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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】灯具
(51)【国際特許分類】
   B64D 47/02 20060101AFI20220929BHJP
   F21V 19/00 20060101ALI20220929BHJP
   F21V 31/00 20060101ALI20220929BHJP
   F21V 31/03 20060101ALI20220929BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220929BHJP
【FI】
B64D47/02
F21V19/00 150
F21V19/00 170
F21V19/00 450
F21V31/00 100
F21V31/03 400
F21Y115:10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018145415
(22)【出願日】2018-08-01
(65)【公開番号】P2020019405
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099999
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 隆
(72)【発明者】
【氏名】石切山 勝
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第8579479(US,B2)
【文献】特開2002-133911(JP,A)
【文献】特開2004-319380(JP,A)
【文献】米国特許第9776735(US,B2)
【文献】特開2013-050520(JP,A)
【文献】実開平05-062908(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 47/02
F21V 19/00
F21V 31/00
F21V 31/03
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の外装パネルに装着される灯具であって、
金属製のハウジングとこのハウジングに装着されたカバー部材とによって形成される灯室内に光源が収容されてなる灯具において、
上記カバー部材は、上記光源からの出射光を透過させるための光透過領域を有するカバー本体と、このカバー本体の外周部を支持する金属製の本体支持部とを備えており、かつ、上記本体支持部において上記ハウジングに固定されており、
上記光源に給電するための給電ケーブルが、上記灯室内から該灯室外まで延びるように配置されており、
上記ハウジングに、上記給電ケーブルを挿通させるための挿通孔が形成されており、
上記挿通孔に、弾性を有するブッシングが装着されており、
上記本体支持部に、上記灯室内に溜まった水を上記外装パネルの外側空間へ排出するための排水路が形成されており、
上記ハウジングの底壁部に、上記灯室外へ向けて突出するボルトが上記ハウジングおよび/または上記本体支持部の接地用端子として固定されており、
上記ボルトの周囲に該ボルトと上記底壁部との隙間をシールするためのシール剤が塗布されている、ことを特徴とする灯具。
【請求項2】
上記光源は、基板に搭載された少なくとも1つの発光素子によって構成されており、
上記ハウジングの底壁部に、上記灯室内へ向けて突出する突出部が形成されており、
上記基板は、上記突出部に着脱可能に装着されている、ことを特徴とする請求項1記載の灯具。
【請求項3】
上記基板において上記発光素子を搭載している板面に防水処理が施されている、ことを特徴とする請求項2記載の灯具。
【請求項4】
上記ブッシングを挿通した状態で配置された上記給電ケーブルと上記ブッシングとの間に樹脂材料が充填されている、ことを特徴とする請求項1~3いずれか記載の灯具。
【請求項5】
上記ボルトは、該ボルトの頭部が上記ハウジングの底壁部にカシメ固定されており、
上記ハウジングの底壁部に、上記ボルトの頭部を囲む立壁部が形成されており、
