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特許7149261リスニングルーム用に仮想会場を生成するための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】リスニングルーム用に仮想会場を生成するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04S 7/00 20060101AFI20220929BHJP
   G10K 15/00 20060101ALI20220929BHJP
   H04R 3/04 20060101ALI20220929BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H04S7/00 300
G10K15/00 M
G10K15/00 L
H04R3/04
B60R11/02 B
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019508182
(86)(22)【出願日】2017-08-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 US2017049164
(87)【国際公開番号】W WO2018044915
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-07-29
(31)【優先権主張番号】62/380,722
(32)【優先日】2016-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592051453
【氏名又は名称】ハーマン インターナショナル インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】トレステン, クリストファー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ペノック, ジェイムズ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】チョイ, ジェイソン
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0232603(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04S 7/00
G10K 15/00
H04R 3/04
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内のリスニングルームにおいて仮想会場を生成するための装置であって、前記装置は、
車両オーディオコントローラを備え、前記車両オーディオコントローラは、
再生用オーディオソースからエンターテイメントデータを含む入力オーディオ信号を受信することと、
前記車両の前記リスニングルーム内に配置された少なくとも1つのマイクロフォンから少なくとも1つの捕捉オーディオ信号を受信することと、
前記エンターテイメントデータを再生する所望の会場を示す制御信号を受信することと、
前記入力オーディオ信号及び前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの少なくとも1つの残響を調整して、前記車両の前記所望の会場で前記エンターテイメントデータを再生することと、
窓、コンバーチブルトップ、及びサンルーフのうちのいずれか1つが開いている状態にあることを示す車両状態信号を受信することと、
前記車両状態信号が前記窓、前記コンバーチブルトップ、及び前記サンルーフのうちのいずれか1つが前記開いている状態にあることを示すことに応答して、前記入力オーディオ信号の前記残響を調整する前に、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号を消音することと
を実行するように構成されている、装置。
【請求項2】
前記車両オーディオコントローラはさらに、前記入力オーディオ信号及び前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの前記少なくとも1つの前記残響を調整する前に、前記入力オーディオ信号から残響を取り除き、ドライミックス入力オーディオ信号を生成するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記車両オーディオコントローラはさらに、前記入力オーディオ信号及び前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの前記少なくとも1つの前記残響を調整する前に、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号を等化するように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記車両オーディオコントローラはさらに、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号を等化した後で、前記残響を調整する前に、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号上の残響を前記ドライミックス入力オーディオ信号とミックスするように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記車両オーディオコントローラはさらに、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号上の前記残響を前記ドライミックス入力オーディオ信号とミックスして、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号上に存在する車室内の環境ノイズのうちの少なくとも1つを、前記入力オーディオ信号上に存在する前記エンターテイメントデータと混合するように構成されている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記車両オーディオコントローラはさらに、前記入力オーディオ信号のみの前記残響を調整して、前記所望の会場において前記エンターテイメントデータを再生するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号は、前記車両の室内で再生されるエンターテイメントデータ、発話、及び前記車両の内部に入ってくる前記車両の外部からの環境ノイズのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記車両オーディオコントローラはさらに、前記入力オーディオ信号及び前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの前記少なくとも1つを等化して、前記所望の会場内の特定の壁をシミュレートするように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
