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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】塩ビゾル系紫外線硬化型シーリング材
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/06 20060101AFI20220929BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20220929BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20220929BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220929BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20220929BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20220929BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20220929BHJP
   C08L 75/16 20060101ALI20220929BHJP
   C09K 3/10 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
C08L27/06
C08L31/04 Z
C08L33/14
C08K3/013
C08K3/36
C08K3/26
C08L75/04
C08L75/16
C09K3/10 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019181128
(22)【出願日】2019-10-01
(65)【公開番号】P2021055002
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2020-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】598109187
【氏名又は名称】パーカーアサヒ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100150968
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 悠有子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 匡弘
(72)【発明者】
【氏名】石田 栄一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 あゆみ
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-252650(JP,A)
【文献】特開昭60-235881(JP,A)
【文献】特開平06-329973(JP,A)
【文献】特開2009-161711(JP,A)
【文献】特開平06-100852(JP,A)
【文献】特開平02-163146(JP,A)
【文献】特開2010-059355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C09K 3/10- 3/12
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩ビ系樹脂と、極性基(官能基)を有する紫外線硬化樹脂と、ブロックイソシアネート樹脂と、充填剤とを含有する塩ビゾル組成物であって、塩ビ系樹脂として塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体、および/または、塩化ビニルと分子中に水酸基を有するアクリル酸アルキルエステルとの共重合体を含有し、極性基(官能基)を有する紫外線硬化樹脂として水酸基またはアミノ基を有する紫外線硬化樹脂を含有し、充填剤としてシリカおよび表面疎水処理シリカ、または、シリカおよび/または表面疎水処理シリカと、表面処理炭酸カルシウムを含有し、前記塩ビ系樹脂100重量部に対して、前記極性基(官能基)を有する紫外線硬化樹脂を20~100重量部、前記ブロックイソシアネート樹脂を10~50重量部、前記充填剤を50~160重量部含有することを特徴とする塩ビゾル組成物。
【請求項2】
前記塩ビ系樹脂100重量部に対して、さらにウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂を、20~100重量部含有することを特徴とする請求項1記載の塩ビゾル組成物。
【請求項3】
前記塩ビ系樹脂100重量部に対して、前記充填剤としてシリカを0~100重量部含有することを特徴とする請求項1または2に記載の塩ビゾル組成物。
【請求項4】
前記塩ビ系樹脂100重量部に対して、前記充填剤として表面疎水処理シリカを0~100重量部含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の塩ビゾル組成物。
