(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】ハンド機構および把持システム
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
B25J15/08 W
B25J15/08 J
(21)【出願番号】P 2019535673
(86)(22)【出願日】2018-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2018029612
(87)【国際公開番号】W WO2019031502
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】P 2017155981
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 嘉将
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-103995(JP,U)
【文献】特開2016-203264(JP,A)
【文献】特開2009-125884(JP,A)
【文献】特開2015-112662(JP,A)
【文献】特開2005-349492(JP,A)
【文献】特開2006-136983(JP,A)
【文献】特開2012-215533(JP,A)
【文献】特開平05-131387(JP,A)
【文献】特開2001-233405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに独立して動作するように制御される3本以上の指部を備え、対象物を把持する際には、前記3本以上の指部のうちの少なくとも1本の指部である第1指部が、該第1指部の先端部側を前記対象物に接触させた上で該対象物の姿勢およびまたは位置を変更する状態変更用指部として機能するとともに、該状態変更用指部として機能する第1指部以外の指部のうちの少なくとも2本の指部が、該状態変更用指部によって姿勢およびまたは位置が変更された状態の該対象物を把持する把持用指部として機能する、ハンド機構であって、
前記第1指部の先端部側において、該第1指部の背部から腹部にかけて配置される2つ以上の感圧センサと、
前
記第1指部において、前
記2つ以上の感圧センサを覆うための膜状の部材であって、可撓性を有する部材で形成される、可撓性カバーと、
を備える、
ハンド機構。
【請求項2】
前記可撓性カバーは、先端部側が閉塞し且つ基端部側が開口した袋状に形成され、前
記第1指部の先端部側を覆うように
該第1指部に被せられる、
請求項1に記載のハンド機構。
【請求項3】
前
記第1指部において前
記2つ以上の感圧センサより基端部側に位置する外壁面のうち、
該第1指部の腹部側の部位と
該第1指部の背部側の部位との少なくとも一方の部位に設けられる第1嵌合部と、
前記可撓性カバーのうち、前
記第1指部の前記第1嵌合部に対応する部位に設けられ、前記第1嵌合部と嵌合可能な第2嵌合部と、を更に備え、
前記可撓性カバーが前
記第1指部に被せられた状態において、前記第1嵌合部と前記第2嵌合部とが互いに嵌合することで、前記可撓性カバーが位置決めされる、
請求項2に記載のハンド機構。
【請求項4】
前記第1嵌合部と前記第2嵌合部の一方は突起を有し、前記第1嵌合部と前記第2嵌合
部の他方は前記突起と嵌合可能な孔を有する、
請求項3に記載のハンド機構。
【請求項5】
前記可撓性カバーは、前
記第1指部の外壁面より摩擦係数の大きな部材で形成される、請求項1か
ら4の何れか1項に記載のハンド機構。
【請求項6】
互いに独立して動作するように制御される3本以上の指部を備え、それら指部によって対象物を把持するハンド機構と、
前記ハンド機構によって対象物を把持する際に、前記3本以上の指部のうちの少なくとも1本の指部である第1指部の指先部分を、対象物に接触させた上で該対象物の姿勢およびまたは位置を変更する状態変更用指部として機能するように、前記ハンド機構を制御する制御装置と、
を備える把持システムであって、
前記ハンド機構は、
前記第1指部の先端部側において、該第1指部の背部から腹部にかけて配置される、2つ以上の感圧センサと、
前記第1指部において、前記2つ以上の感圧センサを覆うように前記第1の指部の外壁面に貼り付けられるシート状の部材であって、可撓性を有する部材で形成される、可撓性カバーと、
を備え、
前記制御装置は、
前記2つ以上の感圧センサのうち、互いに隣接する2つの感圧センサの少なくとも一方が圧力を検知した場合において、検知された圧力が所定値より小さければ、前記可撓性カバーのうち、前記2つの感圧センサ間の隙間を覆う部位が、対象物と接触している、と判定し、
前記2つ以上の感圧センサのうち、互いに隣接する2つの感圧センサが圧力を検知した場合に、前記可撓性カバーのうち、前記互いに隣接する2つの感圧センサ間の隙間を覆う部位を少なくとも含む領域が、対象物と接触している、と判定し、
前記2つ以上の感圧センサのうち、互いに隣接する2つの感圧センサが圧力を検知した場合に、前記第1指部の先端部分が対象物に接触していると判定する、
把持システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の指部により対象物を把持するハンド機構、および把持システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットアーム等に取り付けられ、複数の指部によって対象物を把持するハンド機構が開発されている。例えば、特許文献1には、3本の指部(フィンガー)を備えたハンド機構が開示されている。この特許文献1のハンド機構においては、3本の指部が同一の構造を有している。さらに、特許文献1のハンド機構においては、指部の先端部に、該先端部から自由端が突出したプレート部材が設けられている。指部をこのような構成とすることで、平面上に置かれている対象物をハンド機構によって把持する際に、該平面と該対象物との間に指部のプレート部材を押し込んだ上で、該指部によって該対象物を把持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハンド機構によって対象物を把持する場合、指部と対象物との接触状態を正確に把握することも重要である。このような要求に対し、ハンド機構の指部に複数の感圧センサを取り付けて、指部と対象物との接触状態や接触位置等を検知する方法が考えられる。ところが、このような方法において、隣り合う2つの感圧センサ間の隙間に対象物が接触し、且つそれら2つの感圧センサに対象物が接触しない状態が発生した場合には、その接触状態を感圧センサで検知することができず、対象物を適正な姿勢で把持することが困難になる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記したような実情に鑑みてなされてものであり、その目的は、ハンド機構の指部に複数の感圧センサを配列する構成において、指部と対象物との接触状態をより正確に把握することができる技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るハンド機構は、複数の指部を備え、それら指部によって対象物を把持するハンド機構である。複数の指部のうちの少なくとも1本の指部の外壁面には、複数の感圧センサが取り付けられるとともに、それら複数の感圧センサを覆うための膜状の可撓性カバーが取り付けられるようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ハンド機構の指部に複数の感圧センサを配列する構成において、指部と対象物との接触状態をより正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1に係るロボットアームの概略構成を示す図である。
【