上記立壁部の内周側空間に樹脂材料が充填されている、ことを特徴とする請求項1~4いずれか記載の灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、航空機の外装パネルに装着される灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機においては、その外装パネルに各種灯具が装着されている。
【0003】
例えば、緊急脱出用スロープの収納部の近くには、非常時に機体から膨出して地面との間にセットされる緊急脱出用スロープの下部領域を照射するための外部非常灯が配置されている。
【0004】
なお「特許文献1」には、自動車用の灯具ではあるが、そのバンパーに装着される灯具として、その灯室内に溜まった水を灯室外空間へ排出するための排水路が形成されたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-319380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
航空機の外装パネルに装着される灯具は、気圧や気温の変動が激しい環境下に置かれるので、その灯室内に水が溜まりやすく、これにより灯具機能が損なわれてしまうおそれがある。
【0007】
また、航空機の外装パネルに装着される灯具においては、その光源に給電するための給電ケーブルが灯室内から灯室外まで延びるように配置された構成となっているが、灯室内に溜まった水が給電ケーブルを伝わって機内空間にまで侵入すると、航空機の機体側構造部材に腐食等の悪影響を与えてしまうおそれがある。
【0008】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、航空機の外装パネルに装着される灯具において、灯室内への水浸入を許容した上で灯具機能の棄損および機内空間への水侵入を未然に防止することができる灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、灯具構成部材を有効活用することにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0010】
すなわち、本願発明に係る灯具は、
航空機の外装パネルに装着される灯具であって、
金属製のハウジングとこのハウジングに装着されたカバー部材とによって形成される灯室内に光源が収容されてなる灯具において、
上記カバー部材は、上記光源からの出射光を透過させるための光透過領域を有するカバー本体と、このカバー本体の外周部を支持する金属製の本体支持部とを備えており、かつ、上記本体支持部において上記ハウジングに固定されており、
上記光源に給電するための給電ケーブルが、上記灯室内から該灯室外まで延びるように配置されており、
上記ハウジングに、上記給電ケーブルを挿通させるための挿通孔が形成されており、
上記挿通孔に、弾性を有するブッシングが装着されており、
上記本体支持部に、上記灯室内に溜まった水を上記外装パネルの外側空間へ排出するための排水路が形成されており、
上記ハウジングの底壁部に、上記灯室外へ向けて突出するボルトが上記ハウジングおよび/または上記本体支持部の接地用端子として固定されており、
上記ボルトの周囲に該ボルトと上記底壁部との隙間をシールするためのシール剤が塗布されている、ことを特徴とするものである。
【0011】
本願発明に係る「灯具」は、航空機の外装パネルに装着される灯具であれば、その具体的な用途については特に限定されるものではない。
【0012】
上記「給電ケーブル」は、ハウジングに形成された挿通孔を介して灯室内から灯室外まで延びるように配置されていれば、その具体的な配線経路については特に限定されるものではない。
【0013】
上記「排水路」は、灯室内に溜まった水を外装パネルの外側空間へ排出し得るように構成されたものであれば、その具体的な形状や配置については特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
本願発明に係る灯具は、航空機の外装パネルに装着される灯具として、金属製のハウジングとこれに装着されたカバー部材とによって形成される灯室内に光源が収容された構成となっているので、カバー部材を取り外すことによって光源の交換を行うことができる。
【0015】
また、カバー部材は、光源からの出射光を透過させるための光透過領域を有するカバー本体と、その外周部を支持する金属製の本体支持部とを備えており、その本体支持部においてハウジングに固定されているので、灯具としての光学的機能を確保した上で、気圧変動等に耐え得る堅固な構成を実現することができる。
