(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】電気化学反応セルスタック
(51)【国際特許分類】
H01M 8/2465 20160101AFI20220929BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20220929BHJP
C25B 13/04 20210101ALI20220929BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20220929BHJP
【FI】
H01M8/2465
C25B9/00 A
C25B13/04 302
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
(21)【出願番号】P 2019071154
(22)【出願日】2019-04-03
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 千寛
(72)【発明者】
【氏名】堀田 信行
(72)【発明者】
【氏名】眞邉 健太
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-111856(JP,A)
【文献】特開2016-018750(JP,A)
【文献】特開2003-192435(JP,A)
【文献】特開平04-282203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/24
H01M 8/02
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層と前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む電気化学反応単セルと、
前記電気化学反応単セルに対して前記第1の方向の一方側に配置された第1の導電性部材であって、前記第1の方向に略直交する平面状の第1の表面を有し、かつ、前記第1の方向に貫く平板貫通孔が形成された、導電性を有する第1の導電性部材と、
前記第1の導電性部材に対して前記第1の方向の前記一方側に配置された絶縁部材であって、前記平板貫通孔に連通し、かつ、前記第1の方向に貫く絶縁貫通孔が形成された、絶縁性を有する絶縁部材と、
前記絶縁部材に対して前記第1の方向の前記一方側に配置され、前記第1の方向に略直交する平面状の第2の表面を有する第2の導電性部材であって、導電性を有する第2の導電性部材と、
を備える電気化学反応セルスタックにおいて、
前記絶縁部材は、前記第1の表面と前記第2の表面とに接しており、
前記絶縁貫通孔を画定する前記絶縁部材の内面は、凹凸構造を有し、
前記第1の方向視において前記絶縁貫通孔の中心を通り、かつ、前記第1の方向に略平行な少なくとも1つの断面において、前記絶縁部材の前記内面における最大高さRzは、80μm以下であ
り、かつ、前記絶縁部材の前記内面における凹凸の平均間隔Smは、20μm以上である、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記少なくとも1つの断面において、前記絶縁部材の前記内面における算術平均粗さRaは、20μm以下である、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記少なくとも1つの断面において、前記絶縁部材の前記内面における凹部の挟角の最小値は90°以上である、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項4】
請求項1から
請求項3までのいずれか一項に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記絶縁部材は、マイカにより形成されている、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項5】
請求項1から
請求項4までのいずれか一項に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記電気化学反応単セルは、燃料電池単セルである、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、電気化学反応セルスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の種類の1つとして、固体酸化物を含む電解質層を備える固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という)が知られている。SOFCの構成単位である燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という)は、電解質層と、電解質層を挟んで所定の方向(以下、「第1の方向」という)に互いに対向する空気極および燃料極とを含む。
【0003】
SOFCは、一般に、単セルが第1の方向に複数並べて配置された構造体(以下、「発電ブロック」という)と、発電ブロックを挟んで第1の方向に互いに対向する一対の導電性のターミナル部材と、一対のターミナル部材を挟んで第1の方向に互いに対向する一対の絶縁部材と、一対の絶縁部材を挟んで第1の方向に互いに対向する一対の導電性のエンド部材とを備える燃料電池スタックの形態で利用される。このような各部材を備える燃料電池スタックにおいて、例えば、一の導電性部材としてのターミナル部材に形成された貫通孔(例えば、ボルト孔やマニホールド用の孔)の内周面は、当該ターミナル部材に面して配置された絶縁部材に形成された貫通孔の内周面と面一の構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池スタックの運転中において、上記一のターミナル部材と、当該ターミナル部材に面して配置された絶縁部材に面して配置されたエンド部材との間には電位差がある。このため、従来の燃料電池スタックでは、例えば、高電圧が生じた場合に、上記一のターミナル部材と、上記エンド部材との間で放電が起こり、ターミナル部材とエンド部材とが短絡するおそれがある。
【0006】
なお、このような課題は、ターミナル部材とエンド部材との間に限らず、燃料電池スタックを構成する他の絶縁部材を挟んで第1の方向に互いに対向するように配置された2つの導電性部材間においても共通の課題である。
【0007】
また、このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」という)の一形態である電解セルスタックにも共通の課題である。なお、本明細書では、燃料電池スタックと電解セルスタックとをまとめて「電気化学反応セルスタック」といい、燃料電池単セルと電解単セルとをまとめて「電気化学反応単セル」といい、発電ブロックと電解ブロックとをまとめて「電気化学反応ブロック」という。また、このような課題は、固体酸化物形に限らず、他のタイプの電気化学反応セルスタックにも共通の課題である。
【0008】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本明細書に開示される電気化学反応セルスタックは、電解質層と前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む電気化学反応単セルと、前記電気化学反応単セルに対して前記第1の方向の一方側に配置された第1の導電性部材であって、前記第1の方向に略直交する平面状の第1の表面を有し、かつ、前記第1の方向に貫く平板貫通孔が形成された、導電性を有する第1の導電性部材と、前記第1の導電性部材に対して前記第1の方向の前記一方側に配置された絶縁部材であって、前記平板貫通孔に連通し、かつ、前記第1の方向に貫く絶縁貫通孔が形成された、絶縁性を有する絶縁部材と、前記絶縁部材に対して前記第1の方向の前記一方側に配置され、前記第1の方向に略直交する平面状の第2の表面を有する第2の導電性部材であって、導電性を有する第2の導電性部材と、を備える電気化学反応セルスタックにおいて、前記絶縁部材は、前記第1の表面と前記第2の表面とに接しており、前記絶縁貫通孔を画定する前記絶縁部材の内面は、凹凸構造を有し、前記第1の方向視において前記絶縁貫通孔の中心を通り、かつ、前記第1の方向に略平行な少なくとも1つの断面において、前記絶縁部材の前記内面における最大高さRzは、80μm以下である。このため、本発明の電気化学反応セルスタックでは、絶縁貫通孔を画定する絶縁部材の内面が凹凸構造を有することにより、第1の方向における絶縁部材の厚さを変えることなく、絶縁部材の沿面距離を大きくすることができ、ひいては、電気化学反応セルスタックの耐電圧を向上させることができる。また、本発明の電気化学反応セルスタックでは、絶縁貫通孔を画定する絶縁部材の内面における最大高さRzが80μm以下であり、当該内面における最大高さRzが比較的小さい。すなわち、当該内面は、凹凸構造のうちの凸部の高さが比較的低く、かつ、凹部の深さが比較的浅い表面となっている。このため、当該内面において電界強度の高い部分が生じることを抑制することができる。従って、本発明の電気化学反応セルスタックによれば、絶縁部材の沿面距離が、絶縁部材の厚さと同じである構成と比較して、電気化学反応セルスタックの耐電圧を向上させつつ、絶縁貫通孔を画定する絶縁部材の内面における電界強度を低下させることができ、ひいては、第1の導電性部材と第2の導電性部材との間の短絡の発生を抑制することができる。