図4】実施例1に係るハンド機構の指部の側面図である。
【
図5】実施例1に係るハンド機構の指部の先端部側を
図4の矢印Aの方向から見た図である。
【
図6】実施例1に係るハンド機構の、ベース部における指部の接続部近傍部分の内部構造、および、指部における基端部および第2関節部の内部構造を示す図である。
【
図7】実施例1に係るハンド機構の指部における第2関節部の可動範囲を示す図である。
【
図8】実施例1に係るハンド機構の、指部における第1関節部および第2指リンク部の内部構造を示す図である。
【
図9】実施例1に係るハンド機構の指部における第1関節部の可動範囲を示す図である。
【
図10】実施例1に係るハンド機構の指部の第1リンク部における感圧センサの配置を示す第1の図である。
【
図11】実施例1に係るハンド機構の指部の第1リンク部における感圧センサの配置を示す第2の図である。
【
図13】2つの感圧センサを互いに密接した状態で配置した場合におけるセンサ素子の配置を示す図である。
【
図14】実施例1に係る可撓性カバーを第1指リンク部へ取り付ける方法の一例を示す図である。
【
図15A】互いに密接した状態で配置された2つの感圧センサが可撓性カバーで覆われる様子を示す図である。
【
図15B】可撓性カバーにおける不感帯被覆部が対象物と接触し、且つ可撓性カバーにおけるセンサ素子被覆部が対象物と接触しない状態を示す図である。
【
図16】実施例1に係るアーム制御装置およびハンド制御装置に含まれる各機能部を示すブロック図である。
【
図17】ハンド機構によって把持する対象物の形状の一例を示す図である。
【
図18】複数の対象物が並べられて配置された状態を示す図である。
【
図19】実施例1に係るハンド機構の第1指部によって対象物の姿勢を変更する際の動作を示す第一の図である。
【
図20】実施例1に係るハンド機構の第1指部によって対象物の姿勢を変更する際の動作を示す第二の図である。
【
図21】実施例1に係るハンド機構の第2指部、第3指部、および第4指部によって対象物を把持した状態を示す第一の図である。
【
図22】実施例1に係るハンド機構の第2指部、第3指部、および第4指部によって対象物を把持した状態を示す第二の図である。
【
図23】実施例1に係るハンド機構の第2指部、第3指部、および第4指部によって厚さの小さい対象物を把持した状態を示す図である。
【
図24】実施例2に係る可撓性カバーを第1指リンク部に装着した状態を示す図である。
【
図25】実施例2に係る第1指リンク部の腹部の構成を示す斜視図である。
【
図26】実施例2に係る第1指リンク部の背部の構成を示す斜視図である。
【
図27】実施例2に係る可撓性カバーの正面図である。
【
図28】他の実施例において保護カバーを第1指リンク部へ取り付ける方法の一例を示す図である。
【
図29】他の実施例において互いに密接して配置される2つの感圧センサが可撓性カバーと保護カバーにより覆われる様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るハンド機構は、複数の指部を備え、それら複数の指部のうちの少なくとも1本の指部には、複数の感圧センサが取り付けられる。ここで、感圧センサは、一般的に、シート状の基材の表面に、該基材より小さなセンサ素子を配置して、該センサ素子の表面および周囲を絶縁被膜で覆って構成される。このような構造の感圧センサを各指部に複数取り付ける場合に、たとえ隣り合う2つの感圧センサを密接させて配置しても、それら感圧センサのセンサ素子間には、各センサ素子の周囲に延在する基材分の隙間(以下、「不感帯」と称する場合もある。)が生じる。そのため、対象物が上記した不感帯に接触し、且つ該対象物がセンサ素子に接触しない状態が発生したときに、指部と対象物との接触状態を検知することができない可能性がある。これに対し、感応領域の大きな1つの感圧センサを指部に取り付ける方法が考えられるが、指部における対象物との接触位置を特定することが困難になる可能性がある。
【0010】
そこで、本発明に係るハンド機構では、複数の感圧センサを覆うための膜状の可撓性カバーを、前記指部に取り付けるようにした。このような構成によれば、可撓性カバーにおける上記不感帯を覆う部位(以下、「不感帯被覆部」と称する場合もある。)が対象物と接触し、且つ可撓性カバーにおけるセンサ素子の表面を覆う部位(以下、「センサ素子被覆部」と称する場合もある。)が対象物と接触しない状態が発生した場合に、可撓性カバーが撓みつつ、不感帯の両隣に位置する2つのセンサ素子のうちの少なくとも一方を押圧することになる。その結果、指部と対象物との接触状態を正確に検知することが可能となる。
【0011】
以下、本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。本実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
<実施例1>
本発明の第1の実施例について
図1から
図23に基づいて説明する。ここでは、本発明に係るハンド機構および把持システムをロボットアームに適用した場合について説明する。
図1は、本実施例に係るロボットアームの概略構成を示す図である。ロボットアーム1は、ハンド機構2、アーム機構3、および台座部4を備えている。アーム機構3の一端にハンド機構2が取り付けられている。また、アーム機構3の他端が台座部4に取り付けられている。ハンド機構2は、アーム機構3に接続されたベース部20と、該ベース部20に設けられた4本の指部21とを備えている。なお、ハンド機構2の詳細な構成については後述する。
【0013】
<アーム機構>
アーム機構3は、第1アームリンク部31、第2アームリンク部32、第3アームリンク部33、第4アームリンク部34、第5アームリンク部35、および接続部材36を備えている。そして、ハンド機構2のベース部20が、アーム機構3の第1アームリンク部31の一端側に形成された第1関節部30aに接続されている。第1関節部30aには、第1アームリンク部31に対してハンド機構2を該第1アームリンク部31の軸周りに回転させるためのモータ(図示略)が設けられている。第1アームリンク部31の他端側は、第2関節部30bで第2アームリンク部32の一端側に接続されている。第1アームリンク部31と第2アームリンク部32とはその中心軸が垂直に交わるように接続されている。そして、第2関節部30bには、第2アームリンク部32に対して、第1アームリンク部31を、その他端側を中心に該第2アームリンク部32の軸周りに回転させるためのモータ(図示略)が設けられている。また、第2アームリンク部32の他端側は、第3関節部30cで第3アームリンク部33の一端側に接続されている。第3関節部30cには、第3アームリンク部33に対して第2アームリンク部32を相対的に回転させるためのモータ(図示略)が設けられている。
【0014】
同じように、第3アームリンク部33の他端側は、第4関節部30dで第4アームリンク部34の一端側に接続されている。また、第4アームリンク部34の他端側は、第5関節部30eで第5アームリンク部35に接続されている。そして、第4関節部30dには、第4アームリンク部34に対して第3アームリンク部33を相対的に回転させるためのモータ(図示略)が設けられている。また、第5関節部30eには、第5アームリンク部35に対して第4アームリンク部34を相対的に回転させるためのモータ(図示略)が設けられている。さらに、第5アームリンク部35は、台座部4から垂直に配置された接続部材36に第6関節部30fで接続されている。第5アームリンク部35と接続部材36とは、それぞれの中心軸が同軸となるように接続されている。そして、第6関節部30fには、第5アームリンク部35を、該第5アームリンク部35および接続部材36の軸回りに回転させるためのモータ(図示略)が設けられている。アーム機構3をこのような構成とすることで、例えば、該アーム機構3を6自由度の自由度を有する機構とすることができる。
