(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】複合型プラネット・ギヤ装置およびドライブ・トレイン装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/28 20060101AFI20220929BHJP
F03D 15/00 20160101ALI20220929BHJP
F16H 1/46 20060101ALI20220929BHJP
F16H 55/14 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
F16H1/28
F03D15/00
F16H1/46
F16H55/14
(21)【出願番号】P 2018534763
(86)(22)【出願日】2016-09-23
(86)【国際出願番号】 SE2016050902
(87)【国際公開番号】W WO2017052461
(87)【国際公開日】2017-03-30
【審査請求日】2019-09-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-04
(32)【優先日】2015-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516281182
【氏名又は名称】カスケード ドライブズ アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】CASCADE DRIVES AB
(74)【代理人】
【識別番号】100207837
【氏名又は名称】小松原 寿美
(74)【代理人】
【識別番号】100214640
【氏名又は名称】立山 千晶
(72)【発明者】
【氏名】ルンドベック、スティーグ
【合議体】
【審判長】平瀬 知明
【審判官】尾崎 和寛
【審判官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/091406(WO,A1)
【文献】実開平3-26853(JP,U)
【文献】特開昭63-246533(JP,A)
【文献】特表2006-518441(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10246711(DE,A1)
【文献】特開2001-241536(JP,A)
【文献】実開昭63-110759(JP,U)
【文献】実開昭59-51688(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/28
F03D 15/00
F16H 1/46
F16H 55/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング・ギヤ(110、210、310、410)、少なくとも2つのプラネット・ギヤ・ユニット(120、220、320、420)、およびサン・ホイール(130、230、330、430)を有する、複合型プラネット・ギヤ装置(100、200、300、400)であって、それぞれのプラネット・ギヤ・ユニットは、該リング・ギヤと噛み合う1次プラネット歯(121’)を備えた1次プラネット・ギヤ(121、221、321、421)と、該サン・ホイールと噛み合う2次プラネット歯(122’)を備えた2次プラネット・ギヤ(122、222、322、422)とを含み、
該2次プラネット・ギヤは、該1次プラネット・ギヤに軸線方向に接続されており、該1次プラネット・ギヤの直径よりも大きい直径を有する、複合型プラネット・ギヤ装置(100、200、300、400)において、
それぞれのプラネット・ギヤ・ユニット(120、220、320、420)は、衝撃吸収トランスミッション装置(20)を含み、該衝撃吸収トランスミッション装置(20)は、該1次プラネット歯に対して該2次プラネット歯を限定的かつ弾性的に回転可能とするように配置されており、
それぞれの
前記衝撃吸収トランスミッション装置(20)は、前記1次プラネット歯(121’)と前記2次プラネット歯(122’)との間でトルクを伝達するように配置されている複数の弾力的な部材(24)を含み、
前記弾力的な部材(24)は、前記2次プラネット・ギヤの内部に配置されていることを特徴とする複合型プラネット・ギヤ装置。
【請求項2】
前記弾力的な部材(24)は前記1次プラネット・ギヤよりも径方向外側に位置している、請求項1に記載の複合型プラネット・ギヤ装置。
【請求項3】
それぞれの
前記衝撃吸収トランスミッション装置(20)は、前記2次プラネット歯を形成する周囲歯(25’)を備えるコグ・ホイール部材(25)を有し、前記弾力的な部材(24)は前記コグ・ホイール部材(25)によって径方向において取り囲まれている、請求項1又は2に記載の複合型プラネット・ギヤ装置。
【請求項4】
リング・ギヤ(110、210、310、410)、少なくとも2つのプラネット・ギヤ・ユニット(120、220、320、420)、およびサン・ホイール(130、230、330、430)を有する、複合型プラネット・ギヤ装置(100、200、300、400)であって、それぞれのプラネット・ギヤ・ユニットは、該リング・ギヤと噛み合う1次プラネット歯(121’)を備えた1次プラネット・ギヤ(121、221、321、421)と、該サン・ホイールと噛み合う2次プラネット歯(122’)を備えた2次プラネット・ギヤ(122、222、322、422)とを含み、該2次プラネット・ギヤは、該1次プラネット・ギヤに軸線方向に接続されており、該1次プラネット・ギヤの直径よりも大きい直径を有する、複合型プラネット・ギヤ装置(100、200、300、400)において、
それぞれのプラネット・ギヤ・ユニット(120、220、320、420)は、衝撃吸収トランスミッション装置(20)を含み、該衝撃吸収トランスミッション装置(20)は、該1次プラネット歯に対して該2次プラネット歯を限定的かつ弾性的に回転可能とするように配置されており、
それぞれの前記衝撃吸収トランスミッション装置(20)は、前記1次プラネット歯(121’)と前記2次プラネット歯(122’)との間でトルクを伝達するように配置されている複数の弾力的な部材(24)を含み、
前記弾力的な部材(24)は、前記2次プラネット・ギヤの内部に配置されており、
それぞれの
前記衝撃吸収トランスミッション装置(20)は、ドライブ・ディスク(21)およびコグ・ホイール部材(25)を含み、該ドライブ・ディスク(21)は、前記1次プラネット・ギヤ(121)を前記2次プラネット・ギヤ(122)に接続するプラネット・シャフト(22)に固定されており、該ドライブ・ディスク(21)には、該ドライブ・ディスクに固定されている複数の軸線方向に延在するピン(23)が設けられており、該コグ・ホイール部材(25)は、周囲歯(25’)を備えるとともにトランスミッション・ディスク(26)を含み、該トランスミッション・ディスク(26)には、該複数のピン(23)に対応する複数の開口部(26’)が設けられており、環状の
前記弾力的な部材(24)は、それぞれの開口部(26
’)の中に受け入れられており、それぞれのピン(23)は、それぞれの弾力的な部材(24)の中に受け入れられている
ことを特徴とする複合型プラネット・ギヤ装置。
【請求項5】
前記コグ・ホイール部材(25)の前記周囲歯(25’)は、前記2次プラネット歯を形成しており、前記ドライブ・ディスク(21)は、プラネット・シャフト(22)によって前記1次プラネット・ギヤに回転しないように固定されている、請求項4に記載の複合型プラネット・ギヤ装置。
【請求項6】
それぞれのプラネット・ギヤ・ユニット(120、220、320、420)は、軸受(224、324)とともに、プラネット・ギヤ・モジュールを形成しており、前記プラネット・ギヤ・モジュールは、前記複合型プラネット・ギヤ装置のハウジングに軸受を装着するための少なくとも1つの軸受ハブ(224a、324a)を含む、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の複合型プラネット・ギヤ装置。
【請求項7】
前記複合型プラネット・ギヤ装置(300、400)は、偶数のプラネット・ギヤ・ユニット(320、420)を含む積層式のプラネット・ギヤであり、前記1次プラネット・ギヤ(321、421)は、第1の半径方向の平面の中に配置されており、前記2次プラネット・ギヤ(322、422)のうちの半分(322’、422’)は、第2の半径方向の平面の中に配置されており、前記2次プラネット・ギヤのうちの半分(322’’、422’’)は、第3の半径方向の平面の中に配置されており、該第3の半径方向の平面は、該第2の半径方向の平面よりも前記第1の半径方向の平面から大きい距離に配置されている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の複合型プラネット・ギヤ装置。
【請求項8】
前記
衝撃吸収トランスミッション装置(20)は、前記限定的かつ弾性的な回転を両方の回転方向に等しく可能にするように配置されている、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の複合型プラネット・ギヤ装置。
【請求項9】
前記弾力的な部材(24)は、予荷重がかけられていないか、または、両方の回転方向に等しく予荷重がかけられている、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の複合型プラネット・ギヤ装置。
【請求項10】
前記
衝撃吸収トランスミッション装置(20)は、少なくとも1°の、限定的かつ弾性的な相対回転を可能にするように配置されている、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の複合型プラネット・ギヤ装置。
【請求項11】
第1のギヤ・ステップを形成する第1の複合型プラネット・ギヤ装置(200)と、第2のギヤ・ステップを形成する第2の複合型プラネット・ギヤ装置(300、400)とを含む、ドライブ・トレイン装置であって、前記第1の複合型プラネット・ギヤ装置(200)及び前記第2の複合型プラネット・ギヤ装置(300、400)の各々が請求項1乃至10のいずれか1項に記載の複合型プラネット・ギヤ装置である、ドライブ・トレイン装置。
【請求項12】
前記第2の複合型プラネット・ギヤ装置(300)の前記サン・ホイール(330)は、発電機もしくはモータ(500)または別のユーティリティ・アプライアンスのロータに接続されている、請求項11に記載のドライブ・トレイン装置。
【請求項13】
少なくとも、前記第1の複合型プラネット・ギヤ装置を受け入れる第1のコンパートメント(820)と、前記第2の複合型プラネット・ギヤ装置を受け入れる第2のコンパートメント(830)とに分割されたハウジングを含み、該コンパートメントは、異なる潤滑媒体が該それぞれのコンパートメントに役立つことを可能にするために、互いに封止されている、請求項11又は12に記載のドライブ・トレイン装置(800)。
【請求項14】
第1の管状のシャフト部材(710、710’)と、第2の管状のシャフト部材(712、712’)とを含む入力シャフトを含み、該第1の管状のシャフト部材(710、710’)は、前記第1の複合型プラネット・ギヤ装置の前記リング・ギヤに接続されており、該第2の管状のシャフト部材(712、712’)は、該第1の管状のシャフト部材の周りに同軸に配置されており、環状の装着ディスク(711、711’)によって前記第1の管状のシャフト部材に固定されており、前記第2の管状のシャフト部材は、軸受(713、713’)の中で、前記ドライブ・トレイン装置のハウジング(714、714’)に軸支されている、請求項11乃至13のいずれか1項に記載のドライブ・トレイン装置(800)。
【請求項15】
