(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】ラックバーの製造装置及びラックバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
B21K 1/76 20060101AFI20220929BHJP
B21J 5/02 20060101ALI20220929BHJP
C21D 9/32 20060101ALI20220929BHJP
C21D 1/10 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B21K1/76 A
B21J5/02 A
C21D9/32 A
C21D9/32 B
C21D1/10 A
(21)【出願番号】P 2018199511
(22)【出願日】2018-10-23
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390029089
【氏名又は名称】高周波熱錬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮介
(72)【発明者】
【氏名】須永 頼匡
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-137536(JP,A)
【文献】特表2012-524662(JP,A)
【文献】特開2018-069280(JP,A)
【文献】仏国特許発明第01442832(FR,A)
【文献】特開昭63-297524(JP,A)
【文献】特開2008-229676(JP,A)
【文献】特開2009-262694(JP,A)
【文献】特開2004-131823(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101269390(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 5/02 - 5/08
B21K 1/76
B21D 7/00
B21D 15/00 - 19/00
B21J 13/10
B21D 43/00 - 43/10
B21D 51/10
C21D 9/32
C21D 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の軸材の外周面に、前記軸材の軸方向に延びる平潰し部を形成する予備成形部と、
前記平潰し部の平坦な外面にラックを形成する歯成形部と、
前記ラックの焼入れを行う熱処理部と、
前記軸材を予備成形部に搬入し、且つ前記平潰し部が形成された前記軸材を前記予備成形部から搬出する第1搬送部と、
前記平潰し部が形成された前記軸材を前記歯成形部に搬入し、且つ前記平潰し部に前記ラックが形成された前記軸材を前記歯成形部から搬出する第2搬送部と、
前記ラックが形成された前記軸材を前記熱処理部に搬入し、且つ前記ラックの焼入れが行われた前記軸材を前記熱処理部から搬出する第3搬送部と、
を備え、
前記第1搬送部、前記第2搬送部及び前記第3搬送部は、前記軸材の両端部のうち少なくとも一方の端部の内径部を保持
し、
前記予備成形部は、
前記軸材の外周面を保持する予備成形用金型と、
前記予備成形用金型によって保持された前記軸材の外周面に押し付けられる平潰しポンチと、
を備え、
前記予備成形用金型は、前記軸材の全体を収容可能であり、収容した前記軸材の一方の端部を金型外部に露呈させる連通孔を有し、
前記第1搬送部は、前記軸材の前記一方の端部に挿入可能且つ径方向に拡縮可能な保持部を備え、
前記保持部は、前記軸材の前記一方の端部の内部で径方向に拡大されることによって前記一方の端部の内径部を保持し、前記連通孔を通して、前記予備成形用金型に収容されている前記軸材の前記一方の端部の内部に配置されるラックバーの製造装置。
【請求項2】
中空の軸材の外周面に、前記軸材の軸方向に延びる平潰し部を形成する予備成形部と、
前記平潰し部の平坦な外面にラックを形成する歯成形部と、
前記ラックの焼入れを行う熱処理部と、
前記軸材を予備成形部に搬入し、且つ前記平潰し部が形成された前記軸材を前記予備成形部から搬出する第1搬送部と、
前記平潰し部が形成された前記軸材を前記歯成形部に搬入し、且つ前記平潰し部に前記ラックが形成された前記軸材を前記歯成形部から搬出する第2搬送部と、
前記ラックが形成された前記軸材を前記熱処理部に搬入し、且つ前記ラックの焼入れが行われた前記軸材を前記熱処理部から搬出する第3搬送部と、
を備え、
前記第1搬送部、前記第2搬送部及び前記第3搬送部は、前記軸材の両端部のうち少なくとも一方の端部の内径部を保持し、
前記歯成形部は、
前記軸材の外周面を保持する歯成形用金型と、
前記歯成形用金型によって保持された前記軸材の前記平潰し部に押し付けられるラック歯型と、
前記歯成形用金型によって保持された前記軸材に圧入される複数の芯金と、
を備え、
前記歯成形用金型は、前記軸材の全体を収容可能であり、収容した前記軸材の両端部のうち一方の第1端部を金型外部に露呈させる第1連通孔と、他方の第2端部を金型外部に露呈させる第2連通孔と、を有し、
前記複数の芯金は、前記第1連通孔を通して、前記歯成形用金型に収容されている前記軸材に順に圧入され、
前記第2搬送部は、前記軸材の前記第2端部に挿入可能且つ径方向に拡縮可能な保持部を備え、
前記保持部は、前記第2端部の内部で径方向に拡大されることによって前記第2端部の内径部を保持し、前記第2連通孔を通して、前記歯成形用金型に収容されている前記軸材の前記第2端部の内部に配置されるラックバーの製造装置。
【請求項3】
請求項2記載のラックバーの製造装置であって、
前記予備成形部は、
前記軸材の外周面を保持する予備成形用金型と、
前記予備成形用金型によって保持された前記軸材の外周面に押し付けられる平潰しポンチと、
を備え、