リスニングルームにおいて仮想会場を生成するための方法であって、前記方法は、
再生用オーディオソースからエンターテイメントデータを含む入力オーディオ信号を受信することと、
前記リスニングルーム内に配置された少なくとも1つのマイクロフォンから少なくとも1つの捕捉オーディオ信号を受信することと、
前記エンターテイメントデータを再生する所望の会場を示す制御信号を受信することと、
前記入力オーディオ信号及び前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの少なくとも1つの残響を調整して、前記リスニングルームの前記所望の会場で前記エンターテイメントデータを再生することと、
窓、コンバーチブルトップ、及びサンルーフのうちのいずれか1つが開いている状態にあることを示す車両状態信号を受信することと、
前記車両状態信号が前記窓、前記コンバーチブルトップ、及び前記サンルーフのうちのいずれか1つが前記開いている状態にあることを示すことに応答して、前記入力オーディオ信号の前記残響を調整する前に、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号を消音することと
を含む、方法。
【請求項10】
前記入力オーディオ信号及び前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの前記少なくとも1つの前記残響を調整する前に、前記入力オーディオ信号から残響を取り除き、ドライミックス入力オーディオ信号を生成することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記入力オーディオ信号及び前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの前記少なくとも1つの前記残響を調整する前に、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号を等化することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号を等化した後で、前記残響を調整する前に、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号上の前記残響を前記ドライミックス入力オーディオ信号とミックスして、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号上に存在する前記リスニングルーム内の環境ノイズのうちの少なくとも1つを、前記入力オーディオ信号上に存在する前記エンターテイメントデータと混合することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記入力オーディオ信号及び前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの前記少なくとも1つを等化して、前記所望の会場内の特定の壁をシミュレートすることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
リスニングルームにおいて仮想会場を生成するようにプログラムされ、非一時的コンピュータ可読媒体に組み込まれたコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品は、
再生用オーディオソースからエンターテイメントデータを含む入力オーディオ信号を受信することと、
前記リスニングルーム内に配置された少なくとも1つのマイクロフォンから少なくとも1つの捕捉オーディオ信号を受信することと、
前記エンターテイメントデータを再生する所望の会場を示す制御信号を受信することと、
前記入力オーディオ信号及び前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの少なくとも1つの残響を調整して、前記所望の会場で前記エンターテイメントデータを再生することと、
窓、コンバーチブルトップ、及びサンルーフのうちのいずれか1つが開いている状態にあることを示す車両状態信号を受信することと、
前記車両状態信号が前記窓、前記コンバーチブルトップ、及び前記サンルーフのうちのいずれか1つが前記開いている状態にあることを示すことに応答して、前記入力オーディオ信号の前記残響を調整する前に、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号を消音することと
を実行する命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項15】
前記入力オーディオ信号及び前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの前記少なくとも1つの前記残響を調整する前に、前記入力オーディオ信号から残響を取り除き、ドライミックス入力オーディオ信号を生成する命令をさらに含む、請求項14に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項16】
前記入力オーディオ信号及び前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの前記少なくとも1つの前記残響を調整する前に、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号を等化する命令をさらに含む、請求項15に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項17】
前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号を等化した後で、前記残響を調整する前に、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号上の残響を前記ドライミックス入力オーディオ信号とミックスする命令をさらに含む、請求項16に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項18】
前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号上の前記残響を前記ドライミックス入力オーディオ信号とミックスして、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号上に存在する前記リスニングルーム内の環境ノイズのうちの少なくとも1つを、前記入力オーディオ信号上に存在する前記エンターテイメントデータと混合する命令をさらに含む、請求項17に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項19】
