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特許7149176CVDを用いたTaCコーティング層の製造方法及びそれを用いて製造したTaCの物性
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  • 特許-CVDを用いたTaCコーティング層の製造方法及びそれを用いて製造したTaCの物性 図1
  • 特許-CVDを用いたTaCコーティング層の製造方法及びそれを用いて製造したTaCの物性 図2
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  • 特許-CVDを用いたTaCコーティング層の製造方法及びそれを用いて製造したTaCの物性 図4C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】CVDを用いたTaCコーティング層の製造方法及びそれを用いて製造したTaCの物性
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/32 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
C23C16/32
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018236460
(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公開番号】P2019108611
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2018-12-18
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-23
(31)【優先権主張番号】10-2017-0174936
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518450083
【氏名又は名称】トーカイ カーボン コリア カンパニー.,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ドン ワン ジョウ
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】河本 充雄
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0133191(KR,A)
【文献】特開2004-134741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C16/32
H01L21/205
C30B 1/00
C04B35/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均気孔率が70-90体積%である母材及びTaCコーティング層を含み、
前記TaCコーティング層は、Ta及びCを除いた他の成分を1200ppm以下に含み、平均結晶粒の大きさが10μm~50umである結晶粒を含み、元素周期表の4族、5族、及び6族に該当する遷移金属とCl不純物元素の濃度の和は1ppm~1000ppmであり、元素周期表の4族、5族、及び6族に該当しない不純物元素の濃度の和は1ppm~7ppmであり、表面硬度が15GPa以上である、TaC材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不純物の含量が特に低いTaC素材を含む材料の製造方法及びそれから形成されたTaC材料に関する。
【背景技術】
【0002】
母材表面に様々な種類の素材からなる薄膜を導入し、材料の耐摩耗性、耐食性などを向上させる研究が様々に行われている。そのうち、炭化タンタル(TaC)コーティングは、耐熱性、耐摩耗性、及び耐ガスエッチング性などにおいて従来の薄膜材料に比べて優れる特徴を有するため、特に注目を浴びている。近年、TaCコーティング層を炭素材料に形成した炭化タンタル被覆炭素材料が半導体向けの単結晶製造装置の部材、精密工作機、エンジン用部品などの様々な産業現場で使用されている。
【0003】
このとき形成されるTaCコーティング層は、母材との付着力において頻繁に問題になっている。したがって、最近、炭素母材上に付着力を増加させながら表面の硬度を高く保持するためのTaC薄膜コーティング方法に対して多方面の研究が続いてきた。
【0004】
また、このように製造されたTaCコーティング層からTaC材料を確保して別途の独立した素材として活用する方案が研究されている。
【0005】
一方、最近では、TaC素材を含んでいるコーティング層の硬度又は表面耐摩耗性の物性を制御し、さらに、耐食性、耐摩耗性を向上し得る技術に関心が集まっている。ここで、TaC素材の内部に含まれた不純物の含量は、TaC素材固有の高い耐食性、高い耐摩耗性などの特性を具現することにおいて障害になっている。したがって、TaC素材を製造した後、内部の不純物を除去する工程の研究が行われてきたが、これは追加工程を必要とするため、製品の生産性を低下させる原因となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0174936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述したように、炭素母材と付着力が優れながらも、高い硬度を有する優れた物性のTaC材料を製造しながら、特別な追加工程なくてもTaC素材の固有の物性が円満に具現されるように、低い不純物の含量を有するTaC材料を製造する方法を提供することにある。