前記予備成形用金型は、前記軸材の全体を収容可能であり、収容した前記軸材の一方の端部を金型外部に露呈させる連通孔を有し、
前記第1搬送部は、前記軸材の前記一方の端部に挿入可能且つ径方向に拡縮可能な保持部を備え、
前記保持部は、前記軸材の前記一方の端部の内部で径方向に拡大されることによって前記一方の端部の内径部を保持し、前記連通孔を通して、前記予備成形用金型に収容されている前記軸材の前記一方の端部の内部に配置されるラックバーの製造装置。
【請求項4】
中空の軸材の外周面に、前記軸材の軸方向に延びる平潰し部を形成する予備成形部と、
前記平潰し部の平坦な外面にラックを形成する歯成形部と、
前記ラックの焼入れを行う熱処理部と、
前記軸材を予備成形部に搬入し、且つ前記平潰し部が形成された前記軸材を前記予備成形部から搬出する第1搬送部と、
前記平潰し部が形成された前記軸材を前記歯成形部に搬入し、且つ前記平潰し部に前記ラックが形成された前記軸材を前記歯成形部から搬出する第2搬送部と、
前記ラックが形成された前記軸材を前記熱処理部に搬入し、且つ前記ラックの焼入れが行われた前記軸材を前記熱処理部から搬出する第3搬送部と、
を備え、
前記第1搬送部、前記第2搬送部及び前記第3搬送部は、前記軸材の両端部のうち少なくとも一方の端部の内径部を保持し、
前記熱処理部は、
前記軸材の外周面を包囲する加熱コイルと、
前記加熱コイルによって加熱された前記軸材の外周面に複数の径方向から冷却液を吹き付ける冷却ジャケットと、
を備え、
前記加熱コイルは、前記軸材の全体を収容可能であり、
前記加熱コイルと前記冷却ジャケットとは、前記加熱コイルの軸方向に互いに隣設されており、
前記第3搬送部は、前記軸材の両端部に挿し込まれて前記軸材を軸方向に挟持する一対のセンタを備え、
前記一対のセンタは、前記加熱コイルの軸線上に配置されており、前記加熱コイル及び前記冷却ジャケットを貫いて前記加熱コイルの軸線に沿って移動されるラックバーの製造装置。
【請求項5】
請求項4記載のラックバーの製造装置であって、
前記予備成形部は、
前記軸材の外周面を保持する予備成形用金型と、
前記予備成形用金型によって保持された前記軸材の外周面に押し付けられる平潰しポンチと、
を備え、
前記予備成形用金型は、前記軸材の全体を収容可能であり、収容した前記軸材の一方の端部を金型外部に露呈させる連通孔を有し、
前記第1搬送部は、前記軸材の前記一方の端部に挿入可能且つ径方向に拡縮可能な保持部を備え、
前記保持部は、前記軸材の前記一方の端部の内部で径方向に拡大されることによって前記一方の端部の内径部を保持し、前記連通孔を通して、前記予備成形用金型に収容されている前記軸材の前記一方の端部の内部に配置されるラックバーの製造装置。
【請求項6】
請求項4又は5記載のラックバーの製造装置であって、
前記歯成形部は、
前記軸材の外周面を保持する歯成形用金型と、
前記歯成形用金型によって保持された前記軸材の前記平潰し部に押し付けられるラック歯型と、
前記歯成形用金型によって保持された前記軸材に圧入される複数の芯金と、
を備え、
前記歯成形用金型は、前記軸材の全体を収容可能であり、収容した前記軸材の両端部のうち一方の第1端部を金型外部に露呈させる第1連通孔と、他方の第2端部を金型外部に露呈させる第2連通孔と、を有し、
前記複数の芯金は、前記第1連通孔を通して、前記歯成形用金型に収容されている前記軸材に順に圧入され、
前記第2搬送部は、前記軸材の前記第2端部に挿入可能且つ径方向に拡縮可能な保持部を備え、
前記保持部は、前記第2端部の内部で径方向に拡大されることによって前記第2端部の内径部を保持し、前記第2連通孔を通して、前記歯成形用金型に収容されている前記軸材の前記第2端部の内部に配置されるラックバーの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラックバーの製造装置及びラックバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラックアンドピニオン式ステアリング装置等に用いられるラックバーとして、例えば中実の軸材にラックが形成された、いわゆる中実ラックバーが知られている。また、中空の軸材にラックが形成され、軽量化が図られた、いわゆる中空ラックバーも知られている。
【0003】
中空ラックバーは、例えば次のようにして製造される。まず、中空の軸材の外周面にパンチが押し付けられることにより、中空の軸材の外周面に平潰し部が形成される(例えば、特許文献1参照)。次に、ラック歯型が平潰し部の平坦な外面に押し付けられた状態で平潰し部の内部に芯金が圧入され、圧入される芯金が次第に大きなものとされて芯金の圧入が繰り返されることにより、ラックが平潰し部の外面に形成される(例えば、特許文献2参照)。そして、ラックの硬度を高めるため、ラックの焼入れが行われる(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
また、デュアルピニオンアシスト電動パワーステアリング装置に用いられるラックバーとして、ステアリングシャフトの操舵ピニオンと噛み合ラックと、アシスト機構の補助ピニオンと噛み合うラックとの2つのラックを備えるラックバーも知られている。
【0005】
特許文献4に記載されたラックバーは、第1のラックが形成された中空ラックバーの一方の端部に中実の延長軸材が接合されており、この延長軸材に第2のラックが形成されている。第2のラックは、延長軸材が中空ラックバーに接合された後、ブローチ盤等の加工装置を用いて形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-262694号公報
【文献】特開2008-229676号公報
【文献】特開平10-158742号公報