【請求項5】
前記塩ビ系樹脂100重量部に対して、前記充填剤として前記シリカおよび/または表面疎水処理シリカに加え、表面処理炭酸カルシウムを0重量部を越え90重量部迄含有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の塩ビゾル組成物。
【請求項6】
前記塩ビ系樹脂100重量部に対して、重合開始剤を0.5~10重量部含有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の塩ビゾル組成物。
【請求項7】
前記塩ビ系樹脂100重量部に対して、潜在性硬化剤を0~5重量部含有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の塩ビゾル組成物。
【請求項8】
前記塩ビ系樹脂が2種以上の塩ビ系樹脂を混合したことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の塩ビゾル組成物。
【請求項9】
前記ブロックイソシアネート樹脂が2種以上のブロックイソシアネート樹脂を混合したことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の塩ビゾル組成物。
【請求項10】
前記塩ビ系樹脂100重量部に対して、さらに高分子系可塑剤60~210重量部含有することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の塩ビゾル組成物。
【請求項11】
前記高分子系可塑剤が、2種以上の高分子系可塑剤を混合したことを特徴とする請求項10記載の塩ビゾル組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーリング材として用いられる塩ビゾル組成物に関する。さらに詳しくは、紫外線照射により硬化させた後、熱硬化させるシーリング材として用いられる塩ビゾル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シーリング材が自動車の鋼板接合部に用いられる場合には、ライン焼付工程の条件に依存せず使用でき、空気膨張などを抑制できるシーリング材が求められる。従来の紫外線硬化型シーリング材では、鋼板の合わせ目などにおいて、ヘム膨れを抑えるために、シーリング材の塗布厚みを1~2mm程度にする必要があった。厚みを維持することにより、膜強度を高め、ヘム膨れに対する耐圧力を上げる必要があった。
そこで従来、紫外線照射による紫外線硬化樹脂の硬化で材料を固定化することができる紫外線硬化型シーリング材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の技術は、紫外線硬化型シーリング材の光透過率を向上させ、1~3mmの厚さでも深部まで紫外線を照射することができるように、充填剤としてシリカを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-84105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紫外線硬化型シーリング材を、例えば自動車に使用する場合、良質な外観を維持する目的でシーリング材を薄く均す必要があり、塗布厚みを1~2mmに維持することができず、0.1~0.5mmの薄膜となってしまう工程も多く存在する。このような薄膜部分では、シーリング材の膜強度が低下するために、ヘム膨れに対する耐圧力が下がってしまう。
その結果、ヘム膨れが発生してしまい、手直しのための追加の工程を必要とするなど、作業効率の低下が問題となっている。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、このような薄膜であっても、シーリング材の膜強度が低下することなく、ヘム膨れに対する耐圧力が高い、塩ビゾルを主成分とする紫外線硬化型シーリング材を提供するものである。
具体的には、紫外線硬化樹脂の主骨格に極性基(官能基)を含有する紫外線硬化樹脂を使用することによって、紫外線硬化したシーリング材と電着塗装塗面との付着力を向上させることができ、ヘム膨れに対する耐圧力を高めた、塩ビゾルを主成分とする紫外線硬化型シーリング材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者などは前記課題を解決するべく鋭意検討の結果、塩ビ系樹脂と、極性基(官能基)を有する紫外線硬化樹脂と、ブロックイソシアネート樹脂と、充填剤とを含有する塩ビゾル組成物において、電着塗装塗面との付着力を向上させた、ヘム膨れに対する耐圧力が高い塩ビゾル組成物が得られることを知見した。
(1)本発明の塩ビゾル組成物はかかる知見に基づきなされたもので、塩ビ系樹脂と、極性基(官能基)を有する紫外線硬化樹脂と、ブロックイソシアネート樹脂と、充填剤とを含有する塩ビゾル組成物であって、前記塩ビ系樹脂100重量部に対して、前記極性基(官能基)を有する紫外線硬化樹脂を20~100重量部、前記ブロックイソシアネート樹脂を10~50重量部、前記充填剤を50~160重量部含有する。