【0011】
(2)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記少なくとも1つの断面において、前記絶縁部材の前記内面における算術平均粗さRaは、20μm以下である構成としてもよい。このため、当該内面における算術平均粗さが比較的小さい。すなわち、当該内面は、その全体において、凹凸構造のうちの凸部の高さが比較的低く、かつ、凹部の深さが比較的浅い表面となっている。このため、当該内面の全体において電界強度の高い部分が生じることを抑制することができる。このような構成が採用された電気化学反応セルスタックによれば、第1の導電性部材と第2の導電性部材との間の短絡の発生を抑制することができる。
【0012】
(3)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記少なくとも1つの断面において、前記絶縁部材の前記内面における凹凸の平均間隔Smは、20μm以上である構成としてもよい。このため、当該内面における凹凸の間隔が比較的大きい。すなわち、当該内面において、電界強度が高くなり易い部分である凸部(凹部)が、当該凸部に隣接する凸部(当該凹部に隣接する凹部)から比較的離れている。このため、当該内面において、電界強度の高い部分が生じることを抑制することができる。このような構成が採用された電気化学反応セルスタックによれば、第1の導電性部材と第2の導電性部材との間の短絡の発生を抑制することができる。
【0013】
(4)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記少なくとも1つの断面において、前記絶縁部材の前記内面における凹部の挟角の最小値は90°以上である構成としてもよい。このため、当該内面における凹部の挟角の角度が比較的大きい。このため、当該内面において電界強度の高い部分が生じることを抑制することができる。このような構成が採用された電気化学反応セルスタックによれば、第1の導電性部材と第2の導電性部材との間の短絡の発生を抑制することができる。
【0014】
(5)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記絶縁部材は、マイカにより形成されている構成としてもよい。マイカは、市場において容易かつ安価に入手でき、成形加工性に優れている傾向があるため、このような構成が採用された電気化学反応セルスタックによれば、電気化学反応セルスタックを効率的に製造することができる。
【0015】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電気化学反応セルスタック(燃料電池スタックまたは電解セルスタック)、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1および
図7のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図である。
【
図3】
図1および
図7のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図である。
【
図4】
図1および
図7のIV-IVの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図である。
【
図5】
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図である。
【
図6】
図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図である。
【
図7】
図3および
図4のVII-VIIの位置における下側の絶縁シート520のXY断面構成を示す説明図である。
【
図8】
図4に示す断面のX1部を部分的に示すXZ断面図である。
【
図9】
図3に示す断面のX2部を部分的に示すXZ断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.実施形態:
A-1.装置構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、
図2は、
図1(および後述する
図7)のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、
図3は、
図1(および後述する
図7)のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、
図4は、
図1(および後述する
図7)のIV-IVの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
図5以降についても同様である。また、本明細書では、Z軸方向に直交する方向を、面方向と呼ぶものとする。
【0018】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」という)102と、一対のターミナルプレート410,420と、一対の絶縁シート510,520と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のターミナルプレート410,420は、複数の発電単位102から構成される集合体(以下、「発電ブロック103」という)を上下から挟むように配置されている。一対の絶縁シート510,520は一対のターミナルプレート410,420を上下から挟むように配置されている。また、一対のエンドプレート104,106は、一対の絶縁シート510,520を上下から挟むように配置されている。なお、燃料電池スタック100は、特許請求の範囲における電気化学反応セルスタックに相当し、上記配列方向(上下方向またはZ軸方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
【0019】
図1および
図4に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(上側のエンドプレート104、各発電単位102、各ターミナルプレート410,420および各絶縁シート510,520)のZ軸方向回りの外周の4つの角部周辺には、各層を上下方向に貫通し、かつ、Z軸方向視において略円形の孔が形成されている。さらに燃料電池スタック100を構成する下側のエンドプレート106のZ軸方向回りの外周の4つの角部周辺の上面には、後述するボルト22の下側端部が螺合される孔(ねじ孔)が形成されている。各発電単位102と各ターミナルプレート410,420と各絶縁シート510,520と各エンドプレート104,106とに形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、上側のエンドプレート104から下側のエンドプレート106にわたって上下方向に延びるボルト孔109を構成している。以下の説明では、ボルト孔109を構成するために各層に形成された孔も、ボルト孔109ということがある。
【0020】
各ボルト22は、上下方向に延びる各ボルト孔109に挿通されている、略円柱形状の導電性部材である。各ボルト22の下側端部には、各ボルト22が、下側のエンドプレート106に係合可能なように、下側のエンドプレート106のZ軸方向回りの外周の4つの角部周辺の上面に形成された上記孔(ねじ孔)に螺合可能なねじ部が形成されている。このように、本実施形態の燃料電池スタック100では、各ボルト22の頭部と下側のエンドプレート106とによって、各発電単位102および各エンドプレート104,106が一体に締結されている。ここで、「各ボルト22が、下側のエンドプレート106に係合」しているとは、各ボルト22が直接的にまたは他の部材(例えば、ナット)を介して下側のエンドプレート106に取り付けられていることを意味する。
