(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
F27B 5/06 20060101AFI20220929BHJP
F27D 7/00 20060101ALI20220929BHJP
F27D 9/00 20060101ALI20220929BHJP
F27B 9/30 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
F27B5/06
F27D7/00 Z
F27D9/00
F27B9/30
(21)【出願番号】P 2019506162
(86)(22)【出願日】2017-08-05
(86)【国際出願番号】 US2017045647
(87)【国際公開番号】W WO2018027209
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-06-05
(32)【優先日】2016-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503459604
【氏名又は名称】カンタール サーマル プロセス,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ペック, ケヴィン
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-511725(JP,A)
【文献】特開2011-145004(JP,A)
【文献】特開2000-327500(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0102415(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 1/00-21/14
F27D 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一又は複数の製品を加熱処理するための熱処理装置(10)であって、
熱処理装置(10)が、
両側の遠位端(11、13)と、複数の制御可能な加熱ゾーン(14)とを有する熱処理チャンバ(12)、
遠位端(11、13)の各々に配置された少なくとも1つの緩衝ゾーン(16)であって、熱処理チャンバ
(12)の緩衝ゾーン(16)と加熱ゾーン(14)が、内面(22)及び外面(24)を有する加熱素子アセンブリ(20)を形成している、緩衝ゾーン(16)、
加熱素子アセンブリ(20)に沿った温度調節媒体(34)の流れのための流路(32)を形成するように離間された、加熱素子アセンブリ(20)の外面(24)の周りに配置された二次シェル(30)、及び
加熱ゾーン(14)内の温度を調整するために入口流路における温度調節媒体の流れを加熱素子アセンブリの異なるゾーンへと方向付けるための手段であって、温度調節媒体(34)の流れの大部分が、加熱素子アセンブリ(20)の中央ゾーンへ送られ、その後、遠位端(11、13)のうちの少なくとも一方へと外側に送られる、手段
を含み、
加熱素子アセンブリ(20)の外面(24)と二次シェル(30)との間の流路(32)が、入口流路を形成し、加熱素子アセンブリの内面(22)と熱処理チャンバ(12)の外面との間に、温度調節媒体(34)の流れのための排気流路(44)を形成する環状空間(42)をさらに含
み、
温度調節媒体(34)の流れを方向付けるための手段が、加熱素子アセンブリ(20)の所望の加熱ゾーン(14)への流れを制御するために、流れを少なくとも2つの異なる方向に分割するように流路(32)に配置された少なくとも1つの障壁(46)を含み、
温度調節媒体(34)が入口流路を通り加熱ゾーン(14)に移動し、その後両遠位端に向けて移動することを特徴とする、
熱処理装置。
【請求項2】
温度調節媒体(34)が、少なくとも2つの異なる方向に流れて、中央ゾーンから両遠位端(11、13)への加熱素子アセンブリ(20)の所望の加熱ゾーン(14)への流れを制御することを特徴とする、請求項1に記載の熱処理装置(10)。
【請求項3】
各
出入口アセンブリ(40)が加熱素子アセンブリ(20)の一部を形成することを特徴とする、各遠位端(11、13)に配置された
出入口アセンブリ(40)をさらに含む、請求項1又は2に記載の熱処理装置(10)。
【請求項4】