【0008】
しかし、本発明が解決しようとする課題は、以上で言及した課題に制限されることなく、言及されない更なる課題は、下記の記載によって当技術分野の通常の知識を有する者にとって明確に理解されるものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係る不純物の含量が少ないTaC材料の製造方法は、母材を備えるステップと、前記母材の表面に1600℃~2500℃の温度でTaCコーティング層を形成するステップとを含む。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、前記TaCコーティング層を形成するステップは、前記母材上にCVD方式によりTa前駆体及びC前駆体を、それぞれ又は混合し、噴射して行われるものであり得る。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、前記Ta前駆体及びC前駆体は気相又は固相であり得る。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、前記母材を備えるステップは、熱膨張係数が4.0×10-6/°Cないし7.0×10-6/°Cである母材を備え得る。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、前記母材を備えるステップは、多孔性構造の母材を備えることによって、前記TaCコーティング層を形成するステップは、前記母材表面の気孔内にTaCが浸透され、前記母材の表面内側にTaC浸透領域を形成し得る。
【0014】
本発明の他の側面に係る不純物の含量が少ないTaC材料は、母材及びTaCコーティング層を含み、前記TaCコーティング層はTa及びCを除いた他の成分を1200ppm以下に含む。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、前記TaC材料は、本発明の一実施形態に係る製造方法で製造されたものであり得る。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、1600℃以上で融点を有する元素周期表上4族、5族、及び6族に該当する遷移金属不純物元素の濃度の和は1ppm~1000ppmであり得る。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、元素周期表の4族、5族、及び6族に該当しない不純物元素の濃度の和は1ppm~7ppmであり得る。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、前記TaC材料の表面硬度は、15GPa以上であり得る。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一実施形態によれば、優れた付着力を有する高い硬度の不純物が少量含まれたTaC材料を提供することができる。本発明で提供するTaC材料は、不純物の含量が少ないため別途の不純物の精製工程を必要とせず、本来のTaC素材そのものの固有な物性がそのまま具現されるため、より高い耐食性、耐摩耗性が具現される材料を確保できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る不純物の含量が少ないTaC材料の製造方法の各ステップを示すフローチャートである。
図2】本発明の一実施形態で利用可能な多孔性構造が形成された母材の断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る多孔性構造が形成された母材110にTaCが含浸され、前記母材の表面上にTaCコーティング層120が形成され、前記母材の表面内側にTaC含浸領域130が形成された構造を示す断面図である。
図4A】本発明の比較例1で製造されたTaC材料のXRD分析試験の結果を示すグラフである。
図4B】本発明の実施形態5で製造されたTaC材料のXRD分析試験の結果を示すグラフである。
図4C】本発明の実施形態6で製造されたTaC材料のXRD分析試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら本発明のTaC材料の製造方法及びTaC材料の実施形態について詳細に説明する。以下で説明する実施形態及び図面には様々な変更が加えられてもよい。また、図面符号に関係なく、同じ構成要素は同じ参照符号を付与し、これに対する重複説明は省略することにする。以下で説明する実施形態は、実施形態に対して限定しようとするものではなく、これに対する全ての変更、均等物ないし代替物を含むものとして理解されなければならない。本発明の説明において、関連の公知機能又は構成に対する具体的な説明が本発明の要旨を不要に曖昧にすると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0022】
また、本明細書で用いられる用語は、本発明の好適な実施形態を適切に表現するために使用された用語として、これは、ユーザ、運用者の意図、又は本発明が属する分野の慣例などによって変わり得る。したがって、本用語に対する定義は、本明細書の全般にわたった内容に基づいて下されなければならないのであろう。各図面に提示された同じ参照符号は同じ部材を示す。