前記入力オーディオ信号及び前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの前記少なくとも1つを等化して、前記所望の会場内の特定の壁をシミュレートする命令をさらに含む、請求項14に記載のコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年8月29日に出願された米国仮特許出願第62/380,722号の利益を主張し、その開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本明細書に開示される態様は、概して、リスリングルーム用に仮想会場を生成するための装置及び方法に関する。これらの態様及び他の態様は、本明細書においてさらに詳しく論述される。
【背景技術】
【0003】
車両は、例えばスタジアム、フェスティバル、レコーディングスタジオ、コンサートホール(例えば大、中、または小規模)などのような異なる会場により提供されるリスニング環境とは大きく異なるリスニング環境を提供する。一般に、スタジアム、フェスティバル、レコーディングスタジオ、及びコンサートホールなどにおいて取り込まれたオーディオの音声記録は、車両のリスニング環境用にうまく変換されないことがある。例えば、車両内のリスニング環境は、前述の会場のリスニング環境よりもかなり小さい。さらに、車両のリスニング環境は、上記の会場の様々な壁と比較した場合、異なる寸法及び形状の様々な壁(例えば前壁、後壁、側壁、及び上壁)を提供する。車両のリスニング環境を画定する異なる寸法及び形状が原因で、他の会場で取り込まれた音声記録を車両用に変換することは困難となり得る。そのため、車両内のユーザ体験が低下する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
少なくとも1つの実施形態では、車両内のリスニングルームにおいて仮想会場を生成するための装置が提供される。装置は、再生用オーディオソースからエンターテイメントデータを含む入力オーディオ信号を受信し、車両のリスニングルーム内に配置された少なくとも1つのマイクロフォンから少なくとも1つの捕捉オーディオ信号を受信するように構成された車両オーディオコントローラを含む。車両オーディオコントローラはさらに、エンターテイメントデータを再生する所望の会場を示す制御信号を受信し、入力オーディオ信号及び少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの少なくとも1つの残響を調整して、所望の会場でエンターテイメントデータを再生するように構成される。
【0005】
少なくとも別の実施形態では、リスニングルームにおいて仮想会場を生成するための方法が提供される。方法は、再生用オーディオソースからエンターテイメントデータを含む入力オーディオ信号を受信することと、リスニングルーム内に配置された少なくとも1つのマイクロフォンから少なくとも1つの捕捉オーディオ信号を受信することとを含む。方法はさらに、エンターテイメントデータを再生する所望の会場を示す制御信号を受信することと、入力オーディオ信号及び少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの少なくとも1つの残響を調整して、リスニングルームの所望の会場でエンターテイメントデータを再生することとを含む。
【0006】
少なくとも別の実施形態では、リスニングルームにおいて仮想会場を生成するようにプログラムされ、非一時的コンピュータ可読媒体に組み込まれたコンピュータプログラム製品が提供される。コンピュータプログラム製品は、再生用オーディオソースからエンターテイメントデータを含む入力オーディオ信号を受信し、リスニングルーム内に配置された少なくとも1つのマイクロフォンから少なくとも1つの捕捉オーディオ信号を受信する命
令を含む。コンピュータプログラム製品は、エンターテイメントデータを再生する所望の会場を示す制御信号を受信し、入力オーディオ信号及び少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの少なくとも1つの残響を調整して、所望の会場でエンターテイメントデータを再生する命令を含む。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
車両内のリスニングルームにおいて仮想会場を生成するための装置であって、前記装置は、
車両オーディオコントローラを備え、前記車両オーディオコントローラは、
再生用オーディオソースからエンターテイメントデータを含む入力オーディオ信号を受信し、
前記車両の前記リスニングルーム内に配置された少なくとも1つのマイクロフォンから少なくとも1つの捕捉オーディオ信号を受信し、
前記エンターテイメントデータを再生する所望の会場を示す制御信号を受信し、
前記入力オーディオ信号及び前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの少なくとも1つの残響を調整して、前記車両の前記所望の会場で前記エンターテイメントデータを再生する
ように構成されている、前記装置。
(項目2)
前記車両オーディオコントローラはさらに、前記入力オーディオ信号及び前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの前記少なくとも1つの前記残響を調整する前に、前記入力オーディオ信号から残響を取り除き、ドライミックス入力オーディオ信号を生成するように構成されている、項目1に記載の装置。
(項目3)
前記車両オーディオコントローラはさらに、前記入力オーディオ信号及び前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの前記少なくとも1つの前記残響を調整する前に、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号を等化するように構成されている、項目2に記載の装置。
(項目4)
前記車両オーディオコントローラはさらに、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号を等化した後で、前記残響を調整する前に、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号上のリバーブを前記ドライミックス入力オーディオ信号とミックスするように構成されている、項目3に記載の装置。
(項目5)
前記車両オーディオコントローラはさらに、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号上の前記リバーブを前記ドライミックス入力オーディオ信号とミックスして、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号上に存在する車室内の環境ノイズのうちの少なくとも1つを、前記入力オーディオ信号上に存在する前記エンターテイメントデータと混合するように構成されている、項目4に記載の装置。