加熱素子アセンブリ(20)が、加熱素子アセンブリ(20)の最内面を形成する、加熱素子アセンブリの内面(22)に位置する断熱材料の少なくとも1つの層(36)を含むことを特徴とする、請求項1から
3の何れか一項に記載の熱処理装置(10)。
【請求項5】
温度調節媒体(34)の流れを方向付けるための手段が、断熱材料の少なくとも1つの層(36)に配置された複数の注入口(48)を含むことを特徴とする、請求項
4に記載の熱処理装置(10)。
【請求項6】
円筒形又は非円筒形である、複数の注入口(48)の各々に配置されたインジェクタ(50)をさらに含む、請求項
5に記載の熱処理装置(10)。
【請求項7】
断熱材料の少なくとも1つの層(36)が、高密度の内側耐火層と、そこを通ってインジェクタ(50)へと流れる温度調節媒体(34)の流れを促進するように配置された、より多孔質の外側耐火層(38)とを有することを特徴とする、請求項
6に記載の熱処理装置(10)。
【請求項8】
熱処理チャンバ(12)が中央部分(18)を含み、複数の注入口(48)が、加熱素子アセンブリ
(20)の中央部分(18)の加熱ゾーンにおいて、より高濃度で、かつ、加熱素子アセンブリ(20)の中央部分(18)から遠位に位置した加熱ゾーン(28)において、より低濃度で配置されていることを特徴とする、請求項
5から
7の何れか一項に記載の熱処理装置(10)。
【請求項9】
各
出入口アセンブリ(40)が、排気流路(44)と流体連通した少なくとも1つの排気ダクト(72)を含むことを特徴とする、請求項3に記載の熱処理装置(10)。
【請求項10】
各
出入口アセンブリ(40)が温度調節媒体入口(58)を含み、少なくとも1つの排気ダクト(72)が、温度調節媒体入口(58)内に同軸に配置されていることを特徴とする、請求項
9に記載の熱処理装置(10)。
【請求項11】
熱処理チャンバ(12)が、流体冷却システムを備えた水平熱処理チャンバであることを特徴とする、請求項1から
10の何れか一項に記載の熱処理装置(10)。
【請求項12】
入口流路(32)を排気リング(82)の少なくとも1つの排気ポート(78)に接続するように構成された排気リング(82)を含む、入口流路(32)に排気流を生成するように構成されたエアコレクタ・サブアセンブリ(80)をさらに含んでおり、少なくとも1つの排気ポート(78)は、開位置と閉冷却位置との間を移動するように構成されたシャッターバルブ(90)を介して熱交換器フローカプラー(92)に接続されており、閉位置において入口流路(32)が加圧される、請求項1から
11の何れか一項に記載の熱処理装置(10)。
【請求項13】
熱交換器フローカプラー(92)が、熱交換器(84)に送られる冷却空気流を調整するように構成された可動フローダンパ(94)を含む、請求項
12に記載の熱処理装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一又は複数の製品を、改善された温度制御で加熱処理するための熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの製品は、さまざまな理由から、加熱炉内で熱処理に供されうる。例えば、半導体ウェハの製作では、半導体ウェハは熱硬化に供され、製鋼では、鋼は、該鋼を硬化させるためにアニール処理に供される。温度のわずかな変動が収率に影響を与える可能性があり、温度は特定の時間制御する必要があるかもしれず、また、温度は、しばしば、製造プロセスの次の工程が開始できるように、温度を素早く安定させる必要があるため、半導体製造では、温度を非常に正確に制御する必要があることがよくある。したがって、熱処理を正確に制御できることは不可欠である。
【0003】
能動的流体冷却(Active fluidic cooling)は、バッチ処理加熱炉のサイクルタイムを短縮するためのよく知られた方法である。この事例では、製品は、熱処理チャンバ内に存在し、温度調節媒体は、熱処理装置の温度を調整するために、加熱炉に接続した通路を通るように強いられる。既存のシステムは、一方向フロー方法を含み、それによって、温度調節媒体は、このシステムを有する熱処理チャンバの一方の遠位端で注入され、他方の遠位端で排出され、ここで、温度調節媒体が注入される遠位端は、エネルギーの伝達に起因して、排気端部よりも急速に冷却し、これにより、プロセスサイクルの末端において均等化するのにかなりの時間がかかる、負荷全体にわたる大きな傾斜温度勾配が発生する。
【0004】