【文献】特開2014-124767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2に記載されたラックバーの製造方法、及び特許文献3に記載されたラックバーの焼入れ方法では、中空の軸材の長さの一部区間にラックが形成されている。平潰し部が形成される際に、また平潰し部にラックが形成される際には、軸材の上記一部区間が金型に収容され、ラックの焼入れが行われる際には、軸材の上記一部区間が加熱コイルに収容されており、軸材の一方の端部が金型及び加熱コイルから突出して配置される。そこで、金型及び加熱コイルに対する軸材の搬入及び搬出は、例えば特許文献2に記載されるように、金型及び加熱コイルから突出して配置される軸材の一方の端部を把持して行われている。
【0008】
一方、第1のラックが形成された中空ラックバーに延長軸材が接合され、この延長軸材に第2のラックが形成されてなるラックバーにおいて、中空ラックバーの第1のラックは、例えば中空の軸材の一方の端部から他方の端部までの略全長に亘って形成され得る。この場合に、平潰し部が形成される際に、また平潰し部にラックが形成される際には、軸材の全体が金型に収容され、ラックの焼入れが行われる際には、軸材の全体が加熱コイルに収容される。このため、金型及び加熱コイルから突出して配置される把持部が軸材に存在せず、金型及び加熱コイルに対する軸材の搬入及び搬出に不都合が生じる。金型及び加熱コイルから突出して配置される余長を軸材に設定し、ラックの焼入れが完了した後に余長を切除することにより、軸材の搬入及び搬出における不都合は解消され得るが、材料の無駄が生じる。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、中空の軸材の略全長に亘ってラックが形成されるような比較的短尺な中空ラックバーの製造に好適な製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様のラックバーの製造装置は、中空の軸材の外周面に、前記軸材の軸方向に延びる平潰し部を形成する予備成形部と、前記平潰し部の平坦な外面にラックを形成する歯成形部と、前記ラックの焼入れを行う熱処理部と、前記軸材を予備成形部に搬入し、且つ前記平潰し部が形成された前記軸材を前記予備成形部から搬出する第1搬送部と、前記平潰し部が形成された前記軸材を前記歯成形部に搬入し、且つ前記平潰し部に前記ラックが形成された前記軸材を前記歯成形部から搬出する第2搬送部と、前記ラックが形成された前記軸材を前記熱処理部に搬入し、且つ前記ラックの焼入れが行われた前記軸材を前記熱処理部から搬出する第3搬送部と、を備え、前記第1搬送部、前記第2搬送部及び前記第3搬送部は、前記軸材の両端部のうち少なくとも一方の端部の内径部を保持する。
【0011】
また、本発明の一態様のラックバーの製造方法は、中空の軸材の外周面に、前記軸材の軸方向に延びる平潰し部を形成する予備成形ステップと、前記平潰し部の平坦な外面にラックを形成する歯成形ステップと、前記ラックの焼入れを行う熱処理ステップと、を備え、前記予備成形ステップ、前記歯成形ステップ及び前記熱処理ステップにおいて、前記軸材の両端部のうち少なくとも一方の端部の内径部を保持して前記軸材を搬送する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、中空の軸材の略全長に亘ってラックが形成されるような比較的短尺な中空ラックバーの製造に好適な製造装置及び製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態を説明するための、ラックバーの一例の斜視図である。
【
図2A】
図1のラックバーの製造工程の一例の模式図である。
【
図2B】
図1のラックバーの製造工程の一例の模式図である。
【
図2C】
図1のラックバーの製造工程の一例の模式図である。
【
図2D】
図1のラックバーの製造工程の一例の模式図である。
【
図3】本発明の実施形態を説明するための、ラックバーの製造装置の一例の模式図である。
【
図4】
図3の製造装置の予備成形部の縦断面図である。
【
図6A】
図4の予備成形部が行う予備成形工程の模式図である。
【
図6B】
図4の予備成形部が行う予備成形工程の模式図である。
【
図6C】
図4の予備成形部が行う予備成形工程の模式図である。
【
図6D】
図4の予備成形部が行う予備成形工程の模式図である。
【
図7】
図3の製造装置の第1搬送部の模式図である。
【
図8】
図7の第1搬送部の動作を示す模式図である。
【
図9】
図3のラックバーの製造装置の歯成形部の横断面図である。
【
図11】
図3のラックバーの製造装置の熱処理部及び第3搬送部の模式図である。
【
図12】
図11の熱処理部の冷却ジャケットの縦断面図である。
【
図14】本発明の実施形態を説明するための、ラックバーの他の例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施形態を説明するための、ラックバーの一例を示す。
【0015】
図1に示すラックバー1は、断面円形状の中空の軸材2からなる、いわゆる中空ラックバーである。軸材2の外周面にはラック3が形成されており、ラック3は、軸材2の一方の端部から他方の端部まで軸方向に延びている。軸材2においてラック3が形成されている区間(以下、ラック形成区間という)の断面形状は非円形状であり、ラック形成区間から外れた区間の断面形状は円形状である。一方の端部側に残る断面円形状の軸部4の長さ、及び他方の端部側に残る断面円形状の軸部5の長さは、いずれもラック3の長さよりも短く、ラック3との関係において軸材2は比較的短尺である。中空ラックバー1は、例えば次のようにして製造される。
【0016】
図2Aから
図2Dは、中空ラックバー1の製造工程の概略を示す。
【0017】
図2Aに示すように、素材である軸材2は、例えばJIS-S45C等の鋼からなる断面円形状の中空の軸材であり、軸材2の軸方向の両端は開口している。軸材2には、典型的には、成形性及び防食性を高める燐酸亜鉛皮膜処理等が施されている。