【0015】
<ハンド機構>
次に、ハンド機構2の構成について
図2から
図15に基づいて説明する。
図2はハンド機構2の斜視図である。
図3はハンド機構2の上面図である。なお、
図3において、矢印は、各指部21の回転可動範囲を示している。
図2および
図3に示すように、ハンド機構2においては、ベース部20に4本の指部21が、ハンド機構2の長手方向(
図3において紙面に垂直な方向)の軸を中心とした円周上に、等角度間隔(すなわち90deg間隔)に配置されている。また、4本の指部21は全て同一の構造を有し且つ同一の長さである。ただし、各指部21の動作は、それぞれ独立して制御される。
【0016】
図4から
図15は、ハンド機構2の指部21の構成およびその駆動機構について説明するための図である。
図4は指部21の側面図である。なお、
図4では、ベース部20が透過された状態で記載されており、ベース部20の内部に位置する指部21の一部の内部構造をも示している。また、
図5は、指部21の先端部側を
図4の矢印Aの方向から見た図である。なお、
図4および
図5では、後述する指部21の第2指リンク部212の一部が透過された状態で記載されており、該第2指リンク部212の内部構造をも示されている。
【0017】
図2および
図4に示すとおり、各指部21は、第1指リンク部211、第2指リンク部212、および基端部213を有している。そして、指部21の基端部213がベース部20に接続されている。ここで、基端部213は、
図3において矢印で示すように、ベース部20に対して指部21の長手方向(
図3において紙面に垂直な方向)の軸回りに回転可能に接続されている。また、指部21において、基端部213に第2指リンク部212の一端が接続されている。そして、この第2指リンク部212と基端部213との接続部に第2関節部23が形成されている。
【0018】
ここで、
図6に基づいて基端部213の駆動機構および第2関節部23の駆動機構について説明する。
図6は、ベース部20における指部21の接続部近傍部分の内部構造、および、指部21における基端部213および第2関節部23の内部構造を示す図である。この
図6に示すように、ベース部20の内部には歯車65、歯車66、第2モータ52、および第3モータ53が設けられている。歯車65は、指部21全体を回転させるための歯車であり、基端部213の回転軸に接続されている。歯車66は第3モータ53の回転軸に接続されている。そして、歯車65と歯車66とが噛み合っている。このような構成により、第3モータ53が回転すると、その回転力が二つの歯車65、66を介して基端部213の回転軸に伝達される。その結果、基端部213が回転駆動され、それに伴って、
図3において矢印で示す範囲で指部21全体が回転駆動される。
【0019】
また、第2関節部23の内部には、ウォームホイール63と、該ウォームホイール63に噛み合ったウォーム64が設けられている。そして、第2関節部23における第2指リンク部212の回転軸にウォームホイール63が接続されている。また、ベース部20の内部に設けられた第2モータ52の回転軸にウォーム64が接続されている。このような構成により、第2モータ52が回転駆動すると、その回転力がウォーム64およびウォームホイール63によって第2指リンク部212の回転軸に伝達される。その結果、第2指リンク部212が、基端部213に対して相対的に回転駆動される。ここで、
図7は、第2モータ52の駆動力により実現される、指部21における第2関節部23の可動範囲を示す図である。この
図7に示すように、第2関節部23は屈曲および伸展可能に形成されている。なお、第2モータ52による駆動力と第3モータ53による駆動力とは、それぞれ独立してその作動対象に伝わるように構成されている。
【0020】
また、
図4および
図5に示すように、指部21においては、第2指リンク部212の他端に第1指リンク部211の一端が接続されている。そして、この第1指リンク部211と第2指リンク部212との接続部に第1関節部22が形成されている。ここで、
図8に基づいて第1関節部22の駆動機構について説明する。
図8は、指部21における第1関節部22および第2指リンク部212の内部構造を示す図である。第1関節部22の内部には、互いに噛み合った二つの傘歯車61、62が設けられている。そして、第1関節部22における第1指リンク部211の回転軸に一方の傘歯車61が接続されている。また、第2指リンク部212の内部に設けられた第1モータ51の回転軸に他方の傘歯車62が接続されている。このような構成により、第1モータ51が回転駆動すると、その回転力が二つの傘歯車61、62によって第1指リンク部211の回転軸に伝達される。その結果、第1指リンク部211が、第2指リンク部212に対して相対的に回転駆動される。ここで、
図9は、第1モータ51の駆動力により実現される、指部21における第1関節部22の可動範囲を示す図である。この
図9に示すように、第1関節部22は屈曲および伸展可能に形成されている。
【0021】
また、
図2および
図4に示すように、本実施例では、指部21において、第1関節部22よりも先端部側の第1指リンク部211よりも、該第1関節部22よりベース部20側(基端部213側)の第2指リンク部212の方が長くなっている。
【0022】
また、
図2、
図4、および
図5に示すように、本実施例では、指部21の第1指リンク部211における先端部側には、感圧センサ70が取り付けられている。具体的には、
図10、
図11、および
図14に示すように、第1指リンク部211における、背部(すなわち、第1関節部22の屈曲方向側の壁面(以下、「屈曲側壁面」と称する場合もある。))215から腹部(すなわち、伸展方向側の壁面(以下、「伸展側壁面」と称する場合もある。))216にかけて、4つの感圧センサ700、701、702、703(以下、「感圧センサ70」と総称する場合もある。)が第1指リンク部211の長手方向に沿って直列に配置されている。
図10および
図11に示す例では、伸展側壁面216に1つの感圧センサ700が配置され、残りの3つの感圧センサ701、702、703が屈曲側壁面215の先端部側から基端部側へむけて長手方向に配列されている。なお、感圧センサ70の配置方法は、第1指リンク部211の長手方向に沿って直列に配置する方法に限られず、第1指リンク部211の短手方向に沿って直列に配置してもよく、若しくは第1指リンク部211の長手方向または短手方向に対して斜め方向に沿って配置されてもよい。また、
図10、
図11、および
図14に示す例では、4つの感圧センサ700、701、702、703が一列に配置されているが、4つ以上の感圧センサが二列以上に配置されてもよく、若しくは4つ以上の感圧センサ70が千鳥状に配置されてもよい。また、伸展側壁面216に配置される感圧センサの個数は1つに限られず、二つ以上の感圧センサが伸展側壁面216に配置されてもよい。同様に、屈曲側壁面215に配置される感圧センサの個数は3つに限られず、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。要するに、第1指リンク部に配置される感圧センサの個数や位置は、対象物の大きさや形状等に応じて適宜に決定されればよい。
【0023】
上記した感圧センサ70は、第1指リンク部211に作用する外力(圧力)を検知するセンサである。感圧センサ70は、例えば、
図12に示すように、矩形のシート状に形成された基材70aの表面における略中央部に、該基材70aより小さなセンサ素子70bを配置して、センサ素子70bの表面と該センサ素子70bの周囲に延在する基材70aの表面とを絶縁皮膜70cで覆うことにより形成される。なお、センサ素子70bとしては、圧電式のセンサ素子、ひずみゲージ式のセンサ素子、または静電容量式のセンサ素子等、周知のどのような方式のセンサ素子を用いてもよい。また、