【0016】
その上で、本願発明に係る灯具においては、光源に給電するための給電ケーブルが灯室内から灯室外まで延びるように配置されており、ハウジングにはこの給電ケーブルを挿通させるための挿通孔が形成されているが、この挿通孔には弾性を有するブッシングが装着されてので、灯室内に溜まった水が給電ケーブルを伝わって機内空間にまで侵入しまうのを未然に防止することができる。そしてこれにより、航空機の機体側構造部材に腐食等の悪影響を与えてしまうおそれをなくすことができる。
【0017】
また、カバー部材の本体支持部には、灯室内に溜まった水を外装パネルの外側空間(すなわち機外空間)へ排出するための排水路が形成されているので、灯具機能を維持することが容易に可能となる。
【0018】
このように本願発明によれば、航空機の外装パネルに装着される灯具において、灯室内への水浸入を許容した上で灯具機能の棄損および機内空間への水侵入を未然に防止することができる。
【0019】
上記構成において、さらに、光源が基板に搭載された少なくとも1つの発光素子によって構成されたものとした上で、ハウジングの底壁部に灯室内へ向けて突出する突出部が形成されるとともに、この突出部に対して基板が着脱可能に装着された構成とすれば、光源の交換を容易に行うことができ、かつ、灯室内に多少の水が溜まっても光源が濡れてしまわないようにすることができる。
【0020】
その際、基板の構成として、発光素子を搭載している板面に防水処理が施された構成とすれば、灯室内に溜まった水によって発光素子に悪影響が及んでしまうのを効果的に抑制することができる。
【0021】
上記構成において、さらに、ブッシングを挿通した状態で配置された給電ケーブルとブッシングとの間に樹脂材料が充填された構成とすれば、灯室内に溜まった水が給電ケーブルを伝わって機内空間にまで侵入しまうのをより確実に防止することができる。
【0022】
上記構成において、さらに、ハウジングの底壁部に、灯室外へ向けて突出するボルトがハウジングおよび/またはカバー部材の本体支持部の接地用端子として固定された構成とした上で、このボルトの周囲に該ボルトとハウジングの底壁部との隙間をシールするためのシール剤が塗布された構成とすれば、灯室内に溜まった水がボルトを伝わって機内空間にまで侵入しまうのを未然に防止することができる。
【0023】
その際、ボルトの構成として、その頭部がハウジングの底壁部にカシメ固定された構成とするとともに、ハウジングの底壁部にボルトの頭部を囲む立壁部が形成された構成とした上で、この立壁部の内周側空間に樹脂材料が充填された構成とすれば、灯室内に溜まった水がボルトを伝わって機内空間にまで侵入しまうのをより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本願発明の一実施形態に係る灯具を示す側断面図
図2】上記灯具を図1のII方向矢視図として示す正面図
図3】上記灯具を図1の III方向矢視図として示す背面図
図4図2のIV-IV線断面図
図5】上記灯具を、そのハウジングからカバー部材を取り外した状態で示す正面図
図6図4の要部詳細図
図7図3の要部詳細断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0026】
図1は、本願発明の一実施形態に係る灯具10を示す側断面図である。また、図2は、灯具10を図1のII方向矢視図として示す正面図であり、図3は、灯具10を図1の III方向矢視図として示す背面図である。さらに、図4は、図2のIV-IV線断面図である。
【0027】
これらの図に示すように、本実施形態に係る灯具10は、航空機の左側面部の外装パネル2に装着される外部非常灯であって、非常時に機体から膨出して地面との間にセットされる緊急脱出用スロープの下部領域を照射するための灯具として構成されている。
【0028】
これらの図において、Xで示す方向が灯具としての「前方」(航空機としては「左斜め下方向」)であり、Yで示す方向が「左方向」(航空機としては「前方」)であり、Zで示す方向が「上方向」(航空機としては「斜め上方向」)である。これら以外の図においても同様である。
【0029】
本実施形態に係る灯具10は、金属製(具体的にはアルミニウム製)のハウジング20と、このハウジング20に装着されたカバー部材30とによって形成される略円柱状の灯室12内に、2つの発光素子40が光源として収容された構成となっている。
