(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】化粧料容器
(51)【国際特許分類】
A45D 34/04 20060101AFI20220929BHJP
B43K 1/12 20060101ALI20220929BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20220929BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A45D34/04 525B
B43K1/12 A
A61K8/81
A61K8/06
(21)【出願番号】P 2018167769
(22)【出願日】2018-09-07
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】大場 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】大崎 佳幸
(72)【発明者】
【氏名】井上 賢亮
(72)【発明者】
【氏名】山崎 祐一
【審査官】沖田 孝裕
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3090639(JP,U)
【文献】特表2008-513175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
B43K 1/12
A61K 8/81
A61K 8/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が容器本体内に収容され、操作部が操作された際に繰り出し機構によって前記容器本体内の液体を、パイプを介して塗布体
に繰り出される化粧料容器において、
前記塗布体を覆う先軸の先端開口より前記塗布体の先端が突出し、前記先軸の先端開口よりも後方にパイプが配置され、前記パイプの先端位置が下記式(I)
1.5<Vcosθ×(D/A)<10 ・・・(I)
但し、A:先軸の先端開口の面積(mm
2)
D:パイプ内径の面積(mm
2)
V:パイプ先端から先軸先端までの
先軸内の空間の体積(mm
3)
θ:パイプ先端
と軸線の交点、及び先軸先端内部を結んだ線と、軸線とが
なす平均角度(°)
を満たすことを特徴とする化粧料容器。
【請求項2】
アクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマー、アクリル酸エステルモノマー、メタクリル酸エステルモノマーから選ばれるモノマー同士を重合することにより得られるガラス転移点20℃以下のアクリル酸系ポリマーの水性エマルジョンを含み、表面張力が30~45mN/m、コーンプレート型粘度計による温度25℃、ずり速度3.83s
-1での粘度は50~700mPa・s、かつ、ずり速度383s
-1での粘度が5~70mPa・sである
液体を収容したことを特徴とする請求項1に記載の化粧料容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイライナー等の液体化粧料を塗布するための化粧料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に化粧料を保蔵した軸本体先端の先軸に塗布体を設けた塗布具において、使用時には、軸体内に収容された塗布液を筆穂等の塗布体に送液して、塗付可能にする技術が開示されている(特許文献1)。
【0003】
化粧料容器において、筆穂の塗布体に用いて塗布しても皮膚の上でタレ落ち(ボタ落ち)の少ない低粘度で濃く描けるアイメイク用液体化粧料組成物が開示されている(:特許文献2、特許文献3)。
【0004】
また、化粧料容器において、繊維を収束したブラシの本体の中心部に後端から液誘導パイプを挿入し、液誘導パイプの先端より後方位置でブラシ本体の略中央部を溶融するものがある(:特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-157611号公報
【文献】特開2017-114824号公報
【文献】特開2017-114825号公報
【文献】実開平1-69681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、塗布体の穂先や液誘導パイプ内部で低粘度の化粧液が固化した状態で、そのまま塗布液の繰り出し操作を続けると内部の圧力が上昇し、蓄圧状態となる。さらに繰り出し操作によって固化部分が決壊すると、塗布液が塗布体から飛散する可能性がある。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、塗布液の固化を防ぎ、繰り出し時の内部の圧力上昇を防止できる化粧料容器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、液体が容器本体内に収容され、操作部が操作された際に繰り出し機構によって前記容器本体内の液体を、パイプを介して塗布体が繰り出される化粧料容器において、
前記塗布体を覆う先軸の先端開口より前記塗布体の先端が突出し、前記先軸の先端開口よりも後方にパイプが配置され、前記パイプの先端位置が下記式(I)
1.5<Vcosθ×(D/A)<10 ・・・(I)
但し、A:先軸の先端開口の面積(mm2)
D:パイプ内径の面積(mm2)
V:パイプ先端から先軸先端までの体積(mm3)
θ:パイプ先端及び先軸先端内部を結んだ線と軸線とのなす平均角度(°)
を満たすことを特徴とする化粧料容器である。
【0009】
