(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】物体認識方法及び物体認識装置
(51)【国際特許分類】
G01S 17/931 20200101AFI20220929BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20220929BHJP
G01S 17/66 20060101ALI20220929BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G01S17/931
G01S13/931
G01S17/66
G08G1/16 D
(21)【出願番号】P 2018222178
(22)【出願日】2018-11-28
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】植田 宏寿
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-196943(JP,A)
【文献】特開2009-086788(JP,A)
【文献】特開2011-150633(JP,A)
【文献】特開2009-014479(JP,A)
【文献】特開2006-258545(JP,A)
【文献】特開2002-296350(JP,A)
【文献】特開2002-122669(JP,A)
【文献】特開2005-009881(JP,A)
【文献】特開2007-257338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-7/51
G01S 13/00-13/95
G01S 17/00-17/95
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に搭載されたセンサを用いて、前記自車両の周囲の物体の表面上にある複数の検出点を検出し、前記センサにより検出された前記複数の検出点をクラスタリングし、クラスタリングされたクラスタを前記物体として認識する物体認識方法であって、
前記センサが検出可能な範囲と、前記センサが検出不可能な範囲との境界を示す死角境界の位置を算出し、
地図データベースを取得し、
前記自車両の位置を取得し、
前記地図データベースと前記自車両の位置とに基づいて、前記自車両が合流点に接近中か否かを判断し、
前記自車両が前記合流点に接近中である場合、前記自車両が走行する第1車線に合流する第2車線上に前記死角境界を設定し、
前記自車両が前記合流点に接近中であり、かつ、前記第1車線と前記第2車線との間に前記物体を認識した場合、前記物体を障害物と判断し、
クラスタリングされた前記障害物の端部の検出点と、前記センサとを結んだ直線の延長線上に、前記死角境界を設定し、
前記クラスタが、前記死角境界に接するか否かを判断し、
前記死角境界に接するクラスタに含まれる複数の検出点の中から、前記死角境界から最も離れた検出点を抽出し、
抽出した検出点を追跡する
ことを特徴とする物体認識方法。
【請求項2】
前記第2車線上において、前記死角境界から最も離れた検出点を抽出し、抽出した検出
点を追跡する
ことを特徴とする請求項
1に記載の物体認識方法。
【請求項3】
前記死角境界から最も離れた検出点の速度ベクトルを前記第2車線の進行方向の速度成分及び前記進行方向に直角な方向の速度成分に分解する
ことを特徴とする請求項
2に記載の物体認識方法。
【請求項4】
自車両に搭載されたセンサを用いて、前記自車両の周囲の物体の表面上にある複数の検出点を検出し、前記センサにより検出された前記複数の検出点をクラスタリングし、クラスタリングされたクラスタを前記物体として認識するコントローラを備える物体認識装置であって、
前記コントローラは、
前記センサが検出可能な範囲と、前記センサが検出不可能な範囲との境界を示す死角境界の位置を算出し、
地図データベースを取得し、
前記自車両の位置を取得し、
前記地図データベースと前記自車両の位置とに基づいて、前記自車両が合流点に接近中か否かを判断し、
前記自車両が前記合流点に接近中である場合、前記自車両が走行する第1車線に合流する第2車線上に前記死角境界を設定し、
前記自車両が前記合流点に接近中であり、かつ、前記第1車線と前記第2車線との間に前記物体を認識した場合、前記物体を障害物と判断し、
クラスタリングされた前記障害物の端部の検出点と、前記センサとを結んだ直線の延長線上に、前記死角境界を設定し、
前記クラスタが、前記死角境界に接するか否かを判断し、
前記死角境界に接するクラスタに含まれる複数の検出点の中から、前記死角境界から最も離れた検出点を抽出し、
抽出した検出点を追跡する
ことを特徴とする物体認識装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体認識方法及び物体認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザレーダを用いた物体のトラッキング方法が知られている(特許文献1)。特許文献1に記載された発明は、レーザレーダによって検出された検出点を用いてクラスタを作成し、クラスタに含まれる検出点の移動量に基づいてクラスタの形状の一致度を算出し、算出された形状の一致度が所定閾値以上の場合にクラスタを1つの物体として特定する。これにより、特許文献1に記載された発明は、物体を特定でき、さらに物体の速度も算出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