【0021】
また、
図1から
図3に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(各発電単位102、下側のターミナルプレート420および下側の絶縁シート520)のZ軸方向回りの外周辺の付近には、各発電単位102と、下側のターミナルプレート420とを上下方向に貫通する孔が形成されており、各発電単位102に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、複数の発電単位102にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために各層に形成された孔も、連通孔108ということがある。
【0022】
図1および
図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の付近に位置する連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102の後述する空気室166に供給するガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の付近に位置する連通孔108は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出するガス流路である酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。酸化剤ガスOGとしては、例えば空気が使用される。
【0023】
また、
図1および
図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する辺の内、上述した酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102の後述する燃料室176に供給するガス流路である燃料ガス導入マニホールド171として機能し、上述した酸化剤ガス導入マニホールド161として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の連通孔108は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出するガス流路である燃料ガス排出マニホールド172として機能する。燃料ガスFGとしては、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0024】
(ターミナルプレート410,420、絶縁シート510,520およびエンドプレート104,106の構成)
一対のターミナルプレート410,420は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。各ターミナルプレート410,420のZ軸方向における厚さ(板厚)は、例えば、0.2mm以上、3mm以下である。上側のターミナルプレート410は、複数の発電単位102から構成される発電ブロック103の上方向側に配置されており、下側のターミナルプレート420は、発電ブロック103の下方向側に配置されている。すなわち、上側のターミナルプレート410は、複数の単セル110の内、Z軸方向において、最も上方向側に位置する単セル110を備える発電単位102の上方向側に配置されている。また、下側のターミナルプレート420は、複数の単セル110の内、Z軸方向において、最も下方向側に位置する単セル110を備える発電単位102の下方向側に配置されている。
図2から
図4に示すように、上側のターミナルプレート410には、4つのボルト孔109が形成されている。また、下側のターミナルプレート420には、4つの連通孔108と、4つのボルト孔109とが形成されている。上側のターミナルプレート410は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のターミナルプレート420は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。下側のターミナルプレート420は、特許請求の範囲における第1の導電性部材に相当する。
【0025】
一対の絶縁シート510,520は、略矩形のシート状の絶縁部材である。絶縁シート510,520は、例えばマイカ、アルミナ、窒化ケイ素、ジルコニア等により形成されている。各絶縁シート510,520のZ軸方向における厚さ(シート厚)Tiは、例えば、0.1mm以上、5mm以下であり、好ましくは、1mm以上、5mm以下である。上側の絶縁シート510は、上側のターミナルプレート410の上方向側に配置されており、下側の絶縁シート520は、下側のターミナルプレート420の下方向側に配置されている。
図2から
図4に示すように、上側の絶縁シート510には、4つのボルト孔109が形成されている。また、下側の絶縁シート520には、4つの連通孔108と、4つのボルト孔109とが形成されている。下側の絶縁シート520の構成については、後に詳述する。なお、本明細書において、「導電性部材」とは、電気抵抗率が100μΩ・m以下である部材を意味し、「絶縁部材」とは、電気抵抗率が10MΩ・m以上である部材を意味している。下側の絶縁シート520は、特許請求の範囲における絶縁部材に相当する。
【0026】
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。各エンドプレート104,106のZ軸方向における厚さ(板厚)は、例えば、1mm以上、15mm以下である。上側のエンドプレート104は、上側の絶縁シート510の上方向側に配置されており、下側のエンドプレート106は、下側の絶縁シート520の下方向側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって、一対の絶縁シート510,520と、一対のターミナルプレート410,420と、複数の発電単位102とが押圧された状態で挟持されている。
図2から
図4に示すように、上側のエンドプレート104には、4つのボルト孔109が形成されている。また、下側のエンドプレート106には、4つの流路用貫通孔107と、4つのボルト孔109とが形成されている。4つの流路用貫通孔107は、それぞれ、酸化剤ガス導入マニホールド161、酸化剤ガス排出マニホールド162、燃料ガス導入マニホールド171、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。下側のエンドプレート106は、特許請求の範囲における第2の導電性部材に相当する。
【0027】
(ガス通路部材27等の構成)
図2および
図3に示すように、燃料電池スタック100は、さらに、下側のエンドプレート106に対して複数の発電単位102とは反対側(すなわち、下側)に配置された4つのガス通路部材27を備える。4つのガス通路部材27は、それぞれ、酸化剤ガス導入マニホールド161、酸化剤ガス排出マニホールド162、燃料ガス導入マニホールド171、燃料ガス排出マニホールド172と上下方向に重なる位置に配置されている。各ガス通路部材27は、下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107に連通する孔が形成された本体部28と、本体部28の側面から分岐した筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。なお、各ガス通路部材27の本体部28とエンドプレート106との間には、絶縁シート26が配置されている。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合材等により構成される。
【0028】
(発電単位102の構成)
図5は、
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、
図6は、
図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図である。
図5および