【0030】
ハウジング20は、灯室12の灯具後方側に位置する底壁部20Aと、この底壁部20Aの外周縁部から灯具前方へ向けて延びる周壁部20Bと、この周壁部20Bの灯具前方側の端部から外周方向へ向けて円環状に延びる外周フランジ部20Cとを備えている。
【0031】
そして、本実施形態に係る灯具10は、図1に示すように、ハウジング20の外周フランジ部20Cにおいて航空機の機内側から金属製の外装パネル2に装着されるように構成されている。
【0032】
これを実現するため、図2に示すように、ハウジング20の外周フランジ部20Cには、その周方向に大小複数の貫通孔20Ca、20Cbが形成されている。そして、ハウジング20を各貫通孔20Ca、20Cbにおいて外装パネル2にリベット止めすることにより、灯具10の外装パネル2への装着が行われるようになっている。
【0033】
カバー部材30は、2つの発光素子40からの出射光を透過させるための光透過領域32Aを有するガラス製のカバー本体32と、このカバー本体32の外周部を支持する金属製(具体的にはアルミニウム製)の本体支持部34とを備えている。このカバー部材30は、その本体支持部34の周方向の4箇所においてハウジング20に対して金属製(具体的にはステンレス鋼製)のネジ36を締め付けることによりハウジング20に固定されるようになっている。
【0034】
カバー部材30の本体支持部34は、円環状の板状部材として構成されており、その機内側の表面にはシリコーン樹脂製のガスケット38が接着されている。そして、カバー部材30がハウジング20に固定される際、ガスケット38がハウジング20に当接して多少弾性変形することにより、カバー部材30の機外側の表面と外装パネル2の機外側の表面とが面一で配置され得る構成となっている。
【0035】
図5は、灯具10を、そのハウジング20からカバー部材30を取り外した状態で示す正面図である。
【0036】
同図に示すように、ハウジング20の周壁部20Bの前端面には、ネジ36(図2参照)を締め付けるためのネジ穴20Bbが周方向の4箇所に形成されている。
【0037】
各ネジ穴20Bbにはネジ込み式のインサート22が装着されており、このインサート22に対してネジ36の締付けが行われるようになっている。このように各ネジ穴20Bbにインサート22が装着された構成とすることにより、締付け状態にあるネジ36が緩んでしまうのを未然に防止するようになっている。
【0038】
本実施形態においては、インサート22として、ステンレス鋼の表面にカドミウムメッキを施したものが用いられており、これによりネジ36とハウジング20との間の電食の発生を未然に防止するようになっている。
【0039】
ハウジング20の底壁部20Aには、灯具前方へ向けて(すなわち灯室12内へ向けて)円柱状に突出する上下1対の突出部20Aaが形成されている。そして、上下1対の突出部20Aaの先端面には、縦長長円形の外形形状を有する基板42が装着されている。この装着は、基板42が載置された各突出部20Aaに対してネジ44を締め付けることによって着脱可能に行われている。
【0040】
2つの発光素子40は、いずれも矩形状の発光面を有する白色発光ダイオードであって、基板42の前面42aに搭載されている。その際、2つの発光素子40は、基板42の上下方向の略中央部において左右に並んだ状態で配置されている。
【0041】
基板42の前面42aには防水処理が施されている。この防水処理は、基板42の前面42aの全域にわたってアクリル樹脂等を塗布することによって行われている。
【0042】
基板42は、2つの発光素子40に給電するための給電ケーブル50と電気的に接続されている。この給電ケーブル50は、2本の給電コード50A(図1参照)が樹脂製のチューブ50Bに収容された構成となっている。
【0043】
給電ケーブル50と2つの発光素子40との電気的接続は、2本の給電コード50Aの端部に取り付けられたコネクタ52が基板42の後面に配置された受電端子(図示せず)に連結されることにより行われている。この給電ケーブル50は、灯室12内から該灯室12外まで延びるように配置されているが、その具体的な構成については後述する。
【0044】
灯室12内には、ハウジング20とカバー部材30の本体支持部34とを電気的かつ機械的に接続するための保持ケーブル70が、発光素子40からカバー本体32の光透過領域32Aへ向かう光を遮光しない位置に配置されている。
