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  • 特許-車両用エンジンアンダーカバー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】車両用エンジンアンダーカバー
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
B62D25/20 N
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018215350
(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公開番号】P2020082778
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000100366
【氏名又は名称】しげる工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】荻原 進介
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/093528(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成されたカバー本体と、
一側縁が上記開口部の一側縁において薄肉ヒンジ部を介して上記カバー本体と一体に連なる蓋部と、
上記蓋部が上記開口部を塞ぐ位置で、上記蓋部を上記カバー本体にロックするロック手段と、
上記蓋部が上記カバー本体から一定の突出量で開かれた状態で、上記蓋部を上記カバー本体に仮止めする仮保持手段と、
を備えた樹脂製の一体成形品である車両用エンジンアンダーカバーにおいて、
上記蓋部は、自然状態では上記カバー本体に対し外側に傾斜して上記開口部を開いた位置にあり、
上記仮保持手段は、上記カバー本体の開口部の他側縁と、上記蓋部の他側縁に形成された弾性爪とを含み、この弾性爪は上記蓋部と交差する方向に突出する弾性片と、この弾性片の先端部に形成された爪部とを有し、
この爪部が上記開口部の他側縁に引っ掛かることにより、上記蓋部の上記カバー本体に対する傾斜角度が上記弾性片の寸法に対応する角度に制限された状態で、上記蓋部が仮止めされ上記カバー本体に対し自然状態より小さく傾斜して上記薄肉ヒンジ部による開き方向への弾性力を受け、上記蓋部の他側縁が上記カバー本体との間に隙間が形成されるように上記カバー本体の外側に突出していることを特徴とする車両用エンジンアンダーカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンルームの下部を覆うエンジンアンダーカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に自動車等の車両において、エンジンルームの下側には、エンジンアンダーカバーが装着されている。エンジンアンダーカバーは、走行時にエンジンルーム内への泥、小石等の入り込みを防止したり、走行に伴う空気流を整流したり、エンジン音の車外への洩出を防止したりしている。エンジンアンダーカバーには、その車体組付け作業後のエンジンルーム内の点検や、通常のメンテナンス等の各種作業を可能にするために、開口部とこの開口部を開閉する蓋部とが設けられたものがある。
【0003】
下記特許文献1に開示されたエンジンアンダーカバーは、開口部が形成されたカバー本体と、一側縁が上記開口部の一側縁において薄肉ヒンジ部を介してカバー本体と一体に連なる蓋部と、を備えている。蓋部は、上記開口部を塞ぐ位置でロック手段によりカバー本体にロックされる。ロック手段は、開口部の他側縁とこれに重なる蓋部の先端縁(他側縁)とを締結するボルトとナットとにより構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭59-76483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のエンジンアンダーカバーは合成樹脂材で形成されており、射出成形等により製造される。製造に用いられる成形金型は、蓋部の先端縁と、開口部の他側縁とが互いに重ならないように、蓋部を開けた状態で構成されている。そのため、成形されたエンジンアンダーカバーは、自然状態で蓋部が開いた状態となっている。
【0006】
エンジンアンダーカバーが出荷先で車体に組み付けられる際には、ラック上に載置されて搬送される。ラックには、複数のスリットが形成され、エンジンアンダーカバーは、スリットごとに縦置き状態で並べられる。このとき蓋部は、隣接するエンジンアンダーカバーの開口部に向かって突出しているため、隣接する開口部に引っ掛かることがあった。そのため、エンジンアンダーカバーをラックから取り出す際に、エンジンアンダーカバーが破損することがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、