(項目6)
前記車両オーディオコントローラはさらに、窓、コンバーチブルトップ、及びサンルーフのうちのいずれか1つが開いていることを示す車両状態信号を受信するように構成されている、項目4に記載の装置。
(項目7)
前記車両オーディオコントローラはさらに、前記入力オーディオ信号のみの前記残響を調整して、前記所望の会場において前記エンターテイメントデータを再生するように構成されている、項目6に記載の装置。
(項目8)
前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号は、前記車両の室内で再生されるエンターテイメントデータ、発話、及び前記車両の内部に入ってくる前記車両の外部からの環境ノイズのうちの少なくとも1つを含む、項目1に記載の装置。
(項目9)
前記車両オーディオコントローラはさらに、前記入力オーディオ信号及び前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの前記少なくとも1つを等化して、前記所望の会場内の特定の壁をシミュレートするように構成されている、項目1に記載の装置。
(項目10)
リスニングルームにおいて仮想会場を生成するための方法であって、
再生用オーディオソースからエンターテイメントデータを含む入力オーディオ信号を受信することと、
前記リスニングルーム内に配置された少なくとも1つのマイクロフォンから少なくとも1つの捕捉オーディオ信号を受信することと、
前記エンターテイメントデータを再生する所望の会場を示す制御信号を受信することと、
前記入力オーディオ信号及び前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの少なくとも1つの残響を調整して、前記リスニングルームの前記所望の会場で前記エンターテイメントデータを再生することと、
を含む前記方法。
(項目11)
前記入力オーディオ信号及び前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの前記少なくとも1つの前記残響を調整する前に、前記入力オーディオ信号からリバーブを取り除き、ドライミックス入力オーディオ信号を生成することをさらに含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記入力オーディオ信号及び前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの前記少なくとも1つの前記残響を調整する前に、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号を等化することをさらに含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号を等化した後で、前記残響を調整する前に、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号上の前記リバーブを前記ドライミックス入力オーディオ信号とミックスして、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号上に存在する前記リスニングルーム内の環境ノイズのうちの少なくとも1つを、前記入力オーディオデータ上に存在する前記エンターテイメントデータと混合することをさらに含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記入力オーディオ信号及び前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの前記少なくとも1つを等化して、前記所望の会場内の特定の壁をシミュレートすることをさらに含む、項目10に記載の方法。
(項目15)
リスニングルームにおいて仮想会場を生成するようにプログラムされ、非一時的コンピュータ可読媒体に組み込まれたコンピュータプログラム製品であって、
再生用オーディオソースからエンターテイメントデータを含む入力オーディオ信号を受信し、
前記リスニングルーム内に配置された少なくとも1つのマイクロフォンから少なくとも1つの捕捉オーディオ信号を受信し、
前記エンターテイメントデータを再生する所望の会場を示す制御信号を受信し、
前記入力オーディオ信号及び前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの少なくとも1つの残響を調整して、前記所望の会場で前記エンターテイメントデータを再生する
命令を含む、前記コンピュータプログラム製品。
(項目16)
前記入力オーディオ信号及び前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの前記少なくとも1つの前記残響を調整する前に、前記入力オーディオ信号から残響を取り除き、ドライミックス入力オーディオ信号を生成する命令をさらに含む、項目15に記載のコンピュータプログラム製品。
(項目17)
前記入力オーディオ信号及び前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの前記少なくとも1つの前記残響を調整する前に、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号を等化する命令をさらに含む、項目16に記載のコンピュータプログラム製品。
(項目18)
前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号を等化した後で、前記残響を調整する前に、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号上の残響を前記ドライミックス入力オーディオ信号とミックスする命令をさらに含む、項目17に記載のコンピュータプログラム製品。
(項目19)
前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号上の前記リバーブを前記ドライミックス入力オーディオ信号とミックスして、前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号上に存在する前記リスニングルーム内の環境ノイズのうちの少なくとも1つを、前記入力オーディオデータ上に存在する前記エンターテイメントデータと混合する命令をさらに含む、項目18に記載のコンピュータプログラム製品。
(項目20)
前記入力オーディオ信号及び前記少なくとも1つの捕捉オーディオ信号のうちの前記少なくとも1つを等化して、前記所望の会場内の特定の壁をシミュレートする命令をさらに含む、項目15に記載のコンピュータプログラム製品。
【0007】