【0045】
保持ケーブル70は、金属製の撚り線70A(図1参照)が樹脂製のチューブ70Bに収容された構成となっており、その撚り線70Aの両端部は図4に示すように丸型端子72、74にそれぞれ接続されている。
【0046】
図5に示すように、保持ケーブル70は、2つの発光素子40の上方側を通るようにして配置されている。具体的には、保持ケーブル70は、ハウジング20の周壁部20Bと上側に位置する突出部20Aaとの間を通るようにして配置されている。
【0047】
そして、図4に示すように、保持ケーブル70は、2つの発光素子40の右側に位置する端部が接続された丸型端子72においてハウジング20の底壁部20Aと電気的に接続されており、また、2つの発光素子40の左側に位置する端部が接続された丸型端子74においてアルミニウム製のL字型金具76を介してカバー部材30の本体支持部34と電気的に接続されている。
【0048】
図6は、図4の要部詳細図である。
【0049】
同図にも示すように、丸型端子72は、ボルト78およびナット80によってハウジング20の底壁部20Aに固定されている。この固定は、底壁部20Aに形成されたボルト挿通孔20Aeを介して灯具後方側からボルト78を灯室12内に挿入し、このボルト78に丸型端子72を装着した状態で、このボルト78にナット80を締め付けることにより行われている。この固定は、灯室12内における上下方向の中心位置よりも下方において行われている(図5参照)。その際、ボルト78としてはチタン合金製のものが用いられており、ナット80としてはステンレス鋼の表面にカドミウムメッキを施したものが用いられている。
【0050】
一方、丸型端子74は、カバー部材30の本体支持部34に固定されたL字型金具76に対して、ボルト82およびナット84によって固定されている。この固定は、L字型金具76に形成されたボルト挿通孔76aにボルト82を挿入し、このボルト82に丸型端子72を装着した状態で、このボルト82にナット84を締め付けることにより行われている。ボルト82およびナット84の材質は、ボルト78およびナット80の場合と同様である。
【0051】
カバー部材30の本体支持部34に対するL字型金具76の固定は、本体支持部34に形成されたネジ挿通孔34bおよびL字型金具76に形成されたネジ挿通孔76bに灯具前方側から皿ネジ86を挿入した状態で、この皿ネジ86にナット88を締め付けることにより行われている。この固定は、灯室12内における上下方向の中心位置において行われている。その際、皿ネジ86およびナット88としては、ステンレス鋼の表面にカドミウムメッキを施したものが用いられている。
【0052】
図1に示すように、ハウジング20の底壁部20Aには、保持ケーブル70を航空機の機体側構造部材4に対して電気的に接続するための接地用端子として、灯具後方へ向けて(すなわち灯室12外へ向けて)突出するボルト26が設けられている。このボルト26は、ハウジング20およびカバー部材30の本体支持部34の接地用端子としても機能するようになっている。
【0053】
図6に示すように、ボルト26は、その頭部26Aがアルミニウム製の部材で構成されており、そのネジ切りされた軸部26Bが合金鋼製の部材で構成されている。そして、ボルト26は、その頭部26Aにおいてハウジング20の底壁部20Aにカシメ固定されている。
【0054】
このカシメ固定は、底壁部20Aに形成されたボルト挿通孔20Afを介して灯具後方側からボルト26の頭部26Aを灯室12内に挿入し、この頭部26Aに環状のスペーサ28を装着した状態で、この頭部26Aを灯具前方側から潰すことにより行われている。このカシメ固定は、灯室12内における上下1対の突出部20Aaよりも左側の上下方向の中心位置において行われている(図5参照)。
【0055】
図1に示すように、ボルト26の軸部26Bには、機体側構造部材4から延びる接地用ケーブル6の端部がナット8でネジ締め固定されている。
【0056】
ハウジング20の底壁部20Aにおいて、上下1対の突出部20Aaの間に位置する部分は厚肉部20Abとして形成されている。また、図5および6に示すように、ハウジング20の底壁部20Aにおいて、厚肉部20Abの右側には、丸型端子72を固定しているボルト78およびナット80を囲む立壁部20Acが形成されており、厚肉部20Abの左側には、ボルト26の頭部26Aを囲む立壁部20Adが形成されている。