図12に示す例では、基材70a、センサ素子70b、および絶縁皮膜70cの各構成要素が矩形に形成されているが、それら各構成要素の形状は矩形に限定されるものではなく、第1指リンク部211の形状等に応じて適宜に変更されればよい。
【0024】
図10および
図11に示すように、4つの感圧センサ700、701、702、703が第1指リンク部211に取り付けられると、第1指リンク部211における伸展側壁面216が対象物と接触しているのか、第1指リンク部211の屈曲側壁面215における先端部が対象物と接触しているのか、第1指リンク部211の屈曲側壁面215における中間部が対象物と接触しているのか、または第1指リンク部211の屈曲側壁面215における基端部が対象物と接触しているのか、を区別することが可能となる。
【0025】
ところで、上記したような複数の感圧センサ70を指部21の第1指リンク部211に取り付ける場合に、たとえ隣り合う2つの感圧センサ70が互いに密接するように配置しても、それら2つの感圧センサ70のセンサ素子70b間には、
図13に示すように、センサ素子70bの周囲に延在する基材70a分の不感帯(
図13中のRが示す部分)が生じることになる。そのため、ハンド機構2により対象物を把持する場合に、対象物が上記の不感帯Rに接触し、且つ該対象物が不感帯Rの両隣に位置するセンサ素子70bと接触しない状態が発生すると、第1指リンク部211と対象物との接触を感圧センサ70によって検知することができない可能性がある。これに対し、第1指リンク部211の伸展側壁面216から屈曲側壁面215にかけて、1つの連続した感圧センサを取り付ける方法も考えられるが、上記したように第1指リンク部211における対象物の接触位置を区別することが困難となる。そこで、本実施例では、第1指リンク部211に取り付けられた複数の感圧センサ70を覆うための膜状の可撓性のカバーを、ハンド機構2の指部21に取り付けるようにした。
【0026】
<可撓性カバー>
本実施例では、例えば、
図14に示すように、第1指リンク部211における屈曲側壁面215から伸展側壁面216にかけて、シート状に形成された可撓性カバー211aを貼り付けている。その際、可撓性カバー211aの大きさは、4つの感圧センサ700、701、702、703およびその周辺における第1指リンク部211の外壁面を覆うことができる大きさとされている。なお、可撓性カバー211aは、1枚のシートで構成されてもよく、または複数枚のシートをつなぎ合わせて構成されてもよい。要するに、可撓性カバー211aは、4つの感圧センサ700、701、702、703およびその周辺における第1指リンク部211の外壁面を、連続的に覆うことができるように構成されればよい。このように構成される可撓性カバー211aが第1指リンク部211に貼り付けられると、
図15Aに示すように、該可撓性カバー211aの内壁面がセンサ素子70bの表面を覆う絶縁皮膜70cに密着する一方で、該可撓性カバー211aの内壁面と上記の不感帯Rとの間に空間が生じることになる。そのため、可撓性カバー211aにおいて上記の不感帯Rを覆う部位(不感帯被覆部)が対象物と接触し、且つ該可撓性カバー211aにおいてセンサ素子70bの表面を覆う部位(センサ素子被覆部)が対象物と接触しない状態が発生した場合に、
図15Bに示すように、不感帯被覆部近傍の可撓性カバー211aが撓みつつ、不感帯の両隣に位置する2つのセンサ素子70bのうちの少なくとも一方を押圧することになる。その結果、不感帯被覆部と対象物との接触を、上記した2つのセンサ素子70bのうちの少なくとも一方によって検知することが可能となる。なお、上記した可撓性カバー211aの材料としては、例えば、ポリオレフィン等を用いることができる。また、可撓性カバー211aは、該可撓性カバー211aの外表面の摩擦係数が第1指リンク部211の外壁面や絶縁被膜70cの外表面の摩擦係数より大きくなる部材で形成されてもよい。
【0027】
<台座部>
次に、台座部4に内蔵された、アーム制御装置42およびハンド制御装置43の構成について
図16に基づいて説明する。アーム制御装置42はロボットアーム1のアーム機構3を制御するための制御装置である。ハンド制御装置43はロボットアーム1のハンド機構2を制御するための制御装置である。
図16は、アーム制御装置42およびハンド制御装置43に含まれる各機能部を示すブロック図である。
【0028】
アーム制御装置42は、アーム機構3の各関節部に設けられたモータを駆動するための駆動信号を生成する複数のドライバを含み、各ドライバからの駆動信号が対応する各モータに供給されるように構成される。また、アーム制御装置42は、演算処理装置およびメモリを有するコンピュータを含んでいる。そして、アーム制御装置42は、機能部として、アーム制御部420およびモータ状態量取得部421を有している。これらの機能部は、アーム制御装置42に含まれるコンピュータにおいて所定の制御プログラムが実行されることで形成される。
【0029】
アーム制御部420は、ハンド制御装置43が有する機能部である後述の対象物情報取得部430によって取得された対象物情報に基づいて各ドライバから駆動信号を供給することで、アーム機構3の各関節部30a、30b、30c、30d、30e、30fに設けられたモータを制御する。そして、アーム制御部420は、各モータを制御することでアーム機構3を動かし、それによって、ハンド機構2を、対象物の把持のために適した所定の把持可能位置に移動させる。また、アーム機構3の各関節部30a、30b、30c、30d、30e、30fに設けられたモータには、それぞれの回転状態に関する状態量(モータの回転軸の回転位置や回転速度等)を検出するエンコーダ(図示略)が設けられている。そして、各モータのエンコーダによって検出された各モータの状態量が、アーム制御装置42のモータ状態量取得部421に入力される。そして、アーム制御部420は、モータ状態量取得部421に入力された各モータの状態量に基づいて、例えば、ハンド機構2が所定の把持可能位置に移動するように各モータをサーボ制御する。
【0030】
また、ハンド制御装置43は、ハンド機構2に設けられた各モータを駆動するための駆動信号を生成する複数のドライバを含み、各ドライバからの駆動信号が対応する各モータに供給されるように構成される。また、ハンド制御装置43は、演算処理装置およびメモリを有するコンピュータを含んでいる。そして、ハンド制御装置43は、機能部として、対象物情報取得部430、ハンド制御部431、モータ状態量取得部432、センサ情報取得部433を有している。これらの機能部は、ハンド制御装置43に含まれるコンピュータにおいて所定の制御プログラムが実行されることで形成される。
【0031】
対象物情報取得部430は、ハンド機構2よって把持すべき対象物に関する情報である対象物情報を取得する。ここで、対象物情報には、対象物の形状、寸法、およびその位置に関する情報、並びに、対象物周囲の環境情報(対象物の周囲に存在する該対象物以外の物に関する情報であり、例えば、対象物が収容されている容器の形状や当該容器における対象物の並びに関する情報)等が含まれる。この対象物情報取得部430は、ユーザーによって入力された対象物情報を取得してもよい。また、対象物を含む画像を撮像する視覚センサが設けられている場合、対象物情報取得部430は、該視覚センサによって撮像された画像から対象物情報を取得してもよい。
【0032】