本開示の実施形態は、添付の特許請求の範囲において詳細に指摘される。しかしながら、様々な実施形態の他の特徴は、添付の図面と併せて下記の発明を実施するための形態を参照することにより、より明らかとなり最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両の概観、及び車両の対応するリスニング環境を概して示す。
図2】一実施形態による、車両のリスニング環境内で仮想会場を生成するための方法を概して示す。
図3】一実施形態による、車両のリスニングルーム内で仮想会場を生成するための装置を概して示す。
図4図3の装置を用いて、車両のリスニングルーム内で仮想会場を生成するための方法を概して示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
必要に応じて、本発明の詳細な実施形態が本明細書において開示されるが、開示される実施形態は、様々な形態及び代替的な形態で具現化され得る本発明の例示にすぎないことを理解されたい。図は必ずしも縮尺通りではなく、いくつかの特徴は、特定の構成要素の詳細を示すために、誇張または最小化され得る。そのため、本明細書で開示される特定の構造及び機能の詳細は、限定として解釈されるべきではなく、本発明を多様に用いるように当業者に教示する単なる代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0010】
本開示の実施形態は概して、複数の回路または他の電気デバイスを提供する。回路及び他の電気デバイスに対する全ての言及、及びそれぞれが提供する機能には、本明細書に例示され説明されることのみを包含するように限定される意図はない。特定のラベルが、開示される様々な回路または他の電気デバイスに割り当てられ得るが、このようなラベルには、回路及び他の電気デバイスの動作範囲を限定する意図はない。このような回路及び他の電気デバイスは、所望の特定の種類の電気的実施態様に基づく任意の方法で、互いに組み合わされてもよく、及び/または分離されてもよい。本明細書で開示される任意の回路または他の電気デバイスは、任意の数のマイクロコントローラ、プロセッサ、集積回路、メモリデバイス(例えばFLASH、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気的プログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、またはこれらの他の好適な変形)、及び本明細書で開示される任意の動作(複数可)を実行するために互いに協働するソフトウェアを含み得ることが認識される。さらに、電気デバイスのうちの任意の1つ以上は、開示される任意の数の機能を実行するようにプログラムされた、非一時的コンピュータ可読媒体に組み込まれたコンピュータプログラムを実行するように構成され得る。
【0011】
本明細書で開示される態様は概して、車両内のリスニング環境のために、車両内でのオーディオまたはユーザ体験が様々な会場(例えばスタジアム、コンサートホール(すなわち大、小、または中規模)、フェスティバル、またはレコーディングスタジオ)のように聞こえるよう、オーディオパラメータを変更する車両オーディオ装置を提供する。例えば、車両オーディオ装置は、車両が、ユーザの選択に基づいてカーネギーホール、ヤンキースタジアムなどのように聞こえるよう、オーディオパラメータを変更し得る。さらに、車両オーディオ装置は、単に車両内のリスニング環境が実際よりも大きく聞こえるように構成され得る(例えば車両が小型車両である場合、車両オーディオ装置は、ユーザがスポーツ用多目的車両(「SUV」)内にいるように聞こえるオーディオ体験を提供し得る)。これらの態様及び他の態様は、さらに詳しく論述される。
【0012】
図1は概して、車両10の概観、及び車両の対応するリスニング環境12を示す。車両10は、車両10のリスニング環境12(すなわちリスニングルーム)内でオーディオを再生するように構成された車両オーディオシステム14を含む。車両10のリスニング環境12は概して、前壁16(例えば計器パネルと、前面ガラスと、計器パネルの下に内装及びプラスチックトリム(該当する場合)を含むフロアパンとを含む車両10の領域)、後壁18(例えば乗客座席列、SUVの場合は後部トランク区画、及び/または後面ガラスを含む車両10の領域)、側壁20(例えばAピラー、Bピラー、Cピラー、及び/またはDピラー、前部及び/または後部ドア、並びに前部及び/または後部窓を含む車両10の領域)、及び上壁22(すなわち天井)(例えば上部メタルパン及びヘッドライナを含む車両10の領域)を画定する。
【0013】
車両オーディオシステム14はまた、車両10の内側の周りに配置された複数のマイクロフォン24a~24dを含み得る。例えば、車両10のリスニング環境12内で音声または捕捉オーディオ信号(例えば音楽、電子オーディオソースからのエンターテイメントデータを含む入力オーディオ信号上のエンターテイメントデータに対応する車両乗員から捕捉されるノイズ、発話(もしくは車両乗員の対話)、車両10の内部に入ってくる車両10の外部からの環境ノイズ、及び/または車室内の環境ノイズなど)を捕捉するために、各マイクロフォン24a~24dは、車両10の上壁22のヘッドライナ(図示せず)内に等距離に配置され得る。任意の数のマイクロフォン24が、車両10のリスニング環境12内に配置され得ることが認識される。しかしながら、車両10内に1つまたは2つのマイクロフォン24のみが配置される場合、マイクロフォン24に近い可聴音声は、マイクロフォン24に対しより大きい残響効果を有し得るため、比較的不自然な音声が生じる。
【0014】
車両オーディオシステム14は、任意の1つ以上のノイズ除去技術(例えば能動的ノイズ除去(ANC)、室内ノイズ除去(RNC)、及びエンジンオーダー除去(EOC))を用いて、マイクロフォン24a~24dにより拾われるロードノイズ及びエンジンノイズ(または車両10内で再生される入力オーディオデータと一致しない環境内のあらゆる望ましくない可聴ノイズ)の影響を最小限に抑えるように構成された車両オーディオ装置(すなわち車両オーディオコントローラ)26を含む。様々なスピーカ28が車両10の周りに配置され、車両オーディオコントローラ26により処理されたオーディオを再生し得る。1つ以上のスピーカ28が壁16、18、20、及び22のうちの1つ以上に配置され、車室内へオーディオを伝送し得る。例えば、車両オーディオコントローラ26は、車両10内の壁(例えば前壁16、後壁18、側壁20、及び上壁22)の周りまたは中に配置されたスピーカ28に信号を送信して、選択された会場に基づいて、所望の残響(すなわちリバーブ)を提供し得る。車両10のヘッドライナ(すなわち上壁22)内に配置されたスピーカ(複数可)28は、選択された会場の天井のリバーブを再現することができ、後列座席(すなわち後壁18)におけるヘッドレスト内に配置されたスピーカ(複数可)28は、選択された会場の側壁のリバーブを再現することができ、車両10のドア(すなわち側壁20)内に配置されたスピーカ(複数可)28は、選択された会場の側壁のリバーブを再現することができる。計器パネル上または内に(すなわち前壁16に)配置されたスピーカ(複数可)28は、選択された会場の前壁のリバーブを再現することができる。