前記第1の複合型プラネット・ギヤ装置、前記第2の複合型プラネット・ギヤ装置、および前記入力シャフトは、モジュール式に組み立てられおよび分解されるモジュール・パー・モジュールになるように配置された別々のモジュール(2、3、4)として配置されている、請求項14に記載のドライブ・トレイン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いくつかのトルク伝達ギヤ・コンポーネントにトルクを分けることによって、トルクを伝達するための複合型プラネット・ギヤ装置に関する。また、本発明は、ドライブ・トレイン装置のそれぞれのギヤ・ステップを形成する少なくとも2つのそのような複合型プラネット・ギヤ装置を含むドライブ・トレイン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転運動またはトルクを別の回転運動およびトルクに変換する必要性が存在する、多くの用途がある。ほとんどの場合、何らかの種類のプラネタリ・ギヤ装置および複合型プラネタリ・ギヤ装置が、そのような回転から回転への配置に使用され得る。
【0003】
そのような用途の例は、風車および流体動力ミルのようなデバイスであり、そこでは、低いRPMにおける高いトルクを、より高いRPMを伴うより低いトルクに変換することが必要である。他の例は、車およびトラック、タービン、電気モータ、ならびに、他の駆動装置の中のモータであり、そこでは、高いRPMおよび低いトルクを、低いRPMを伴う高いトルクに変換することが必要である。
【0004】
伝達されるトルクがいくつかのギヤ・コンポーネントの間で分けられる、プラネタリ・ギヤなどのようなギヤ装置において、ギヤ装置のオーバ・デタミネーション(over determination)に伴う問題がある。そのようなオーバ・デタミネーションは、バランスの取れていない荷重、および、ギヤ・コンポーネントの不均一な摩耗につながる可能性がある。本発明は、オーバ・デタミネーションに関連する問題を解決することに関するだけではなく、ギヤ装置を通して伝達される力が劇的に変化するときに、ギヤ装置の中に起こる過渡的な力を低減するために、衝撃吸収を提供することに関連する問題を解決することに関する。ギヤ装置のこれらのタイプにおいて、装置全体が、耐久性のあるものであり、また、予測可能な長い耐用寿命を有することは極めて関心の高いものである。さらに重要な態様は、体積重量比がギヤ比に対して可能な限り低くなることである。
【0005】
本発明は、上述のタイプのさまざまな用途において、また、他の用途において使用され得る。どのように本発明がギヤ装置の機能性を改善することができるかを実証するための特定の関心の用途は、風力発電産業である。この産業において、プラネタリ・ギヤボックスは、タービンまたはロータ・ブレードから電力の発生のための発電機へのドライブラインの中心部分の役割を果たしている。
【0006】
運動中の大きい質量、プロペラ、および発電機に起因する乱れた風の変化は、ギヤボックスを通る力の方向の突然で強力な変化を生じさせる。この方向の変化は、ギヤボックス・ドライブ・トレインの中の空気ギャップおよび剛性とともに、噛み合っている歯の上に、および、軸受の中に、衝撃波および高い過負荷をもたらす。ギヤ歯間の金属接触は、ギヤボックスの中の油を汚染することになる。RPM粘度および清浄度に対して油の品質を最適化することは、非常に重要である。寿命時間をさらに延長するために、軸受およびギヤなどのような損傷を受けやすいパーツがより良好に最適化された新しいコンポーネントと適切な場所で交換され得るギヤボックスを生成することが必要である。
【0007】
そのうえ、ワイ.グオ(Y.Guo)、ジェイ.ケラー(J.Keller)、およびアール.パーカー(R.Parker)による2012年6月付けのプレプリントの非特許文献1に説明されているように、過渡的な力は、風車において非常に一般的であり、また、この種類の配置に対してマイナスの寿命時間要因を有し、ギヤボックスを通して、スプリット・トルクの均一な分配を実現することが可能である。
【0008】
多くの異なる種類のエピサイクリック・ギヤボックスがテストされてきたが、風車ギヤボックスの低い寿命時間の原因は、依然として十分には知られていない。今日では、多くの風車製造業者が、直接駆動の永久磁石を探しているが、それらは、土類金属を使用して、非常に大きく、重く、高価になり、土類金属は、限られた資源である。
【0009】
ギヤボックスは、1つの回転シャフトから別の回転シャフトへ、回転速度、トルク、および/または回転を変化させる動力伝達のためのデバイスである。車軸間のこの動力伝送は、通常、2つの円筒形状のギヤの間の協調的な噛み合いを通して行われる。これは、転動移動および摺動移動を伴う1度に2つだけの歯の側面が現在のトルクを伝達することを意味している。その2つの対合する歯フランクによって、噛み合いは、ギヤ間で伝達されるトルクに関して寸法決めされなければならない。これは、ギヤ直径、幅、および噛み合いを変化させることによって行われ得る。ギヤ材料、および、歯フランクの硬度、ならびに、ギヤボックスを潤滑する油は、当然ながら、強度の増加および機械的な摩滅に対する抵抗の増加に関して、極めて重要な要因を構成する。円筒形状のギヤボックスにおいて、より大きい直径の駆動ギヤがより小さい直径の被駆動ギヤを備えたギヤと噛み合うときに、アップシフトが起こる。それに対応して、より小さい直径駆動ギヤがより大きい直径の被駆動ギヤと噛み合っているときには、ダウンシフトが起こる。高いアップシフトまたはダウンシフトを必要とする用途では、いくつかのギヤ・ステップが必要とされ得る。たとえば1:5の第1のステップは、たとえば1:5の第2のステップによって補完され得、1:25の合計アップシフトをもたらす。噛み合っている2つの歯フランクが、たとえば、電気的なエネルギーを発生させるための風のエネルギーの抽出などにおいて、大きい入力トルクに関して適合されなければならない場合には、円筒形状のギヤ装置は、そのギヤ比に関連して、大きく重いギヤボックスにつながる可能性がある。この問題を回避するために、さまざまな異なるプラネタリ・ギヤボックスが、高い速度比を有するコンパクトなエネルギー密度の高いギヤ装置を提供することに関して提案されており、ここで、速度比は、ギヤボックスの入力シャフトおよび出力シャフトの出力速度に対する入力速度として理解されるべきである。
【0010】
プラネタリ・ギヤボックスは、3つのタイプのエレメント、すなわち、プラネタリ・ギヤ、プラネット・キャリア、および、メイン・ギヤの周りに構築され、メイン・ギヤは、外側リング・ギヤまたはリング・ホイール、および、内部サン・ギヤまたはサン・ホイールから構成されている。このタイプのギヤボックスによって、リング・ギヤとサン・ギヤとの間でギヤボックスを通してトルクを変換する際に協働するいくつかのプラネット・ギヤに、入来トルクを分けることが可能である。
【0011】
プラネタリ・ギヤボックスは、多くの方法で作製され得るが、ほとんどの場合は、単一のまたは複合型トランスミッション・ギヤボックスとして作製され得る。単一のプラネタリ・ギヤボックスでは、複数の単一のプラネタリ・ギヤが、リング・ギヤとサン・ギヤとの間で直接トルクを変換する。
【0012】
複合型プラネタリ・ギヤ・トランスミッションでは、トルクは、複数のプラネタリ・ギヤ・セットを介してリング・ギヤからサン・ギヤへ伝達され、それぞれのプラネタリ・ギヤ・セットは、少なくとも2つのプラネタリ・ギヤを含み、そのうちの1つは、リング・ギヤと噛み合っており、また、そのうちの1つは、サン・ギヤと噛み合っている。それぞれのセットの中のプラネタリ・ギヤは、複合型プラネタリ・ギヤボックスの中で、互いに噛み合い接触しているか、または、ステップ式複合型プラネタリ・ギヤボックスと同様に、共通のシャフトによって互いに固定されているか、のいずれかであることが可能である。そのような複合型プラネタリ・ギヤ装置は、単一のプラネタリ・トランスミッション・ギヤボックスよりも高い速度比を発生させることが可能である。
【0013】
プラネタリ・ギヤボックス・キャリアは、いくつかの実施形態では、トランスミッション入力/出力シャフトに接続され得、したがって、固定されたリング・ギヤによって、サン・ギヤに対してその回転するプラネタリ・ギヤを通して、および、出力/入力シャフトへのその接続を通して、トルクを変換する。他の例では、キャリアは、ギヤボックスに固定され得、そして、それは、リング・ギヤがギヤボックス入力/出力シャフトに接続されていることを意味している。したがって、回転するリング・ホイールは、トルクを変換するその回転するプラネタリ・ギヤを備えた固定されたプラネタリ・キャリアを通して、出力/入力シャフトに接続されているサン・ギヤにトルクを伝える。
【0014】
スプリット・トランスミッションによって、トルクの変換が、関与するコグ・フランクの上に均一に分配されることが極めて重要である。
3つのプラネタリ・ギヤが単一のプラネタリ・ギヤボックス構築体の中で使用されている場合に、サン・ギヤは、3つのプラネタリ・ギヤ歯フランクを通して中心に置かれ得、また、物理的な理由および幾何学的な理由によって、リング・ギヤとサン・ギヤとの間に均一な力の伝達分布を発生させる可能性を与える。
【0015】
風力タービン、車などに使用される、多くのプラネタリ・ギヤボックスにおいて、単一のプラネタリ構築体としての1~3ステップの3つのプラネタリ・ギヤは、入来1次トルクをリング・ギヤとサン・ギヤとの間で伝えるために使用される。
【0016】
単一のトランスミッション・ギヤボックスの中に3つのプラネタリ・ギヤがある場合に、リング・ホイールの内部ギヤリングによって、約1:12のギヤ比を実現することが可能である。この高いギヤ比において、サン・ホイールおよびそのシャフトは、サイズが不釣り合いになることになり、したがって、通常は、より低いギヤ比が実際には使用される。単一のプラネタリ・ギヤボックスの中に4つのプラネタリ・ギヤがある場合に、プラネタリ・ギヤが互いに当たり始める前に、約1:5,2のギヤ比を達成することが可能であり得、6つのプラネタリ・ギヤは、おおよそ1:2,5であり、8つのプラネタリ・ギヤは、おおよそ1:2である。
【0017】
従来技術
特許文献1は、風力発電に関し、また、それぞれのステップの中に3つのプラネット・ギヤを備えた、2段のプラネタリ・ギヤボックスを開示している。第1段の回転するプラネット・キャリアは、3つのプラネタリ・ギヤを通して、プラネタリ・ギヤ歯フランクを通して中心に置かれたサン・ギヤへ、トルクを伝達する。このサン・ギヤは、3つの追加的なプラネタリ・ギヤを通してトルクを変換する第2のステップの中のプラネット・キャリアを回転させるための駆動手段を介して、発電機に動力を与えるシャフトに取り付けられているサン・ホイールへ、おおよそ1:16の合計ギヤ比でトルクをさらに伝える。他の特許では、同様の装置が、別のプラネット・ギヤ段、および/または、固定された軸線のギヤ・システムをさらに装備しており、ギヤ比を改善し、発電機のサイズ、重量、およびコストを低減する。3つのプラネット・ギヤを備えたそのような配置によって、第1のサン・ギヤ、その3つのプラネットを備えた第2のプラネット・キャリア、および、ヘリカル・カット・コグは、フリー・フローティング・ユニットを生成することになり、フリー・フローティング・ユニットは、コグ・ホイール・フランクのみによって中心に置かれて安定化されている。
【0018】
理論では、上記の配置は、オーバ・デタミネーション問題を含まないはずであり、重力が、特定の関心であり得る。
第1のステップの中で3つのプラネタリ・ギヤだけを使用する別の否定的側面は、大きい1次トルクだけが、3対のコグ・ホイール・フランクの上に分割され得、3対のコグ・ホイール・フランクは、大きいコグ・ホイール直径およびサイズを必要とし、3つのプラネタリ・ホイールおよびサン・ホイールの上で変換されるトルクを処理する。軸受の上の荷重は、高くなることになるので、より大きいサイズおよび直径を有する軸受をもたらし、それは、油圧機械的な滑り軸受が使用されない場合には、ギヤ自身よりも大きくなる可能性さえある。さらに、より大きい直径のボール軸受またはローラ軸受は、指数関数にしたがって、RPMに対するそれらの耐性を低減する。