温度調節媒体が両方の末端に交互に導入される双方向の流れを導入することによって、幾つかの改善がなされている。この事例では、2つの遠位端間の冷却は、より均一かつバランスがとれているが、しかしながら、中心に向かって移動するにつれて幾らかの熱容量が失われるため、中心部(central mass)は、よりゆっくりと冷える。
【0005】
熱処理チャンバ内でのシリコン基板のバッチ処理では、新世代の熱処理チャンバより大きいバッチサイズ及びより大きいサイズの基板の両方を支持することが要求されており、その両方によって、より高質量の処理される材料がもたらされ、したがって、製品は、例えば600~1200℃の高温で処理されるため、より多くのエネルギーがその質量内に保存される。したがって、既存の冷却システムでは、サイクルタイムが長くなり、その結果、処理能力が低下する。
【0006】
したがって、冷却中の熱均一性を改善することによって得られる利点だけでなく、熱処理システムの冷却能力を高める必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本開示の一態様は、上述の問題及び欠点を解決又は少なくとも低減することである。したがって、本開示は、一又は複数の製品を加熱処理するための熱処理装置を提供し、該アセンブリは、両側の遠位端と、複数の制御可能な加熱ゾーンとを有する熱処理チャンバ;遠位端の各々に配置された少なくとも1つの緩衝ゾーンであって、熱処理チャンバの緩衝ゾーンと加熱ゾーンとが内面及び外面を有する加熱素子アセンブリを形成する、緩衝ゾーン;加熱素子アセンブリに沿った温度調節媒体の流れのための流路を形成するように離間された、加熱素子アセンブリの外面の周りに配置された二次シェル;及び、加熱ゾーンの温度を調整するために、入口流路内の温度調節媒体の流れを加熱アセンブリの異なるゾーンへと方向付けるための手段を含み、ここで、温度調節媒体の流れの大部分は、加熱温度アセンブリの中央ゾーンに送られ、その後、遠位端のうちの少なくとも一方の方へと外側に送られる。
【0008】
ある実施態様によれば、温度調節媒体は、少なくとも2つの異なる方向に流れて、中央ゾーンから両遠位端への加熱素子アセンブリの所望の加熱ゾーンへの流れを制御する。
【0009】
ある実施態様によれば、各玄関(vestibule)アセンブリが加熱素子アセンブリの一部を形成することを特徴とする、玄関アセンブリが各遠位端に配置される。
【0010】
ある実施態様によれば、温度調節媒体の流れを方向付けるための手段は、加熱素子アセンブリの所望の加熱ゾーンへの流れを制御するために、流れを少なくとも2つの異なる方向に分割するように流路に配置された少なくとも1つの障壁を含む。
【0011】
ある実施態様によれば、加熱素子アセンブリの外面と二次シェルとの間の流路は、入口流路を形成し、かつ、温度調節媒体の流れのための排気流路を形成する、加熱素子アセンブリの内面と処理チャンバの外面との間の環状空間をさらに含む。
【0012】
ある実施態様によれば、加熱素子アセンブリは、該加熱素子アセンブリの最内面を形成する、該加熱素子アセンブリの内面に位置する断熱材料の少なくとも1つの層を含む。
【0013】
ある実施態様によれば、温度調節媒体の流れを方向付けるための手段は、断熱材料の少なくとも1つの層に配置された複数の注入口を含む。
【0014】
ある実施態様によれば、断熱材料の少なくとも1つの層は、高密度の内側耐火層と、そこを通ってインジェクタへと流れる温度調節媒体の流れを促進するように配置される、より多孔質の外側耐火層とを有する。
【0015】
ある実施態様によれば、実質的に円筒形又は非円筒形のインジェクタが、複数の注入口の各々に配置される。
【0016】
ある実施態様によれば、熱処理チャンバは中央部分を含み、複数の注入口が、加熱素子アセンブリの中央部分の加熱ゾーンに、より高濃度で配置され、加熱素子アセンブリの中央部分から遠位に位置した加熱ゾーンに、より低濃度で配置される。
【0017】
ある実施態様によれば、各玄関アセンブリは、排気流路と流体連通した少なくとも1つの排気口を含む。
【0018】
ある実施態様によれば、各玄関アセンブリは、温度調節媒体注入接続を含み、少なくとも1つの排気口が、温度調節媒体注入接続内に同軸に配置されている。
【0019】
ある実施態様によれば、処理チャンバは、流体冷却システムを具備した水平熱処理チャンバである。
【0020】