【0018】
<予備成形工程>
図2Bに示すように、軸材2の一方の端部から他方の端部まで軸方向に延びる平潰し部6が軸材2の外周面に形成される。平潰し部6は、軸材2の外周面に平潰しパンチ111が押し付けられ、軸材2の外周面が、
図2Cに示す歯成形工程にて形成されるラック3の歯底高さ付近まで平坦状に押し潰されることによって形成される。
【0019】
<歯成形工程>
次に、
図2Cに示すように、平潰し部6の平坦な外面にラック3が形成される。ラック3は、ラック歯型151が平潰し部6の平坦な外面に押し付けられた状態で平潰し部6の内部に芯金152が圧入され、圧入される芯金152が次第に大きなものとされて芯金152の圧入が繰り返されることによって形成される。
【0020】
<熱処理工程>
次に、
図2Dに示すように、ラック3の硬度を高めるためにラック3の焼入が行われる。焼入の際の加熱は、加熱コイル180を用いた高周波誘導加熱によって行うことができる。
【0021】
この後、平潰し部6及びラック3の形成に伴う軸材2の曲りの矯正、軸材2の外周面のうちラック3とは反対側に位置する断面円弧状の歯裏面の研磨、軸部4及び/又は軸部5の内径部に対するネジ切り等の加工が適宜行われ、中空ラックバー1が製造される。
【0022】
図3は、
図2Aから
図2Dに示した中空ラックバー1の製造工程を行う製造装置の概略構成を示す。
【0023】
製造装置100は、予備成形部101と、歯成形部102と、熱処理部103と、第1搬送部104と、第2搬送部105と、第3搬送部106とを備える。予備成形部101、歯成形部102、及び熱処理部103は、所定の製造ラインに沿って設置されており、予備成形部101のライン上流側、予備成形部101と歯成形部102との間、歯成形部102と熱処理部103との間、熱処理部103のライン下流側には、軸材2が置かれる適宜なストッカ(不図示)が設置されている。
【0024】
予備成形部101は、
図2Bに示した予備成形工程を行うものであり、中空の軸材2の外周面に平潰し部6を形成する。第1搬送部104は、予備成形部101のライン上流側に設置されたストッカから軸材2を取り出し、この軸材2を予備成形部101に搬入する。また、第1搬送部104は、平潰し部6が形成された軸材2を予備成形部101から搬出し、この軸材2を、予備成形部101と歯成形部102との間に設置されたストッカに置く。
【0025】
歯成形部102は、
図2Cに示した歯成形工程を行うものであり、軸材2の平潰し部6の平坦な外面にラック3を形成する。第2搬送部105は、予備成形部101と歯成形部102との間に設置されたストッカから軸材2を取り出し、この軸材2を歯成形部102に搬入する。また、第2搬送部105は、ラック3が形成された軸材2を歯成形部102から搬出し、この軸材2を、歯成形部102と熱処理部103との間に設置されたストッカに置く。
【0026】
熱処理部103は、
図2Dに示した熱処理工程を行うものであり、ラック3の焼入れを行う。第3搬送部106は、歯成形部102と熱処理部103との間に設置されたストッカから軸材2を取り出し、この軸材2を熱処理部103に搬入する。また、第3搬送部106は、ラック3の焼入れが行われた軸材2を熱処理部103から搬出し、この軸材2を熱処理部103のライン下流側に設置されたストッカに置く。
【0027】
以下、予備成形部101、歯成形部102、及び熱処理部103の各部について順に説明する。
【0028】
【0029】
予備成形部101は、予備成形用金型110と、平潰しパンチ111と、加圧機構112とを備えている。
【0030】
予備成形用金型110は、左右方向に開閉可能な左型120及び右型121と、支持ブロック122と、イジェクトピン123とを有する。イジェクトピン123は、左型120及び右型121の下側に設けられており、突き合わされた左型120と右型121との間に差し込まれ、左型120と右型121とを分離させる。
【0031】
左型120及び右型121それぞれの突合せ面には、突合せ面を前後方向に横断する断面半円形状の保持溝124が形成されている。これらの保持溝124は、左型120及び右型121が閉じられた際に互いに組み合され、軸材2の略全体を収容可能な円筒状の成形空間を形成し、収容した軸材2の外周面を保持する。
【0032】
左型120の突合せ面とは反対側の外側面には、上下方向に傾斜した傾斜面125が設けられており、傾斜面125は、左型120の上面から少なくとも保持溝124の下端の位置まで延びている。右型121の外側面にも、同様の傾斜面126が設けられている。
【0033】
支持ブロック122の下面には、左型120及び右型121を収容する凹部127が形成されている。凹部127の左右の側面には、左型120の傾斜面125に摺接する傾斜面128と、右型121の傾斜面126に摺接する傾斜面129とが設けられている。
【0034】
支持ブロック122は、加圧機構112によって押し下げられる。支持ブロック122が押し下げられることにより、支持ブロック122の傾斜面128,129と、左型120の傾斜面125及び右型121の傾斜面126とが係合する。これらの傾斜面の係合により、支持ブロック122に作用する下方に向けた押圧力は、左右方向の押圧力に変換されて左型120及び右型121に作用する。これにより、左型120と右型121とが閉じられ、且つ閉じられた状態で強固に保持される。
【0035】
左型120及び右型121と、支持ブロック122とには、左型120及び右型121並びに支持ブロック122を上下方向に貫いて上記成形空間に通じる貫通孔130が形成さている。平潰しパンチ111は、貫通孔130に配置され、上下動可能に支持ブロック122によって支持されており、加圧機構112によって押し下げられる。
【0036】