【0057】
これら厚肉部20Abおよび立壁部20Ac、20Abは、その先端面がボルト26の頭部26Aの先端面よりも高い位置(すなわち灯具前方側の位置)において互いに面一になるように形成されている。
【0058】
そして、ハウジング20の底壁部20Aと厚肉部20Abと立壁部20Acと周壁部20Bとで囲まれた凹状の空間には、樹脂材料62がナット80の途中部分まで覆うようにして充填されており、また、ハウジング20の底壁部20Aと厚肉部20Abと立壁部20Adとで囲まれた凹状の空間には、樹脂材料64がボルト26の頭部26Aを覆うようにして充填されている。これら樹脂材料62、64としてはシリコーン樹脂が用いられている。その際、このシリコーン樹脂として粘度の低いものを用いるようにすれば、樹脂材料62、64の充填を注射器等を用いて行うことが可能となり、これにより充填作業性を高めることが可能となる。
【0059】
一方、ハウジング20の底壁部20Aの外面にも、丸型端子72を固定しているボルト78と底壁部20Aとの隙間をシールするためのシール剤92がボルト78の頭部を覆うようにして塗布されており、また、接地用端子としてのボルト26と底壁部20Aとの隙間をシールするためのシール剤94がボルト26の頭部26Aを囲むようにして塗布されている。その際、シール剤92としてはシリコーン樹脂が用いられており、シール剤94としてはサルフォン樹脂が用いられている。
【0060】
さらに、丸型端子74を固定しているボルト82およびナット84とL字型金具76との連結部分には、丸型端子74とボルト82およびナット84とL字型金具76の一部とを覆う樹脂材料66が塗布されている。その際、樹脂材料66としてはサルフォン樹脂が用いられている。
【0061】
ハウジング20の表面には、その略全域にわたって塗装が施されているが、周壁部20Bの4箇所に形成されたネジ穴20Bbの部分と底壁部20Aの内面におけるボルト挿通孔20Ae、20Afの周辺部分には、導電性を確保するため塗装が施されていない。また、カバー部材30の本体支持部34の表面にも、その略全域にわたって塗装が施されているが、その後面におけるネジ挿通孔34bの周辺部分には、導電性を確保するため塗装が施されていない。さらに、L字型金具76の表面にも、その略全域にわたって塗装が施されているが、その前面におけるネジ挿通孔76bの周辺部分には、導電性を確保するため塗装が施されていない。
【0062】
図1および2に示すように、カバー部材30の本体支持部34の下端部には、灯室12内に溜まった水を外装パネル2の外側空間(すなわち機外空間)へ排出するための排水路として切欠き部34aが形成されている。また、ハウジング20の周壁部20Bの内周面の下端部には、灯室12内に溜まった水をカバー部材30の切欠き部34aへ導くための凹部20Bcが形成されている。さらに、この凹部20Bcの左右両側には、図5に示すように、灯室12内に溜まった水を凹部20Bcへ導くための排水溝20Bdが周壁部20Bの内周面に沿って延びるように形成されている。
【0063】
図7は、図3の要部詳細断面図である。
【0064】
上述したとおり、給電ケーブル50は灯室12内から該灯室12外まで延びるように配置されているが、同図に示すように、この給電ケーブル50は、灯室12内においては2本の給電コード50Aがチューブ50Bに収容された構成となっており、灯室12外においては2本の給電コード50Aが樹脂製のチューブ50Cに収容された構成となっている。
【0065】
各給電コード50Aは、金属製の芯線が樹脂製(具体的には四フッ化エチレン樹脂製)の被膜で覆われた構成となっている。
【0066】
ハウジング20の周壁部20Bには、給電ケーブル50の2本の給電コード50Aを挿通させるための挿通孔20Baが形成されており、この挿通孔20Baには弾性を有する樹脂製のブッシング54が装着されている。
【0067】
ブッシング54は、挿通孔20Baへの装着位置から灯室12外へ向けて筒状に延びるように形成されており、その基端部には挿通孔20Baを灯室12の内側から環状に覆う内側フランジ部54aと灯室12の外側から環状に覆う外側フランジ部54bとが形成されている。また、ブッシング54の先端部には開口部54cが形成されており、この開口部54cの近傍には、2本の給電コード50Aを覆った状態で斜め方向に延びるコード支持部54dが形成されている。そして、このコード支持部54cにはチューブ50Cの端部が装着されている。