(2)また、上記(1)記載の塩ビゾル組成物において、さらにウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂を、前記塩ビ系樹脂100重量部に対して、20~100重量部含有することを特徴とする。
(3)また、上記(1)または(2)に記載の塩ビゾル組成物において、前記塩ビ系樹脂100重量部に対して、前記充填剤としてシリカを0~100重量部含有することを特徴とする。
(4)また、上記(1)~(3)のいずれか記載の塩ビゾル組成物において、前記塩ビ系樹脂100重量部に対して、前記充填剤として表面疎水処理シリカを0~100重量部含有することを特徴とする。
(5)また、上記(1)~(4)のいずれかに記載の塩ビゾル組成物において、前記塩ビ系樹脂100重量部に対して、前記充填剤としてシリカおよび/または表面疎水処理シリカに加え、表面処理炭酸カルシウムを0~90重量部含有することを特徴とする。
(6)また、上記(1)~(5)のいずれかに記載の塩ビゾル組成物において、前記塩ビ系樹脂100重量部に対して、重合開始剤を0.5~10重量部含有することを特徴とする。
(7)また、上記(1)~(6)のいずれかに記載の塩ビゾル組成物において、前記塩ビ系樹脂100重量部に対して、潜在性硬化剤を0~5重量部含有すること特徴とする。
(8)また、上記(1)~(7)のいずれかに記載の塩ビゾル組成物において、前記塩ビ系樹脂が2種以上の塩ビ系樹脂を混合したことを特徴とする。
(9)また、上記(1)~(8)のいずれかに記載の塩ビゾル組成物において、前記ブロックイソシアネート樹脂が2種以上のブロックイソシアネート樹脂を混合したことを特徴とする。
(10)また、上記(1)~(9)のいずれかに記載の塩ビゾル組成物において、前記塩ビ系樹脂100重量部に対して、さらに高分子系可塑剤60~210重量部含有することを特徴とする。
(11)また、上記(10)記載の塩ビゾル組成物において、前記高分子系可塑剤が2種以上の高分子系可塑剤を混合したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の塩ビゾル組成物においては、電着塗装塗面との付着力を向上させ、ヘム膨れに対する耐圧力を高め、そのため、ヘム膨れを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る塩ビゾル組成物の実施形態を説明する。
本発明に係る塩ビゾル組成物は、例えば自動車の鋼板接合部のシーリング材、床裏やホイールハウスなどの車両部分に使用されるアンダーコート材、ロッカーパネル、ドア下部やフェンダーなどに使用される耐チッピング材などとして使用することができる。
本発明に係る塩ビゾル組成物がシーリング材として用いられる場合、通常0.1~3mm程度の厚みで使用(塗布)される。
【0009】
発明に係るシーリング組成物は、塩ビ系樹脂と、極性基(官能基)を有する紫外線硬化樹脂と、ブロックイソシアネート樹脂と、充填剤とを含有する塩ビゾル組成物であって、前記塩ビ系樹脂100重量部に対して、前記極性基(官能基)を有する紫外線硬化樹脂を20~100重量部、前記ブロックイソシアネート樹脂を10~50重量部、前記充填剤を50~160重量部含有する。
また、さらにウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂を含有してもよく、前記充填剤としてシリカ、表面疎水処理シリカ、表面処理炭酸カルシウムを含有してもよく、潜在性硬化剤は、前記塩ビ系樹脂100質量部に対して、5質量部以下含有されることが好ましく、前記塩ビ系樹脂が2種以上の塩ビ系樹脂を混合して含有しても良く、前記ブロックイソシアネート樹脂が2種以上のブロックイソシアネート樹脂を混合して含有してもよく、さらに高分子系可塑剤を1種または2種以上混合して含有してもよい。
【0010】
前記塩ビ系樹脂としては、例えば、塩化ビニルの単独重合体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどのカルボン酸ビニルとの共重合体、アクリル酸アルキルエステル、またはメタクリル酸アルキルエステルなどのアクリル酸エステル、もしくはメタクリル酸エステルとの共重合体、およびこれらの混合物を使用することができる。本発明においては、酢酸ビニルとの共重合体、アクリル酸アルキルエステル、またはメタクリル酸アルキルエステルとの共重合体が好ましく、分子中に水酸基などの極性基を有するアクリル酸アルキルエステルとの共重合体がより好ましい。
また、2種以上の塩ビ系樹脂を混合して用いてもよく、組成の異なる2種以上の塩ビ系樹脂を併用することが、本発明のシーリング材の物性向上のために好ましい。
【0011】
前記紫外線硬化樹脂としては、分子中に極性基(官能基)を有するものが好ましく用いられる。極性基(官能基)としては特に限定されるものではないが、水酸基、アミノ基などの極性基が好ましく、分子中に水酸基を有する紫外線硬化樹脂がより好ましく用いられる。
【0012】
また、前記紫外線硬化樹脂としては、反応性ウレタンオリゴマーであって、イソシアネートとポリオールを反応させたウレタン構造を持ち、かつ、分子末端がアクリロイル基などのラジカル重合性の炭素-炭素二重結合を有するオリゴマーを使用することができる。
【0013】