センサの死角から出てくる物体は、徐々に見えてくるため、自車両から見た物体の見え方が大きく変化する。しかしながら、特許文献1に記載された発明は、センサの死角から出てくる物体について言及しておらず、センサの死角から出てくる物体の速度を精度よく算出することができないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、その目的は、物体の速度を精度よく算出することができる物体認識方法及び物体認識装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る物体認識方法は、センサが検出可能な範囲と、センサが検出不可
能な範囲との境界を示す死角境界の位置を算出する。物体認識方法は、センサにより地図データベースを取得し、自車両の位置を取得する。物体認識方法は、地図データベースと自車両の位置とに基づいて、自車両が合流点に接近中か否かを判断する。物体認識方法は、自車両が合流点に接近中である場合、自車両が走行する第1車線に合流する第2車線上に死角境界を設定する。物体認識方法は、自車両が合流点に接近中であり、かつ、第1車線と第2車線との間に物体を認識した場合、物体を障害物と判断し、クラスタリングされた障害物の端部の検出点と、センサとを結んだ直線の延長線上に、死角境界を設定する。物体認識方法は、センサにより検出された複数の検出点をクラスタリングし、クラスタリングされたクラスタが、死角境界に接するか否かを判断する。物体認識方法は、死角境界に接するクラスタに含まれる複数の検出点の中から、死角境界から最も離れた検出点を抽出し、抽出した検出点を追跡する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、物体の速度を精度よく算出することができる
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る物体認識装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る物体認識装置の一動作例を説明するフローチャートである。
【
図3】
図3は、死角境界の一例を説明する図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態に係る物体認識装置の概略構成図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係る物体認識装置の一動作例を説明するフローチャートである。
【
図6】
図6は、死角境界の設定方法の一例を説明する図である。
【
図7】
図7は、追跡方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
(物体認識装置1の構成例)
図1を参照して、物体認識装置1の構成例を説明する。
図1に示すように、物体認識装置1は、センサ10と、コントローラ20と、ディスプレイ30と、を備える。
【0011】
物体認識装置1は、自動運転機能を有する車両に搭載されてもよく、自動運転機能を有しない車両に搭載されてもよい。また、物体認識装置1は、自動運転と手動運転とを切り替えることが可能な車両に搭載されてもよい。なお、本実施形態における自動運転とは、例えば、ブレーキ、アクセル、ステアリングなどのアクチュエータの内、少なくとも何れかのアクチュエータが乗員の操作なしに制御されている状態を指す。そのため、その他のアクチュエータが乗員の操作により作動していたとしても構わない。また、自動運転とは、加減速制御、横位置制御などのいずれかの制御が実行されている状態であればよい。また、本実施形態における手動運転とは、例えば、ブレーキ、アクセル、ステアリングを乗員が操作している状態を指す。
【0012】
センサ10は、自車両に搭載され、自車両の周囲の物体を検出する装置である。センサ10は、ライダ、レーダ、ミリ波レーダ、レーザレンジファインダ、ソナーなどを含む。センサ10は、自車両の周囲の物体として、他車両、バイク、自転車、歩行者を含む移動物体、及び、障害物、落下物、駐車車両を含む静止物体を検出する。また、センサ10は、移動物体及び静止物体の自車両に対する位置、姿勢(ヨー角)、大きさ、速度、加速度、減速度、ヨーレートを検出する。また、センサ10は、車輪速センサ、操舵角センサ、及びジャイロセンサなどを含んでもよい。センサ10は、検出した情報をコントローラ20に出力する。
【0013】
本実施形態では、センサ10は、ライダまたはレーダとして説明する。ライダまたはレーダは、電波を物体に向けて走査し、その反射波を測定することにより、物体までの距離や方向を測定する。また、ライダまたはレーダは、物体のポイントクラウドを検出点として取得する。ポイントクラウドとは、コントローラ20が処理する点の集合である。通常、ポイントクラウドは、3次元座標(x、y、z)で表現される。なお、物体のポイントクラウドを取得する方法は、ライダまたはレーダに限定されない。例えば、カメラ画像からそれぞれ周囲の画素と区別可能な特徴を持つ画素をポイントクラウドとして取得する方法が挙げられる。この方法には、例えば非特許文献「Jianbo Shi and Carlo Tomasi, "Good Features to Track," 1994 IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR'94), 1994, pp.593 - 600.」に記載の方法が用いられる。