ある実施態様によれば、入口流路を排気リングの少なくとも1つの排気ポートに接続するように構成された排気リングを含むエアコレクタ・サブアセンブリが、入口流路内に排気流を生成するように構成されており、少なくとも1つの排気ポートは、開位置と閉冷却位置との間を移動するように構成されたシャッターバルブを介して熱交換器フローカプラーに接続されており、閉位置において、入口流路が加圧される。
【0021】
ある実施態様によれば、フローカプラーは、熱交換器に送られる冷却空気流を調整するように構成された可動フローダンパを含む。
【0022】
前述の概要、並びに、後述する実施態様の詳細な説明は、添付の図面と併せて読む場合に、よりよく理解されよう。図示される実施態様は、示されている正確な配置及び手段に限定されないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】外側シェルが部分的に取り外された、
図1の熱処理装置の斜視図
【
図5A】注入口及びインジェクタを有する断熱層の部分断面図
【
図8A】インジェクタを通るフローシナリオを示す図
【
図10A】軸方向フィンであるバッフルを示す斜視図
【
図11A】径方向フィンであるバッフルを示す斜視図
【
図13】玄関アセンブリの環状チャネルの部分斜視図
【
図14】
図15から17に示されるプロットに用いられる、熱処理チャンバに沿ったゾーンを示す図
【
図15】一方向冷却を採用する場合の熱処理チャンバにわたる温度プロファイルのプロット
【
図16】双方向冷却を採用する場合の熱処理チャンバにわたる温度プロファイルのプロット
【
図17】本開示のデバイスを採用する場合、すなわち、注入点が加熱ゾーンの中央である場合の熱処理チャンバにわたる温度プロファイルのプロット
【
図18】入口流路と連通するエアコレクタ・サブアセンブリ
【
図20】流路をシステム排気熱交換器に連結し、排気ドローを調整する手段を提供するエアコレクタ・サブアセンブリ
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1から3を参照すると、一又は複数の製品を加熱処理するための熱処理装置10は、複数の制御可能な加熱ゾーン14(
図3)を有する熱処理チャンバ12(
図3)を含む。処理される製品は、例えば、硬化又はドープのため、若しくは鋼のアニールにおける、半導体ウェハを含みうる。
【0025】
図3に示されるように、少なくとも1つの緩衝ゾーン16は、遠位端11、13の各々に配置される。熱処理チャンバ12の緩衝ゾーン16及び加熱ゾーン14は、加熱素子アセンブリ20を形成する。加熱アセンブリ20は、内面22及び外面24を有する。二次シェル30は、加熱素子アセンブリ20の外面24の周りに配置され、そこから離間されて、加熱素子アセンブリ20に沿った温度調節媒体34の流れのための入口流路32を形成する。二次シェル30は、アルミニウム又はステンレス鋼でできていてよい。しかしながら、他の材料をシェル30並びに加熱素子アセンブリに使用することができることが認識されるべきである。温度調節媒体34は、空気又は実施されるプロセスに適用可能な他のガスでありうる。熱処理チャンバ12及び加熱素子アセンブリ20は、実質的に円筒形でありうる。
【0026】
本明細書でさらに説明されるように、流路32は、加熱ゾーン14の温度を調整するために流路内の温度調節媒体の流れを加熱アセンブリの異なるゾーンへと方向付けるための手段を含む。温度調節媒体は冷却要件に比例して正しい量で正しい領域に供給されるため、これは、冷却中の改善された熱均一性を可能にし、したがって、熱処理が完了した後の回復時間を短縮し、それによって装置のスループットを増加させる。
【0027】
図1に示されるように、熱処理装置は、各遠位端に配置された複数の玄関アセンブリ40を含み、該玄関アセンブリ40は、加熱素子アセンブリの一部を形成する。本明細書でさらに説明されるように、各玄関アセンブリ40は、流路32と流体連通している。
【0028】
上で述べたように、通路32内の温度調節媒体の入口流の方向を制御することができる。
図2及び3に示されるように、流れを少なくとも2つの異なる方向に分割し、加熱素子アセンブリの所望の加熱ゾーン14への流れを制御するために、少なくとも1つの障壁46が流路32に配置されている。障壁は、金属又は断熱材又はそれらの組合せでできていてよく、典型的には、流路を等分に分割する。
【0029】
先に述べたように、加熱素子アセンブリ20の外面24と二次シェル30との間の流路32は、入口流路を形成する。再び