開口部が形成されたカバー本体と、
一側縁が上記開口部の一側縁において薄肉ヒンジ部を介して上記カバー本体と一体に連なる蓋部と、
上記蓋部が上記開口部を塞ぐ位置で、上記蓋部を上記カバー本体にロックするロック手段と、
を備えた車両用エンジンアンダーカバーにおいて、
上記蓋部の他側縁には弾性爪が形成され、この弾性爪は上記蓋部と交差する方向に突出する弾性片と、この弾性片の先端部に形成された爪部とを有し、この爪部が上記開口部の他側縁に引っ掛かることにより、上記蓋部の上記カバー本体に対する傾斜角度が、上記弾性片の寸法に対応する角度に制限された状態で、上記蓋部が仮止めされることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、エンジンアンダーカバーの成形後に、蓋部を弾性爪で仮止めすることにより、蓋部のカバー本体に対する突出量が小さく制限される。これにより、エンジンアンダーカバーの搬送の際に蓋部が他の部品等に引っ掛かることがない。エンジンアンダーカバーの車体組付け後に開口部からエンジンアンダーカバー内の点検作業をする際には、蓋部がエンジンアンダーカバーから突出しているので、蓋部を容易に開くことができる。作業後には、蓋部を閉じてロック手段により蓋部をカバー本体にロックする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、搬送時の破損を防止して、その後の点検作業等の作業性を向上させたエンジンアンダーカバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用エンジンアンダーカバーを車両上方から見た平面図であって、蓋部を開いた状態を示す。
図2】(A)図1の要部拡大平面図である。(B)図2(A)のIIB-IIB矢視断面図である。
図3】(A)図2(A)のIIB-IIB矢視線に相当する断面図であって、弾性爪がカバー本体に接触した状態を示す。(B)図2のIIB-IIB矢視線に相当する断面図であって、蓋部を仮止めした状態を示す。(C)図2のIIIC-IIIC矢視線に相当する断面図であって、蓋部をロックした状態を示す。
図4】(A)同エンジンアンダーカバーを成形するための成形金型を示す断面図であって、図2(A)のIIB-IIB線に沿う部位に対応し、型締めされ樹脂材料が充填された状態を示す。(B)同成形金型を示す断面図であって、図2のIIB-IIB線に沿う部位に対応し、成形後型開きした状態を示す。
図5図4(A)の円部Vを拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態をなす車両用エンジンアンダーカバーについて図面を参照しながら説明する。理解を容易にするため、図1及び図2(A)において、車両の前後及び車幅方向における左右を示し、図2(B)において、車両の前後を示す。
【0012】
車両のボディの下側には、エンジンルーム(図示せず)を覆う図1に示すエンジンアンダーカバー1が装着されている。エンジンアンダーカバー1は、硬質の合成樹脂製の板材からなるものであり、射出成形法、その他の成形法によって成形されている。エンジンアンダーカバー1のカバー本体10には、略四角形状の点検口11(開口部)が形成されている。点検口11は、車両の製造工程において、エンジンアンダーカバー1を車体に組み付けた後の最終工程で、エンジンルーム内のオイル漏れ、配線の欠線等の点検をするために用いられる。
【0013】
図2に示すように、点検口11の前側の側縁11aには、点検口11を閉じる蓋部20が設けられている。蓋部20は、平板状に形成され、その基端縁20a(前側の側縁)が薄肉状のヒンジ部30を介して点検口11の前側の側縁11aに連なり、カバー本体10と一体になっている。蓋部20の左右方向(図2(A)における上下方向)の幅は、点検口11の左右方向の幅より少し小さい。図2(B)に示すように、蓋部20は、自然状態では、ヒンジ部30から後方に向かうに従って下方に傾斜しており、ヒンジ部30を支点として、蓋部20の先端縁20b(後側の側縁)が上下に回動可能になっている。
【0014】