また、支持ブロック122には、円筒状の上記成形空間の軸線上に配置され、上記成形空間に通じる連通孔131が形成されている。軸材2の両端部のうち一方の端部2aは、この連通孔131を通じて金型外部に露呈する。なお、連通孔131を通じて金型外部に露呈する軸材2の端部は、上記成形空間に収容されてもよいし、連通孔131に配置されてもよい。
【0037】
図6Aから
図6Dは、予備成形部101が行う予備成形工程を示す。
【0038】
まず、
図6Aに示すように、支持ブロック122及び平潰しパンチ111が加圧機構112によって持ち上げられており、左型120及び右型121が開かれている状態で、軸材2が、第1搬送部104によって予備成形用金型110に搬入される。軸材2は、支持ブロック122の連通孔131を通じ、左型120の保持溝124と右型121の保持溝124との間の所定位置に配置される。
【0039】
次に、
図6Bに示すように、第1搬送部104は、軸材2の保持を解除して、予備成形用金型110から退避される。そして、支持ブロック122が押し下げられ、左型120及び右型121が閉じられる。軸材2の略全体が上記成形空間に収容され、上記成形空間に収容された軸材2の外周面が、左型120及び右型121それぞれの保持溝124によって保持される。そして、平潰しパンチ111が押し下げられ、軸材2の外周面に押し付けられる。これにより、軸材2の外周面に平潰し部6が形成される。
【0040】
次に、
図6Cに示すように、第1搬送部104が、支持ブロック122の連通孔131を通じて軸材2を再び保持する。そして、支持ブロック122及び平潰しパンチ111が持ち上げられ、イジェクトピン123が左型120と右型121との間に差し込まれる。これにより、左型120と右型121とが分離される。
【0041】
そして、
図6Dに示すように、軸材2を保持した第1搬送部104が予備成形用金型110から退避される。これにより、軸材2が、支持ブロック122の連通孔131を通じて予備成形用金型110から搬出される。
【0042】
図6Aから
図6Dに示した予備成形工程において、軸材2の全体が予備成形用金型110に収容されており、予備成形用金型110から突出して配置される把持部が軸材2に存在しない。そこで、第1搬送部104は、支持ブロック122の連通孔131を通じて軸材2の一方の端部2aの内径部を保持し、軸材2の搬入及び搬出を行う。
【0043】
【0044】
第1搬送部104は、保持部140と、保持部140を移動させる移動機構141とを備える。保持部140は、予備成形用金型110の上記成形空間の軸線上で支持ブロック122の連通孔131(
図6A~
図6D参照)を臨むように配置され、この軸線に沿って前後に移動される。移動機構141は、例えば多関節ロボット、直動プッシャー等である。
【0045】
保持部140は、軸材2の端部2aに挿入可能且つ径方向に拡縮可能に構成される。
図7及び
図8に示す例では、保持部140は、円筒状のチャック142と、チャック142に挿通されたドローバー143とを有する。チャック142の外径は軸材2の内径よりも小さい。チャック142の先端部は、先端から延びるスリットによって複数の爪144に分割されており、これらの爪144は可撓である。ドローバー143の先端部145は、チャック142の先端から突出して配置されており、逆テーパ状に形成されている。
【0046】
図8は、保持部140の動作を示しており、保持部140が軸材2の端部2aに挿入されている状態で、ドローバー143が、図示しない駆動部によってチャック142の基端側に引き込まれる。ドローバー143の引き込みに伴い、チャック142の複数の爪144が、ドローバー143の逆テーパ状の先端部145を摺動し、チャック142の外径側に撓められる。これにより、チャック142は、全体として径方向に拡大され、軸材2の端部2aの内径部を保持する。一方、ドローバー143が、チャック142の先端側に押し出されると、チャック142は、全体として径方向に縮小され、軸材2の保持を解除する。
【0047】
以上の構成によれば、軸材2の全体が予備成形用金型110に収容されるとしても、保持部140は、支持ブロック122の連通孔131を通じて軸材2の一方の端部2aの内径部を保持でき、軸材2の搬入及び搬出を行うことができる。
【0048】
【0049】
歯成形部102は、歯成形用金型150と、ラック歯型151と、複数の芯金152と、これらの芯金152を収納する芯金ホルダ153と、第1芯金押棒154と、第2芯金押棒155とを備える。
【0050】
歯成形用金型150は、上下方向に開閉可能な上型160及び下型161を有し、上型160及び下型161は図示しない開閉機構によって開閉される。上型160及び下型161それぞれの突合せ面には、突合せ面を前後方向に横断する断面半円形状の保持溝162が形成されている。これらの保持溝162は、上型160及び下型161が閉じられた際に互いに組み合され、軸材2の全体を収容可能な円筒状の成形空間を形成し、収容した軸材2の外周面を保持する。
【0051】
円筒状の上記成形空間の両端部は金型外部に開放されている。平潰し部6が形成された軸材2の一方の端部側に残る断面円形状の軸部4(第1端部)は、上記成形空間の一方の端部を通して金型外部に露呈し、軸材2の他方の端部側に残る断面円形状の軸部5(第2端部)は、上記成形空間の他方の端部を通して金型外部に露呈する。以下、軸材2の軸部4を露呈させる上記成形空間の一方の端部を、歯成形用金型150の第1連通孔163とし、軸部5を露呈させる上記成形空間の一方の端部を、歯成形用金型150の第2連通孔164と言う。
【0052】
ラック歯型151は、取外し可能に上型160に装着されており、上記成形空間に収容された軸材2の平潰し部6の平坦な外面に対向して配置されている。平潰し部6の外面に接するラック歯型151の成形面151aには、ラック3を成形する複数の歯溝が設けられている。