【0015】
一般に、車両オーディオコントローラ26がオーディオパラメータを再生して、リスニング環境内のオーディオを適合させるように、ユーザ(例えば車両10内の運転者または乗客)は、対応会場(例えばスタジアム、コンサートホール(大、小、または中規模)、レコーディングスタジオ)を選択し得る。会場は、ヤンキースタジアム、カーネギーホールなどの特定の会場に関連し得ることが認識される。車両オーディオコントローラ26がオーディオを再生する対応会場をユーザが選択できるように、ユーザインターフェース30が車両オーディオコントローラ26に電気的に接続され得る。車両オーディオコントローラ26は、オーディオ再生の前に、オーディオソース60(すなわちFMチャネル、AMチャネル、ハイデフィニション(HD)局、衛星ラジオ、携帯電話、タブレットなど)からの入力オーディオ信号、及び/または捕捉オーディオ信号に加えられるリバーブの量を調整して、車両10の実際の壁16、18、20、及び22(すなわちリスニング環境12)に基づいたオーディオを聞いているのとは対照的に、ユーザが、選択した会場設定(例えばスタジアム、コンサートホール、レコーディングスタジオなど)にいながらオーディオを実際に聞いている感覚を提供するように構成される。例えば、車両オーディオコントローラ26は、再生前に入力オーディオ及び/または所望の環境音声の残響効果を調整することで、対応仮想会場の様々な壁(例えば前面、側面、後面、及び上面)のうちの任意の1つ以上をシミュレートすることができ、これによりユーザには、感覚的に選択会場内のオーディオが聞こえる。
【0016】
車両オーディオコントローラ26は、マイクロフォン24a~24dにより捕捉されたいずれの音声とも関係のないオーディオに対し直接残響効果を加えて、選択会場を達成または生成し得る。さらに、車両オーディオコントローラ26は、電子オーディオソース(図示せず)からの入力オーディオ信号に対し、及びマイクロフォン24a~24dによる捕捉オーディオ信号に対し、残響効果を加え得る。これらの態様は、対応会場内の場所のうちの1つに実際いるような、より現実的な効果を生み出すことができる。例えば、ユーザがユーザインターフェース30を介して大きなコンサートホール会場を選択したと仮定すると、大きいコンサートホールでのオーディオ音量は車両10内で通常再生されるオーディオ音量よりはるかに大きくなり得るため、車両オーディオコントローラ26は、通常よりもはるかに大きい音量でオーディオを再生し得る。さらに、ユーザは、より大きい車両10のリスニング環境12に該当する会場を選択することが可能であり得る。車両オーディオコントローラ26は、これに応じて残響効果を調整し、より大きい車両10内で再生されていると知覚されるオーディオを再生し得る。一般に、様々な会場に関連する残響態様は、会場で記録または測定され、その後、ユーザによる選択のために、車両オーディオコントローラ26のメモリ(図示せず)に記憶され得る。一実施形態では、システム14によりユーザは、(ユーザインターフェース30を介して)選択会場内から特定の場所を選択することも可能となり得るため、ユーザは、選択会場からだけでなく、会場内の特定の場所からオーディオを聞くことを体験し得ることも、認識される。会場内の場所は、メインフロア、上位(すなわちラフター)、下位、中位(すなわち上位と下位の間の様々なレベル(複数可))、ステージ上、ステージ上右側または左側などに対応し得る。
【0017】
(i)車両10のいずれかの窓が開いている、(ii)車両10のサンルーフが開いている、または(iii)車両10のコンバーチブルトップが開いている時、マイクロフォン24a~24dにより捕捉されたいずれの入力オーディオも、車両オーディオコントローラ26により消音され得ることが、さらに認識される。例えば、車両10内の様々な電子コントローラ(図示せず)は、窓の状態(例えば任意の窓の開閉状態)、サンルーフの状態(例えば開閉状態)、及びコンバーチブルトップの状態(例えば開閉状態)といった車両状態を監視して、コントローラエリアネットワーク(CAN)を介したデータ通信バスまたは他の多重化データバスにより、車両オーディオコントローラへ情報を送信し得る。ミキサ76は、マイクロフォン24aの捕捉オーディオを消音し、入力オーディオ信号に残響効果を適用して、ユーザインターフェース30を介してユーザにより選択された会場の再生用オーディオを生成し得る。例えば、窓が閉まっていることが検出された、またはコンバーチブルトップが閉まっていることが検出された場合でも、捕捉オーディオの音が大きすぎる、またはうるさすぎる場合には、ミキサ76は、捕捉オーディオを消音し得る。
【0018】
図2は概して、一実施形態による、車両10のリスニング環境12内で仮想会場を生成するための方法50を示す。
【0019】
動作52において、車両オーディオコントローラ26は、車両10内に配置されたマイクロフォン24のうちの任意の1つ以上から捕捉オーディオを受信する。
【0020】
動作54において、車両オーディオコントローラ26は、オーディオソース60からの入力オーディオを処理して、所望のすなわち選択された会場の音響特性を再現する。例えば、車両オーディオコントローラ26は、対応する残響効果を加えて、ユーザにより選択された所望の仮想会場を生成する。
【0021】
動作56において、車両オーディオコントローラ26は、様々なスピーカ28を通して、対応する残響効果で処理されたオーディオを再生し、ユーザが選択会場の音響に基づいたオーディオを聞くことを可能にする。
【0022】
図3は、一実施形態による、車両10のリスニング環境12内で仮想会場を生成する車両オーディオコントローラ26の詳細な実施態様を示す。車両オーディオコントローラ26は、本明細書において開示される顕著な動作のうちのいずれかを実行するために互いに協働する任意の数のプロセッサ及びメモリを含み得ることが認識される。オーディオソース60は、車両10へ(すなわち車両オーディオコントローラ26へ)入力オーディオ信号を提供するように構成される。オーディオソース60は、FM局、AM局、ハイデフィニション(HD)オーディオ局、衛星ラジオプロバイダ、携帯電話からの入力、タブレットからの入力などのうちのいずれか1つであり得ることが認識される。ユーザは、車両オーディオコントローラ26に配置されたソースセレクタ62を介して、または車両10の他の場所もしくはモバイルデバイス(図示せず)に配置され得るユーザインターフェース30を介して、対応するオーディオソース60を選択し得る。
【0023】