【0068】
ブッシング54を挿通した状態で配置された2本の給電コード50Aとブッシング54との間には、樹脂材料56が充填されている。この樹脂材料56は、ブッシング54の先端部に形成された開口部54cからその内部空間に注入され、その一部が灯室12内にはみ出す程度の量が充填されている。その際、樹脂材料56としては、給電コード50Aの被膜との接着性に優れたサルフォン樹脂が用いられている。
【0069】
また、灯室12外には、ブッシング54と周壁部20Bとの隙間をシールするためのシール剤58が、ブッシング54の外側フランジ部54bを囲むようにして塗布されている。その際、シール剤58としてはシリコーン樹脂が用いられている。
【0070】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
【0071】
本実施形態に係る灯具10は、航空機の外装パネル2に装着される灯具として、金属製のハウジング20とこれに装着されたカバー部材30とによって形成される灯室12内に、2つの発光素子40(光源)が収容された構成となっているので、カバー部材30を取り外すことによって光源の交換を行うことができる。
【0072】
また、カバー部材30は、2つの発光素子40からの出射光を透過させるための光透過領域32Aを有するカバー本体32と、その外周部を支持する金属製の本体支持部34とを備えており、その本体支持部34においてハウジング20に固定されているので、灯具10としての光学的機能を確保した上で、気圧変動等に耐え得る堅固な構成を実現することができる。
【0073】
その上で、本実施形態に係る灯具10においては、2つの発光素子40に給電するための給電ケーブル50が灯室12内から灯室12外まで延びるように配置されており、ハウジング20の周壁部20Bには給電ケーブル50を挿通させるための挿通孔20Baが形成されているが、この挿通孔20Baには弾性を有するブッシング54が装着されてので、灯室12内に溜まった水が給電ケーブル50を伝わって機内空間にまで侵入しまうのを未然に防止することができる。そしてこれにより、航空機の機体側構造部材4に腐食等の悪影響を与えてしまうおそれをなくすことができる。
【0074】
また、カバー部材30の本体支持部34には、灯室12内に溜まった水を外装パネル2の外側空間(すなわち機外空間)へ排出するための排水路34aが形成されているので、灯具機能を維持することが容易に可能となる。
【0075】
このように本実施形態によれば、航空機の外装パネル2に装着される灯具10において、灯室12内への水浸入を許容した上で灯具機能の棄損および機内空間への水侵入を未然に防止することができる。
【0076】
しかも実施形態においては、ハウジング20の周壁部20Bの内周面の下端部に、灯室12内に溜まった水をカバー部材30の切欠き部34aへ導くための凹部20Bcが形成されており、さらにその左右両側には、周壁部20Bの内周面に沿って凹部20Bcまで延びる排水溝20Bdが形成されているので、灯室12内に溜まった水の外装パネル2の外側空間への排出性能を高めることができる。
【0077】
本実施形態に係る灯具10は、その光源が基板42に搭載された2つの発光素子40によって構成されているが、ハウジング20の底壁部20Aには灯室12内へ向けて突出する上下1対の突出部20Aaが形成されており、これら上下1対の突出部20Aaに対して基板42が着脱可能に装着されているので、光源の交換を容易に行うことができ、かつ、灯室12内に多少の水が溜まっても各発光素子40が濡れてしまわないようにすることができる。
【0078】
しかも、基板42の前面42a(すなわち2つの発光素子40を搭載している板面)には防水処理が施されているので、灯室12内に溜まった水によって各発光素子40に悪影響が及んでしまうのを効果的に抑制することができる。
【0079】
本実施形態においては、ブッシング54を挿通した状態で配置された給電ケーブル50とブッシング54との間に樹脂材料56が充填されているので、灯室12内に溜まった水が給電ケーブル50を伝わって機内空間にまで侵入しまうのをより確実に防止することができる。
【0080】
本実施形態においては、ハウジング20の底壁部20Aに、灯室12外へ向けて突出するボルト26がハウジング20およびカバー部材30の本体支持部34の接地用端子として固定されているが、このボルト26の周囲にはボルト26とハウジング20の底壁部20Aとの隙間をシールするためのシール剤94が塗布されているので、灯室12内に溜まった水がボルト26を伝わって機内空間にまで侵入しまうのを未然に防止することができる。