【0053】
芯金ホルダ153は、上記成形空間の軸線上に設けられ、歯成形用金型150の片側に歯成形用金型150と隣り合って配置されている。芯金ホルダ153は、複数の芯金152を収納しており、このうち一つの芯金152を選択し、選択した芯金152を上記成形空間の軸線上に配置する。
【0054】
第1芯金押棒154は、上記成形空間の軸線上に設けられ、第1芯金押棒154と歯成形用金型150との間に芯金ホルダ153を挟んで配置されている。第1芯金押棒154は、図示しない駆動機構により、上記成形空間の軸線に沿って前後に移動される。第1芯金押棒154が歯成形用金型150に向けて移動されることにより、第1芯金押棒154は、歯成形用金型150の第1連通孔163を通じ、軸部4の開口から軸材2に挿入される。併せて、上記成形空間の軸線上に配置されている芯金152が、第1芯金押棒154に押されて軸材2に挿入される。
【0055】
第2芯金押棒155は、上記成形空間の軸線上に設けられ、第2芯金押棒155と芯金ホルダ153及び第1芯金押棒154との間に歯成形用金型150を挟んで配置されている。第2芯金押棒155は、図示しない駆動機構により、上記成形空間の軸線に沿って前後に移動される。第2芯金押棒155が歯成形用金型150に向けて移動されることにより、第2芯金押棒155が、歯成形用金型150の第2連通孔164を通じ、軸部5の開口から軸材2に挿入される。軸材2に挿入されている芯金152は、第2芯金押棒155によって押し戻される。
【0056】
【0057】
まず、
図10Aに示すように、上型160及び下型161が開かれている状態で、軸材2が、第2搬送部105によって、第2芯金押棒155が配置されている側から歯成形用金型150に搬入される。軸材2は、平潰し部6をラック歯型151に対向させた状態で、上型160の保持溝162と下型161の保持溝162との間の所定位置に配置される。
【0058】
ここで、第2搬送部105は、保持部170と、保持部170を移動させる移動機構171とを備える。なお、保持部170は、第1搬送部104の保持部140と同様に構成され、軸材2の軸部5に挿入可能且つ径方向に拡縮可能であり、軸部5の内部で径方向に拡大されることによって軸部5の内径部を保持する。保持部170は、円筒状の上記成形空間の軸線上で歯成形用金型150の第2連通孔164を臨むように配置され、この軸線に沿って前後に移動される。
【0059】
次に、
図10Bに示すように、上型160及び下型161が閉じられる。軸材2の全体が上記成形空間に収容され、上記成形空間に収容された軸材2の外周面が、上型160及び下型161それぞれの保持溝162によって保持される。併せて、ラック歯型151が、平潰し部6の平坦な外面に押し付けられる。そして、第2搬送部105の保持部170は、軸材2の軸部5の保持を解除して、歯成形用金型150から退避され、上記成形空間の軸線から外れて配置される。
【0060】
次に、
図10Cに示すように、第1芯金押棒154が駆動され、一つの芯金152が、歯成形用金型150の第1連通孔163を通じ、軸部4の開口から軸材2に挿入され、平潰し部6の内部に圧入される。そして、第2芯金押棒155が駆動され、平潰し部6の内部に圧入された芯金152は、第2芯金押棒155によって押し戻され、軸材2から排出される。軸材2から排出された芯金152は、芯金ホルダ153に再び収納される。
【0061】
芯金152が平潰し部6の全長に亘って往復移動される過程で、平潰し部6の材料が芯金152によってしごかれ、ラック歯型151に向けて塑性流動する。芯金152が次第に大きなものに替えられ、芯金152の圧入が繰り返されることにより、平潰し部6の材料がラック歯型151の成形面151aの歯溝に次第に食い込む。こうして、成形面151aの形状が平潰し部6に転写され、平潰し部6にラック3が形成される。
【0062】
次に、
図10Dに示すように、第2搬送部105の保持部170が、歯成形用金型150の第2連通孔164を通じて軸材2の軸部5に挿入され、軸部5の内径部を再び保持する。そして、軸材2が保持部170によって保持された状態で、上型160及び下型161が開かれる。
【0063】
そして、
図10Eに示すように、軸材2を保持した第2搬送部105が歯成形用金型150から退避される。これにより、軸材2が、歯成形用金型150から搬出される。
【0064】
図10Aから
図10Eに示した歯成形工程においても、軸材2の全体が歯成形用金型150に収容されるが、保持部170は、歯成形用金型150の第2連通孔164を通じて軸材2の軸部5の内径部を保持でき、軸材2の搬入及び搬出を行うことができる。
【0065】
図11及び
図12は、熱処理部103及び第3搬送部106の一例を示す。
【0066】
熱処理部103は、加熱コイル180と、冷却ジャケット181とを備える。
【0067】
加熱コイル180は、銅等の良導電材料からなる管材を螺旋状に巻いて形成されており、軸材2の全体を収容可能である。加熱コイル180に収容された軸材2は、加熱コイル180によって外周面を包囲されており、図示しない電源から加熱コイル180に高周波電流が供給されることによって誘導加熱される。
【0068】
冷却ジャケット181は、螺旋状の加熱コイル180の軸方向に加熱コイル180と隣り合って設けられている。冷却ジャケット181は、4つのジャケット部材190~193を含み、ジャケット部材190~193は、加熱コイル180の軸線まわりに90°間隔で配置されている。ジャケット部材190~193は、軸材2の全長以上の長さをそれぞれ有する。
【0069】