【0019】
風力タービン、車などに使用される他のプラネタリ・ギヤボックスでは、1~3ステップの中の4つのプラネタリ・ギヤが、入来1次トルクをリング・ギヤとサン・ギヤとの間に伝えるために使用される。入来トルクを、ギヤボックスを通る4つの経路に分けることは、ギヤおよび軸受のサイズを減少することになるが、また、ギヤ比を約1:4となるまで低減することになる。さらに、これらの場合、フリー・フローティング・サン・ギヤを有する可能性がない。その代わりに、均一の荷重分配は、ここで、ギヤ、シャフト、軸受の製造、センタリング、弾力性などの精度を増加させることによって、実現されることが求められる。
【0020】
オーバ・デタミネーションをさらに最小化するために、ギヤ・シャフトは、特許文献2に開示されているものなどのようなフレックス・ピン装置を装備している場合がある。
4つのプラネタリ・ギヤを含む単一ステップのプラネタリ・ギヤ装置は、幾何学的な理由に起因して、最大で約1:5,2のギヤ比を可能にし、実際には、通常、1:4のギヤ比が実現される。2つのステップ・ギヤ装置として配置されているときには、これは、1:16のギヤ比を与えることになる。ギヤ比を改善するために、および、駆動される発電機のサイズを低減するために、たとえば、特許文献3に開示されているものなどのような、第3のプラネタリ・ギヤ段が追加され得る。他の公知の配置では、第3のギヤ・ステップは、固定された軸線ギヤ・システムとして配置され得、それは、また、風力に関するギヤ・トレインの中の他の大きな問題を解決し、風力タービンのパワー・サポートおよび制御のための中心シャフトの中の孔部を通る中心開口接点を有する。
【0021】
ハイブリッド・ステップ式のプラネタリ解決策と称される場合もある複合型プラネタリ・ギヤボックスは、リンクされた2つのプラネタリ・ギヤを有しており、それらは、異なる直径を有する1次プラネタリ・ギヤおよび2次プラネタリ・ギヤであり、それらは、1つの複合型ギヤ・ステップの中の1つの共通のシャフトの上に固定されている。この配置は、高い理論ギヤ比でトルクを変換するが、ギヤボックスに関する他の問題を考慮して、リンクされた3対のプラネタリ・ギヤによるギヤ比は、実際には、1:15から1:20の領域にあることになる。
【0022】
そのような複合型のステップ式プラネタリ・ギヤ装置は、理論的に、大きいギヤ比、コンパクトな構築体、高いエネルギー密度、および、高い速度比を示すとしても、ステップ式プラネタリ・ギヤは、たとえば、風車産業の中で、実際にはそれほど使用されてこなかった。そのような公知のステップ式ギヤ装置は、以下の問題を頻繁に示すことが分かった。
【0023】
それらは、オーバ・デタミネーションを防止するために、非常に正確な機械加工および測定を必要とする。その理由は、1つの共通のシャフトへの正確な固定を伴う2つの異なるギヤの間の二重の噛み合い接触は、製造および組み立てをより困難にし、より大きい故障のリスクをもたらすからである。
【0024】
同じレベルに4つのプラネットを備えたステップ式プラネタリ・ギヤは、ギヤ比を低減し、この解決策を魅力的でないものにすることになる。
特許文献4は、複合型プラネタリ・ギヤボックスを開示しており、そこでは、2次プラネット・ギヤが、2つの軸線方向のレベルに積層されており、したがって、内部にギヤの付いたリング・ホイールから中心のサン・ギヤへスプリット・トルクを生成する。その文献は、オーバ・デタミネーションの問題を議論しているが、本明細書で説明されているすべての実施形態に使用可能な満足のいく解決策を提案することができていない。
【0025】
特許文献5では、複数の同一の形状の第1および第2のプラネット・シャフトは、1次的および2次プラネット・ギヤを装備しており、1次的および2次プラネット・ギヤは、軸線方向および半径方向(第2のプラネット・シャフトによる)の両方に積層されており、セクタを形成し、外部リング・ギヤから中心のサン・ギヤへスプリット・トルクを変換する。より小さい直径のギヤは、より良好な機械加工条件および測定条件を提供し、関係するギヤの上に均一のフランク圧力を実現することになる。欠点は、たとえば、特許文献4に説明されているものと同じギヤ比を実現するための追加のギヤ・ステップである。
【0026】
特許文献6は、1次および2次プラネット・ギヤを装備している複数の同一の形状の第1、第2、および第3のプラネット・シャフトを備えたギヤボックスを提示しており、ここで、それらのプラネットを備えた第1および第2のプラネット・シャフトは、外部にカットされたリング・ギヤの両側に積層されており、2つの第1のプラネット・シャフトを備えた2つのセクタを形成しており、2つの第1のプラネット・シャフトは、それらのプラネット・ギヤによって、第2のプラネット・シャフトのプラネット・ギヤと一緒に噛み合わされており、これらの2つのセクタは、第3のプラネット・シャフトおよびそのプラネット・ギヤと一緒に噛み合わされており、スプリット・トルクとしてリング・ギヤによって発生するトルクの半分を発電機の駆動シャフトに変換する。
【0027】
2つのレベルに第2のプラネタリ・ギヤを積層することは、高い速度比を実現する可能性を改善し、ギヤボックスを通るスプリット・トルク・ギヤ機能を倍増するが、ギヤボックスの中のさらに異なる位置にある6つの、8つの、またはそれ以上のコグ・ホイールが、均一のコグ・フランク圧力で噛み合うように固定されなければならないことをもたらすことになる。
【0028】
より高いトルクがギヤボックスを通して伝達されるときに、ギヤのうちの少なくとも1つが、たとえばスプラインによって、シャフトに固定されなければならず、スプラインは、ミスアライメントのリスクをさらに劇的に増加させ、1つまたは多くのコグ・フランクのオーバ・デタミネーションを生成する。
【0029】
より大きいコグ・ホイールは、正確なマスキング・パラメータを有するように測定および調節することが困難である。
特許文献7は、プラネタリ・ギヤ・ユニットを開示している。それは、等しい直径の2つのサブギヤを備えたスプリット・プラネット・ギヤを含み、それらは、プラネタリ回転軸線に対して平行に配置されているスプリング・バーによって、互いに対して相互に予荷重がかけられている。その配置は、バックラッシュのないプラネタリ・ギヤ・ユニットをもたらすと言われている。
【0030】
Swedish Elforsk report 10:50 2011 and CIRP Annals - Manufacturing Technology 61 (2012) 611-634によって作成された、すべてのスウェーデンの風車に関する損傷報告書は、ギヤボックスが、全体的に、約束された20年の耐用寿命の約半分よりも長くは持ちこたえなかったことを結論付けた。その結果は、ギヤボックス設計者が、すべての内部の動的な力を考慮できていないことを示している。
【0031】
特許文献8は、コンプライアント・ギヤ(compliant gear)を開示している。この文献は、衝撃吸収、噛み合っているギヤ間の公差要件の低減、およびノイズレス・ギヤに使用されることになるコンプライアント・ギヤを生成するという以前の試みは、噛み合っているギヤ間の中心線距離を維持するための半径方向の剛性の欠如に起因して、失敗した。この文献は、コンプライアント・ラミネート間のサンドイッチ構築体としてのリジッドのシムの侵入によって、コンプライアント・ギヤの半径方向の剛性を増加させることを提案している。それの後に、特許文献9のような他の同様の構築体が続き、または、単に、コグ・ホイール特許文献10の内側の、もしくは、特許文献11と同様のコグ・ホイールに接続されているハブの中の、曲げ可能なスプロケットをギヤに提供することが続いた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【文献】米国特許第6,459,165号明細書
【文献】米国特許第3,303,713号明細書
【文献】米国特許第8,907,517号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0113210A1号明細書
【文献】米国特許第8,734,289B2号明細書
【文献】米国特許出願公開第2003/0015052A1号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0240490A1号明細書
【文献】米国特許第4,674,351号明細書
【文献】米国特許出願公開第4,831,897A号明細書
【文献】国際公開第2007/119074A1号公報
【文献】ドイツ特許出願公開第102007053509A1号明細書
【非特許文献】
【0033】
【文献】NREL Conference paper; NREL/CP-5000-55355; 「Dynamic Analysis of Wind Turbine Planetary Gears Using an Extended Harmonic Balance Approach」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
本発明の目的は、改良された複合型のステップ式および/または積層型のプラネット・ギヤ装置を提供することである。
別の目的は、入力シャフトに作用する過渡的なトルク変化のマイナスの影響を低減するために、衝撃吸収特性を有するそのような複合型プラネット・ギヤ装置を提供することである。
【0035】
さらなる目的は、合計荷重を共有する複数のギヤの間で等しい荷重分配を可能にする高い自由度で、オーバ・デタミネーションによって引き起こされる問題を効率的に低減する、そのような複合型プラネット・ギヤ装置を提供することである。
【0036】
一層さらなる目的は、高いギヤ比、高いエネルギー密度、および、高い速度比を示す、そのような複合型プラネット・ギヤ装置を提供することである。
さらに別の目的は、容易に組み立ておよび分解され得、また、メンテナンスを容易に可能にする、そのような複合型プラネット・ギヤ装置を提供することである。
【0037】
さらに別の目的は、ギヤボックスを駆動するように配置されている風力タービンが、タービンを発電機に接続するギヤ装置の限定されたパーツの小さい修正だけを必要としながら、省スペース式で容易に制御され得ることを可能にする、そのような複合型プラネット・ギヤ装置を提供することである。
【0038】
別の目的は、最適なギヤ比を依然として可能にしながら、サン・ホイールなどのような構成コンポーネントの寸法が小さく維持され得る、そのような複合型プラネット・ギヤ装置を提供することである。
【0039】
さらに別の目的は、ドライブ・トレインを形成する複合のギヤ装置が、モジュール式のコンポーネントを組み合わせることによって容易に組み立てられ得ることを可能にする、そのような複合型プラネット・ギヤ装置を提供することである。
【0040】
さらなる目的は、かなりの程度の乱流を示す激しく変化する風から電気エネルギーを効率的に抽出するための風車の中で使用されるように適合されている、そのような複合型プラネット・ギヤ装置を提供することである。
【0041】
さらに別の目的は、複合型プラネット・ギヤ装置のリング・ギヤに接続された、入来または送出シャフトが、半径方向および軸線方向に安定して支持されることを可能にする、そのような複合型プラネット・ギヤ装置を提供することである。
【0042】
一層さらなる目的は、複合型プラネット・ギヤ装置のサン・ホイールに接続され、または、それを形成する、入来または送出シャフトが、半径方向に支持されることを可能にする、そのような複合型プラネット・ギヤ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0043】
