDUのページ上に表示される。
【0058】
図4図9を参照して上記されたフライトマネジメントシステム10の実施形態のさらなる態様によると、性能表36(図2参照)にロードされた更新された性能表または曲線は、種々の飛行フェーズに対して選択的に適用することができる。航空機乗組員は、性能表36が適用される飛行計画のサブセットを特定することができる。これによって、航空機乗組員が飛行機を制御する方法に関してさらなる柔軟性が提供され、航空機乗組員が性能表36のエラーを検出した場合、これを無効化してベースライン性能データベース32に復帰するための手段がさらに提供される。また、これによって、更新された性能表または曲線の使用で実現し得る性能の差異を、航空機乗組員がリアルタイムで見る機会が与えられる。
【0059】
図10は、PERF PROGRESSと命名されたCDUの1ページを表す図である。このページは、選択された飛行機の性能表または曲線が使用され得る飛行セグメントの、開始ウェイポイント及び終了ウェイポイントを、航空機乗組員が特定することを可能にする。開始ウェイポイントと終了ウェイポイントは、同じ飛行フェーズにあるか、または異なる飛行フェーズにあってよい。図10に示す例では、開始のウェイポイントはKBFIであり、終了のウェイポイントはKMIAである。さらなるページで、複数の飛行セグメントが特定され得る。PERF PROGRESS CDUページはまた、開始ウェイポイント及び終了ウェイポイントによって特定された飛行セグメントの間に、更新された表を使用することによって実現された相対的な性能の差異も、表示している。図10に示す例では、予測された燃料の節約は0.8%であり、予測された平均速度差は.012、予測された平均高度差は300フィートであった。
【0060】
要約すると、図2に示すシステムは、フライトマネジメント用コンピュータ12、フライトマネジメント用コンピュータ12と通信する制御表示ユニット14、及びフライトマネジメント用コンピュータ12と通信する通信管理ユニット30を備えている。一実施形態によると、フライトマネジメント用コンピュータは、(a)飛行中にリアルタイムで測定されたトリップパラメータの値を取得し、(b)少なくとも、現在の性能表に保存された性能データを使用して、トリップパラメータの第1の予測値を計算し、(c)リアルタイムで測定された値の、第1の予測値からの乖離の大きさを計算し、(d)乖離の大きさが、所定の閾値を超過しているか否かを判定し、(e)ステップ(d)で、操縦士の介入なしに行われた、乖離の大きさが所定の閾値を超過しているとの判定に応答して、更新された性能データに対するダウンリンク要求を送信するよう、通信管理ユニットに命令するように構成されている。通信管理ユニット30は、ダウンリンク要求を送信するという、フライトマネジメント用コンピュータ12からの命令の受信に応答して、更新された性能データに対するダウンリンク要求を送信し、更新された性能データを含むアップリンクメッセージを受信するように構成されている。フライトマネジメント用コンピュータ12は、現在の性能表に更新された性能データを追加し、更新された性能データのうちの少なくともいくつかを使用してトリップパラメータの第2の予測値を計算し、制御表示ユニット14に対して第2の予測値を表示するよう、命令するようにさらに構成されている。制御表示ユニット14は、第2の予測値を表示するという、フライトマネジメント用コンピュータ12からの命令の受信に応答して、第2の予測値を表す英数字のコードを表示するように構成されている。加えて、制御表示ユニット14は、操縦士が入力した開始ウェイポイント及び終了ウェイポイントをフライトマネジメント用コンピュータ12に通信するようにさらに構成されており、フライトマネジメント用コンピュータシステム12は、開始ウェイポイントで開始し終了ウェイポイントで終了する飛行セグメントに関するトリップパラメータの、第2の予測値を計算する。
【0061】
更新された性能データをフライトマネジメントシステムにアップリンクし、続いて予測飛行プロファイル及び関連するトリップ予測パラメータを計算する機器及び方法が、様々な実施形態を参照して説明されてきたが、本書の教示から逸脱することなく様々な変形形態が可能であること、及び、その要素を均等物と置換し得ることが、当業者には理解されよう。加えて、本書の開示を実施するための概念及び縮図を特定の状況に適応させるため、多くの修正形態が用意されてよい。そのため、特許請求の範囲によって対象とされている主題は、開示されている実施形態に限定されないことが意図されている。