軸材2を上下方向に挟んで配置されているジャケット部材190,191のうち少なくとも一方のジャケット部材は、図示しない加圧機構によって駆動され、軸材2を上下方向に拘束する。軸材2を左右方向に挟んで配置されているジャケット部材192,193のうち少なくとも一方のジャケット部材もまた、図示しない加圧機構によって駆動され、軸材2を左右方向に拘束する。そして、ジャケット部材190~193は、軸材2を拘束した状態で、スリット状の噴射ノズル194から冷却液を噴射する。ジャケット部材190~193から噴射された冷却液は軸材2の外周面に吹き付けられ、これによりラック3の焼入れが行われる。
【0070】
なお、
図12に示す例では、軸材2の冷却を補助する4つの補助ジャケット部材195が冷却ジャケット181に設けられている。補助ジャケット部材195は、4つのジャケット部材190~193のうち隣り合う2つのジャケット部材の間にそれぞれ配置されており、隣り合う2つのジャケット部材の間に露出する軸材2の外周面に向けて冷却液を噴射する。このように、軸材2の冷却を補助する補助ジャケット部材195が適宜追加されてもよい。
【0071】
ラック3が形成された軸材2は、ラック形成区間の断面形状が非円形状であり、且つラック加工時の残留応力が高いため、焼入れに起因して曲がりが生じやすいが、軸材2が複数の径方向から全長に亘って拘束された状態でラック3の焼入れが行われることにより、焼入に伴う曲りが抑制される。なお、軸材2を拘束するジャケット部材の数は特に限定されないが、好ましくは、ジャケット部材は、加熱コイル180の軸線まわりに均等に配置される。
【0072】
第3搬送部106は、一対のセンタ200,201と、一対のセンタ200,201を移動させる移動機構202とを備える。第3搬送部106は、一対のセンタ200,201を用いて軸材2を軸方向に挟持する。センタ200の円錐状の先端部は、軸材2の軸部4に挿し込まれて軸部4の内径部を支持し、センタ201の円錐状の先端部は、軸材2の軸部5に挿し込まれて軸部5の内径部を支持する。一対のセンタ200,201は、加熱コイル180及び冷却ジャケット181を間に挟んで加熱コイル180の軸線上に配置されており、加熱コイル180及び冷却ジャケット181を貫いて加熱コイル180の軸線に沿って移動される。なお、一対のセンタ200,201及び移動機構202は、軸材2の加熱による膨張及び冷却による収縮に追従できるように構成されている。
【0073】
【0074】
まず、
図13Aに示すように、軸材2が、加熱コイル180の軸線上且つ冷却ジャケット181とは反対側で加熱コイル180と隣り合って配置される。そして、一方のセンタ200が、加熱コイル180及び冷却ジャケット181を貫いて、冷却ジャケット181側から加熱コイル180側に向けて移動される。これにより、軸材2が一対のセンタ200,201によって挟持される。
【0075】
次に、
図13Bに示すように、一対のセンタ200,201が移動され、軸材2が加熱コイル180に収容される。そして、加熱コイル180に高周波電流が供給されて軸材2が誘導加熱される。
【0076】
次に、
図13Cに示すように、一対のセンタ200,201が移動され、軸材2が冷却ジャケット181に収容される。そして、軸材2は、冷却ジャケット181のジャケット部材190~193によって拘束され、拘束された状態で冷却液を吹き付けられる。これにより、ラック3の焼入れが行われる。
【0077】
そして、
図13Dに示すように、一対のセンタ200,201が加熱コイル180側に向けて移動され、軸材2が冷却ジャケット181及び加熱コイル180から搬出される。
【0078】
図13Aから
図13Dに示した熱処理工程においても、軸材2の全体が加熱コイル180に収容され、また冷却ジャケット181に収容されるが、一対のセンタ200,201は、加熱コイル180及び冷却ジャケット181を貫いて軸材2を軸方向に挟持することにより、軸材2の搬入及び搬出を行うことができる。また、軸材2を加熱コイル180から冷却ジャケット181まで軸方向に移動させることにより、加熱されてから冷却が開始されるまでに要する時間が短縮されるので、軸材2の表面の酸化を抑制でき、軸材2の表面にスケールが付着することを抑制する効果もある。
【0079】
図14は、本発明の実施形態を説明するための、ラックバーの他の例を示す。
【0080】
図14に示すラックバー10は、上述した中空ラックバー1の一方の軸部5に、中実の延長軸材11が接合されてなり、この延長軸材11には、軸方向の直動要素としてのラック12が形成れている。ラックバー10は、中空ラックバー1のラック3と、延長軸材11のラック12との2つのラックを備え、デュアルピニオンアシスト電動パワーステアリング装置に好適に用いられる。車両のステアリングシャフトとアシスト機構との位置関係に応じて、2つのラック3,12には、ラックバー10の中心軸まわりに、所定の回転角度差が設定されている。
【0081】
【0082】
まず、
図15Aに示すように、ラック3が形成された中空ラックバー1と、延長軸材11とが同軸に配置される。そして、中空ラックバー1の軸部5と、延長軸材11の一方の端部とが突き合される。
【0083】
次に、
図15Bに示すように、延長軸材11が中心軸まわりに回転される。中空ラックバー1及び延長軸材11の相対回転に伴い、中空ラックバー1及び延長軸材11それぞれの突合せ面に摩擦熱が発生する。この摩擦熱によって突合せ面の金属組織に変化が生じ、さらに圧力が加えられることによって、中空ラックバー1と延長軸材11とが圧接される。なお、中空ラックバー1と延長軸材11との接合方法は、摩擦圧接に限定されず、例えば溶接でもよい。
【0084】
そして、
図15Cに示すように、ブローチ盤等の加工装置を用いて延長軸材11の所定部位にラック12が形成される。ラック12は、中空ラックバー1のラック3を基準として所定の角度に形成される。なお、延長軸材11に形成される直動要素は、ラック12に限定されず、例えばボールねじのねじ溝等でもよい。ねじ溝は、中空ラックバー1と延長軸材11とが接合された後に、例えばワーリング加工装置を用いて延長軸材11に形成される。