これらのおよび他の目的は、請求項1のプリアンブルに述べられており、また、請求項1の特徴部分に特定されている特別な技術的特徴を示す、複合型プラネット・ギヤ装置によって実現される。複合型プラネット・ギヤは、リング・ギヤ、少なくとも2つのプラネット・ギヤ・ユニット、およびサン・ホイールを含む。それぞれのプラネット・ギヤ・ユニットは、リング・ギヤと噛み合う1次プラネット歯を備えた1次プラネット・ギヤと、サン・ホイールと噛み合う2次プラネット歯を備えた2次プラネット・ギヤとを含む。2次プラネット・ギヤは、1次プラネット・ギヤに軸線方向に接続されている。2次プラネット・ギヤの直径は、1次プラネット・ギヤの直径よりも大きい。それぞれのプラネット・ギヤ・ユニットは、衝撃吸収トランスミッション装置を含み、衝撃吸収トランスミッション装置は、1次プラネット歯に対する2次プラネット歯の限定された弾力的な回転を可能にするように配置されている。
【0044】
2次プラネット・ギヤが1次プラネット・ギヤよりも大きい直径を有することは、ギヤ・ユニット自体が複合型プラネタリ・ギヤ装置の中のギヤ・ステップを構成することをもたらす。それによって、複合型プラネタリ・ギヤ装置は、3つのギヤ・ステップを提供する。第1のギヤ・ステップは、リング・ギヤと1次プラネット・ギヤとの間の直径の差に対応している。第2のギヤ・ステップは、1次プラネット・ギヤと2次プラネット・ギヤとの間の直径の差に対応している。第3のギヤ・ステップは、2次ギヤ・ステップとサン・ホイールとの間の直径の差に対応している。このようにして、複合型ギヤ装置は、比較的高い合計ギヤ比によって容易に設計され得る。さらに、そのような高い合計ギヤ比は、省スペースおよび省重量式で達成され得る。また、追加的な第2のギヤ・ステップは、複合型ギヤ装置全体に関して所望の合計ギヤ比を選択するときに、自由度を増加させる。
【0045】
衝撃吸収トランスミッション装置は、1次プラネット・ギヤと2次プラネット・ギヤとの間の弾力的な相対回転をさらに可能にする。このようにして、プラネタリ・ギヤのうちの1つの激しい回転の加速および遅延は、他のプラネット・ギヤによって滑らかに吸収され、それによって、1つのコグ・フランクが、噛み合っているギヤの対応するコグ・フランクに接触するときの、激しい衝撃を防止する。
【0046】
たとえば、風車の据え付けにおいて使用されるときに、激しく変化する力および乱流を伴う風は、ロータの回転速度を瞬間的に変化させる。これは、ギヤ装置およびそれに接続されている発電機の運動量と相俟って、1つのギヤのコグ歯が、噛み合っているギヤにおける2つのコグ歯の隣接するコグ・フランクと絶え間なく高頻度で変化する接触をさせることになる。本発明の衝撃吸収トランスミッション装置は、そのような変化する接触の影響を効率的に低減し、また、入力シャフトの上の激しい回転の加速および遅延が、トランスミッション・ユニットの下流に配置されているギヤに伝達されることを防止する。
【0047】
また、衝撃吸収効果に加えて、トランスミッション・ユニットは、プラネタリ・ギヤの中のスプリット・トルク・トランスミッションのオーバ・デタミネーションによって引き起こされる問題を大きく低減する。2次プラネット・ギヤは、それらのそれぞれの1次ギヤに対して限定的に弾性的に回転可能であるので、それぞれの2次ギヤは、サン・ホイールとのその係合を個別に調節することが可能であり、ギヤ装置の合計荷重が、瞬間的に係合しているすべての協働するコグ・フランクの間で均一に分配されるようになっている。
【0048】
このようにして、複合型プラネット・ギヤおよびその構成パーツは、高く瞬間的に大きく変化するトルクに依然として耐えることができる状態で、比較的小さい寸法で設計され得る。そして、これは、複合型プラネット・ギヤが、高いエネルギー密度、高いギヤ比、および、高い速度比で設計され得ることを可能にする。また、弾力的なトランスミッション装置の荷重分配効果は、複合型プラネット・ギヤを通してトルクを伝送することに関与するすべてのコグ・フランクの摩耗を低減し、それによって、装置全体の耐用寿命を大きく改善する。
【0049】
また、トランスミッション装置は、コンプライアント・ギヤとして理解され得、コンプライアント・ギヤは、衝撃吸収のために、噛み合っているギヤとスプラインとの間に必要とされる公差を低減するために、および、騒音を低減するために、使用されるように配置されており、このトランスミッション装置の中の可能性のあるコンプライアンス機能が、以前に公知のコンプライアント・ギヤよりも比較的はるかに高いとしても、半径方向の剛性が危険にさらされないようになっている。高いコンプライアンス機能は、複合型のステップ式および積層型のプラネタリ・ギヤボックスの中で使用されるように十分に適合されており、また、たとえば、本発明による2つのステップ式および積層式の複合型ギヤボックスから構成されるドライブ・トレインの中で、高い速度比に起因して、ドライブ・トレインの中の入力トルクと出力トルクとの間の非常に高いコンプライアンス性質を発生させることになる。これらのギヤ装置が風車の中で使用される場合には、それらは、たとえば、乱れた風の間に、タービン、ロータ、またはプロペラと発電機との間に頻繁に起こるトルク方向の変化をかなりの程度まで滑らかにし、さらに防止することになる。
【0050】
トランスミッション装置の衝撃吸収特性を満たすことは、トランスミッション装置が、1次プラネット・ギヤと2次プラネット・ギヤとの間で、特定の最小の弾力的な相対回転を可能にするように配置されることを必要とすることが留意されるべきである。これは、トランスミッション装置が、入力軸の上の激しく変動するトルクによって引き起こされる遅延および加速を低減することができることが必要である。好ましくは、トランスミッション装置は、複合型プラネット・ギヤ装置に関して意図された最大トルクが印加されるときに、少なくとも1度の、好ましくは、2度から4度の間の、弾力的な相対回転を可能にするように配置されるべきであることが分かった。
【0051】
それぞれのトランスミッション装置は、第1のプラネット歯と第2のプラネット歯との間でトルクを伝達するように配置されている複数の弾力的な部材を含むことが可能である。
【0052】
好ましくは、弾力的な部材は、1次プラネット・ギヤよりも大きい直径を有する2次プラネット・ギヤに配置されている。このようにして、弾力的な部材によって吸収される必要のある力を低減することが可能である。2次プラネット・ギヤは、1次プラネット・ギヤよりも大きい直径を有するので、弾力的な部材が、1次プラネット・ギヤに配置されているか、または、1次プラネット・ギヤおよび2次プラネット・ギヤを軸線方向に接続するプラネット・シャフトに配置されているとした場合よりも、回転軸線から長い距離に弾力的な部材を配置することが可能である。この距離を増加させることによって、1次プラネット・ギヤと2次プラネット・ギヤとの間で伝達されるトルクは、それに対応して低減された、弾力的な部材に作用する力をもたらすことになる。これは、弾力的な部材の材料特性を選ぶときに、より高い自由度を可能にし、スペース要件を低減し、弾力的な部材の耐用寿命を引き伸ばす。
【0053】
それぞれのトランスミッション装置は、ドライブ・ディスクおよびコグ・ホイール部材を含むことが可能であり、ドライブ・ディスクは、1次プラネット・ギヤを2次プラネット・ギヤに接続するプラネット・シャフトに固定されており、ドライブ・ディスクには、ドライブ・ディスクに固定されている複数の軸線方向に延在するピンが設けられており、コグ・ホイール部材は、周囲歯を備えるとともにトランスミッション・ディスクを含み、トランスミッション・ディスクには、複数のピンに対応する複数の開口部が設けられており、環状の弾力的な部材は、それぞれの開口部の中に受け入れられており、それぞれのピンは、それぞれの弾力的な部材の中に受け入れられている。
【0054】
そのような場合、コグ・ホイール部材の周囲歯は、2次プラネット歯を形成することが可能であり、ドライブ・ディスクは、プラネット・シャフトによって1次プラネット・ギヤに回転しないように固定され得る。
【0055】
有利には、プラネット・ギヤ・ユニットは、軸受とともに、プラネット・ギヤ・モジュールを形成することが可能である。そのようなモジュールは、単一のコンポーネントとして、容易に装着および取り外され得る。
【0056】
プラネット・ギヤ・モジュールは、複合型プラネット・ギヤ装置の主本体部またはハウジングに軸受を固定するための少なくとも1つの軸受ハブをさらに含むことが可能である。
【0057】
それぞれの弾力的な部材は、環状のゴム・ブッシングを含むことが可能である。
それぞれの弾力的な部材は、内側金属製スリーブおよび外側金属製スリーブをさらに含むことが可能である。
【0058】
複合型プラネット・ギヤ装置は、偶数のプラネット・ギヤ・ユニットを含む積層式のプラネット・ギヤ装置であることが可能であり、1次プラネット・ギヤは、第1の半径方向の平面の中に配置されており、2次プラネット・ギヤのうちの半分は、第2の半径方向の平面の中に配置されており、2次プラネット・ギヤのうちの半分は、第3の半径方向の平面の中に配置されており、第3の半径方向の平面は、第2の半径方向の平面よりも第1の半径方向の平面から大きい距離に配置されている。
【0059】
複合型プラネット・ギヤ装置が積層式でない場合、それは、偶数または奇数のプラネット・ギヤ・ユニットを含むことが可能である。
トランスミッション装置は、限定された弾力的な回転を両方の回転方向に等しく可能にするように配置され得る。このようにして、複合型プラネット・ギヤ装置は、入来シャフトに印加されるトルクの激しい変動、および、複合型プラネット・ギヤが両方の回転方向に駆動されるときに、送出シャフトに十分に等しく印加される荷重の激しい変動を吸収することができることになる。さらに、複合型プラネット・ギヤ装置は、いずれかの回転方向に駆動されるときに、十分に等しく激しい遅延および加速を吸収することができることになる。
【0060】
弾力的な部材は、予荷重がかけられないか、または、両方の回転方向に等しく予荷重がかけられ得る。これは、とりわけ、単独で見たときに単一のプラネット・ギヤ・ユニットのそれぞれの弾力的な部材に当てはまる。いくつかのプラネット・ギヤ・ユニットが、複合型プラネット・ギヤ装置を形成するように装着されるときに、正確な位置決めなどのようないくつかの用途において、反対側の回転方向に作用するコグ・フランク間に特定の全体的な予荷重を生成することが望ましい可能性がある。次いで、装着の間に、異なるプラネット・ギヤ・ユニットを角度的に調節することが可能であり、複数のプラネット・ギヤ・ユニットの半分の弾力的な部材が、一方の回転方向にいくらか予荷重がかけられ、一方、プラネット・ギヤ・ユニットの残りの半分の弾力的な部材が、他方の回転方向に等しく予荷重がかけられるようになっている。しかし、複合型プラネット・ギヤ装置のそのような全体的な予荷重は、比較的低く維持されるべきである。その理由は、そのような予荷重は、弾力的な部材を圧縮し、それによって、それらの衝撃吸収能力を対応する程度まで低減することになるからである。また、複合型プラネット・ギヤ装置のそのような全体的な予荷重は、コグ・フランクにかかる荷重を増加させることになることが留意されるべきである。それによって、複合型プラネット・ギヤ装置によって伝達され得る最大トルクを低減すること、または、関与するギヤおよび軸受の寸法を増加させること、もしくは、代替的にコグ・フランクの荷重軸受能力を増加させることのいずれかが必要である。
【0061】
本発明は、ドライブ・トレイン装置にさらに関係し、ドライブ・トレイン装置は、第1のギヤ・ステップを形成する上記に説明されているような第1の複合型プラネット・ギヤ装置と、ギヤ装置の第2のギヤ・ステップを形成する上記に説明されているような第2の複合型ギヤ装置とを含む。
【0062】