【0023】
明細書の全体において、いずれかの部材がいずれかの部材の「上に」位置しているとするとき、これはいずれかの部材がいずれかの部材に接している場合のみならず、2つの部材間に更なる部材が存在する場合も含む。
【0024】
明細書の全体において、いずれかの部分がいずれかの構成要素を「含む」とするとき、特に反対な記載がなければ、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでいることを意味する。
【0025】
一般に、TaC材料を形成する工程で予め設計されることは、形成されるTaC素材の純度をどれ程高めるか、CVD方式によってTaC材料を形成する過程で母材を何に選定するか、母材上にコーティングして使用するか、母材と分離して使用するか、などがある。
【0026】
本発明は、前記の様々な問題において、TaC素材の純度を高めて耐食性及び耐摩耗性が向上されたTaC材料を製造する方法を提供しながら、母材上にコーティングして使用することができ、母材と分離して使用することもできるTaC材料を提供するためのものである。
【0027】
本発明において、TaCについて主に説明しているが、その他、NbC、ZrC、HfCも単に注入ガスだけを変更して類似な工程を用いることで、不純物が低くなるように製造することができる。
【0028】
本発明の一側面において、不純物の含量が少ないTaC材料の製造方法を提供する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係る不純物の含量が少ないTaC材料の製造方法の各ステップを示すフローチャートである。以下では図1を参照して、不純物の含量が少ないTaC材料の製造方法の各ステップを詳細に説明する。
【0030】
本発明の一側面に係る不純物の含量が少ないTaC材料の製造方法は、母材を備えるステップS10と、前記母材の表面に1600℃~2500℃の温度でTaCコーティング層を形成するステップS20とを含む。本発明において、TaCコーティング層は、タンタル(Ta)及び炭素(C)を主成分として含有するいかなる材料が含まれてもよい。
【0031】
本発明は、TaC材料を製造する過程で、母材上にTaCコーティング層を形成することによってTaC材料を形成し、ここで、TaCコーティング層を形成するステップを1600℃以上の高温で行うことで、TaCコーティング層内の不純物の含量を最小化する。
【0032】
1600℃以上の高温でTaCコーティング層を形成すれば、融点の低い不純物が全て除去される効果がある。これにより、高品質のTaC材料が確保される効果がある。このような方式によって確保された純度の高いTaC材料は、半導体及びエピタクシャル工程で効率よく活用される。不純物の高い含量でTaCコーティング層内に残留する場合に欠陥を発生させてドーピング濃度に影響を与え、最終的にTaC素材で具現しようとする物性にも影響を及ぼしかねない。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、前記TaCコーティング層を形成するステップは、前記母材上にCVD方式によりTa前駆体及びC前駆体を、それぞれ又は混合し、噴射して行われる。
【0034】
Ta前駆体及びC前駆体の他に水素ガス、不活性ガスなどのCVD工程過程で必要とされる追加的なガスを噴射することにより、前記TaCコーティング層を形成するステップが行われる。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、前記Ta前駆体及びC前駆体は、気相又は固相であるものである。
【0036】
一例として、TaCコーティング層を形成するステップにおいて、CVD方式によってTaCコーティング層が形成された後、1600℃以上の温度で追加的な熱処理するステップが行われる。ここで、前記熱処理するステップが行われることで形成されたTaCコーティング層が安定化し、不純物が追加的に除去されながら、より高純度のTaC材料を確保することができる。
【0037】
前記熱処理するステップの温度は、2200℃以下であってもよい。前記熱処理するステップの温度は、好ましくは、2000℃以下であってもよい。
【0038】
一例として、前記母材は、平均気孔率が5体積%ないし20体積%又は70体積%~90体積%であってもよく、必要な用途に応じて、2つのうち選択して使用してもよい。前記平均気孔率が極めて低い場合、TaCコーティング層が母材上に効率よく形成されないか、TaCコーティング層の形成中にコーティング層が母材から分離される問題、又は、表面の硬度が低く形成される問題が生じる。一方、極めて高い場合、母材の耐久性が低下したり、表面の粗さが高まったり、TaCコーティング層表面が荒々しく形成される問題がある。
【0039】
図2は、本発明の一実施形態で利用可能な多孔性構造が形成された母材110の断面図である。
【0040】
前記炭素母材は、グラファイトを含んで炭素を主成分とした母材はいずれのものも含まれてもよい。前記炭素母材上にTaCコーティング層が形成されれば、前記気孔にTaC成分が含浸されて含浸領域が生成され得る。
【0041】