図6に示すように、発電の最小単位である発電単位102は、燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という)110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電部材134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電部材144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ軸方向回りの外周には、上述した各マニホールド161,162,171,172として機能する各連通孔108を構成する孔と、各ボルト孔109を構成する孔とが形成されている。なお、発電単位102は単セル110を備えるため、上述した発電ブロック103は、単セル110が上下方向に複数並べて配置された構造体であるとも表現できる。単セル110は、特許請求の範囲における電気化学反応単セルに相当する。
【0029】
一対のインターコネクタ150は、Z軸方向視で単セル110より大きい略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。また、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のターミナルプレート410,420を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(
図2~
図4参照)。
【0030】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向(発電単位102が並ぶ配列方向)に互いに対向する空気極(カソード)114および燃料極(アノード)116とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で電解質層112および空気極114を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0031】
電解質層112は、Z軸方向視で略矩形の平板形状部材であり、緻密な層である。電解質層112は、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、ペロブスカイト型酸化物等の固体酸化物により形成されている。空気極114は、Z軸方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、多孔質な層である。空気極114は、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄))により形成されている。燃料極116は、Z軸方向視で電解質層112と略同一の大きさの略矩形の平板形状部材であり、多孔質な層である。燃料極116は、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。このように、本実施形態の単セル110(発電単位102)は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
【0032】
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、ステンレス等の金属材料により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。なお、単セル110とセパレータ120との接合箇所付近に、空気室166と燃料室176との間をシールするシール部材(例えば、ガラスシール部材)がさらに設けられてもよい。
【0033】
空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の空気室用孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。空気極側フレーム130に形成された空気室用孔131によって、空気極114に面する空気室166が構成される。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス導入マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通流路132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通流路133とが形成されている。
【0034】
燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の燃料室用孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。燃料極側フレーム140に形成された燃料室用孔141によって、燃料極116に面する燃料室176が構成される。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通流路142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通流路143とが形成されている。
【0035】
燃料極側集電部材144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電部材144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。燃料極側集電部材144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサ149が配置されている。そのため、燃料極側集電部材144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電部材144を介した燃料極116とインターコネクタ150との電気的接続が良好に維持される。
【0036】
空気極側集電部材134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電部材134は、複数の略四角柱状の集電部材要素135から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電部材134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。空気極側集電部材134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ150とを電気的に接続する。なお、本実施形態では、空気極側集電部材134とインターコネクタ150とは一体の部材として形成されている。すなわち、該一体の部材の内の、上下方向(Z軸方向)に直交する平板形の部分がインターコネクタ150として機能し、該平板形の部分から空気極114に向けて突出するように形成された複数の凸部である集電部材要素135が空気極側集電部材134として機能する。また、空気極側集電部材134とインターコネクタ150との一体部材は、導電性のコートによって覆われていてもよく、空気極114と空気極側集電部材134との間には、両者を接合する導電性の接合層が介在していてもよい。なお、各発電単位102において、空気極側集電部材134と上側のインターコネクタ150とが別の部材であるとしてもよい。
【0037】
A-2.燃料電池スタック100の動作:
図2に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29、本体部28、下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107、下側の絶縁シート520の連通孔108および下側のターミナルプレート420の連通孔108を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通流路132を介して、空気室166に供給される。また、
図3に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29、本体部28、下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107、下側の絶縁シート520の連通孔108および下側のターミナルプレート420の連通孔108を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通流路142を介して、燃料室176に供給される。
【0038】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGに含まれる酸素と燃料ガスFGに含まれる水素との電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電部材134を介して一方のインターコネクタ150(または上側のターミナルプレート410)に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電部材144を介して他方のインターコネクタ150(または下側のターミナルプレート420)に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するターミナルプレート410,420から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0039】