図2(A)点に示すように、点検口11の周囲には、カバー本体10から上方に突出する立壁部12が右側と左側(図2(A)における上側と下側)に2つ設けられており、点検口11の側縁を構成している。これら立壁部12,12は、点検口11の前側の側縁11aの左右の端部から、それぞれ点検口11の左右を経て後側の側縁11bの中央付近まで至り、点検口11を囲っている。各立壁部12は、上方に向かうに従って点検口11の内側に傾斜している。各立壁部12の頂部からは、点検口11の内側に向かって水平に突出する庇部13が設けられている。点検口11の後側の側縁11bにおける左右方向の中央部には、右側の立壁部12、庇部13の端部と、左側の立壁部12、庇部13の端部とを下方から架け渡すように懸架部14が設けられている。懸架部14は縦断面コ字状をなしており、懸架部14の底部14aは、点検口11の後側の側縁11bを構成するカバー本体10から前方に向かって水平に延びている。
【0015】
蓋部20を閉じ状態でロックするロック手段について説明する。
エンジンアンダーカバー1には、図3(C)に示す蓋部20が点検口11を塞ぐ位置で、蓋部20をカバー本体10にロックするロック手段が設けられている。ロック手段は、カバー本体10側と蓋部20側とにそれぞれ形成されている。
【0016】
カバー本体10側のロック手段として、図2(A)に示すように点検口11の後側の側縁11bにある立壁部12,12には、それぞれ係合孔15,15(第1係合部)が設けられており、各立壁部12を貫通している。各係合孔15は、左右方向(図2(A)における上下方向)に長い形状をなしている。
【0017】
蓋部20側のロック手段として、蓋部20の先端縁20bには、上記係合孔15,15に対応して左右方向(図2(A)における上下方向)に離間した位置に平面視矩形状の2つの係合爪21,21(第2係合部)が設けられている。図2(B)に示すように、各係合爪21の先端は後方に進むにしたがって下方に傾斜する傾斜面22として形成されている。図2(A)に示すように、蓋部20の上面には、各係合爪21の前方に補強リブ23が設けられ、蓋部20の基端縁20a近くまで延びている。
【0018】
蓋部20のロック動作について、図3(B)、図3(C)を参照して説明する。
図3(B)に示す開き状態の蓋部20を、ヒンジ部30を支点にして上方に回動させると、係合爪21の傾斜面22が、図3(C)に示す立壁部12の内側の下部を滑りながら移動し、蓋部20が点検口11を塞いだ状態となる。このとき、ロック手段を構成する係合爪21と係合孔15とが係合することにより、蓋部20はカバー本体10にロックされる。
【0019】
次に、蓋部20を開き状態で保持する仮保持手段について説明する。
エンジンアンダーカバー1には、図3(B)に示すように蓋部20がカバー本体10から一定の突出量で開かれた状態で、蓋部20をカバー本体10に仮止めする仮保持手段が設けられている。仮保持手段は、カバー本体10側と蓋部20側とにそれぞれ設けられている。
【0020】
蓋部20側の仮保持手段として、図2に示すように、蓋部20の先端縁20bには、上方に突出する弾性爪40が設けられている。弾性爪40は、蓋部20上における上記2つの係合爪21の左右方向(図2(A)における上下方向)の中間位置であって、上記懸架部14の底部14aに対応する位置に配置されている。弾性爪40は、蓋部20と交差する方向に延びる弾性片41と、この弾性片41の先端部に形成された爪部42とを有している。
【0021】
図2(B)に示すように、爪部42は、上記ヒンジ部30から遠ざかる方向に膨出している。爪部42はその頂部に、後方に進むに従って下方に緩やかに傾斜する第1面取り部42aと、第1面取り部42aに連なり第1面取り部42aより急な傾斜を有する第2面取り部42bと、第2面取り部42bの下方に形成され、後方に進むに従って上方に傾斜する掛止部42cとを有している。
【0022】
図2(A)に示すように、弾性爪40の左右方向(図2(A)における上下方向)の幅は、上記懸架部14の底部14aの幅と同程度かこれより狭い。後述するように、蓋部20を開き状態で仮保持する際、この底部14aに弾性爪40が引っ掛けられ、底部14aはカバー本体10側の仮保持手段として提供される。
弾性片41の基端部には、補強リブ43が設けられ、弾性片41の前面と蓋部20の上面とに一体をなして連なっている。
【0023】
蓋部20の仮保持について説明する。
図2に示す開き状態の蓋部20を、ヒンジ部30を支点にして上方に回動させると、図3(A)に示すように、上記懸架部14の底部14aの縁に、第1面取り部42aが当接する。蓋部20をさらに回動させると、第2面取り部42bが底部14aの縁に当接し滑りながら移動するにつれ、弾性爪40は前方に倒れ込むように弾性変形する。図3(B)に示すように、底部14aの縁が第2面取り部42bを乗り越え掛止部42cに至ると弾性爪40は弾性復帰して、掛止部41cが底部14aの縁に引っ掛かり、蓋部20が少し開いた状態で底部14aに仮止めされる。この、蓋部20がカバー本体10に仮保持された状態において、蓋部20のカバー本体10に対する傾斜角度は、弾性片41の寸法に対応する角度に制限される。本実施形態では、カバー本体10に対して蓋部20は、その先端に人の指が掛かる程度の隙間を空けて、傾斜している。仮保持状態の蓋部20には、開き方向にヒンジ部30による弾性力が働いている。