前記イソシアネートとしては、脂肪族系イソシアネートまたは芳香族系イソシアネートを使用することができる。
脂肪族系イソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネートを使用することができる。
芳香族系イソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4、4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニレンジイソアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、または上記のアダクト体、ヌレート体、ビュレット体などを使用することができる。
その他、イソホロンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネートなどを使用することができる。
【0014】
前記ポリオールとしては、代表的なものでは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールを使用することができる。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、しょ糖、アコニット糖、トリメリット酸、ヘミメリット酸、燐酸、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリイソプロパノールアミン、ピロガロール、ジヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフタール酸、1,2,3-プロパントリチオールなどの活性水素原子を少なくとも2個有する化合物の1種または2種以上を開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレンなどのモノマーの1種または2種以上を常法により付加重合したもの、または上記モノマーをカチオン触媒、プロトン酸、ルイス酸などを触媒として開環重合したものを使用することができる。
【0015】
ポリエステルポリオールとしては、縮合ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオールを含むポリエステルポリオールなどを使用することができる。
その他、ポリブタジエン系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリエーテルポリオールの中でアクリロニトリル単独またはアクリロニトリルとスチレン、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよび酢酸ビニルの群から選ばれる少なくも1種との混合モノマーを重合またはグラフト重合させたポリマーポリオールなどを使用することができる。
【0016】
紫外線硬化樹脂は、極性基(官能基)を有する紫外線硬化樹脂、例えば極性基(官能基)を有するエポキシ系紫外線硬化樹脂を使用することが好ましく、紫外線硬化後の シーリング材と素地との付着力を増大させることができる。ここで、極性基(官能基)としては、水酸基、アミノ基などの水素結合を形成できる官能基が好ましく、水酸基が特に好ましい。
塩ビ系樹脂100重量部に対して、極性基(官能基)を有する紫外線硬化樹脂を20~100重量部含有させることが好ましく、20~90重量部含有させることがより好ましい。20重量部未満であるとシーリング材と電着塗装塗面との付着力が不十分となり、100重量部を超えると、シーリング材として必要な柔軟性が得られないからである。
また、ウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂を併用してもよく、柔軟性をさらに高め、電着塗装塗面との付着力を向上させることができるという効果が期待できる。塩ビ系樹脂100重量部に対して、ウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂を20~100重量部含有させることが好ましく、20~90重量部含有させることがより好ましい。20重量部未満であると必要な柔軟性が得られなく、100重量部を超えると、電着塗装塗面との付着力が低下する恐れがある。
【0017】
前記重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン系、アルキルフェノン系(ベンジルジメチルケタール、α-ヒドロキシアルキルフェノン、α-アミノアルキルフェノンなど)、アシルフォスフィンオキサイド系(モノアシルフォスフィンオキサイド、ビスアシルフォスフィンオキサイドなど)、チタノセン系、オキシムエステル系、オキシフェニル酢酸エステル系、テトラメチルチウラムジスルフィドなどの硫黄化合物などを使用することができる。
【0018】
重合開始剤の中でも、厚膜時において深部まで紫外線硬化させる必要から、アシルフォスフィンオキサイド系化合物を使用することが好ましい。また、アシルフォスフィンオキサイド系化合物にアルキルフェノン系のα-ヒドロキシアルキルフェノン系化合物を混合することが好ましい。重合効率の向上および表面硬化の促進を図ることができるからである。また、重合開始剤は表面硬化の促進と、深部までの硬化を促進する2系統を併用してもよい。