また、ハンド制御部431は、対象物情報取得部430によって取得された対象物情報に基づいて各ドライバから駆動信号を供給することで、ハンド機構2の各指部21を駆動させる各第1モータ51、各第2モータ52、および各第3モータ53を制御する。例えば、ハンド制御部431は、アーム制御部420によってアーム機構3が制御されることで所定の把持可能位置に移動されたハンド機構2によって対象物を把持するために、ハンド機構2の各第1モータ51、各第2モータ52、および各第3モータ53を制御する。また、ハンド機構2の各第1モータ51、各第2モータ52、および各第3モータ53には、それぞれの回転状態に関する状態量(モータの回転軸の回転位置や回転速度等)を検出するエンコーダ(図示略)が設けられている。そして、各モータ51、52、53のエンコーダによって検出された各モータ51、52、53の状態量が、ハンド制御装置43のモータ状態量取得部432に入力される。そして、ハンド制御部431は、モータ状態量取得部432に入力された各モータ51、52、53の状態量に基づいて、例えば、複数の指部21によって対象物を把持するように、各指部21における各モータ51、52、53をサーボ制御する。
【0033】
さらに、ハンド制御装置43はセンサ情報取得部433を有している。センサ情報取得部433には、ハンド機構2の各指部21の第1指リンク部211に設けられた複数の感圧センサ70の検知信号が入力される。そして、ハンド制御部431は、センサ情報取得部433によって取得された各感圧センサ70の検知信号に基づいて、各指部21と対象物との接触を検知でき、その検知信号に基づいて各指部21における各モータ51、52、53を制御することもできる。
【0034】
<指部の機能>
次に、ハンド機構2によって対象物を把持する際の各指部21の機能について説明する。ここで、
図17は、ハンド機構2によって把持する対象物10の形状の一例を示す図である。また、
図18は、複数の対象物10(10´)が並べられて配置された状態を示す図である。
図17および
図18に示すように、対象物10は、6つの面(S1~S6)を有する直方体である。ただし、
図17に示す対象物10の形状はあくまでも一例であって、ハンド機構2によって把持する対象物の形状は直方体に限られるものではない。
【0035】
ここで、ハンド機構2によって対象物10を把持する際には、該対象物10の6つの面のうちの少なくとも2つの面を所定の把持面とし、該所定の把持面それぞれにハンド機構2の何れかの指部21を接触させて該指部21によって該対象物10を挟み込む必要がある。そして、以下においては、対象物10の6つの面のうち最も面積の大きい2つの面S5、S6を所定の把持面として該対象物10を把持する場合について説明する。
【0036】
対象物10における面S5、S6を所定の把持面として該対象物10をハンド機構2によって把持しようとした場合、これらの面S5、S6の両方が、ハンド機構2の何れかの指部21が接触可能な状態で露出している必要がある。しかしながら、
図18に示すように、順次ハンド機構2による把持の対象となる複数の対象物10(10´)が互いに接触した状態で並べられて配置された状態では、対象物10の所定の把持面が、隣接する対象物10´と接触した状態に置かれる場合がある。
図18の場合、対象物10における2つの所定の把持面S5、S6のうちの一方の把持面S6が、隣接する対象物10´と接触した状態となっている。このような場合、対象物10の把持面S6が露出していない状態となる。そのため、対象物10が
図18に示す状態のままでは、ハンド機構2の指部21を該対象物10の把持面S6に接触させることができないため、該対象物10を該ハンド機構2によって把持することができない。
【0037】
そこで、本実施例では、上記のような状況下にある対象物10をハンド機構2によって把持する場合、先ず、該ハンド機構2における4本の指部21のうち状態変更用指部として機能する1つの指部によって対象物10の姿勢を変更する。そして、その後で、該ハンド機構2における4本の指部21のうち、状態変更用指部として機能する指部以外の3本の指部であって把持用指部として機能する指部によって対象物10を把持する。
【0038】
以下、本実施例において、
図18に示した状態に置かれた対象物10をハンド機構2によって把持する際の手順の詳細について、
図19から
図22に基づいて説明する。なお、ここでは、ハンド機構2の各指部21を、それぞれ、第1指部21A、第2指部21B、第3指部21C、第4指部21Dと称する。そして、以下においては、状態変更用指部として機能する指部を第1指部21Aとし、把持用指部として機能する指部を第2~4指部21B、21C、21Cとした場合について説明する。また、
図19および
図20は、ハンド機構2の第1指部21Aによって対象物10の姿勢を変更する際の動作を示す図である。また、
図21および
図22は、ハンド機構2の第2指部21B、第3指部21C、および第4指部21Dによって対象物10を把持した状態を示す図である。また、以下に説明するようなハンド機構2による対象物10の把持手順は、アーム制御装置42によってアーム機構3が制御されることでハンド機構2が所定の把持可能位置に移動した後で、ハンド制御装置43によって該ハンド機構2を制御することで実現される。
【0039】
図18に示すように、対象物10が、一方の把持面S6を接触面として隣接する対象物10´に接触した状態に置かれている場合であっても、その上面S4は露出している。そのため、ハンド機構2の指部21を対象物10の上面S4に接触させることができる。そこで、本実施例では、
図19に示すように、先ず、今回の対象物10の把持において状態変更用指部として機能する第1指部21Aの第1指リンク部211Aを対象物10の上面S4に接触させる。なお、第1指部21Aを対象物10の上面S4に接触させた段階では、ハンド機構2における他の指部21B、21C、21Dは、対象物10に接触させないものとする。
【0040】
ここで、
図19に示すような、第1指リンク部211Aと対象物10との接触は、該第1指リンク部211Aに取り付けられた感圧センサ70によって検知される。その際、可撓性カバー211aにおける不感帯被覆部が対象物10と接触し、且つ可撓性カバー211aにおけるセンサ素子被覆部が対象物10と接触しない状態が発生しても、不感帯Rの両隣に配置された2つのセンサ素子70bのうちの少なくとも一方により、第1指リンク部211Aと対象物10との接触を検知することができる。このようにして第1指リンク部211と対象物10との接触が検知されると、その検知信号がハンド制御装置43のセンサ情報取得部433へ入力されるため、ハンド制御装置43が第1指リンク部211Aと対象物10との接触状態を正確に把握することができる。
【0041】
例えば、
図18および
図19に示したように、第1指部21Aを変更用指部として機能させる場合は、主に、第1指リンク部211Aの先端部分(所謂、指先部分)が対象物10と接触することになる。そのため、第1指リンク部211Aの伸展側壁面216に配置される感圧センサ700と該第1指リンク部211Aの屈曲側壁面215において最も先端部側に配置される感圧センサ701との間の不感帯被覆部が、対象物10と接触する可能性がある。その場合、前述の
図15Bに示したように、可撓性カバー211aが撓みつつ上記した2つの感圧センサ700、701のうちの少なくとも一方のセンサ素子70bを押圧するようになるため、第1指リンク部211Aと対象物10との接触を検知することが可能となる。
【0042】
なお、不感帯被覆部と対象物10とが接触した場合において感圧センサ700および感圧センサ701が検知する圧力は、センサ素子被覆部と対象物とが接触した場合において感圧センサ700または感圧センサ701が検知する圧力より小さくなる傾向がある。そこで、第1指部21Aを変更用指部として機能させる場合において、感圧センサ700および感圧センサ701によって検知される圧力が第1所定値未満であれば、ハンド制御装置43は、感圧センサ700と感圧センサ701との間の不感帯被覆部が対象物10と接触している、と判定するようにしてもよい。その場合の「第1所定値」は、第1指部21Aを変更用指部として機能させる場合において、センサ素子被覆部と対象物10とが接触した際に、感圧センサ700、701が検知し得る値である。このような方法によれば、対象物10が第1指部21Aの不感帯被覆部と接触した場合においても、第1指部21Aにおける対象物の接触位置を特定することが可能となる。