本発明において、アクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマー、アクリル酸エステルモノマー、メタクリル酸エステルモノマーから選ばれるモノマー同士を重合することにより得られるガラス転移点20℃以下のアクリル酸系ポリマーの水性エマルジョンを含み、表面張力が30~45mN/m、コーンプレート型粘度計による温度25℃、ずり速度3.83s-1での粘度は50~700mPa・s、かつ、ずり速度383s-1での粘度が5~70mPa・sである液体化粧料組成物を収容したことが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の化粧料容器によれば、前記塗布体を覆う先軸の先端開口より前記塗布体の先端が突出し、前記先軸の先端開口よりも後方にパイプが配置され、前記パイプの先端位置が先軸の先端開口から後退していることから、パイプ内の乾燥固化を減速できる。また、先軸と塗布体周辺とのクリアランスが増すので塗布体の固化時の流路を確保できる。したがって、クリアランスを流路として、先軸口元から液体吐出させることができる等の優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る化粧料容器の全体説明図であり、(a)がキャップを外した状態の側面図、(b)が縦断面図である。
【
図2】化粧料容器の塗布体、先軸及びパイプ周辺の詳細断面図である。
【
図3】実施形態の化粧料容器の評価結果の表に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る化粧料容器の全体説明図、
図2は、化粧料容器の塗布体、先軸、パイプ周辺の詳細断面図、
図3は評価結果を示す。
【0013】
図1に示すように、化粧料容器は、化粧料の液体が容器本体10の貯留部22内に収容され、操作部12が操作された際に繰り出し機構14によって前記貯留部22内の液体を、パイプ16を介して塗布体18が繰り出される化粧料容器において、前記塗布体18を覆う先軸20の先端開口20aより前記塗布体18の先端18aが突出し、前記先軸20の先端開口20aよりも後方にパイプ16が配置され、また先軸20の先端側の空間内部には塗布体18が略満たされたものである。
【0014】
実施形態に係る化粧料容器は、回転式の繰り出し機構14を備えた繰出容器であり、
図1に示すように、容器本体10内に回転方向に固定して設置された筒状の貯留部(タンク部)22に化粧料を収容して、操作部12の回転操作によって貯留部22内の液体を塗布体18に繰り出して送り込むものである。
【0015】
〔繰り出し機構14〕
繰り出し機構14は、容器本体10の後端部に配設された天冠となる操作部12を容器本体10に対して周方向に相対回転させることにより、ピストン体24を前進させて貯留部22内の化粧料を繰り出すものである。
【0016】
具体的に説明すると、繰り出し機構14は、容器本体10の後端に回転可能に嵌合された操作部12と、ピストン体24を先端に回転可能に接続した外周に雄ネジの形成されたネジ棒26と、容器本体10に回転方向に固定してネジ棒26が螺合する雌ネジを有する概略ナット状のネジ体28と、使用者(ユーザ)による操作部12の容器本体10に対する回転操作力をネジ棒26に伝える駆動筒30とを有するものである。駆動筒30の先端部にはラチェット機構が設けられ、一方向への回転力をネジ棒26に伝えるものになっている。
【0017】
〔容器本体10、貯留部22〕
容器本体10の先端部10aは段状に細径になり、その内部に壁状部10bから小径の管部10cが後方に向けて突出している。管部10cの周囲には、概略筒状の継手32を配置され、その継手32を介して貯留部22の先端部が管部10c嵌着されている。
【0018】
〔塗布体18、先軸20、パイプ16〕
前記化粧料容器において、容器本体10の先端部10aには、
図2に示すように、塗布体18、先軸20、パイプ16、継手32、パイプ固定体34が取り付けられている。
【0019】
詳しくは、前記先端部10aには、壁状部10bから先方側の空間内に先細い先軸20が嵌着しており、先軸20内に筆穂からなる塗布体18が配設される。
【0020】
塗布体18の後方には、パイプ16を固定し、塗布体18を先軸20内に係止するパイプ固定体34が設けられている。
【0021】
塗布体18は、天然繊維、合成樹脂繊維が束ねて筆穂の構造や多孔質体の各種のものを材料に用いることができる。繊維としては好適には、0.05~0.2(mm)のものを用いることができる。
【0022】
塗布体18内に前記パイプ16が途中まで挿入される。パイプ16の材質は樹脂製、金属製等各種のものを用いることができる。
【0023】
容器本体10の先端部10a内では、貯留部22内が管部10c、パイプ固定体34、パイプ16内の中空孔を通って塗布体18に連通している。
【0024】
化粧料容器において、軸本体10内の貯留部22には、内容物の液体(実施形態では、流動性の液体化粧料)が収容されている。
【0025】
したがって、化粧料容器においては、その貯留部22から繰り出された液体化粧料はパイプ16を通り塗布体18先端内に吐出されて、塗布体18によって塗布可能になる。また、使用後に図示しないキャップを塗布体18及び先軸20を覆うように先軸20に装着(嵌着)できるよう形成されている。
【0026】
なお、
図1において符号22aは貯留部22内の液体を手動による往復動によって攪拌する攪拌ボールである。
【0027】
〔化粧料容器の各部構成の設置条件〕
図2に各部寸法の構成を示す。
図2では、軸線Lを一点鎖線で示している。
【0028】
化粧用容器においては、先軸内において前記パイプ16の先端位置が下記式(I)
1.5<Vcosθ×(D/A)<10 ・・・(I)
但し、A:先軸の先端開口の面積(mm2)