【0014】
コントローラ20は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータには、物体認識装置1として機能させるためのコンピュータプログラムがインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、マイクロコンピュータは、物体認識装置1が備える複数の情報処理回路として機能する。なお、ここでは、ソフトウェアによって物体認識装置1が備える複数の情報処理回路を実現する例を示すが、もちろん、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路を個別のハードウェアにより構成してもよい。コントローラ20は、複数の情報処理回路として、死角境界算出部21と、物体認識部22と、運転支援部23と、を備える。
【0015】
死角境界算出部21は、センサ10の死角境界の位置を算出し、算出結果に基づいて死角境界を設定する。物体認識部22は、センサ10によって検出された検出点をクラスタリングしたり、追跡したりする。運転支援部23は、物体認識部22の処理結果に基づいて運転支援を行う。
【0016】
次に、
図2及び
図3を参照して、物体認識装置1の一動作例を説明する。
【0017】
図2に示すステップS101において、死角境界算出部21は、センサ10の死角境界の位置を算出し、算出結果に基づいて死角境界を設定する。本実施形態において、死角境界とは、センサ10が検出可能な範囲と、センサ10が検出不可能な範囲との境界を示す。通常、センサ10には、性能を示す指標として、検出可能な範囲(検出距離)が設定されている。死角境界算出部21は、センサ10の性能(検出距離)に基づいて、センサ10の死角境界の位置を算出する。一例として、死角境界は、
図3の51によって示される。死角境界51に囲まれる領域50(
図3の斜線部)は、センサ10が検出可能な範囲を示す。なお、
図3において、死角境界51の形状は、半円形状であるが、これに限定されない。死角境界51の形状は、円形状、扇形状、方形状、多角形状を含む。なお、死角境界51の算出方法(設定方法)は、これに限定されない。他の方法は、第2実施形態で説明する。
【0018】
処理はステップ103に進み、センサ10は、自車両40の周囲の物体(
図3に示す他車両60、61)を検出する。
図3に示すように、センサ10は、他車両60、61の表面上にある複数の検出点(検出点70~77)を検出する。
【0019】
処理はステップ105に進み、物体認識部22は、ステップ103で検出された検出点70~77をクラスタリングする。クラスタリングとは、複数の検出点をクラスタ(物体)として抽出する手法である。物体認識部22は、一例として、複数の検出点の中から、2点間の距離が所定値以下の検出点をクラスタリングする。具体的には、
図3に示す検出点70~75がクラスタリングされ、一つのクラスタ60(他車両60)として抽出される。同様に、
図3に示す検出点76~77がクラスタリングされ、一つのクラスタ61(他車両61)として抽出される。
【0020】
処理はステップ107に進み、物体認識部22は、ステップS105で抽出されたクラスタ60、61が、死角境界51に接するか否かを判断する。
図3に示す例において、クラスタ61は、死角境界51に接している。一方、クラスタ60は、死角境界51に接していない。この場合、物体認識部22は、クラスタ61は死角境界51に接する、と判断する。また、物体認識部22は、クラスタ60は死角境界51に接していない、と判断する。
【0021】
死角境界51に接するクラスタ61は、センサ10の死角から出てくる物体、または、センサ10の死角に消えていく物体である。本実施形態では、死角境界51に接するクラスタ61は、センサ10の死角から出てくる物体として説明する。センサ10の死角から出てくる物体(クラスタ61)は、徐々に見えてくるため、センサ10から見た物体の見え方が大きく変化する。
【0022】
そこで、物体認識部22は、死角境界51に接するクラスタ61に含まれる複数の検出点(検出点76~77)の中から、死角境界51から最も離れた検出点(検出点77)を抽出する(ステップS109)。処理は、ステップS111に進み、物体認識部22は、ステップS109で抽出された検出点77を追跡する。このように、物体認識部22が死角境界51から最も離れた検出点(検出点77)を追跡することによって、センサ10から見た物体(他車両61)の見え方が大きく変化するシーンにおいても、物体認識部22は、物体(他車両61)の速度を精度よく算出することができる。
【0023】
なお、死角境界51に接していないクラスタ60に含まれる複数の検出点(検出点70~75)については、周知の方法によって追跡される(ステップS107でNo)。
【0024】
処理はステップ113に進み、運転支援部23は、ステップS111で追跡された他車両60、61の情報をディスプレイ30に表示して運転支援を行う。
【0025】