【0085】
なお、延長軸材11は中空の軸材でもよい。延長軸材11が中空の軸材である場合に、延長軸材11のラック12は、中空ラックバー1と延長軸材11とが接合される以前に、中空ラックバー1のラック3と同様にして形成される。この場合に、2つのラック3,12の回転角度差は、例えば中空ラックバー1と延長軸材11とが摩擦圧接される際に、2つのラック3,12の所望の回転角度差が得られるタイミングで、中空ラックバー1及び延長軸材11の相対回転が急停止される。これにより、2つのラック3,12の所望の回転角度差が得られる。
【0086】
以上、説明したとおり、本明細書に開示されたラックバーの製造装置は、中空の軸材の外周面に、前記軸材の軸方向に延びる平潰し部を形成する予備成形部と、前記平潰し部の平坦な外面にラックを形成する歯成形部と、前記ラックの焼入れを行う熱処理部と、前記軸材を予備成形部に搬入し、且つ前記平潰し部が形成された前記軸材を前記予備成形部から搬出する第1搬送部と、前記平潰し部が形成された前記軸材を前記歯成形部に搬入し、且つ前記平潰し部に前記ラックが形成された前記軸材を前記歯成形部から搬出する第2搬送部と、前記ラックが形成された前記軸材を前記熱処理部に搬入し、且つ前記ラックの焼入れが行われた前記軸材を前記熱処理部から搬出する第3搬送部と、を備え、前記第1搬送部、前記第2搬送部及び前記第3搬送部は、前記軸材の両端部のうち少なくとも一方の端部の内径部を保持する。
【0087】
また、本明細書に開示されたラックバーの製造装置は、前記予備成形部が、前記軸材の外周面を保持する予備成形用金型と、前記予備成形用金型によって保持された前記軸材の外周面に押し付けられる平潰しポンチと、を備え、前記予備成形用金型は、前記軸材の全体を収容可能であり、収容した前記軸材の一方の端部を金型外部に露呈させる連通孔を有し、前記第1搬送部は、前記軸材の前記一方の端部に挿入可能且つ径方向に拡縮可能な保持部を備え、前記保持部は、前記軸材の前記一方の端部の内部で径方向に拡大されることによって前記一方の端部の内径部を保持し、前記連通孔を通して、前記予備成形用金型に収容されている前記軸材の前記一方の端部の内部に配置される。
【0088】
また、本明細書に開示されたラックバーの製造装置は、前記歯成形部が、前記軸材の外周面を保持する歯成形用金型と、前記歯成形用金型によって保持された前記軸材の前記平潰し部に押し付けられるラック歯型と、前記歯成形用金型によって保持された前記軸材に圧入される複数の芯金と、を備え、前記歯成形用金型は、前記軸材の全体を収容可能であり、収容した前記軸材の両端部のうち一方の第1端部を金型外部に露呈させる第1連通孔と、他方の第2端部を金型外部に露呈させる第2連通孔と、を有し、前記複数の芯金は、前記第1連通孔を通して、前記歯成形用金型に収容されている前記軸材に順に圧入され、前記第2搬送部は、前記軸材の前記第2端部に挿入可能且つ径方向に拡縮可能な保持部を備え、前記保持部は、前記第2端部の内部で径方向に拡大されることによって前記第2端部の内径部を保持し、前記第2連通孔を通して、前記歯成形用金型に収容されている前記軸材の前記第2端部の内部に配置される。
【0089】
また、本明細書に開示されたラックバーの製造装置は、前記熱処理部が、前記軸材の外周面を包囲する加熱コイルと、前記加熱コイルによって加熱された前記軸材の外周面に複数の径方向から冷却液を吹き付ける冷却ジャケットと、を備え、前記加熱コイルは、前記軸材の全体を収容可能であり、前記加熱コイルと前記冷却ジャケットとは、前記加熱コイルの軸方向に互いに隣設されており、前記第3搬送部は、前記軸材の両端部に挿し込まれて前記軸材を軸方向に挟持する一対のセンタを備え、前記一対のセンタは、前記加熱コイルの軸線上に配置されており、前記加熱コイル及び前記冷却ジャケットを貫いて前記加熱コイルの軸線に沿って移動される。
【0090】
また、本明細書に開示されたラックバーの製造方法は、中空の軸材の外周面に、前記軸材の軸方向に延びる平潰し部を形成する予備成形ステップと、前記平潰し部の平坦な外面にラックを形成する歯成形ステップと、前記ラックの焼入れを行う熱処理ステップと、を備え、前記予備成形ステップ、前記歯成形ステップ及び前記熱処理ステップにおいて、前記軸材の両端部のうち少なくとも一方の端部の内径部を保持して前記軸材を搬送する。
【0091】
また、本明細書に開示されたラックバーの製造方法は、上記ラックバーの製造方法によって製造されたラックバーの一方の端部に、中空又は中実の延長軸材を接合するステップと、前記延長軸材に、前記延長軸材の軸方向の直動要素を形成するステップと、をさらに備える。
【符号の説明】
【0092】
1 中空ラックバー
2 軸材
3 ラック
4 軸部
5 軸部
6 平潰し部
10 ラックバー
11 延長軸材
12 ラック
100 製造装置
101 予備成形部
102 歯成形部
103 熱処理部
104 第1搬送部
105 第2搬送部
106 第3搬送部
110 予備成形用金型
111 パンチ
112 加圧機構
120 左型
121 右型
122 支持ブロック
123 イジェクトピン
124 保持溝
125 傾斜面
126 傾斜面
127 凹部
128 傾斜面
129 傾斜面
130 貫通孔
131 連通孔
140 保持部
141 移動機構
142 チャック
143 ドローバー
144 爪
145 ドローバーの先端部
150 歯成形用金型
151 ラック歯型
152 芯金
153 芯金ホルダ
154 第1芯金押棒
155 第2芯金押棒
160 上型
161 下型
162 保持溝
163 第1連通孔
164 第2連通孔
170 保持部
171 移動機構
180 加熱コイル
181 冷却ジャケット
190 ジャケット部材
191 ジャケット部材
192 ジャケット部材
193 ジャケット部材
200 センタ
201 センタ
202 移動機構