図3を参照すると、環状空間42が、加熱素子アセンブリ20の内面22と処理チャンバ12の外面26との間に存在する。環状空間42は、入口流路32から通過する際に、温度調節媒体の流れ34のための排気流路44を形成する。
【0030】
図3に示されるように、断熱材料の少なくとも1つの層36は、環状空間42内の加熱素子アセンブリの内面22に配置される。断熱材料の少なくとも1つの層36は、加熱素子アセンブリの最内面を形成する。障壁46に加えて、温度調節媒体34の流れを方向付けるための手段は、断熱材料の少なくとも1つの層36に配置された複数の注入口48を含む。
【0031】
上述のように、温度調節媒体34は、玄関アセンブリ40から入口流路32を通って流れるため、それは、障壁46に遭遇すると、2つ以上の入口流プレナムに分離又は分割される。2つ以上の流れプレナムへと分割された入口流路を有することにより、温度調節媒体の流体容量が増大し、したがって、より高い冷却速度がもたらされる。2つ以上の流れプレナムは、個別に加圧することができ、したがって、チャンバの異なる領域について流れを別々に調整することができる。温度調節媒体の流れは、各端部の玄関に印加される真空度を調整することによって、チャンバの異なる領域の冷却要件に適切に配分されることができる。
【0032】
温度調節媒体34は、その後、注入口48を通って排気流路44に入る。以下にさらに説明されるように、最も冷たい温度調節媒体はそれが最も必要とされる熱処理装置の中心に導入されて、熱処理されている製品塊にわたってはるかに均一な冷却速度を生じる。よって、効率を改善するために、温度調節媒体の大部分は、アセンブリの中央部分18に供給することができ、それによって、その中の冷却流体容量を増加させる。よって、温度調節媒体は、中央ゾーンでは加熱ゾーンへと流れ、その後、アセンブリの少なくとも一方の端部に向かって外側へ、又は両端部へと2つの異なる方向に流れる。
【0033】
再び
図2から4を参照すると、熱処理チャンバ12は中央部分18を含み、複数の注入口48は、加熱ゾーン14全体にわたって冷却流を有利に配分するように、加熱素子アセンブリの中央部分18の加熱ゾーンでは、より高濃度で、及び加熱素子アセンブリの中央部分18から遠位に位置した加熱ゾーン28では、より低濃度で、配置されうる。
【0034】
図5A及び5Bを参照すると、断熱材料36の層は、より多孔質の外側耐火層38を有する高密度の内側耐火層であってよく、外側耐火層は、温度調節媒体の流れ34を促進することができ、かつ、熱損失及びインジェクタによって作り出されたコールドスポットを最小限に抑えることができる。例えば、高密度の内側耐火層36は、約12mmと約100mmの間、例えば約32mmの典型的な厚さを有する成形耐火ファイバーから作ることができ、より多孔質の外側耐火層38は、6から75mmの間、例えば約12mmの典型的な厚さを有する耐火セラミックファイバーブランケットで作ることができる。
【0035】
注入口48は、高密度の内側耐火層36のみを貫通し、より多孔質の外側耐火層38を貫通しない(
図5A)か、あるいは、内側耐火層36及び外側耐火層38の両方を貫通する(
図5B)のいずれかでありうる。破線の矢印で示すように、冷却媒体34を層に強制的に通すことができる。
【0036】
二次シェル30は、外側耐火層38と組み合わせて使用することができ、そこには、ポートの位置に対応する穴があいている。インジェクタ50は、複数の注入口48のそれぞれに配置することができる。
図6に示されるように、各インジェクタ50は、インジェクタヘッド52及び本体54を含む。
【0037】
図7を参照すると、熱処理チャンバ12に接する仮想線(L1)と注入ポートの軸(L2)との間の角度(α)は、典型的には約30°~90°である。角度(α)は、チャンバ内で処理されている材料からインジェクタの開口部を離れる方向に向けるために変更することができ、これにより、さらに温度均一性を改善することができる。
【0038】
インジェクタは、低伝導率及び良好な熱衝撃抵抗を有するセラミック材料から作ることができる。インジェクタ50は、例えば、約6mmの外径及び約5mmの内径を有するなど、約3mmから約10mmの直径を有する、実質的に円筒形でありうる。注入口50はまた、非円筒形であってもよい。インジェクタの構成により、放熱面を貫通するインジェクタ開口部からの熱損失を最小限に抑える。
【0039】