リバーブ抽出ブロック64(すなわち抽出ブロック64)は、入力オーディオ信号からリバーブを取り除き、ドライオーディオ信号を提供する。この動作は、選択会場の対応する残響効果を受け入れるように入力オーディオ信号を準備するために行われる。リバーブ抽出ブロック64は、入力オーディオ信号からリバーブを完全に取り除くことができない場合があり、いくつかのリバーブ残余がまだドライオーディオ信号上に存在し得ることが認識される。ステレオ等化ブロック66は、リバーブ抽出ブロック64からドライオーディオ信号を受信する。一般に、ステレオ等化ブロック66は、車両10内の通常のステレオイコライザとして機能し、ユーザによる再生のために入力オーディオ信号を等化するように構成される。加算器68は、ステレオ等化ブロック66からの出力を受信する。加算器68の関連は、下記においてより詳細に論述される。
【0024】
車両オーディオコントローラ26は、車両10内の対応する各マイクロフォン24からの入力を受信するように構成される。上記のように、マイクロフォン24により捕捉されたオーディオは、車両内の音楽、発話、及び環境ノイズに該当し得る。マイクロフォン等化ブロック70は、マイクロフォン24から捕捉オーディオを受信し、捕捉オーディオを等化する(すなわち様々な周波数帯域のエネルギーを強めるまたは弱める)。フィードバック等化ブロック72は、マイクロフォン等化ブロック70からの出力を受信する。車両オーディオコントローラ26は、遅延ブロック74と、オーディオミキサ76と、スパイダリバーブブロック78とを含む。遅延ブロック74は、抽出ブロック64からドライオーディオを受信し、ドライオーディオを、マイクロフォン24からの捕捉オーディオと時間的に整合させる。この状態は、車両オーディオコントローラ26による入力オーディオ信号の処理の遅延の原因となる。入力オーディオ信号上のエンターテイメントデータの再生が、マイクロフォン24からの捕捉オーディオ信号と、時間的に確実に整合されていることが望ましい。入力オーディオ信号のエンターテイメントデータにあわせて車両乗員が手を叩いているまたは歌を歌っている例を考察すると、この場合、入力オーディオ信号上のエンターテイメントデータの再生を、再生に対する車両乗員の手を叩くまたは歌声の入力(マイクロフォン24により捕捉)と、時間的に整合させることが望ましい。入力オーディオ信号のエンターテイメントデータの再生、及びマイクロフォン24による手を叩くまたは歌声の入力(またはエンターテイメントデータと一致する車両乗員(複数可)の他の行動)を捕捉することにより、この態様はさらに、車両乗員(複数可)に対し、観客を含む会場でオーディオ再生と一致するノイズがある程度聞こえることが予想されるような、所望の会場内にいる体験を提供する。従って、マイクロフォン24で車両10内の環境ノイズを捕捉し、このデータを入力オーディオ信号のエンターテイメントデータと組み合わせ、その後ミックスのリバーブを調整することにより、この態様は、車両乗員の体験を向上させ、車両乗員が所望の会場内にいる感覚を提供する。
【0025】
遅延ブロック74は、遅延を適用してもしなくてもよく、この状態は、車両オーディオコントローラ26の処理速度に基づくことが認識される。ミキサ76は、マイクロフォン24により捕捉されたオーディオからのリバーブを、入力オーディオ信号上に残された任意のリバーブ残余とミックスするように構成される。ミキサ76は、窓、コンバーチブルトップ、またはサンルーフが開いているか閉じているかを示す信号WINDOW/CONVERTIBLE_STATUSを受信する。窓、コンバーチブルトップ、またはサンルーフが開いており、信号にノイズが多すぎる場合、先と同様に、ミキサ76は、マイクロフォン24からの捕捉信号を消音し得る。同様に、ミキサ76は、スパイダリバーブブロック78にフィードバックされる車両10内のノイズまたは声のデータ(すなわち複数のマイクロフォン24からの捕捉オーディオデータ)の量と、スパイダリバーブブロック78にフィードバックされるオーディオの量の対比を制御する。一般に、ミキサ76は、所望の混合を達成するために、ダイレクトオーディオ(すなわちドライオーディオ)に関して、マイクロフォン24で捕捉されたオーディオの混合を特定する。
【0026】
ユーザインターフェース30は、車両オーディオコントローラ26がオーディオを再生する選択会場(すなわち仮想会場)を示す制御信号を、車両オーディオコントローラ26に提供する。上記のように、選択会場は、スタジアム、コンサートホール(例えば大、小、または中規模)、レコーディングスタジオ、及びユーザがいる車両10のリスニング環境12とは異なる車両10のリスニング環境のうちのいずれか1つに対応し得る。スパイダリバーブブロック78は、ドライオーディオと捕捉オーディオのミックスに対応する、ミキサ76からの出力を受信する。スパイダリバーブブロック78は一般に、複数のスパイダリバーブブロック80a~80n(すなわち「80」)と、複数の会場等化ブロック82a~82n(すなわち「82」)とを含む。一般に、各スパイダリバーブブロック80及びその対応する会場等化ブロック82は、ミキサ76からの出力に対するリバーブの量を追加または調整して、選択されたすなわち所望の会場をユーザに提供する。具体的には、スパイダリバーブブロック80は、選択会場の異なる壁の様々な残響特性を再現する。スパイダリバーブブロック78は、指定すなわち選択された会場に対応するように残響を調整し、会場等化ブロック82は、車両10の壁16、18、20、及び22の明度特性を制御して、選択会場の所望の明度特性を提供する。選択会場は、スタジアム会場、大規模コンサートホール、中規模コンサートホールなどに対応し得る。例えば、ユーザがカーネギーホールにいるかのように、車両オーディオコントローラ26がオーディオを再生することをユーザが選択した場合、スパイダリバーブブロック80は、カーネギーホールの壁のように聞こえる車両10の壁16、18、20、及び22からの残響効果を提供するように構成される。従って、これにより、車両10内に実際座っていながら、カーネギーホール内でオーディオを実際に聞いている感覚が、ユーザに与えられる。車両オーディオコントローラ26は、メモリを含み(図示せず)、メモリは、任意の数の所望の会場を記憶することができ、選択会場の様々な前壁、側壁、後壁、及び上壁と、このような壁の表面からのオーディオの反射すなわち反響の仕方とをも考慮することができる。例えば、メモリは、特定の会場の壁の特性に対応する様々な事前設定周波数値を記憶することができ、会場等化ブロック82は、ミキサ76及びスパイダリバーブブロック80からのオーディオ出力の周波数レベルを増加または低減させて、ユーザが対応する会場すなわち選択会場に実際にいる感覚をさらに高めることができる。
【0027】