処理はステップ115に進み、自車両40の乗員が、イグニッションをオフした場合(ステップS115でYes)、一連の処理は終了する。ユーザが、イグニッションをオフしていない場合(ステップS115でNo)、処理はステップS103に戻る。なお、本実施形態におけるイグニッションのオフは、自車両40の停止、自車両40の電源システムの停止を含む。イグニッションのオフは、自車両40の車室内に設けられたイグニッションスイッチをオフすることによって実現されてもよく、自車両40の車室内に設けられた電源システムスイッチをオフすることによって実現されてもよい。
【0026】
(作用効果)
以上説明したように、第1実施形態に係る物体認識装置1によれば、以下の作用効果が得られる。
【0027】
物体認識装置1は、センサ10が検出可能な範囲と、センサ10が検出不可能な範囲との境界を示す死角境界51の位置を算出し、算出結果に基づいて死角境界を設定する。物体認識装置1は、センサ10により検出された複数の検出点(
図3に示す検出点70~75、76~77)をクラスタリングする。物体認識装置1は、クラスタリングされたクラスタ(
図3に示すクラスタ60、61)が死角境界51に接するか否かを判断する。物体認識装置1は、死角境界51に接するクラスタ61に含まれる複数の検出点(
図3に示す検出点76~77)の中から、死角境界51から最も離れた検出点77を抽出する。そして、物体認識装置1は、抽出された検出点77を追跡する。これにより、センサ10から見た物体(
図3に示す他車両61)の見え方が大きく変化するシーンにおいても、物体認識装置1は、他車両61の速度を精度よく算出することができる。
【0028】
また、死角境界51が設定されるため、物体認識装置1は、センサ10が検出可能な範囲に進入してきた物体を早期に認識することができる。
【0029】
また、物体認識装置1は、検出点76~77をクラスタリングした後に追跡する。これにより、自車両40の走行に関係しないノイズは除去される。
【0030】
(第2の実施形態)
(物体認識装置2の構成例)
次に、
図4~
図7を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態と重複する構成については符号を引用してその説明は省略する。以下、相違点を中心に説明する。
【0031】
図4に示すように、第2実施形態に係る物体認識装置2は、地図データベース11と、GPS受信機12をさらに備える。
【0032】
地図データベース11は、カーナビゲーション装置などに記憶されているデータベースであって、道路情報、施設情報など経路案内に必要となる各種データが記憶されている。また、地図データベース11には、道路の構造、道路の車線数、車線の位置、道路境界線、物標などの情報が記憶されている。地図データベース11は、コントローラ20の要求に応じて地図情報をコントローラ20に出力する。なお、道路情報、物標情報などの各種データは必ずしも地図データベース11から取得されるものに限定されず、センサ10により取得されてもよく、また車車間通信、路車間通信を用いて取得されてもよい。また、道路情報、物標情報などの各種データが外部に設置されたサーバに記憶されている場合、コントローラ20は、通信により随時これらのデータをサーバから取得してもよい。また、コントローラ20は、外部に設置されたサーバから定期的に最新の地図情報を入手して、保有する地図情報を更新してもよい。
【0033】
GPS受信機12は、人工衛星からの電波を受信することにより、地上における自車両40の位置(以下、自己位置と称する場合がある)及び自車両40の姿勢を検出する。GPS受信機12は、検出した自車両40の位置情報及び姿勢情報をコントローラ20に出力する。
【0034】
次に、
図5~
図7を参照して、物体認識装置2の一動作例を説明する。
【0035】
ステップ201において、センサ10は、自車両40の周囲の物体を検出する。
【0036】
処理はステップ203に進み、GPS受信機12は、自己位置及び自車両40の姿勢を検出する。
【0037】
処理はステップ205に進み、物体認識部22は、地図データベース11から自己位置の周辺の地図情報を取得する。
【0038】
処理はステップ207に進み、物体認識部22は、ステップS203で検出された自己位置及び自車両40の姿勢と、ステップS205で取得された地図情報とに基づいて、自車両40が走行している車線を取得する。なお、以下では、自車両40が走行している車線を単に自車線という。
図6に示す90は、自車線である。また、物体認識部22は、ステップS203で検出された自己位置及び自車両40の姿勢と、ステップS205で取得された地図情報とに基づいて、自車両40が合流点または交差点に接近中か否かを判断する。
図6に示すように、自車両40が合流点に接近中である場合(ステップS207でYes)、処理はステップS209に進む。一方、自車両40が合流点または交差点に接近中でない場合(ステップS207でNo)、処理はステップS221に進む。
【0039】
ステップS209において、物体認識部22は、地図データベース11から自車線90に合流する車線91の情報(位置情報、構造情報)を取得する(
図6参照)。なお、図示は省略するが、自車両40が交差点に接近中の場合、物体認識部22は、地図データベース11から自車線に交差する車線の情報を取得する。