図2に示すように、各発電単位102の酸化剤ガス排出連通流路133を介して空気室166から酸化剤ガス排出マニホールド162に排出された酸化剤オフガスOOGは、下側のターミナルプレート420の連通孔108、下側の絶縁シート520の連通孔108、下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107、酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、
図3に示すように、各発電単位102の燃料ガス排出連通流路143を介して燃料室176から燃料ガス排出マニホールド172に排出された燃料オフガスFOGは、下側のターミナルプレート420の連通孔108、下側の絶縁シート520の連通孔108、下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107、燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0040】
なお、本実施形態の燃料電池スタック100を構成する各発電単位102では、空気室166における酸化剤ガスOGの主たる流れ方向と燃料室176における燃料ガスFGの主たる流れ方向とが、略反対方向(互いに対向する方向)となっている。すなわち、本実施形態の発電単位102(燃料電池スタック100)は、カウンターフロータイプのSOFCである。
【0041】
A-3.ボルト22付近の下側の絶縁シート520の詳細構成:
図7は、
図3および
図4のVII-VIIの位置における下側の絶縁シート520のXY断面構成を示す説明図である。
図8は、燃料電池スタック100のXZ断面構成を部分的に示す説明図である。
図8は、
図4に示す断面のX1部における燃料電池スタック100の部分拡大図、すなわち、
図1および
図7のIV-IVの位置の断面における燃料電池スタック100の部分拡大図である。詳しくは、
図8には、ボルト22の中心軸P22を通る、XZ断面の構成が示されている。
【0042】
図7および
図8に示すように、本実施形態の燃料電池スタック100において、下側の絶縁シート520には、酸化剤ガス導入マニホールド161と、酸化剤ガス排出マニホールド162と、燃料ガス導入マニホールド171と、燃料ガス排出マニホールド172とを構成する連通孔108が形成されている。下側の絶縁シート520には、さらに、Z軸方向回りの外周の4つの角部周辺にボルト孔109が形成されている。
【0043】
図8に示すように、下側の絶縁シート520の下側のエンドプレート106に対向する側の表面(以下、「下面S4」という)は、下側のエンドプレート106の下側の絶縁シート520に対向する側の表面(以下、「上面S2」という)に接している。また、下側の絶縁シート520の下側のターミナルプレート420に対向する側の表面(以下、「上面S3」という)は、下側のターミナルプレート420の下側の絶縁シート520に対向する側の表面(以下、「下面S1」という)に接している。下面S1、上面S2、上面S3および下面S4は、それぞれ、Z軸方向に略直交する平面である。下面S1は、特許請求の範囲における第1の表面に相当し、上面S2は、特許請求の範囲における第2の表面に相当する。
【0044】
図7および
図8に示すように、ボルト22付近において、下側のターミナルプレート420に形成されたターミナルプレート貫通孔430と、下側の絶縁シート520に形成された絶縁シート貫通孔530とは、それぞれボルト孔109の一部を構成している。ターミナルプレート貫通孔430は、特許請求の範囲における平板貫通孔に相当し、絶縁シート貫通孔530は、特許請求の範囲における絶縁貫通孔に相当する。
【0045】
図8に示すように、絶縁シート貫通孔530を画定する下側の絶縁シート520の内面Si(以下、「絶縁シート貫通孔530の内面Si」ともいう)は、凹凸構造を有している。具体的には、当該凹凸構造は、高さRx(深さRx)を有する凹部523が間隔Sxで配置されることにより構成されている。本実施形態の燃料電池スタック100において、絶縁シート貫通孔530の内面Siにおける凹凸構造は、内面Siにおける最大高さRzと、算術平均粗さRaと、凹凸の平均間隔Smと、凹部523の挟角523aの最小値θmとによって規定される。
【0046】
具体的には、内面Siにおける最大高さRzは、80μm以下である。当該最大高さRzが80μmを超えると、内面Siにおける凹凸構造のうちの凸部521の高さRxが高い部分周辺や、凹部523の深さRxが深い部分周辺の電界強度が高くなり、その結果、下側のターミナルプレート420と下側のエンドプレート106との間の短絡の発生が生じやすくなる傾向がある。これに対し、当該最大高さRzが80μm以下であれば、電界強度の高い部分が生じにくく、上記短絡の発生が抑制される傾向がある。当該最大高さRzは、好ましくは、60μm以下であり、より好ましくは、14μm以下である。
【0047】
また、内面Siにおける算術平均粗さRaは、好ましくは、20μm以下である。当該算術平均粗さRaが20μmを超えると、内面Siにおける凹凸構造のうちの凸部521の高さRxが高い部分や、凹部523の深さRxが深い部分が生じやすくなり、当該部分周辺の電界強度が高くなり、その結果、下側のターミナルプレート420と下側のエンドプレート106との間の短絡の発生が生じやすくなる傾向がある。これに対し、当該算術平均粗さRaが20μm以下であれば、電界強度の高い部分が生じにくく、上記短絡の発生が抑制される傾向がある。当該算術平均粗さRaは、より好ましくは、5μm以下であり、さらに好ましくは、2μm以下である。
【0048】
また、内面Siにおける凹凸の平均間隔Smは、好ましくは、20μm以上である。当該凹凸の平均間隔Smが20μm以下であると、内面Siにおける凹凸構造のうちの電界強度が高くなり易い部分である凸部521または凹部523が密集する傾向にあり、その結果、下側のターミナルプレート420と下側のエンドプレート106との間の短絡の発生が生じやすくなる傾向がある。これに対し、当該凹凸の平均間隔Smが20μmを超えると、電界強度が高くなりやすい部分である凸部521または凹部523が密集にくく、上記短絡の発生が抑制される傾向がある。当該凹凸の平均間隔Smは、より好ましくは、30μm以下であり、さらに好ましくは、50μm以下である。ここで、最大高さRz、算術平均粗さRaおよび凹凸の平均間隔Smは、それぞれ、JIS B 0601に規定された値である。
【0049】
また、内面Siにおける凹部523の挟角523aの最小値θmは、好ましくは、90°以上である。当該挟角523aの最小値θmが90°未満であると、内面Siにおける凹部523のうち、挟角523aが90°未満である凹部523周辺の電界強度が高くなり、その結果、下側のターミナルプレート420と下側のエンドプレート106との間の短絡の発生が生じやすくなる傾向がある。これに対し、当該挟角523aの最小値θmが90°以上であれば、電界強度の高い部分が生じにくく、上記短絡の発生が抑制される傾向がある。当該挟角523aの最小値θmは、より好ましくは、100°以上であり、さらに好ましくは、110°以上である。ここで、当該挟角523aの最小値θmは、例えば、算術平均粗さRaと凹凸の平均間隔Smとを用いて、以下に示す方法で算出される。
θm=2*ATAN(Sm/(2*Ra))
【0050】
本実施形態の燃料電池スタック100における、絶縁シート貫通孔530の内面Siの凹凸構造は、例えば、絶縁シート貫通孔530の内面Siに鏡面加工等を施すことによって達成することができる。
【0051】
図7(A)に示すように、Z軸方向視において、ボルト孔109の略中央には、ボルト22が配置されている。Z軸方向視におけるボルト孔109の中心軸は、ボルト22の中心軸P22と略同じ位置である。Z軸方向視において、ボルト22の軸部と、絶縁シート貫通孔530は、ボルト22の中心軸P22を中心とする略同心である。本実施形態の燃料電池スタック100において、絶縁シート貫通孔530の孔径D21は、ボルト22の軸部における外径(最大外径)Dbより大きい。すなわち、Z軸方向視において、絶縁シート貫通孔530の内周縁Eiは、ボルト22の外周縁Ebを取り囲んでいる。換言すれば、