【0024】
上記構成のエンジンアンダーカバー1の製造装置について説明する。
カバー本体10と蓋部20を一体に有するエンジンアンダーカバー1を射出成形により製造するときには、図4に示す上型51及び下型52からなる成形金型50が用いられる。樹脂材料が充填される成形金型50の成形空間50aは、スライド型を用いることなく上型51と下型52の上下移動のみでエンジンアンダーカバー1を一体に製造できるように、蓋部20の先端縁20bと、点検口11の後側の側縁11b側のカバー本体10との対向位置が互いに重ならないように構成されている。具体的には、成形金型50において、成形空間50aは蓋部20を下方に約45度の傾斜で開いた状態で成形されるよう構成され、蓋部20の先端縁20bと点検口11の後側の側縁11bとの間には離間距離Lが設定されている。
【0025】
また、図4(B)に示すように、成形金型50を型開きするときに成形されたエンジンアンダーカバー1が下型52から抜け出せるようにするために、図5に示すように下型52における第2面取り部42bの傾斜角度θと、成形金型50の型移動時の上型51と下型52の摺動面50bのなす角θは、等しく設定されている。すなわち、第2面取り部42bと摺動面50bは平行になっている。これにより、上型51と下型52の上下移動による型開きの際、第2面取り部42bは、その対応する下型52の形状を滑りながら移動して下型52から抜け出ることができる。
以上より、上記構成のエンジンアンダーカバー1をスライド型を用いない簡素化された成形金型50により簡便かつ安価に製造することが可能となる。
【0026】
このようにして製造されたエンジンアンダーカバー1は、車両の製造工程において車体に組み付けられるために、複数のスリットが形成されたラック(図示せず)により搬送される。エンジンアンダーカバー1は、その前端部を下側にしてスリットごとに縦置き状態でラック上に並べられる。このとき、蓋部20をカバー本体10に仮保持させておくことで、蓋部20のカバー本体10に対する突出量を小さく制限することができる。これにより、隣接するエンジンアンダーカバーへの蓋部20の引っ掛かりを防止することができる。ひいては、エンジンアンダーカバー1が、ラックからの取り出しの際に破損することを防止できる。
【0027】
車両の製造工程における、エンジンアンダーカバー1を車体に組み付けた後の最終工程では、蓋部20を開いて点検口11から、エンジンルーム内のオイル漏れ、配線の欠線等を点検する。このとき、カバー本体10に仮保持された蓋部20は、カバー本体10からわずかに突出しているので、蓋部20の先端に指をかけて容易に開くことができる。点検後には、蓋部20を閉じることにより、蓋部20はロック手段によりカバー本体10にロックされる。したがって、本実施形態のエンジンアンダーカバー1によれば、点検作業の作業性を向上させることができる。
【0028】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例を採用することができる。
本発明は、エンジンの配置が、車両前方、車両後方、車両前方車軸後方、車両後方車軸前方等、いかなる配置の車両であっても適用可能である。
上記実施形態では、開口部として車両製造時の点検用の点検口を例にとって説明したが、メンテナンス作業用の開口、車両牽引部材の挿通用の開口等、その他の開口にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、車両のエンジンルームの下部を覆うエンジンアンダーカバーに適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 エンジンアンダーカバー
10 カバー本体
11 点検口(開口部)
11a 点検口の前側の側縁
11b 点検口の後側の側縁
12 立壁部
13 庇部
14 懸架部
14a 底部(仮保持手段)
15 係合孔(第1係合部;ロック手段)
20 蓋部
20a 蓋部の基端縁(前側の側縁)
20b 蓋部の先端縁(後側の側縁)
21 係合爪(第2係合部;ロック手段)
22 傾斜面
23 補強リブ
30 ヒンジ部
40 弾性爪(仮保持手段)
41 弾性片
42 爪部
42a 第1面取り部
42b 第2面取り部
42c 掛止部
50 成形金型
50a 成形空間
50b 摺動面
51 上型
52 下型
図1
図2
図3
図4
図5