【0043】
また、上記の
図18および
図19に示したように、第1指部21Aを変更用指部として機能させる場合において、上記した2つの感圧センサ700、701が同時に圧力を検知すると、ハンド制御装置43は、可撓性カバー211aのうち、感圧センサ700と感圧センサ701との間の不感帯被覆部を少なくとも含む領域が、対象物10と接触している、と判定してもよい。言い換えると、上記した2つの感圧センサ700、701が同時に圧力を検知した場合に、ハンド制御装置43は、可撓性カバー211aのうちの少なくとも上記不感帯被覆部が対象物10と接触している、と判定してもよい。ここで、感圧センサ700と感圧センサ701とが同時に圧力を検知する場合としては、感圧センサ700と感圧センサ701との間の不感帯被覆部のみが対象物10と接触している場合に加え、感圧センサ700のセンサ素子70bを覆うセンサ素子被覆部から感圧センサ701のセンサ素子70bを覆うセンサ素子被覆部にかけての不感帯被覆部を含む領域が対象物10と接触している場合(つまり、対象物が、2つの感圧センサ700、701の上に跨がるようにして、可撓性カバー211aと接触している場合)が想定される。そして、これらの何れの場合においても、少なくとも上記の不感帯被覆部が対象物10と接触していることになる。よって、第1指部21Aを変更用指部として機能させる場合において、感圧センサ700と感圧センサ701との間の不感帯被覆部を少なくとも含む領域に対象物10が接触しても、第1指部21Aにおける対象物の大概の接触位置を特定することが可能となる。
【0044】
ここで、第1指部21Aの機能を上記したような状態変更用指部に特化するのであれば、第1指リンク部211Aの伸展側壁面216と、第1指リンク部211の屈曲側壁面215における先端部側と、の2カ所のみに感圧センサを取り付けてもよい(すなわち、感圧センサ700と感圧センサ701のみを第1指リンク部211に取り付けてもよい)。
【0045】
上記した種々の方法により状態変更用指部(第1指部21A)の指先部分と対象物10との接触が検知されると、ハンド制御装置43は対象物の状態を変更させるべく、ハンド機構2を制御することが可能となる。具体的には、ハンド制御装置43は、
図20に示すように、第1指部21Aによって、その第1指リンク部211Aを対象物10の上面S4に接触させた状態で、該対象物10を手前に傾けさせることができる。すなわち、対象物10の把持面S6が、隣接する対象物10´から離間する方向に、該対象物10を傾けさせることができる。このように、状態変更用指部として機能する第1指部21Aによって対象物10の姿勢を変更することで、該対象物10と、隣接する対象物10´との間隔を大きくすることができる。これにより、対象物10における把持面S6を露出させることができる。その結果、対象物10における他方の把持面S5のみならず一方の把持面S6にも、ハンド機構2における第1指部21A以外の指部を接触させることが可能となる。なお、このようにして、対象物10における所定の把持面S5、S6の両方にハンド機構2の指部21を接触させることが可能なった該対象物10の状態を、以下においては「所定の把持可能状態」と称する。
【0046】
そして、
図21および
図22に示すように、第1指部21Aによって対象物10を傾けることで該対象物10の姿勢を所定の把持可能状態とした上で、今回の対象物10の把持において把持用指部として機能する第2指部21B、第3指部21C、および第4指部21Dによって該対象物10を把持する。このとき、
図21および
図22においては、対象物10の姿勢が変更されることで露出した対象物10における一方の把持面S6に、第2指部21Bの第1指リンク部211Bおよび第4指部21Dの第1指リンク部211Dを接触させている。一方、対象物10における他方の把持面S5に第3指部21Cの第1指リンク部211Cを接触させている。ただし、必ずしも、対象物10における一方の把持面S6に2本の指部を接触させる必要はない。つまり、対象物10における一方の把持面S6に1本の指部を接触させるとともに、該対象物10における他方の把持面S5に2本の指部を接触させた状態で、該対象物10を把持してもよい。また、対象物10における一方の把持面S6に1本の指部を接触させるとともに、該対象物10における他方の把持面S5も1本の指部を接触させた状態で、該対象物10を把持してもよい。つまり、3本の指部を備えるハンド機構においては、1本の指部を状態変更用指部として機能させ、残りの2本の指部を把持用指部として機能させることで、対象物を把持してもよい。
【0047】
ここで、第2指部21Bの第1指リンク部211B、第3指部21Cの第1指リンク部211C、および第4指部21Dの第1指リンク部211Dそれぞれの対象物10への接触は、各第1指リンク部211B、211C、211Dに設けられた感圧センサ70によって検知される。その際、各第1指リンク部211B、211C、211Dの可撓性カバー211aにおける不感帯被覆部が対象物10と接触し、且つそれら可撓性カバー211aにおけるセンサ素子被覆部が対象物10と接触しない状態が発生しても、不感帯Rの両隣に配置された2つのセンサ素子70bのうちの少なくとも一方により、各第1指リンク部211B、211C、211Dと対象物10との接触を検知することができるため、ハンド制御装置43がハンド機構2による対象物10の把持状態を正確に把握することができる。
【0048】
例えば、上記の
図21および
図22に示したように、第2指部21B、第3指部21C、および第4指部21Dを把持用指部として機能させる場合は、主に、第1指リンク部211B、211C、211Dの屈曲側壁面215における中間部分が対象物10と接触することになる。そのため、第1指リンク部211B、211C、211Dの屈曲側壁面215において最も基端部側に配置される感圧センサ703と中間に配置される感圧センサ702との間の不感帯被覆部が、対象物10と接触する可能性がある。特に、
図23に示すように、断面矩形の対象物100の角部が第2指部21B、第3指部21C、および第4指部21Dと接触するような状況においては、第1指リンク部211B、211C、211Dの屈曲側壁面215において最も基端部側に配置される感圧センサ703と中間に配置される感圧センサ702との間の不感帯被覆部が、対象物10と接触する可能性がある。その場合も、前述の
図15Bに示したように、可撓性カバー211aが撓みつつ上記した2つの感圧センサ702、703のうちの少なくとも一方のセンサ素子70bを押圧するようになるため、第1指リンク部211B、211C、211Dと対象物10との接触を検知することが可能となる。
【0049】
なお、不感帯被覆部と対象物10とが接触した場合において感圧センサ702および感圧センサ703が検知する圧力は、前述した感圧センサ700、701の場合と同様に、センサ素子被覆部と対象物とが接触した場合において感圧センサ702または感圧センサ703が検知する圧力より小さくなる傾向がある。そこで、第2指部21B、第3指部21C、および第4指部21Dを把持用指部として機能させる場合において、感圧センサ702および感圧センサ703によって検知される圧力が第2所定値未満であれば、ハンド制御装置43は、感圧センサ702と感圧センサ703との間の不感帯被覆部が対象物10と接触している、と判定するようにしてもよい。その場合の「第2所定値」は、第2指部21B、第3指部21C、および第4指部21Dを把持用指部として機能させる場合において、センサ素子被覆部と対象物10とが接触した際に、感圧センサ702、703が検知し得る値である。このような方法によれば、対象物10が第2指部21B、第3指部21C、および第4指部21Dの不感帯被覆部と接触した場合においても、それらの指部21B、21C、21Dにおける対象物との接触位置を特定することが可能となる。