第1の複合型プラネット・ギヤ装置のサン・ホイールは、次いで、第2の複合型ギヤ装置のリング・ギヤに接続され得る。
第2の複合型プラネット・ギヤ装置のサン・ホイールは、発電機、モータ、または別のユーティリティ・アプライアンスのロータにさらに接続され得る。
【0063】
代替的に、ドライブ・トレイン装置は、3つ以上の複合型プラネット・ギヤ・ステップを含むことが可能であり、最後のギヤ・ステップは、サン・ホイールを含み、サン・ホイールは、発電機、モータ、または別のユーティリティ・アプライアンスに接続されている。
【0064】
発電機、モータ、または別のユーティリティをサン・ホイールに接続することによって、または、代替的に、ユーティリティの一部を形成することが可能であるサン・ホイールによって、サン・ホイールに接続されているかまたはサン・ホイールを含む、ユーティリティのシャフトが、サン・ホイールと噛み合う2次プラネット・ギヤによって複数の方向に半径方向に支持されることになることを、もたらす。たとえば、3つのプラネット・ギヤ・ユニットを含む複合型プラネット・ギヤにおいて、サン・ホイールは、3つの方向に半径方向に支持されることになる。それに対応して、6つのまたは8つのプラネット・ギヤ・ユニットを含む積層式の複合型プラネット・ギヤ装置において、サン・ホイールは、対応する数の半径方向に支持されている。これは、それが接続されているユーティリティにかかる半径方向の荷重を低減するという点において大きな利点を提供し、また、高い速度の用途においてとりわけ有利である。特に、そのような半径方向の支持は、ユーティリティ、および、ユーティリティの中に含まれる追加的な軸受の耐用寿命を大きく改善する。
【0065】
ドライブ・トレイン装置は、ハウジングを含むことが可能であり、ハウジングは、少なくとも、第1の複合型ギヤ装置を受け入れる第1のコンパートメントと、第2の複合型ギヤ装置を受け入れる第2のコンパートメントとに分割されており、コンパートメントは、異なる潤滑媒体がそれぞれのコンパートメントに役立つことを可能にするために、互いに封止されている。
【0066】
第1のコンパートメントおよび第2のコンパートメントのうちの少なくとも1つは、少なくとも2つのサブ・コンパートメントに分割され得る。
ドライブ・トレイン装置は、入力シャフトをさらに含むことが可能であり、入力シャフトは、第1の管状のシャフト部材と、第2の管状のシャフト部材とを含み、第1の管状のシャフト部材は、第1の複合型ギヤ装置のリング・ギヤに接続されており、第2の管状のシャフト部材は、第1の管状のシャフト部材の周りに同軸に配置されており、環状の装着ディスクによって第1の管状のシャフト部材に固定されており、第2の管状のシャフト部材は、軸受の中で、ドライブ・トレイン装置のハウジングに軸支されている。
【0067】
第1の管状のシャフト部材は、比較的弱く、また、装着ディスクから第1の複合型ギヤ装置のリング・ギヤへトルクを主に伝達するように配置され得、第2の管状のシャフト部材は、ハウジングとともに、装着ディスクからの軸線方向の力、半径方向の力、および曲げ力を吸収するように配置され得る。
【0068】
これは、ドライブ・ディスクに接続されている入力シャフトまたは出力シャフトが、単にドライブ・トレイン装置に接続されることによって、半径方向および軸線方向に安定して支持されることになるという点において、大きな利点を提供する。このようにして、ドライブ・トレイン装置の外側に追加的な軸受または他の支持構造体を配置する必要性が低減され、そして、それは、さまざまな用途においてドライブ・トレインを利用するときに、スペース要件およびコストを低減する。たとえば、軸線方向および半径方向のスペース要件は、風車または電気自動車のダイレクト・ドライブ・トランスミッションにおいて、ドライブ・トレイン装置または複合型プラネット・ギヤ装置を利用するときに、大きく低減され得る。
【0069】
管状のまたは中空のシャフトの配置は、このシャフトの内部スペースが、カップリングなどのような、シャフトに接続されている外部ユーティリティの部分を収容するために利用され得ることを、さらに可能にする。また、これは、全体の据え付けのスペース要件を低減することに貢献する。
【0070】
風力タービンなどのようなタービンは、装着ディスクに固定され得る。
ドライブ・トレイン装置において、第1の複合型プラネット・ギヤ装置、第2の複合型プラネット・ギヤ装置、ならびに、適用可能なときには、発電機および入力シャフトは、モジュール式に組み立てられおよび分解されるモジュール・パー・モジュール(module per module)になるように配置された別々のモジュールとして配置され得る。
【0071】
ドライブ・トレイン装置は、装着ディスクに装着されているタービンを制御するために、電気的なワイヤおよび/または制御流体を導くためのパイプなどのような制御手段を含むことが可能であり、その制御手段は、第1のギヤ・ステップ、または、最後のギヤ・ステップではない別のギヤ・ステップから、入力シャフトの第1の管状のシャフト部材を軸線方向に通って、装着ディスクへ延在している。
【0072】
複合型プラネット・ギヤおよびギヤ装置のさらなる目的および利点は、実施形態の以下の詳細な説明から、および、添付の特許請求の範囲から明らかである。
一般的に、特許請求の範囲の中で使用されているすべての用語は、本明細書で明示的に別段の定めがなければ、当技術分野におけるそれらの通常の意味にしたがって解釈されるべきである。「1つの(a/an/the)エレメント、装置、コンポーネント、手段、ステップなど」へのすべての参照は、明示的にそうでないことが述べられていなければ、エレメント、装置、コンポーネント、手段、ステップなどの少なくとも1つのインスタンスを参照するものとして素直に解釈されるべきである。本明細書で開示されている任意の方法のステップは、明示的に述べられていなければ、開示されている正確な順序で実施される必要はない。
【0073】
ここで、本発明は、例として、添付の図面を参照して説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1a】風車のためのドライブ・トレインを図示する斜視図であり、ドライブ・トレインが本発明の実施形態によるギヤ装置を含むことを示す図。
【
図1b】
図1aに示されているドライブ・トレインの分解斜視図。
【
図2】本発明の1つの実施形態による簡単化された複合型プラネット・ギヤの概略斜視図。
【
図3】本発明による複合型プラネット・ギヤの中で使用され得る衝撃吸収プラネット・ユニットの例の分解斜視図。
【
図4】本発明による3つのステップ式の複合型プラネット・ギヤ装置の概略の簡単化された上面図。
【
図5】
図4に示されている3つのステップ式の複合型プラネット・ギヤ装置の斜視的でより完全な半断面図。
【
図6】本発明による6つのステップ式の複合型プラネット・ギヤ装置の概略の簡単化された上面図。
【
図7】
図6に示されている6つのステップ式の複合型プラネット・ギヤ装置の斜視的でより完全な半断面図。
【
図8】発電機モジュールに装着されているときの、6つのステップ式および積層式の複合型プラネット・ギヤ装置の斜視的な半断面図。
【
図9】本発明による8つのステップ式および積層式の複合型プラネット・ギヤ装置の概略の簡単化された半断面図。
【
図10】
図9に示されている8つのステップ式および積層式の複合型プラネット・ギヤ装置の斜視的でより完全な半断面図。
【
図11】本発明によるドライブ・トレイン装置の一部を形成し得る入力モジュールのいくつかのパーツを図示する斜視図。
【
図12】いくつかのパーツが除去されている状態の
図10に示されている8つのステップ式および積層式の複合型プラネット・ギヤ装置を図示する斜視的な半断面図。
【
図13】入力モジュールを図示する斜視的な断面図。
【
図14】代替的な入力モジュールを図示する対応図。
【
図15】本発明の実施形態によるドライブ・トレイン装置全体およびその潤滑代替例を通る斜視的な半断面図。
【
図16】本発明の実施形態による潤滑および制御代替例の詳細を図示する、拡大されたスケールの斜視図。
【
図17】本発明のそれぞれの代替的な実施形態による、8つのステップ式および積層式の複合型プラネット・ギヤ装置の概略の簡単化された上面図。
【
図18】本発明のそれぞれの代替的な実施形態による、8つのステップ式および積層式の複合型プラネット・ギヤ装置の概略の簡単化された上面図。
【発明を実施するための形態】
【0075】
ここで、本発明は、添付の図面を参照して、より完全に以降で説明され、図面では、本発明の特定の実施形態が示されている。しかし、本発明は、多くの異なる形態で具現化され得、本明細書に記述されている実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、例として提供されており、本開示が徹底的で完全なものになり、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるようになっている。同様の番号は、説明の全体を通して同様のエレメントを参照する。
【0076】
図1aおよび
図1bは、風車のためのモジュール式のドライブ・トレイン装置1を図示している。ドライブ・トレイン1は、入力モジュール2、8つのステップ式および積層式の複合型プラネット・ギヤ装置である第1のギヤ・ステップ・モジュール3、および、6つのステップ式および積層式の複合型プラネット・ギヤ装置である第2のギヤ・ステップ・モジュール4、ならびに、最後に発電機モジュール5を含む。入力モジュール2は、ベース・フレーム6に固定されており、ベース・フレーム6は、風車(図示せず)のナセル(図示せず)に固定され得る。ドライブ・トレインは、入力モジュール2から発電機モジュール5へ中心に延在する長手方向軸線を示す。入力モジュール2は、装着ディスク2’を含み、装着ディスク2’は、長手方向軸線の周りに回転可能であり、また、半径方向に延在する風力タービン・ブレード(図示せず)の固定を可能にするように配置されている。
【0077】
第1のギヤ・ステップ・モジュール3は、スプライン・シャフト3’を含み、スプライン・シャフト3’は、入力モジュール2の対応するスプライン(図示せず)によって、中空の入力シャフト(図示せず)の中へ挿入されている。入力シャフトは、タービンから第1のモジュール3へ回転移動およびトルクを伝達するために装着ディスク2’に接続されている。第2のギヤ・ステップ・モジュール4は、入力ギヤ4’を含み、入力ギヤ4’は、装着されるときに、第1のギヤ・ステップ・モジュール3の中へ挿入される。さらに詳細に下記に説明されるように、第2のギヤ・ステップ・モジュール4の入力ギヤ4’は、第1のギヤ・ステップ・モジュール3の出力サン・ホイールを形成している。
【0078】
発電機モジュール5には、発電機入力ギヤ5’が設けられており、発電機入力ギヤ5’は、同じように、第2のギヤ・ステップ・モジュール4の中へ挿入されており、そこで、第2のギヤ・ステップ・モジュールのサン・ホイールを形成している。発電機モジュール5には、ブレーキ・ディスク5’’がさらに設けられており、ブレーキ・ディスク5’’は、発電機モジュール5のロータ(図示せず)に固定されており、そして、ロータは、発電機入力ギヤ5’に接続されている。たとえば、クランピング摩擦デバイス(図示せず)によって、ブレーキング・ディスク5’’にブレーキ力に印加することによって、したがって、発電機ロータ、ドライブ・トレイン1全体、および風力タービンの回転を遅くすることが可能である。
【0079】
ドライブ・トレイン装置1全体のこのモジュール式の配置は、ドライブ・トレインの組み立て、分解、およびメンテナンスに関して、大きな利点を提供する。異なるモジュールの軸線方向の互いの中への挿入および互いに除去を可能にする配置は、モジュールを補修し、修理し、および交換するために必要とされるスペースを大きく低減する。それによって、ギヤ・トレインを収容するナセルの内部スペースが、最小に維持され得る。