図8に示すように、絶縁シート貫通孔530の内面Siは、ボルト22の外周面Sbから離間している。また、本実施形態の燃料電池スタック100において、Z軸方向視において、絶縁シート貫通孔530の内周縁Eiは、ターミナルプレート貫通孔430の内周縁Etを取り囲んでいる。また、
図8に示すように、本実施形態の燃料電池スタック100において、ターミナルプレート貫通孔430の内周面Stは、ボルト22の外周面Sbから離間している。換言すれば、Z軸方向視において、ターミナルプレート貫通孔430の内周縁Etは、ボルト22の外周縁Ebを取り囲んでいる。
【0052】
ここで、絶縁シート貫通孔530の内周縁Eiとは、Z軸方向視における絶縁シート貫通孔530の最内縁を意味する。また、例えば、「Z軸方向視において、絶縁シート貫通孔530の内周縁Eiは、ボルト22の外周縁Ebを取り囲んでいる」とは、Z軸方向視において、絶縁シート貫通孔530の内周縁Eiが、内周縁Eiの全周にわたって、ボルト22の外周縁Ebより外側に位置していることを意味し、内周縁Eiと外周縁Ebとが一致することを意味しない。
【0053】
本実施形態の燃料電池スタック100は、上記構成であるため、下側のターミナルプレート420から下側のエンドプレート106に至るまでの下側の絶縁シート520における最短距離である沿面距離CDは、Z軸方向における下側の絶縁シート520の厚さTiより大きい。ここで、沿面距離CDは、下側のターミナルプレート420の下面S1と、絶縁シート貫通孔530の内面Siと、の交線L1(点P1を含む線)から、下側のエンドプレート106と絶縁シート貫通孔530の内面Siとの交線L2(点P2を含む線)に至るまでの距離である。本実施形態の燃料電池スタック100において、具体的には、沿面距離CDは、下側のターミナルプレート420の下面S1と絶縁シート貫通孔530の内面Siとの交線L1から、内面Siに形成された凹凸を介して、絶縁シート貫通孔530の内面Siと下側のエンドプレート106との交線L2までの距離である。沿面距離CDは、好ましくは、Z軸方向における下側の絶縁シート520の厚さTiの1.13倍以上である。
【0054】
なお、本実施形態の燃料電池スタック100では、
図8に示されたXZ断面とは異なる他の断面(ボルト22の中心軸P22を通る任意の他の断面)においても、上記と同様の構成が採用されている。また、本実施形態の燃料電池スタック100では、
図8に示されたXZ断面において、図示されていない他のボルト22付近においても、上記と同様の構成が採用されている。また、
図8では、Y軸方向視における、絶縁シート貫通孔530の内面Siの凹凸構造を示しているが、Z軸方向視においても、絶縁シート貫通孔530の内面Siは上述した凹凸構造を有している。
【0055】
A-4.燃料ガス導入マニホールド171付近の下側の絶縁シート520の詳細構成:
図9は、燃料電池スタック100のXZ断面構成を部分的に示す説明図である。
図9は、
図3に示す断面のX2部における燃料電池スタック100の部分拡大図、すなわち、
図1および
図7のIII-IIIの位置の断面における燃料電池スタック100の部分拡大図である。詳しくは、
図9には、連通孔108(具体的には、絶縁シート貫通孔530)の中心軸POを通る、XZ断面の構成が示されている。
【0056】
図9に示すように、燃料ガス導入マニホールド171付近の下側の絶縁シート520は、上述のボルト22付近の下側の絶縁シート520と同様に、その内面Siに凹凸構造を有している。下側の絶縁シート520の詳細構成は、上述の通りである。具体的には、絶縁シート貫通孔530の内面Siにおける最大高さRzは、80μm以下である。また、内面Siにおける算術平均粗さRaは、好ましくは、20μm以下である。また、内面Siにおける凹凸の平均間隔Smは、好ましくは、20μm以上である。また、内面Siにおける凹部523の挟角523aの最小値θmは、好ましくは、90°以上である。
【0057】
図7および
図9に示すように、燃料ガス導入マニホールド171付近において、下側のターミナルプレート420に形成されたターミナルプレート貫通孔430と、下側の絶縁シート520に形成された絶縁シート貫通孔530とは、それぞれ連通孔108の一部を構成している。
【0058】
図7(B)に示すように、Z軸方向視において、ターミナルプレート貫通孔430と、絶縁シート貫通孔530とは、ターミナルプレート貫通孔430の中心軸POを中心とする略同心である。換言すれば、Z軸方向視において、絶縁シート貫通孔530の内周縁Eiは、ターミナルプレート貫通孔430の内周縁Etを取り囲んでいる。
【0059】
本実施形態の燃料電池スタック100は、上記構成であるため、燃料ガス導入マニホールド171付近においても、絶縁シート貫通孔530の内面Siにおいて、電界強度の高い部分が生じにくい。また、下側のターミナルプレート420から下側のエンドプレート106に至るまでの下側の絶縁シート520における沿面距離CDは、Z軸方向における下側の絶縁シート520の厚さTiより大きい。好ましくは、沿面距離CDは、Z軸方向における下側の絶縁シート520の厚さTiの1.13倍以上である。
【0060】
なお、本実施形態の燃料電池スタック100では、
図9に示されたXZ断面とは異なる他の断面(ターミナルプレート貫通孔430の中心軸POを通る任意の他の断面)においても、上記と同様の構成が採用されている。また、本実施形態の燃料電池スタック100では、
図9に示されたXZ断面において、図示されていない他のマニホールド161,162,171,172付近においても、上記と同様の構成が採用されている。
【0061】
A-5.性能評価:
複数の燃料電池スタック100のサンプルを用いて行った性能評価について、以下説明する。
図10は、性能評価(電界強度についての評価)の結果を示す説明図である。
図10(A)の縦軸は、電界強度の値であり、横軸は、下側の絶縁シート520における絶縁シート貫通孔530の内面Siの最大高さRzの値である。なお、内面Siにおける凹凸の平均間隔Smは20μmである。
図10(B)の縦軸は、電界強度の値であり、横軸は、下側の絶縁シート520における絶縁シート貫通孔530の内面Siの凹凸の平均間隔Smの値である。なお、内面Siにおける最大高さRzは50μmである。
【0062】
(評価方法)
本性能評価では、以下の構成を有する燃料電池スタック100を用いた。
・ボルト22
材料:ステンレス(比誘電率1e6)
外径Db:8mm
・下側のターミナルプレート420
材料:ステンレス(比誘電率1e6)
厚さTi:1mm
孔径:10mm
・下側の絶縁シート520
材料:マイカ(比誘電率7.0)
厚さTi:1.5mm
孔径D21:12mm
・下側のエンドプレート106(比誘電率1e6)
材料:ステンレス
厚さTi:8mm
・
図10(A)における絶縁シート貫通孔530の内面Siの最大高さRz:
1μm,3μm,5μm,10μm,15μm,20μm,50μm,80μm
・
図10(B)における絶縁シート貫通孔530の内面Siの凹凸の平均間隔Sm:
10μm,15μm,18μm,19μm,20μm,30μm,50μm
・各部材における電位
ボルト22:0V
下側のターミナルプレート420:1000V
下側のエンドプレート106:0V
【0063】
(評価結果)
図10(A)に示すように、本性能評価において、絶縁シート貫通孔530の内面Siにおける最大高さRzの値が大きくなるにつれて、電界強度の値は上昇した。当該最大高さRzの値を、80μm以下とすることにより、燃料電池スタック100として好ましい電界強度である、3.30×10
6V/m以下を達成することができる。また、
図10(B)に示すように、本性能評価において、絶縁シート貫通孔530の内面Siにおける凹凸の平均間隔Smが大きくなるにつれて、電界強度の値は低下した。当該凹凸の平均間隔Smの値を20μm以上とすることにより、燃料電池スタック100として好ましい電界強度である3.30×10
6V/m以下を達成することができる。
【0064】