【0050】
また、上記の
図21および
図22に示したように、第2指部21B、第3指部21C、および第4指部21Dを把持用指部として機能させる場合において、各指部21B、21C、21Dの感圧センサ702と感圧センサ703とが同時に圧力を検知すると、ハンド制御装置43は、可撓性カバー211aのうち、感圧センサ702と感圧センサ703との間の不感帯被覆部を少なくとも含む領域が、対象物と接触している、と判定してもよい。このような方法によれば、第2指部21B、第3指部21C、および第4指部21Dを把持用指部として機能させる場合において、感圧センサ702と感圧センサ703との間の不感帯被覆部を少なくとも含む領域に対象物10が接触しても、各指部21B、21C、21Dにおける対象物の大概の接触位置を特定することが可能となる。
【0051】
以上説明したように、本実施例に係るハンド機構2によれば、ハンド機構2により対象物10を把持する場合に、各指部21における不感帯被覆部と対象物10とが接触し、且つセンサ素子被覆部と対象物10とが接触しない状態が発生しても、不感帯Rの両隣に位置するセンサ素子70bの少なくとも一方によって指部21と対象物10との接触を検知することができる。その結果、ハンド制御装置43は、各指部21と対象物10との接触状態をより正確に把握することができるようになるため、対象物10をより適正な姿勢でハンド機構2によって把持させることが可能となる。特に、対象物10が他の対象物10´と接触した状態で配置されているために該対象物10の所定の把持面が露出しておらず、そのままの状態では該対象物10の所定の把持面に該ハンド機構2の指部21を接触させることができない状況において、4本の指部21のうちの1本の指部(上述の例では第1指部21A)を状態変更用指部として機能させることで、該対象物10の姿勢を所定の把持可能状態に変更させるような制御が行われる場合であっても、状態変更用指部と対象物10との接触状態や接触位置を正確に把握することができるため、より精度の高い制御を行うことが可能となる。さらに、状態変更用指部として機能する指部によって対象物10の姿勢を所定の把持可能状態に変更することで、他の対象物10´に接触していた該対象物10の所定の把持面を露出させた後に、状態変更用指部として機能する指部以外の指部であって把持用指部として機能する指部(上述の例では、第2指部21B、第3指部21C、および第4指部21D)によって対象物10を挟み込ませるような制御を行う場合においても、把持用指部と対象物との接触状態や接触位置をより正確に把握することができるため、より精度の高い制御を行うことが可能となる。また、可撓性カバー211aの外表面の摩擦係数が第1指リンク部211の外壁面や絶縁被膜70cの外表面の摩擦係数より大きくなる部材で可撓性カバー2110aが形成される場合には、ハンド機構2によって対象物を把持する際の摩擦力が高められることで、対象物のより確実な把持を実現することも可能になる。
【0052】
<実施例2>
次に、本発明の第2の実施例について
図24から
図27に基づいて説明する。ここでは、前述した第1の実施例と異なる構成について説明し、同様の構成についてはその説明を省略する。
【0053】
前述した第1の実施例では、第1指リンク部211における伸展側壁面216(背部)から屈曲側壁面215(腹部)にかけて、複数の感圧センサ70とその周辺における第1指リンク部211の外壁面とを覆うシート状の可撓性カバー211aを貼り付けることで、第1指リンク部211の外壁面の一部を覆う例について述べたが、本実施例では、先端部側が閉塞し且つ基端部側が開口した袋状に形成される可撓性カバー2110aを、第1指リンク部211に被せることで、第1指リンク部211の外壁面の全体を覆う例について述べる。
【0054】
図24は、本実施例に係る可撓性カバーを第1指リンク部に装着した状態を示す図である。
図25は、本実施例に係る第1指リンク部211の腹部(伸展側壁面216)の構成を示す斜視図である。
図26は、本実施例に係る第1指リンク部211の背部(屈曲側壁面215)の構成を示す斜視図である。
図27は、本実施例に係る可撓性カバー2110aの正面図(第1指リンク部211の屈曲側壁面215を覆う側の平面図)である。
【0055】
本実施例における可撓性カバー2110aは、
図24に示すように、第1指リンク部211に被せられることで、第1指リンク部211の外壁面の全体を覆う、所謂、指サック状に形成される。詳細には、可撓性カバー2110aは、先端部側が閉塞し且つ基端部側が開口した袋状に形成される。その際、可撓性カバー2110aは、該可撓性カバー2110aの先端から基端までの長さが、第1指リンク部211の先端から基端までの長さと同等若しくは若干短くなるように形成される。また、可撓性カバー2110aは、該可撓性カバー2110aの内形が第1指リンク部211の外形と略同形となるように形成される。これにより、可撓性カバー2110aが第1指リンク部211に装着された状態において、該可撓性カバー2110aの内壁面が第1指リンク部211の外壁面に密着する。なお、可撓性カバー2110aは、該可撓性カバー2110aの外表面の摩擦係数が第1指リンク部211の外壁面や絶縁被膜70cの外表面の摩擦係数より大きくなる部材で形成されてもよい。
【0056】
また、本実施例に係る第1指リンク部211は、該第1指リンク部211の外壁面のうち、屈曲側壁面215(腹部)と伸展側壁面216(背部)との2箇所に形成される突起2111a、2111b(本発明に係る第1嵌合部に相当。)を備える。詳細には、第1指リンク部211の屈曲側壁面215において、3つの感圧センサ701、702、703よりも基端部側の部位には、
図25に示すように、略円柱形状の突起2111aが形成される。また、第1指リンク部211の伸展側壁面216において、感圧センサ700よりも基端部側の部位にも、
図26に示すように、略円柱形状の突起2111bが形成される。
【0057】
一方、本実施例に係る可撓性カバー2110aは、該可撓性カバー2110aにおける、上記2つの突起2111a、2111bに対応する部位に設けられるハトメ部材2112a、2112b(本発明に係る第2嵌合部材に相当。)を備える。詳細には、可撓性カバー2110aにおける、第1指リンク部211の屈曲側壁面215(腹部)を覆う部分のうち、第1指リンク部211の突起2111aに対応する部位には、ハトメ部材2112aが取り付けられる。ハトメ部材2112aは、
図27に示すように、その中心部分に略円柱形状の貫通孔H1が形成された、環状の部材であり、例えば、樹脂や金属等で形成される。なお、ハトメ部材2112aの貫通孔H1は、第1指リンク部211の突起2111aの直径と同等若しくは若干大きな直径を有するように形成される。また、可撓性カバー2110aにおける、第1指リンク部211の伸展側壁面216(背部)を覆う部分のうち、第1指リンク部211の突起2111bに対応する部位にも、ハトメ部材2112bが取り付けられる。該ハトメ部材2112bは、上記のハトメ部材2112aと同様に、その中心部分に略円柱形状の貫通孔が形成された、環状の部材である。そして、該ハトメ部材2112bの貫通孔は、第1指リンク部211の突起2111bの直径と同等若しくは若干大きな直径を有するように形成される。
【0058】
上記のように構成される可撓性カバー2110aを第1指リンク部211に被せる場合には、