図3は、本発明の一実施形態に係る多孔性構造が形成された母材110にTaCが含浸され、前記母材の表面上にTaCコーティング層120が形成され、前記母材の表面内側にTaC含浸領域130が形成された構造を示す断面図である。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、前記母材を備えるステップは、熱膨張係数が4.0×10-6/°Cないし7.0×10-6/°Cである母材を備える。
【0043】
前記母材の熱膨張係数は、母材と前記母材上に形成されたTaCコーティング層との間の付着力を決定するために重要な要因になる。TaCコーティング層の熱膨張係数を考慮するとき、TaC素材の熱膨張係数との差が大きくならないように母材を備えれば、本発明のTaCコーティング層と母材は丈夫に接着して形成され得る。ここで、母材の熱膨張係数は4.0×10-6/°Cないし7.0×10-6/°Cであってもよい。これにより、TaCを含むコーティング層の温度変化による膨張や収縮が発生するとき、炭素母材との間で熱応力を最小化することができ、効率よくTaCコーティング層の付着性を向上し、安定的にTaCコーティング層を母材上に形成し得る。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、前記母材を備えるステップは、多孔性構造の母材を備え、前記TaCコーティング層を形成するステップは、前記母材表面の気孔内にTaCが浸透され、前記母材の表面内側にTaC浸透領域を形成し得る。
【0045】
本発明の他の側面では、不純物の含量が少ないTaC材料を提供する。
【0046】
本発明の他の側面に係る不純物の含量が少ないTaC材料は、母材及びTaCコーティング層を含み、前記TaCコーティング層は、Ta及びCを除いた他の成分を1200ppm以下に含まれる。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、前記TaC材料は、本発明の不純物の含量が少ないTaC材料の製造方法により製造されたものであってもよい。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、不純物は、TaCコーティング層を形成する過程で、Ta、Cの原料を通した経路、Hot zone及び原料配管を通した経路などにより不純物として流入されてもよい。
【0049】
Ta及びCではない他の原子からなる前記不純物は、TaCコーティング層内に含まれ、半導体材料として形成されるとき欠陥の原因となり、ドーパントを追加するとき全体的な組成含量に問題があり、窮極的に製品の性能を低下させる問題を引き起こす。
【0050】
本発明では、TaCコーティング層を1600℃以上の高温で形成させることで、融点の低い不純物がコーティング層を形成する過程で別途の追加工程を必要とせずに除去され得る。
【0051】
本発明の一例によれば、XRD分析のX線回折によって発生する111面の回折ピーク値対比200面の回折ピーク値の比が0.17以下であってもよい。
【0052】
本発明で提供するTaC材料は、前記TaCコーティング層の111面の回折ピーク値/200面の回折ピーク値の比が増加するほど、TaCコーティング層の表面硬度値が次第に減少する傾向がある。ここで、前記111面の回折ピーク値/200面の回折ピーク値の比が増加するほど、TaCを含むコーティング層の表面硬度値の減少幅は次第に大きく示されている。
【0053】
前記回折ピーク値の比が0.17を超過する場合、TaCコーティング層の表面硬度が低く形成され、高い表面硬度の素材を必要とするコーティング層が求められる半導体製造用装置などに適用することが難しい問題が生じる。また、TaCコーティング層の母材との付着力が減少し、結晶粒間の境界を形成する結晶粒界が増加して材料の均質性を減少させる問題が生じる。一方、前記回折ピーク値の比が0.17を超過する場合、ピーク値の比が少し上昇しても大幅に表面硬度値が減少する問題が発生する。したがって、前記回折ピーク値の比0.17は、本発明の一側面において意味を有する値であり、0.17以下の前記回折ピーク値を有するTaCを含んでいるコーティング層は、炭素材料の高い表面硬度値を具現することにおいて重要な要因となる。
【0054】
また、前記111面の回折ピーク値対比200面の回折ピーク値の比は0.01以上であってもよい。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、XRD分析のX線回折によって発生するピーク値のうち、111面のピーク値が最大であってもよい。
【0056】
本発明の一例によれば、XRD分析の回折線の帯域幅は0.15°以下であってもよい。
【0057】
そのため、高い結晶性を有しながらTaC結晶粒の平均の大きさが十分に大きいように形成されたTaCを含むコーティング層を形成し得る。
【0058】
本発明の一例によれば、平均結晶粒の大きさが10μm~50umである粒子を含んでもよい。
【0059】
前記平均結晶粒の大きさが10um未満である場合、TaCを含むコーティング層の硬度が一定のレベル未満に形成され、通常高い硬度の素材を必要とする半導体製造用装置に適用することが難しい問題があり、コーティング層の結晶粒の大きさが50umを超過する場合、結晶粒のサイズを大きくするために求められる工程上のエネルギー、コストが大きく増加することで、製品の生産性を低下させる問題が生じる。
【0060】