インジェクタの直径は、冷却流体媒体34が、断熱材36を介して非常に大きな圧力降下を生じることなく、多孔質断熱体36を通って流れるのに十分な面積を提供するために選択される。
図8A参照。したがって、インジェクタ50は、
図6に見られるように、比較的大きい直径及び浅い深さを有するヘッドスペースを有しうる。さらには、この特徴は、温度調節媒体の流れの衝突点に、多孔質断熱体の内面とインジェクタとの間の所望の間隔を維持するのに役立つ幾らかの背圧を生じさせる。
図8Bを参照すると、多孔質断熱体がその厚さにわたって生じる圧力差から変形及び崩壊することが許容される場合、それは、温度調節媒体34’が流れることができる表面積を縮小させ、したがってインジェクタを通る流れF’を減少させる。
【0040】
図3及び9を参照すると、先に述べたように、熱処理チャンバ12は、加熱素子20の外面24と二次シェル30との間の入口流32路内に障壁46を含む。1つの障壁のみが示されているが、複数の障壁46が設けられてよいことが認識されるべきである。障壁46は、
図9に示されるように、バッフル56でありうる。
【0041】
バッフルは、静的対流を遮断し、温度調節媒体の流れ34の優先方向をそらすために使用することができ、さらには、加熱素子アセンブリと二次シェル30との間の正しい幾何学形状を維持するために、機械的支持を提供するために使用することができる。
図10A及び10Bを参照すると、障壁は、加熱素子アセンブリ20の外面24の長さに沿って部分的に又は完全に延びる、軸方向フィン64でありうる。複数の注入口48は、媒体34の流れがポート48の上、従ってインジェクタ50の上に向けられるように、加熱アセンブリ内のフィン間に分配されうる。
【0042】
バッフルはまた、
図11A及び11Bに示されるように、加熱アセンブリ20の周りに延在する径方向フィン68であってもよい。注入口48及びインジェクタ50は、先に述べたように、媒体34の流れを方向付けるために径方向フィン68に配置することができる。
【0043】
図12を参照すると、熱処理チャンバの両端の玄関アセンブリ40には、筐体68に配置された少なくとも1つの温度調節媒体入口58と少なくとも1つの排気出口60とが含まれている。環状排気チャネル70は、排気ダクト72に接続されている。排気チャネル70は、一連の排気ポート74が表面上に放射状に分布しているアクティブ加熱領域に近接した、内側ポート表面である。
図13に示されるように、表面は処理チャンバの中心軸に対して角度βで優先的に配向されており、ここで、角度βは約45°であり、それによって、表面が処理チャンバの中心軸に対して90度の角度で配向されている場合よりも大きい直径の排気ポートを含む、より大きい表面積を有する円錐台として表面が構成される。排気ポート74は、円筒形のポートとして構成された場合に、直径約9mmから約25mmの直径を有しうる。排気ポートはまた、玄関ポート面を通る最適な流れ特性を達成するのに適切なように、非円筒形形状に構成されてもよい。
【0044】
再び
図12を参照すると、ダクト72は、排気出口ポート60と連通しており、筐体68内に配置される。冷却媒体は、筐体の玄関を満たし、同軸構成でダクト72を取り囲む。言い換えれば、入口及び出口流路は、温度調節媒体入口58内に含まれる高温排気ダクト72と同軸構成で熱処理チャンバに優先的に接続される。この配置により、高温の排気管から熱処理チャンバ周辺の環境への熱伝達を最小限に抑え、安全性、熱安定性、及びそれが取り付けられているシステムの保守にプラスの効果をもたらす。
【0045】
熱処理装置は、任意の種類のマルチゾーン冷却プロセスであってよく、特に、流体冷却システムを具備した水平熱処理チャンバに使用することができる。全体的な構成は、複雑な配管システムを備えた他のシステムと比較して複雑性が軽減され、機械的調整が不要な堅牢設計を有している。温度均一性の向上は、チャンバ全体のにわたる温度プロファイルを比較することによって実証することができる。
図14は、緩衝ゾーン16に関するゾーンB1及びB2、中央部分18から遠位の加熱ゾーン28に関するC1及びC3、並びに加熱ゾーン14の中央部分18に関するC2を示している。
【0046】
一方向冷却フローの事例では、熱処理装置の長さにわたる温度プロファイルは、温度調節媒体がB1で注入され、B2で抽出される温度プロファイルの例を示す、
図15で見ることができる。
【0047】