重合開始剤は、塩ビ系樹脂100重量部に対して、重合開始剤を0.5~10重量部含有させることが好ましい。0.5重量部未満であると、紫外線硬化が不十分となり、10重量部を超えると、未反応物が多量に残り、塗膜性能が低下するからである。
【0019】
密着剤としてのブロックイソシアネート樹脂としては、アミン系ブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマーを使用するのが好ましい。アミン系ブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマーは、イソシアネート、およびポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールなどのポリオールを反応させて得られるポリウレタンの残存イソシアネートを、アミン系ブロック剤を用いてブロックしたものである。
【0020】
ブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマーは、以下の手順に従って製造することができる。まず、ポリオールと過剰のポリイソシアネート化合物を反応させ、末端NCO含有ウレタンプレポリマーを得る。
【0021】
前記ポリオールとしては、代表的なものでは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールを使用することができる。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、しょ糖、アコニット糖、トリメリット酸、ヘミメリット酸、燐酸、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリイソプロパノールアミン、ピロガロール、ジヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフタール酸、1,2,3-プロパントリチオールなどの活性水素原子を少なくとも2個有する化合物の1種または2種以上を開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレンなどのモノマーの1種または2種以上を常法により付加重合したもの、または上記モノマーをカチオン触媒、プロトン酸、ルイス酸などを触媒として開環重合したものを使用することができる。
【0022】
ポリエステルポリオールとしては、縮合ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオールを含むポリエステルポリオールなどを使用することができる。
その他、ポリブタジエン系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリエーテルポリオールの中でアクリロニトリル単独またはアクリロニトリルとスチレン、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよび酢酸ビニルの群から選ばれる少なくも1種との混合モノマーを重合またはグラフト重合させたポリマーポリオールなどを使用することができる。
【0023】
前記ポリイソシアネート化合物としては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族系イソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロへキシルイソシアネート)、メチル2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロへキサン、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードMDI、2,4-または2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、1,3-または1,4-キシリレンジイソシアネート、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンなどの脂環式または芳香族系イソシアネートなどを使用することができる。その他、イソホロンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネートなどを使用することができる。
【0024】
次に、末端NCO含有ウレタンプレポリマーを適当なアミン系ブロック剤と反応させて遊離のNCOをブロック化することにより、目的のアミン系ブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマーを得る。
アミン系ブロック剤としては、例えば、ジシクロへキシルアミンなどのアミン化合物を使用することができる。
【0025】
密着剤としてのブロックイソシアネート樹脂として、オキシム系ブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマー、アミン系ブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマーなどを使用するのも好ましい。