【0040】
処理はステップS211に進み、死角境界算出部21は、センサ10の死角が存在するか否かを判断する。具体的には、死角境界算出部21は、自車線90と車線91との間に複数の検出点が検出されたか否かを判断する。
図6に示すように、自車線90と車線91との間に複数の検出点80~87が検出された場合、検出点80~87はクラスタリングされ、物体として認識される。さらにこの物体は障害物92(例えば、壁)として判断される。物体が障害物であるか否かは、一例として、地図情報に基づいて判断される。
図6に示すように、センサ10の死角が存在する場合(ステップS211でYes)、処理はステップS213に進む。一方、センサ10の死角が存在しない場合(ステップS211でNo)、処理はステップS221に進む。
【0041】
ステップS213において、死角境界算出部21は、自車両40(センサ10)とクラスタリングされた障害物92の端部の検出点80とを結んだ直線の延長線93上に死角境界を設定する(
図6参照)。なお、
図6において、他車両62は死角に隠れているため検出されないが、例えば、
図7では、他車両62の検出点88、89が検出される。
【0042】
処理はステップ215に進み、物体認識部22は、
図7に示す検出点88、89をクラスタリングする。処理はステップ217に進み、物体認識部22は、クラスタリングされたクラスタ(他車両62)が死角境界に接するか否かを判断する。
図7に示すように、クラスタ(他車両62)が死角境界に接する場合(ステップS217でYes)、処理はステップS219に進む。
【0043】
ステップS219において、物体認識部22は、死角境界から最も離れた検出点(
図7に示す検出点89)を抽出する。検出点89は、車線91上において、死角境界から最も離れた検出点である。処理はステップS221に進み、物体認識部22は、ステップS219で抽出された検出点89を追跡する。
【0044】
処理はステップ223に進み、物体認識部22は、追跡結果に基づいて、検出点89の速度ベクトルを算出する。一例として物体認識部22は、検出点89の位置の時間変化から、検出点89の速度ベクトルを算出する。そして、物体認識部22は、速度ベクトルを車線91の進行方向の速度成分及び進行方向に直角な方向の速度成分に分解する。
【0045】
処理はステップ225に進み、運転支援部23は、ステップ223で算出された車線91の進行方向の速度成分を用いて、他車両62が合流点に到達するまでに要する時間を算出する。そして、運転支援部23は、算出した時間をディスプレイ30に表示して運転支援を行う。
【0046】
(作用効果)
以上説明したように、第2実施形態に係る物体認識装置2によれば、以下の作用効果が得られる。
【0047】
物体認識装置2は、GPS受信機12によって検出された自己位置及び自車両40の姿勢と、地図データベース11から取得した地図情報とに基づいて、自車両40が合流点または交差点に接近中か否かを判断する。自車両40が合流点または交差点に接近中である場合、物体認識装置2は、自車線90(第1車線)に合流するまたは交差する車線91上に死角境界を設定する。これにより、物体認識装置2は、見通しの悪い合流点または交差点においても物体を早期に認識することができ、物体の速度を精度よく算出することができる。
【0048】
物体認識装置2は、自車両40が合流点または交差点に接近中であり、かつ、自車線90と、車線91(第2車線)との間に物体を認識した場合、この物体を障害物92と判断する(
図6参照)。そして、
図6に示すように、物体認識装置2は、クラスタリングされた障害物92の端部の検出点80と、自車両40(センサ10)とを結んだ直線の延長線93上に死角境界を直接設定する。このように第2実施形態に係る物体認識装置2によれば、自車両40が見通しの悪い合流点(または交差点)に接近中の場合のみ、死角境界が直接設定される。
【0049】
また、物体認識装置2は、
図7に示すように、車線91上において、死角境界から最も離れた検出点89を抽出し、抽出した検出点89を追跡する。このように、物体認識装置2は、自車線90に合流する車線91上の検出点89を追跡することにより、自車両40の走行に関係する物体(他車両62)を認識することができる。
【0050】
また、物体認識装置2は、検出点89の速度ベクトルを車線91の進行方向の速度成分及び進行方向に直角な方向の速度成分に分解する。これにより、物体認識装置2は、自車両40の走行に関係する速度情報(車線91の進行方向の速度成分)を精度よく算出することができる。
【0051】
上述の実施形態に記載される各機能は、1または複数の処理回路により実装され得る。処理回路は、電気回路を含む処理装置等のプログラムされた処理装置を含む。処理回路は、また、記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や回路部品等の装置を含む。また、物体認識装置1及び物体認識装置2は、コンピュータの機能を改善しうる。
【0052】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0053】
1、2 物体認識装置
10 センサ
11 地図データベース
12 GPS受信機
20 コントローラ
21 死角境界算出部
22 物体認識部
23 運転支援部
30 ディスプレイ