【0081】
その際、ボルト26は、その頭部26Aがハウジング20の底壁部20Aにカシメ固定されているが、底壁部20Aにはボルト26の頭部26Aを囲む立壁部26Adが形成されており、この立壁部26Adの内周側空間には樹脂材料64が充填されているので、灯室12内に溜まった水がボルト26を伝わって機内空間にまで侵入しまうのをより確実に防止することができる。
【0082】
また本実施形態においては、保持ケーブル70の端部が接続された丸型端子72をハウジング20の底壁部20Aと電気的に接続するためのボルト78およびナット80がハウジング20の底壁部20Aに固定されているが、灯室12外に位置するボルト78の頭部は樹脂材料92で覆われているので、灯室12内に溜まった水がボルト78を伝わって機内空間にまで侵入しまうのを未然に防止することができる。さらに、底壁部20Aの内面にはボルト78およびナット80を囲む立壁部26Acが形成されており、この立壁部26Acの内周側空間には樹脂材料62が充填されているので、灯室12内に溜まった水がボルト78を伝わって機内空間にまで侵入しまうのをより確実に防止することができる。
【0083】
上記実施形態においては、シール剤56、58、92、94および樹脂材料62、64、66として、その使用箇所によって異なる材質のものが使用されているものとして説明したが、これらの一部あるいは全部を共通化することも可能である。このようにすることにより、同一の工程においてシール剤の塗布や樹脂材料の充填を行うことができ、かつ、その硬化時間を同程度の長さに設定することができる。
【0084】
上記実施形態においては、ブッシング54を挿通した状態で配置された2本の給電コード50Aとブッシング54との間に樹脂材料56が充填されているものとして説明したが、2本の給電コード50Aが該給電コード50Aとブッシング54との間に全く隙間が生じない態様でブッシング54に挿通された構成とすることも可能である。
【0085】
上記実施形態においては、灯具10の光源が2つの発光素子40で構成されているものとして説明したが、これ以外の個数の発光素子40で構成されたものとすることも可能であり、また、発光素子40以外の光源(例えば光源バルブ等)を備えた構成とすることも可能である。
【0086】
上記実施形態においては、灯具10が航空機の外部非常灯であるものとして説明したが、航空機の外装パネル2に装着される灯具であれば、これ以外の用途に灯具10を使用することも可能である。
【0087】
なお、上記実施形態において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0088】
また、本願発明は上記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。
【符号の説明】
【0089】
2 外装パネル
4 機体側構造部材
6 接地用ケーブル
8 ナット
10 灯具
12 灯室
20 ハウジング
20A 底壁部
20Aa 突出部
20Ab 厚肉部
20Ac、20Ad 立壁部
20Ae、20Af ボルト挿通孔
20B 周壁部
20Ba 挿通孔
20Bb ネジ穴
20Bc 凹部
20Bd 排水溝
20C 外周フランジ部
20Ca、20Cb 貫通孔
22 インサート
26 ボルト(接地用端子)
26A 頭部
26B 軸部
28 スペーサ
30 カバー部材
32 カバー本体
32A 光透過領域
34 本体支持部
34a 切欠き部(排水路)
34b ネジ挿通孔
36、44 ネジ
38 ガスケット
40 発光素子(光源)
42 基板
42a 前面
50 給電ケーブル
50A 給電コード
50B、50C チューブ
52 コネクタ
54 ブッシング
54a 内側フランジ部
54b 外側フランジ部
54c 開口部
54d コード支持部
56、58、92、94 シール剤
62、64、66 樹脂材料
70 保持ケーブル
70A 撚り線
70B チューブ
72、74 丸型端子
76 L字型金具
76a、76b ボルト挿通孔
78、82 ボルト
80、84、88 ナット
86 皿ネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7