ブロックイソシアネート樹脂は、塩ビ系樹脂100重量部に対して、10~50重量部含有させることが好ましい。10重量部未満であると必要な電着塗装塗面との付着力が得られなく、50重量部を超えると、粘度が上昇し、塗布作業性が悪化するからである。また、組成の異なる2種以上のブロックイソシアネート樹脂を併用することが、本発明のシーリング材の物性向上のために好ましい。
【0026】
紫外線硬化樹脂は長期間放置すると、空気中の酸素により酸素阻害が発生し、架橋密度が低下するところ、アミンがブロック剤として結合すると、アミンが塩基性として作用し、紫外線硬化樹脂の酸素阻害を抑制する効果を発揮する。したがって、紫外線硬化樹脂の架橋密度が保たれ、紫外線硬化時の物性を保持できる。さらに架橋密度が高いため、外部からの水分の影響を受けにくくすることができる。
【0027】
潜在性硬化剤としては、例えばポリアミン系および変性物、芳香族アミン系および変性物、ヒドラジド系などをあげることができ、常温不活性であるが、特に加温により活性しイソシアネートと反応するものであればいずれも使用することができる。潜在性硬化剤は、塩ビ系樹脂100質量部に対して、5質量部以下含有されることが好ましく、含有しないことが特に好ましい。5質量部を超えると硬化物性が低下するからである。潜在性硬化剤は安定な硬化剤であるが、添加することによって安定性、着色性に影響を及ぼす傾向があり、発明に係るシーリング組成物においては含まないことが望ましい。
【0028】
前記充填剤としては、シリカが好ましく用いられるが、シリカに加え、例えば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、珪藻土、タルクなどの無機充填剤を使用することができる。充填剤は、シリカに加え、これら無機充填剤の1種を単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。特に光透過性の高いシリカと表面疎水処理シリカ、および/または表面処理炭酸カルシウムの併用が好適である。
【0029】
充填剤はシリカと表面疎水処理シリカ、および/または表面処理炭酸カルシウムを混合して用いるのが好ましい。高温高湿度雰囲気下で長時間放置されると、シーリング材に入り込んだ水分によりシリカが凝集し、紫外線硬化時でのシーリング材の物性を低下させていたところ、シリカの一部を表面疎水処理シリカ、および表面処理炭酸カルシウムに置き換えることで、水分によるシリカの凝集を少なくし、高温高湿度雰囲気下で長時間放置された後の吸湿によるシーリング材の物性低下を軽減することができるためである。
充填剤としてのシリカは、塩ビ系樹脂100重量部に対して、0~100重量部含有させることが好ましく、30~70重量部含有させることがより好ましい。30重量部未満であると粘度が低くなる傾向があり、表面疎水処理シリカなどで代替する必要が生じる。また、100重量部を超えると、伸び率が得られなくなる。
表面疎水処理シリカは、塩ビ系樹脂100重量部に対して、0~100重量部含有させることが好ましく、30~90重量部含有させることがより好ましい。30重量部未満であると必要な柔軟性が得られなる傾向があり、100重量部を超えると、電着塗装塗面との付着力が低下する恐れがある。
表面処理炭酸カルシウムは、塩ビ系樹脂100重量部に対して、0~90重量部含有させることが好ましい。90重量部を超えると、電着塗装塗面との付着力が低下する他、紫外線の透過率が下がり硬化性が低下するからである。
【0030】
可塑剤としては、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸オクチルベンジル(OBzP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジノニル(DNP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)等のフタル酸エステル、アジピン酸ジオクチル(DOA)等のアジピン酸エステル、トリメリット酸トリオクチル(TOTM)などのトリメリット酸エステル、ブチルフタリルブチルグリコレート(BPBG)、ジオクチルアゼレート(DOZ)、ジオクチルセバケート(DOS)、アジピン酸系ポリエステル可塑剤、フタル酸系ポリエステル可塑剤を用いることができるが、アジピン酸系ポリエステル可塑剤、フタル酸系ポリエステル可塑剤などの高分子系可塑剤を使用することが好ましい。この場合、分子量の異なる2種以上の高分子系可塑剤を併用することが、本発明のシーリング材の物性向上のために好ましい。
また、高分子系可塑剤は、塩ビ系樹脂100重量部に対して、60~210重量部含有させることが好ましく、80~210重量部含有させることがより好ましい。80重量部未満であると必要な柔軟性が得られなる傾向があり、210重量部を超えると、電着塗装塗面との付着力が低下する恐れがある。
【0031】
本発明に係る塩ビゾル組成物においては、必要に応じて、チキソ付与剤、熱ラジカル発生剤、炭化水素系溶剤などの添加剤を加えても良い。
【実施例
【0032】
以下、本発明に係る塩ビゾル組成物について実施例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