本発明の一実施形態によれば、1600℃以上で融点を有する元素周期表の4族、5族、及び6族に該当する遷移金属の不純物元素の濃度の和は、1ppm~1000ppmであってもよい。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、元素周期表の4族、5族、及び6族に該当しない不純物元素の濃度の和は、1ppm~7ppmであってもよい。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、前記TaC材料の表面硬度は、15GPa以上であってもよい。
【0063】
本発明で提供するTaC材料は、15GPa以上の高硬度の表面硬度を確保し得る。
【0064】
以下、下記の実施形態及び比較例を参照して本発明を詳細に説明する。しかし、本発明の技術的な思想がこれによって制限されたり限定されることはない。
【0065】
実施形態
CVD方式によって、本発明の実施形態で提供するTaCコーティング層を含むTaC材料を複数製造した。
【0066】
本発明により、平均気孔率(15体積%以上)を有する炭素母材を備え、1600℃(特に、2000℃)~2500℃のCVD処理条件でTa前駆体ガスでTaCl5及びC前駆体ガスで炭化水素(Hydro Carbon)を用いてTaCコーティング層を形成した。ここで、TaCコーティング層のC/Taの組成比は1.1:1に調整した。それぞれの炭素母材の平均気孔率は、水銀吸着法により測定した。
【0067】
(1)TaCコーティング層内の不純物の含量の確認
前記の条件下で2つの不純物の含量が少ないTaC材料を製造した(実施形態1ないし実施形態4)。
【0068】
下記の表1及び表2は、前記実施形態1ないし実施形態4のTaC材料に含まれた不純物の種類及び含量を測定した値を示している。
【0069】
【表1】
【0070】
前記表1で表記されていない元素は、GDMSの分析時にデータ上で検出されていない物質に該当し、Inの場合、GDMSの分析時にバインダとして使用されるため、前記表3の不純物から除外した。
【0071】
前記表1に示された実施形態1ないし実施形態4の結果によって、1600℃以上で融点を有する元素周期表の4族(Ti系統元素)、5族(V系統元素)及び6族(Cr系統元素)に該当する遷移金属不純物元素の濃度の和は、1ppm~1000ppmで確保されることが確認された。
【0072】
【表2】
【0073】
一方、元素周期表の4族、5族、及び6族に該当しない不純物元素の濃度の和は、1ppm~7ppmで確保されることが確認された。表2に表記されていない不純物元素は、GDMSの分析時に検出されていないか、検出範囲の以下と確認された。
【0074】
(2)XRD分析時にピーク値の比とコーティング層表面硬度間の関係確認
前記の条件下で形成されたTaCを含むコーティング層の111面の回折ピーク値対比200面の回折ピーク値の比が相違に形成されるように本発明の製造方法によって複数の実施形態を製造し、それと比較するため本発明の範囲に含まれていない比較例を製造し、それぞれに対する表面硬度を測定した。
【0075】
下記の表3は、上記で製造した実施形態5及び実施形態6と比較例に対して測定した200面/111面のピーク値の比と表面硬度との相関関係を示す表である。
【0076】
【表3】
【0077】
試験の結果、前記回折ピーク値の比が0.17を基準として、その前後に前記表面硬度値が大きく変化することが確認された。言い換えれば、前記ピーク値の比が0.17以下である場合、TaCを含んでいるコーティング層の表面硬度値が16GPa以上の高硬度で形成される一方、0.17を超過する場合、前記ピーク値の比が少し増加しても、表面硬度値が大幅に減少することが確認された。一方、ピーク値の比は、0.1未満の区間で次第に小さくなるほど、表面硬度値の増加率は次第に減少することが確認された。
【0078】
また、前記試験の結果を介して、前記回折ピーク値の比と前記表面硬度値との間に、前記回折ピーク値の比を変数にして一定範囲の誤差範囲内に表面硬度値が全て含まれる二次関数の相関関係が成立したことが確認された。
【0079】
図4は、本発明の実施形態及び比較例により製造された炭素材料において、TaCを含むコーティング層のXRD分析の試験結果を示すグラフである。グラフ上、ピーク[1]は111面のピーク値であり、ピーク[2]は200面のピークを示す。
【0080】
図4Aは、比較例1のTaCを含むコーティング層のXRD分析の試験結果であり、図4Bは、実施形態5のTaCを含むコーティング層のXRD分析の試験結果であり、図4Cは、実施形態6のTaCを含むコーティング層のXRD分析の試験結果である。
【0081】
(3)TaCを含むコーティング層の平均結晶粒の大きさと表面硬度との間の関係確認
前記の条件下でTaCを含むコーティング層の平均結晶粒の大きさと表面硬度との間の関係を確認するために、平均結晶粒の大きさを相違にして複数の実施形態及び比較例を製造し、それぞれの場合に表面硬度を測定した。
【0082】
ここで、TaCを含むコーティング層の平均結晶粒の大きさの測定は、平均結晶粒の大きさを決定する標準テスト方法であるASTM E112により測定した。
【0083】
下記の表4は、本発明の一側面で提供する実施形態7ないし実施形態10及び比較例2に対して測定された平均結晶粒の大きさと表面硬度の測定値を示したものである。
【0084】
【表4】
【0085】
表4に提示された測定値の結果によって、平均結晶粒の大きさが一定のレベル以上に増加すれば、表面硬度値が大きく上昇する区間が存在することが確認される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C