【0080】
図2は、1つの実施形態による複合型プラネット・ギヤの一般的な概念を概略の簡単化されたように図示しており、複合型プラネット・ギヤは、
図1aおよび
図1bに示されているギヤ・モジュール3、4のいずれかまたは両方の中で使用され得る。
【0081】
図2に図示されている複合型プラネット・ギヤ100は、単一のリング・ギヤ110、複数のプラネット・ギヤ・ユニット120、および、単一のサン・ホイール130を含む。明瞭化のために、1つだけのプラネット・ギヤ・ユニットが
図2に示されているが、複合型プラネット・ギヤ100は、リング・ギヤ110からサン・ホイール130へトルクを伝達するときに、同時に係合しているいくつかの対のギヤ・フランクの荷重の所望の分配を実現するために少なくとも2つのプラネット・ギヤ・ユニットを含むべきであることが認識される。非積層式の複合型プラネット・ギヤを含む実施形態では、プラネット・ギヤ・ユニットの数は、典型的に3つまたは4つである。積層式の複合型プラネット・ギヤでは、プラネット・ギヤ・ユニットの数は、2倍になることが可能であり、したがって、典型的に、6つまたは8つのプラネット・ギヤ・ユニットをもたらす。リング・ギヤ、プラネット・ギヤ・ユニット、およびサン・ホイールのそれぞれのギヤ・フランクによって支持されることになる荷重は、したがって、プラネット・ギヤ・ユニットの数によって割られる合計荷重まで低減される。
【0082】
図2において見られるように、プラネット・ギヤ・ユニット120は、1次プラネット・ギヤ121および2次プラネット・ギヤ122をそれぞれ含み、1次プラネット・ギヤ121は、リング・ギヤ110と噛み合う1次歯121’を有しており、2次プラネット・ギヤ122は、1次プラネット・ギヤ121に軸線方向に接続されている。2次プラネット・ギヤ122には、2次歯122’が設けられており、2次歯122’は、サン・ホイールと噛み合っている。本発明によれば、プラネット・ギヤ・ユニットは、衝撃吸収トランスミッション装置をさらに含み、衝撃吸収トランスミッション装置は、2次歯122’が1次歯121’に対して限定された弾力的な回転を行うことを可能にする。
【0083】
図3は、そのような衝撃吸収トランスミッション・ユニットがどのように配置され得るかの例を図示している。
図3に示されている例によれば、トランスミッション・ユニット20は、円形のドライブ・ディスク21を含み、ドライブ・ディスク21は、プラネット・シャフト22に回転しないように固定されている。プラネット・シャフト22には、スプライン(図示せず)が設けられており、ドライブ・ディスク21および1次プラネット・ギヤ(
図3には示されていない)がプラネット・シャフト22に回転しないように固定され得るようになっている。
【0084】
ドライブ・ディスク21には、複数の円筒形状のピン23が設けられており、ピン23は、ドライブ・ディスク21に固定されており、プラネット・シャフト22に平行に延在している。ピン23は、円周方向に均一に分配されており、示されている例では、9個のそのようなピン23が、ドライブ・ディスク21の上に配置されている。それぞれのピン23は、それぞれの弾力的な部材24の中に受け入れられている。弾力的な部材24は、天然ゴムまたは合成ゴムなどのような、弾力的な弾性材料を含む。それぞれの弾力的な部材の弾力的な弾性材料は、円筒形状のスリーブとして形成されており、円筒形状のエンベロープ表面、および、軸線方向に中心に延在する円筒形状のボアを有する。弾力的な部材は、内側の円筒形状の金属スリーブ24’、および、外側の円筒形状の金属スリーブ24’’をさらに含み、内側の円筒形状の金属スリーブ24’は、円筒形状のボアの中に受け入れられ、外側の円筒形状の金属スリーブ24’’は、弾力的な弾性材料スリーブのエンベロープ表面を取り囲んでいる。内側金属製スリーブ24’および/または外側金属製スリーブ24’’は、好ましくは、圧入によって弾力的な弾性材料に嵌め込まれており、弾力的な弾性材料が圧縮され、それによって、装着されるときにプリテンションまたは予荷重がかけられるようになっている。円筒形状の弾力的な部材24のそのような対称的な半径方向の予荷重は、弾力的な部材がプラネット・ギヤ・ユニット(弾力的な部材がその中に含まれている)の両方の回転方向に等しく予荷重がかけられることをもたらすことになることが留意されるべきである。弾力的な部材24の数、弾力的な弾性材料の寸法および特性、ならびに、圧縮の程度を選択することによって、印加されるトルクと、1次歯と2次歯との間で許容される相対回転の程度との間の比を調節することが可能である。
【0085】
トランスミッション・ユニット20は、周囲歯25’を備えた環状のコグ・ホイール部材25、および、円形のトランスミッション・ディスク26をさらに含み、トランスミッション・ディスク26は、複数の円筒形状の貫通開口部26’、および、プラネット・シャフト22を受け入れるための中心の円筒形状のボア26’’を備えている。貫通開口部26’の数および位置決めは、ピン23の数および位置決めに対応している。貫通開口部26’は、弾力的な部材24が締まり嵌めでその中に受け入れられ得るように、さらに寸法決めされている。環状のスライド軸受29が、ドライブ・ディスク21および環状のコグ・ホイール部材25との間に配置され、それらの間の相対回転を可能にするようになっている。
【0086】
環状のコグ・ホイール部材25およびトランスミッション・ディスク26には、装着ボルト28の受け入れのための複数の相互に対応する装着孔部25’’、26’’’が設けられている。トランスミッション・ディスク26の装着孔部26’’’は、トランスミッション・ディスク26の周囲の方向に細長くなっており、環状のコグ・ホイール部材25とトランスミッション・ディスク26との間の相対的な角度位置が、装着ボルト28を締め付ける前に調節され得るようになっている。これは、重要な特徴である。その理由は、それが、プラネット・シャフト23に固定されている1次プラネット・ギヤ21と環状のコグ・ホイール部材25との間の、すなわち、1次プラネット歯と2次プラネット歯との間の相対的な角度位置が、装着されるときに調節されることを可能にするからである。ギヤ装置全体の据え付けの間に、そのような公称角度調節が、ドライブ・トレインの中に含まれるすべてのトランスミッション・ユニットに関して実施され得、同時に係合しているすべてのドライブ・トレイン・コグ・フランクが、等しい公称荷重を経験することができるようになっている。
【0087】
また、トランスミッション・ユニット20は、中心軸受27を含み、中心軸受27は、ドライブ・ディスク21とトランスミッション・ディスク26との間に、プラネット・シャフト22の周りに同軸に配置されている。軸受27は、スライド軸受またはローラ軸受であることが可能であり、それは、ドライブ・ディスク21とトランスミッション・ディスク26との間の相対的な小さい回転移動を可能にする。
【0088】
衝撃吸収トランスミッション・ユニット20の上述の実施形態では、弾力的な部材24は、市販されている標準的なブッシングから形成されている。しかし、1次プラネット歯と2次プラネット歯との間の限定された弾力的な相対回転は、多くの他の方法でも達成され得る。たとえば、ドライブ・ディスクには、軸線方向に突出する支持部材および半径方向に延在する支持部材が設けられ得、それらは、概してドライブ・ディスクの円周方向に面している対向する第1の支持表面を形成している。トランスミッション・ディスクは、それぞれの第1の支持表面に面する対応する第2の支持表面を含むことが可能である。圧縮スプリング、リーフ・スプリング、または弾性ブッシングなどのような、弾性部材が、対向する第1および第2の支持表面のそれぞれの対の間に配置され得、トランスミッション・ディスクおよび環状のコグ・ホイール部材がドライブ・ディスクおよび1次ギヤに対して限定的におよび弾性的に回転されることを可能にするようになっている。
【0089】
プラネット・ギヤ・ユニットの中に含まれている衝撃吸収トランスミッション・ユニットの異なる実施形態によって、印加されるトルクと最大の相対回転との間の比を選ぶことが可能である。たとえば、1次プラネット歯と2次プラネット歯との間の相対回転が最大トルクにおいておおよそ2°-4°となるように、トランスミッション・ユニットを設計することが適切である可能性がある。しかし、また、他のトルクと相対回転との比も使用され得る。
【0090】
図4および
図5は、本発明による、例証する非積層式の複合型プラネット・ギヤ200を図示している。そのようなプラネット・ギヤは、ギヤ装置の中の単一のステップ・ギヤ、第1のステップ・ギヤ、第2のステップ・ギヤ、または、追加的なステップ・ギヤとして使用され得る。示されている例では、複合型プラネット・ギヤ200は、たとえば、単一ステップ式プラネタリ・ギヤの使用として図示されており、または、ドライブ・トレインに関する第1のギヤ・モジュールとして適合され得る。
【0091】
複合型プラネット・ギヤ200は、スプライン入力シャフト203を含む。入力シャフト203は、リング・ホイール担持ディスク205に固定され、リング・ホイール担持ディスク205を通って延在しており、そして、リング・ホイール担持ディスク205は、リング・ホイール210に固定されている。3つの衝撃吸収プラネット・ギヤ・ユニット220は、リング・ホイール210およびサン・ホイール230に噛み合い接触して配置されている。衝撃吸収プラネット・ギヤ・ユニット220は、
図2および
図3を参照して上記に説明されているプラネット・ギヤ・ユニット120のように構築されており、ここでは、さらに詳細には説明されていない。
【0092】
プラネット・ギヤ・ユニット220のプラネット・シャフト223は、軸受224の中でプラネット・キャリア225に軸支されており、プラネット・キャリア225は、静止パーツを形成している。また、入力シャフト203は、軸受226の中でプラネット・キャリア225に軸支されている。それぞれのプラネット・ギヤ・ユニット220の1次プラネット・ギヤ221は、リング・ホイール210と噛み合っており、2次プラネット・ギヤ222は、サン・ホイール230と噛み合っている。サン・ホイール230は、第1のステップ出力シャフト231に固定されており、第1のステップ出力シャフト231は、中空の入力シャフト203の内側の軸受232の中に軸支されている。
【0093】
それぞれの衝撃吸収プラネット・ギヤ・ユニット220は、軸受224および軸受ハブ224aとともに、衝撃吸収プラネット・ギヤ・モジュールを形成している。軸受ハブ224aは、環状の装着部材を形成しており、環状の装着部材によって、軸受224の外周部がプラネット・キャリアに固定され得る。軸受ハブ224aは、1次プラネット・ギヤ221よりも大きい直径を有しており、軸受224および軸受ハブ224aが除去されたときに、プラネット・キャリア225の中の残りの装着孔部が、1次プラネット・ギヤ221の直径よりも大きい直径を有するようになっている。このようにして、プラネット・ギヤ・ユニット220と、その軸受224と、軸受ハブ224aとを含むプラネット・ギヤ・モジュールは、単一の複合コンポーネントとして、下方から軸線方向に装着および取り外され得る。プラネット・ギヤ・モジュールは、組み立て、分解、およびメンテナンスを容易にするための少なくとも1つのスプライン配置をさらに含む。軸受224が1次プラネット・ギヤ221よりも大きい直径を有する場合には、軸受ハブ224aは、プラネット・キャリア225に対する軸受224の別の固定具によって交換され得、その固定具は、ギヤボックス構築体のハウジングを形成する主本体部の一部である。そのような場合、衝撃吸収プラネット・ギヤ・ユニットおよび軸受は、単独でプラネット・ギヤ・モジュールを形成し、それは、単一の複合コンポーネントとして、容易に装着および取り外され得る。
【0094】