以下の原料を使用し、表1~2で示される配合により、実施例1~29および比較例1~5の塩ビゾル組成物を作成した。
【0033】
[配合原料]
(1)塩ビ系樹脂
A:分子中に極性基を有する共重合体((株)カネカ製 MH-100)
B:酢酸ビニルとの共重合体((株)カネカ製 PCH-175)
(2)アクリル系樹脂
汎用アクリル系樹脂((株)三菱レイヨン製 LP-3106)
(3)紫外線硬化樹脂
E:極性基(官能基)を有する紫外線硬化樹脂(東亞合成(株)製 M-5700)
F:ウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂(アルケマ(株)製 CN978)
(4)重合開始剤:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(アシルフォスフィンオキサイド系)(BASF社製 IRGACURE819)
(5)潜在性硬化剤(粉体):ポリアミン系((株)ADEKA製 EH3731S)
(6)密着剤
G:アミン系ブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマー(ダウ・ケミカル社製 XMN3030)
H:オキシム系ブロックイソシアネート含有ウレタンプレポリマー((株)ADEKA製 QR9401-1)
(7)充填剤:シリカ((株)トクヤマ製 レオロシール)
表面疎水処理シリカ(アエロジル社製 RY200S)
表面処理炭酸カルシウム(竹原化学工業(株)製 ネオライトSP)
(8)可塑剤:
汎用可塑剤:DINP((株)ジェイ・プラス製)
I:高分子系可塑剤:(LANXESS社製 MESAMOLL)
J:高分子系可塑剤:((株)ADEKA製 PN-350N)
【0034】
[試験および評価方法]
上記実施例および比較例に対して、下記の条件で評価を行い、その結果を表1に示す。
(1)粘度
BH粘度計を用いて粘度を測定した。
評価基準 150~190Pa・sを合格とした。
(2)耐圧力評価
a)電着塗料との付着力(紫外線硬化後)評価
各例を70mm×70mmの鋼板製の試験片に膜厚0.5mmで塗布し、紫外線を照射(照射条件:2000mJ/cm)した後、圧力試験機にセットした。
圧力試験機の空気圧を徐々に上げ、一定圧力において30秒間保持した状態での空気漏れの有無を確認し、空気漏れが生じたときの空気圧(kPa)を膨れ耐圧力の値とした。
評価基準 35kPa以上を合格とした。
(3)塗装適正評価
a)伸び率
各例を離型紙上に塗膜2mmで塗布し、紫外線を照射(照射条件:1000mJ/cm)した後、140℃で25分焼付を行った。その後、2号ダンベルで打ち抜き、引張り速度50mm/minで引張り、破断時の伸び率を算出した。
評価基準 伸び率150%以上を合格とした。
b)引張強度
各例を離型紙上に塗膜2mmで塗布し、紫外線を照射(照射条件:1000mJ/cm)した後、140℃で25分焼付を行った。その後、2号ダンベルで打ち抜き、引張り速度50mm/minで引張り、破断時の最大強度を算出した。
評価基準 引張強度0.8MPa以上を合格とした。
c)硬さ
各例を離型紙上に塗膜2mmで塗布し、紫外線を照射(照射条件:1000mJ/cm)した後、140℃で25分焼付を行った。シートを重ね、厚み10mmの硬さをA型硬度計にて算出した。
評価基準 硬さ50~90を合格とした。
d)電着塗料との接着性
各例を70mm×150mmの電着塗装した鋼板製の試験片に膜厚2mm、幅10mm、長さ100mmで塗布し、紫外線を照射(照射条件:1000mJ/cm)した後、130℃で12分焼付けた。その後、電着鋼板との密着性を爪で剥がし確認した。
凝集破壊(Cohesive failure、Cf)、界面破壊(接着破壊、Adhesive Failure、Af)、および一部に界面破壊が発生した凝集破壊(Af、Cf混在)のいずれかで評価した。
評価基準 界面破壊および界面破壊が発生した凝集破壊(一部でも界面破壊が発生したもの)については不適と評価した。
e)塗料付着性
各例を70mm×150mmの電着塗装した鋼板製の試験片に膜厚2mm、幅50mm、長さ100mmで塗布し、紫外線を照射(照射条件:1000mJ/cm)した後、中塗塗料、上塗塗料およびクリアーを塗布し、130℃で12分焼付けた。その後、40℃の恒温水槽において10日放置した後、碁盤目試験を実施した。
評価基準 剥がれなし(0/100)を合格とした。
尚、上記の紫外線照射には、アイグラフィックス社製「UVX-T3-405」を使用し、対象までの距離を50mmとした。
【0035】
このような実施例1~29および比較例1~5の評価結果を表1~2に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
表1~2に示される実施例1~29および比較例1~5の試験結果から、実施例の塩ビゾル組成物の場合、(1)粘度、(2)圧力評価、(3)塗装適正評価の各項目において良好な試験結果を示しており、シーリング材の膜強度が低下することなく、ヘム膨れに対する耐圧力が高い、塩ビゾルを主成分とする紫外線硬化型シーリング材を提供できることが確認できた。