図24に示すように、第1指リンク部211における屈曲側壁面215の突起2111aが可撓性カバー2110aにおけるハトメ部材2112aの貫通孔に嵌合し、且つ、第1指リンク部211における伸展側壁面216の突起2111bが可撓性カバー2110aにおけるハトメ部材2112bの貫通孔に嵌合するように、可撓性カバー2110aを第1指リンク部211に被せればよい。それにより、第1指リンク部211に対する可撓性カバー2110aの位置決めが為されるため、前述の第1の実施例で述べたような様々な把持動作をハンド機構2が行っても、可撓性カバー2110aの位置ずれが抑制される。特に、外表面の摩擦係数が第1指リンク部211の外壁面や絶縁被膜70cの外表面の摩擦係数より大きくなる部材で可撓性カバー2110aが形成される場合には、ハンド機構2によって対象物を把持する際の摩擦力が高められることで、対象物のより確実な把持を実現することが可能になる一方で、可撓性カバー2110aを位置ずれさせる方向へ働く力が大きくなる可能性があるが、そのような場合においても、上記の突起2111a、2111bとハトメ部材2112a、2112bの貫通孔とが相互に嵌合していることで、可撓性カバー2110aの位置ずれを抑制することができる。ハンド機構2が把持動作を行う際に、可撓性カバー2110aの位置ずれが抑制されれば、可撓性カバー2110aの内壁面と第1指リンク部211の外壁面とを相互に密着した状態に保つことができる。その結果、可撓性カバー2110aにおける不感帯被覆部が対象物と接触し、且つ該可撓性カバー2110aにおけるセンサ素子被覆部が対象物と接触しない状態が発生した場合に、不感帯被覆部近傍の可撓性カバー2110aが撓みつつ、不感帯の両隣に位置する2つのセンサ素子70bのうちの少なくとも一方を押圧することが可能となる。よって、前述の第1の実施例に係る可撓性カバー211aと同様の効果を得ることができる。また、本実施例に係る可撓性カバー2110aによれば、第1指リンク部211の外壁面の全体が覆われるため、第1指リンク部211や感圧センサ70が汚れたり、または摩耗したりすることを抑制することもできる。
【0059】
なお、本実施例では、第1指リンク部側に突起を設けるとともに、該突起に嵌合可能な貫通孔を有するハトメ部材を可撓性カバー側に設ける例について述べたが、可撓性カバー側に突起を設けるとともに、該突起に嵌合可能な貫通孔を有するハトメ部材を第1指リンク部側に設けてもよい。その場合も、本実施例と同様の効果を得ることができる。
【0060】
また、本実施例では、第1指リンク部の腹部側と背部側との2箇所において、突起と孔との組み合わせによる可撓性カバーの位置決めを行う例について述べたが、ハンド機構が把持動作を行う際に可撓性カバーを位置ずれさせる方向へ働く力が比較的小さい用途でハンド機構が使用される場合等においては、第1指リンク部の腹部側と背部側との何れか1箇所において、突起と孔との組み合わせによる可撓性カバーの位置決めが行われてもよい。
【0061】
なお、本実施例では、略円柱状の突起と該突起に嵌合可能な貫通孔を有するハトメ部材との組み合わせによって可撓性カバーの位置決めが行われる例について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば、雄スナップと雌スナップとの組み合わせからなるスナップボタンを用いて、可撓性カバーの位置決めが行われてもよい。また、一組の面ファスナの一方を可撓性カバーの内表面における基端部側(開口部分の近傍)に取り付けるとともに、一組の面ファスナの他方を第1指リンク部の外壁面における前記一方の面ファスナに対応する部位に取り付け、それら一組の面ファスナを互いに嵌合させることで、可撓性カバーの位置決めが為されるようにしてもよい。
【0062】
<他の実施例>
前述した第1の実施例では、各指部21に可撓性カバー211aを取り付ける例について述べたが、各指部21に可撓性カバー211aに加え、該可撓性カバー211aを覆う膜状の保護カバーを取り付けるようにしてもよい。例えば、
図28および
図29に示すように、各指部21の第1指リンク部211に可撓性カバー211aを貼り付けた後に、第1指リンク部211の外形と略同形の内形を有するとともに、先端部側が閉塞され且つ基端部側が開口した袋状(指サック状)の保護カバー211bを第1指リンク部211に被せることで、複数の感圧センサ70が二層のカバー211a、211bで覆われるようにしてもよい。その際、保護カバー211bは、該保護カバー211bの外面の摩擦係数が第1指リンク部211の外壁面や可撓性カバー211aの外表面の摩擦係数より大きくなる部材であって、且つ可撓性カバー211aより可撓性の低い部材により形成される。このように形成される保護カバー211bが第1指リンク部211に被せられると、ハンド機構2によって対象物を把持する場合における可撓性カバー211aの摩耗を抑制することできる。また、上記のように形成される保護カバー211bが第1指リンク部211に被せられると、ハンド機構2によって対象物を把持する際の摩擦力が高められるため、対象物のより確実な把持を実現することができる。さらに、保護カバー211bは可撓性カバー211aに対して着脱自在であるため、該保護カバー211bが摩耗した際には、その保護カバー211bを新品と交換すればよい。また、上記したように形成される保護カバー211bが可撓性カバー211aに被せられると、感圧センサ70が二層のカバーで覆われることになるため、可撓性カバー211aのみによる一層の場合に比べ、カバーの厚さが大きくなる。そのため、不感帯被覆部が対象物と接触した際に、該対象物から不感帯被覆部へ伝わる圧力が不感帯の両隣のセンサ素子70bの少なくとも一方に伝わりやすくなる。その結果、不感帯被覆部と対象物との接触をより正確に検知することも可能になる。
【0063】
なお、上記した
図28に示す例では、保護カバー211bは、各指部21の第1指リンク部211のみを覆う指サック状に形成されているが、第1指リンク部211および第2指リンク部212を含む指部21の全体とベース部20とを覆う、手袋状に形成されてもよい。保護カバーが手袋状に形成されると、ハンド機構2の汚れを抑制することができるとともに、各関節部の隙間等に埃等が侵入することも抑制することができる。また、保護カバーは、可撓性カバー211aに対して着脱自在に形成されるものに限定されるものではなく、例えば、可撓性カバー211aと略同形に形成される、シート状の保護カバーを、可撓性カバー211aの表面に貼り付けるようにしてもよい。このような構成において、可撓性カバー211aに貼り付けられた保護カバー211bが摩耗した場合には、その保護カバー211bを新品の保護カバー211bと張り替えてもよく、または保護カバー211bも含めて新品に交換してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1・・・ロボットアーム、2・・・ハンド機構、20・・・ベース部、21・・・指部、22・・・第1関節部、23・・・第2関節部、211・・・第1指リンク部、211a、2110a・・・可撓性カバー、211b・・・保護カバー、2111a、2111b・・・突起、2112a、2112b・・・ハトメ部材、212・・・第2指リンク部、213・・・基端部、3・・・アーム機構、30a・・・第1関節部、30b・・・第2関節部、30c・・・第3関節部、30d・・・第4関節部、30e・・・第5関節部、30f・・・第6関節部、31・・・第1アームリンク部、32・・・第2アームリンク部、33・・・第3アームリンク部、34・・・第4アームリンク部、35・・・第5アームリンク部、36・・・接続部材、4・・・台座部、42・・・アーム制御装置、420・・・アーム制御部、421・・・モータ状態量取得部、43・・・ハンド制御装置、430・・・対象物情報取得部、431・・・ハンド制御部、432・・・モータ状態量取得部、433・・・センサ情報取得部、51・・・第1モータ、52・・・第2モータ、53・・・第3モータ、61、62・・・傘歯車、63・・・ウォームホイール、64・・・ウォーム、65、66・・・歯車、70・・・感圧センサ、70a・・・基材、70b・・・センサ素子、70c・・・絶縁皮膜