見てわかるように、温度調節媒体が注入される端部は最速で冷え、エネルギーが排気端部に伝達する間に、冷却ははるかに遅くなり、したがって、負荷にわたる大きい傾斜勾配を残し、これは、プロセスサイクルの末端で均等化するのにかなりの時間がかかる。
【0048】
図16は、双方向冷却フローについての事例を示している。この事例では、温度調節媒体の注入点と抽出点がB1とB2の間で交互になっており、温度プロファイルはより均一で端部から端部までバランスがとれているが、温度調節媒体は端部に注入されるため、中央部分の冷却は遅くなり、したがって、中央部分に熱が移動するたけでなく、中央の方へと移動するときに熱容量が失われ、したがって、プロセスサイクルの終わりに均等化するには、まだ時間がかかることが分かる。
【0049】
図17は、本開示に記載される熱処理装置に由来する温度プロファイルを示している。本開示は、本質的に、注入点が加熱ゾーンの中央にあることを意味する。その結果、プロセスサイクルの終わりの温度プロファイルは、はるかに均一である。したがって、これは、プロセス終了時の回復時間を短縮し、したがって、より高いスループットが得られる。
【0050】
加熱素子アセンブリ20の熱膨張による二次シェル30の損傷を防ぐために、熱処理装置10に対してさらなる修正を行うことが好ましい場合がある。第一に、加熱素子アセンブリの外面24に用いられる材料は、低い熱膨張係数(Cte)を有するステンレス鋼で作ることができ、例えば、ステンレス鋼は11.0~11.5μm/m-°Kの範囲のCteを有している。
【0051】
図18から22を参照すると、熱膨張の結果として生じうる損傷を低減するための設計のさらなる改良は、強制対流を導入することによって達成される。
図18に示されるように、入口流路32(
図19)と連通するエアコレクタ・サブアセンブリ80は、熱処理装置10の二次シェル30の周りに位置付けられた排気リング82を含む。本明細書でさらに説明されるように、かつ
図19に示されるように、空気は、排気リング82の強制対流排気ポート78を介してデバイス10から排出され、それによって、一部の空気流が入口流路32を通過できるようにする。空気は、熱交換器84の手前でポート78から出る。これは、二次シェル30及び加熱素子アセンブリ20の外面の温度を低下させる。
【0052】
強制対流空気は、例えば、およそ25~60立方フィート毎分(cfm)の流量で、入口58から入ることができる。空気は、流路32内を流れ、排気リング82の排気ポート78を通って熱交換器へと出る。この空気の流れは、注入口48に流れ込むのに十分な圧力を発生させないほど十分に低い。
【0053】
図20を参照すると、エアコレクタ・サブアセンブリ80は、流路32をシステム排気熱交換器84に連結し、排気ドロー(exhaust draw)を調整する手段を提供する。ポート78は、シャッターバルブ90を通じて熱交換器フローカプラー92に接続される。カプラー92は、熱交換器と連通し、排気リング82からの流れを調整する手段を提供する。
【0054】
図21及び22に示されるように、カプラー92は、その上に移動可能に取り付けられて前後にスライドして空気バランス孔96を開閉し、シェルの外側を横切って引き込まれる空気の量と、バランスホールを開閉することによって排気リングから引き出される空気の量とのバランスをとる、調整ダンパ94を含む。よって、ダンパ94は、カプラーに沿って軸方向に前後に移動する。
【0055】
加熱素子アセンブリ20上のシャッターバルブ90の存在は、必要に応じて、加熱ゾーン14を急速に冷却する能力を促進する。通常運転中、シャッターバルブ90は、開位置にあり、シャッターバルブ90を閉じると、流路32が加圧され、同時に、流れは、
図12の入口58及び出口60において調整されるか又は増加し、これは、加熱ゾーン14の必要に応じた急速な冷却につながる。よって、加熱素子アセンブリ20の外側の領域の中及び周囲の空気流のバランスは、アセンブリとシェルとの間の流路32を迂回する空気の量を制御するために軸方向に前後にスライドさせることができるダンパ94を有する4つのフローカプラー92を介して調整される。
【0056】
本実施態様は、特定の態様に関して説明されているが、多くの他の変形及び修正、並びに他の使用は当業者に明らかになるであろう。したがって、本実施態様は、本明細書の特定の開示によって限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることが好ましい。