A-6.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100は、単セル110と、下側のターミナルプレート420と、下側の絶縁シート520と、下側のエンドプレート106とを備える。単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んでZ軸方向に互いに対向する空気極114および燃料極116とを含む。下側のターミナルプレート420は、単セル110に対してZ軸方向の下方向側に配置され、導電性を有している。下側のターミナルプレート420は、Z軸方向に略直交する平面状の下面S1を有し、かつ、下側のターミナルプレート420には、Z軸方向に貫くターミナルプレート貫通孔430が形成されている。下側の絶縁シート520は、下側のターミナルプレート420に対してZ軸方向の下方向側に配置され、絶縁性を有している。下側の絶縁シート520には、ターミナルプレート貫通孔430に連通し、かつ、Z軸方向に貫く絶縁シート貫通孔530が形成されている。下側のエンドプレート106は、下側の絶縁シート520に対してZ軸方向の下方向側に配置され、導電性を有している。下側のエンドプレート106は、Z軸方向に略直交する平面状の上面S2を有している。また、本実施形態の燃料電池スタック100では、下側の絶縁シート520は、下側のターミナルプレート420の下面S1と、下側のエンドプレート106の上面S2とに接している。また、絶縁シート貫通孔530の内面Siは、凹凸構造を有している。また、Z軸方向視において絶縁シート貫通孔530の中心を通り、かつ、Z軸方向に略平行な少なくとも1つの断面(すなわち、ボルト22の中心軸P22を通るXZ断面またはターミナルプレート貫通孔430の中心軸POを通るXZ断面)において、下側の絶縁シート520の内面Siにおける最大高さRzは、80μm以下である。このため、本実施形態の燃料電池スタック100では、絶縁シート貫通孔530の内面Siが凹凸構造を有することにより、Z軸方向における下側の絶縁シート520の厚さTiを変えることなく、下側の絶縁シート520の沿面距離CDを大きくすることができ、ひいては、燃料電池スタック100の耐電圧を向上させることができる。また、本実施形態の燃料電池スタック100では、絶縁シート貫通孔530の内面Siにおける最大高さRzが80μm以下であり、内面Siにおける最大高さRzが比較的小さい。すなわち、絶縁シート貫通孔530の内面Siは、凹凸構造のうちの凸部521の高さRxが比較的低く、かつ、凹部523の深さRxが比較的浅い表面となっている。このため、絶縁シート貫通孔530の内面Siにおいて電界強度の高い部分が生じることを抑制することができる。従って、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、下側の絶縁シート520の沿面距離CDが、下側の絶縁シート520の厚さTiと同じである構成と比較して、燃料電池スタック100の耐電圧を向上させつつ、絶縁シート貫通孔530の内面Siにおける電界強度を低下させることができ、ひいては、下側のターミナルプレート420と下側のエンドプレート106との間の短絡の発生を抑制することができる。また、絶縁シート貫通孔530の内面Siにおいて沿面距離CDが大きくなるよう設計する場合、絶縁シート貫通孔530の孔内は限られた空間であるため、燃料電池スタック100の外部へ露出している下側の絶縁シート520の外縁における沿面距離が大きくなるよう設計する場合に比べ困難である。本実施形態の燃料電池スタック100によれば、上述の通り、絶縁シート貫通孔530の孔内の限られた空間において、絶縁シート貫通孔530の内面Siにおける沿面距離CDを効果的に大きくすることができる。
【0065】
本実施形態の燃料電池スタック100では、絶縁シート貫通孔530の内面Siにおける算術平均粗さRaは、20μm以下であり、内面Siにおける算術平均粗さが比較的小さい。すなわち、絶縁シート貫通孔530の内面Siは、その全体において、凹凸構造のうちの凸部521の高さRxが比較的低く、かつ、凹部523の深さRxが比較的浅い表面となっている。このため、絶縁シート貫通孔530の内面Siの全体において電界強度の高い部分が生じることを抑制することができる。従って、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、下側のターミナルプレート420と下側のエンドプレート106との間の短絡の発生を抑制することができる。
【0066】
本実施形態の燃料電池スタック100では、絶縁シート貫通孔530の内面Siにおける凹凸の平均間隔Smは、20μm以上であり、内面Siにおける凹凸の間隔が比較的大きい。すなわち、絶縁シート貫通孔530の内面Siにおいて、電界強度が高くなり易い部分である凸部521(凹部523)が、当該凸部521に隣接する凸部521(当該凹部523に隣接する凹部523)から比較的離れている。このため、絶縁シート貫通孔530の内面Siにおいて、電界強度の高い部分が生じることを抑制することができる。従って、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、下側のターミナルプレート420と下側のエンドプレート106との間の短絡の発生を抑制することができる。
【0067】
本実施形態の燃料電池スタック100では、絶縁シート貫通孔530の内面Siにおける凹部523の挟角523aの最小値θmは90°以上であり、凹部523の挟角523aの角度θxが比較的大きい。このため、絶縁シート貫通孔530の内面Siにおいて電界強度の高い部分が生じることを抑制することができる。従って、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、下側のターミナルプレート420と下側のエンドプレート106との間の短絡の発生を抑制することができる。
【0068】
本実施形態の燃料電池スタック100では、下側の絶縁シート520は、マイカにより形成されている。マイカは、市場において容易かつ安価に入手でき、成形加工性に優れている傾向があるため、燃料電池スタック100を効率的に製造することができる。
【0069】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0070】
上記実施形態では、下側の絶縁シート520における絶縁シート貫通孔530の内面Siは、最大高さRzが80μm以下であるとともに、算術平均粗さRaが20μm以下であり、かつ、凹凸の平均間隔Smが20μm以上であり、かつ、凹部523の挟角523aの最小値θmが90°以上である表面構成が採用されているがこれに限定されない。具体的には、絶縁シート貫通孔530の内面Siは、最大高さRzが80μm以下であれば、算術平均粗さRa、凹凸の平均間隔Sm、凹部523の挟角523aの最小値θmが上記数値範囲を満たしていなくてもよい。
【0071】
上記実施形態の燃料電池スタック100では、
図8および
図9に示されたXZ断面とは異なる他の断面においても、上記と同様の構成が採用されているが、これに限定されず、少なくとも一部の断面において、上記と同様の構成が採用されていればよい。好ましくは、例えば、
図7(A)に示されたXY断面を、中心軸P22を中心として4等分し、4等分された各区画における少なくとも一部の断面(ボルト22の中心軸P22を通る任意の断面)において、
図8に示された構成と同様の構成が採用される。
図9についても同様である。
【0072】
上記実施形態では、下側の絶縁シート520は、1段構成を採用しているが、これに限定されない。例えば、下側の絶縁シート520が、2段以上の多段構成を採用していてもよい。下側の絶縁シート520が上記多段構成を採用する場合には、下側の絶縁シート520に形成された絶縁シート貫通孔530の内面Siが階段状またはスロープ状となるよう、各段の絶縁シートに形成された絶縁シート貫通孔の孔径を互いに異ならせることが好ましい。
【0073】
上記実施形態の燃料電池スタック100において、ボルト22の軸部と、絶縁シート貫通孔530とは、ボルト22の中心軸P22を中心とする略同心である構成を採用したが、これに限定されない。すなわち、Z軸方向視において、絶縁シート貫通孔530の内周縁Eiが、ボルト22の外周縁Ebを取り囲んでいれば、ボルト22の軸部と、絶縁シート貫通孔530とが、ボルト22の中心軸P22を中心とする略同心でない構成であってもよい。また、上記実施形態の燃料電池スタック100において、ターミナルプレート貫通孔430と、絶縁シート貫通孔530とは、ターミナルプレート貫通孔430の中心軸POを中心とする略同心である構成を採用したが、これに限定されない。すなわち、ターミナルプレート貫通孔430と絶縁シート貫通孔530とが連通していれば、Z軸方向において、ターミナルプレート貫通孔430と、絶縁シート貫通孔530とが、ターミナルプレート貫通孔430の中心軸POを中心とする略同心でない構成であってもよい。
【0074】