【0062】
特許請求の範囲で使われている用語「コンピュータシステム」は、少なくとも1つのコンピュータまたはプロセッサを有するシステムであって、ネットワークまたはバスを介して通信する複数のコンピュータまたはプロセッサを有し得るシステムを含むように、広く解釈されるべきである。前の一文で使われている用語「コンピュータ」及び「プロセッサ」は、共に、少なくとも処理装置(例えば中央処理装置、集積回路、または算術論理装置)を備える装置を意味する。
【0063】
本書に記載の方法は、限定しないが、記憶デバイス及び/またはメモリデバイスを含む、非一過性の有形的なコンピュータ可読記憶媒体内に具現化される、実行可能な命令として符号化されてよい。このような命令は、処理システムまたはコンピュータシステムで実行された場合、本書に記載の方法の少なくとも一部を、システムデバイスに実施させる。
【0064】
以下に記載される方法の請求項(process claim)は、請求項に列挙されているステップのうちの幾つかあるいは全てが実施される具体的な順序を示す条件が、請求項の文言によって明示的に特定または言明されていない限り、これらのステップが、アルファベット順(本明細書中のアルファベットによる順番付けは、既出のステップを参照する目的でのみ使用されている)または記載順に実施されることが必要であると解釈すべきではない。また、方法の請求項は、請求項の文言がそうした解釈を除外する条件を明示的に言明していない限り、2つ以上のステップのいかなる部分も、同時にまたは交互に実施されることが排除されていると解釈すべきでない。
【0065】
付記:以下の段落は、本開示のさらなる態様について記載している。
【0066】
A1.飛行機の機上で実施される方法であって、
(a)更新された性能データに対するダウンリンク要求を送信するステップ、
(b)更新された性能データを含むアップリンクメッセージを受信するステップ、
(c)更新された性能表を作成するため、現在の性能表に更新された性能データを追加するステップ、
(d)更新された性能データのうちの少なくともいくつかを使用して、トリップパラメータの第1の予測値を計算するステップ、
(e)第1の予測値を表す英数字のコードを表示するステップを含み、
ステップ(a)及び(b)は飛行機の機上で通信管理ユニットを用いて実施され、ステップ(c)及び(d)は飛行機の機上でコンピュータシステムによって実施され、ステップ(e)は飛行機の機上で制御表示ユニットによって実施される、方法。
【0067】
A2.飛行セグメントの開始ウェイポイント及び終了ウェイポイントを特定するステップをさらに含み、開始ウェイポイントで開始し終了ウェイポイントで終了する飛行セグメントに関して、予測値がステップ(d)で計算され、特定するステップが、制御表示ユニットを使用して操縦士によって実施される、段落A1に記載の方法。
【0068】
A3.更新された性能データが、更新された性能表を表す更新された性能表データ、及び/または更新された性能曲線を表す更新された性能曲線データを含み、段落A1に記載の方法が、
(f)各個別の更新された性能表及び/または曲線の形式が正しいか否かを判定するステップと、
(g)正しい形式を有する各個別の更新された性能表及び/または曲線を承認または却下するステップをさらに含み、
ステップ(f)はコンピュータシステムによって実施され、ステップ(g)は制御表示ユニット上のライン選択キーを操縦士が操作することによって実施される、承認または却下することをさらに含む、段落A1に記載の方法。
【0069】
A4.ステップ(a)よりも前に実施される、
(f)飛行中にリアルタイムで測定されたトリップパラメータの値を取得するステップ、
(g)少なくとも現在の性能表内に保存されている性能データを使用して、トリップパラメータの第2の予測値を計算するステップ、
(h)リアルタイムで測定された値の、第2の予測値からの乖離の大きさを計算するステップ、
(i)乖離の大きさが所定の閾値を超過しているか否かを判定するステップ
をさらに含み、ステップ(f)から(i)がコンピュータシステムによって実施される、段落A1に記載の方法。
【0070】
A5.制御表示ユニットを使用して、所定の閾値を手動で設定することをさらに含む、段落A4に記載の方法。
図1
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図3
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図10