複合型プラネット・ギヤは、側壁部241および底壁部242を含むハウジング240をさらに含む。ハウジング240は、静止パーツを形成しており、それは、プラネット・キャリア225と一体に形成されるか、または、プラネット・キャリア225に対して固定されている。ハウジング240は、スライド軸受243を備えたリング・ホイール担持ディスク205、および、軸受232を備えた出力シャフト231とともに、内部スペースを密封して囲んでいる。このようにして、ハウジング240を備えた複合型プラネット・ギヤ200は、モジュールを形成している。したがって、ハウジング240は、油などのような潤滑媒体を含有することが可能であり、潤滑媒体は、モジュールの中に入れられており、したがって、それは、ドライブ・トレイン装置全体の他のパーツおよびモジュールの中で使用される潤滑媒体とは異なっていてもよい。また、第1のモジュールは、軸線方向の挿入および引き抜きによって、ドライブ・トレイン装置の入力モジュールに、および、それから、容易に装着され得る。
【0095】
図6および
図7は、本発明による6つのステップ式および積層式の複合型プラネット・ギヤ装置300を図示している。そのような積層式のプラネット・ギヤ装置は、
図1bに示されているような、または、他のギヤ装置の中に示されているような、単一の第1のギヤ・ステップ・モジュールまたは第2のギヤ・ステップ・モジュールとして使用され得る。示されている例では、積層式の複合型プラネット・ギヤ300は、第2のギヤ・ステップとしての使用に関して図示されている。したがって、積層式の複合型ギヤ300は、
図1aおよび
図1bに示されているギヤ・モジュール4に対応している。
【0096】
6つのステップ式および積層式の複合型プラネット・ギヤ300は、中空の入力シャフト304の上に装着されている入力ギヤ303を含む。上記に説明されているように、その入力ギヤは、
図1aおよび
図1bに示されているドライブ・トレイン1の中の第1のギヤ・モジュール3のサン・ホイールに対応している。入力シャフト304は、リング・ホイール担持ディスク305に固定されており、リング・ホイール担持ディスク305を通って延在しており、そして、リング・ホイール担持ディスク305は、リング・ホイール310に固定されている。入力シャフト304は、強力な軸受326の中でプラネット・キャリア325に軸支されている。6つの衝撃吸収プラネット・ギヤ・ユニット320が、リング・ホイール310およびサン・ホイール330と噛み合い接触して配置されている。プラネット・ギヤ・ユニット320は、一般的に、
図2および
図3を参照して上記に説明されているプラネット・ギヤ・ユニットとして構築されている。しかし、
図6および
図7に示されている積層式の複合型プラネット・ギヤ300において、プラネット・ギヤ・ユニット320のセットは、3つの第1のプラネット・ギヤ・ユニット320’、および、3つの第2のプラネット・ギヤ・ユニット320’を含む。第1のプラネット・ギヤ・ユニット320’および第2のプラネット・ギヤ・ユニット320’’のプラネット・シャフト323’、323’’は、等しい長さであり、また、
図3および
図4に示されているプラネット・シャフト220よりも長くなっている。第2のギヤ・ユニット320’’の2次プラネット・ギヤ322’’が、第1のギヤ・ユニット320’の2次プラネット・ギヤ322’が配置されている半径方向の平面よりも、1次ギヤ321’、321’’から大きい距離に配置されている半径方向の平面に配置されているという点のみにおいて、第1のプラネット・ギヤ・ユニット320’および第2のプラネット・ギヤ・ユニット320’’は異なっている。
【0097】
プラネット・ギヤ・ユニット320’、320’’のプラネット・シャフト323’、323’’は、軸受324の中でプラネット・キャリア325に軸支されている。それぞれのプラネット・ギヤ・ユニット220’、320’’の1次プラネット・ギヤ321’、321’’は、リング・ホイール310と噛み合っている。
図7に示されている配置において、補助センタリング・シャフト350が据え付けられている。補助センタリング・シャフト350は、センタリング・デバイス351を形成する環状のフランジによって支持されている。入力シャフト304は、センタリング・デバイス351に接触することなく、センタリング・デバイス351まで延在している。センタリング・シャフト350のエンベロープ表面は、サン・ホイールを形成しており、2次プラネット・ギヤ322’、322’’は、異なる軸線方向の平面において、センタリング・シャフトのサン・ホイールと噛み合っている。そのような補助センタリング・シャフト350は、衝撃吸収プラネット・ユニット320’、320’’の装着および公称調節のための一時的な支援手段として使用され得る。
【0098】
図5に示されている実施形態と同様に、プラネット・ギヤ・ユニット320’、320’’は、軸受324および軸受ハブ324aとともに、プラネット・ギヤ・モジュールを形成している。
【0099】
6つのステップ式および積層式の複合型プラネット・ギヤ300は、ハウジング340をさらに含み、ハウジング340は、側壁部241および底壁部342を含み、底壁部342には、中心開口部が設けられている。ハウジング340は、ギヤ・ステップ・モジュールを互いに接続するためのフランジ・ユニット340’を形成している。
【0100】
図8は、発電機モジュール500または5がそれに装着されたときに、
図1aおよび
図1bの中のドライブ・トレイン1の中の第2のギヤ・ステップ・モジュールであるとして、6つのステップ式および積層式の複合型プラネット・ギヤ装置300を示している。
図8において見られるように、
図7に示されている補助センタリング・シャフト350は、除去されており、発電機モジュール500の入力シャフト501が、中心のフランジ付き開口部333を通して挿入されている。発電機の入力シャフト501は、シャフトの両端に配置された軸受によって確実に支持されており、また、突出する端部において、サン・ホイール330を形成する外部歯が設けられている。装着されているときには、サン・ホイール330は、2次プラネット・ギヤ322’、322’’と噛み合っている。発電機モジュール500は、環状のフランジ502をさらに含み、環状のフランジ502は、底壁部342の中に配置されているフランジ付き開口部333の中に受け入れられている。このようにして、ハウジング340は、スライド軸受343を備えたリング・ホイール担持ディスク305、底壁部342、および発電機シャフト501、およびフランジ502とともに、内部スペースを密封して囲んでいる。したがって、ハウジング340を備えた積層式の複合型プラネット・ギヤ300は、
図1bに示されている第2のギヤ・ステップ・モジュール4に対応する第2のギヤ・ステップ・モジュールを形成している。ハウジング340は、油などのような潤滑媒体を含有することが可能であり、潤滑媒体は、モジュールの中に入れられており、したがって、それは、ドライブ・トレイン装置全体の他のパーツおよびモジュールの中で使用される潤滑媒体とは異なっていてもよい。また、第2のギヤ・ステップ・モジュールは、軸線方向の挿入および引き抜きによって、ドライブ・トレイン装置の第1のギヤ・ステップ・モジュールに、および、それから、容易に装着され得る。それに対応して、サン・ホイール330によって構成される発電機入力ギヤを含む発電機モジュール500は、それが衝撃吸収ユニット320の組み立ておよび適合に使用されると、補助センタリング・シャフト350の除去の後に、第2のギヤ・ステップ・モジュールに、および、それから、容易に装着され得る。したがって、発電機モジュールは、底壁部342の中の孔部を通した軸線方向の挿入および引き抜きによって、第2のギヤ・ステップ・モジュールに容易に装着され、また、第2のギヤ・ステップ・モジュールから除去され得る。
【0101】
図9および
図10は、8つのステップ式および積層式の複合型プラネット・ギヤ装置400を図示しており、それは、
図1aおよび
図1bのドライブ・トレイン1の中の第1のギヤ・モジュールを表している。この積層式の複合型プラネット・ギヤ400は、
図6および
図7に示されている積層式の複合型プラネット・ギヤ300と同様である。しかし、プラネット・ギヤ400は、それが8つの衝撃吸収プラネット・ユニット420を含むという点において、プラネット・ギヤ300とは異なっている。プラネット・ユニット420のセットは、4つの第1のプラネット・ユニット420’、および、4つの第2のプラネット・ユニット420’’を含む。
図6および
図7に示されているプラネット・ユニット320と同じように、第2のプラネット・ユニット420’’の2次プラネット・ギヤ422’’は、第1のプラネット・ユニット420’の2次プラネット・ギヤ422’よりも、1次ギヤ421’、421’’から大きい軸線方向の距離に配置されている。
【0102】
図10において見られるように、積層式の複合型プラネット・ギヤ400は、入力シャフト404を含み、入力シャフト404は、駆動リング・ホイール担持ディスク405に固定されており、駆動リング・ホイール担持ディスク405を通って延在している。入力シャフト404は、強力な軸受426の中に軸支されている。入力シャフト404は、センタリング・ユニット450に向けて軸線方向に延在するが、センタリング・ユニット450に接触しておらず、センタリング・ユニット450は、ハウジング440にリジッドに固定されている。センタリング・ユニット450は、電気的なワイヤ451およびパイプ452などのような制御手段を受け入れる複数の貫通穴を含み、制御手段は、中空の入力シャフト404の中へ、および、中空の入力シャフト404を通って軸線方向に延在している。電気的なワイヤ451およびパイプ452は、風力タービン(図示せず)のハブに配置されている調整デバイスに接続されている。このようにして、調整信号および油圧流体は、異なる機能、たとえば、風力タービンのピッチを調整するために、ドライブ・トレイン装置全体の第1のギヤ・ステップから風力タービンへ導かれ得る。第1のギヤ・ステップに配置されているセンタリング・ユニット450および中空の入力シャフト404を含むそのような配置の重要な利点は、タービンを制御するために必要とされるすべてパイプおよびワイヤがタービンからギヤ装置の第1のステップのみに延在することである。それによって、ギヤ装置のさらに下流にパイプおよびワイヤを延在させる必要がない。すなわち、第2のギヤ・ステップを通して、可能性のあるさらなるギヤ・ステップを通して、または、発電機を通して、パイプまたはワイヤを配置することは必要ない。このようにして、さらなる貫通穴または貫通開口部は、第1のギヤ・ステップの下流において、ドライブ・トレインの中心軸の中に本質的に必要とされない。そして、これは、サン・ホイールの直径を低減することを可能にし、それによって、第1および第2のギヤ・ステップの中にそれぞれ配置されている単に2つの積層式の複合型プラネット・ギヤ装置を利用することによって、大きいギヤ比を実現する。
【0103】
センタリング・ユニット450は、調節サン・ホイール430を担持するセンタリング・シャフト455のためのサポートとしてさらに機能し、それは、衝撃吸収プラネット・ユニット420の公称荷重を装着および調節するときに使用され得る。
【0104】
複合型プラネット・ギヤ装置の上述の実施形態において、リング・ギヤは、1次歯と噛み合う内部歯を備えて配置されている。しかし、リング・ギヤは、1次プラネット・ギヤの上の1次歯と噛み合う外部歯を備えて配置されることも可能である。
図17および
図18は、これらの2つの異なる構成を概略的にそれぞれ図示している。