上記実施形態の燃料電池スタック100において、Z軸方向において、絶縁シート貫通孔530の内周縁Eiは、ターミナルプレート貫通孔430の内周縁Etを取り囲んでいる構成を採用したが、これに限定されない。すなわち、ターミナルプレート貫通孔430と絶縁シート貫通孔530とが連通していれば、Z軸方向において、ターミナルプレート貫通孔430の内周縁Etが、絶縁シート貫通孔530の内周縁Eiを取り囲んでいる構成や、絶縁シート貫通孔530の内周縁Eiで囲まれる領域の一部のみが、ターミナルプレート貫通孔430の内周縁Etで囲まれる領域に重複している構成であってもよい。このような構成が採用された燃料電池スタックでは、下側の絶縁シート520の表面のうち、絶縁シート貫通孔530に面する部分の少なくとも一部に、上記実施形態における表面構成を採用することができる。すなわち、上記実施形態の表面構成は、下側の絶縁シート520における絶縁シート貫通孔530の内面Siに限らず、上面S3および/またはその他の面において採用されうる。
【0075】
上記実施形態の燃料電池スタック100では、
図8および
図9に示されたXZ断面に図示されていない他のボルト22付近および他のマニホールド161,162,171,172付近においても、上記と同様の構成が採用されているが、これに限定されず、少なくとも一部のボルト22付近およびマニホールド161,162,171,172付近において、上記と同様の構成が採用されていればよい。
【0076】
上記実施形態では、下側のターミナルプレート420と下側のエンドプレート106との間に位置する下側の絶縁シート520に対して、上記構成を採用したが、これに限定されない。例えば、下側の絶縁シート520に代えて、または、下側の絶縁シート520とともに、上側のターミナルプレート410と上側のエンドプレート104との間に位置する上側の絶縁シート510に対して、上記構成を採用してもよい。この構成において、上側の絶縁シート510は、特許請求の範囲における絶縁部材に相当し、上側のターミナルプレート410は、特許請求の範囲における第1の導電性部材に相当し、上側のエンドプレート104は、特許請求の範囲における第2の導電性部材に相当する。また、この構成において、上側のターミナルプレート410の上面は、特許請求の範囲における第1の表面に相当し、上側のエンドプレート104の下面は、特許請求の範囲における第2の表面に相当する。
【0077】
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100を構成する少なくとも1つの空気極側フレーム130に対して、上記構成を採用してもよい。すなわち、セパレータ120と上側のターミナルプレート410またはインターコネクタ150との間に配置された空気極側フレーム130に対して、上記構成を採用することができる。この構成において、空気極側フレーム130は、特許請求の範囲における絶縁部材に相当し、セパレータ120は、特許請求の範囲における第1の導電性部材に相当し、上側のターミナルプレート410およびインターコネクタ150は、特許請求の範囲における第2の導電性部材に相当する。また、この構成において、セパレータ120の上面は、特許請求の範囲における第1の表面に相当し、上側のターミナルプレート410の下面およびインターコネクタ150の下面は、特許請求の範囲における第2の表面に相当する。
【0078】
上記実施形態において、下側のターミナルプレート420の下面S1および下側のエンドプレート106の上面S2は、ともに平面であるとしたがこれに限定されない。例えば、下面S1および上面S2の一部に凹凸を含んでいてもよい。また、上述の通り、第1の導電性部材として、上側のターミナルプレート410またはセパレータ120を採用し、第2の導電性部材として、上側のエンドプレート104、上側のターミナルプレート410またはインターコネクタ150を採用した構成においても同様である。
【0079】
上記実施形態における単セル110または燃料電池スタック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態において、ボルト22の軸部の下側端部が下側のエンドプレート106を貫いて下方に突出し、その突出した下側端部に形成されたねじ部にナットが螺合しているとしてもよい。また、上記実施形態において、ボルト22の軸部の上側端部の外周面におねじが形成され、上側のエンドプレート104に形成された貫通孔の内周面にめねじが形成されており、ボルト22の軸部の上側端部が上側のエンドプレート104に形成された貫通孔に螺合しているとしてもよい。
【0080】
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる単セル110の個数は、あくまで一例であり、単セル110の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。また、上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。
【0081】
上記実施形態の発電単位102または燃料電池スタック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、電気化学反応単位として、カウンターフロータイプの発電単位102を例示したが、これに限らず、酸化剤ガスの主たる流れ方向と燃料ガスの主たる流れ方向とが交差するクロスフロータイプの構成や、酸化剤ガスの主たる流れ方向と燃料ガスの主たる流れ方向とが同じ方向であるコフロータイプの構成でもよい。また、上記実施形態では、複数の集電部材要素135(複数の電極対向部145)は、少なくとも一の方向に均等間隔で並ぶように配置されるとしたが、これに限らず、複数の集電部材要素135の少なくとも一部が、一の方向に不均一な間隔で並ぶように配置されるとしてもよいし、また、複数の集電部材要素135の少なくとも一部が、一の方向に対して側方に外れた位置に配置されるとしてもよい。
【0082】
上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解単セルや、複数の電解単セルを備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016-81813号公報に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されるとともに、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解単セルにおいて水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解単セルにおいても、本発明を適用することにより上記効果を得ることができる。
【0083】
また、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本発明は、他のタイプの燃料電池(または電解セル)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
22:ボルト 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 28:本体部 29:分岐部 100:燃料電池スタック 102:発電単位 103:発電ブロック 104:エンドプレート 106:エンドプレート 107:流路用貫通孔 108:連通孔 109:ボルト孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極(カソード) 116:燃料極(アノード) 120:セパレータ 121:孔 124:接合部 130:空気極側フレーム 131:空気室用孔 132:酸化剤ガス供給連通流路 133:酸化剤ガス排出連通流路 134:空気極側集電部材 135:集電部材要素 140:燃料極側フレーム 141:燃料室用孔 142:燃料ガス供給連通流路 143:燃料ガス排出連通流路 144:燃料極側集電部材 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 149:スペーサ 150:インターコネクタ 161:酸化剤ガス導入マニホールド 162:酸化剤ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料ガス導入マニホールド 172:燃料ガス排出マニホールド 176:燃料室 410:ターミナルプレート 420:ターミナルプレート 430:ターミナルプレート貫通孔 510:絶縁シート 520:絶縁シート 521:凸部 523:凹部 523a:挟角 530:絶縁シート貫通孔 CD:沿面距離 FG:燃料ガス FOG:燃料オフガス OG:酸化剤ガス OOG:酸化剤オフガス Ti:厚さ(シート厚)