D:パイプ内径の面積(mm2)
V:パイプ先端から先軸先端までの体積(mm3)
θ:パイプ先端及び先軸先端内部を結んだ線と軸線とのなす平均角度(°)
を満たすように、パイプ16先端が先軸先端よりも後退した化粧料容器である。
【0029】
平均角度θは、5°<θ<20°の範囲内が好適である、
体積Vは、10<V<30(mm3)の範囲内が好適である。
面積比D/Aは、0.1<D/A<0.2の範囲内が好適である。
【0030】
実施形態の化粧料容器には、アクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマー、アクリル酸エステルモノマー、メタクリル酸エステルモノマーから選ばれるモノマー同士を重合することにより得られるガラス転移点20℃以下のアクリル酸系ポリマーの水性エマルジョンを含み、表面張力が30~45mN/m、コーンプレート型粘度計による温度25℃、ずり速度3.83s-1での粘度(N1)は50~700mPa・s、かつ、ずり速度383s-1での粘度(N2)が5~70mPa・sであることが好適である。更に好ましくはその粘度の比(N1/N2)が10~20である液体化粧料組成物を収容したことがより望ましい。
【0031】
ここで、比較のため従来の化粧料容器において、パイプ先端が先軸先端と同じか先方に位置している化粧料容器について考察する。この化粧料容器においては、経時的に塗布体の穂先及びパイプの内部で低粘度の液体化粧料が固化する。この状態で繰り出しを続けると、内部の圧力が上昇する。そして、繰り出し操作により固化部分が決壊すると、蓄圧状態のため液が飛散する。
【0032】
これに対して、本実施形態の化粧料容器では、塗布体18内においてパイプ16を操作部12側に後退させている。これによって、先軸20内にパイプ16先端が隠れている。したがって、パイプ16内の乾燥固化を減速し、液体化粧料が乾燥しにくくなる。
【0033】
また、
図1に示すように、パイプ16の後退によって先軸20と塗布体18周辺のクリアランスが増している。このクリアランスによって、塗布体18において化粧料の固化時に流路を確保している。これによって先軸20内の塗布体18にクリアランスを流路として、先軸開口20aから液体化粧料を吐出させることができる。
【0034】
パイプ16が境界面よりも先軸20内部に潜り込ませているため(3~4mmが好適)、乾燥の遅延効果が発生する。パイプ16の内径に影響し、直径1.0mm以上が好適である。
【0035】
先軸20と塗布体18周辺のクリアランスが増え、塗布体18固化時の流路を確保することができる。また、塗布体18が繊維の穂首(例えば繊維径0.05~0.2mm)でパイプ16が後退しているため先軸20内で塗布体18の繊維が中央に集まり、塗布体18周囲と先軸20内面とのクリアランスが拡大する。液体化粧用の流路を確保できる。
【0036】
次に、上記した実施形態の化粧料容器の評価結果を
図3の表に示す。
【0037】
この場合、使用した液体化粧料組成部及び塗布体の繊維径は、次のものであった。この場合、数値は質量%を表している。
カーボンブラック:8%
アクリル酸アルキル共重合体エマルジョン:20%
結晶セルロース:2%
ポリエチレングリコールアルキルエーテル:2%
スルホコハク酸ジエチルヘキシルNa溶液:0.1%
エチルヘキシルグリセリン:0.2%
エデト酸二ナトリウム:0.3%
アミノメチルプロパノール:0.1%
精製水:残余
ずり速度3.83(s-1)粘度:120mPa・s
ずり速度383(s-1)粘度:10mPa・s
表面張力:35mN/m
筆穂(塗布体)の繊維径:0.10mm
【0038】
(評価方法)
下記の比較例1~6、実施例1~6の各構造の化粧用容器に、上記の液体化粧料を収容したものを用意した。比較例1~7、実施例1~3の各構造の化粧料容器において、対象面に塗布に使用した後、キャップをしない状態で25℃60%環境下にて24時間放置の後、容器からの吐出量:4[μl/s](マイクロリットル/秒)の繰り出しで10秒間行った。各化粧料容器の評価本数は10本である。
それらを下記評価基準で官能評価した。
【0039】
評価基準:
A:順次供給され、1本も吹き出しせずに通常に塗布ができた。
B:吹き出しはしなかったが、液が届かず塗布ができなかった。
C:吹き出しした。
【0040】
評価結果は、
図3の表に示す通りになった。なお、実施例9及び10、比較例5及び6の塗布体18は、実施例1~8、比較例1~4の先軸先端開口径の寸法比に対応して塗布体18の外径方向のみの寸法及び繊維の本数を異ならせたものである。
【0041】
上記
図3に示す実験結果によれば、1.5<Vcosθ×(D/A)<10を充足する実施例1~実施例10の各実施例は、いずれも評価は「A」であり、繰り出しによって液体化粧料組成物が順次供給され、1本も吹き出しせずに通常に塗布ができた。
【0042】
一方、比較例1~4では、評価結果が「C」の「吹き出しした」ものであった。また、比較例5~6では、評価結果が「B」の「液が届かず塗布ができなかった」ものであった。
【0043】
以上から、本実施例が比較例と比較して噴き出しがなく、良好な塗布も得られたので、有用であることが理解される。
【0044】
以上のように本実施形態は本発明の一例に過ぎないので、本発明の範囲内で変形実施できることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の化粧料容器は、液体化粧料を収容する製品に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
10 容器本体
12 操作部
14 繰り出し機構
16 パイプ
18 塗布体
20 先軸