図17に示されている複合型プラネット・ギヤ装置1000は、8つのプラネット・ギヤ・ユニット1020を含む積層式の複合型プラネット・ギヤ装置である。8つのプラネット・ギヤ・ユニット1020は、1つの軸線方向のレベルに配置されている2次ギヤ1022’を有する4つのギヤ・ユニット1020’のグループと、異なる軸線方向のレベルに配置されている2次プラネット・ギヤ1022’’を有する4つのギヤ・ユニット1020’’の別のグループとに分割される。すべての2次プラネット・ギヤ1022’、1022’’は、外部歯を設けられた共通のサン・ホイール1030と噛み合っている。それぞれの2次プラネット・ギヤ1022’、1022’’は、それぞれの1次プラネット・ギヤ1021’、1021’’に軸線方向に接続されており、すべての1次プラネット・ギヤは、本質的に同じ軸線方向のレベルに配置されている。内部歯(図示せず)を設けられたリング・ギヤ1010は、1次プラネット・ギヤ1021’、1021’’の上に配置されている外部の1次歯(図示せず)と噛み合っている。したがって、この実施形態は、
図9に示されている実施形態に完全に対応している。
【0105】
図18に示されている代替的な実施形態において、ギヤ装置は、また、複合型の積層式のプラネタリ・ギヤ装置2000であり、複合型の積層式のプラネタリ・ギヤ装置2000は、8つのプラネット・ギヤ・ユニット2020を含み、8つのプラネット・ギヤ・ユニット2020は、1つの軸線方向のレベルに配置されている2次プラネット・ギヤ2022’を備えた4つのプラネット・ギヤ・ユニット2020’と、異なる軸線方向のレベルに配置されている2次プラネット・ギヤ2022’’を備えた4つのプラネット・ギヤ・ユニット2020’’とに分割されている。すべての2次プラネット・ギヤ2022’、2022’’は、それぞれの1次プラネット・ギヤ2021’、2021’’に軸線方向に接続されており、1次プラネット・ギヤ2021’、2021’’は、本質的に同じ軸線方向のレベルの上にすべて配置されている。しかし、この実施形態において、1次ギヤ2021’、2021’’の外部の1次歯(図示せず)は、リング・ギヤ2020の上に配置されている外部歯(図示せず)と噛み合っている。
【0106】
1次歯と噛み合う外部歯を備えたリング・ギヤ2010を含むそのような複合型プラネット・ギヤ装置は、いくつかの用途において、内部歯を備えたリング・ギヤを含む複合型プラネット・ギヤ装置と比較したときに、いくつかの利点を示すことが可能である。たとえば、それらは、同じリング・ギヤ直径によって、いくらか高いギヤ比を示すことが可能である。さらに、使用時に、1次プラネット・ギヤ2021’、2021’’と2次プラネット・ギヤ2022’、2022’’との間に軸線方向に配置されている軸受に印加される荷重が低減され得る。したがって、
図18に図示されているタイプの複合型プラネット・ギヤ装置は、たとえば、比較的小さいトルクが複合型プラネット・ギヤ装置によって伝達されることになるいくつかの用途において、使用する機会を見出すことが可能である。
【0107】
しかし、内部歯を備えたリング・ギヤを含む複合型プラネット・ギヤ装置と比較して、外部歯を備えたタイプは、また、複数の一般的な不利益を示す。たとえば、それらは、2次プラネット・ギヤ2022’、2022’’がより大きい直径を有することを必要とする。また、複合型プラネット・ギヤ装置の合計寸法が増加する。さらに、ギヤ比に対する重量、および、製造コストが増加する。
【0108】
図11は、入力モジュール600を図示しており、入力モジュール600は、ベース・フレーム610に固定されている。入力モジュール600は、
図1aおよび
図1bに示されている入力モジュール2に対応している。たとえば、風車(図示せず)の中に据え付けられるときに、ベース・フレーム610は、風車のナセル(図示せず)に固定されている。入力モジュール600は、中空の入力シャフト620をさらに含み、入力シャフト620は、風力タービン(図示せず)の固定のために、装着ディスク(図示せず)に固定されている。入力シャフト620には、内部スプライン621が設けられており、内部スプライン621は、
図12に示されている第1のステップ・ギヤ・モジュール400の第1のステップ入力シャフト404の上の外部スプライン403に対応している。
【0109】
図12は、
図10に示されている8つのステップ式および積層式の複合型プラネット・ギヤ装置400を図示しており、それは、
図1aおよび
図1bの中の第1のギヤ・ステップ・モジュールである。センタリング・シャフト455および調節サン・ホイール430の除去、ならびに、蓋(図示せず)によってセンタリング・ユニット450の中の孔部を閉じた後に、これは、第2のギヤ・ステップ・モジュールの入力ギヤが、
図1aおよび
図1bのドライブ・トレイン1のこの第1のギヤ・モジュールの中へ嵌め込むことを可能にする。また、入力モジュール2、600からトルクを受け取るために、および、第1のギヤ・モジュールのリング・ギヤにトルクを伝送するために、ギヤ・ステップ・モジュール400には、スプライン403が設けられている。
【0110】
図13および
図14は、入力モジュール700、700’のそれぞれの実施形態を図示している。入力モジュール700、700’は、中心の中空の内側シャフト部材710、710’を含み、内側シャフト部材710、710’は、環状の装着ディスク711、711’に固定されている。風車において使用されるときに、装着ディスク711、711’は、風力タービンのタービン・ブレード(図示せず)をドライブ・トレイン装置に固定するために使用される。装着ディスク711、711’は、その周辺において、外側中空のシャフト部材712、712’に固定されている。外側シャフト部材712、712’は、内側シャフト部材711、711’の周りに同軸に配置されている。外側シャフト部材712、712’は、さらに、強力な軸受713、713’の中で、入力モジュール700、700’の頑丈なケーシングまたはハウジング714、714’に軸支されている。ハウジング714、714’は、ナセル(図示せず)に固定されているので、軸受713、713’も、ナセルに間接的に固定されている。このようにして、外側シャフト部材712、712’は、強力に支持されており、また、それは、タービンが強力で過渡的な乱れた風の流れにさらされるときに、装着ディスク711、711’に作用する強力な軸線方向の力、半径方向の力、および曲げ力を支持および吸収することが可能である。外側シャフト部材714、714’の大きい抵抗および強度に起因して、内側シャフト部材710、710’は、比較的弱くされ得、また、装着ディスク711、711’から第1のギヤ・ステップ・モジュールへ捩じり力を主に伝達するように寸法決めされ得る。このようにして、内側シャフト部材710、710’のいくらかの程度の捩じり弾力性を可能にすることさえも可能であり、ギヤ装置に対する激しく変化する風の流れのマイナスの影響が低減されるようになっている。したがって、内側シャフト部材710、710’のそのような捩じり撓み性は、衝撃吸収プラネット・ギヤ・ユニットと組み合わせて、ギヤ装置を保護し、ギヤ装置および発電機の駆動を滑らかにするように作用する。
【0111】
また、ハウジング714、714’によって支持されている同軸のシャフト部材710、710’、712、712’の配置は、入力モジュールが比較的小さい寸法で設計されることを可能にする。
【0112】
有利な入力モジュールは、いくつかの用途では、中間ギヤ装置なしに、タービンなどのような駆動源を発電機などのようなユーティリティの入力シャフトに直接接続するためのスタンドアロンのユニットとして、別々に使用され得ることが留意されるべきである。それに対応して、本発明の1つの態様によれば、駆動デバイスを被駆動デバイスに接続するための入力モジュールは、内側管状のシャフト、外側管状のシャフト、および、取り囲むハウジングを含み、内側管状のシャフトは、外側管状のシャフトの内側に同軸に配置されており、外側管状のシャフトは、軸受の中でハウジングに軸支されており、内側および外側管状のシャフトのそれぞれの第1の端部は、駆動デバイスの固定のために配置されている装着ディスクによって接続されている。
【0113】
図15は、1つの実施形態によるドライブ・トレイン装置800全体を図示している。ドライブ・トレイン装置800は、
図1aおよび
図1bに示されている配置に対応しており、入力モジュール810、第1のギヤ・ステップ・モジュール820、第2のギヤ・ステップ・モジュール830、および、発電機またはモータ・モジュール840を含む。モジュールは、一方から他方へ互いに軸線方向に固定されている。それぞれのモジュールは、封止された内部スペースまたはコンパートメントをさらに囲み、異なるコンパートメントが、異なる潤滑媒体および/または冷却媒体、ならびに、他のさまざまな雰囲気、たとえば、必要とされ得るような冷却ガスを含有することができるようになっている。第1のギヤ・ステップ・モジュール820および第2のギヤ・ステップ・モジュール830のそれぞれのコンパートメントは、サブ・コンパートメント820a、820bおよび830a、830bにそれぞれさらに分割されている。サブ・コンパートメントは、ドライブ・トレイン装置の軸線方向に次々に配置されており、また、内部壁部によって相互に分離されており、内部壁部は、長手方向に対して垂直に延在しており、それぞれのモジュールのハウジングの一部を形成している。これは、それぞれのサブ・コンパートメントおよびその中に配置されている軸受が個別に潤滑および冷却を提供され得ることを可能にする。この目的のために、それぞれのモジュールのハウジングには、潤滑媒体および/または冷却媒体を導くためのパイプ、チューブ、および/またはチャネルが設けられ得る。
【0114】
図15に示されているように、第1のステップ・モジュール820および第2のステップ・モジュール830は、上記に説明されているようなそれぞれの衝撃吸収プラネット・ユニットの一部を形成する複数のプラネット・シャフト821、831を含む。プラネット・シャフト821、831は、それぞれの制御ロッド821、831の周りに、回転可能に同軸に配置されている。
【0115】
図16は、1つのそのような制御ロッド821を、拡大してより詳細に図示している。
図16において見られるように、制御ロッド821には、軸線方向のチャネル851、パイプ852、およびワイヤ853が設けられ得る。そのようなチャネル、パイプ、およびワイヤは、たとえば、異なるコンパートメントの中の軸受、潤滑、および雰囲気など、異なる条件をセンシングおよびモニタリングするために使用され得る。また、これらのコンポーネントは、たとえば、潤滑媒体および/または冷却媒体を追加することによって、そのような条件を調節するために使用され得る。チャネル、パイプ、およびワイヤがそれぞれのコンパートメントの中の所望の位置において送出することができるようにするために、制御ロッド821、831には、軸線方向のチャネル851から制御ロッド821の周辺に延在する半径方向のチャネル855が設けられ得る。さらに、制御ロッド821のエンベロープ表面は、Oリングなどのようなシーリングがコンパートメントの中に特定のゾーンを画定することを可能にするための円周方向の溝部856を示すことが可能である。そのようなゾーンは、たとえば、軸受などの雰囲気および条件をモニタリングおよび調整するために使用され得る。制御ロッド821、831は、ポリマー材料、金属、またはそれらの組み合わせなどのような、任意の適切な材料で形成され得る。
【0116】
また、同様の制御ロッド(図示せず)が、
図10に示されている中空の入力シャフト404、ならびに、
図13および
図14に示されている内側シャフト部材710、710’を通して、装着ディスク711、711およびそれに装着された風力タービンのハブへ軸線方向に延在する、ワイヤ451およびパイプ、ならびに/または他の制御手段を受け入れるために使用され得る。
【0117】
本発明は、主に、数個の実施形態を参照して上記に説明されてきた。しかし、当業者によって容易に理解されるように、上記に開示されているもの以外の実施形態も、添付の特許請求の範囲によって定義されているような、本発明の範囲の中で等しく可能である。