例えば、選択会場が概して、金属製の低い天井と、カーペットが敷き詰められた遠く離れた壁とを有するシナリオを考察する。非常に鈍く聞こえ、反射時間が遅い他の壁と比較して、天井は、非常に明度が高く速い反射特性を有し得る。スパイダリバーブブロック78は、所望の会場を提供するために、入力オーディオ信号及び捕捉オーディオ信号の残響を調整し、対応する会場等化ブロック82は、所望の会場での再生をシミュレートするため、及び所望の会場の壁の明度特性をシミュレートするために、入力オーディオ信号及び捕捉オーディオ信号の等化を制御する。一般に、車両10内のスピーカ28は、所望の会場に対応する出力を全体的に提供し、所与の壁内の対応スピーカ(複数可)はそれぞれ、所望の会場のその所与の壁に関する所望の明度特性をシミュレートするための別個の入力を受信し得る。例えば、車両10の天井内のスピーカ28は、等化された出力を受信して、天井から跳ね返る音声が上記の選択会場の低い天井に一致する速い反射時間を有する様子を提供し得る。同様に、特定の壁16、18、20、及び22内の対応スピーカ28に提供される各オーディオ出力は、選択会場内の様々な壁に一致するように、異なる等化調整が行われ得る。
【0028】
スピーカ等化ブロック84は、スパイダリバーブブロック78からの出力を受信し、車両10内でより均一なオーディオ反響を提供する。スピーカ等化ブロック84は、車両10内のスピーカ28に関わる課題を補う。ユーザが通常モードで入力オーディオを聞くことを選択した場合、スパイダリバーブブロック78により加えられたリバーブの量を単に取り除くために、消音ブロック86が提供される。ユーザインターフェース30は、選択会場を得るために加えられた残響効果を無効にする要求を示す信号を、車両オーディオコントローラ26に送信し得る。要求に応じて、車両オーディオコントローラ26は、消音ブロック86を作動させて、選択会場でのオーディオの再生を単に無効にし得る。加算器68は、スパイダリバーブブロック78からの(すなわち消音ブロック86からの)出力を受信し、ステレオ等化ブロック66からの出力も受信し、2つのオーディオ入力を一緒に合わせて、デジタル版の入力を提供する。デジタルからアナログへの変換器(DAC)88は、加算器68からデジタル出力を受信し、デジタル出力をアナログ出力に変換する。アナログ出力は、選択会場でユーザのために再生されるオーディオに対応する。様々な電力段(すなわち電力増幅器)90は、アナログ出力を、スピーカ28で再生するために、増幅させる。
【0029】
図4は概して、図3の車両オーディオコントローラ26を用いて、車両のリスニングルーム内で仮想会場を生成するための方法100を示す。図4に関連して記される動作は、任意の順序で実行されてもよいと認識され、様々な動作が互いに同時に実行されてもよいと考えられることが認識される。実行される動作の順序は、特定の実施態様に基づいて変わり得る。
【0030】
動作102において、車両オーディオコントローラ26は、オーディオソース60から入力オーディオ信号を受信する。上記のように、オーディオソース60は、FM局、AM局、ハイデフィニション(HD)オーディオ局、衛星ラジオプロバイダ、携帯電話からの入力、タブレットからの入力などのうちのいずれか1つに該当し得る。一般に、入力オーディオ信号は、車両10内の車両乗員を楽しませるために再生されるオーディオデータに対応し得る。
【0031】
動作104において、車両オーディオコントローラ26は、入力オーディオ信号からリバーブを取り除き、ドライオーディオ信号を提供する。
【0032】
動作106において、車両オーディオコントローラ26は、車両10内の各マイクロフォン24から、捕捉オーディオ信号を受信する。例えば、車両オーディオコントローラ26は、各捕捉オーディオ信号の様々な周波数帯域のエネルギーを強めるまたは弱める。上記のように、捕捉オーディオ信号は一般に、音楽、電子オーディオソースからのエンターテイメントデータを含む入力オーディオ信号上のエンターテイメントデータに対応する車両乗員から捕捉されるノイズ、発話(もしくは車両乗員の対話)、及び/または車両10の内部に入ってくる車両10の外部からの環境ノイズ、車室内の環境ノイズなどに対応する。
【0033】
動作108において、車両オーディオコントローラ26は、各捕捉オーディオ信号を等化する。例えば、車両オーディオコントローラ26は、捕捉オーディオ信号の様々な周波数帯域のエネルギーを強めるまたは弱める。
【0034】
動作110において、車両オーディオコントローラ26は任意で、ドライオーディオ信号上のエンターテイメントデータの再生が捕捉オーディオ信号と確実に一致するように、捕捉オーディオ信号に合わせて、ドライオーディオ信号の送信に時間遅延または遅延を採用し得る。
【0035】
動作112において、車両オーディオコントローラ26は、窓、コンバーチブルトップ、及びサンルーフのうちのいずれか1つが開いているか否かを判定する。車両オーディオコントローラ26が、窓、コンバーチブルトップ、及びサンルーフのうちのいずれか1つが閉まっていると判定した場合、方法100は、動作114へ進む。車両オーディオコントローラ26は、窓、コンバーチブルトップ、及びサンルーフのうちのいずれか1つが開いていると判断した場合、方法100は、動作120へ進む。
【0036】
動作114において、車両オーディオコントローラ26は、捕捉オーディオ信号上のリバーブをドライオーディオ信号とミックスさせて、捕捉オーディオ信号上のノイズ、音楽、及び/または声情報と、オーディオソース60から受信される入力オーディオ信号上のエンターテイメントデータとの所望の混合を実現する。
【0037】
動作116において、車両オーディオコントローラ26は、オーディオ再生中に車両10内でシミュレートする所望の会場を示す制御信号を受信する。
【0038】
動作118において、車両オーディオコントローラ26は、ミックスした捕捉オーディオ信号及びドライオーディオ信号のリバーブを調整して、車両10内において、選択会場でのオーディオソース60からの入力オーディオ信号上のエンターテイメントデータを再生する。さらに、車両オーディオコントローラ26は、ミックスした捕捉オーディオ信号及びドライオーディオ信号の周波数を等化して、選択会場の様々な壁の所望の明度特性を提供する。
【0039】
動作120において、窓、コンバーチブルトップ、及びサンルーフのうちの1つが開いていると仮定すると、このような信号は保有ノイズ(例えば風、ロードノイズなどの環境ノイズ)が多すぎるため、車両オーディオコントローラ26は、捕捉オーディオ信号を消音する。この場合、動作118において、車両オーディオコントローラ26は、オーディオソース60からの入力オーディオ信号のリバーブを単に調整して、車両10において選択会場での入力オーディオ信号を再生し得る。
【0040】
例示的な実施形態が前述されたが、これらの実施形態に、本発明の全ての可能な形態を説明する意図はない。むしろ、本明細書で使用される言葉は、限定ではなく説明の言葉であり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされてもよいことが理解されよう。さらに、実施形態の様々な実施の特徴を組み合わせることで、本発明のさらなる実施形態が形成され得る。
図1
図2
図3
図4